特許第6773648号(P6773648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6773648-皮膚外用剤 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773648
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20201012BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20201012BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20201012BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/39
   A61Q19/08
   A61K8/81
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-517871(P2017-517871)
(86)(22)【出願日】2016年4月26日
(86)【国際出願番号】JP2016063078
(87)【国際公開番号】WO2016181828
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-96839(P2015-96839)
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397077760
【氏名又は名称】株式会社林原
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】特許業務法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 睦子
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 剛
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 起代美
(72)【発明者】
【氏名】石原 達也
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−091710(JP,A)
【文献】 特開2001−072547(JP,A)
【文献】 特開2010−001239(JP,A)
【文献】 特開2012−206956(JP,A)
【文献】 特開2011−219424(JP,A)
【文献】 特開2015−007007(JP,A)
【文献】 特開平11−180823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルラン及びアルカリ膨潤型高分子を含有し、前記アルカリ膨潤型高分子に対する前記プルランの質量比が50乃至125であり、前記プルランを、総質量に対して2乃至5質量%の割合で含有する、顔の皮膚のリフトアップ剤
【請求項2】
前記アルカリ膨潤型高分子が、モノマーとして、アクリル酸、並びに、メタクリル酸から選択される1種又は2種に加えて、分子内に疎水性基を有するアクリル酸誘導体、並びに、分子内に疎水性基を有するメタクリル酸誘導体から選択される1種又は2種以上を含有するコポリマー及び/又はクロスポリマーであることを特徴とする請求項1記載の顔の皮膚のリフトアップ剤
【請求項3】
前記アルカリ膨潤型高分子が、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーであることを特徴とする請求項1記載の顔の皮膚のリフトアップ剤
【請求項4】
さらに、非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の顔の皮膚のリフトアップ剤
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレングリセリンであることを特徴とする請求項記載の顔の皮膚のリフトアップ剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、より詳細には、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げる作用を有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
いつまでも若々しくありたいという思いは人類共通の普遍的な願いであるが、年齢を重ねるに連れてヒトの皮膚にたるみや小じわ等の変化が現れるのは人類が長きにわたって経験してきたところである。昨今、アンチエイジングに対する関心が急速に高まり、従来にも増して、皮膚にハリを与え、皮膚のたるみを引上げることができる皮膚外用剤が求められている。
【0003】
従来、皮膚にハリを与え、皮膚のたるみを引上げることを目的として、皮膜形成剤を含有する皮膚外用剤が利用されている。皮膜形成剤は、皮膜を形成する際に収縮する性質を有しており、その収縮力で皮膚を引締めることにより、皮膚のたるみを引上げると考えられている。
【0004】
特許文献1には、シリコン系樹脂エマルションやアクリル系樹脂エマルション、アルギン酸ナトリウム等の皮膜形成物質とシリカを併用することにより、皮膜の収縮力を長時間維持し、小じわを伸ばす化粧用液状組成物が提案されている。しかしながら、当該組成物は、シリカを含有することから、皮膜が硬く、使用時に違和感があるという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、収縮率の小さい柔軟なポリウレタンの水分散物とアクリルエマルションを併用することによるしわ改善化粧料が提案されている。しかしながら、当該化粧料により形成される皮膜は、収縮力が弱いため、皮膚への密着性に劣り、皮膚のたるみの引上げ作用が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−933号公報
【特許文献2】特許第4590186号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることができ、且つ、べたつかず、皮膚へのなじみが良く、違和感のない優れた皮膚外用剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、プルラン及びアルカリ膨潤型高分子を特定の割合で配合することにより、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることができ、且つ、べたつかず、皮膚へのなじみが良く、違和感のない優れた皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、プルラン及びアルカリ膨潤型高分子を含有し、前記アルカリ膨潤型高分子に対する前記プルランの質量比が10以上であることを特徴とする皮膚外用剤を提供することによって、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤によれば、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることにより、皮膚のたるみや小じわ等を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】被験者の顔における測定ラインを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、プルラン及びアルカリ膨潤型高分子を含有し、前記アルカリ膨潤型高分子に対する前記プルランの質量比が10以上であることを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。プルランは、皮膜形成能に優れており、皮膚を引締め、たるみを引上げる成分である。また、アルカリ膨潤型高分子は、皮膚外用剤に適度な粘度を付与する成分であると共に、意外なことに、皮膚外用剤のべたつきを抑制する効果を有している。本発明の皮膚外用剤は、これら2つの成分を特定の割合で含有することにより、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることができ、且つ、皮膚へのなじみが良いという顕著な効果を奏するものである。
【0013】
本明細書でいうプルランとは、グルコースがα−1,4結合で3分子連なったマルトトリオースを構成単位とし、マルトトリオースがα−1,6結合を介して連結した構造を有する水溶性高分子多糖を意味する。前記プルランは、その由来や製造方法に限定はなく、いかなる製造方法によって得られるプルランでも良いが、通常、プルラン産生能を有する微生物を培養し、培養物からプルランを採取する方法が好適に用いられる。前記微生物としては、オーレオバシディウム・プルランスが例示される。入手し易さ及び品質の点で、市販のプルランが有利に用いられ、例えば、株式会社林原販売の医薬品級プルラン(商品名『日本薬局方プルラン』)、化粧品級プルラン(商品名『化粧品用プルラン』)及び食品添加物級プルラン(商品名『食品添加物プルラン』)などが好適に使用できる。
【0014】
前記プルランの重量平均分子量や分子量分布は、皮膜形成能を有する限り、特に制限されるものではないが、皮膜の収縮力が十分、且つ、皮膜が柔軟であるという点で、重量平均分子量が、望ましくは5,000乃至1,000,000、より望ましくは50,000乃至500,000のプルランが好適に利用できる。
【0015】
本明細書でいうアルカリ膨潤型高分子とは、モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、疎水性基を有するアクリル酸誘導体、疎水性基を有するメタクリル酸誘導体から選択される1種又は2種以上を含有する高分子を意味する。前記アルカリ膨潤型高分子は、水溶液のpHを酸性からアルカリ性に変化させた際に、水溶液の粘度を増加させる性質を有するものであればよく、例えば、2種以上の前記モノマーが重合して生成される直鎖状のコポリマーや、前記コポリマーを架橋剤で架橋して生成されるクロスポリマーなどであってもよい。
【0016】
前記疎水性基を有するアクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸アルキル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸パーフルオロオクチルエチル、アクリルアミド、アルキルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。また、前記疎水性基を有するメタクリル酸誘導体としては、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸エチルアミンオキシド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ブチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アンモニウム、メタクリルアミド、メタクリル酸アリル、メタクリル酸トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル、メタクリル酸エチルベタイン、メタクリル酸プロピルトリメチコン、メタクリル酸ベヘネス、メタクリル酸ステアレス、メタクリル酸メトキシPEGなどが挙げられる。
【0017】
前記コポリマーとしては、例えば、アクリレーツコポリマー、アクリル酸アルキルコポリマー、(アクリレーツ/t−ブチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/アクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1−18)/アルキル(C1−8)アクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/HEMA)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ヒドロキシアルキル)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー、(アクリレーツ/オクチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸アリル)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22))コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25/メタクリル酸ステアレス−30)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸メトキシPEG−23)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸メトキシPEG−23/アクリル酸パーフルオロオクチルエチル)コポリマー、(オクチルアクリルアミド/アクリレーツ/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー、(スチレン/アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/アクリル酸ラウリル)コポリマー、(スチレン/アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマー、及び、(メタクリル酸エチルベタイン/アクリレーツ)コポリマーなどが挙げられる。
【0018】
前記クロスポリマーとしては、例えば、アクリレーツクロスポリマー、ポリアクリレートクロスポリマー、アクリレーツポリアクリレートクロスポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸グリシジル)クロスポリマー、及び、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)クロスポリマーなどが挙げられる。また、前記架橋剤としては、ペンタエリスリトールのアリルエーテルや、スクロースのアリルエーテル、エチレングリコールジメタクリラート、及び、トリメチロールプロパントリアクリラートなどが挙げられる。
【0019】
通常、皮膚外用剤は、中性付近のpHで使用されることが多く、また、適度な粘度を有する方が使用し易いため、前記アルカリ膨潤型高分子としては、中性付近のpHにおいて、増粘作用が発揮されるという点において、モノマーとして、アクリル酸、並びに、メタクリル酸から選択される1種又は2種に加えて、分子内に疎水性基を有するアクリル酸誘導体、並びに、分子内に疎水性基を有するメタクリル酸誘導体から選択される1種又は2種を含有するコポリマー及び/又はクロスポリマーを用いるのが好ましく、中でも、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーを用いるのがより好ましい。これらのコポリマー及びクロスポリマーは、モノマーとして、分子内に疎水性基を有するアクリル酸誘導体、又は、分子内に疎水性基を有するメタクリル酸誘導体を含有するため、疎水性基の会合により、中性付近のpHにおいても、水溶液の粘度を増加させることができ、プルランを含有する本発明の皮膚外用剤に最適である。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚のたるみの引上げ作用が十分、且つ、皮膚へのなじみが良いという点で、より好適には、前記プルランを、前記アルカリ膨潤型高分子に対して、10乃至200、望ましくは50乃至125の質量比で含有するものである。前記アルカリ膨潤型高分子に対する前記プルランの質量比が10未満のものは、皮膚のたるみの引上げ作用が不十分であるため、好ましくない。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、適宜希釈或いは濃縮して使用することも随意であるので、本発明の皮膚外用剤に含有される前記プルランの濃度は、特に限定されるものではないが、本発明の皮膚外用剤を、希釈或いは濃縮することなく、直接皮膚に適用する場合、通常、前記プルランを、総質量に対して、10質量%以下、望ましくは0.4乃至8質量%、より望ましくは2乃至5質量%の割合で含有するものが好適に利用できる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤は、より好適には、べたつきや皮膚へのなじみをさらに改善することを目的として、非イオン性界面活性剤を含有するものである。前記非イオン性界面活性剤は、望ましくは、ポリオキシエチレングリセリン、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ヘプタステアリン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンカプリル酸グリセリル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリグリセリンモノステアリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンデカグリセリルエーテル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリオキシエチレングリセリルから選択される1種又は2種以上であり、より望ましくは、ポリオキシエチレングリセリンである。
【0023】
本発明の皮膚外用剤に含有される前記非イオン性界面活性剤の濃度は、本発明の所期の効果を損なわない限り、特に限定されるものではないが、本発明の皮膚外用剤は、通常、前記非イオン性界面活性剤を、総質量に対して、0.01乃至10質量%以下、望ましくは0.1乃至5質量%の割合で含有するものが好適に利用できる。
【0024】
また、本発明の皮膚外用剤には、通常、皮膚外用剤に用いられ得る成分の1種又は2種以上を適宜配合することができ、例えば、保湿剤、油成分、美白剤、抗酸化剤、防腐剤(抗菌剤)、キレート剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、pH調整剤、香料などを配合して、常法により皮膚外用剤を製造すればよい。
【0025】
保湿剤としては、グリセリン、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、トレハロース、トレハロースの糖質誘導体、デキストリン、サイクロデキストリン、国際公開第02/10361号パンフレットで開示したサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖、特開2005−95148号公報に記載したサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖などの糖類、アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどの天然保湿成分、グリコーゲン、ローカストビーンガム、キシログルカン、クインスシード、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、サクシノグルカン、ガラクタン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ムコイチン硫酸、ケラト硫酸、キチン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸などのムコ多糖類やこれらムコ多糖類の加水分解物、シルクやコラーゲンなどの蛋白質・ペプチドやこれらの加水分解物などの水溶性高分子物質、これらの塩類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどのシリコン類、乳酸菌・ビフィズス菌などの培養上清などを例示することができる。
【0026】
油成分としては、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油などの植物油脂類、ミンク油、卵黄油などの動物油脂類、蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウなどのロウ類、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリンなどの炭化水素類、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの天然及び合成脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、カプリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの天然及び合成高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレートなどのエステル類などを例示することができる。
【0027】
美白剤としては、アスコルビン酸及びその塩類、アスコルビン酸2−グルコシドなどのアスコルビン酸配糖体及びその塩類、アスコルビン酸2−リン酸やアスコルビン酸エチルなどのアスコルビン酸誘導体及びその塩類、アルコキシサリチル酸類及びその塩類、ハイドロキノン及びその配糖体並びにその誘導体、トラネキサム酸並びにその誘導体及びそれらの塩類、レゾルシンの誘導体、コウジ酸並びにその誘導体及びそれらの塩類、エラグ酸やリノール酸及びそれらの塩類、カミツレ抽出物、テトラヒドロクルクミノイド、藍草抽出物などを挙げることができる。
【0028】
抗酸化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、ビタミンE、カテキン類、フラボノイド類やこれらの誘導体などを例示することができる。
【0029】
防腐剤(抗菌剤)としては、フェノキシエタノール、安息香酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルキシレノール、クロルフェネシン、サリチル酸及びその塩類、トリクロロカルバニリド、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテルなどを例示することができる。
【0030】
キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、酒石酸、グルコン酸などを例示することができる。
【0031】
紫外線吸収・散乱剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、3−(4´−メチルベンジリデン)−d−カンファー、3−ベンジリデン−d,1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4´−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルクなどを例示することができる。
【0032】
ビタミン類としては、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB1及びその誘導体、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸及びその誘導体、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP及びその誘導体、ビタミンU、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸、コエンザイムQ10などやそれらの誘導体などを例示することができ、それらの塩類であってもよい。
【0033】
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、タウリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン、カルニチン、シトルリン及びそれらの誘導体などを例示することができ、それらの塩類であってもよい。
【0034】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、ニトリロトリエタノール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂などを例示することができる。
【0035】
香料としては、ベンズアルデヒド、ベンジルベンゾエート、フェニル酢酸、サンダロール、オイゲノール、リリアール、リラール、リナロール、2−メチル−3−(4−メチルフェニル)−プロパナール、ムスクケトン、シンナミックアルデヒド、ベルトフィックス、メチルイオノン、ゲラニルホーメート、イソEスーパー、γ−ウンデカラクトン、ヘキシルサリシレート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、メチルジヒドロジャスモネート、テトラヒドロフルフリル3−メルカプトプロピオネート、コバノール、バニリン、バニラール、ゼラニウムオイル、ペニロイヤルオイル、バーチオイル、アルモイゼオイルなどを例示することができる。
【0036】
本発明の皮膚外用剤の剤型は特に限定されず、例えば、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油2層系、水−油−粉末3層系、油/水型乳化系、及び、水/油型乳化系など、種々の形態に調製して使用することができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤によれば、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることにより、皮膚のたるみや小じわを改善することができるので、本発明の皮膚外用剤は、望ましくは、顔や首、腕、お腹、お尻、脚などの皮膚のたるみの引上げ作用を有する皮膚外用剤、より望ましくは、顔の皮膚のリフトアップ作用を有する皮膚外用剤として好適に利用できる。
【0038】
以下、実験に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0039】
<実験1:アルカリ膨潤型高分子に対するプルランの質量比が及ぼす影響>
アルカリ膨潤型高分子に対するプルランの質量比が、皮膚のハリ、皮膚へのなじみ、及び、皮膜のヨレに及ぼす影響について調べるため、種々の試料を調製し、官能検査を行った。
【0040】
まず、「プルラン」(重量平均分子量200,000、商品名『化粧品用プルラン』、株式会社林原販売)、アルカリ膨潤型高分子の1種である「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー」(商品名『Pemulen TR−2』、Lubrizol社販売)、中和のための「水酸化ナトリウム」、及び、「精製水」を表1に示す割合で混合し、被験試料1乃至5及び対照試料を調製した。
【0041】
官能検査は、33〜50歳の健康な男女9人をパネルとして用いて行った。パネリストの前腕部に被験試料1乃至5及び対照試料をそれぞれ0.2ml塗布し、塗布直後に、皮膚のハリ、皮膚へのなじみ、及び、皮膜のヨレについて、下記基準に従い評価を行った。結果を表1に示す。
・皮膚のハリ:
◎:「皮膚にハリが感じられる」と回答したパネリストが7〜9人
○:「皮膚にハリが感じられる」と回答したパネリストが5〜6人
△:「皮膚にハリが感じられる」と回答したパネリストが3〜4人
×:「皮膚にハリが感じられる」と回答したパネリストが0〜2人
・皮膚へのなじみ:
◎:「皮膚へのなじみが良い」と回答したパネリストが7〜9人
○:「皮膚へのなじみが良い」と回答したパネリストが5〜6人
△:「皮膚へのなじみが良い」と回答したパネリストが3〜4人
×:「皮膚へのなじみが良い」と回答したパネリストが0〜2人
・皮膜のヨレ:
◎:「皮膜のヨレがない」と回答したパネリストが7〜9人
○:「皮膜のヨレがない」と回答したパネリストが5〜6人
△:「皮膜のヨレがない」と回答したパネリストが3〜4人
×:「皮膜のヨレがない」と回答したパネリストが0〜2人
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなとおり、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーに対するプルランの質量比が5である被験試料1は、対照試料と同様、皮膚にハリを与える効果を有していなかったのに対し、当該質量比が10乃至200である被験試料2乃至5は、被験試料1及び対照試料と比較して、皮膚にハリを与える効果が優れており、その中でも特に、当該質量比が125乃至200である被験試料4及び5が、皮膚にハリを与える効果が顕著に優れていた。また、当該質量比が10乃至200である被験試料2乃至5は、被験試料1及び対照試料と比較して、皮膚へのなじみが優れており、その中でも特に、当該質量比が50である被験試料3が、皮膚へのなじみが顕著に優れていた。なお、当該質量比が0乃至125である対照試料及び被験試料1乃至4は、皮膜のヨレがほとんど発生しなかったが、当該質量比が200である被験試料5については、皮膜のヨレの発生がみられた。
【0044】
以上の結果は、アルカリ膨潤型高分子に対するプルランの質量比が10以上、より望ましくは10乃至200である皮膚外用剤が、皮膚のハリ、及び、皮膚へのなじみの点で優れており、アルカリ膨潤型高分子に対するプルランの質量比が50乃至125である皮膚外用剤は、皮膚のハリ、皮膚へのなじみ、及び、皮膜のヨレの無さの点で特に優れていることを物語っている。
【0045】
なお、被験試料1乃至5は、べたつきがなく、前腕部への塗布やその後の官能検査に特段の支障はなかったが、別途調製したプルラン(5質量%)及び精製水のみから構成される皮膚外用剤については、べたつきが激しく、官能検査による評価を行うことができなかった。このことは、プルランにアルカリ膨潤型高分子を配合することにより、プルランが示すべたつきを抑制することができることを物語っている。
【0046】
<実験2:皮膚のたるみの引上げ作用の評価>
次に、実験1において、皮膚にハリを与える効果が顕著であり、且つ、皮膚へのなじみも良く、皮膜のヨレの発生も少ないと判断した被験試料4に基づき、被験皮膚外用剤を調製し、被験皮膚外用剤について皮膚のたるみの引上げ作用の評価を行った。
【0047】
表2に示す割合で種々の材料を配合し、被験皮膚外用剤、及び、被験皮膚外用剤からプルランを除いた対照皮膚外用剤を調製した。皮膚のたるみやハリの低下が認められる健康な女性20名(年齢:35〜70)を被験者とし、被験皮膚外用剤及び対照皮膚外用剤を、それぞれ被験者の顔の右半分及び左半分に塗布した。塗布前、塗布後30分、及び、60分後に、焦点距離60mmのマクロレンズを装着したデジタル一眼レフカメラ(有効画素数12.3メガピクセル)を用いて真正面方向から顔の写真を撮影し、画像解析ソフトウェア(『NIH Image』、アメリカ国立衛生研究所製)を用いて、顔の中心線に平行な左右の目尻を通るライン(図1のライン1並びに4)、及び、顔の中心線に平行な左右の目頭を通るライン(図1のライン2並びに3)について、髪の生え際から顎までの長さをそれぞれ測定し、塗布前からの変化量を求めた。各測定値及び各変化量の平均値を表3に示す。なお、塗布前と塗布後30分、及び、塗布前と塗布後60分の測定値について、それぞれStudentのpaired t−検定を行い、危険率が5%以下のものを有意差ありと判断し、表中に*で示した。また、被験皮膚外用剤と対照皮膚外用剤の塗布前からの変化量について、それぞれ同検定を行い、危険率が5%以下のものを有意差ありと判断し、表中に**で示した。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
表3から明らかなとおり、対照皮膚外用剤を塗布した場合は、目尻又は目頭を通る垂直のラインの長さに変化が認められなかったのに対し、被験皮膚外用剤を塗布した場合は、目尻又は目頭を通る垂直のラインの長さが、塗布後30分後には、塗布前と比較して0.97乃至1.04mm短くなり、塗布後60分後においても、塗布前と比較して0.66乃至0.77mm短くなっており、皮膚のたるみを引上げる効果の一種である顔の皮膚のリフトアップ効果が維持されていた。これらの結果は、プルラン及びアルカリ膨潤型高分子を特定の割合で含有する皮膚外用剤は、皮膚のたるみを引上げる作用を有しており、皮膚のたるみを顕著に改善できることを物語っている。
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらの実施例により何ら限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例1】
【0052】
<皮膚外用剤>
配合成分 (質量%)
(1)プルラン(重量平均分子量200,000、
商品名『化粧品用プルラン』、株式会社林原販売) 5.0
(2)アクリレーツポリアクリレートクロスポリマー−AMP 0.1
(3)ポリオキシエチレングリセリン(26 E.O.) 0.3
(4)アスコルビン酸2−グルコシド(商品名『AA2G』、
株式会社林原販売) 1.0
(5)ペンチレングリコール 0.5
(6)クエン酸 適量
(7)クエン酸ナトリウム 適量
(8)水酸化ナトリウム 適量
(9)精製水 残量
【0053】
本品は、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることができ、且つ、べたつかず、皮膚へのなじみが良く、違和感のない優れた皮膚外用剤である。
【実施例2】
【0054】
<皮膚外用剤>
配合成分 (質量%)
(1)プルラン(重量平均分子量200,000、
商品名『化粧品用プルラン』、株式会社林原販売) 4.0
(2)(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー 0.05
(3)ポリオキシプロピレングリセリルエーテル 0.3
(4)アスコルビン酸2−グルコシド(商品名『AA2G』、
株式会社林原販売) 1.0
(5)1,3−ブタンジオール 0.5
(6)クエン酸 適量
(7)クエン酸ナトリウム 適量
(8)水酸化ナトリウム 適量
(9)精製水 残量
【0055】
本品は、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることができ、且つ、べたつかず、皮膚へのなじみが良く、違和感のない優れた皮膚外用剤である。
【実施例3】
【0056】
<皮膚外用剤>
配合成分 (質量%)
(1)プルラン(重量平均分子量200,000、
商品名『化粧品用プルラン』、株式会社林原販売) 2.0
(2)(アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22))
コポリマー 0.02
(3)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリル
エーテル(24E.O.)(24P.O.) 0.3
(4)アスコルビン酸2−グルコシド(商品名『AA2G』、
株式会社林原販売) 1.0
(5)1,3−プロパンジオール 0.5
(6)スクワラン 0.5
(7)クエン酸 適量
(8)クエン酸ナトリウム 適量
(9)水酸化ナトリウム 適量
(10)精製水 残量
【0057】
本品は、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることができ、且つ、べたつかず、皮膚へのなじみが良く、違和感のない優れた皮膚外用剤である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したとおり、本発明によれば、皮膚を引締め、皮膚のたるみを引上げることができ、且つ、べたつかず、皮膚へのなじみが良く、違和感がないため、皮膚のたるみや小じわ等を長時間にわたって改善することができる。本発明は、斯界に多大の貢献をする誠に意義のある発明である。
【符号の説明】
【0059】
1:顔の中心線に平行な右目の目尻を通るライン
2:顔の中心線に平行な右目の目頭を通るライン
3:顔の中心線に平行な左目の目頭を通るライン
4:顔の中心線に平行な左目の目尻を通るライン
図1