特許第6773663号(P6773663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773663被搬送部をコーティングするための方法及びコーティング設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773663
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】被搬送部をコーティングするための方法及びコーティング設備
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20201012BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20201012BHJP
   B05B 12/08 20060101ALI20201012BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B05D1/02 A
   B05B13/04
   B05B12/08
   B05D3/00 D
   B05D3/00 C
   B05D1/02 H
   B05D1/02 B
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-542828(P2017-542828)
(86)(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公表番号】特表2018-506427(P2018-506427A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】EP2016053227
(87)【国際公開番号】WO2016131805
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】1551330
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516299279
【氏名又は名称】エクセル インダストリー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100210686
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】セドリック ル ストラ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ プロバナズ
(72)【発明者】
【氏名】エリク プリュ
(72)【発明者】
【氏名】エルベ ブロシエ−サンドル
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/175392(WO,A1)
【文献】 特開昭56−158168(JP,A)
【文献】 特開平11−165121(JP,A)
【文献】 特表2006−528065(JP,A)
【文献】 特開昭62−054115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B12/00−12/14
13/00−13/06
B05D 1/00−7/26
G01B11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤ(12)により移動する構成片(13;16)上にコーティング用製品を適用するためのコーティング適用方法であり、前記コンベヤの移動軸(X12)に対して傾いているか又は垂直である平面内で可動である少なくとも1つの噴霧器(42.1〜42.8、62.1〜62.8)が、前記コンベヤ(12)に沿って配置された方法であって、以下:
a)固定座標系(X12、Y12、Z12)において、前記構成片の長さにわたって分布した前記構成片の1つ又は複数の外側輪郭線(L1、L2)の点(A1、B1、C1、A2、B2、C2)の座標を決定することと、
b)各噴霧器に、噴霧領域(範囲)内にあると判明した各外側輪郭線の点を割り当てることと、
c)各外側輪郭線について、各噴霧器に割り当てられた点の中で前記噴霧器に最も近い点(A1、A2、B1、B2)を特定することと、
d)前記噴霧器の軸を通り、かつ、前記コンベヤの移動軸(X12)と平行な平面内で、各噴霧器について、工程c)で特定された全ての最も近い点の正射影を通る追跡線(L3、L4)を決定することと、
e)前記追跡線(L3、L4)の点に基づいて、前記構成片の外側輪郭に従って各噴霧器の適用距離を自動的にかつ独立して調整するように、各噴霧器についての設定点の軌道(L100)を構築することと
からなる自動化工程のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コンベヤ(12)に沿って各構成片の位置を測定することからなる追加の工程を含むこと、及び、工程a)が、前記構成片の長さにわたって一定の間隔で分布した複数の外側輪郭線(L1、L2)の点(A1、B1、C1、A2、B2、C2)の座標を決定することからなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構成片が噴霧領域内にあると判明した場合にのみ、各噴霧器(42.1〜42.8、62.1〜62.8)を制御して、コーティング用製品を噴霧することからなる追加の工程を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各追跡線(L3、L4)に、仮想の測定点が各側でデジタル処理により延ばされて、前記構成片の前方面(E1)及び後方面(E2)上に製品を噴霧することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記前方面(E1)又は前記後方面(E2)が前記コンベヤの軸と交差している場合は、前記仮想の測定点が前記コンベヤの軸(X12)上に位置し、前記前方面又は前記後方面が前記コンベヤの軸と交差していない場合は、前記仮想の測定点が、前記追跡線(L3、L4)の最初又は最後の点の延長線上に(最初又は最後の点と一致して)軸方向に位置することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記仮想の測定点が、前記コンベヤの軸(X12)と平行である区分にわたって分布し、前記区分の長さが、前記噴霧器(42.1〜42.8、62.1〜62.8)の噴霧領域の幅に等しいことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程e)が、
f)前記追跡線の各点に、半楕円形状の変位曲線を割り当てる工程であって、前記噴霧器の公称適用距離が、前記変位曲線の主軸の半分と一致している工程と、
g)工程f)で割り当てられた各変位曲線の点により形成された点の群の包絡面の線を構築することで、前記設定点の軌道(L100)を決定する工程と
からなるサブ工程を含むことを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記噴霧器の少なくとも1つが、変位面内で鉛直及び水平の複合移動を行うことができること、適用領域内で前記噴霧器に最も近い点が、前記噴霧器の鉛直移動の経路にわたって更新されること、並びに、前駆噴霧器の適用距離が、前記最も近い点の座標に基づいて自動的に調整されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複合移動を行うことができる前記噴霧器の前記軌道を計算するための計算工程が、
m)長さ方向における両側の仮想の測定点により、全ての前記外側輪郭線で形成された外側輪郭面をデジタル処理で延ばす工程と、
n)前記外側輪郭線に属するそれぞれの実際の測定点と、それぞれの仮想の測定点とに、半楕円形状の変位曲線を割り当てる工程であって、前記噴霧器の公称適用距離が、前記変位曲線の主軸の半分と一致している工程と、
p)工程n)で割り当てられた各変位曲線の点により形成された点の群の周辺包絡面を決定する工程と、
q)この周辺包絡面の内部に設定点の軌道を構築する工程と
からなるサブ工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各噴霧器(42.1〜42.8、62.1〜62.8)が軌道(L100)を辿ることができるかどうかを確認すること;及び、それをできない場合は、前記設定点の軌道を最も良く辿る新規の軌道(L’100)を構築するか、又は前記噴霧器を最大限に後退させて、コーティングされるべき前記構成片と前記噴霧器の間の衝突を避けることからなる追加の工程を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
コンベヤ(12)により移動する構成片(13、16)上にコーティング用製品を適用するためのコーティング適用設備(1)であり、前記コンベヤの移動軸(X12)に対して傾いているか又は垂直である平面内で可動である少なくとも1つの噴霧器(42.1〜42.8、62.1〜62.8)が、前記コンベヤに沿って配置された設備であって、以下の手段:
固定座標系(X12、Y12、Z12)において、前記構成片の長さにわたって分布した前記構成片の1つ又は複数の外側輪郭線(L1、L2)の点(A1、B1、C1、A2、B2、C2)の座標を決定するための第1手段(8、10)と、
各噴霧器に、噴霧領域内にある各外側輪郭線の点を割り当てるための第2手段(100)と、
各外側輪郭線について、各噴霧器に割り当てられた点の中で前記噴霧器に最も近い点を特定するための第3手段(100)と、
前記噴霧器の軸を通り、かつ、前記コンベヤの移動軸(X12)と平行な平面内で、各噴霧器について、全ての最も近い点の正射影を通る追跡線(L3、L4)を決定するための第4手段(100)と、
前記追跡線(L3、L4)の点に基づいて、前記構成片の外側輪郭に従って各噴霧器の適用距離を自動的にかつ独立して調整するように、各噴霧器についての設定点の軌道(L100)を構築するための第5手段(100)と
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする設備。
【請求項12】
前記コンベヤ(12)の一方の側に配置された噴霧器の列(40、42、60、62)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の設備。
【請求項13】
前記第1手段が、1つ又は複数の噴霧器の上流に、前記コンベヤ(12)の一方の側に配置されたセンサ(8、10)を含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の設備。
【請求項14】
前記コンベヤ(12)の各側に配置された少なくとも2列(40、42、60、62)の噴霧器を含み、これらの列が、好ましくは、対(4、6)になって配置され、各対の噴霧器の列が並んで配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の設備。
【請求項15】
前記第1手段が、1つ又は複数の噴霧器の上流に、前記コンベヤ(12)の各側に配置され、かつ、それぞれが鉛直測定面(P8、P10)を有する2つのセンサ(8、10)を含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の設備。
【請求項16】
前記センサ(8、10)が、前記コンベヤの移動軸(X12)に沿って互いに対してオフセットされていることを特徴とする、請求項15に記載の設備。
【請求項17】
前記センサ(8、10)が、前記構成片の高さを走査するレーザービームを作り出すレーザーレーダであることを特徴とする、請求項15又は16に記載の設備。
【請求項18】
2つの鏡(M1、M2)が各センサ(8、10)の上方と下方とに配置され、これらの鏡が、前記センサのレーザービームを反射して、コーティングされるべき構成片(16)の陰領域に達するように配向(A12)されていることを特徴とする、請求項17に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤにより移動する構成片にコーティング用製品を適用するためのコーティング適用方法、及びこの方法を実施することができる、コーティング用製品を適用するためのコーティング適用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の方法において、欧州特許出願公開第0706102号明細書では、噴霧されるべき1つ又は複数の構成片が吊るされたコンベヤと、コンベヤに沿って配置された噴霧器とを含む、コーティング用製品を噴霧するための噴霧設備を開示している。設備はまた、噴霧器の適用領域内で構成片を検出するための構成部品検出システムを含む。噴霧器は、構成片の存在が適用領域内で検出された場合にのみコーティング用製品を噴霧するように、自動的に制御される。この設備は、搬送される構成片の寸法に基づいて噴霧器の適用距離が調整されない、という欠点を有する。
【0003】
文献仏国特許発明第2855081号明細書では、この技術的問題に取り組み、構成片の形状を考慮していない第1の不正確な噴霧の列を含む設備を開示している。この第1の列には、ブロック内で鉛直に可動である複数の噴霧器を有する往復動ロボットが設けられる。この第1の列は、構成片全体にわたって均一粉末又は塗料のコーティング(厚さ)を適用することができないため、設備はまた第2の列を含んでおり、その第2の列が、それぞれ、第1の列の下流又は上流に配置されるかどうかに応じて、再修正列又は事前修正列と称される。この第2の列により、最終品の質を向上させるために、構成片の困難な領域上に製品を適用する機能が与えられる。それは、塗料適用ガンを支持する複数のキャリッジを備える。これらのキャリッジは、鉛直方向に沿って及びコンベヤの移動軸に垂直な水平方向に沿って、互いに独立して可動である。高さ方向に延びた楕円形の開口が、ガンの経路のためのセル内に作られる。そのセルに入る構成片はそれぞれ所定の輪郭を有し、その所定の輪郭は、テーブル内に入力及び保存され、制御ユニット内のメモリ内に保存される。特に、構成片の長さ、幅、及び高さ、すなわち各構成片の寸法測定値の全てが既知である。次いで、第2の列のガンは、それらの各々の適用領域において正確な適用距離を得るために、予め保存された寸法測定値に基づいて設置される。
【0004】
さらに、文献欧州特許出願公開第2712680号明細書では、コーティングされるべき構成片の寸法測定値を検出するための予備検出工程を含む、コーティング用製品を適用するためのコーティング適用方法を開示している。段落[0052]で説明されるように、この方法は、その輪郭がテーブル内に予め記録された構成片上で効率的に実行される。図中に示される例において、これらの構成片は、一般的に全体が長方形の形態を有するように選択され、前方側及び/又は後方側上に1つ又は複数の凹部を含むことがある。コーティングされるべき構成片の幅は、インクリメンタルエンコーダによって決定される。構成片に形成された1つ又は複数の起こり得る凹部の深さ及び幅は、構成片の各側に配置された2つのセンサによって形成された、光学走査装置を用いて決定される。各構成片は、それらの寸法測定値に従って、テーブル内で分類される。例えば、幅が公称値の0〜25%に含まれる場合は、構成片は特定のカテゴリに分類される。テーブル内のそれらの分類に基づいて、具体的なパラメータが、コンベヤに沿って配置された噴霧器に割り当てられる。特に、これらのパラメータは、とりわけ適用距離、すなわち、塗装されるべき面と噴霧器との間の距離を含んでいる。
【0005】
文献仏国特許発明第2855081号明細書及び欧州特許出願公開第2712680号明細書で提供された2つの方法は、コンベヤ上への構成片の取付けに関する最終的な欠陥を考慮していない。それに加えて、それらは、その輪郭が予め記録され、メモリ内に保存されている構成片にのみ適用され、すなわち、それらは任意の種類の自由な形状を有する構成片に適用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より具体的には、自由な形状を有する構成片又は所定の位置にゆるく取り付けられたか若しくは固定された断片に適応するために、構成片がコンベヤに沿って前方に移動する際に、各噴霧器の適用距離を自動的にかつ独立して調整することを可能とする、コーティング用製品を適用するためのコーティング適用方法を提供することによって、本発明がこれらの欠点を改善することを目的とする。したがって、その結果として、正確な適用距離及び良質な最終品が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、コンベヤにより移動する構成片上にコーティング用製品を適用するためのコーティング適用方法であって、コンベヤの移動軸に対して傾いているか又は垂直である平面内で可動である少なくとも1つの噴霧器が、コンベヤに沿って配置された方法に関する。この方法は、以下:
(a)固定座標系において、構成片の長さにわたって分布した構成片の1つ又は複数の外側輪郭線の点の座標を決定することと、
(b)各噴霧器に、その噴霧領域(範囲)内にあると判明した各外側輪郭線の点を割り当てることと、
(c)各外側輪郭線について、各噴霧器に割り当てられた点の中で噴霧器に最も近い点を特定することと、
(d)噴霧器の軸を通り、かつ、コンベヤの移動軸と平行な平面内で、各噴霧器について、工程c)で特定された全ての最も近い点の正射影を通る追跡線を決定することと、
(e)追跡線の点に基づいて、構成片の外側輪郭に従って各噴霧器の適用距離を自動的にかつ独立して調整するように、各噴霧器についての設定点の軌道を構築することと
からなる自動化方法のうち少なくとも1つを含む。
【0008】
本発明のおかげで、搬送される構成片の寸法に基づいて、設定点の軌道が各噴霧器について構築される。搬送される構成片の寸法は、固定座標系において、構成片の長さにわたって分布したコーティングされるべき構成片の複数の外側輪郭線の点の座標を計算することで決定される。各外側輪郭線は複数のセクションに分割され、それぞれが、噴霧器の適用領域内に属する外側輪郭線の点に対応する。噴霧器に最も近い各セクションの点が特定された後に、対応する噴霧器に設定点の軌道が割り当てられることに基づいて、噴霧器に最も近い点を通る追跡線を構築することができる。したがって、この方法は、自由な形状を有するか又はコンベヤにゆるく取り付けられた構成片を考慮に入れている。
【0009】
有利であるが必須でない本発明の態様によれば、コーティング用製品を適用するためのそのようなコーティング適用方法は、任意の技術的に実行可能な組み合わせに関連して考慮される、以下の特有の特徴のうち1つ又は複数を組み込むことができる。
【0010】
方法は、コンベヤに沿って各構成片の位置を測定することからなる追加の工程を含み、それに対して、工程a)は、構成片の長さにわたって一定の間隔で分布した複数の外側輪郭線の点の座標を決定することからなる。
【0011】
方法は、構成片がその噴霧領域内にあると判明した場合にのみ、各噴霧器を制御して、コーティング用製品を噴霧することからなる追加の工程を含む。
【0012】
各追跡線に、仮想の測定点が各側でデジタル処理により延ばされて、構成片の前方面及び後方面上に製品を噴霧する。
【0013】
前方面又は後方面がコンベヤの軸と交差している場合は、仮想の測定点がコンベヤの軸上に位置し、前方面又は後方面がコンベヤの軸と交差していない場合は、仮想の測定点が、追跡線の最初又は最後の点の延長線上に(追跡線の最初又は最後の点と一致して)軸方向に位置する。
【0014】
仮想の測定点は、コンベヤの軸と平行である区分にわたって分布し、区分の長さは噴霧器の噴霧範囲の幅に等しい。
【0015】
工程e)は、
f)追跡線の各点に、半楕円形状の変位曲線を割り当てる工程であって、噴霧器の公称適用距離が変位曲線の主軸の半分と一致している工程と、
g)工程f)で割り当てられた各変位曲線の点で形成された点の群の包絡面の線を構築することで、設定点の軌道を決定する工程と
からなるサブ工程を含む。
【0016】
方法は、各噴霧器がその軌道を辿ることができるかどうかを確認すること;及び、それをできない場合は、設定点の軌道を最も良く辿る新規の軌道を構築するか、又は噴霧器を最大限に後退させて、コーティングされるべき構成片と噴霧器との間の衝突を避けることからなる追加の工程を含む。
【0017】
噴霧器の少なくとも1つは、その変位面内で鉛直及び水平の複合移動を行うことができ、その適用領域内で噴霧器に最も近い点が、噴霧器の鉛直移動の経路にわたって更新され、噴霧器の適用距離が、最も近い点の座標に基づいて自動的に調整される。
【0018】
複合移動を行うことができる噴霧器の軌道を計算するための計算工程は、
m)長さ方向における両側の仮想の測定点により、全ての外側輪郭線で形成された外側輪郭面をデジタル処理で延ばす工程と、
n)外側輪郭線に属するそれぞれの実際の測定点と、それぞれの仮想の測定点とに、半楕円形状の変位曲線を割り当てる工程であって、噴霧器の公称適用距離が変位曲線の主軸の半分と一致している工程と、
p)工程n)で割り当てられた各変位曲線の点により形成された点の群の周辺包絡面を決定する工程と、
q)この周辺包絡面の内部に設定点の軌道を構築する工程と
からなるサブ工程を含む。
【0019】
工程a)において、各外側輪郭線は、異なる実際の測定点を接合した直線区分により形成されており、そして、工程b)において、1つ又は複数の外側輪郭線が、直線区分と、各噴霧器の噴霧領域の上限及び/又は下限との間の交差部で、1つ又は2つの人工的な測定点により補完される点で特徴づけられる。
【0020】
本発明はまた、コンベヤにより移動する構成片上にコーティング用製品を適用するためのコーティング適用設備であって、コンベヤの移動軸に対して傾いているか又は垂直である平面内で可動である少なくとも1つの噴霧器が、コンベヤに沿って配置された設備に関する。この設備は、以下の手段:
固定座標系において、構成片の長さにわたって分布した構成片の1つ又は複数の外側輪郭線の点の座標を決定するための第1手段と、
各噴霧器に、その噴霧領域内にある各外側輪郭線の点を割り当てるための第2手段と、
各外側輪郭線について、各噴霧器に割り当てられた点の中で噴霧器に最も近い点を特定するための第3手段と、
噴霧器の軸を通り、かつ、コンベヤの移動軸と平行な平面内で、各噴霧器について、全ての最も近い点の正射影を通る追跡線を決定するための第4手段と、
追跡線の点に基づいて、構成片の外側輪郭に従って各噴霧器の適用距離を自動的にかつ独立して調整するように、各噴霧器についての設定点の軌道を構築するための第5手段と
のうち少なくとも1つを含む。
【0021】
有利であるが必須でない本発明の態様によれば、本発明に係るコーティング用製品を適用するためのそのようなコーティング適用設備は、任意の技術的に実行可能な組み合わせに関連して考慮される、以下の特有の特徴のうち1つ又は複数を組み込むことができる。
【0022】
設備は、コンベヤの一方の側に配置された噴霧器の列を含む。
【0023】
第1手段は、1つ又は複数の噴霧器の上流に、コンベヤの一方の側に配置されたセンサを含む。
【0024】
設備は、コンベヤの各側に配置された少なくとも2列の噴霧器を含み、これらの列は、好ましくは、対となって配置されており、各対の噴霧器の列は並んで配置される。
【0025】
第1手段は、1つ又は複数の噴霧器の上流に、コンベヤの各側上に配置され、それぞれが鉛直な測定面を有する2つのセンサを含む。
【0026】
センサは、コンベヤの移動軸に沿って互いに対してオフセットされる。
【0027】
センサは、構成片の高さを走査するレーザービームを作り出すレーザーレーダである。
【0028】
2つの鏡が各センサの上方と下方とに配置され、これらの鏡は、センサのレーザービームを反射して、コーティングされるべき構成片の陰領域に達するように配向される。
【0029】
例のために単に提供され、添付図面で参照される、その原則に従ってコーティング用製品を適用するためのコーティング適用方法の2つの実施形態に沿った説明を考慮することで、本発明及びその他の利点がより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係るコーティング用製品を適用するためのコーティング適用設備の上方からの図である。
図2図1で示される設備に属するコンベヤにより移動する構成片の斜視図である。
図3図1の矢印IIIの方向における、図1で示される設備に属するセルの入口の前方からの図である。
図4】コンベヤ上への構成片の取付けについての様々な構成を、上面図で図示している図である。
図5】コンベヤ上への構成片の取付けについての様々な構成を、上面図で図示している図である。
図6】コンベヤ上への構成片の取付けについての様々な構成を、上面図で図示している図である。
図7】構成片に属する測定点に関する、図1で示される設備の噴霧器における、その噴霧軸に沿った経路を示している。
図8】構成片に属する1組の測定点に関する、図1で示される設備の噴霧器における、その噴霧軸に沿った経路を示している。
図9】コーティングされるべき構成片との衝突を防ぐための、図1で示される設備の噴霧器の軌道の変更を示している図である。
図10】構成片の寸法の検出における陰領域の処理を示している図である。
図11】コーティング用製品を適用するためのコーティング適用設備の第2実施形態を示しており、2つの鏡が、設備に属する各レーザーセンサの上方及び下方のそれぞれに配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、コーティング用製品を適用するためのコーティング適用設備1を示す。設備1は、コンベヤ12により移動する構成片上に製品を適用するために構成される。図2で視認することができるように、コンベヤ12は、コーティングされるべき1つ又は複数の構成片13が吊るされたオーバーヘッドコンベヤである。X12は、コンベヤ12の移動軸を示し、F1はコンベヤ12の移動方向を示す。
【0032】
以下の段落での説明において、長手軸、すなわち、構成片の長さ方向に沿って延びる方向は、軸X12と平行である。
【0033】
設備1は、コンベヤ12の貫通経路のための長手開口o2を上部で区切ったセル2を含む。セル2は、噴霧器の貫通経路について示されていない複数の側面開口を備える。
【0034】
本明細書において、「噴霧器」という用語は、広い意味で解釈されるべきである。実際には、図で示される例において、噴霧器は液状塗料のための噴霧器であるが、本発明はまた、特に、粉末噴霧器に適用可能である。したがって、コーティング用製品は、液体又は粉末形態の塗料、ワニス又はさらにプライマーであることができる。
【0035】
例において、噴霧器の鉛直列の2つの対4及び6は、セル2の各側に配置される。対4の側に配置された噴霧器は「左側」噴霧器であり、一方で、それと向かい合うように対6の側に配置された噴霧器は「右側」噴霧器である。
【0036】
対4は、2列40及び42の噴霧器を含み、各列は、高さ方向に規則的に均一に分布した8個の噴霧器を含む。同様に、反対側の対6は、鉛直の2列60及び62の噴霧器を含み、各列が、一定間隔で高さ方向に分布した8個の噴霧器を含む。2列40及び42の噴霧器、並びに2列60及び62の噴霧器は、並んで配置される。列42の8個の噴霧器は、最上の噴霧器から最下の噴霧器まで順番に、42.1〜42.8と番号付けされている。同様に、反対側の列62の8個の噴霧器は、最上の噴霧器から最下の噴霧器まで順番に、62.1〜62.8と番号付けされている。
【0037】
列40及び42の噴霧器、並びに列60及び62の噴霧器は、噴霧の際の干渉を最小限にするように、同一水平面内で互いに向き合うように配置されない。これは、コーティング用製品が帯電している場合に特に重要である。
【0038】
各噴霧器は、製品が噴霧される噴霧軸を規定する。図において示される例において、各噴霧器の噴霧軸は水平であり、コンベヤ12の移動軸X12に垂直である。図2において、噴霧器62.1及び62.2の噴霧軸が、参照番号Y62.1及びY62.2で示される。より一般的には、Y62.iは噴霧器62.iの噴霧軸を示し、iは1〜8に含まれる。
【0039】
各噴霧器は、コンベヤ12の移動軸X12に垂直である平面内で、特にその軸に沿って可動である。実際には、各噴霧器は、図示されていない可動キャリッジ上に設置され、それは図示されていないレール内でスライドすることができる。キャリッジは、例えば、電気モータにより並進運動することができる。各可動キャリッジは、図示されていない電気制御ユニットにより移動するように制御される。
【0040】
2つのセンサ8及び10は、噴霧器のセル2の上流に配置され、噴霧器のセル2の外部に配置される。これらの2つのセンサ8及び10は、コンベヤ12の各側上に、それぞれ右側と左側に配置され、セル2に入る構成片の寸法を測定するために設けられる。センサ8及び10は、「レーダレーザー」、「スキャナレーザー」又はさらに「ライダー」として知られているレーザーセンサである。それらは、走査することにより機能し、すなわち、それらは、それぞれ参照番号P8及びP10で示される鉛直面内で、およそ270°の角度にわたって移動するレーザービームを作り出す。これらのレーザーセンサにより、レーザービームが標的とする対象物の点とセンサとの間の距離を測定することが可能となる。したがって、これらのセンサにより、固定座標系において、コーティングされるべき構成片13とセンサの平面との交差部に属する一連の点の座標を決定する能力が提供される。この一連の点は、構成片13の外側輪郭線を形成する。次いで、この外側輪郭線は、鉛直面内に含まれる。構成片13がコンベヤ12の軸X12に沿って移動した場合、各センサは、実際に、構成片の長さにわたって一定の間隔で分布した複数の外側輪郭線を測定する。この間隔は、コンベヤ12の速度と、センサ8又は10の走査周波数と、軸X12に垂直である鉛直面に対するセンサの測定面の傾斜角度とに依存する。
【0041】
例において、平面P8及びP10は、それぞれ、コンベヤ12の移動軸X12に垂直である鉛直面V8又はV10に対して角度A8及びA10で傾斜している。原則として、センサにより測定された壁の厚さは、その測定面が軸X12に垂直である平面に対して大きな角度で傾いている場合は、より薄くなる。
【0042】
センサ8及び10は、コンベヤ12の速度を推定することができるように、軸X12に沿って互いに対してオフセットされる。コンベヤ12の速度はまた、図中に示されていない適切なセンサによって直接測定することができる。
【0043】
図3に視認することができるように、センサ8及び10は、陰領域、すなわち、構成片の形状のためにセンサのレーザービームがアクセスできない領域を最小化するために、セル2の高さに対して中間の高さに位置する。これらの陰領域は、実際には、構成片自体によって隠された領域である。
【0044】
設備1はまた、電気制御ユニット(ECU)100を含み、それは図3に概略的に示される。ECU100は、センサ8及び10から生じた測定信号を受信するように構成される。これらの信号は、特に、固定座標系における各外側輪郭線の点の座標を含む。図を明確にするために、ECU100は、図3の2つの噴霧器、それぞれ62.7及び62.8にのみ接続される。しかしながら、ECU100は、噴霧器の列40、42、60及び62の各噴霧器を制御しており、すなわち、それは各噴霧器に設定点の信号を送信することができる。これらの設定点の信号は、その軸に沿って特定の位置に到達するために、各噴霧器に対してもたらされるべき移動の値に相当する。
【0045】
さらに、各噴霧器は、適用領域、又はコーティング用製品を噴霧することができる領域に相当する適用領域を有する。この領域は、一般的に、全体で平行六面体の体積に一致する。図3では、噴霧器42.2及び62.2について、それぞれ適用領域Z42.2及びZ62.2が示される。列42及び62の噴霧器は、互いに向き合うように配置される。したがって、領域Z42.2及びZ62.2は一緒にされる。
【0046】
以下で本明細書において説明されるのは、噴霧設備1によりコーティング用製品を適用するためのコーティング適用方法である。この方法は、複数の自動化工程を含み、その中に、セル2内に入る各構成片13の寸法を評価することからなる第1工程を含む。これを行うために、センサ8及び10は、構成片の各側上で、すなわちコンベヤ12の右側及び左側で、1つ又は複数の外側輪郭線を決定する。したがって、構成片の完全な外側輪郭が得られる。構成片がコンベヤ12の軸X12に沿って前方に移動する場合、センサ8及び10により測定される構成片の外側輪郭は変化することがある。センサ8及び10の各々がその測定面P8又はP10内に含まれる外側輪郭線の点の座標を測定するため、この寸法の変化は、センサ8及び10により検出可能であり、これは常に瞬時に起こる。したがって、この第1工程は、固定座標系において、構成片13の長さにわたって一定の間隔で分布した1つ又は複数の外側輪郭線の点の座標を決定することからなる。外側輪郭線の数は、センサ8又は10の周波数と、コンベヤ12が前方に移動する速度と、構成片の長さとに依存する。本明細書において、固定座標系とは、コンベヤの移動軸X12と、それに垂直な水平軸Y12と、鉛直軸Z12とにより形成されるデカルト座標系である。
【0047】
図2で示される例において、搬送される構成片13は、ダンプトラックのボディである。このダンプトラックのボディ13は、鉛直面に対して約10°で傾斜するように、コンベヤ12上にゆるく取り付けられる。特に、文献仏国特許発明第2855081号明細書及び欧州特許出願公開第2712680号明細書で説明される2つの方法は、この構成において正確な適用距離を得るための手段を提供していない。
【0048】
この図において、2つの外側輪郭線L1及びL2が示される。ダンプトラックのボディは、図を明確にするために図2で部分的にのみ示される。
【0049】
次いで、各外側輪郭線は、噴霧器の配置に基づいて、複数のセクションに分割される。実際には、鉛直軸上の噴霧器の位置、並びに、それらの適用領域又は噴霧領域の幅が既知である。したがって、噴霧器の適用領域内で外側輪郭線の各点が判明される、特定の噴霧器を決定することができる。したがって、同一の適用領域内に位置した点は共に集められ、外側輪郭線のセクションを共に形成する。外側輪郭線の各セクションは1つの噴霧器に割り当てられる。この割り当て工程は、ECU100によって行われる。
【0050】
例えば、図2の外側輪郭線L1の場合において、点C1とC2との間で区切られた第1セクションが噴霧器62.1に割り当てられ、点C2とC3との間で区切られたセクションが、下に配置された噴霧器62.2に割り当てられる。
【0051】
次に、方法は、各噴霧器に割り当てられた点の中で、それにいちばん近い点を特定することからなる工程を含む。この工程は、割り当てられた各点と噴霧器との間の、軸Y12と平行な距離を計算することで行われる。したがって、軸Y12に沿った輪郭線の点の座標のみが考慮される。この計算工程はまた、ECU100によって行われる。
【0052】
図2の例において、噴霧器62.iに最も近い点は最大軸Y12に沿った座標を有する点と一致しており、iは1〜8に含まれる。この座標は、噴霧器62.1については点A1であり、噴霧器62.2については点B1である。同一の操作が、構成片の各外側輪郭線に対して行われる。したがって、線L2の点A2は噴霧器62.1に最も近い点であり、線L2の点B2は噴霧器62.2に最も近い点である。
【0053】
したがって、各外側輪郭線の各セクションは、対応する噴霧器に最も近いと特定された点を含む。したがって、各噴霧器について、各外側輪郭線の最も近い点を通る線を決定することができる。図2に示される例において、最も近い点A1及びA2又はB1及びB2は、同一の高度に置かれる。しかしながら、最も近い点が異なる高度に置かれた場合を考慮するために、最も近いと特定された各点は、関連する噴霧器の軸を含む水平面に直角に、かつ、コンベヤの軸X12に平行に投影される。追跡線は各噴霧器に割り当てられる。この追跡線は、各外側輪郭線の噴霧器に最も近いと特定された点の正射影を通る。したがって、追跡線は、それぞれが水平面内に含まれる。したがって、それらは、高さ方向に延びる外側輪郭線とは異なり、コーティングされるべき構成片の長さ方向に延びる。
【0054】
図2に図示されるダンプトラックのボディの場合において、点A1及びA2を通る追跡線L3が噴霧器62.1に割り当てられ、点B1及びB2を通る追跡線L4が噴霧器62.2に割り当てられる。各噴霧器に割り当てられた追跡線により、構成片13がコンベヤ12に沿って移動した場合に、各噴霧器が辿るべき軌道を自動的にプログラムすることが可能となる。各噴霧器が辿るべき軌道は、構成片13がコンベヤ上で前方に進むにつれて、各噴霧器が次第に正確な適用距離を保持することを確実にするように、ECU100によりプログラムされる。
【0055】
次いで、各噴霧器の追跡線は、構成片の軸端部面、すなわち、一般的にコンベヤ12の軸に垂直である面をコーティングすることが可能となる「仮想の」測定点により補完される。これらの仮想の測定点は、構成片13の各側上で各追跡線を延ばす。これらは、実際の測定点が如何なる構成片に属さないとしても、実際の測定点として噴霧器により処理される。しかしながら、これらの仮想の測定点は、噴霧器により構成片に属するものとみなされる。それらは、異なる状況に基づいて異なる方法で配置される。
【0056】
図4〜6においては、コンベヤ12に取り付けられた構成片13が考慮されており、上方からの図で示されている。それに加えて、図4〜6及び8において、仮想の測定点は三角形により示され、一方、センサ8及び10により測定された実際の測定点はそれぞれマル及びバツで示されている。マルは右側噴霧器に割り当てられた実際の測定点に対応し、一方、バツは左側噴霧器に割り当てられた実際の測定点に対応する。
【0057】
前方又は上流とは、コンベヤ12の方向に、すなわち矢印F1の方向に進む方向を言い表し、後方又は下流とは、コンベヤ12の移動方向F1と反対側の方向を言い表す。
【0058】
図4の構成において、構成片13は、その後方端部面E2がコンベヤの軸X12と交差するように取り付けられる。仮想の測定点は実際の測定点の下流に加えられ、最良の方法で後方端部面E2をコーティングする。これらの仮想の測定点は、それぞれがコンベヤの軸X12上に位置する。それらは追跡線を後方に延ばす。仮想の測定点はまた実際の測定点の上流に加えられ、最良の方法で前方端部面E1をコーティングする。前方端部面E1はコンベヤの軸X12と交差していない。したがって、下流の仮想の測定点は、実際の測定点の延長軸上に、すなわち例におけるマルの延長線上にそれぞれが配置される。例において、右側噴霧器の追跡線のみが仮想の測定点により補完されている。しかしながら、仮想の測定点をまた、左側噴霧器の追跡線に加えることができる。
【0059】
図5の構成において、構成片13は、端部面E1及びE2がそれぞれコンベヤの軸X12と交差するように取り付けられ、したがって、右側噴霧器及び/又は左側噴霧器に割り当てられた追跡線を延ばす仮想の測定点が、コンベヤの軸X12上に全て配置される。
【0060】
図6に示される構成において、後方端部面E2はコンベヤの軸X12に対して偏心しており、前方端部面E1はコンベヤの軸X12と交差している。追跡線の上流に加えられた仮想の測定点は、コンベヤの軸X12上に位置し、下流で追跡線を補完する仮想の測定点は、実際の測定点の延長線上(実際の測定点と一致して)位置する。こうすることより、最も効果的な方法で、端部面E1及びE2上にコーティング用製品を噴霧することが可能となる。
【0061】
したがって、前方面E1又は後方面E2がコンベヤの軸と交差している場合は、仮想の測定点はコンベヤの軸X12上に位置し、前方面E1又は後方面E2がコンベヤの軸X12に対してオフセットされている場合、すなわち、この面がコンベヤの軸と交差していない場合は、仮想の測定点は、追跡線の最初又は最後の実際の測定点の延長線上に(最初又は最後の実際の測定点と一致して)軸方向に位置する。これらの仮想の測定点は、その長さが噴霧器の適用領域の幅と等しい。コンベヤの軸X12と平行である区分上に分布する。それらは、ECU100により各追跡線にデジタル処理で加えられる。
【0062】
図7で示されるのは、可動座標系から、特に、搬送される構成片に関連する可動座標系から見た、上面図における噴霧器の経路である。説明の明確性を確保するために、本明細書で選択される例は、コンベヤの軸X12と平行である軸X14に沿って移動する測定点14である。この図で視認できるように、水平面内の噴霧器の軌道は半楕円形状であり、点14の変位の間に、その軸に沿った噴霧器の位置に連続的に対応する、点P1〜P7を通る。この半楕円は、測定点14を中心に存在する。噴霧器の適用領域内に構成片が存在しない場合、この噴霧器は、それがコンベヤの軸X12上に配置された点上に噴霧すべきであるように設置される。構成片が噴霧器の適用領域内に到達した場合、この噴霧器は後退し、次いで、構成片がその噴霧領域から出た場合に半楕円形状の軌道を描くように前方に移動する。次いで、噴霧器は初期位置に戻り、噴霧器は、それがまるでコンベヤの軸X12上に配置された点上に噴霧されるように配置される。点P4は、噴霧器が測定点14と向かい合うように位置する点に対応する。点14から点P4を隔てる距離d2、すなわち、楕円の主軸の半分は、噴霧器の公称適用距離と一致する。
【0063】
噴霧器に対して位置決めした点は、追跡線の各点について半楕円形状で生成される。言い換えれば、半楕円形状の変位曲線は、追跡線の各点に割り当てられる。これは、各追跡線についての点の群を与え、それは図の明確性のために図8中に図示されていない。この点の群は、噴霧器の軸を通る水平面内に含まれる。構成片上でのコンベヤの移動の間に正確な適用距離を維持するために、噴霧域の理想の軌道は、この点の群の面の線L100に相当する。この包絡面の線L100は、コンベヤの軸X12から最も遠い各楕円の点を通る。図8において、距離d1は、軸X12と平行に測定された幅と一致し、噴霧器の適用領域及び距離d2は、噴霧器に対して望まれる適用距離と一致する。設定点の軌道L100は噴霧器についての理想の軌道であり、それは、構成片の外側輪郭に基づいて各噴霧器の適用距離を自動的にかつ独立して調整するように、対応する追跡線の点に基づいて各噴霧器について構築される。
【0064】
さらに、各噴霧器は、構成片が適用領域内、又はその噴霧領域/範囲内にあると判明した場合にのみコーティング用製品を噴霧するために、独立して制御される。これは、コンベヤ12上に構成片を置くことでECU100によって自動的に行われる。より正確には、センサ8及び10によりなされる測定はまた、コンベヤ12の軸X12に沿って各構成片を位置付けるために使用される。コンベヤ12の速度を知ることで、コーティングされるべき構成片がいつ各噴霧器の前に到達するかを正確に予測することが可能となる。したがって、ECU100はまた、各噴霧器の噴霧を選択的に中断することができる。これにより、製品を不必要に噴霧することを避けることができる。
【0065】
後退する各噴霧器に関連する制約のため、設定点の軌道L100を常に辿ることができるとは限らない。実際に、各噴霧器は、可能な限り速く後退することができない。時間tの関数としての設備1の右側噴霧器の最大変位曲線dmaxは、図9において細線で示され、図9は、横座標(x軸)の時間尺度tと、縦座標(y軸)のその軸に沿った、すなわち軸Y12と平行である軸に沿った噴霧器の移動dyとを有するグラフを示す。このグラフにおいて、マルを通る細線で示される曲線は、考えられる噴霧器についての追跡線に基づいて構築された軌道に相当し、この軌道は、実際の測定点及び仮想の測定点を有する。曲線dmaxの下にある点は、噴霧器が適用可能な時間において割り当てることができない位置に相当する。曲線dmaxの下にあって、図9内において斜線で示される領域Ziは、噴霧器が「アクセスできない」領域である。
【0066】
したがって、方法は、衝突を避けるために、各噴霧器がその軌道L100を辿ることができるかどうかを確認することからなる工程を含む。このために、方法は、各噴霧器がその「安全」の位置に達するための必要な時間を計算することを提供する。この安全な位置は、噴霧器がセル2の外部にある、又はコンベヤの軸X12から少なくとも最も遠くに離れていると判明した最大離脱位置に相当する。したがって、搬送される構成片に衝突するリスクは存在しない。方法はまた、この離脱時間の間に搬送された1つ又は複数の構成片が進んだ距離Atを計算することを提供する。このように、各噴霧器に先行する距離Atにわたって1つ又は複数の構成片を監視することで、構成片が噴霧器の変位能力及び噴霧器との衝突が発生するリスクに対して到着するのが早すぎるかどうかを検出することが可能となる。
【0067】
コーティングされるべき構成片の形状が、包絡線L100、すなわち噴霧器が辿るべき理想の軌道が制限領域Ziを通る場合は、噴霧器は安全部にそれ自体を移動して、すなわち、それはコンベヤ12から吊るされた対象物との衝突を避けるように最大限に後退する。実際には、この後退は、構成片の経路より先にもたらされる。
【0068】
しかしながら、包絡線L100が制限領域Ziを通らないが、最大変位曲線dmaxの1つ又は複数の点の近くを単に通る場合、それ自体を安全部に移動して噴霧を続けることなく、衝突を避けるように噴霧器の軌道を適応することが可能となる。この新規の軌道は、図9において太線で示される。それは参照番号L’100で示される。より正確には、最大変位曲線dmaxと包絡線L100との間の交差部Eの点を考えた場合、変更された軌道L’100は、まず最大変位曲線dmaxに沿って辿り、次いで、点Eに到達した後に軌道L100を再び通る。
【0069】
したがって、噴霧器は構成片と衝突せず、少なくとも軌道の第2部分にわたって、すなわち、臨界点Eで始まる部分にわたって正確な適用距離を維持する。言い換えると、軌道L’100は、理想の追跡線L100を最も適切に辿る。
【0070】
図10に図示される構成片16の例において、構成片16は、構成片のいくらかの領域にセンサ8又は10のレーザービームがアクセスすることができないような形状を有する。これらの領域は、一般的に陰領域と言い表される。本明細書において、それは、構成片16の特定部分を隠す棚状部18であり、この隠された体積は図10において斜線で示される。この場合において、外側輪郭線は、センサが距離を測定することができる連続点の間に直線区分を描くことで人工的に補完される。したがって、これらの点は、図10の点G1及びG3に相当する。iが2〜7に含まれる噴霧器42.iに割り当てられた外側輪郭線の点を決定するために、点G1とG3の間で人工的に描かれた直線区分と、図10で破線により長方形で示されている噴霧器42.iの適用領域の下側境界との間の交差部をもたらすことが必要である。これらの2つの線の間の交差部は、点G2を与える。したがって、G2を「人工的な」測定点とみなすことができる。G4及びG5は、外側輪郭線の2つの点を示す。G5は噴霧器42.1の適用領域の上側境界との外側輪郭線の交差部に位置する。したがって、噴霧器42.iに割り当てられた外側輪郭線のセクションは点G2とG5との間で延びる。同一の操作を、考えられる噴霧器の噴霧領域の上側境界上の人工的な測定点を決定するために行うことができる。
【0071】
陰領域の複雑な処理を克服するために、図11に示されるように、レーザーセンサ8及び/又は10の上方及び下方にそれぞれ配置された2つの鏡M1及びM2を使用して、1つ又は複数のセンサから出た光線の一部を反射して、特定の形状を有する構成片16の任意の起こり得る陰領域に達することができる。センサ8及び10は、実際に、鉛直面において270°に等しい角度部にわたってレーザービームを発射することができる。鏡M1及びM2は、水平面Hに対してわずかに傾いている。より正確には、各鏡M1又はM2は、水平面Hに対して、20°〜70°に含まれる角度A12、好ましくは45°の角度A12で傾いている。それに加えて、鏡M1及びM2は、それらが互いに向かい合うように、すなわち、それらがコーティングされるべき構成片16の方向において上方向及び下方向に向かい合うように各々配向されるように、水平面Hに対して傾いている。したがって、鏡M1及びM2は、陰領域に向かう方向にレーザーセンサの光線が反射されるように配向される。センサ10と、鏡M1及びM2との間の距離、並びに鏡の傾斜角を知ることで、軸Y12に平行に測定される、外側輪郭線の各点とセンサ10との間の距離をそこから推定することが可能となる。したがって、この鏡の配置により、上で本明細書において説明した影領域の処理のためのプロセスを取り除くことが可能となる。
【0072】
示されていない変形形態により、別のタイプのセンサを、超音波センサ又は光学センサ、例えばカメラとして使用することができる。
【0073】
示されていない変形形態によれば、噴霧器の少なくとも1つは、コンベヤ12の変位軸X12に直交する平面であるその変位面内で、鉛直及び水平の複合移動を行うことができる。例えば、このタイプの各噴霧器は、複数軸ロボット、特に6軸ロボット、又は高さ方向において前後の移動を行う往復動型ロボットのアームの端部に設置することができる。この往復動型ロボットの場合、噴霧器は、並進運動において水平に可動であるキャリッジ上に設置されたままである。ロボットが構成片全体をコーティングすることができる場合、外側輪郭線は切り取られず、外側輪郭線の全ての点が噴霧器の適用領域に属する。複数軸ロボットは、それぞれが関節アームを含み、高さ方向において前後の移動を行い、深さ方向に、すなわち軸Y12と平行に軌道を辿る。
【0074】
これらのロボットは、コンベヤ12の速度よりも極めて早い移動速度、例えば、1m/秒のオーダーの速度を有し、一方でコンベヤ12の速度は、例えば1m/分である。その適用領域内で噴霧器にもっと近い点は、コンベヤ上の構成片の前方への移動と、ロボットによる噴霧器の鉛直変位との全てに沿って、断続的に更新される。噴霧器の適用距離は、最も近い点の座標に基づいて自動的に調整される。この場合において、追跡線は、高さ方向の前後走行に対応する線と一致する。さらに、水平及び鉛直の複合移動を行うことができる噴霧器の設定点の軌道は、以下の方法で計算される。外側輪郭線の全てにより形成される外側輪郭面が規定される。この面は、長さ方向における両側上の仮想の測定点によりデジタル処理で延ばされる。次いで、半楕円形状の変位曲線は、外側輪郭線に属するそれぞれの実際の測定点と、それぞれの仮想の測定点とに割り当てられ、噴霧器の公称適用距離は、変位曲線の主軸の半分に相当する。次いで、割り当てられた各変位曲線の点により形成された点の群の周辺包絡面が決定される。その群の点は、3次元で分布しており、そういうわけで、周辺包絡面はまた「3Dマッピング」と称される。設定点の軌道は、この包絡面の内部で構築される。
【0075】
図示されていない別の変形形態よれば、噴霧器の列は、鉛直ではないが、鉛直軸Z12に対してわずかに傾いている。
【0076】
図示されていない別の変形形態よれば、センサ8及び10の測定面は、コンベヤ12の移動軸12に垂直であり、すなわち、角度A8及びA10はゼロである。
【0077】
図示されていない別の変形形態よれば、コンベヤは、コーティングされるべき構成片が設置された床ベースのコンベヤである。
【0078】
図示されていない別の変形形態よれば、設備1は、少なくとも1つの湾曲噴霧器を含み、それは、ロボットアームの端部に設置され、搬送される構成片の上側面を製品でコーティングすることを目的とする。したがって、噴霧軸は、噴霧器の移動軸と平行でない。この噴霧器は、コンベヤ12の移動軸X12と直角であるその変位面において、水平及び鉛直の複合移動を行うことができる。噴霧器の適用距離はまた、上で本明細書において説明した方法のおかげで、その噴霧領域で最も近い点の座標に基づいて自動的に調整可能である。
【0079】
図示されていない別の変形形態よれば、1つ又は複数の噴霧器の変位面は、コンベヤの軸X12と垂直ではないが、この軸に対して傾いている。したがって、この場合において、変位面は軸X12と、好ましくは45°〜135°に含まれる角度を形成する鉛直面である。特に、これにより、搬送される構成片の長手端部に、すなわち、コンベヤの軸X12に垂直である前方面及び後方面に配置された面を効率的に塗装することが可能となる。
【0080】
上で本明細書において想定される実施形態及び変形形態の技術的特徴は、本発明の新規の実施形態を作り出すように互いに組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11