特許第6773668号(P6773668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773668
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】静電噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20201012BHJP
   B05B 5/08 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B05B5/025 A
   B05B5/08 B
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-546209(P2017-546209)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公表番号】特表2018-510766(P2018-510766A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】US2016020776
(87)【国際公開番号】WO2016141241
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2017年10月6日
(31)【優先権主張番号】62/127,494
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/059,170
(32)【優先日】2016年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515198670
【氏名又は名称】カーライル フルイド テクノロジーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド マーティン セイツ
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4331724(JP,B2)
【文献】 特開2008−049264(JP,A)
【文献】 特表平09−502647(JP,A)
【文献】 特開平11−276937(JP,A)
【文献】 特開2007−203158(JP,A)
【文献】 米国特許第03677470(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 17/06
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電噴霧システムを備えたシステムであって、
前記静電噴霧システムが、
静電工具と、
塗料及び空気流を受け入れて前記塗料を霧状にして帯電させ、前記塗料を空気流方向に噴霧するように構成されたスプレーチップアセンブリと、を備え、
前記スプレーチップアセンブリが、
第1の遠位端部の第1の外面上第1の凹部を備えた第1のエアキャップホーンであって、前記第1の凹部は前記第1のエアキャップホーンを通って延びる開口の出口を囲む、第1のエアキャップホーンと、
前記開口を通って延びるように構成され、前記第1の凹部内に配置された第1の帯電ピンと、
接地ピンと、を備え、
前記第1の帯電ピン及び前記接地ピンが前記塗料を帯電させる電界を生成するように構成される、ことを特徴とする前記システム。
【請求項2】
前記スプレーチップアセンブリが第2のエアキャップホーンを備え、前記第1のエアキャップホーン及び前記第2のエアキャップホーンがそれぞれスプレーシェイピングオリフィスを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のエアキャップホーンが、該第2のエアキャップホーンの第2の遠位端部の第2の外面上の第2の凹部と、該第2の凹部内に第2の帯電ピンと、を備えることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のエアキャップホーンと前記第2のエアキャップホーンとの間に、前記スプレーチップアセンブリの側面に配置された第3の凹部を備え、該第3の凹部が第3の帯電ピンを備える、ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の帯電ピンの先端が、前記第1の遠位端部の上方1mmと前記第1の遠位端部の下方5mmとの間に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の帯電ピンに電圧を供給するように構成されたカスケード電圧増倍器を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記スプレーチップアセンブリが、前記カスケード電圧増倍器に電気的に連結されたワイヤと、前記第1の帯電ピンに電気的に連結された電極と、前記ワイヤと前記電極との間を着脱可能に連結された導電性ピンと、を備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記導電性ピンが導電性プラスチックを含む、ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
静電工具システムの本体に連結されるように構成された空気霧化キャップを備え、
前記空気霧化キャップが、
液体物質を霧状にするように構成された霧化オリフィスと、
前記霧化オリフィスの周りのエアキャップホーンの遠位の外面と、
前記遠位の外面に配置された第1の凹部であって前記空気霧化キャップの開口の出口を囲む第1の凹部と、
前記開口を通って延びるように構成され、前記第1の凹部内に配置された第1のピンと、
前記霧化オリフィス内に配置された中央ピンと、を備え、
前記第1のピン及び前記中央ピンが、電界を広めるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記第1のピンが、尖った形状、バルブ形状、扇形状、又はこれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記空気霧化キャップが、前記遠位の外面に配置された第2の凹部と、該第2の凹部内に配置された第2のピンと、を備え、前記第1の凹部及び前記第2の凹部が前記中央ピンの両側にある、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記中央ピンが帯電し、第1のピン及び第2のピンが地されることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の帯電ピンの先端が前記遠位の外面の上方1mmと、前記遠位の外面の下方5mmとの間に配置される、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のピンが前記空気霧化キャップの軸線に対して10〜90°の角度をなしている、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記中央ピンが空気霧化キャップから突き出たワイヤを備える、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記中央ピンが前記遠位の外面と同一平面上にある先端を備える、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2015年3月3日に出願された「静電噴霧工具システム(ELECTROSTATIC SPRAY TOOL SYSTEM)」という名称の米国仮特許出願第62/127,494号の優先権及び利益を主張し、当該仮特許出願は、全体として、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、概して、静電噴霧工具に関する。
【背景技術】
【0003】
静電噴霧工具は、物体をより効果的に覆うために帯電物質を噴霧する。例えば、静電工具は、物体を塗装するのに用いてもよい。作動時に、物質は静電工具のスプレーチップ(spray tip)から離れ、接地された物体の方へ移動するときに帯電する。接地された標的は帯電物質を誘引し、そして、帯電物質は、接地された標的の外面に付着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
残念なことに、帯電物質は、スプレーチップから外面へ完全には移動しない場合がある。例えば、物質の中には、スプレーチップに付着するものがある。付着した物質は、静電工具により生じる電界を阻止する場合があり、これによって、接地された標的外面への物質の塗布にむらが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の出願時の特許請求の範囲に記載されている発明と同等の範囲内にある特定の実施形態を以下に概説する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載されている発明の範囲を限定するものではなく、これらの実施形態は、発明の考えられる形態の簡単な概要を示すにすぎない。実際に、本発明は、以下に示す実施形態と同様であるか又は異なっていてもよい、種々の形態を包含することができる。
【0006】
第1の実施形態において、システムには静電噴霧システムが含まれ、静電噴霧システムが、静電工具と、スプレーチップアセンブリであって、塗料及び空気流を受け入れて塗料を霧状にして帯電させ、そして塗料を空気流方向に噴霧するように構成されたスプレーチップアセンブリと、を有する。スプレーチップアセンブリには、第1の遠位面に凹部を有する第1のエアキャップホーン(air cap horn)と、凹部内に配置された第1の帯電ピンと、スプレーチップアセンブリに連結された接地ピンと、を含む。第1の帯電ピン及び接地ピンは、塗料を帯電させる電界を生成するように構成される。
【0007】
別の実施形態において、システムには、静電工具システムの胴部に連結されるように構成された空気霧化キャップが含まれ、空気霧化キャップが、液体物質を霧状にするように構成された中央霧化オリフィスと、中央霧化オリフィスの周りの遠位面と、遠位面に配置された第1の凹部と、第1の凹部内に配置された第1のピンと、中央霧化オリフィス内に配置された中央ピンと、を有する。第1のピン及び中央ピンは、電界を広めるように構成される。
【0008】
別の実施形態において、システムには静電噴霧装置が含まれ、静電噴霧装置が、下流領域に噴霧物質を出すように構成された第1の出口と、第1の凹部に配置された第1の導電性部材と、第1の導電性部材からオフセットして配置された第2の導電性部材と、を有する。第1の導電性部材及び第2の導電性部材は、第1の出口から下流領域に電界を発生させるのを促進するように構成される。
【0009】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、添付図面を参照して次の詳細な説明を読むと十分に理解されるようになり、図面全体を通して、同様の文字は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】静電ノズルアセンブリを有する静電工具システムの実施形態の断面図である。
図2図1の線2‐2内のスプレーチップアセンブリの実施形態の断面詳細図である。
図3図1及び2の空気霧化キャップの実施形態の斜視図である。
図4図2の線4‐4内のエアホーン(air horn)の実施形態の部分断面詳細図である。
図5図3のスプレーチップアセンブリの実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の1つ以上の具体的な実施形態について説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を示す目的により、実際の実施形態のすべての特徴は、本明細書に記載されていない場合がある。エンジニアリング又は設計プロジェクトといった、このような実際の実施形態の開発では、開発者の具体的な目的、例えばシステム関連及びビジネス関連の制約の遵守を達成するのに、多くの実施形態に特有の決定がなされる必要があり、これは、一実施形態から別の実施形態まで変化し得ることを認識する必要がある。さらに、このような開発は複雑であり、時間がかかる場合があるが、本開示の利益を有する当業者であれば、型どおりの設計、製作及び製造作業になることを認識する必要がある。
【0012】
本発明の種々の実施形態の要素を組み込む場合、冠詞の「a」、「an」、「the」及び「前述の(said)」は、1つ以上の要素があることを意味するものとする。「備える(comprising)」、「含む(including)」及び「有する(having)」という用語は包括的であり、列挙された要素以外に付加的な要素があり得ることを意味するものとする。
【0013】
本開示は、全体として、圧縮ガス、例えば空気とともに噴霧される物質を帯電させることが可能な静電工具システムを対象とする。更に具体的には、本開示は、帯電ピンに、帯電を妨げ概して物体を効果的に覆わない物質がないように維持することができる静電帯電システムに関する。例えば、作業者は、エアキャップを変更することなく、塗料を連続的に噴霧してもよい。以下に開示される実施形態では、帯電ピンは、塗料がないように維持された位置に配置される。すなわち、塗料の漂遊粒子(stray particles)が帯電ピンにくっつかないように、エアキャップは、過剰の塗料が帯電ピン上に蓄積するのを保護及び阻止する凹部(例えば、ディボット、溝、くぼみ、穴など)を含む。
【0014】
図1は、静電作動システム10を有する静電工具システム8の断面図である。静電作動システム10によって、作業者は、静電工具12が噴霧する物質に、電荷を選択的に印加することができる。図示されているように、静電工具システム8は、静電工具12であって、物質(例えば、塗装剤、溶媒又は種々の塗料)を帯電させ、電気的に誘引する標的の方へ噴霧するように構成された静電工具を含む。静電工具12は、物質供給源14(例えば、液体、粉末など)から噴霧可能物質を受け入れ、静電工具12は、空気供給源16(又は別のガス供給源)からの圧縮空気とともに物質を噴霧する。空気供給源16には、圧縮器、圧縮ガス貯蔵タンク、又はこれらの組合せが含まれ得る。
【0015】
図示されているように、静電工具12は、ハンドル18と、胴部20と、スプレーチップアセンブリ22と、を含む。スプレーチップアセンブリ22は、流体ノズル24と、空気霧化キャップ26と、保持リング28と、を含む。図示されているように、空気霧化キャップ26は流体ノズル24を覆い、保持リング28によって胴部20に着脱可能に固定されている。空気霧化キャップ26は、種々の空気霧化オリフィスが含まれ、例えば、流体ノズル24からの液体チップ出口32の周りに配置された中央霧化オリフィス30を含む。また、空気霧化キャップ26は、1つ以上のスプレーシェイピングエアオリフィスも有し、例えば、空気噴流を用いて噴霧させ所望の噴霧パターン(例えば、フラット噴霧(flat spray))を形成するスプレーシェイピングオリフィス34も有し得る。スプレーチップアセンブリ22には、所望の噴霧パターン及び液滴分配を提供するように、種々の他の霧化機構も含まれ得る。
【0016】
静電工具12は、スプレーチップアセンブリ22の、種々の制御部及び供給機構を含む。図示されているように、静電工具12は、液体入口連結器40から流体ノズル24まで延びる液体流路38を有する液体送出アセンブリ36を含む。液体送出アセンブリ36には液体管42が含まれている。液体管42は、第1の管コネクタ44と、第2の管コネクタ46と、を含む。第1の管コネクタ44は、液体管42を液体入口連結器40に連結する。第2の管コネクタ46は、液体管をハンドル18に連結する。ハンドル18には物質供給連結器48が含まれ、これによって、静電工具12は、物質供給源14から物質を受け入れることができる。したがって、作動時に、物質は、物質供給源14からハンドル18を通って液体管42内に流れ、流体ノズル24に物質が輸送されて噴霧される。
【0017】
液体及び空気流を制御するように、静電工具12は弁アセンブリ50を含む。弁アセンブリ50は、弁アセンブリ50が開閉する際に、液体と空気流を同時に制御する。弁アセンブリ50は、ハンドル18から胴部20まで延びている。図示されている弁アセンブリ50は、流体ノズル針52と、シャフト54と、空気弁56に連結する空気弁針55と、を含む。弁アセンブリ50は、液体ノズル24と液体調整器58との間において移動可能に延びている。液体調整器58は、空気弁56と液体調整器58の内側部分62との間に配置されたばね60に対して回転自在に調整可能である。一部の実施形態では、液体調整器58を他の調整工具と組み合わせて、シャフト54及び空気弁針55を通る空気の量を調整することができる。弁アセンブリ50は、トリガ64が時計回り方向66に回転する際に、弁アセンブリ50の流体ノズル針52が内側にかつ流体ノズル24から離れて移動するように、点65においてトリガ64に連結する。流体ノズル針52が後退すると、流体は、流体ノズル24内に流入し始める。同様に、トリガ64が反時計回り方向70に回転する場合、流体ノズル針52は、流体ノズル24を封止し更なる流体の流れを阻止する方向72に移動する。
【0018】
空気供給アセンブリ71は静電工具12に配置され、これにより、空気供給源16からの圧縮空気を用いてスプレーチップアセンブリ22において霧化をすることができる。図示されている空気供給アセンブリ71は、空気霧化キャップ26までの空気流路74を通って、空気入口73からスプレーチップアセンブリ22まで延びている。空気流路74は、主空気流路76及び発電機空気流路78を有する複数の空気流路を含む。上述したように、弁アセンブリ50は、トリガ64の移動によって、静電工具12中の流体及び空気流を制御する。トリガ64が時計回り方向66に回転すると、トリガ64は空気弁56を開く。更に具体的には、時計回り方向66におけるトリガ64の回転によって、空気弁針55の移動による方向68における空気弁56の移動が生じる。空気弁56が方向68に移動すると、空気弁56は封止シート80から脱落し、これによって、主空気流路76から空気プレナム部82内に空気が流れ得る。空気プレナム部82は主空気流路76と連通しており、主空気流路から発電機空気流路78への空気流を容易にする。これに対して、トリガ64が反時計回り方向70に回転する場合、空気弁56は、封止シート80によって再封止される方向72に移動する。いったん空気弁56が封止シート80によって再封止されると、空気は、発電機空気流路78へ分配されるために、空気供給源16から主空気流路76を通って空気プレナム部82内に移動することができない。したがって、トリガ64の作動によって、スプレーチップアセンブリ22への液体と空気流が同時に可能となる。実際に、いったん作業者がトリガ64を引くと、弁アセンブリ50は方向68に移動する。方向68に弁アセンブリ50が移動することによって、流体ノズル針52は流体ノズル24から後退し、これによって、流体は流体ノズル24に入り得る。同時に、弁アセンブリ50が移動することによって、空気弁56は封止シート80から脱落し、これにより、主空気流路76を通って空気プレナム部82内への空気流が可能になる。そして、空気プレナム部82は、スプレーチップアセンブリ22(すなわち、シェイピング及び霧化を行うもの)、並びに電力アセンブリ84が用いる空気を分配する。
【0019】
電力アセンブリ84は、発電機86と、カスケード電圧増倍器88と、導電性部材、例えば帯電ピン106(図2)と、を含む。以下に詳細に説明するように、帯電ピン106は、塗料が帯電ピン106に付着して電界を広めるのを阻止するように、凹部内に配置されている。空気プレナム部82は、帯電ピン106に供給される電荷を生成するように、空気流を発電機空気流路78に分配する。発電機空気流路78は、ハンドル18を通して空気プレナム部82からの空気流79を戻し、タービン92(例えば、複数のブレードを有するロータ)と接触させる。空気流は、タービン92及びシャフト94を回転させるブレードに対してかつこれらのブレード間を流れ、そして、発電機86を回転させる。発電機86は、回転しているシャフト94からの機械的エネルギーを電力に変換し、この電力は、カスケード電圧増倍器88が使用する。カスケード電圧増倍器88は、電気回路であって、発電機86からの低電圧交流(AC)を高電圧直流(DC)に変換する電気回路である。カスケード電圧増倍器88は、高電圧直流を帯電ピンに出力し、帯電ピンは、帯電ピン106と流体ノズル24の中央にある中央導電性部材(例えば、接地された中央ピン90)との間にイオン化場96を発生させる。中央導電性部材(例えば、接地された中央ピン90)に対する帯電ピン106の向きは、イオン化場96の形成に寄与し得ることが認識される。特定の実施形態において、中央ピン90は、導電性帯電ピンであってもよく、これに対して、ピン106は接地ピンであってもよい。イオン化場96は、流体がイオン化場96を通る際に、静電工具12によって噴霧された霧化液体を帯電させる。一部の実施形態において、カスケード電圧増倍器88は、電力グリッド、燃焼エンジン駆動発電機などの別の発電機、又は他の汎用電気電圧源から電力を直接受け入れる。
【0020】
図2は、図1の線2‐2内のスプレーチップアセンブリ22の実施形態の断面詳細図である。図示されているように、静電工具システム8は、カスケード電圧増倍器88であって、高電圧信号を変換してスプレーチップアセンブリ22の電気部品に伝達するカスケード電圧増倍器を含む。具体的には、スプレーチップアセンブリ22は、ワイヤ100であって、カスケード電圧増倍器88を1つ以上の導電性コネクタ102(例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上)に接続するワイヤを含む。導電性コネクタ102は、導電性プラスチック、金属、導電性高分子、又は他の材料から製造され、1つ以上の電極104及び帯電ピン106に電圧を伝導する。また、電極104も導電性であり、エポキシ又は他の固定剤によって導電性コネクタ102及び/又は帯電ピン106と接触させることができる。したがって、電圧は、カスケード増倍器88からワイヤ100へ、ワイヤ100から導電性コネクタ102へ、導電性コネクタ102から電極104へ、次いで帯電ピン106へ流れる。これらの構成部品(例えば、ワイヤ100、導電性コネクタ102、電極104及び帯電ピン106)は、接着剤若しくはボンディング材を用いて化学的に固定するか、又は、ねじ山(threads)、締まり嵌め、スナップ嵌め、連結、ラッチ、クランプ、ねじなどによって機械的に固定することができる。例えば、帯電ピン106及び電極104は、空気霧化キャップ26内のボンディング材(例えば、エポキシ、接着剤、プラスチック、複合材料など)によって固定されてもよく、これに対して、導電性コネクタ102は、保持リング28によって固定位置に固定されてもよい。導電性コネクタ102を機械的に固定することによって、導電性コネクタ102の交換を容易にすることができる。
【0021】
上述したように、帯電ピン106と、接地された中央ピン90とが相互作用してイオン化場96を生成し、粒子状塗料108が中央霧化オリフィス30を出る際に、これを帯電させる。一部の実施形態において、帯電ピン106は、スプレーシェイピングオリフィス34を含むエアホーン110に配置することができる。帯電ピン106と、接地された中央ピン90との相対位置は、イオン化場96を制御する(例えば、変化させる、増やす又は減らす)ように調整することができると同時に、塗料108の漂遊粒子から帯電ピン106の保護を維持することができる。例えば、帯電ピン106は、エアホーン110表面の凹部112(例えば、ディボット、溝、くぼみ、穴など)内に配置されていてもよい。一部の実施形態において、空気霧化キャップ26には、帯電ピン106であって、イオン化場96が塗料108を帯電させるのに適した強度になるように、接地された中央ピン90から角度をなした、及び/又は中央ピンに接近して配置されたか若しくは中央ピンから離れて配置された帯電ピンが含まれ得る。
【0022】
図3は、図1及び2の空気霧化キャップ26の実施形態の斜視図である。図示されている実施形態は、接地された中央ピン90の横にエアホーン110を含む。エアホーン110は、エアーシェイピングオリフィス34からの流れにより、垂直方向軸線120に沿って塗料108を扇形状にさせる。図示されているように、帯電ピン106はそれぞれ、それぞれのエアホーン110の遠位端部124の遠位面128の凹部126内に収まっている。凹部126は、遠位面128下方に数ミリメートルの深さであってもよいし、又は、エアホーン110の遠位面128下方に1センチメートル以上であってもよい(例えば、1〜40、1〜20、1〜10、若しくは10〜5mmの深さ)。例えば、凹部126は、1、2、3、4、5又は10mmよりも深くてもよい。帯電ピン106は、凹部126の底部から、凹部126の深さよりも小さいか、その深さに等しいか、又はその深さよりも大きくてもよい距離130をもって突き出ている。このため、ピン106は、遠位面128の下方にくぼんでいてもよいし、遠位面と同一平面上にあってもよいし、又は遠位面を越えて突き出ていてもよい。一部の実施形態において、帯電ピン106は、エアホーン110の遠位面128と全く同じ距離130を有し得る。他の実施形態において、帯電ピン106は、遠位面128の上方又は下方へ数十ミリメートルまで及ぶ距離130を有し得る。更に他の実施形態では、帯電ピン106は、遠位面128の上方又は下方へ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ミリメートル又はそれ以上の距離130を延び得る。
【0023】
帯電ピン106の距離130及び他の位置決め態様は、帯電ピン106に固着する特定量の漂遊塗料(stray coating material)108を阻止するように較正することができると同時に、イオン化場96とのエアホーン110の干渉の平衡を保つことができる。具体的には、距離130が大きい場合、帯電ピン106は、更に多くの漂遊塗料108を蓄積し得る。反対に、距離130が比較的小さい場合(すなわち、帯電ピン106が凹部126内で更に深い場合)、凹部126の縁部によって、イオン化場96の有効性又は強度が徐々に減少し得る。加えて、更に小さな距離130は、エアホーン110のエッチングにも寄与し得る。すなわち、イオン化場96は、エアホーン110の素材を通って移動し、これによって、エアホーン110の劣化(例えば、物質の除去)が生じ得る。
【0024】
図4は、図2の線4‐4内のエアホーン110の実施形態の部分断面詳細図である。簡略化のために、図4にはエアーシェイピングオリフィス34が含まれていないが、これらの構成部品及び他の構成部品は、エアホーン110及び/又はスプレーチップアセンブリ22の一部として含まれ得る。図4は、上述したように、エアホーン110の開口を通って延び、かつ、帯電ピン106に接続された電極104を示し、さらに、遠位面128に対する帯電ピン106の位置も明確に示している。距離130は、凹部126の底部から測定される。上で説明したように、帯電ピン106は、帯電ピン106が遠位面128の下か上にあるか、又は遠位面と同じ高さにあるように、種々の距離130を延び得る。図4は、帯電ピン106が、スプレーチップアセンブリ22の半径方向線若しくは方向134に対して角度131をもって、又はスプレーチップアセンブリ22の軸線(axial line)又は軸(例えば、軸133)に対して角度132をもって配置され得ることも示している。例えば、一部の実施形態では、凹部126は、帯電ピン106の角度132が、およそ0、30、45、60、90、120、135、180°、5〜80°、30〜60°、35〜45°、又は電極104の軸線方向軸133(若しくは、中央ピン90、空気霧化キャップ26、及びスプレーチップアセンブリ22の軸線方向軸)に対するあらゆる他の角度であり得る程度に、横方向に十分大きくてもよい。特定の実施形態において、帯電ピン106の角度131、132は、空気霧化キャップ26の一部として固定され得る。他の実施形態において、帯電ピン106は、異なる角度131、132で選択可能なモジュール式の着脱可能なピン106であり得る。このため、1つの空気霧化キャップ26は、異なる角度131、132及び/又は形状を有する種々の帯電ピン106を利用することができる。
【0025】
特定の実施形態において、帯電ピン106は種々の形状も有し得る。図4に示されているように、帯電ピン106には、尖った形状又は針先形状が含まれ得る。尖った形状によって、特定の標的領域は、イオン化場96を受け入れることができる。他の実施形態において、帯電ピン106は、異なる形状の帯電ピン106を用いてイオン化場を広げるか又は縮小することができる。例えば、図5の左側に示されているように、帯電ピン106には、特定の領域におけるイオン化場96の強度を低下させ得る、丸みを帯びた形状又はバルブ形状(球状)が含まれていてもよい。また、図5の右側に示されているように、帯電ピン106には、イオン化場96を広い領域にわたって送出する扇形状も含まれていてもよく、これによって、所定の領域にわたってイオン化場96の均一性を高めることができる。
【0026】
図5は、図3のスプレーチップアセンブリ22の実施形態の正面図である。図示されている実施形態には、凹部126及び帯電ピン106を有するエアホーン110が含まれている。一部の実施形態において、空気霧化キャップ26には、エアホーン110内にはない帯電ピン106を有する、2つの側方凹部140が含まれ得る。凹部140は側面142に押し込まれ、その結果、帯電ピン106は凹部140内に収まり得る。凹部126内の帯電ピン106と同様に、凹部140内の帯電ピン106は、面142の上か下にあるか、又は面142と同じ高さにあり得る。一部の実施形態において、側面142は、接地された中央ピン90に対して傾斜し得る。傾斜した側面142の例を図3に示すことができる。特定の実施形態において、側面142は平らであってもよく、すなわち、接地された中央ピン90に対して垂直であってもよい。
【0027】
特定の実施形態において、空気霧化キャップ26には、イオン化場96を生成する帯電ピン106をそれぞれ有した付加的な凹部126、140(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)が含まれ得る。付加的な凹部126、140は、付加的なエアホーン110に、及び面142に配置することができる。一部の実施形態において、空気霧化キャップ26には、エアホーン110が含まれ得ない。エアホーン110がない場合、凹部126、140はそれぞれ、遠位面126ではなく、側面142に押し込まれ得る。
【0028】
本発明の特定の特徴のみを示し説明してきたが、当業者であれば、多くの変更及び変形を想起する。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内に入る、このような変更及び変形のすべてを包含するものとすることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5