特許第6773677号(P6773677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773677改善されたジスルフィド含有アルキン連結剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773677
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】改善されたジスルフィド含有アルキン連結剤
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20201012BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C07H21/02
   C07D403/12
【請求項の数】16
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2017-549325(P2017-549325)
(86)(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公表番号】特表2018-510164(P2018-510164A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】US2016022560
(87)【国際公開番号】WO2016149313
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年3月7日
(31)【優先権主張番号】62/134,186
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/235,860
(32)【優先日】2015年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/168,244
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512219840
【氏名又は名称】アローヘッド ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】アーロン アルメイダ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ ブイ.ブロヒン
(72)【発明者】
【氏名】ダーレン エイチ.ウェイクフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ディー.ベンソン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ビー.ロゼーマ
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0051836(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/134483(WO,A1)
【文献】 特表2014−531433(JP,A)
【文献】 特表2010−521133(JP,A)
【文献】 特表2011−504507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下により表される構造:
【化1】
(式中、
1はアルキル基であり、かつR2は水素であるか、又は、R1は水素であり、かつR2はアルキル基であり、
1及びL2はリンカーであり、
Xはシクロオクチンを含み、そして
Yは、RNAi剤を含む)
を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物。
【請求項2】
前記アルキル基がメチル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下により表される構造:
【化2】
(式中、
1及びR1´はそれぞれアルキル基であり、かつR2及びR2´はそれぞれ水素であるか、又は、R1及びR1´はそれぞれ水素であり、かつR2及びR2´はそれぞれアルキル基であり、
Xはシクロオクチンを含み、
Yは、RNAi剤を含む)
を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物。
【請求項4】
前記アルキル基がメチル基である、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
以下により表される構造:
【化3】
(式中、
3はC(R56)であって、ここで、R5は水素、メチル又はエチルであり、かつR6は水素、メチル又はエチルであり、
4はC(R78)であって、ここで、R7は水素、メチル又はエチルであり、かつR8は水素、メチル又はエチルであり、
5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つは、メチル又はエチルであり、
1は第1リンカーであり、
2は第2リンカーであり、そして
Yは、RNAi剤を含む)
を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物。
【請求項6】
5又はR6がメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である、請求項に記載の化合物。
【請求項7】
7又はR8がメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である、請求項に記載の化合物。
【請求項8】
5がCH3であり、かつ、R6、R7及びR8がそれぞれ水素である、請求項に記載の化合物。
【請求項9】
7がCH3であり、かつ、R5、R6及びR8がそれぞれ水素である、請求項に記載の化合物。
【請求項10】
以下により表される構造:
【化4】
(式中、
3はC(R56)であって、ここで、R5は水素、メチル又はエチルであり、かつR6は水素、メチル又はエチルであり、
4はC(R78)であって、ここで、R7は水素、メチル又はエチルであり、かつR8は水素、メチル又はエチルであり、
5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つは、メチル又はエチルであり、
1はリンカーであり、そして
Yは、RNAi剤を含む)
を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物。
【請求項11】
5又はR6がメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
7又はR8がメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
5がCH3であり、かつ、R6、R7及びR8がそれぞれ水素である、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
7がCH3であり、かつ、R5、R6及びR8がそれぞれ水素である、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
以下により表される構造:
【化5】
(式中、Rは、RNAi剤を含む)
を有する、請求項に記載の化合物。
【請求項16】
以下により表される構造:
【化6】
(式中、Rは、RNAi剤を含む)
を有する、請求項10に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
合成オリゴヌクレオチド、例えばアンチセンス分子、アプタマー、リボザイム及びRNA干渉(RNAi)分子は、生物医学的研究、診断及び治療にますます使用されている。これらの合成オリゴヌクレオチドは、配列依存的にイン・ビトロ、イン・サイチュ(in situ)、及びイン・ビボでの遺伝子の発現を阻害し又はノックダウンするために使用されてきた。
【0002】
標的リガンド又は他の薬理学的修飾因子を合成オリゴヌクレオチドに、特に治療的イン・ビボ送達のために、結合又は連結することがしばしば有用である。有用であるためには、異なる合成オリゴヌクレオチド、並びに異なる標的リガンド及び薬理学的修飾因子に容易に適用可能であるように、結合化学(linkage chemistry)はモジュラー(modular)でなければならない。さらに、結合化学は、単純な反応条件を有し、効率的であり(すなわち高い化学的収率を与え)、毒性又は他の有害な生成物を必要とせず、そして毒性又は他の有害な副生成物を生成してはならない。結合化学はまた、標的細胞の外側で、例えば循環、皮下空間、又は細胞外空間において安定だが、最終作用部位で、例えば標的細胞の内側で容易に切断可能でなければならない。
【0003】
合成オリゴヌクレオチドを標的リガンド又は他の薬理学的修飾因子に連結するのに有用なそのような反応の例は、環状アルキン及びアジドの環付加であり、それは「クリック反応(click reactions)」又は「クリックケミストリー(click chemistry)」として知られている反応の一つである。クリック反応では、2つの別個の分子実体(アジドで荷電したものと、歪シクロアルキンで荷電したもの)が、歪み促進アジド−アルキン環付加(strain-promoted azide-alkyne cycloaddition)(SPAAC)と呼ばれる反応によって単一の分子へと自発的に組み合わされることになる。当該反応は性質が穏やかで、迅速かつ高収率であり、そして、おおよそ生理学的pHで、水中で、及び生体分子官能基の付近で起こる。この反応は、生体分子(例えばタンパク質、脂質、グリカンなど)の生体直交型(bioorthogonal)標識及び画像化、プロテオミクス並びに材料科学のための汎用ツールとなっている。環付加反応は、触媒の不存在下で自発的に進行する。金属を含まない環付加はまた、「無金属(metal-free)クリック反応」と呼ばれる。生体直交型標識のためのSPAACの能力は、単離された環状アルキン又はアジドが、生物学的官能基、例えばアミン、チオール、酸又はカルボニルなどに対して完全に不活性であるが、組み合わせると迅速かつ不可逆な環付加を受け、安定なトリアゾールコンジュゲートをもたらすという事実にある。例えば、栄養要求細菌での発現、遺伝子工学又は化学変換によって得られたアジド修飾タンパク質は、シクロオクチンコンジュゲートとアジド−タンパク質を単に撹拌すると、ビオチン、蛍光色素分子、PEG−鎖又は他の官能基によりきれいに標識することができる。また、小さいサイズのアジドは、化学リポーター戦略による特定の生体分子の画像化におけるSPAACの適用に非常に有用であることが証明されている。
【0004】
本発明者らは、現在入手可能なアルキンジスルフィド、例えばジベンゾシクロオクチン(DBCO)−S−S−NHS:
【0005】
【化1】
【0006】
が、化合物の修飾中に不十分な安定性を提供し、不十分な合成収率及び望ましくない不純物の存在をもたらすことを見出した。本発明者らは、これより、改善された安定性特性を有し、改善された収率及び純度をもたらす、改善されたアルキンジスルフィドについて説明する。
【発明の概要】
【0007】
概要
本明細書に記載されるのは、以下により表される構造:
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R1及び/又はR2はアルキル基であり、L1及びL2はリンカーであり、Xはシクロオクチンであり、そしてYは反応性基、合成オリゴヌクレオチド、又はRNAi剤を含む)を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物である。いくつかの実施形態では、R1はアルキル基であり、かつR2は水素である。いくつかの実施形態では、R2はアルキル基であり、かつR1は水素である。いくつかの実施形態では、前記アルキル基は、メチル基又はエチル基である。いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0010】
本明細書に記載されるのは、以下により表される構造:
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R1、R、R2及び/又はRはアルキル基であり、Xはシクロオクチンを含み、そして、Yは、反応性基又は合成オリゴヌクレオチドを含む)を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物である。いくつかの実施形態では、R1及びRはアルキル基であり、かつR2及びRは水素である。いくつかの実施形態では、R2及びRはアルキル基であり、かつR1及びRは水素である。いくつかの実施形態では、R1、R、R2、及びRはアルキル基である。いくつかの実施形態では、R1はアルキル基であり、かつ、R、R2、及びRは水素である。いくつかの実施形態では、Rはアルキル基であり、かつR1、R2、及びRは水素である。いくつかの実施形態では、R2はアルキル基であり、かつR1、R、及びRは水素である。いくつかの実施形態では、Rはアルキル基であり、かつR1、R、及びR2は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R、及びR2はアルキル基であり、Rは水素である。いくつかの実施形態では、R1、R、及びRはアルキル基であり、R2は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR2はアルキル基であり、Rは水素である。いくつかの実施形態では、R、R2、及びRはアルキル基であり、R1は水素である。いくつかの実施形態では、前記アルキル基はメチル基である。いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0013】
本明細書に記載されるのは、以下により表される構造:
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、R3はC(R56)であって、ここで、R5は水素、メチル又はエチルであり、かつR6は水素、メチル又はエチルであり、R4はC(R78)であって、ここで、R7は水素、メチル又はエチルであり、かつR8は水素、メチル又はエチルであり、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つは、メチル又はエチルであり、L1は第1リンカーであり、L2は第2リンカーであり、そして、Yは反応性基、合成オリゴヌクレオチド又はRNAi剤を含む)を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物である。いくつかの実施形態では、R5又はR6がメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R7又はR8がメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R5がCH3であり、かつ、R6、R7及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、R7がCH3であり、かつ、R5、R6及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0016】
本明細書に記載されるのは、以下により表される構造:
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、R3はC(R56)であって、ここで、R5は水素、メチル又はエチルであり、かつR6は水素、メチル又はエチルであり、R4はC(R78)であって、ここで、R7は水素、メチル又はエチルであり、かつR8は水素、メチル又はエチルであり、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つはメチル又はエチルであり、L1はリンカーであり、そして、Yは反応性基、合成オリゴヌクレオチド又はRNAi剤を含む)を有する、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物である。いくつかの実施形態では、R5又はR6がメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R7又はR8がメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R5がCH3であり、かつ、R6、R7及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、R7がCH3であり、かつ、R5、R6及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0019】
本明細書に記載されるのは、以下によって表される構造:
【0020】
【化6】
【0021】
(式中、Rは反応性基、NHS反応性基、合成オリゴヌクレオチド、又はRNAi剤である)を有する化合物である。
【0022】
本明細書に記載されるのは、以下によって表される構造:
【0023】
【化7】
【0024】
(式中、Rは、反応性基、NHS反応性基、合成オリゴヌクレオチド、又はRNAi剤を含む)を有する化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】DBCO−アルカン−SS−NHSの合成を説明する反応スキーム。
図2】DBCO−メチル−SMPT−NHSの合成を説明する反応スキーム。
図3】DBCO−メチル−SMPT−NHSのESI Mass Spec分析を示すグラフ。
図4】DBCO−メチル−SMPT−NHSのHI NMRを示すグラフ。
図5】特定のシクロオクチン−アルキル−S−S化合物の開示された実施形態。Rは反応性基、NHS反応性基、合成オリゴヌクレオチド、又はRNAi剤を含む。n及びmは0〜10の整数である。
図6】特定のシクロオクチン−アルキル−S−S化合物の開示された実施形態。Rは反応性基、NHS反応性基、合成オリゴヌクレオチド、又はRNAi剤を含む。
図7】非分岐DBCOジスルフィド修飾因子(DBCO−ジスルフィド−NHSエステル)で調製したRNAi剤センス鎖コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム。
図8】DBCO−NHSエステルで調製したRNAi剤コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム。
図9】DBCO−アルカン(メチル)−ジスルフィド修飾因子で調製したRNAi剤センス鎖コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム。
図10】分岐DBCO−アルカン(ジメチル)−ジスルフィド修飾因子で調製したRNAi剤センス鎖コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム。
図11】DBCO−ジスルフィド−メチル−SMPTで調製したRNAi剤コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム。
図12】特定のシクロオクチン−アルキル−S−S−オリゴヌクレオチド化合物の開示された実施形態。Rはオリゴヌクレオチド又はRNAi剤を含む。示されたリン酸基は、合成オリゴヌクレオチド又はRNAi剤の一部であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
シクロオクチン及び分岐ジスルフィドを含む新規化合物、それらの合成、及びそれらの使用方法が、本明細書に開示される。本明細書に開示された改善された化合物は、先に述べたシクロオクチンを含有する組成物に対して、改善された安定性を示す。
【0027】
本明細書に開示されるのは、シクロオクチン−アルキル−ジスルフィド−修飾オリゴヌクレオチド、それらの合成、及びそれらの使用方法である。シクロオクチン−アルキル−ジスルフィド−修飾オリゴヌクレオチドは、目的の化合物、例えば標的リガンド、脂質、コレステロール、送達剤(例えばエンドソーム溶解性(endosomolytic)ポリマー)、又は薬理学的修飾因子、に容易に結合される。当該シクロオクチン−アルキル−ジスルフィド−修飾オリゴヌクレオチドは、対応するシクロオクチン−ジスルフィド−修飾オリゴヌクレオチドよりも、改善された収率で容易に合成され、かつ少ない不純物を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物は、以下により表される構造:
【0029】
【化8】
【0030】
(式中、
1はアルキル基であり、かつR2は水素であるか、又は、R1は水素であり、かつR2はアルキル基であるか、又は、R1及びR2はアルキル基であり、
Xはシクロオクチンを含み、
Yは、反応性基又は合成オリゴヌクレオチドを含む)
を有する。
【0031】
X及びYはリンカーを介して結合されてもよい。いくつかの実施形態では、アルキル基はメチル又はエチルである。いくつかの実施形態では、前記アルキル基はメチルである。
いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物は、以下により表される構造:
【0033】
【化9】
【0034】
(式中、
1、R1´、R2、及びR2´の1又は複数はアルキル基であり、
Xはシクロオクチンを含み、
Yは、反応性基又は合成オリゴヌクレオチドを含む)
を有する。
【0035】
X及びYはリンカーを介して結合されてもよい。いくつかの実施形態では、前記アルキル基は独立してメチル又はエチルである。いくつかの実施形態では、前記アルキル基はメチルである。いくつかの実施形態では、R1及びR1´はアルキル基であり、かつR2及びR2´は水素である。いくつかの実施形態では、R2及びR2´はアルキル基であり、かつR1及びR1´は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R1´、R2、及びR2´はアルキル基である。いくつかの実施形態では、R1はアルキル基であり、かつR1´、R2、及びR2´は水素である。いくつかの実施形態では、R1´はアルキル基であり、かつR1、R2、及びR2´は水素である。いくつかの実施形態では、R2はアルキル基であり、かつR1、R1´、及びR2´は水素である。いくつかの実施形態では、R2´はアルキル基であり、かつR1、R1´、及びR2は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R1´、及びR2はアルキル基であり、R2´は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R1´、及びR2´はアルキル基であり、R2は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR2はアルキル基であり、R1´は水素である。いくつかの実施形態では、R1´、R2、及びR2´はアルキル基であり、R1は水素である。いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物は、以下により表される構造:
【0037】
【化10】
【0038】
(式中、
1はアルキル基であり、かつR2は水素であるか、又は、R1は水素であり、かつR2はアルキル基であるか、又は、R1及びR2はアルキル基であり、
1及びL2はリンカーであり、
Xはシクロオクチンを含み、そして
Yは、反応性基又は合成オリゴヌクレオチドを含む)
を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記アルキル基はメチル又はエチルである。いくつかの実施形態では、前記アルキル基はメチルである。いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物は、以下により表される構造:
【0041】
【化11】
【0042】
(式中、
1、R2及びRの1又は複数はアルキル基であり、
1は第1リンカーであり、
2は第2リンカーであり、
Xはシクロオクチンを含み、そして
Yは、反応性基又は合成オリゴヌクレオチドを含む)
を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記アルキル基は独立してメチル又はエチルである。いくつかの実施形態では、前記アルキル基はメチルである。いくつかの実施形態では、R1及びRはアルキル基であり、かつR2及びRは水素である。いくつかの実施形態では、R2及びRはアルキル基であり、かつR1及びRは水素である。いくつかの実施形態では、R1、R、R2、及びRはアルキル基である。いくつかの実施形態では、R1はアルキル基であり、かつR、R2、及びRは水素である。いくつかの実施形態では、Rはアルキル基であり、かつR1、R2、及びRは水素である。いくつかの実施形態では、R2はアルキル基であり、かつR1、R、及びRは水素である。いくつかの実施形態では、Rはアルキル基であり、かつR1、R、及びR2は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R、及びR2はアルキル基であり、Rは水素である。いくつかの実施形態では、R1、R、及びRはアルキル基であり、R2は水素である。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR2はアルキル基であり、Rは水素である。いくつかの実施形態では、R、R2、及びRはアルキル基であり、R1は水素である。いくつかの実施形態では、YはRNAi剤を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物は、以下により表される構造:
【0045】
【化12】
【0046】
(式中、
3はC(R56)であって、ここで、R5は水素、メチル又はエチルであり、かつR6は水素、メチル又はエチルであり、
4はC(R78)であって、ここで、R7は水素、メチル又はエチルであり、かつR8は水素、メチル又はエチルであり、
5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つは、メチル又はエチルであり、
1は第1リンカーであり、
2は第2リンカーであり、そして
Yは、反応性基又は合成オリゴヌクレオチドを含む)
を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、R5又はR6がメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R5がメチル又はエチルであり、かつR6、R7及びR8は水素である。いくつかの実施形態では、R6がメチル又はエチルであり、かつR5、R7及びR8は水素である。いくつかの実施形態では、R5及びR6が独立してメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R7又はR8がメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R7がメチル又はエチルであり、かつR8、R5及びR6は水素である。いくつかの実施形態では、R8がメチル又はエチルであり、かつR7、R5及びR6は水素である。いくつかの実施形態では、R7及びR8が独立してメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R5がCH3であり、かつ、R6、R7及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、R7がCH3であり、かつ、R5、R6及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、前記合成オリゴヌクレオチドがRNAi剤である。
【0048】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキルジスルフィド化合物は、以下により表される構造:
【0049】
【化13】
【0050】
(式中、
3はC(R56)であって、ここで、R5は水素、メチル又はエチルであり、かつR6は水素、メチル又はエチルであり、
4はC(R78)であって、ここで、R7は水素、メチル又はエチルであり、かつR8は水素、メチル又はエチルであり、
5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つは、メチル又はエチルであり、
1はリンカーであり、そして
Yは、反応性基又は合成オリゴヌクレオチドを含む)
を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、R5又はR6がメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R5がメチル又はエチルであり、かつR6、R7及びR8は水素である。いくつかの実施形態では、R6がメチル又はエチルであり、かつR5、R7及びR8は水素である。いくつかの実施形態では、R5及びR6が独立してメチル又はエチルであり、かつR7及びR8がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R7又はR8がメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R7がメチル又はエチルであり、かつR8、R5及びR6は水素である。いくつかの実施形態では、R8がメチル又はエチルであり、かつR7、R5及びR6は水素である。いくつかの実施形態では、R7及びR8が独立してメチル又はエチルであり、かつR5及びR6がいずれも水素である。いくつかの実施形態では、R5がCH3であり、かつ、R6、R7及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、R7がCH3であり、かつ、R5、R6及びR8がそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、前記合成オリゴヌクレオチドがRNAi剤である。
【0052】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキル−ジスルフィド−アミン反応性基化合物は、以下により表される構造:
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
(式中、Rは、以下:活性化エステル、NHS、TFP、PFP、テトラジン、ノルボルネン(norbomenes)、trans−シクロオクテン、ヒドラジン(例えばhynic)、アミノオキシ試薬、及びアルデヒド(例えば4−ホルミル安息香酸)、からなる群から選択される反応性基を含む)を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキル−S−S−アミン反応性基化合物は、図5〜6に示される構造を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキル−S−S−合成オリゴヌクレオチド化合物は、以下によって表される構造:
【0059】
【化17】
又は
【化18】
【0060】
(式中、RNAはRNAi剤を含む)
を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、記載されたシクロオクチン−アルキル−S−S−合成オリゴヌクレオチド化合物は、オリゴヌクレオチドをアジド含有化合物に連結するために使用される。いくつかの実施形態では、前記アジド含有化合物は、以下:標的リガンド、脂質、コレステロール、又は送達剤、例えばエンドソーム溶解性ポリマー、ポリアミン、修飾ポリアミン、又は薬理学的修飾因子、からなる群から選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、記載されたシクロオクチン−アルキル−S−S−オリゴヌクレオチドは、ポリマーにコンジュゲートされ、ここで、前記ポリマーはアジド基を含む。いくつかの実施形態では、前記ポリマーは、オリゴヌクレオチドのイン・ビボ送達を促進するポリマーである。いくつかの実施形態では、前記オリゴヌクレオチドはRNAi剤を含む。
【0063】
本明細書に開示されるのは、合成オリゴヌクレオチド、例えばRNAi剤を、医薬修飾因子又は送達ポリマーに、共有結合させる方法であって、ここで、前記合成オリゴヌクレオチドが記載のシクロオクチン−アルキル−ジスルフィド−アミン反応性基化合物にコンジュゲートされて、シクロオクチン−アルキル−S−S−合成オリゴヌクレオチドを形成する。いくつかの実施形態では、シクロオクチン−アルキル−S−S−合成オリゴヌクレオチドは、医薬修飾因子又は送達ポリマーとさらに反応し、ここで、前記医薬修飾因子又は送達ポリマーは少なくとも1つのアジド基を含む。
【0064】
記載された化合物及び方法は、治療剤、診断剤として使用されるか、又は分子生物学研究における使用のための、RNAi剤含有組成物を形成するために使用することができる。
【0065】
本明細書で使用される場合、シクロオクチンは銅を含まないアルキンコンジュゲーション試薬である。シクロオクチンには、これらに限定されるものではないが、以下:ジアリールシクロオクチン、DBCO(また、アザジベンゾシクロオクチン(DIBAC又はADIBO)、アリール基に縮合したシクロオクチン部分(ベンゾ環化(benzoannulated)系)、が挙げられる。
【0066】
【化19】
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「リンカー」は、化合物の2つの部分を接続する有機部分を意味する。リンカーは典型的には、以下のものを含む:直接結合、又は原子、例えば酸素若しくは硫黄、単位、例えばNRL(ここで、RLは水素、アシル、脂肪族又は置換脂肪族である)、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NH、又は原子鎖、例えば、これらに限定されるものではないが、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル(alkylhererocyclylalkynyl)、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリール(alkynylhereroaryl)であって、その1又は複数のメチレンが以下のものによって中断又は終了することができる、O、S、S(O)、SO2、N(RL)(ここで、RLは水素、アシル、脂肪族又は置換脂肪族である)、C(O)、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換複素環式;−(CH2n−、−(CH2nN−、−(CH2nO−、−(CH2nS−、−(CH2n−C(O)−、−C(O)−(CH2n−C(O)−NH−(CH2m−C(O)−NH−(CH2x−、−C(O)−(CH2n−C(O)−NH−(CH2m− −C(O)−(CH2n−C(O)−(CH2m−、−C(O)−(CH2n−NH−C(O)−(CH2m−、−C(O)−(CH2n−O−(CH2−CH2−O)m−(CH2x−、−(O−CH2−CH2n−、−O−(CH2−CH2−O)n−、−O−(CH2−CH2−O)n−CH2−、−CH2−(O−CH2−CH2n−、−CH2−(O−CH2−CH2n−O−、−CH2−(O−CH2−CH2n−O−CH2−、−CH2−CH2−(O−CH2−CH2n−、−(CH2−CH2−O)n−、−(CH2−CH2−O)n−CH2−、
【0068】
【化20】
【0069】
反応性基は、当該技術分野において一般的に利用可能なもの、及び、これらに限定されるものではないが、活性化エステル、NHS、TFP、PFP、テトラジン、ノルボルネン(norbomenes)、trans−シクロオクテン、ヒドラジン(例えばhynic)、アミノオキシ試薬、及びアルデヒド(例えば4−ホルミル安息香酸)、を含む。
【0070】
標的リガンド(標的基とも呼ばれる)は、標的細胞又は組織、又は特定の細胞型に対する化合物の標的化又は送達に使用される。標的リガンドは標的細胞への分子の会合を増強する。したがって、標的リガンドは、それらが結合しているコンジュゲートの薬物動態的特性又は生体内分布特性を増強して、コンジュゲートの細胞分布及び細胞取り込みを改善することができる。細胞又は細胞受容体に対する標的基の結合は、エンドサイトーシスを開始し得る。標的基は、1価、2価、3価、4価であるか、又はより高い原子価を有してもよい。標的基は、これらに限定されるものではないが、細胞表面分子に親和性を有する化合物、細胞受容体リガンド、抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、及び細胞表面分子に親和性を有する抗体模倣物、疎水性基、コレステロール、コレステリル基、又はステロイドで有り得る。いくつかの実施形態では、標的基は細胞受容体リガンドを含む。様々な標的基が、薬物及び遺伝子を、細胞及び特定の細胞受容体に標的化するために使用されてきた。細胞受容体リガンドは、これらに限定されるものではないが、以下:炭水化物、グリカン、糖類(これらに限定されるものではないが:ガラクトース、ガラクトース誘導体(例えばN−アセチル−ガラクトサミン)、マンノース、及びマンノース誘導体を含む)、ハプテン、ビタミン、葉酸、ビオチン、アプタマー、及びペプチド(これらに限定されるものではないが:RGD含有ペプチド、RGD模倣物、インスリン、EGF、及びトランスフェリンを含む)であってもよい。
【0071】
本明細書で使用される場合、立体安定剤は、立体安定剤を含まない分子と比較して、それが結合している分子の分子内又は分子間相互作用を防止又は阻害する、非イオン性親水性ポリマー(天然、合成、又は非天然のいずれか)である。立体安定剤は、それが結合している分子が静電相互作用に関与するのを妨げる。静電相互作用は、正電荷と負電荷との間の引力による2つ以上の物質の非共有会合である。立体安定剤は、血液成分との相互作用、従ってオプソニン化、食作用、及び細網内皮系による取り込みを阻害することができる。したがって、立体安定剤は、それらが結合している分子の循環時間を増加させることができる。立体安定剤はまた、分子の凝集を阻害することができる。好ましい立体安定剤は、ポリエチレングリコール(PEG)又はPEG誘導体である。本発明に適しているPEG分子は、約1〜120個のエチレングリコールモノマーを有する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、薬理学的有効量の少なくとも1種類のRNAi剤及び1又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含有する。薬学的に許容される賦形剤(賦形剤)は、安全性について適切に評価されており、かつ薬物送達システムに意図的に含まれる、活性医薬成分(API、治療薬、例えば、RNAi剤)以外の物質である。賦形剤は、意図された投与量で治療効果を発揮しないか、又は発揮することが意図されない。賦形剤は、a)製造中の薬物送達システムの処理に役立ち、b)APIの安定性、生物学的利用能又は患者受容性を保護、支持、又は増強し、c)製品の識別を助け、及び/又は、d)保存又は使用中にAPIの全体の安全性、有効性、送達の、任意の他の属性を増強するように作用する。
【0073】
賦形剤には、これらに限定されるものではないが、以下:吸収促進剤、抗付着剤、消泡剤、抗酸化剤、結合剤、結合剤、緩衝剤、担体、被覆材、着色料、送達促進剤、デキストラン、デキストロース、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味料、流動促進剤、保湿剤、潤滑剤、油、ポリマー、保存剤、生理食塩水、塩、溶媒、糖類、懸濁化剤、徐放性マトリックス、甘味料、増粘剤、等張化剤、ビヒクル、防水材、及び湿潤剤、が挙げられる。薬学的に許容される賦形剤は不活性物質であってもなくてもよい。
【0074】
医薬組成物は、医薬組成物に一般的に見られる他の付加的な成分を含有することができる。薬学的に活性な物質は、これらに限定されるものではないが:抗掻痒剤、収斂剤、局所麻酔、又は抗炎症剤(例えば、抗ヒスタミン、ジフェンヒドラミン等)を含んでもよい。本明細書に定義されたRNAi剤を発現し又は含む細胞、組織又は単離された器官が、「医薬組成物」として使用され得ることも想定される。本明細書で使用される場合、「薬理学的有効量」、「治療上有効量」又は単に「有効量」は、意図される薬理学的、治療的又は予防的結果を生じるためのRNAi剤の量をいう。
【0075】
本明細書で使用される場合、薬理学的修飾因子とは、保存又は使用中のAPIの安定性、生物学的利用能、送達、有効性、又は患者受容性を保護し、支持し、又は増強する化合物である。
【0076】
本明細書で使用される場合、送達ポリマーとは、APIのイン・ビボでの生物学的利用能又は送達を増強するポリマーである。送達ポリマーの例としては、これらに限定されるものではないが:両親媒性膜活性ポリアミン、及び可逆的に修飾された両親媒性膜活性ポリアミン、が挙げられる。
【0077】
本明細書で使用される場合、膜活性ポリアミンとは、生体膜に対して以下の効果の1つ又は複数を誘導することができる界面活性な両親媒性ポリアミンである:非膜透過性分子を細胞に入れ、又は膜を横切らせることを可能にする膜の改変又は破壊、膜内での孔形成、膜の分裂、あるいは膜の破壊又は溶解。本明細書で使用される場合、膜、又は細胞膜は、脂質二重層を含む。膜の改変又は破壊は、少なくとも1つの以下のアッセイにおけるポリアミンの活性によって機能的に定義することができる:赤血球溶解(溶血)、リポソーム漏出(liposome leakage)、リポソーム融合、細胞融合、細胞溶解、及びエンドソーム放出。原形質膜上でエンドソーム又はリソソームの破壊を選択的に引き起こすポリアミンは、エンドソーム溶解性であると考えられている。細胞膜上の膜活性ポリアミンの効果は一時的であり得る。膜活性ポリアミンは当該膜に対して親和性を有し、かつ二重層構造の変性又は変形を引き起こす。細胞へのRNAi剤の送達は、膜活性ポリアミンが原形質膜又は内部小胞膜(例えばエンドソーム又はリソソーム)を破壊又は不安定化することによって媒介され、膜内に細孔を形成すること、あるいはエンドソーム又はリソソーム小胞を破壊し、それによって小胞の内容物を細胞質に放出させることによるものを含む。いくつかの実施形態では、膜活性ポリアミンは、メリチン(melittin)又はメリチン様ペプチド(MLP)を含む。
【0078】
ポリヌクレオチド又はポリ核酸という用語は、少なくとも2つのヌクレオチドを含むポリマーを指す技術用語である。ヌクレオチドはポリヌクレオチドポリマーのモノマー単位である。120未満のモノマー単位を有するポリヌクレオチドはしばしば、オリゴヌクレオチドと呼ばれる。天然の核酸は、デオキシリボース−又はリボース−リン酸骨格を有する。非天然又は合成ポリヌクレオチドは、イン・ビトロで又は無細胞系で重合され、かつ、同一又は類似の塩基を含むが、天然リボース又はデオキシリボース−リン酸骨格以外のタイプの骨格を含み得る、ポリヌクレオチドである。合成オリゴヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の方法を用いて合成することができる。当該技術分野で知られているポリヌクレオチド骨格には:PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、ホスホロジアミデート、モルホリノ、及び天然核酸のリン酸骨格の他の変形体が含まれる。塩基はプリン及びピリミジンを含み、さらに天然化合物のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然類縁体を含む。プリン及びピリミジンの合成誘導体は、これらに限定されるものではないが、ヌクレオチド上に新たな反応性基を置く改変、例えば、これらに限定されるものではないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、及びアルキルハライド、を含む。塩基という用語は、DNA及びRNAの既知の塩基類縁体のいずれかを包含する。ポリヌクレオチドという用語は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)、並びに、DNA、RNA及び他の天然及び合成ヌクレオチドの組み合わせを含む。
【0079】
本発明の合成オリゴヌクレオチドは化学的に修飾することができる。化学的修飾ポリヌクレオチドの使用は、ポリヌクレオチドの様々な特性を改善することができ、これらに限定されるものではないが:イン・ビボでのヌクレアーゼ分解に対する耐性、細胞取り込み、活性、及び配列特異的ハイブリダイゼーション、を含む。そのような化学的修飾の非限定的な例には:ホスホロチオエートヌクレオチド間結合、2´−O−メチルリボヌクレオチド、2´−デオキシ−2´−フルオロリボヌクレオチド、2´−デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、2´,3´−セコ(seco)ヌクレオチド模倣物(アンロックされた(unlocked)核酸塩基類縁体、本明細書においてNUNA又はNUNAと表される)、及び逆デオキシ脱塩基残基取り込み(inverted deoxyabasic residue incorporation)、が挙げられる。これらの化学的修飾は、様々なポリヌクレオチドコンストラクトにおいて使用される場合、細胞におけるポリヌクレオチド活性を保持することを示すと同時に、これらの化合物の血清安定性を劇的に増加させる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の合成オリゴヌクレオチドは、2本の鎖を有する二本鎖を含み、そのうちの1本又は両方を化学的に修飾することができ、ここで、各鎖は、約19〜約29(例えば、約19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は29)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、本発明の合成オリゴヌクレオチドは、1又は複数の修飾ヌクレオチドを含む。本発明の合成オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド位置の約5〜約100%が修飾されたヌクレオチドを含むことができる(例えば、ヌクレオチド位置の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%)。
【0081】
合成オリゴヌクレオチドは、5´又は3´末端修飾を含んでもよい。3´及び5´末端修飾には、これらに限定されるものではないが、以下:アミン含有基、アルキル基、アルキルアミン基、反応性基、TEG基、及びPEG基、が挙げられる。
【0082】
「RNAi剤」(「RNAiトリガー」、又は二本鎖RNA干渉ポリヌクレオチドとも呼ばれる)は、RNA干渉(RNAi)の生物学的プロセスを介して遺伝子発現を阻害する。RNAi剤は、典型的には15〜50塩基対、及び好ましくは18〜26塩基対を含む、二本鎖RNA又はRNA様構造を含み、そして、細胞内で発現される標的遺伝子におけるコーディング配列と少なくとも85%相補的な核酸塩基配列を有する。RNAi剤には、これらに限定されるものではないが、以下:低分子干渉RNA(short interfering RNA)(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)。短ヘアピンRNA(short hairpin RNA)(shRNA)、メロデュプレックス(meroduplexes)、及びダイサー基質が挙げられる(米国特許第8,084,599、8,349,809及び8,513,207号明細書)。本明細書で使用される場合、RNAi剤及びRNAiトリガーという用語は互換的に使用される。
【0083】
遺伝子発現を阻害、下方制御、又はノックダウンするとは、遺伝子から転写されたmRNAのレベル、あるいはmRNAから翻訳されたポリペプチド、タンパク質又はタンパク質サブユニットのレベルによって測定された遺伝子の発現が、本明細書に開示された化合物の非存在下で観察されたものよりも低いことを意味する。本発明の組成物によって送達されるポリヌクレオチドによる遺伝子発現の阻害、下方制御、又はノックダウンは、好ましくは、対照不活性ポリヌクレオチド、スクランブル配列を有するか不活性化ミスマッチを有するポリヌクレオチドの存在下で、あるいは本明細書に開示された組成物へのポリヌクレオチドのコンジュゲーションの非存在下で、観察されたレベルよりも低い。
【0084】
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、部分的に、実質的に、又は完全に、互いに相補的な少なくとも2つの配列を含む。いくつかの実施形態では、2つのRNAi剤配列は、第1配列を含むセンス鎖、及び第2配列を含むアンチセンス鎖、を含む。いくつかの実施形態では、2つのRNAi剤配列は、第1配列を共に含む2本のセンス鎖、及び第2配列を含むアンチセンス鎖、を含み、ここで、センス鎖及びアンチセンス鎖は共にメロデュプレックスを形成する。センス鎖は連結分子、例えばポリヌクレオチドリンカー又は非ヌクレオチドリンカーを介してアンチセンス鎖に接続され得る。
【0085】
アンチセンス鎖は、標的遺伝子によってコードされるmRNAの一部と相補的なヌクレオチド配列を含み、相補性領域は最も好ましくは30ヌクレオチド未満の長さである。RNAi剤センス鎖は、標的mRNAの少なくとも一部と少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。RNAi剤は、標的遺伝子を発現する細胞への送達時に、イン・ビトロ又はイン・ビボで前記標的遺伝子の発現を阻害する。
【0086】
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、天然に存在するヌクレオチドから構成されてもよく、あるいは少なくとも1つの修飾ヌクレオチド又はヌクレオチド模倣物から構成されてもよい。本発明のRNAi剤センス鎖及びアンチセンス鎖は、当該技術分野で十分に確立された方法によって合成及び/又は修飾され得る。RNAi剤ヌクレオチド、又はヌクレオチド塩基は、リン酸含有(天然)又は非リン酸含有(非天然)共有ヌクレオシド間結合によって連結されてもよく、すなわち、RNAi剤は天然又は非天然オリゴヌクレオチド骨格を有し得る。いくつかの実施形態では、RNAi剤は、ヌクレオチド塩基間に非標準(非リン酸)結合を含む。
【0087】
本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオチド、ヌクレオチド模倣物、脱塩基部位(abasic site)、又は、リボヌクレオチド(2´−ヒドロキシルヌクレオチド)以外の代用置換部分である。一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2´−修飾ヌクレオチド(すなわち5員糖環の2´位にヒドロキシル基以外の基を有するヌクレオチド)を含む。修飾ヌクレオチドには、これらに限定されるものではないが、以下:2´−修飾ヌクレオチド、2´−O−メチルヌクレオチド、2´−デオキシ−2´−フルオロヌクレオチド、2´−デオキシヌクレオチド、2´−メトキシエチル(2´−O−2−メトキシルエチル)ヌクレオチド、2´−アミノヌクレオチド、2´−アルキルヌクレオチド、3´−3´結合(逆位)ヌクレオチド、ヌクレオチドを含む非天然塩基、架橋ヌクレオチド、ペプチド核酸、2´,3´−セコヌクレオチド模倣物(アンロックされた核酸塩基類縁体、ロックされたヌクレオチド、3´−O−メトキシ(2´ヌクレオチド間結合)ヌクレオチド、2´−F−アラビノヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ビニルホスホネートデオキシリボヌクレオチド、ビニルホスホネートヌクレオチド、及び脱塩基ヌクレオチド(abasic nucleotides)、が挙げられる。所与のRNAi剤における全ての位置が一様に修飾される必要はない。逆に、複数の修飾が単一のRNAi剤に、又はさらにはその単一のヌクレオチドに組み込まれてもよい。本明細書に記載のRNAi剤センス鎖及びアンチセンス鎖は、当該技術分野で知られている方法によって合成及び/又は修飾され得る。各ヌクレオチドでの修飾は、他のヌクレオチドの修飾から独立している。
【0088】
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、5´又は3´末端修飾を含んでもよい。3´及び5´末端修飾には、これらに限定されるものではないが:アミン含有基、アルキル基、アルキルアミン基、反応性基、TEG基、及びPEG基が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、RNAi剤はオーバーハング(overhang)、すなわち、本明細書で定義したセンス鎖及びアンチセンス鎖の対のコア配列によって通常は形成される二重らせん構造に直接的に関与しない、典型的には不対のオーバーハングヌクレオチド、を含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれに独立して、1〜5塩基の3´及び/又は5´オーバーハングを含み得る。いくつかの実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれも、3´及び5´オーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、一方の鎖塩基の3´オーバーハングヌクレオチドの1又は複数は、他方の鎖の1又は複数の5´オーバーハングヌクレオチドと対になる。いくつかの実施形態では、一方の鎖の3´オーバーハングヌクレオチドの1又は複数は、他方の鎖の1又は複数の5´オーバーハングヌクレオチドと対にならない。RNAi剤のセンス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ数のヌクレオチド塩基を含んでも含まなくてもよい。アンチセンス鎖及びセンス鎖は二本鎖を形成し得るが、ここで、5´末端のみが平滑末端を有する、3´末端のみが平滑末端を有する、5´及び3´末端の両方が平滑末端であるか、あるいは5´末端も3´末端も平滑末端でない。いくつかの実施形態では、オーバーハング内の1又は複数のヌクレオチドは、チオホスフェート、ホスホロチオエート、デオキシヌクレオチド逆位(3´−3´結合)ヌクレオチドを含むか、あるいは、修飾リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドである。
【0091】
既知のmiRNA配列のリストは、研究機関、例えばとりわけ、Wellcome Trust Sanger Institute、Penn Center for Bioinformatics、Memorial Sloan Kettering Cancer Center、及びEuropean Molecule Biology Laboratoryによって管理されているデータベースで見ることができる。既知の有効なsiRNA配列及び関連した結合部位も、関連する文献に十分に示されている。RNAi剤分子は、当該技術分野で既知の技術によって容易に設計及び生成することができる。さらに、有効かつ特異的な配列モチーフを発見する機会を増やすコンピューターツールがある(Pei et al. 2006, Reynolds et al. 2004, Khvorova et al. 2003, Schwarz et al. 2003, Ui-Tei et al. 2004, Heale et al. 2005, Chalk et al. 2004, Amarzguioui et al. 2004)。
【実施例】
【0092】
実施例1.DBCO−S−S−メチル−NHSの合成(図1、化合物7)
【0093】
【化21】
【0094】
A)N−Boc−アミノ酸 3:4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)ペンタン酸 1(Annova Chem., INC.、製品#L10067、800mg、3.29mmol)を、無水MeOH(15mL)中の2−(boc−アミノ)エタンチオール 2(1.748g、9.86mmol)及びDIEA(1.72mL、9.86mmol)と、Ar下、RTで、14時間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣をDCM(100mL)に再溶解し、5%のKHSO4(2×20mL)、H2O(1×25mL)、及びブライン(1×20mL)で洗浄した。粗生成物をNa2SO4上で乾燥し、濾過し、そしてロータリーエバポレーターで濃縮した。SiO2上でのカラム精製により(溶離勾配 ヘキサン:EtOAc:酢酸=9:1:0.05−7:3:0.05)、純粋生成物3の650mg(70%)を得た。
【0095】
B)アミノ酸 4:生成物3(650mg、2.28mmol)を、HCl/ジオキサン(4M、6mL)の氷冷溶液中で10分間、及びRTで1.5時間撹拌した。全ての揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、残渣をDMF(2.5mL)中にとり、Et2O(40mL)中で粉砕した。分離した生成物を、Et2Oでトリチュレートし(triturated)、真空中で乾燥させた。収率416mg。
【0096】
C)化合物DBCO NHS 5を、文献の手順に従って8つのステップで調製した。
【0097】
D)DBCO誘導体 6:アミノ酸 4(410mg、2.22mmol)を、DCM/MeOH溶液(4:1、20mL)中でジベンゾシクロオクチン−N−ヒドロキシスクシニミジル(Sigma-Aldrich)(893mg、2.22mmol)及びDIEA(0.965mL、5.54mmol)と2時間攪拌した。全ての揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、残留DIEAを粗生成物からジオキサンの2回の連続蒸発によって除去した。生成物をSiO2カラム上で精製した(溶離:勾配CHCl3中の2%〜4%MeOH。収率706mg(68%)。
【0098】
E)DBCO−(モノメチル)アルキン−S−S−NHS 7:生成物6(700mg、1.48mmol)を無水ACN(25mL)に溶解し、氷浴上で冷却した。NHS(196mg、1.706mmol)及びEDC(326mg、1.706 mmol)を添加し、30分間攪拌した。氷浴を交換し、撹拌をRTで14時間続けた。全ての揮発性物質を真空中で除去し、残渣をCHCl3(125mL)に再溶解し、2%KHSO4(2×25mL)、ブライン(2×25mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)濾過し、真空中で濃縮した。収率802mg(95%)。(NMR:AB)
【0099】
【化22】
【0100】
DBCO−ジスルフィド−ジメチル−NHSを7と同様に、以下を出発物質として用いて調製した:
【化23】
【0101】
G)関連化合物が同様の技術を用いて容易に作成され、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:
【0102】
【化24】
【化25】
【化26】
【0103】
実施例2.DBCO−アルキル−SMPT−NHSの合成(式VI、図2、化合物13)
【0104】
【化27】
【0105】
DBCO−ジスルフィド−メチル−SMPT−NHS
A)4−ブロモメチル安息香酸(22.7g、0.1mol)及びチオ尿素(9.3g、0.12mol、1.2当量)を、H2O(200mL)に溶解し、4時間還流で加熱し、次に11時間RTとした。10%NaOH(aq)(120mL)を添加し、3時間還流で加熱した。次に、混合物を室温に冷却し、6Mの塩酸(60mL)を添加して、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、冷H2Oで洗浄し、減圧下で乾燥させた。10.4g(58%)の粗生成物8を次のステップに使用した。
【0106】
B)MeOH(240mL)中の4−メルカプトエチル安息香酸 8(9.60g、52.8mmol)の溶液を、MeOH(240mL)に溶解したDPDS(23.2g、105.6mmol、2当量)及びAcOH(3mL、52.8mmol、1当量)に、氷浴中で撹拌しながら3時間かけて添加した。その後、反応をRTにし、2時間継続した。溶媒を減圧下で除去し、残った油状物をシリカゲルカラムに充填した。副生成物をEtOAc:EtOH:Et3N(200:10:2)で洗浄し、生成物9(9.8g、64%)をEtOAc:EtOH:AcOH(200:20:1)で溶離した。
【0107】
C)MeOH(20mL)中の酸 9(9.7g、33.8mmol)の溶液に、2−(Boc−アミノ)エタンチオール(6g、33.8mmol)及びDIEA(5.9mL、33.8mmol)を添加した。混合物をアルゴン下で24時間、還流で、撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターした。反応混合物をRTに冷却し、濃縮し、EtOAc(100mL)に再溶解し、飽和NaHCO3(3×30mL)及びブラインで洗浄した。EtOAc層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させて、粗生成物を単離し、さらにシリカゲルカラムによって精製して、生成物2A、重量11g、収率91.2%を得た。化合物2A(11g、30.8mmol)を、ジオキサン(50mL)中の4MのHClに0℃で溶解させ、冷却浴を除去し、反応物を2時間RTで撹拌した。2時間後、TLC(CHCl3:MeOH:AcOH(9.6:0.4:0.025))は、出発材料の存在を示さなかった。全ての揮発性物質を35℃でロータリーエバポレーターで除去し、次にEt2O(2×50mL)でトリチュレートした。生成物10(HCl塩として)を一晩真空中で乾燥させた、重量9.1g、収率100%。
【0108】
D)化合物DBCO NHS 11を文献の手順に従って8つのステップで調製した。
【0109】
E)DBCO NHS 11(12.4g、30.8mmol)及びアミン 10(9.1g、30.8mmol)を、DCM/MeOH混合物(4:1、200mL)に溶解した。DIEA(11mL、61.6mmol)を添加し、反応混合物を2時間Ar下で撹拌した。全ての揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、残渣をオイルポンプで乾燥させ、生成物をSiO2カラム上で精製して(溶離:勾配 CHCl3中の1〜3%MeOH)、化合物12を白色固体として得た、重量11.7g、収率70%。
【0110】
F)DBCO SMPT 13(最終生成物):酸 12(10.9g、20mmol)をACN/THF混合物(4:1、150mL)に溶解し、溶液を氷浴で冷却した。NHS(2.3g、20mmol)及びEDC(4g、21mmol)を、攪拌反応混合物に連続的に加え、冷却浴を除去し、反応を16時間RTで続けた。全ての揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、残渣をCHCl3(200mL)に再溶解し、H2O(2×50mL)及びブライン(50mL)で2回洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータ―によって濃縮して、最終生成物DBCO SMPT(13)を白色固体として得た、重量12.5g、収率97.5%。
【0111】
G)関連化合物が同様の技術を用いて容易に作成され、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:
【0112】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0113】
実施例3.第VII因子遺伝子を標的とするRNAi剤を、非分岐リンカー(AD00096)、メチル分岐リンカー(AD00919)、又はジメチル分岐リンカー(AD00920)にコンジュゲートした。
【0114】
【化32】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【化33】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【化34】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【0115】
HPLC分析(図7、9、10)は、分岐リンカーを使用する場合に、有意に少ない不純物を示した。収率も改善された。
【0116】
A)DBCO−ジスルフィド−RNAi剤コンジュゲートの合成
【0117】
【化35】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【0118】
5′ C−6アミノ修飾を有する粗RNA(2.7mg、402nmol)を、EtOH中の酢酸ナトリウム(0.5M)を用いて沈殿させ、凍結乾燥し、442μLの0.1M NaHCO3、pH8〜9に溶解させた。ジベンゾシクロオクチン−S−S−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(DBCO−SS−NHS)エステル(2.3mg、4063.6nmol)を227μLのDMFに溶解し、RNA溶液に添加した。反応混合物を十分に混合し、2時間室温で進行させた。反応をRP−HPLCを用いてモニターし、純度を反応完了時に決定した(純度34.4%)。反応完了後、反応混合物を乾燥させ、RP−HPLCを用いて精製した。RNAi剤コンジュゲートを18%収率(75nmol)で調製した。RNAi剤コンジュゲートの最終純度をRP−HPLCによって決定し(純度:92.4%)、同一性をMALDI−TOF/TOFによって確認した(計算された質量:7164.0;観察された質量:7165.3)。図7.DBCO−ジスルフィド−NHSエステルで調製されたRNAi剤コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム(AM00253−SS、1141−66K_6)。
【0119】
B)DBCO−RNAi剤コンジュゲートの合成
【0120】
【化36】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【0121】
RNAi剤コンジュゲートを、ジスルフィド結合を有さないDBCO−NHSエステルを用いて同様に調製した。反応完了時に純度をRP−HPLCによって決定した(純度:54.0%)。RNAi剤コンジュゲートを60%収率(270nmol)で調製した。最終純度をRP−HPLCによって決定し(純度:90.1%)、同一性をMALDI−TOF/TOFによって確認した(計算された質量:6999.3;観察された質量:6998.7)。図8.DBCO−NHSエステルで調製されたRNAi剤コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム(AM01707−SS、1141−18K_1)。
【0122】
C)DBCO−ジスルフィド−メチル−RNAi剤コンジュゲートの合成
【0123】
【化37】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【0124】
RNAi剤コンジュゲートを、ジスルフィド結合を安定化するメチル基を有するDBCO−SS−メチル−NHSエステルを用いて同様に調製した。反応完了時の純度をRP−HPLCによって決定した(純度:74.7%)。RNAi剤コンジュゲートを53%収率(1808nmol)で調製した。最終純度をRP−HPLCによって決定し(純度:96.6%)、同一性をMALDI−TOF/TOFによって確認した(計算された質量:7191.3;観察された質量:7191.7)。図9.DBCO−ジスルフィド−メチル−NHSで調製されたRNAi剤コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム(AM01637−SS、1141−11K_5)。
【0125】
D)DBCO−ジスルフィド−ジメチル−RNAi剤コンジュゲートの合成
【0126】
【化38】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【0127】
RNAi剤コンジュゲートを、ジスルフィド結合を安定化する2つのメチル基を有するDBCO−ジスルフィド−ジメチル−NHSエステルを用いて調整した。反応完了時の純度をRP−HPLCによって決定した(純度:80.6%)。RNAi剤コンジュゲートを66%収率(2259nmol)で調製した。最終純度をRP−HPLCによって決定し(純度:96.6%)、同一性をMALDI−TOF/TOFによって確認した(計算された質量:7205.3;観察された質量:7204.9)。図10.DBCO−ジスルフィド−ジメチル−NHSで調製されたRNAi剤コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム(AM01638−SS、1141−11K_4)。
【0128】
E)DBCO−ジスルフィド−メチル−SMPT−RNAi剤コンジュゲートの合成
【0129】
【化39】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【0130】
RNAi剤コンジュゲートを、DBCO−ジスルフィド−メチル−SMPTを用いて調製した。反応完了時の純度をRP−HPLCによって決定した(純度:72.7%)RNAi剤コンジュゲートを35%収率(1050nmol)で調製した。最終純度をRP−HPLCによって決定し(純度:96.6%)、同一性をMALDI−TOF/TOFによって確認した(計算された質量:7238.3;観察された質量:7238.3)。図11.DBCO−ジスルフィド−メチル−SMPTで調製されたRNAi剤コンジュゲートの反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム(AM02455−SS、1183−61K_2)。
【0131】
【表1】
【0132】
ジスルフィド結合を安定化すると、RNAi剤コンジュゲートは精製前により高い純度で調製することができ、より高い反応収率を可能にする。
LCは、分岐リンカー(RNAi剤にコンジュゲートしたDBCO)を用いる不純物の減少を示した。
【0133】
【化40】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【化41】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【化42】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【化43】
(リン酸基は、RNAi剤又はRNAi試薬センス鎖の一部で有り得る。)
【0134】
実施例4.アルキン−ジスルフィド−アルキル修飾因子のイン・ビボ有効性
A)以下の配列のRNAi剤を、市販の6−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト(Glen Researchから)を用いて付加されたセンス鎖の5´末端にC6アミノリンカーを有する標準的なホスホロアミダイト化学を用いて合成した。
【0135】
【表2】
【0136】
B)N−Boc−エトキシエチルアミンアクリレート及びsec−ブチルアクリレート(EAB)のRAFTコポリマー。酢酸ブチル中のAIBN(1.00mg/mL)及びRAFT剤CPCPA(10.0mg/mL)の溶液を調製した。モノマーモル供給量は55%のN−Boc−エトキシエチルアミンアクリレート、45%のsec−ブチルアクリレートであった(CAS#2998−08−5)。理論的Mwは100,000であった。
【0137】
N−Boc−エトキシエチルアミンアクリレート(0.890g、3.43mmol)sec−ブチルアクリレート(0.391mL、0.360g、2.81mmol)CPCPA溶液(0.350mL、0.0125mmol)、AIBN溶液(0.308mL、0.00188 mmol)、及び酢酸ブチル(5.3mL)を、スターラーバーを備えた20mLガラスバイアルに加えた。バイアルをセプタムキャップ(septa cap)で密閉し、出口としての第2シリンジを有するロングシリンジを用いて1時間、溶液を窒素で通気(bubbled)した。シリンジを除去し、バイアルを80℃に16時間、油浴を用いて加熱した。溶液を室温に冷却し、ヘキサン(35mL)を溶液に添加する前に、50mL遠心管に移した。溶液を2分間4,400rpmで遠心分離した。上清層を注意深くデカントし、底部(固体又はゲル状)層をヘキサンですすいだ。次に底部層をDCM(7mL)に再溶解し、ヘキサン(40mL)で沈殿させ、再度遠心分離した。上清をデカントし、底部層をヘキサンですすいだ後、ポリマーを減圧下で数時間乾燥させた。粗EABコポリマーの収率は0.856gであった。粗ポリマーのサンプルを多角度光散乱(MALS)のために採取した。乾燥した粗コポリマーをDCM(100mg/mL)に溶解した。ヘキサンを曇り点に達する直後まで添加した。得られた乳状溶液を遠心分離した。底部層を抽出し、ヘキサン中に完全に沈殿させた。画分を遠心分離し、その後コポリマーを単離しそして真空下で乾燥させた。EABコポリマーの単離された画分の収率は0.478gであった。分画コポリマーのサンプルを1H−NMR及びMALSのために採取した。1H−NMRによって決定された組成物は61%N−Boc−エトキシエチルアミン及びアクリレート、39%sec−ブチルアクリレートであった。
【0138】
MALS分析
約10mgのコポリマーを、0.5mLの75%ジクロロメタン、20%テトラヒドロフラン、5%アセトニトリルに溶解した。分子量及び多分散性(PDI)を、Jordi 5μ 7.8×300 Mixed Bed LS DVBカラムを使用するShimadzu Prominence HPLCを取り付けたWyatt Heleos II多角度光散乱検出器を用いて測定した。粗ポリマー:MW:59,000(PDI 1.3)、分画ポリマー:MW 70,000(PDI:1.1)。
【0139】
脱保護/透析
乾燥したサンプルを酢酸中の2MのHCl(〜7ml)で1時間処理して、BOC保護基を除去した。次に反応物を20mLの水で希釈し、10〜15分間撹拌した。次に、高塩、高塩、及び水でそれぞれ15時間、8時間、及び15時間、3500MW透析チューブを用いて画分を透析した。次に画分を50mL遠心管に移し、3日間又は乾燥するまで凍結乾燥した。乾燥サンプルをさらなる研究のために水で20mg/mLに調製した。
【0140】
RNAi剤−ポリマー製剤
5mMのpH8.0 HEPES緩衝液中のポリアクリレートEABを、1.5wt%N−ヒドロキシスクシンイミジル活性化PEG4アジド(アジド−dPEG4−NHSエステル、Quanta Biodesignから)で修飾し、RNAi剤のその後の結合のためのアジド基を提供した。次に、アジド−修飾ポリマーを60mg/mLのHEPES塩基で5mg/mLに希釈した。この溶液に15mg/mL(3重量当量)のPEGマスキング試薬PEG−Ala−Cit−PABCを添加して、40〜50%の利用可能なアミン基を修飾した。1時間後、DBCO−修飾げっ歯類第VII因子RNAi剤(ポリマーに対して0.125重量当量)をポリマー溶液に加えた。一晩インキュベーション後、利用可能なアミン基に対してモル過剰のN−アセチルガラクトサミン誘導体NAG−Ala−Cit−PABCの添加によってコンジュゲートをさらに修飾し(表2に示される)、30分間インキュベートした。
【0141】
マウス及び注入手順
6〜8週齢の雌ICRマウスを、Harlan Sprague-Dawley(インディアナポリス、IN)から入手した。Arrowhead Madison Incの動物実験委員会によって承認された動物使用プロトコルに従って、全てのマウスを取り扱った。げっ歯類を12時間の明/暗サイクルで、水及び食料(Harlan Teklad Rodent Diet、ハーラン、マディソン、WI)への自由なアクセスで維持した。送達製剤を、0.2mL(マウス)の総容量のHEPES緩衝(5mM、pH7.5)等張グルコースで標準的な条件下で尾静脈にボーラスとして注入した。マウスは、0.25mg/kgのRNAi剤にコンジュゲートした2mg/kgのポリマーを用いて注入された。血清試料を注入後5日、採取した。
【0142】
血清FVII活性測定
血清サンプルを、標準的な手順に従って0.109Mのクエン酸ナトリウム抗凝血剤(1体積)を含むマイクロ遠心管に、顎下出血により血液を採取することによって調製した。血清中のFVII活性を、製造業者の推奨に従って試験キット(BIOPHEN VII、Aniara、Mason、OH)を用いて、発色法により測定した。比色展開(colorimetric development)の吸光度を、405nmでTecan Safire−2マイクロプレートリーダーを用いて測定した。
【0143】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]