(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773722
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】防錆処理ドラム缶
(51)【国際特許分類】
C23C 18/12 20060101AFI20201012BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
C23C18/12
C23C28/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-92727(P2018-92727)
(22)【出願日】2018年5月14日
(65)【公開番号】特開2019-199625(P2019-199625A)
(43)【公開日】2019年11月21日
【審査請求日】2019年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】391018019
【氏名又は名称】JFEコンテイナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】藤村 克範
(72)【発明者】
【氏名】川田 人詩
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−231207(JP,A)
【文献】
特開2008−240045(JP,A)
【文献】
特開2002−012986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−30/00
B65D 6/00−13/02
B65D 23/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製ドラム缶と、
上記鋼製ドラム缶の内側に塗布形成される被覆材であり、二酸化ケイ素を95%以上含有し0.1μm以上2μm以下の厚さを有する被覆材(110)と、
を備えたことを特徴とする防錆処理ドラム缶。
【請求項2】
上記被覆材の下層に、上記鋼製ドラム缶の内面(100a)に形成された燐酸鉄もしくは燐酸亜鉛を含有する燐酸系被膜(105a)を有する、請求項1に記載の防錆処理ドラム缶。
【請求項3】
上記被覆材は、上記鋼製ドラム缶の内面(100a)に塗布される、請求項1に記載の防錆処理ドラム缶。
【請求項4】
上記被覆材の下層に、有機塗装膜(105b)を有する、請求項1又は2に記載の防錆処理ドラム缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側に防錆処理を施したドラム缶に関する。
【背景技術】
【0002】
JIS Z 1600,1601に規定される鋼製ドラム缶において、その内面は、鋼板表面(鉄地)のままのもの、あるいは鋼板表面に燐酸鉄被膜もしくは燐酸亜鉛被膜を施したものが多い。これらの燐酸系被膜は、本来、缶外面塗装に対する密着性向上あるいは耐食性向上用の下地として缶外面に形成されると同時に、缶内面にも形成されたものである。
【0003】
一方、鋼製ドラム缶は、使用前の保管時における昼夜の気温差などにより、缶内部の空気中水蒸気が缶内面に結露することがあり、鉄の赤錆を発生することがある。缶内面に上述の燐酸系被膜を形成した場合でも、燐酸系被膜は、下地鋼板に対して面積で1.5%程度の下地鋼板の露出があることから、錆び易いという難点がある。また、酸に溶解し易く、缶内容物へ燐酸系の物質が不純物として溶け出す場合も考えられる。これを防止するために有機塗料を塗布した缶も存在するが、塗料の被膜が有機溶剤あるいは化学物質によっては、溶解あるいは溶出することもあり、また酸素あるいは水の透過を完全に防止できない。
【0004】
また、缶内容物がシンナーなどの非水溶媒であっても、大気中水蒸気、あるいは溶媒の不純物などが非水溶媒内に微量に溶解しており、錆の発生、あるいは燐酸被膜の溶出は、避けられない。
【0005】
このような錆の発生、及び缶内容物への燐酸被膜等の溶出を低減あるいは無くす方法の一例として、ドラム缶材料に例えばステンレス鋼あるいはチタン鋼を使用する方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ドラム缶工業会」インターネットホームページ、<URL: http://www.jsda.gr.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上述のようにステンレス鋼あるいはチタン鋼を使用したドラム缶は、高額であるという難点がある。
本発明は、安価にて、防錆効果及び缶内容物への溶出低減効果が従来に比べて大きい防錆処理ドラム缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における防錆処理ドラム缶は、鋼製ドラム缶と、上記鋼製ドラム缶の内側に塗布形成される被覆材であり、二酸化ケイ素を95%以上含有し0.1μm以上2μm以下の厚さを有する被覆材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述の一態様における防錆処理ドラム缶によれば、鋼製ドラム缶の内側に塗布した被覆材は、二酸化ケイ素を95%以上含有し0.1μm以上2μm以下の厚さを有することから、安価であり、かつ防錆効果及び缶内容物への溶出低減効果を従来に比べて大きくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の実施形態における鋼製ドラム缶の内部に塗布された被覆材の一例を示す断面図である。
【
図1B】本発明の実施形態における鋼製ドラム缶の内部に塗布された被覆材の他の例を示す断面図である。
【
図2】
図1A及び
図1Bに示す被覆材が内部に塗布された鋼製ドラム缶を一部断面にて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態である防錆処理ドラム缶について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け当業者の理解を容易にするため、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、以下の説明及び添付図面の内容は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
また、以下に説明する実施形態では、鋼製ドラム缶として、JIS Z 1600に規定するような、胴体に対して天板を着脱自在とした内容量が約200リットルのオープンヘッド型の鋼製ドラム缶を例に採るが、これに限定するものではなく、200リットルを超えるもの、また胴体に地板及び天板を巻締めて接合したJIS Z 1601に規定されるタイトヘッド型をも含む概念である。
【0013】
図2には、本実施形態における鋼製ドラム缶100の全体を示している。この鋼製ドラム缶100は、金属製で円筒状に成形された中空の胴体101と、胴体101の下端開口を閉塞する金属製の地板102と、胴体101の上端開口に着脱自在であり上端開口を閉塞する金属製の天板103とを有する。尚、鋼製ドラム缶100は、経済的観点からステンレス鋼製あるいはチタン鋼製ではない。また、製缶用の鋼材表面には、従来と同様に、燐酸鉄もしくは燐酸亜鉛を含有する燐酸系被膜が塗布されている。
【0014】
さらに、このように構成される鋼製ドラム缶100は、本実施形態ではその内側の全面を覆った被覆材110を有する。一方、全面ではなく必要箇所のみに被覆材110を塗布するようにしてもよい。天板103内側面にも、被覆材110は塗布される。被覆材110は、無機成分を主成分とした被覆材であり、二酸化ケイ素を95%含有したものであり、その厚みが2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で、0.1μm以上を有するものである。
被覆材110の厚さが2μmを超える場合には、塗布された被覆材110の変形に際して内部応力が増大し、被膜が部分破壊するおそれが生じる可能性がある。一方、0.1μmよりも薄くなると被覆材110の連続性が不完全になるおそれが生じる。
よって上述の範囲が経済的観点、外観上観点、乾燥時間の観点からも好ましい。
【0015】
塗布前における被覆材110は、無色透明の液体であり、薬剤によっては揮発成分を含まないものもある。被覆材110の一例としてのシラザンの場合、粘度が高く、薄く塗布するときには、油性塗料のシンナーなどの溶剤で希釈してもよい。他の例としてのポリアルキルアルコキシシランは、揮発成分を含まずに塗布することができ、薄目付けの作業性を考慮して、イソプロピルアルコールで希釈して粘度や濃度を調整してもよい。
【0016】
被覆材110の形成方法は、特に規定しないが、ゾルゲル法、シラザンの塗布、ポリアルキルアルコキシシロキサンなどのシロキサンの塗布などが簡便であり、塗布の自動化及び連続化が容易に行え、工業的量産に適する。また静電塗布によっても可能である。上述の厚さ範囲に塗布可能であれば、塗料と同様の微量噴霧方法も採用可能である。
本実施形態では、塗布装置を設け、該塗布装置に備わり被覆材110を塗布するロールあるいはフエルトに被覆材110を含む液体を含ませ、塗布している。
塗布後、被覆材110のコーティングが鋼製ドラム缶100の内側面に施されることになる。
【0017】
シラザンの場合、大気中の水蒸気(水分)と反応して、アンモニアが離脱して縮合しシリカ皮膜(ガラス)を形成する。ポリアルキルアルコキシシランでは、大気中の水蒸気(水分)と反応して、アルコールが離脱して縮合しシリカ皮膜(ガラス)を形成する。シンナーあるいはイソプロピルアルコールなどで希釈された薬剤の場合には、希釈に用いたシンナーあるいはアルコールが揮発した後、大気中の水分と反応し、アンモニアあるいはアルコールが離脱することで縮合して目的の皮膜を形成する。
【0018】
また被覆材110は、
図1Aに示すように、鋼製ドラム缶100の内面100aにおいて素材の鉄地に形成された燐酸系被膜105aに、あるいは燐酸系被膜105a上に塗布された有機塗装膜105bに、あるいは素材の鉄地に塗布された有機塗装膜105bに、塗布することができる。また、
図1Bに示すように鋼製ドラム缶100の内面100aに対して素材の鉄地上に直接、被覆材110を塗布することもできる。
【0019】
このような被覆材110の塗布は、被覆材110の殆どを二酸化ケイ素で占めることから、いわゆるガラスコーティングを行うことに相当する。よって、鋼製ドラム缶100の素材である鉄地を覆い、また鋼製ドラム缶100の外内面に塗布される場合における上述の燐酸系被膜の被覆欠陥を覆うように被覆材110を塗布しガラスコーティングすることで、錆の発生を防ぐことができ、鉄あるいは燐酸被膜の溶解を防止して、缶内容物の汚染を防止することができる。
また、ステンレス鋼あるいはチタン鋼製のドラム缶に比べて非常に安価にて、上述の防錆効果等を得ることができることも、大きな利点である。
【0020】
一方、鋼製ドラム缶100の内側に対して被覆材110を塗布するにあたり、以下の点の工夫を行っている。
即ち、鋼製ドラム缶100の胴体101には、円周方向に設けられた山形状の輪帯(ビード)101aが複数個、形成されている。塗布装置に備わり被覆材110を塗布するロールあるいはフエルトは、輪帯101aの形状に沿うような形状を有し、塗り残しをなくしている。
【0021】
また、上述のように非常に薄い厚さにて被覆材110を塗布すること、また、塗布する被覆材110が無色透明であることから、塗布された箇所の目視が困難である。そこで、本実施形態では、被覆材110に微量、例えば0.05%から0.5%程度の含有量にて蛍光剤を混在させ、ブラックライトを照射して蛍光させて塗布箇所の確認検査を行っている。被覆材110の一例としての例えばアルキルアルコキシシロキサンなどの塗布による被覆の場合、アルコール可溶の、セリ科植物などで生成するウンベリフェロンなどの蛍光剤を混在させ、皮膜完成後にブラックライトを照射して蛍光させて塗布箇所の確認検査を行っている。該検査により、非塗布箇所の検出を可能にし、いわゆる塗り残し等の防止を図ることができる。その他、蛍光X線によるシリコンの検出定量などによって、製造中のインライン計測によって均一被覆を検査する方法も有効である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、缶内側に防錆処理を施したドラム缶に適用可能である。
【符号の説明】
【0023】
100…鋼製ドラム缶、105a…燐酸系被膜、105b…有機塗装膜、
110…被覆材。