特許第6773740号(P6773740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773740
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】状態判定装置及び状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20201012BHJP
   B29C 45/78 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B29C45/76
   B29C45/78
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-185855(P2018-185855)
(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公開番号】特開2020-55146(P2020-55146A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2020年2月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳史
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−094810(JP,A)
【文献】 特開2017−030221(JP,A)
【文献】 特開2017−154497(JP,A)
【文献】 特開2013−082181(JP,A)
【文献】 特開2015−000482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機における動作状態を判定する状態判定装置であって、
前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得部と、
基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データを記憶する諸元データ記憶部と、
前記諸元データ記憶部に記憶された、前記基準となる射出成形機の諸元データ及び前記他の射出成形機の諸元データを用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得部が取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換部と、
前記数値変換部により変換された前記基準尺度のデータを用いた機械学習を行い、学習モデルを生成する学習部と、
を備えた状態判定装置。
【請求項2】
射出成形機における動作状態を判定する状態判定装置であって、
前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得部と、
基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データを記憶する諸元データ記憶部と、
前記諸元データ記憶部に記憶された、前記基準となる射出成形機の諸元データ及び前記他の射出成形機の諸元データを用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得部が取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換部と、
基準となる射出成形機に係る基準尺度のデータに基づいて機械学習した学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記数値変換部により変換された前記基準尺度のデータに基づいて、前記学習モデル記憶部に記憶された学習モデルを用いた推定を行う推定部と、
を備えた状態判定装置。
【請求項3】
前記学習部は、教師あり学習、教師なし学習、及び強化学習のうち少なくとも1つの学習を行う、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記射出成形機の動作状態に係る異常度を推定し、
前記状態判定装置は、前記推定部が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合に表示装置に警告メッセージを表示する、
請求項2記載の状態判定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記射出成形機の動作状態に係る異常度を推定し、
前記状態判定装置は、前記推定部が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合に表示装置に警告アイコンを表示する、
請求項2記載の状態判定装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記射出成形機の動作状態に係る異常度を推定し、
前記状態判定装置は、前記推定部が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合に射出成形機に運転の停止、減速、又は原動機のトルクを制限する指令の少なくとも1つを出力する、
請求項2記載の状態判定装置。
【請求項7】
射出成形機における動作状態を判定する状態判定方法であって、
前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得ステップと、
基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データより呼び出した諸元値を用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得ステップで取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換ステップと、
前記数値変換ステップで変換された前記基準尺度のデータを用いた機械学習を行い、学習モデルを生成する学習ステップと、
を実行する状態判定方法。
【請求項8】
射出成形機における動作状態を判定する状態判定方法であって、
前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得ステップと、
基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データより呼び出した諸元値を用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得ステップで取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換ステップと、
基準となる射出成形機に係る基準尺度のデータに基づいて機械学習した学習モデルを用いて、前記数値変換ステップで変換された前記基準尺度のデータに基づいて射出成形機の状態の推定を行う推定ステップと、
を実行する状態判定方法。
【請求項9】
前記データ取得部が取得するデータのうちで、前記数値変換部が基準尺度に変換するデータは、前記射出成形機の運転に係る位置、速度、加速度、電流、電圧、トルク、圧力、温度、流量、流速、のうち少なくとも1つである、
請求項1記載の状態判定装置。
【請求項10】
前記諸元データ記憶部に記憶する諸元データは、前記射出成形機を駆動する原動機の最大トルク、定格トルク、最大電流、定格電流、最大回転数、立上がり時定数、モータイナーシャ、減速機構の減速比、ベルト幅、プーリ歯数、ボールネジ径、ボールネジリード、射出成形機が備える射出装置または型締装置の可動部の最大ストローク、最大速度、最大推力、最大圧力、イナーシャ、機械効率、最大型締力、スクリュ径のうち少なくとも1つである、
請求項1記載の状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態判定装置及び状態判定方法に関し、特に射出成形機の保守を補助する状態判定装置及び状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機等の産業機械の保守は定期的あるいは異常発生時に行っている。産業機械を保守する際には、産業機械の動作時に記録しておいた産業機械の動作状態を示す物理量を用いることにより、保守担当者が産業機械の動作状態の異常有無を判定し、異常が生じた部品の交換などの保守作業を行なう。
【0003】
例えば、射出成形機が備える射出シリンダの逆流防止弁の保守作業としては、定期的に射出シリンダからスクリュを抜き出して、逆流防止弁の寸法を直接測定する方法が知られている。しかしながら、この方法では生産を一旦停止して、測定作業を行わなくてはならず、生産性が低下するという問題が有った。
【0004】
この様な問題を解決するための従来技術として、射出シリンダからスクリュを抜き出すなど生産を一旦停止させることなく、間接的に射出シリンダの逆流防止弁の摩耗量を検出して異常を診断する方法として、スクリュに加わる回転トルクの検出や、樹脂がスクリュ後方へ逆流する現象を検出して、異常を診断する方法が知られている。例えば特許文献1には、スクリュの回転方法に作用する回転トルクを測定して許容範囲を超えたら異常と判定することが示されている。また、特許文献2,3には、駆動部の負荷や樹脂圧力などを教師あり学習によって異常を診断することが示されている。更に、特許文献4には、複数の製造機械の内部情報を取得して、ぞれぞれの製造機械より取得した内部情報の差異を比較して異常を発見することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−168421号公報
【特許文献2】特開2017−030221号公報
【特許文献3】特開2017−202632号公報
【特許文献4】特許第6031202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、射出成形機の駆動部を構成するモータの定格トルクやイナーシャ、減速機の減速比などの諸元が異なる機械では、異常と判断する許容範囲を調整する作業を必要する課題があった。
【0007】
また、特許文献2,3に開示される技術では、射出成形機の駆動部を構成する要素の諸元が異なる機械では、該機械より得られる測定値と機械学習時に入力した学習データの数値との乖離が大きく、正しく機械学習による診断ができない課題があった。例えば、大型の射出成形機を運転した際に得られる駆動部の負荷や樹脂圧力などの測定値は大きいが、小型の射出成形機を運転して得られる駆動部の負荷や樹脂圧力の測定値は小さい。そのため、大型の射出成形機を運転した際に得られる駆動部の負荷や樹脂圧力などの測定値を学習データとして機械学習させた学習モデルを用いて、小型の射出成形機を運転して得られる測定値をそのまま学習データとして異常度を推定しても射出成形機毎に異なる諸元の差異が影響して正しく異常度を推定できない課題があった。
【0008】
更に、特許文献4に開示される技術では、例えば大型と小型の射出成形機では機械を運転して得られる駆動部の負荷や樹脂圧力の測定値に差異があるので、測定値を内部情報として比較しても、異常有無を正しく推定できない課題があった。
【0009】
機械学習の技術を用いる場合、機械学習の学習モデルを作成する際に、学習条件として射出成形機を構成するモータ、減速機、可動部の機材の組合せの数だけ多種多様な学習条件を準備して機械学習させることで、様々な大きさ、様々な機材を備えた機械に対応させて診断精度をあげることもできるが、モータ、減速機、可動部を機材の組合せの数だけ該当部品を用意するには、多くのコストを要し、その上、機械を運転する際には、樹脂やワーク等の生産材も用意する必要があり、学習データを取得するために要する生産材のコストも大きい。また、学習データを取得する作業に、多くの時間を要する。そのため、効率的に学習データを収集できない課題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、大きなコストを掛けることなく様々な射出成形機の保守を補助することが可能な状態判定装置及び状態判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、機械学習に入力する時系列の物理量について、原動機の種類等の諸元が異なる射出成形機より取得した時系列の物理量であっても、射出成形機に記憶されている諸元データに基づいて観測した時系列の物理量(電流、速度など)を基準となる尺度の物理量へと数値変換して導いた状態変数を学習データとして機械学習に入力して異常度を推定することによって、上記課題を解決する。
【0012】
より具体的には、射出成形機の機種が異なっても、例えば機械のサイズが小型/大型と異なっている場合や、射出成形機を構成する射出装置や型締め装置、あるいは射出シリンダやスクリュや原動機等の構成部品が異なっている場合であっても、機種や構成部品の差異を吸収するように数値変換された学習データを機械学習に適用することよって異常度を推定することを実現する。
【0013】
また、機械学習の出力として得られる異常度を基に、異常度が所定の閾値を超えた場合、作業者の安全を確保するため、機械の可動部の動作を停止あるいは減速させたり、あるいは安全な状態で可動部が動作するように可動部を駆動する原動機を減速させたり、原動機の駆動トルクを小さく制限したり、異常の状態を表現するメッセージやアイコンを表示装置に表示する手段をも設ける。
【0014】
そして、本発明の一態様は、射出成形機における動作状態を判定する状態判定装置であって、前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得部と、基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データを記憶する諸元データ記憶部と、前記諸元データ記憶部に記憶された、前記基準となる射出成形機の諸元データ及び前記他の射出成形機の諸元データを用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得部が取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換部と、前記数値変換部により変換された前記基準尺度のデータを用いた機械学習を行い、学習モデルを生成する学習部と、を備えた状態判定装置である。
【0015】
本発明の他の一態様は、射出成形機における動作状態を判定する状態判定装置であって、前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得部と、基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データを記憶する諸元データ記憶部と、前記諸元データ記憶部に記憶された、前記基準となる射出成形機の諸元データ及び前記他の射出成形機の諸元データを用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得部が取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換部と、基準となる射出成形機に係る基準尺度のデータに基づいて機械学習した学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、前記数値変換部により変換された前記基準尺度のデータに基づいて、前記学習モデル記憶部に記憶された学習モデルを用いた推定を行う推定部と、を備えた状態判定装置である。
【0016】
本発明の他の態様は、射出成形機における動作状態を判定する状態判定方法であって、前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得ステップと、基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データより呼び出した諸元値を用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得ステップで取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換ステップと、前記数値変換ステップで変換された前記基準尺度のデータを用いた機械学習を行い、学習モデルを生成する学習ステップと、を実行する状態判定方法である。
【0017】
本発明の他の態様は、射出成形機における動作状態を判定する状態判定方法であって、前記射出成形機に係るデータを取得するデータ取得ステップと、基準となる射出成形機、及び該基準となる射出成形機とは異なる少なくとも1つの他の射出成形機の諸元データより呼び出した諸元値を用いて、データの種類毎に定められた変換式により前記データ取得ステップで取得したデータを基準尺度のデータへと変換する数値変換ステップと、基準となる射出成形機に係る基準尺度のデータに基づいて機械学習した学習モデルを用いて、前記数値変換ステップで変換された前記基準尺度のデータに基づいて射出成形機の状態の推定を行う推定ステップと、を実行する状態判定方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、射出成形機の様々な機種における学習データを収集して機械学習しなくとも、学習時及び推定時において取得されたデータが基準尺度のデータへと数値変換されて学習乃至推定処理が行われるため、機械学習時において大きなコストを掛けることなく様々な射出成形機に係る状態の推定を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態による状態判定装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】第1実施形態による状態判定装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】諸元データの例を示す図である。
図4】トルク値の数値変換の例を示す図である。
図5】射出圧の数値変換の例を示す図である。
図6】第2実施形態による状態判定装置の学習時の概略的な機能ブロック図である。
図7】異常状態の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は一実施形態による機械学習装置を備えた状態判定装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本実施形態の状態判定装置1は、例えば射出成形機を制御する制御装置上に実装することができる。また、本実施形態の状態判定装置1は、射出成形機を制御する制御装置と併設されたパソコンや、該制御装置と有線/無線のネットワークを介して接続されたエッジコンピュータ、セルコンピュータ、ホストコンピュータ、クラウドサーバ等のコンピュータとして実装することができる。本実施形態では、状態判定装置1を、射出成形機を制御する制御装置と併設されたパソコンとして実装した場合の例を示す。
【0021】
本実施形態による状態判定装置1が備えるCPU11は、状態判定装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステム・プログラムをバス20を介して読み出し、該システム・プログラムに従って状態判定装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データ、入力装置71を介して作業者が入力した各種データ等が一時的に格納される。
【0022】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)等で構成され、状態判定装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、状態判定装置1の動作に係る設定情報が格納される設定領域や、入力装置71から入力されたデータ、射出成形機2から取得される各種データ(機種、金型の質量や材質、樹脂の種類等)、射出成形機2の成形動作において検出される各種物理量(ノズルの温度、ノズルを駆動するモータの位置、速度、加速度、電流、電圧、トルク、金型の温度、樹脂の流量、流速、圧力等)の時系列データ、図示しない外部記憶装置やネットワークを介して読み込まれたデータ等が記憶される。不揮発性メモリ14に記憶されたプログラムや各種データは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、各種データを解析するための公知の解析プログラムや後述する機械学習装置100とのやりとりを制御するためのプログラム等を含むシステム・プログラムが予め書き込まれている。
【0023】
射出成形機2は、プラスチック等の樹脂で成形された製品を製造する機械であり、材料である樹脂を溶かして金型内に充填(射出)して成形する機械である。射出成形機2は、ノズル、モータ(原動機)、伝達機構、減速機、可動部等の様々な機材で構成されており、各部の状態がセンサ等で検出され、各部の動作が制御装置により制御される。射出成形機2に用いられる原動機としては、例えば、電動機、油圧シリンダ、油圧モータ、空気モータ等が用いられる。また、射出成形機2に用いられる伝達機構としては、ボールネジ、歯車、プーリー、ベルト等が用いられる。
【0024】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラム等が実行された結果として得られたデータ、後述する機械学習装置100から出力されたデータ等がインタフェース17を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、作業者による操作に基づく指令,データ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0025】
インタフェース21は、状態判定装置1と機械学習装置100とを接続するためのインタフェースである。機械学習装置100は、機械学習装置100全体を統御するプロセッサ101と、システム・プログラム等を記憶したROM102、機械学習に係る各処理における一時的な記憶を行うためのRAM103、及び学習モデル等の記憶に用いられる不揮発性メモリ104を備える。機械学習装置100は、インタフェース21を介して状態判定装置1で取得可能な各情報(例えば、射出成形機2の機種、金型の質量や材質、樹脂の種類等の各種データ、ノズルの温度、ノズルを駆動するモータの位置、速度、加速度、電流、電圧、トルク、金型の温度、樹脂の流量、流速、圧力等の各種物理量の時系列データ)を観測することができる。また、状態判定装置1は、機械学習装置100から出力される処理結果をインタフェース21を介して取得し、取得した結果を記憶したり、表示したり、他の装置に対して図示しないネットワーク等を介して送信する。
【0026】
図2は、第1実施形態による状態判定装置1と機械学習装置100の概略的な機能ブロック図である。本実施形態の状態判定装置1は、機械学習装置300が学習を行う場合に必要とされる構成を備えている(学習モード)。図2に示した各機能ブロックは、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11、及び機械学習装置100のプロセッサ101が、それぞれのシステム・プログラムを実行し、状態判定装置1及び機械学習装置100の各部の動作を制御することにより実現される。
【0027】
本実施形態の状態判定装置1は、データ取得部30、数値変換部32、前処理部34を備え、状態判定装置1が備える機械学習装置100は、学習部110を備えている。また、不揮発性メモリ14上には、機械学習装置100による機械学習に用いられる学習データが記憶される学習データ記憶部50と、射出成形機の諸元データを記憶する諸元データ記憶部52が設けられており、機械学習装置100の不揮発性メモリ104上には、学習部110による機械学習により構築された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部130が設けられている。
【0028】
データ取得部30は、射出成形機2、及び入力装置71等から入力された各種データを取得する機能手段である。データ取得部30は、例えば、射出成形機2の機種、金型の質量や材質、樹脂の種類等の各種データ、ノズルの温度、ノズルを駆動するモータの位置、速度、加速度、電流、電圧、トルク、金型の温度、樹脂の流量、流速、圧力等の各種物理量の時系列データ、作業者により入力された射出成形機の保守作業に係る情報等の各種データを取得し、学習データ記憶部50に記憶する。データ取得部30は、図示しない外部記憶装置や有線/無線のネットワークを介して他の装置からデータを取得するようにしても良い。
【0029】
数値変換部32は、諸元データ記憶部52に記憶されている諸元データを用いて学習データ記憶部50に記憶された学習データに含まれる射出成形機2に係るデータを数値変換する機能手段である。数値変換部32は、データの種類毎に予め定められた変換式と、諸元データ記憶部52に記憶されている射出成形機の機種毎の諸元データとを用いて、学習データに含まれる射出成形機2から取得されたデータを、基準となる射出成形機の機種の尺度のデータへと変換する。
【0030】
図3は、諸元データ記憶部52に記憶されている諸元データの例を示す図である。諸元データは、機械の性能諸要素を数字(諸元値)で表したものであり、機械を製造するメーカーから諸元表などの形で提供されている。諸元データ記憶部52には、基準となる射出成形機(図3の例では機種D)と、その他の射出成形機について、射出成形機の機種を識別できる識別情報と、それぞれの射出成形機の諸元データとが関連付けられて記憶されている。諸元データとしては、例えばモータの最大トルク、定格トルク、最大電流、定格電流、最大回転数、立上がり時定数、 モータイナーシャ、減速機の減速比、ベルト幅、プーリ歯数、ボールネジ径、ボールネジリード、射出成形機が備える射出装置または型締装置の可動部の最大ストローク、最大速度、最大推力、最大圧力、イナーシャ、機械効率、最大型締力、スクリュ径等が挙げられる。
【0031】
数値変換部32は、学習データ記憶部50に記憶されている学習データに含まれる射出成形機2に係る時系列データについて、該時系列データを変換対象データとして、諸元データ記憶部52に記憶された該射出成形機の機種に対応する諸元データ及び基準となる射出成形機の機種の諸元データに基づいて、該変換対象データの種類毎に定められた変換式により基準尺度のデータへと変換する。データの種類毎の変換式は、予め状態判定装置1の不揮発性メモリ14上に定義しておく。一般に、データの種類毎の変換式は、基準となる射出成形機と変換対象となるデータを取得した射出成形機とにおける、当該データに物理的に関連するデータ項目が取るデータ値又は取り得るデータ値の最小値から最大値の範囲の比率を、該データと該データに物理的に関連するデータ項目との関係に基づいて乗算する式として定義できる。例えば、射出成形機の可動部を駆動するモータのトルクに関する変換式は、基準となる射出成形機のモータ最大トルクmaxTs(モータ最小トルク値は0)、変換対象データを取得した射出成形機のモータ最大トルクmaxTc(モータ最小トルク値は0)、基準となる射出成形機の減速比Rrs、変換対象データを取得した射出成形機の減速比Rrcを用いた以下の数1式により定めることができる。数1式において、Tcは変換対象データとしてのトルク値であり、Tsは変換後の基準尺度のトルク値である。図4のグラフは、基準となる射出成形機が図3に例示される機種Dの諸元データを持つものであり、図3に例示される機種Aの射出成形機から取得したデータであるトルク値を、数1式を用いて変換する場合の、変換前のトルク値と変換後のトルク値(基準尺度のトルク値)をグラフで例示したものである。
【0032】
【数1】
【0033】
また、例えば、射出成形機の射出圧に関する変換式は、基準となる射出成形機の最大射出圧maxIps(最小射出圧は0)、変換対象データを取得した射出成形機の最大射出圧maxIpc(最小射出圧は0)、基準となる射出成形機のスクリュ径Sds、変換対象データを取得した射出成形機のスクリュ径Sdcを用いた以下の数2式により定めることができる(スクリュ径は射出圧に対して2乗のオーダーで関係する)。数2式において、Ipcは変換対象データとしての射出圧であり、Ipsは変換後の基準尺度の射出圧である。図5のグラフは、基準となる射出成形機が図3に例示される機種Dの諸元データを持つものであり、図3に例示される機種Bの射出成形機から取得したデータである射出圧を、数2式を用いて変換する場合の、変換前の射出圧と変換後の射出圧(基準尺度の射出圧)をグラフで例示したものである。他のデータの種類の変換式についても、射出成形機の構造を考慮して上記と同様に定めれば良い。
【0034】
【数2】
【0035】
前処理部34は、数値変換部32が基準尺度へと変換したデータに基づいて、機械学習装置100による学習に用いられる状態データを作成する。前処理部34は、数値変換部32から取得したデータを機械学習装置100において扱われる統一的な形式へと変換(数値化、正規化、サンプリング等)した状態データを作成する。例えば、前処理部34は、機械学習装置100が教師なし学習をする場合においては、該学習における所定の形式の状態データSを作成し、機械学習装置100が教師あり学習をする場合においては、該学習における所定の形式の状態データS及びラベルデータLの組を作成し、機械学習装置100が強化学習をする場合においては、該学習における所定の形式の状態データS及び判定データDの組を作成する。
【0036】
学習部110は、数値変換部32が基準尺度へと変換したデータに基づいて前処理部34が作成した状態データを用いた機械学習を行う。学習部110は、教師なし学習、教師あり学習、強化学習等の公知の機械学習の手法により、射出成形機2から取得されたデータを用いた機械学習を行うことで学習モデルを生成し、生成した学習モデルを学習モデル記憶部130に記憶する。学習部110が行う教師なし学習の手法としては、例えばautoencoder法、k−means法等が、教師あり学習の手法としては、例えばmultilayer perceptronn法、recurrent neural network法、Long Short−Term Memory法、convolutional neural network法等が、強化学習の手法としては、例えばQ学習等が挙げられる。
【0037】
学習部110は、例えば、正常に動作している状態の射出成形機2から取得された学習データを数値変換部32,前処理部34が変換した状態データに基づいた教師なし学習を行い、正常状態で取得された(そして基準尺度へと変換された)学習データの分布を学習モデルとして生成することができる。このようにして生成された学習モデルを用いて、後述する推定部120は、射出成形機2から取得された学習データが、正常状態の動作時に取得された学習データからどれだけ外れているのかを推定し、推定結果としての異常度を算出することができる。
また、学習部110は、例えば、正常に動作している状態の射出成形機から取得されたデータに正常ラベルを、異常が発生した前後に射出成形機2から取得されたデータに異常ラベルを付与したデータを用いた教師あり学習を行い、正常データと異常データとの判別境界を学習モデルとして生成することができる。このようにして生成された学習モデルを用いて、後述する推定部120は、射出成形機2から取得された学習データが、正常データに属するのか、異常データに属するのかを推定し、推定結果としてのラベル値(正常/異常)とその信頼度を算出することができる。
【0038】
上記構成を備えた状態判定装置1では、射出成形機2から取得された学習データを、基準となる射出成形機の尺度へと変換し、変換後のデータを用いて学習部110が学習を行う。このように学習部110が学習に用いるデータは、数値変換部32が基準尺度へと変換したデータに基づくものであるため、学習部110により作成される学習モデルは、基準尺度となる射出成形機の取り得るデータの範囲での変化するデータ値に対して推定を行うためのものとなる。
【0039】
図6は、第2実施形態による状態判定装置1と機械学習装置100の概略的な機能ブロック図である。本実施形態の状態判定装置1は、機械学習装置300が推定を行う場合に必要とされる構成を備えている(推定モード)。図6に示した各機能ブロックは、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11、及び機械学習装置100のプロセッサ101が、それぞれのシステム・プログラムを実行し、状態判定装置1及び機械学習装置100の各部の動作を制御することにより実現される。
【0040】
本実施形態の状態判定装置1は、第1実施形態と同様に、データ取得部30、数値変換部32、状態判定装置1が備える機械学習装置100は、推定部120を備えている。また、不揮発性メモリ14上には、機械学習装置100による状態の推定に用いられる学習データが記憶される学習データ記憶部50と、射出成形機の諸元データを記憶する諸元データ記憶部52が設けられており、機械学習装置100の不揮発性メモリ104上には、学習部110による機械学習により構築された学習モデルが記憶されている学習モデル記憶部130が設けられている。
【0041】
本実施形態によるデータ取得部30、数値変換部32は、第1実施形態におけるデータ取得部30、数値変換部32と同様の機能を備える。
本実施形態による前処理部34は、学習データ記憶部50に記憶された学習データを、数値変換部32が基準尺度へと変換したデータに基づいて、機械学習装置100による推定に用いられるデータを作成する。前処理部34は、取得したデータを機械学習装置100において扱われる統一的な形式へと変換(数値化、正規化、サンプリング等)した状態データを作成する。前処理部34は、機械学習装置100による推定における所定の形式の状態データSを作成する。
【0042】
推定部120は、前処理部34がラベル無しデータに基づいて作成した状態データSに基づいて、学習モデル記憶部130に記憶された学習モデルを用いた射出成形機の状態の推定を行う。本実施形態の推定部120では、学習部110により生成された(パラメータが決定された)学習モデルに対して、前処理部34から入力された状態データSを入力することで、射出成形機の状態に係る異常度を推定して算出したり、射出成形機の動作状態の属するクラス(正常/異常等)を推定して算出したりする。推定部120が推定した結果(射出成形機の状態に係る異常度や射出成形機の動作状態の属するクラス等)は、表示装置70に表示出力したり、図示しない有線/無線ネットワークを介してホストコンピュータやクラウドコンピュータ等に送信出力して利用するようにしても良い。また、状態判定装置1は、推定部120により推定された結果が所定の状態になった場合(例えば、推定部120が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合、推定部120が推定した射出成形機の動作状態の属するクラスが「異常」になった場合等)、例えば図7に例示されるように、表示装置70への警告メッセージやアイコンでの表示出力をするようにしても良いし、射出成形機に対して運転の停止、減速、又はモータのトルクを制限する指令等を出力するようにしても良い。
【0043】
上記構成を備えた状態判定装置1では、射出成形機2から取得された学習データを、基準となる射出成形機の尺度へと変換し、変換後のデータを用いて推定部120が該射出成形機2の状態の推定を行う。学習モデル記憶部130に記憶されてる学習モデルは、基準尺度となる射出成形機の取り得るデータの範囲での変化するデータ値に対して推定を行うためのものであるが、基準となる射出成形機以外の機種である射出成形機から取得された学習データであっても、推定部120が推定を行う前に、数値変換部32により基準となる尺度のデータへと変換されるため、適切な推定処理を行うことができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
例えば、上記した実施形態では状態判定装置1と機械学習装置100が異なるCPU(プロセッサ)を有する装置として説明しているが、機械学習装置100は状態判定装置1が備えるCPU11と、ROM12に記憶されるシステム・プログラムにより実現するようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 状態判定装置
2 射出成形機
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
16,17,18 インタフェース
20 バス
21 インタフェース
30 データ取得部
32 数値変換部
34 前処理部
50 学習データ記憶部
52 諸元データ記憶部
70 表示装置
71 入力装置
100 機械学習装置
101 プロセッサ
102 ROM
103 RAM
104 不揮発性メモリ
110 学習部
120 推定部
130 学習モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7