(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る射出成形機、および射出成形機のスクリュ制御方法について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る射出成形機10の構成の一部を例示する概略構成図である。射出成形機10は、スクリュ12、射出用シリンダ14、直進用サーボモータ16、動力伝達機構18、エンコーダ20、54、ホッパ22、ノズル24、ヒータ26、トルク検出部27、および制御装置28、回転用サーボモータ50、および歯車機構52等を備える。
【0013】
スクリュ12は、射出用シリンダ14内に、その軸方向に移動可能に挿入されている。射出用シリンダ14の先端にはノズル24が設けられている。このノズル24から溶融した樹脂が射出する。ノズル24には、射出用シリンダ14の中空部14aと連通するノズル孔24aが形成されている。スクリュ12の移動方向として、ノズル24の側への方向を前方向、その反対方向を後方向とする。スクリュ12が前進することにより、射出用シリンダ14内の樹脂が前方向へと押し出され、ノズル孔24aの前端から、不図示の金型のキャビティ内へ射出される。
【0014】
直進用サーボモータ16は、スクリュ12を射出用シリンダ14の軸方向に移動させるための駆動源である。
【0015】
動力伝達機構18は、プーリ30、32、環状のベルト34、ボールねじ36、およびナット38等を含む。プーリ30および環状のベルト34は、プーリ32に直進用サーボモータ16の回転力を伝達する機構である。ボールねじ36、ボールねじ36と一体的に回転可能にボールねじ36に取り付けられたプーリ32、および、ボールねじ36に螺合したナット38は、プーリ32に伝達された回転力を直進運動に変換する。ナット38は、図示しない支持部材によって固定支持されている。スクリュ12は、ボールねじ36と連結され、ボールねじ36が直進することにより直進する。
【0016】
エンコーダ20は、直進用サーボモータ16に取り付けられ、直進用サーボモータ16の回転位置を検出する。エンコーダ20により検出された回転位置の変化により、スクリュ12の軸方向における位置と、スクリュ12の移動速度Vとを求めることができる。エンコーダ20は、位置検出部の一例である。
【0017】
回転用サーボモータ50は、射出用シリンダ14の軸を中心軸として、スクリュ12を回転させるための駆動源である。
【0018】
歯車機構52は、互いに噛合する2つの歯車60、62等を含む。歯車60は、回転用サーボモータ50の回転力を歯車62に伝達する。歯車62は、その軸部分がスクリュ12と連結され、歯車60から伝達された回転用サーボモータ50の回転力をスクリュ12に伝達する。スクリュ12は、歯車62が回転することにより回転する。なお、回転用サーボモータ50の回転力をスクリュ12に伝達するための駆動機構として、歯車機構52に代えて、ベルトやプーリ等を含む駆動機構が用いられてもよい。
【0019】
エンコーダ54は、回転用サーボモータ50に取り付けられ、回転用サーボモータ50の回転角度を検出する。エンコーダ54により検出された回転角度の変化により、スクリュ12の回転角度ωと回転角速度Vωとを求めることができる。エンコーダ54は、位置検出部の他の一例である。
【0020】
ホッパ22は、ペレット状の樹脂を射出用シリンダ14内に供給するためのものである。ヒータ26は、射出用シリンダ14の外周とノズル24の外周とに設けられている。ヒータ26は、射出用シリンダ14およびノズル24を加熱することにより、その内部の樹脂を加熱する。これにより、ホッパ22を介して射出用シリンダ14内に供給された樹脂が溶融する。なお、ヒータ26による加熱が停止すると、溶融した樹脂は固化する。
【0021】
トルク検出部27は、直進用サーボモータ16および回転用サーボモータ50の各トルクを検出する。本実施形態におけるトルク検出部27は、電流計を有し、制御装置28における下記のモータ駆動制御部40から直進用サーボモータ16および回転用サーボモータ50へ出力される各電流を検出することにより、直進用サーボモータ16および回転用サーボモータ50の各トルクを算出する。なお、トルク検出部27は、直進用サーボモータ16のトルクと、回転用サーボモータ50のトルクのうちの少なくとも一方を、直接検出してもよい。
【0022】
制御装置28は、ヒータ26を制御して樹脂を加熱してから、直進用サーボモータ16等を制御し、スクリュ12を射出用シリンダ14内において前進させ、樹脂をキャビティ内へと射出させる。制御装置28による射出動作が一旦中断または停止すると、ヒータ26の動作も停止し、樹脂は冷えて固化する。制御装置28は、再度、ヒータ26を制御して樹脂を加熱し溶融させてから、スクリュ12を前進させる。このとき未溶融の樹脂が射出用シリンダ14内に残存している場合に、スクリュ12を動かすとスクリュ12が折損する虞がある。このようなスクリュ12の折損防止のために、制御装置28は、本実施形態に係るスクリュ12の制御処理を行う。当該制御処理は、射出用シリンダ14内の樹脂が溶融しているか否かを確認するための処理であり、ヒータ26による加熱の停止後、再度の加熱があった場合に実行される。制御装置28は、モータ駆動制御部40、判定部44、および報知部46等を備える。
【0023】
制御装置28は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、サーボアンプ、および、出力インターフェース回路を介してプロセッサと接続された音声出力装置やディスプレイ装置等の出力装置等により構成することができる。プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムや各種情報を用いて処理を実行し、サーボアンプを介することにより、モータ駆動制御部40の機能を実現することができる。プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムや各種情報を用いて処理を実行することにより、判定部44の機能を実現することができる。また出力装置により報知部46の機能を実現することができる。
【0024】
モータ駆動制御部40は、直進用サーボモータ16の駆動を制御して、射出用シリンダ14内におけるスクリュ12を前後方向に移動させる。本実施形態におけるモータ駆動制御部40は、スクリュ12を最前位置まで前進させる。この最前位置は、射出用シリンダ14の移動範囲における最前位置である。モータ駆動制御部40は、予め決められた移動速度V
0でスクリュ12が移動するように直進用サーボモータ16の駆動を制御する。モータ駆動制御部40は、エンコーダ20が検出した回転角速度等に基づいて、直進用サーボモータ16をフィードバック制御する。
【0025】
ここで、モータ駆動制御部40は、直進用サーボモータ16のトルクτが予め決められた制限トルクτ
Lを超えないように、トルク制限をかけて直進用サーボモータ16を制御する。モータ駆動制御部40は、トルク検出部27が検出したトルクτに基づいて、直進用サーボモータ16を制御する。
【0026】
トルクを制限する理由としては、溶融していない樹脂が残存している可能性があるので、未溶融の樹脂によるスクリュ12の破損を防止するためである。直進用サーボモータ16の制限トルクτ
Lは、溶融した樹脂の中をスクリュ12が前進するときに発生する直進用サーボモータ16のトルクτよりも大きいトルクである。モータ駆動制御部40は、直進用サーボモータ16に供給する電流を制限することで直進用サーボモータ16のトルクτを制限することができる。
【0027】
ここで、スクリュ12が未溶融樹脂と衝突していない場合には、直進用サーボモータ16のトルクτは制限トルクτ
L以下となるが、スクリュ12が未溶融樹脂と衝突すると、直進用サーボモータ16のトルクτが大きくなり、制限トルクτ
Lに達してしまう。また、スクリュ12が未溶融樹脂と衝突して、直進用サーボモータ16のトルクτが制限トルクτ
Lに達してしまうと、直進用サーボモータ16のトルクτは制限トルクτ
Lより大きくならない。したがって、スクリュ12の移動速度Vは、上述した予め決められた移動速度V
0より小さくなり、場合によっては停止する。
【0028】
以上の理由から、判定部44は、スクリュ12が最前位置まで前進している最中に、直進用サーボモータ16のトルクτが制限トルクτ
Lとなり、且つ、スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH以下となった場合には、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していると判定する。なお、所定速度V
TH<予め決められた移動速度V
0、とする。
【0029】
報知部46は、未溶融樹脂が残存していると判定されると、未溶融樹脂が残存している旨を報知する。
【0030】
なお、モータ駆動制御部40は、回転用サーボモータ50の駆動を制御してスクリュ12を回転させることもできる。この場合、モータ駆動制御部40は、エンコーダ54が検出した回転角速度等に基づいて、回転用サーボモータ50をフィードバック制御してもよい。
【0031】
図2は、本実施形態に係る射出成形機10のスクリュ制御処理の一例を示すフローチャートである。
図2に示す当該スクリュ12の制御処理は、ヒータ26による樹脂の加熱の停止後に、ヒータ26による樹脂の加熱の再開が行われた場合において実行される。
【0032】
ステップS1において、判定部44は、スクリュ12の射出用シリンダ14内の位置が最前位置であるか否かを判定する。スクリュ12が最前位置にある場合(ステップS1:YES)、ステップS2において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していないと判定する。
【0033】
ステップS1においてスクリュ12が最前位置にないと判定されると(ステップS1:NO)、ステップS3においてモータ駆動制御部40は、トルク制限を行いながら直進用サーボモータ16の駆動を制御することで、スクリュ12を前進させる。このとき、モータ駆動制御部40は、トルク検出部27が検出したトルクτが制限トルクτ
Lに達するまでは、スクリュ12が予め決められた移動速度V
0で移動するよう直進用サーボモータ16を駆動する。
【0034】
ステップS4において判定部44は、トルク検出部27が検出したトルクτが制限トルクτ
Lに達したか否かを判定する。ステップS4においてトルクτが制限トルクτ
Lに達していない場合には(ステップS4:NO)、スクリュ12の制御処理はステップS1に戻る。トルクτが制限トルクτ
Lに達した場合には(ステップS4:YES)、ステップS5において判定部44は、スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH以下になっているか否かを判定する。
【0035】
スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
THより高い場合には(ステップS5:NO)、スクリュ12の制御処理はステップS1に戻る。スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH以下になった場合には(ステップS5:YES)、ステップS6において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していると判定する。
【0036】
図2のフローチャートで示されるように、スクリュ12が最前位置まで移動した場合、または、未溶融樹脂が残存していると判定された場合には、ステップS3の動作を行うことはないので、スクリュ12は停止することになる。つまり、モータ駆動制御部40は、ステップS2またはステップS6の動作を経た後は、直進用サーボモータ16の駆動を停止させる。
【0037】
ステップS2、ステップS6における判定部44による未溶融樹脂の残存の有無についての判定後、ステップS7において報知部46は、判定部44による判定結果を受け、当該判定結果を報知する。
【0038】
上述のように、トルク制限を行ってスクリュ12を前進させることで、未溶融樹脂が残存しているか否かの確認動作中にスクリュ12が破損することを防止することができる。また、射出用シリンダ14内の最前位置までスクリュ12を前進させながら、未溶融樹脂の有無の判定処理を行うことにより、未溶融樹脂の検出範囲を、スクリュ12近傍だけでなく、射出成形処理におけるスクリュ12の移動範囲とすることができ、射出成形処理の実行時におけるスクリュ12の折損を防止することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、直進用サーボモータ16のトルクτが制限トルクτ
Lに達し(ステップS4;YES)、且つ、スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH以下になった場合に(ステップS5:YES)、未溶融樹脂があると判定した(ステップS6)。しかし、未溶融樹脂があるか否かの判定に、直進用サーボモータ16のトルクτについての判定を含めなくてもよい。つまり、直進用サーボモータ16のトルクτに関わらず、単に、スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH以下になった場合に、未溶融樹脂があると判定してもよい。この場合には、
図2のステップS4の動作は不要となる。
【0040】
上述したスクリュ制御処理の実行の際、スクリュ12が、予め射出用シリンダ14内の最前位置やその近傍にある場合等において、未溶融樹脂の検出の精度を向上させるため、射出成形機10は、
図3および
図4の少なくとも一方に示される以下の処理を上記スクリュ制御処理の前または後に行ってもよい。
【0041】
図3は、本実施形態に係る射出成形機10のスクリュ制御処理に対して、未溶融樹脂の検出精度の向上のために追加される処理の一例を示すフローチャートである。ステップS11においてモータ駆動制御部40は、トルク制限を行いながら直進用サーボモータ16の駆動を制御することで、スクリュ12を前進または後進させる処理を開始する。トルク制限を伴う駆動により、直進用サーボモータ16のトルクτは、当該処理における制限トルクτ
L1より大きくならない。
【0042】
なお、制限トルクτ
L1は、溶融した樹脂の中をスクリュ12が前進または後進するときに発生する直進用サーボモータ16のトルクτよりも大きいトルクである。当該制限トルクτ
L1は、上述した制限トルクτ
Lと等しい大きさでも異なる大きさでもよい。
図3に示す処理においてモータ駆動制御部40は、制限トルクτ
L1を超えないトルクτの範囲において、予め決められた移動速度V
1でスクリュ12が移動するように直進用サーボモータ16の駆動を制御する。この予め決められた移動速度V
1は、上記予め決められた移動速度V
0と等しくとも異なっていてもよい。
【0043】
ステップS12において判定部44は、トルク検出部27が検出したトルクτが制限トルクτ
L1に達したか否かを判定する。ステップS12においてトルクτが制限トルクτ
L1に達していない場合には(ステップS12:NO)、ステップS13において判定部44は、スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH1以下か否かを判定する。なお、所定速度V
TH1は、上記所定速度V
THと等しくとも異なっていてもよいが、所定速度V
TH1<予め決められた移動速度V
1、であるとする。
【0044】
ステップS13においてスクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH1より高い場合には(ステップS13:NO)、ステップS14において判定部44は、スクリュ12の移動距離Lが所定距離L
TH以下か否かを判定する。
【0045】
ステップS14においてスクリュ12の移動距離Lが所定距離L
THより長い場合には(ステップS14:NO)、ステップS15において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していないと判定する。
【0046】
一方、ステップS12においてトルクτが制限トルクτ
L1に達した場合(ステップS12:YES)、スクリュ12の移動速度Vが所定速度V
TH1以下の場合(ステップS13:YES)、または、スクリュ12の移動距離Lが所定距離L
TH以下である場合には(ステップS14:YES)、ステップS16において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していると判定する。
【0047】
ステップS15またはステップS16における未溶融樹脂の残存の有無についての判定後、モータ駆動制御部40は、直進用サーボモータ16の駆動を停止させ、ステップS17において報知部46は、判定部44による判定結果を報知する。
【0048】
図4は、本実施形態に係る射出成形機10のスクリュ制御処理に対して、未溶融樹脂の検出精度の向上のために追加される処理の他の一例を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS21においてモータ駆動制御部40は、トルク制限を行いながら回転用サーボモータ50の駆動を制御することで、スクリュ12を回転させる処理を開始する。トルク制限を伴う駆動により、回転用サーボモータ50のトルクτ’は、当該処理における制限トルクτ
L2より大きくならない。
【0050】
なお、制限トルクτ
L2は、溶融した樹脂の中をスクリュ12が回転するときに発生する回転用サーボモータ50のトルクτ’よりも大きいトルクである。
図4に示す処理においてモータ駆動制御部40は、制限トルクτ
L2を超えないトルクτ’の範囲において、予め決められた回転角速度V
2でスクリュ12が回転するように回転用サーボモータ50の駆動を制御する。
【0051】
ステップS22において判定部44は、トルク検出部27が検出したトルクτ’が制限トルクτ
L2に達したか否かを判定する。ステップS22においてトルクτ’が制限トルクτ
L2に達していない場合には(ステップS22:NO)、ステップS23において判定部44は、スクリュ12の回転角速度Vωが所定回転角速度V
TH2以下か否かを判定する。なお、所定回転角速度V
TH2<予め決められた回転角速度V
2、であるとする。
【0052】
ステップS23においてスクリュ12の回転角速度Vωが所定回転角速度V
TH2より高い場合には(ステップS23:NO)、ステップS24において判定部44は、スクリュ12の回転角度ωが所定回転角度ω
TH以下か否かを判定する。
【0053】
ステップS24においてスクリュ12の回転角度ωが所定回転角度ω
THより大きい場合には(ステップS24:NO)、ステップS25において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していないと判定する。
【0054】
ステップS22においてトルクτ’が制限トルクτ
L2に達した場合(ステップS22:YES)、ステップS23においてスクリュ12の回転角速度Vωが所定回転角速度V
TH2以下の場合(ステップS23:YES)、または、ステップS24においてスクリュ12の回転角度ωが所定回転角度ω
TH以下である場合(ステップS24:YES)には、ステップS26において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していると判定する。
【0055】
ステップS25またはステップS26における未溶融樹脂の残存の有無についての判定後、モータ駆動制御部40は回転用サーボモータ50の駆動を停止させ、ステップS27において報知部46は、判定部44による判定結果を報知する。
【0056】
[変形例]
上記実施形態について、以下の変形が可能である。
【0057】
図2を参照しながら説明した上記実施形態に係るスクリュ制御処理は、直進用サーボモータ16のトルク制限を行うものであった。本変形例に係るスクリュ制御処理は、
図2に示すスクリュ制御処理に代わりトルク制限を行わずに実行されるものである。以下では、スクリュ制御処理について、上記実施形態に係るスクリュ制御処理との相違点について述べる。
【0058】
本変形例におけるモータ駆動制御部40は、スクリュ12の前進の際に、直進用サーボモータ16のトルクτを制限しない。モータ駆動制御部40は、トルク制限を行わないため、スクリュ12が未溶融樹脂と衝突している場合であっても、スクリュ12の移動速度Vが予め決められた移動速度V
0となるように、直進用サーボモータ16を制御し続ける。このため、直進用サーボモータ16のトルクτは上昇し続ける。
【0059】
そこで、判定部44は、スクリュ12が最前位置まで前進する間において、直進用サーボモータ16のトルクτが制限トルクτ
L以上となった場合には、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していると判定する。
【0060】
モータ駆動制御部40は、スクリュ12が最前位置に到達した場合、または、未溶融樹脂が残存していると判定された場合には、直進用サーボモータ16の駆動を停止させて、スクリュ12の移動を停止させる。
【0061】
図5は、本変形例に係る射出成形機10のスクリュ制御処理の一例を示すフローチャートである。ステップS31において、判定部44は、スクリュ12の射出用シリンダ14内の位置が最前位置であるか否かを判定する。スクリュ12が最前位置にある場合(ステップS31:YES)、ステップS32において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していないと判定する。
【0062】
ステップS31においてスクリュ12が最前位置にないと判定されると(ステップS31:NO)、ステップS33においてモータ駆動制御部40は、スクリュ12を前進させるよう、直進用サーボモータ16を駆動する。なお、上述したように、ここでは、モータ駆動制御部40は、トルク制限を行わずに直進用サーボモータ16を駆動する。
【0063】
ステップS34において判定部44は、トルク検出部27が検出したトルクτが所定の制限トルクτ
L以上か否かを判定する。トルクτが制限トルクτ
L未満である場合には(ステップS34:NO)、射出成形機10による処理はステップS31に戻る。トルクτが制限トルクτ
L以上である場合には(ステップS34:YES)、ステップS35において判定部44は、射出用シリンダ14内に未溶融樹脂が残存していると判定する。
【0064】
図5のフローチャートで示されるように、スクリュ12が最前位置まで移動した場合、または、未溶融樹脂が残存していると判定された場合には、ステップS33の動作を行うことはないので、スクリュ12は停止することになる。つまり、モータ駆動制御部40は、ステップS32またはステップS35の動作を経た後は、直進用サーボモータ16の駆動を停止させる。本変形例によれば、上記実施形態における効果と同様の効果を得ることができる。また、トルク制限をかけてスクリュ12を前進させる必要はないので、制御が簡単になる。
【0065】
ステップS32、ステップS35における判定部44による未溶融樹脂の残存の有無についての判定後、ステップS36において報知部46は、判定部44による判定結果を受け、当該判定結果を報知する。
【0066】
本変形例によれば、上記実施形態における効果と同様の効果を得ることができる。また、トルク制限をかけてスクリュ12を前進させる必要はないので、制御が簡単になる。
【0067】
[実施形態から得られる技術的思想]
上記実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0068】
<第1の技術的思想>
射出成形機(10)は、射出用シリンダ(14)内に挿入され、軸方向に沿って移動が可能なスクリュ(12)と、スクリュ(12)を移動させるモータ(16)と、モータ(16)のトルク(τ)を検出するトルク検出部(27)と、スクリュ(12)の位置を検出する位置検出部(20)と、制限トルク(τ
L)を超えないようにトルク制限を行ってモータ(16)を駆動して、スクリュ(12)を射出方向の最前位置まで前進させるモータ駆動制御部(40)と、スクリュ(12)が最前位置まで前進している最中に、スクリュ(12)の移動速度(V)が所定速度(V
TH)以下となった場合には、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が残存していると判定する判定部(44)と、を備える。
【0069】
これにより、射出用シリンダ(14)内におけるスクリュ(12)の移動範囲に亘る樹脂の溶融を確認することができ、溶融していない樹脂によるスクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0070】
判定部(44)は、スクリュ(12)が最前位置まで前進している最中に、モータ(16)のトルク(τ)が制限トルク(τ
L)となり、且つ、スクリュ(12)の移動速度(V)が所定速度(V
TH)以下となった場合には、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が残存していると判定してもよい。これにより、射出用シリンダ(14)内におけるスクリュ(12)の移動範囲に亘る樹脂の溶融をより確実に確認することができ、溶融していない樹脂によるスクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0071】
射出成形機(10)は、射出用シリンダ(14)内に挿入され、軸方向に沿って移動が可能なスクリュ(12)と、スクリュ(12)を移動させるモータ(16)と、モータ(16)のトルク(τ)を検出するトルク検出部(27)と、スクリュ(12)の位置を検出する位置検出部(20)と、モータ(16)を駆動して、スクリュ(12)を射出方向の最前位置まで前進させるモータ駆動制御部(40)と、スクリュ(12)が最前位置まで前進する最中に、モータ(16)のトルク(τ)が制限トルク(τ
L)以上になった場合には、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が残存していると判定する判定部(44)と、を備える。
【0072】
これにより、射出用シリンダ(14)内におけるスクリュ(12)の移動範囲に亘る樹脂の溶融を確認することができ、溶融していない樹脂によるスクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0073】
モータ駆動制御部(40)は、未溶融樹脂が残存していると判定されるとモータ(16)の駆動を停止させてもよい。これにより、スクリュ制御処理において、スクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0074】
射出成形機(10)は、未溶融樹脂が残存していると判定されると、未溶融樹脂が残存している旨を報知する報知部(46)をさらに備えてもよい。これにより、オペレータは、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が存在することを認識することができ、適切な処置を行うことができる。
【0075】
射出成形機は(10)は、射出用シリンダ(14)内の樹脂を加熱するヒータ(26)を備え、モータ駆動制御部(40)は、ヒータ(26)による加熱の停止後であって、ヒータ(26)による加熱の再開が行われた場合において、モータ(16)を駆動してスクリュ(12)を最前位置まで前進させてもよい。これにより、固化した樹脂を溶融する際に残存する未溶融樹脂の検出を行うことができ、スクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0076】
<第2の技術的思想>
スクリュ制御方法は、射出用シリンダ(14)内に挿入され、軸方向に沿って移動が可能なスクリュ(12)と、スクリュ(12)を移動させるモータ(16)と、モータ(16)のトルク(τ)を検出するトルク検出部(27)と、スクリュ(12)の位置を検出する位置検出部(20)と、を備える、射出成形機(10)の前記スクリュ(12)の移動を制御するものである。スクリュ制御方法は、制限トルク(τ
L)を超えないようにトルク制限を行ってモータ(16)を駆動して、スクリュ(12)を射出方向の最前位置まで前進させるモータ駆動制御ステップと、スクリュ(12)が最前位置まで前進している最中に、スクリュ(12)の移動速度(V)が所定速度(V
TH)以下となった場合には、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が残存していると判定する判定ステップと、を含む。
【0077】
これにより、射出用シリンダ(14)内におけるスクリュ(12)の移動範囲に亘る樹脂の溶融を確認することができ、溶融していない樹脂によるスクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0078】
判定ステップは、スクリュ(12)が最前位置まで前進している最中に、モータ(16)のトルク(τ)が制限トルク(τ
L)となり、且つ、スクリュ(12)の移動速度(V)が所定速度(V
TH)以下となった場合には、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が残存していると判定してもよい。これにより、射出用シリンダ(14)内におけるスクリュ(12)の移動範囲に亘る樹脂の溶融をより確実に確認することができ、溶融していない樹脂によるスクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0079】
スクリュ制御方法は、射出用シリンダ(14)内に挿入され、軸方向に沿って移動が可能なスクリュ(12)と、スクリュ(12)を移動させるモータ(16)と、モータ(16)のトルク(τ)を検出するトルク検出部(27)と、スクリュ(12)の位置を検出する位置検出部(20)と、を備える、射出成形機(10)の前記スクリュ(12)の移動を制御するものである。スクリュ制御方法は、モータ(16)を駆動して、スクリュ(12)を射出方向の最前位置まで前進させるモータ駆動制御ステップと、スクリュ(12)が最前位置まで前進する最中に、モータ(16)のトルク(τ)が制限トルク(τ
L)以上になった場合には、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が残存していると判定する判定ステップと、を含む。
【0080】
これにより、射出用シリンダ(14)内におけるスクリュ(12)の移動範囲に亘る樹脂の溶融を確認することができ、溶融していない樹脂によるスクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0081】
モータ駆動制御ステップは、未溶融樹脂が残存していると判定されるとモータ(16)の駆動を停止させてもよい。これにより、スクリュ制御処理において、スクリュ(12)の折損を防止することができる。
【0082】
スクリュ制御方法は、未溶融樹脂が残存していると判定されると、未溶融樹脂が残存している旨を報知する報知ステップをさらに含んでもよい。これにより、オペレータは、射出用シリンダ(14)内に未溶融樹脂が存在することを認識することができ、適切な処置を行うことができる。
【0083】
射出成形機(10)は、射出用シリンダ(14)内の樹脂を加熱するヒータ(26)を備え、モータ駆動制御ステップは、ヒータ(26)による加熱の停止後であって、ヒータ(26)による加熱の再開が行われた場合において、モータ(16)を駆動してスクリュ(12)を最前位置まで前進させてもよい。これにより、固化した樹脂を溶融する際に残存する未溶融樹脂の検出を行うことができ、スクリュ(12)の折損を防止することができる。