(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレームはフレーム内面と前記フレーム内面とは反対側のフレーム外面とを有すると共に、(a)前記布帛フレーム部分は前記フレーム内面に結合し、前記布帛フレーム部分は前記フレーム内面と前記複合材料との間に位置するか、又は、(b)前記フレーム部は前記フレーム外面に結合し、前記布帛フレーム部分は前記フレーム外面と前記複合材料との間に位置するか、又は、(c)前記フレーム部は前記フレーム内面及び前記フレーム外面に結合し、前記布帛フレーム部分は前記フレーム内面と前記複合材料との間に位置し、前記布帛フレーム部分は前記フレーム外面と前記複合材料との間に位置する、請求項1に記載の人工弁フレーム組立体。
前記フレームはフレーム内面と、前記フレーム内面とは反対側のフレーム外面とを有し、前記布帛は布帛第1端部と、前記布帛第1端部に対向する布帛第2端部と、前記布帛第1端部と前記布帛第2端部との間の布帛中央部とを規定し、前記布帛フレーム部分は前記布帛第1端部と前記布帛第2端部を含み、前記縫合カフは布帛中央部分での折畳み部で確定され、前記布帛第1端部は前記フレーム内面と結合し、前記布帛第2端部は前記フレーム外面と結合し、前記複合材料は内側複合材料を含み、前記内側複合材料は前記フレーム内面と前記内側複合材料との間に位置する前記布帛第1端部に結合し、前記複合材料は外側複合材料を含み、前記外側複合材料は前記フレーム外面と前記外側複合材料の間に位置する前記布帛第2端部に結合している、請求項1に記載の人工弁フレーム組立体。
前記フレームは、前記フレーム基部から延び前記フレーム基部に隣接する複数の弁葉窓を規定する2つ以上のフレーム支柱要素をさらに含む、請求項5に記載の人工弁フレーム組立体。
(a)前記布帛フレーム部分は前記フレーム基部から前記フレーム支柱要素の少なくとも一部まで延びているか、または、(b)前記布帛フレーム部分は前記フレーム基部から実質に全ての前記フレーム支柱要素まで延びているか、または、(c)前記布帛フレーム部分は前記フレーム基部から、少なくとも部分的に前記弁葉窓内に延びる前記弁葉窓を規定する前記フレーム支柱要素を越えて延びているか、または、(d)前記布帛フレーム部分は前記フレーム基部で前記フレームに結合している、請求項6又は7に記載の人工弁フレーム組立体。
前記複合材料はフッ素化ポリマー膜細孔を有する少なくとも1つのフッ素化ポリマー層と前記フッ素化ポリマー膜細孔内に存在するエラストマーとを含む、請求項1〜8の何れか一項に記載の人工弁フレーム組立体。
人工弁用フレーム組立体の製造方法であって、第1のフィルムの層をマンドレルの周りに管状に巻き付け、管状の形状を有し、細孔を含む布帛を供し、前記第1のフィルムの層の上に部分的に、前記布帛を配置し、フレーム内面及びフレーム外面を有し、フレーム基部および複数の弁葉窓を規定する、管状の形状を有するフレームを供し、前記第1のフィルムの層の上にある前記布帛の上に、フレーム内面を前記布帛と接触させて前記フレームを配置し、前記布帛が布帛フレーム部分及び折畳み部を規定するように、前記布帛を前記フレーム外面上で裏返し、ここで前記折畳み部は、前記フレーム基部から延びて設けられると共に、縫合カフを規定し、第2のフィルムの層を、前記フレーム外面に沿って延びて設けられる前記布帛の前記布帛フレーム部分に巻き付け、前記第1のフィルムの層、前記第2のフィルムの層、及び、前記布帛フレーム部分を互いに結合させ、さらに前記フレームに結合させ、ここで前記第1及び第2のフィルムの層のうち1又は2以上の中に存在するエラストマーが、前記縫合カフの布帛の細孔を満たすことなく、前記布帛フレーム部分の細孔を満たすように構成することを含む、方法。
人工弁フレーム組立体の製造方法であって、第1のフィルムの層をマンドレルの周りに管状に巻き付け、前記第1のフィルムの層の上に部分的に、管状の形状を有する布帛を供し、第2のフィルムの層を巻回して、前記第1のフィルムの層の上に部分的に設けられる布帛の一部とし、管状の形状を有するフレームを供し、ここで前記フレームは、フレーム内面及びフレーム外面を有すると共に、フレーム基部及び複数の弁葉窓を規定し、前記第1のフィルムの層の上にある前記布帛の上にある前記第2のフィルムの層の上に前記フレームを配置し、ここで前記フレーム内面を、前記第2のフィルムの層と接触させ、第3のフィルムの層を巻回して、前記フレーム外面とし、前記布帛を、前記フレーム基部上及び前記フレーム外面上で裏返し、前記フレーム外面を覆う前記第3のフィルムの層に接触させ、ここで前記布帛は、布帛フレーム部分と、前記フレーム基部から延びる折畳み部とを規定し、前記折畳み部は縫合カフを規定し、前記フレーム外面上にある前記布帛上に、第4のフィルムの層を巻きつけ、前記第1のフィルムの層、前記フレームと前記第2及び第3のフィルムの層との間の前記布帛、第2、第3及び第4のフィルムの層を互いに結合させ、さらに前記フレームに結合させ、ここで前記第1、第2、第3及び第4のフィルムの層のうち1又は2以上の中に存在するエラストマーが、前記縫合カフの布帛の細孔を満たすことなく、前記布帛フレーム部分の細孔を満たすように構成することを含む、方法。
前記布帛の前記折畳み部に充填材を供給することをさらに含み、前記布帛を裏返した後に前記充填材を前記折畳み部内に収容する、請求項12又は13に記載の人工弁用フレーム組立体の製造方法。
前記フレームは、前記フレーム基部に隣接する前記複数の弁葉窓を規定する前記フレーム基部から延びる2つ以上のフレーム支柱要素をさらに含む、請求項12〜15の何れか一項に記載の人工弁用フレーム組立体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
人工弁との関連において本明細書で使用する用語「弁葉」は、圧力差の影響を受けて開放位置と閉鎖位置との間を移動するように動作可能な一方向弁の構成要素である。開放位置では、この弁葉は血液が人工弁を通って流れることを可能にする。閉鎖位置では、人工弁内の逆流を阻止する。複数枚の弁葉を含む実施態様では、各弁葉は、少なくとも1つの隣接する弁葉と協働して、血液の逆流を阻止する。血液中の圧力差は、例えば、心臓の心室又は心房の収縮によって引き起こされ、そのような圧力差は、典型的には、閉鎖位置にある弁葉の片側に形成される流体圧から生じる。人工弁の流入側の圧力が人工弁の流出側の圧力より高くなると、弁葉が開き、血液がそこを通って流れる。血液が人工弁を通って隣接する室又は血管に流入するにつれ、流入側圧力は流出側圧力と均衡する。人工弁の流出側の圧力が人工弁の流入側の血圧よりも高くなると、弁葉は閉鎖位置に戻り、人工弁を通る血液の逆流を防止する。弁葉は、ウシ心膜等の生物学的組織、又は生体適合性ポリマー等の十分に柔軟で可撓性のある合成生体適合性材料から構成されてもよい。
【0020】
本明細書で使用する用語「膜」は、単一組成物を含むシート状材料を指し、その組成物の例に延伸フッ素化ポリマーがあるが、これに限定するものではない。
【0021】
本明細書で使用する用語「複合材料」は、膜(限定されないが、例えば、延伸フッ素化ポリマー)とエラストマー(限定されないが、例えば、フッ素化エラストマー)との組み合わせを指す。エラストマーは、膜の多孔質構造内に存在させても、膜の片面又は両面に塗布しても、或いは膜への塗布と吸収(imbibed)の組合せとしてもよい。
【0022】
本明細書で使用する用語「吸収(させた)」は、フィルムの細孔内に材料が存在することを指す。本明細書で使用される吸収工程は、フィルムの細孔に材料を付着させる手段を指す。吸収手段としては、これらに限定されないが、印刷、浸漬、又は細孔内に材料を供給するための他の適切な手段を挙げることができる。
【0023】
本明細書で使用する用語「積層体」は、互いが結合された、膜、複合材料、又は他の材料(例えば、エラストマー)及びそれらの組合せからなる複数層を含む物品を指す。
【0024】
本明細書で使用する用語「フィルム」は、膜、複合材料、又は積層体のうちの1つ以上を指す。
【0025】
用語「細孔」は、一般に、材料内にあれば見つけられる空所を指す。布帛に見られる細孔は、布帛細孔と呼ぶ。フッ素化ポリマー膜に見られる細孔は、フッ素化ポリマー膜細孔と呼ばれる。細孔はまた、別の材料を担持させることのできる空所を指す。
【0026】
本明細書で使用する用語「生体適合性材料」は、フィルム又は生物学的材料(限定されないが、例えばウシ心膜)を一般に指す。
【0027】
用語「弁葉窓」は、フレームによって規定され、弁葉がそこから延びている空間として定義される。弁葉は、フレーム要素から延在していても、フレーム要素の近隣でフレーム要素から空間をおいて延在していてもよい。
【0028】
用語「自然弁口」及び「組織口」は、人工弁が配置できる解剖学的構造を指す。このような解剖学的構造には、心臓弁が外科的に除去された又は除去されていない場所が含まれるが、これに限定されない。当然ながら、人工弁を受け入れることができる他の解剖学的構造には、静脈、動脈、導管及び吻合部が含まれるが、これらに限定されない。本明細書では、自然弁を人工弁で置き換えることについて述べているが、当然のことながら、弁口又は移植部位は、特定の目的のために人工弁を受け入れることができる合成導管又は生物学的導管内の位置を指す場合もあり、従って、本明細書で提供される実施態様の範囲は、自然弁の置換に限定されない。
【0029】
本明細書で使用する用語「結合する」は、直接的か間接的かを問わず、永久的か一時的かも問わず、「接合する」、「接続する」、「取り付ける」、「付着させる」、「固定する」又は「接着する」と同義語として使用する。
【0030】
詳細な説明
当業者であれば、本開示の様々な側面が、意図された機能を実行するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現されることを容易に理解できよう。換言すれば、意図された機能を実行するために、他の方法及び装置を本明細書に組み込むことができる。本明細書で参照される添付図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な側面を説明するために誇張されていてもよく、その点に関して、図面は限定的であると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0031】
本明細書の実施態様は、様々な原理及び見解に関連させて記載するが、記載の実施態様はいかなる理論にも縛られるものではない。例えば、本明細書において実施態様は、人工弁、より具体的には心臓人工弁と関連させて記述している。しかし、本開示の範囲内にある実施態様は、あらゆる人工弁にも、類似の構造及び/又は機能をもつ機構にも適用可能である。さらに、本開示の範囲内の実施態様は、心臓以外の用途に適用することができる。
【0032】
本明細書の実施態様は、限定はしないが、心臓弁置換等の外科的配置に適した人工弁のための様々な装置、システム、及び方法を含む。この人工弁は一方向弁として動作するものであり、この中にある人工弁が弁口を規定している。流圧差に応じて弁葉が開くことで弁口内への流動を発生させ、閉まることで弁口を塞いで流動を防止する。
【0033】
本明細書で提供する実施態様は、フレームに耐久性良く取り付けられ、かつ外科的配置に適した一体型縫合カフを有する人工弁に関する。本発明の一実施態様によれば、縫合カフの取り付けの耐久性は、フレームと複合材料との間に布帛を挟むことによって達成される。布帛はフレーム基部を越えて延在することで、フレーム組立体に一体化された縫合カフを形成する。
【0034】
以下に説明するように、一実施態様によれば、縫合カフは、組織内殖を促進しつつ、フレーム周囲の他の部分への組織内殖を抑制する。
【0035】
人工弁
図1Aは、一実施態様による人工弁100の側面図である。
図1Bは、
図1Aの人工弁100の斜視図であり、
図1Cは、C−Cで切った線に沿った
図1Aの人工弁100の一部の軸方向断面図である。人工弁100は、複数枚の弁葉122と、縫合カフ116を有するフレーム組立体120とを含む。縫合カフ116を有するフレーム組立体120は、フレーム内面124及びフレーム外面126を有するフレーム110と、孔を有する布帛であってフレーム110に結合されており、フレーム110を超えて延在することで縫合カフ116を形成する布帛フレーム部分114を規定する布帛112と、布帛112が複合材料118とフレーム110との間にあるように布帛フレーム部分114の少なくとも一部に結合した複合材料118とを含む。
【0036】
図1Cに示すように、布帛112及び複合材料118は、フレーム110のフレーム内面124及びフレーム外面126の両方に結合され、それによって内側布帛フレーム部分128、内側複合材料130、外側布帛フレーム部分132及び外側複合材料134を規定する。別の実施態様では、布帛112及び複合材料118は、フレーム110のフレーム内面124のみに結合され、内側布帛フレーム部分128及び内側複合材料130を規定する。さらに別の実施態様では、布帛112及び複合材料118は、フレーム110のフレーム外面126にのみに結合され、外側布帛フレーム部分132及び外側複合材料134を規定する。
【0037】
図1A〜
図1Cに示すように、複合材料118は、布帛フレーム部分114の実質的に全体に、即ち、フレーム110に結合させることができる。複合材料118を、フレーム110を超えて弁葉窓144内にさらに延在させて、弁葉122を形成してもよい。あるいは、弁葉122を、縫い付けるなどしてフレーム組立体120に結合させることも可能である。
【0038】
フレーム
図1A〜1Cに示すように、フレーム110は、所定の繰り返しパターンを規定する管状部材である。フレーム110は、フレーム第1端部136と、フレーム第1端部136に対向するフレーム第2端部138とを備える。フレーム第1端部136には、フレーム基部140が配置されている。フレーム第1端部136からフレーム第2端部138までに、複数のフレーム支柱要素142が互いに間隔をあけて所定の反復パターンで延びている。フレーム110は、
図1Cに示すように、フレーム外面126及びフレーム外面126に対向するフレーム内面124をさらに備える。
【0039】
フレーム基部140及びフレーム支柱要素142は、複数の弁葉窓144を規定する。
弁葉窓144はそれぞれ、2つの弁葉窓側部146と、弁葉窓基部148とを含む。以下でより詳細に説明するように、生体適合性材料が弁葉窓144の各々の上に配置され、弁葉122を形成する。弁葉窓144は、人工弁100の実施態様の特定の目的に適した任意の形状を規定することができ、放物線形状、台形状、及び三角形状を含むがこれらに限定されない。
【0040】
フレーム110を、一般的な意味で、ステント又は枠組みと言うことができる。フレーム110は、弁葉122を支持しやすくし、移植時には寸法安定性をもたらすことのできる特徴や幾何学形状を幾つも特定するものである。
【0041】
フレーム110は、切断管若しくはワイヤの形態、又は特定の目的に適した他の任意の要素を含むことができる。フレーム110を、エッチング、切断、レーザー切断又は打ち抜きによって管又はシート状材料にすることができ、このシートは、次いで実質的に円筒形構造体に形成される。あるいは、細長い材料、例えば、ワイヤ、曲げることのできる帯状材又はそれらを繋げた物を曲げるか編上げて、実質的に円筒形(円筒形の壁は開いた骨組みを含む)の構造に形成することができる。
【0042】
フレーム110は、任意の金属又は生体適合性ポリマー材料を含むことができる。例えば、フレーム110は、例えば、ニチノール、コバルト−ニッケル合金、ステンレス鋼、又はポリプロピレン、アセチル単独重合体、アセチル共重合体、ePTFE(延伸多孔質ポリテトラフロオロエチレン)、他の合金又はポリマー、又は本明細書に記載のように機能するのに十分な物理的及び機械的特性を有する他の任意の生体適合性材料を含むことができるが、これらに限定されない。
【0043】
図2A及び
図2Bは、フレームを縦方向に切断し、フレームの要素をより良く説明するために、開いた状態のフレーム110a及び110bを示した代替実施態様の側面図である。
【0044】
図2Aは、要素をより良く説明するために平面状に展開したフレーム110aを含む人工弁100aの実施態様の図である。フレーム110aは、ワイヤ145から形成されている。ワイヤ145は、フレーム第2端部138に延在する弁葉窓側部146aと、フレーム第1端部136に隣接する弁葉窓基部148aとを有する複数のU字形又は放物線状の弁葉窓144aを規定する円筒形状に形成される。ワイヤ145は、フレーム第1端部136にフレーム基部140bをさらに規定する。
【0045】
図2Bは、要素をより良く説明するために平面状に展開したフレーム110bを含む人工弁100bの実施態様の図である。フレーム110bは、フレーム基部140bを規定する別のフレーム支柱要素142bによって相互接続された実質的に二等辺三角形を規定し、かつ弁葉窓144bを規定する、複数の離間したフレーム支柱要素142bを含む。各弁葉窓側部146bは、1つの三角形の側部と隣接する三角形の側部によって規定され、各弁葉窓基部148bは、フレーム基部140bの一部を規定するフレーム支柱要素142bによって規定される。フレームの第2端部138は、各二等辺三角形を規定するフレーム支柱要素142bの頂点から延在する支柱152をさらに備える。
【0046】
当然であるが、フレーム110は、実施態様に従って、特定の目的に適した任意の数の弁葉窓144、従って弁葉122を備えることができる。1つ、2つ、3つ又はそれ以上の弁葉窓及び対応する弁葉を含むフレームが予測できる。
【0047】
布帛と縫合カフ
外科的移植に適した人工弁100の実施態様によれば、人工弁100は、一実施態様によるフレーム外面126の周りに、
図1A〜
図1C及び
図4に示すように縫合カフ116をさらに備える。縫合カフ116は、人工弁100を組織口等の移植部位に結合するための縫合糸を受け取る構造を提供するように動作可能である。縫合カフ116は、フレーム110のフレーム基部140の周りに円周状に、即ち、放物線状に配置、換言すれば、フレーム基部140から軸方向に延在させてもよい。
【0048】
図1Cの実施態様を再び参照すると、布帛細孔を有する布帛112が、フレーム内面124及びフレーム外面126に結合されている。フレーム110に結合されている布帛112の部分は、布帛フレーム部分114を規定する。縫合カフ116は、フレーム基部140を越えて延びる布帛112材料から形成される。
図1Cに示すように、布帛112は、布帛第1端部156、布帛第1端部156に対向する布帛第2端部158、布帛第1端部156と布帛第2端部158との間の布帛中央部160を規定する。布帛フレーム部分114は、フレーム内面124に結合された布帛第1端部156と、フレーム外面126に結合された布帛第2端部158とを含む。布帛中央部分160は、フレーム基部140を越えて延びる布帛112のループ又は折畳み部によって規定される縫合カフ116を含む。
【0049】
一実施態様では、布帛112は、フレーム内面124の実質的に全て、及びフレーム基部140及びフレーム支柱要素142を含むフレーム外面126の実質的に全てに結合されている。他の実施態様では、布帛112は、フレーム内面124の一部及び/又はフレーム外面126の一部に結合されている。他の実施態様では、布帛112は、フレーム内面124及び/又はフレーム外面126のいずれかで、フレーム基部140においてフレーム110に結合されている。布帛112は、全体又は部分的に、弁葉窓144にさらに延在することができる。布帛112が少なくとも部分的に弁葉窓144に延びていると、弁葉窓144に結合された弁葉材料とフレーム110との間の補強層又はクッション層として弁葉144の耐久性に利益をもたらすことができる。
【0050】
一実施態様によれば、布帛フレーム部分114は、布帛112の布帛細孔内に存在するエラストマーを有する。対照的に、縫合カフ116は布帛112の布帛細孔内に存在するエラストマーを有さない。これにより、縫合カフ116は、布帛細孔内への組織内殖を促進するように動作可能であるが、フレーム組立体120の周囲の他の部分への組織内殖を抑制する。別の実施態様では、縫合カフ116の所定の部分は、組織内殖が縫合カフ116の特定領域において促進されるが他の部分では促進されないように、布帛112の布帛細孔内にエラストマーを有してもよい。
【0051】
縫合カフ116及び布帛フレーム部分114は、両面ベロアポリエステル、PTFE、ePTFE、ダクロン、或いは他の経時的に劣化しない生体適合性の布帛等、任意の適切な布帛112を含むことができる。布帛112は、ニット、織物、又は不織布であってもよい。縫合カフ116は、布帛層間に充填材162をさらに含むことができる。充填材162の材料は、布帛112と同じ材料を含むことができ、又はシリコーンを含む任意の他の適切な材料とすることができる。充填材162は、ビーズ状の材料、Oリング状に巻いた基部チューブ、1層以上のニット又は織物材料、繊維でできた包装紙、又は他の任意の適切な形態であってもよい。いくつかの実施態様では、充填材162は、縫合カフ116を形成する布帛112の層の間に針によって注入されるか、又は後に一緒に縫合される布帛112の継ぎ目を通して挿入されてもよい。縫合カフ116は、フレーム110の周囲に配置することができる。
【0052】
いくつかの実施態様では、縫合カフ116及び布帛フレーム部分114は、一枚の布帛からなる。他の実施態様では、縫合カフ116及び布帛フレーム部分114は、縫製、接着剤の使用、又は任意の他の適切な手段によって一緒に結合される2つ以上の布帛片から構成される。
【0053】
弁葉
図1B、
図2A及び
図2Bに示されるように、各弁葉窓144には、弁葉窓側部146及び弁葉窓基部148に結合されたフィルム又はウシ心膜等の弁葉122を規定する生体適合性材料が設けられている。弁葉122の形状は、弁葉窓144と弁葉自由端154との形状によって部分的に規定される。
【0054】
図3A及び
図3Bは、それぞれ、開放位置及び閉鎖位置にある人工弁100の上面図である。弁葉122が完全な開放位置にあるとき、人工弁100は、
図3Aに示すように実質的に円形の弁口102を呈する。弁葉122が開放位置にあるとき、弁口102を通して流体の流れが許容される。弁葉122が閉鎖位置にあるとき、人工弁100は、流体の流れを制限する実質的に閉塞された弁口を呈する。
【0055】
フィルム
フィルム150は、実施態様に従って、生物学的に適合し、フレーム110に結合するように構成された任意のシート状材料である。当然ながら、用語「フィルム」は、特定の目的に適した1つ以上の生体適合性材料に対して一般的に使用される。
【0056】
一実施態様によれば、生体適合性材料は、生物由来ではなく、生体適合性ポリマー等の特定の目的のために十分に可撓性で強固なフィルムである。一実施態様では、フィルムは、複合材料と呼ばれるエラストマーと組み合わされた生体適合性ポリマーを含む。
【0057】
一実施態様では、フィルム150は、フレーム110を少なくとも部分的に覆うように管状の形状から形成することができる。フィルム150は、膜、複合材料、又は積層体のうちの1つ以上を含むことができる。様々な種類のフィルム150の詳細を以下に説明する。
【0058】
フィルムを構成する生体適合性材料は、生体適合性ポリマー等の十分に柔軟で可撓性である任意の生体組織又は合成生体適合性材料を含むことができる。一実施態様では、フィルムは、複合材料と呼ばれるエラストマーと組み合わされた生体適合性ポリマーを含む。一実施態様による材料は、微小繊維のマトリックス内に複数の空隙を含む延伸フッ素化ポリマー膜と、エラストマー材料とを含む複合材料を含む。当然のことだが、本開示の範囲内に留まりながら、複数の種類のフッ素化ポリマー膜及び複数の種類のエラストマー材料を組み合わせて積層体を形成することができる。これも当然であるが、エラストマー材料は、本開示の範囲内に留まりながら、複数のエラストマーや無機充填剤、治療剤、放射線不透過性マーカー等の複数の種類の非エラストマー成分を含むことができる。
【0059】
一実施態様によれば、複合材料は、例えばBacinoに付与された米国特許第7,306,729号に一般的に記載されているような多孔質ePTFE膜から製造された延伸フッ素化ポリマー材料を含む。
【0060】
記載の延伸フッ素化ポリマー材料を形成するために使用される延伸可能なフッ素化ポリマーは、PTFE単独重合体を含んでもよい。別の実施態様では、PTFE、延伸可能な修飾PTFE及び/又はPTFEの延伸共重合体のブレンドを使用してもよい。適切なフッ素化ポリマー材料は、例えばBrancaに付与された米国特許第5,708,044号、Baillieに付与された米国特許第6,541,589号、Sabolらに付与された米国特許第7,531,611号、Fordの米国特許出願第11/906,877号、及びXuらの米国特許出願第12/410,050号に記載されているが、これらに限定されない。
【0061】
延伸フッ素化ポリマー膜は、所望の弁葉性能を達成するための任意の適切な微細構造を含むことができる。一実施態様によれば、延伸フッ素化ポリマーは、例えば、フッ素化ポリマー膜細孔を規定するGoreに付与された米国特許第3,953,566号の記載されているような、微小繊維によって相互接続されたノードからなる微細構造を含む。微小繊維はノードから複数の方向に放射状に延びており、膜はほぼ均一な構造を有する。この微細構造を有する膜の直交する2方向のマトリックス引張強度の比は、典型的には2未満、場合により1.5未満を示すことがある。
【0062】
別の実施態様では、延伸フッ素化ポリマー膜は、フッ素化ポリマー膜細孔を規定するBacinoに付与された米国特許第7,306,729号に一般的に教示されているように、実質的に微小繊維のみからなる微細構造を有する。実質的に微小繊維のみを有する延伸フッ素化ポリマー膜は、20m
2/g超、或いは25m
2/g超等の大きな表面積を有することができ、いくつかの実施態様では、直交する2方向のマトリックス引張強度の積が少なくとも1.5×10
5MPa
2、及び/又は直交する2方向のマトリックス引張強度の比が4未満、場合によっては1.5未満の高度にバランスのとれた強度の材料を提供することができる。
【0063】
延伸フッ素化ポリマー膜は、所望の弁葉性能を達成するために、任意の適切な厚さ及び質量を有するように調整することができる。例えば、弁葉122は約0.1μmの厚さを有する延伸フッ素化ポリマー膜を含むがこれに限定されるものではない。延伸フッ素化ポリマー膜は、約1.15g/m
2の単位面積当たりの質量を有することができる。本発明の一実施態様による膜は、長手方向に約411MPa及び横断方向に315MPaのマトリックス引張強さを有することができる。
【0064】
追加の材料をフッ素化ポリマー膜細孔、膜の材料内、又は膜の層間に組み込んで、弁葉の所望の特性を高めることができる。本明細書に記載の複合材料は、所望の弁葉性能を達成するために、任意の適切な厚さ及び質量を有するように調整することができる。実施態様による複合材料は、フッ素化ポリマー膜を含んでよく、厚さが約1.9μm、単位面積当たり質量が約4.1g/m
2であってもよい。
【0065】
複合材料を形成するためのエラストマーと組み合わされた延伸フッ素化ポリマー膜は、心臓弁葉のような高サイクル曲げ移植用途での使用に必要な性能属性を本開示の要素に様々な方法で提供する。例えば、エラストマーの添加は、ePTFEのみの材料で観察される硬化を排除又は低減することによって弁葉の疲労性能を改善することができる。さらには、材料がしわや折り目等の永久歪みを受けて、性能が損なわれる可能性を低減することができる。一実施態様では、エラストマーは、延伸フッ素化ポリマー膜の多孔質構造内の細孔容積又は空間の実質的にすべてを占有する。別の実施態様では、エラストマーは、少なくとも1つのフッ素化ポリマー層のフッ素化ポリマー膜細孔内に存在する。エラストマーを細孔容積に充填するか、又はフッ素化ポリマー膜細孔に存在させることにより、異質材料が望ましくなく複合体に取り込まれ得る空間が減少させることができる。そのような異物の例としては、血液との接触から膜に取り込まれるカルシウムが挙げられる。カルシウムが複合材料に組み込まれると、例えば、心臓弁葉に使用される場合に、機械的損傷が開放サイクル及び閉鎖サイクルの間に起こり、その結果、弁葉に穴が形成され、血行動態の低下をもたらす。
【0066】
一実施態様では、ePTFEと組み合わされるエラストマーは、Changらに付与された米国特許第7,462,675号に記載されているような、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の熱可塑性コポリマーである。別の実施態様では、エラストマーはシリコーン MED-4720(NuSil社;米国、カリフォルニア州、カーペンテリア)である。
【0067】
上述したように、エラストマーは、エラストマーが延伸フッ素化ポリマー膜内の空所又はフッ素化ポリマー膜細孔を占めるように延伸フッ素化ポリマー膜と組み合わされて、複合材料を形成する。延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔のエラストマーによる充填は、様々な方法によって行うことができる。一実施態様では、延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔を充填する方法は、延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔に部分的又は完全に流れ込むのに適した粘度及び表面張力を有する溶液を生成し、溶媒を蒸発させて充填剤を残すのに適した溶媒にエラストマーを溶解する工程を含む。
【0068】
一実施態様では、複合材料は、ePTFEの2つの外層と、その間に配置されたフッ素化エラストマーの内層との3つの層を含む。追加のフッ素化エラストマーが適切であり、Changらの米国特許出願公開第2004/0024448号に記載されている。
【0069】
別の実施態様では、延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔を充填する方法は、延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔を部分的又は完全に充填するために分散液によって充填材を供給する工程を含む。
【0070】
別の実施態様では、延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔を充填する方法は、エラストマーが延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔中に流入することを可能にする熱及び/又は圧力の条件でエラストマーシートと多孔質延伸フッ素化ポリマー膜とを接触させる工程を含む。
【0071】
別の実施態様では、延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔を充填する方法は、エラストマーのプレポリマーでフッ素化ポリマー膜細孔を最初に充填することによって、延伸フッ素化ポリマー膜のフッ素化ポリマー膜細孔内でエラストマーを重合させる工程と、次いでエラストマーを少なくとも部分的に硬化させる工程を含む。
【0072】
エラストマーが最小重量%に達した後、フッ素化ポリマー材料又はePTFEから構築された弁葉は、一般に、エラストマーの割合が増加するにつれて良好な性能を示し、サイクル寿命が著しく増加した。一実施態様では、ePTFEと組み合わせたエラストマーは、Changらに付与された米国特許第7,462,675号、及び当業者に知られている他の参考文献に記載されているようなテトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルとの熱可塑性コポリマーである。弁葉として適切に使用することができる他の生体適合性ポリマーには、ウレタン、シリコーン(オルガノポリシロキサン)、シリコーン/ウレタン共重合体、スチレン/イソブチレン共重合体、ポリイソブチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル共重合体、ナイロン共重合体、フッ素化炭化水素重合体及びこれら各々の共重合体又は混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
その他の考慮すべき事項
人工弁100は、生物活性剤をさらに含むことができる。生物活性剤は、人工弁100が移植された後に生物活性剤の放出を制御するためにフィルム150の一部又は全体に塗布することができる。生物活性剤は、血管拡張剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗血栓剤(限定されないが、ヘパリン等)含むがこれらに限定されない。他の生物活性材としては、ビンカアルカロイド(即ちビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、パクリタクセル、エピジポドフィロトキシン(即ち、エトポシド、テニポシド)、抗生剤(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びミトミシン、酵素(Lアスパラギンを全身的に代謝させかつ自身のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を奪うLアスパラギナーゼ)等の天然物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、G(GP)IIb/IIIa阻害剤及びビトロネクチン受容体拮抗剤等の抗血小板剤、窒素マスタード(メクロルエタミン、シクロフォスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘクサメチルメラニン及びチオテパ)、アルキルスルフォン酸ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼンスダカルバジン(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フッ素化ウラシル、フロクシウリジン及びシタラビン)、プリン類似体及び関連抑制剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤、プラチナ配位化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド、ホルモン(即ち、エストロゲン)、抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及びその他のトロンビン抑止剤)、繊維素溶解剤(組織プラスミノーゲン活性化剤、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、移行抑制剤、分泌抑制剤(ベレベルジン)、副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニソロン、6α−メチルプレドニソロン、トリアムンシノロン、ベータメタゾン及びデキサメタゾン)、非ステロイド剤(サルチル酸誘導体即ちアスピリン、パラアモノフェノール誘導体即ちアセトミノフェン、インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラック)、ヘテロアリル酢酸(トルメチン、ジクロフェナック及びケトロラック)、アリルプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸及びメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニールブタゾン及びオキシフェンタトラゾン)、ナブメタン、金化合物(アウラノフィン、アウロチオグルコース、チオリンゴ酸金ナトリウム)等の抗炎症剤、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパミシン)、アゾチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、血管形成剤、血管内皮成長因子(VEGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、アンジオテンシン受容体遮断剤、一酸化窒素供与体、アンチセンスオリジオヌクレオチド及びその化合物、細胞周期抑制剤、mTOR抑制剤及び成長因子受容体シグナル伝達キナーゼ抑制剤、レチノイド、サイクリン/CDK抑制剤、HMGコエンザイムレダクターゼ抑制剤(スタチン)及びプロテアーゼ抑制剤、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
製造方法
本明細書に記載の実施態様はまた、本明細書に記載の人工弁の実施態様を製造する方法に関する。様々な実施態様を製造するために、円筒形組立体168を使用することができる。
図5、
図6A〜
図6Cを参照すると、組立体マンドレル168は、フレーム110をその上に受容するように動作可能な構造形態を含む。人工弁100を製造する方法の実施態様は、
図1Aの縫合カフ116を形成するのに使用されるフレーム基部140を越えて延びる布帛112の布帛中央部分160で布帛112をフレーム110に結合する工程と;布帛フレーム部分114にエラストマーを吸収させ、エラストマーが布帛112の布帛細孔内に存在するようにしながら、縫合カフ116に形成される布帛112の布帛中央部分160を布帛112の布帛細孔内にエストマーを含まない状態に維持する工程と;センブリを熱的に硬化させる工程と;布帛フレーム部分114がフレーム110と複合材料118との間に位置するように複合材料118を布帛フレーム部分114に結合する工程を含む。
【実施例】
【0075】
フレーム組立体120に一体化された縫合カフ116を有するフレーム組立体120は、以下の方法で製造された。以下のニット布帛が得られた。100デニールの丸型ePTFE繊維(W.L.Gore and Associates社、メリーランド州、エルクトン)を使用して、32個のTPI、32ga 2バールのはめ込み・経編を作成した。経糸方向に対して45度のニットに平行カットを行い、CV-4 GORE-TEX縫合糸(W.L.Gore and Associates社、アリゾナ州、フラッグスタッフ)を使用して直径25mmの管に手で縫い付けた。
【0076】
組立体マンドレル168は、
図5の斜視図に示す円筒形状のアルミニウムから機械加工された。組立体マンドレル168は、第1端部170と、対向する第2端部172とを有する。
図5に示すように、2列で6つの直径0.5mmの通気孔174が組立体マンドレル168に穿孔された。通気孔174は、通気孔180と連通している。
【0077】
約0.004mmの厚さを有するポリイミドが埋め込まれたePTFEフィルムを含む犠牲複合材料の2つの層を、組立体マンドレル168の周りに巻きつけた。犠牲複合材料を通気孔174の上に穿孔した。
【0078】
図6Aに示すように、布帛112は、ePTFEニット管176であった。ePTFE編みチューブ176を犠牲材料の上でなめらかに移動させた。次に、厚さ0.164mmのフッ素化エラストマーフィルムを得た。フッ素化エラストマーは、米国特許第7,462,675号に記載されている一般的な教示に従って配合された。フッ素化エラストマーフィルム178の幅40mmの帯状材を、
図6Aに示すように、通気孔174に対して位置決めされたニット管176の上に合計1層で巻き付けた。
【0079】
フレーム110を以下のように構成した。フレーム110は、一定の長さの壁厚0.60mmの継ぎ目のないMP35N管からレーザー加工した。
【0080】
図6Bに示すように、フレーム110をフッ素化エラストマーフィルム178の上でなめらかに移動させ、フレーム基部140がフッ素化エラストマーフィルム178の縁から約1mmになるように配置した。
【0081】
この実施例で先に説明したフッ素化エラストマーフィルム178の幅40mmの帯状材を、フレーム110の上に巻き付け、先に巻いたフッ素化エラストマーフィルム178の上に全部で3つの追加層として直接巻き整えた。
【0082】
一定の長さの直径3.2mmのGore Joint Sealant (W.L.Gore and Associates社、メリーランド州、エルクトン)をフレーム110のフレーム基部140のすぐ下の組立体マンドレルに巻き付けた。充填材162として使用されるこの材料は、
図6Cに示されるように、縫合カフ116を嵩高にする。
【0083】
フレーム110の長さを超えて伸びているePTFEニット管176の余分な長さは、充填材162及びフレーム110の上に引っ張られ、フレーム110のフレーム支柱要素142を超えて延びていた。
【0084】
ePTFE CV−4縫合糸を組立体マンドレル168の周りに結びつけ、フレーム基部140と充填材162との間に配置した。縫合糸はフレーム基部140及び充填材162に密着してニットを保持した。
【0085】
この実施例で先に説明したフッ素化エラストマーフィルム178の幅40mmの帯状材をフレーム110の上に巻き付け、既に使用しているフッ素化エラストマーフィルム178の上に全部で14の追加層として直接巻き整えた。
【0086】
前述の犠牲複合材料の2つの層をフレーム110のカバーの上に巻き付けた。接着剤付きポリイミドテープを使用し、ePTFE/ポリイミド複合材を各端部で組立体マンドレルに取り付け、長手方向継ぎ目をシールして布帛−フレーム組立体を作製した。
【0087】
次いで、布帛フレーム組立体を、加熱した圧力室の中に置いた。圧力マンドレル168の第1端部170の通気口180を真空源に接続した。次に、組立体マンドレル内の温度が約260℃に達すると、布帛フレーム組立体を414KPaの圧力に約26分間さらした。
【0088】
圧力容器を室温まで冷却した。圧力を解放し、組立体マンドレル168を圧力容器から取り出した。得られた結合した布帛−フレーム組立体を組立体マンドレル168から、なめらかに移動させて外し、犠牲ePTFE/ポリイミド複合材料を除去した。
【0089】
結合布帛−フレーム組立体1500のePTFEニット管176(この実施態様では布帛)及びフッ素化エラストマーフィルム178をフレームの1mm以内に切り取った。
図1Cに示すように、フレーム110に近接したePTFEニット内の布帛細孔即ち空隙は、内側布帛フレーム部分128と外側布帛フレーム部分132の両方で、フッ素化エラストマーを充填した。縫合カフ116の布帛中央部分160内のePTFEニット内の布帛細孔及び充填材162は、フッ素化エラストマーを充填しなかった。
【0090】
組立体マンドレル168に何も無い状態で、上述の犠牲複合材料の2つの層が、前述のように組立体マンドレル168の周りに巻かれた。犠牲複合材料を通気孔174の上で穿孔した。ステンレス鋼箔192の犠牲層を、組立体マンドレル168の周りに、
図6Dに示すように通気孔174の列に隣接してその列から延在する状態で巻き付けた。
【0091】
次いで、以下のように複合材料を調製した。米国特許第7,306,729号に記載されている一般的な教示に従って、ePTFEの膜層を製造した。ePTFE膜を、本明細書に記載の方法に従って試験した。ePTFE膜は、約1.12g/m
2の質量、約52%の多孔度、約1.0μmの厚さ、約458KPaの気泡点、縦方向のマトリックス引張強さ約481MPa、横方向に約307MPaである。この膜に、この実施例で前に記載したのと同じフッ素化エラストマーを吸収させた。フッ素化エラストマーを、約3.0%濃度のFluorinert Electronic Liquid FC-72(3M社、米国、ミネソタ州、セントポール)に溶解した。この溶液を、ダイ塗布装置を用いてePTFE膜面上に塗布し(ポリエチレン放出フィルムで支持しながら)、約110℃に設定した対流式オーブン中で約3分間乾燥させた。得られたePTFE/フッ素化エラストマーの複合材料は、約3.6g/m
2の単位面積当たりの質量を有していた。
【0092】
ePTFE/フッ素化エラストマー複合材料118を、組立体マンドレル168及び既に使用している合計5層の構成要素の周りに巻き付けた。複合材料118を、箔の縁から約1mmの犠牲ステンレス鋼箔に対してカミソリの刃で切り取った。ホイル及び端を切り取った複合材を組立体マンドレル168から取り出した。
【0093】
布帛フレーム組立体190を組立体マンドレル168上に、なめらかに移動させ、ePTFE/フッ素化エラストマー複合材料の上に配置して、フレーム基部140を
図6Eに示すように複合材料118の縁部と整列させた。
【0094】
上記の犠牲複合材料の2つの層を布帛フレーム組立体の周りに巻き付けて、犠牲複合材の縁部がフレーム基部140と整列し、
図6Fに示すように縫合カフ116を覆うようにした。
【0095】
ePTFE/フッ素化エラストマー複合材料193の追加の27層を、組立体マンドレル168の周りに巻き付け、
図6Fに示されるように、既に使用している全ての構成要素を完全に覆った。
【0096】
上述の犠牲複合材料の2つの層を、組立体マンドレル168及び既に使用されている構成要素の周りに巻き付けた。ePTFE/ポリイミド複合体を各端部で組立体マンドレル168に取り付け、長手方向の継ぎ目を封止するために、接着剤付ポリイミドテープを使用した。
【0097】
次に、既に使用している構成要素を有する組立体マンドレル168を圧力容器に入れて上記と同様に加圧したが、時間及び温度はそれぞれ約24分及び262℃であった。
図6Fに示すように、既にフレーム組立体120に一体化した縫合カフ116を有するフレーム組立体120を、室温に冷却し、圧力容器から取り出し、なめらかに移動させて組立体マンドレル168から外した。
【0098】
ePTFE/フッ素化エラストマー複合材料を弁フレームの基部で切り取り、まだエラストマーを吸収していない縫合カフ116を露出させた。
【0099】
その後の工程で、弁葉を弁葉窓に取り付けた。
【0100】
試験方法
当然であるが、特定の方法及び装置が以下に記載するが、当業者によって適切であると判断する任意の方法又は装置を代わりに利用できる。
【0101】
ePTFE膜の質量、厚さ、及び密度
膜サンプルを型抜きして、約2.54cm×約15.24cmの長方形切片を形成し、重量(Mettler-Toledo分析用天秤AG204型を使用)及び厚さ(KaferFz1000/30はさみゲージを使用)を測定した。これらのデータを用いて、下記の式を用いて密度を計算した:ρ=m/(w*l*t)(式中、ρ=密度(g/cm3)、m=質量(g)、w=幅(cm)、l=長さ(cm)、及びt=厚さ(cm)。3回の測定の平均を記録した。
【0102】
ePTFE薄膜のマトリックス引張強さ(MTS)
引っ張り破断荷重は、平面グリップと0.445kNのロードセルを備えるINSTRON 122引張試験機を用いて測定した。ゲージ長は約5.08cmであり、クロスヘッド速度は約50.8cm/分であった。試料の寸法は、約2.54cm×約15.24cmであった。最高強度測定のために、試料の寸法の長い方を最も高い強度方向に向けた。直交MTS測定の場合は、試料の寸法の長い方を最高強度方向に対して垂直に向けた。Mettler Toledo天秤AG204型を用いて各試料の重量を測定し、次にKaferFZ1000/30はさみゲージを用いて厚さを測定したが、代わりに、厚さの測定には任意の適切な手段を使用することもできる。次いで、試料を引張り試験機で個々に試験した。各試料の3つの異なる断面を測定した。縦方向及び横方向のマトリックス引張強さ(MTS)は、以下の式を使用して計算した:MTS=(最大荷重/断面積)*(PTFEの嵩密度)/(多孔質膜の密度)(式中、PTFEの嵩密度は、約2.2g/cm
3とした)。試験片の空隙率は、引張強さに、試験片の密度に対するポリマーの密度の比を掛けることによって説明される。
【0103】
気泡点及び平均流細孔径
ASTM F31 6−03の一般的教示に従って、毛管流細孔測定装置(Porous Materials社、米国、ニューヨーク、イサカ)のモデルCFP 1500AEXLを使用して、気泡点及び平均流細孔径を測定した。試料膜を試料室に入れ、約20.1ダイン/cmの表面張力を有するSilWick Silicone Fluid(Porous Materials社から入手可能)で湿らせた。試料室の底部クランプは、直径約2.54cmの穴を有していた。Capwinソフトウェアバージョン7.73.012を使用して、以下のパラメータを次の表に示すように設定した。
【表1】
【0104】
当業者であれば、実施態様の精神又は範囲から逸脱することなく、本実施態様において様々な変更及び変形が可能であることが明らかである。従って、本実施態様は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入るならば、本発明の改変及び変形を包含することが意図される。