(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
【0014】
(一実施形態)
本実施形態においては、後述するように積層シートである生地1を主に吸収体14の表面材15(
図6、7参照)として用いる場合について説明する。吸収体14が吸収する液体としては、尿、汗、血液、リンパ液等の体液が挙げられ、以下の説明では、主に尿を想定して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る生地1を示す図であり、
図2は、
図1に示す生地1の斜視図であり、
図3は、
図1に示す生地1の拡大図である。以下、
図1〜
図3を用いて生地1について説明する。
【0016】
図1において、生地1は、長手方向(第1方向)であるx方向に連続する長尺な構成を有する。
【0017】
弾性部材5は、
図1、
図2から明らかなように、x方向に沿って生地1内部に設けられ、生地1の短手方向(第2方向)であるy方向に所定間隔隔てて複数設けられている。弾性部材5は、x方向に沿って伸縮する。
図2に示すように、生地1には、多数の弾性部材5により、凹凸面、すなわち、襞部が形成されている。
【0018】
弾性部材5としては、伸縮性を有する線状弾性体5aが用いられ、ウレタン、シリコーン、ブタジエン、若しくは、スチレン・ブタジエンをベースとした合成ゴム、または、天然ゴムを用いることができる。
【0019】
なお、格子形状の弾性部材を用いた場合には、1つの格子形状にて上述の襞部を形成することも可能である。また、多数の弾性部材5に代えて、伸縮性フィルムを用いてもよい。伸縮性フィルムとしては、ウレタンフィルム、シリコーンフィルム、エラストマーフィルム等を用いることができる。
【0020】
以下の説明においては、線状弾性体5aとしてポリウレタンを用いて説明する。
【0021】
図4は、
図3のA−A線断面図であり、
図5は、
図3のB−B線断面図である。
図4、
図5に示すように、生地1は、通気性を有するシートである第1繊維シート2と、液拡散性を有する第2繊維シート3とを有し、第1繊維シート2と第2繊維シート3とを積層してなる積層シート30からなる。第1繊維シート2は、通気性を有する繊維層によって形成され、また、第2繊維シート3は、液拡散性を有する繊維層によって形成される。このように、積層シート30は、2層から構成されている。
【0022】
なお、本実施形態において、後述するように、生地1を表面材15に適用する場合には、第1繊維シート2が吸収体14を装着した使用者の肌面側となり、第2繊維シート3が使用者の肌に接しない非肌面側となる。また、生地1の
図1におけるx方向が
図6のX方向と一致し、
図1のy方向が
図6のY方向と一致するようにして、生地1を表面材15に適用する。
【0023】
第1繊維シート2は、不織布であり、2層または3層のスパンポンド不織布を用いることができる。本実施形態においては、生地1は、吸収体14の表面材15として用いられるため、親水性の不織布を用いることが好ましい。生地1に親水性が要求される場合には、例えば、生地1に親水化剤を添加するなどの親水化処理を行えばよい。
【0024】
なお、第1繊維シート2の目付量は、一例として10〜50g/m
2が好ましく、製造原価の観点から10〜20g/m
2がより好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0025】
第2繊維シート3は、トイレットペーパーまたはクレープ紙等の紙を用いることができ、パルプ紙又はパルプを主原料とする材料、すなわち、セルロース系の成分を含有する材料を用いることができる。原料パルプとしては、木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ等を用いることができる。また、パルプなどの天然繊維に限られず、レーヨン等の再生繊維等も用いることができる。なお、第2繊維シート3の目付量は一例として10〜50g/m
2が好ましい。また、紙を用いる場合には、柔軟性を出すために、例えば、第2繊維シート3にエンボス加工を施しておくことが好ましい。
【0026】
図5に示すように、本実施形態においては、第1繊維シート2と第2繊維シート3とは、弾性部材5の周面に塗布された接着剤7により接合されている。このため、第1繊維シート2と第2繊維シート3との間に接着剤7が存在しない非接着部8が形成され、この非接着部8により空間9が形成される。本実施形態においては、非接着部8による空間9が形成されているので、生地1における水分蒸散性、放熱性および透湿性の各機能を向上させることができる。
【0027】
なお、弾性部材5を介した接着に代え、または、弾性部材5を介した接着に加え、第1繊維シート2と第2繊維シート3との少なくとも一方の面に部分的(間欠的)に接着剤7を塗布して、第1繊維シート2と第2繊維シート3とを接合してもよい。この場合においても、第1繊維シート2と第2繊維シート3との接合は、部分的(間欠的)であるため、第1繊維シート2と第2繊維シート3との間には空間9を形成することができる。
【0028】
接着剤7を部分的(間欠的)に塗布するには、霧状、線状、点状、ストライプ状、スパイラル状、ブロック状、パターン状等に塗布する方法があり、それらのうちの1つの方法を用いてもよいし、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、接着剤7としては、感圧性接着剤、硬化性接着剤など各種接着剤を用いることができ、本実施形態においてはホットメルト接着剤を採用している。なお、第1繊維シート2と第2繊維シート3との接合は、接着によるものに限定されず、超音波接合、熱融着などの各種接合方法を適用または併用してもよい。
【0030】
図2、
図3、
図4に示すように、隣り合う線状弾性体5aの間には、凸部6aと凹部6bとが連続して形成されることにより、生地1全体に襞部が形成される。
【0031】
なお、線状弾性体5aをy方向に設ける間隔は、ほぼ均等な間隔でもよく、例えば、生地1の周辺部において間隔を短くして線状弾性体5aを密に配置するようにしてもよい。更に、生地1の中央部から周辺部に向けて間隔を短くするようにしてもよい。これに代えて、または、これと併用して、生地1の周辺部の線状弾性体5aの弾性力と、中央部の線状弾性体5aの弾性力とを異ならせ、周辺部の線状弾性体5aの弾性力を強くするようにしてもよい。
【0032】
なお、本実施形態においては、周辺部とは、後述の
図6の表面材15のY方向の正側端部から5〜30%程度の領域、負側端部から5〜30%程度の領域であり、中央部は周辺部を除く領域である。
【0033】
線状弾性体5aは、前述したように、第1繊維シート2と第2繊維シート3との間に設けられる。凹凸列6は、
図1および
図2におけるy方向に複数列形成されている。単位面積当たりの線状弾性体5aの本数は任意に設定できるが、線状弾性体5aの本数を多くして線状弾性体5a相互の間隔を小さくすれば、一列の凹凸列6における凸部6aと凹部6bを均一な形状に形成し、且つ、その形状を保持することができる。それによって襞部の型崩れがなく、生地1の柔軟性、水分蒸散性、放熱性および透湿性を増大させることができる。
【0034】
このような趣旨から、凸部6a相互間のピッチ間隔は、2.00mm〜7.00mmが好ましい。この凸部6a相互間のピッチ間隔は、3.00mm〜6.25mmがより好ましい。
【0035】
凸部6a相互間のピッチ間隔を狭くすることにより、きめの細かな襞ができるので外観が美しくなり、また1つの襞当たりの肌との接触面積は小さくなるので肌触りがよくなり、更に表面積が大きくなるので汗などの吸収性が向上する。一方、凸部6a相互間のピッチ間隔を広くすることにより、線状弾性体5aの弾性力を適度に抑えることができ、製造コストを低減することができる。
【0036】
なお、
図1、
図2では、凸部6aと凹部6bとが連続して形成されるように図示されているが、線状弾性体5aの本数や配置の仕方などにより、不連続になったり、x方向にずれたりする。しかしながら、凸部6a及び又は凹部6bがx方向にずれて形成された場合、例えば生地1を表面材15として用いれば、尿などが
図1、
図2のy方向(
図6のY方向)に進行しにくくなり、横漏れ防止に寄与することができる。
【0037】
生地1(積層シート30ともいう)は長尺寸法であるため、積層シート30の長手方向(
図1、
図2においてx方向)における長さ寸法を所定の長さにするための裁断が行われる。この裁断において、第1繊維シート2、第2繊維シート3および弾性部材5が切断される。弾性部材5の切断により、引っ張り状態にあった弾性部材5は引っ張り力から解放されて復元力により収縮する。このときの収縮応力により、第1繊維シート2、第2繊維シート3などから構成される生地1(積層シート30)は、長さが短くなる方向に力を受けるため、生地1(積層シート30)に複数の凹凸列6が形成され、それにより襞部が形成される。このようにして、襞部を有する生地1が製造される。
【0038】
ここで、生地1は、弾性部材5の復元力により縮んだ状態、即ち、非引っ張り状態にあり、この非引っ張り状態にある弾性部材5の長手方向(x方向)と直交する方向(y方向)に延びる襞部が多数形成され、積層シート30に襞部の列がパターン形成されている。
【0039】
積層シート30の内部に配置された弾性部材5により、積層シート30には弾性力が付与されている。従って、積層シート30により構成される生地1を
図1、
図2においてx方向に引っ張ると、弾性部材5が伸びることによって生地1も伸びて広がる。
【0040】
また、この状態を解除すると、弾性部材5はその復元力により収縮し、それにより生地1も元の状態に復帰する。このように、生地1は伸縮性を有するので、生地1を表面材15として用いた場合に身体に対するフィット感に優れたものとなる。
【0041】
また、生地1は、弾性部材5の復元力により収縮した寸法で表面材15としての寸法が決められるため、大きな表面積を有している。このため、吸収体14は、表面材15を介してより多くの体液を吸収することができる。弾性部材5の弾性力の選択により表面積を1.5倍から5倍程度に大きくすることができる。例えば、非引っ張り状態においてx方向で必要とされる生地1の寸法が300mmとすると、引っ張り状態(伸長状態)においては450mmから1500mmの積層シート30を使用することになる。
【0042】
例えば、生地1を表面材15として使用する場合に、x方向の寸法が360mmであり、y方向の寸法が100mmであるとする。弾性部材5の復元力によって収縮する割合(収縮率)を1/3とすると、生地1のx方向の寸法は、弾性部材5の収縮率の逆数を乗じて1080mm必要であり、y方向は弾性部材5の復元力が作用しないので100mm必要となる。
【0043】
しかしながら、実際に弾性部材5を介して第1繊維シート2、第2繊維シート3を接合した後に裁断すると540mm程度と収縮率が1/2となる場合がある。これは、表面材15の製造工程中に発生する残留ひずみの影響が考えられる。残留ひずみは時間をかければ自然と減少するものであるが、残留ひずみが残ったままの表面材15を吸収体14に用いてしまうと、吸収体14が変形してしまう。
【0044】
そこで、本実施形態においては、表面材15に用いられる弾性部材5及び硬化した接着剤7を第1加熱装置19、第2加熱装置20、第3加熱装置45(
図9参照)が加熱することにより、表面材15から残留ひずみを低減して、弾性部材5の理論値の収縮率に近い表面材15を製造することができる。すなわち、上記の例では、表面材15において収縮率1/3をほぼ実現することができる。この結果、表面材15を備えた吸収体14が変形することを防止できる。
【0045】
なお、第2繊維シート3が積層シート30の収縮に与える影響を調べるため、次のような比較を行った。第1繊維シート2と第2繊維シート3を積層した積層シート30と、第2繊維シート3に代えて第1繊維シート2と同様の不織布を用いた積層シート(第1繊維シートを2枚重ねた積層シート)と、を用意し、それぞれ加熱処理することなく弾性部材の収縮率を比較した。その結果、本実施形態の第2繊維シート3を有する積層シート30は収縮しにくいことが分かり、第2繊維シート3が弾性部材5の収縮を妨げていることが確認できた。
【0046】
次に、吸収体14について説明する。
図6は、本実施形態に係る表面材15を備えた吸収体14を示す概要図であり、
図7は、
図6のC−C線断面図である。
【0047】
表面材15を備える吸収体14は、肌面側に設けられたギャザー部21と、非肌面側に設けられたフィルム24とを有する。
【0048】
ギャザー部21は、繊維シートである不織布が加工されたものであり、液遮断性を確保するために撥水性を有する。ギャザー部21を撥水性とするために、ギャザー部21にフッ素系、シリコーン系またはパラフィン系等の撥水剤が塗布される。
【0049】
ギャザー部21は、第1ギャザー17および内側接合部18を有する。なお、ギャザー部21とフィルム24とは、上下左右の端部で接合(例えば、ホットメルト接着剤、熱融着、超音波接合など)されている。
【0050】
第1ギャザー17は、尿のY方向への横漏れを防ぐものであり、不織布に弾性部材5と同様の弾性部材を接合することにより形成されている。本実施形態においては、弾性部材が設けられた第1ギャザー17を2つ用意する。なお、第1ギャザー17の外側にレッグ用の第2ギャザー(不図示)を設けてもよい。
【0051】
図7に示すように、第1ギャザー17には、2つの線状弾性体5aが設けられている。不織布に覆われた先端の線状弾性体5aは、不織布との間に数ミリ(2〜4ミリ)の空間部17aを設けている。このように、空間部17aを設けることにより、線状弾性体5aが肌に触れた際の弾性力を低減することができ、肌触りを向上させることができる。なお、線状弾性体5aの数は特に限定されるものではない。また、その弾性力もギャザーと、表面材15とで異ならせてもよい。更に、大人用、子供用、性別等に応じて弾性力を異ならせてもよい。この場合、大人用に比べて子供用の弾性力を弱いものにしてもよい。
【0052】
内側接合部18は、2つの第1ギャザー17を表面材15のY方向両端部付近にそれぞれ設けるために、ギャザー部21と表面材15とを接合する。内側接合部18による接合にはどのような接合方法を用いても構わないが、本実施形態においてはホットメルト接着剤を用いた接合を行うものとする。
【0053】
ここで、
図6に示すY方向の正側におけるギャザー部21について説明する。
図6から明らかなように、吸収部22よりも表面材15の面積が大きく、吸収部22の周囲において(吸収部22がない部分において)、吸収部22を介さずに表面材15とギャザー部21とを接合している。なお、表面材15とギャザー部21との間には、接合されていない非接合部15aがある。この非接合部15aは、左右端面の接合の影響を受けないため、表面材15の弾性部材5の弾性力により、X方向に伸縮する。なお、
図6に示すY方向の負側におけるギャザー部21も上記同様の構成である。
【0054】
吸収部22は、着用者の体液を吸収するものであり、本実施形態においては粉砕パルプと、粒子状の高吸水性樹脂である高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer:SAP)とを有する。
【0055】
なお、吸収体14は、尿を吸収するため、吸収部22に消臭剤を添加することが望ましい。消臭剤としては、活性炭;ゼオライト;シリカ;セラミック;大谷石;木炭高分子;カーボンナノチューブ;カーボンナノホーン;クエン酸、コハク酸等の有機酸;ミョウバン(カリウムミョウバン)を用いることができる。
【0056】
吸収体14では、表面材15と吸収部22とが接合され、X方向に沿った表面材接合部23が形成される。これにより、表面材15の一部が吸収部22と接触し、体液を早く吸収部22に導くことができる。表面材15と吸収部22との接合は、超音波接合により行われる。
【0057】
表面材接合部23がY方向に所定間隔をあけて設けられているので、体液がY方向に進入するのを妨げ、体液の横漏れを防ぐことができる。
【0058】
なお、
図6では、表面材接合部23は2本の直線状に形成されているが、その途中が分断されていてもよい。また、表面材接合部23は、表面材15を設けた吸収体14にエンボス加工を施すことにより、表面材15と吸収部22とを押圧して形成されるようにしてもよい。
【0059】
図8は、本実施形態に係る吸収体14の非肌面側を示す概要図である。
図8には、フィルム24及びフィルム側襞部25などが図示されている。フィルム24は、液体を透過させずに蒸気を透過させる周知の透湿性フィルムである。
【0060】
フィルム側襞部25は、ギャザー部21とフィルム24との接合の後に、フィルムのX方向の伸長状態が解除されることで、表面材15の弾性部材5により形成される。
【0061】
次に、吸収体14の製造装置及び製造方法について説明する。
図9は、本実施形態に係る吸収体製造装置200の構成を示す模式図であり、
図10は、本実施形態に係る吸収体製造方法を示すフローチャートである。
【0062】
(ステップS1:吸収部22の製造)
ラップシートロール26aに巻かれた下側ラップシート26は、搬送ロール43aにより繰り出される。下側ラップシート26は、紙、不織布などを用いることができ、粉砕パルプおよびSAPなどを含む吸収部材に体液を吸収させるために、撥水性を有することが好ましい。この場合、下側ラップシート26にフッ素系、シリコーン系またはパラフィン系等の撥水剤を塗布するようにすればよい。
【0063】
なお、吸収体製造装置200では、複数の搬送ロール43が用いられるため、これらを区別するため符号(アルファベット)を付加して説明するが、全て同じ搬送ロールを用いてもよいし、大きさや回転スピードが異なる搬送ロールを用いてもよい。
【0064】
ラップシートロール26aから繰り出された下側ラップシート26は、吸収部材供給装置42から粉砕パルプとSAPとを含む吸収部材が供給される。
【0065】
吸収部材供給装置42は、回転ドラムを有し、回転ドラムの外周面には複数の凹部が形成されている。上部に位置した凹部には、粉砕パルプとSAPとを含む吸収部材が供給され、吸収部材は、吸引されながら、回転ドラムの回転に伴って、下部に移動する。下部に位置した凹部から吸収部材が下側ラップシートの表面に供給される。
【0066】
ラップシートロール27aに巻かれた上側ラップシート27は、搬送ロール43b、43cにより繰り出され、搬送される。上側ラップシート27は、紙、不織布などを用いることができ、吸収部材に体液を吸収させるために、親水性を有することが好ましい。この場合、上側ラップシート27に親水化剤を添加するなどの親水化処理を行えばよい。
【0067】
ラップシートロール27aから繰り出された上側ラップシート27は、接着剤塗布装置41aにより接着剤が塗布される。本実施形態においては、ホットメルト接着剤を使用するものとするが、他の接着剤を用いても構わない。
【0068】
接着剤塗布装置41aは、複数のノズルを有し、ホットメルト接着剤を霧状にして上側ラップシート27に塗布する。図では、1つの接着剤塗布装置41aを示しているが、その数は適宜設定することができる(他の接着剤塗布装置41b〜41dも同様)。
【0069】
なお、吸収体製造装置200では、複数の接着剤塗布装置41が用いられるため、これらを区別するため符号(アルファベット)を付加して説明するが、全て同じ接着剤塗布装置41を用いてもよいし、塗布量や、塗布温度、粘度などを異ならせた接着剤塗布装置41を用いてもよい。また、接着剤塗布装置41を塗布対象に対して上側に配置するか、横側に配置するかも適宜設定・変更することができる。
【0070】
下側ラップシート26と上側ラップシート27との間に粉砕パルプおよびSAP(吸収部材)を挟んで、吸収部材を被覆する。なお、上側ラップシート27を省略して、下側ラップシート26を用いて吸収部材を包み込むようにしてもよい。
【0071】
フィルムロール24aに巻かれたフィルム24は、フィルムロール24aから繰り出される。フィルムロール24aから繰り出されたフィルム24には、接着剤塗布装置41bからホットメルト接着剤が塗布される。
【0072】
吸収部材を被覆する下側ラップシート26及び上側ラップシート27と、フィルム24とは積層され、一対のロールを有する押圧装置44aにより押圧され一体化される。これにより、吸収部22が製造される。
【0073】
なお、吸収体製造装置200では、複数の押圧装置44が用いられるため、これらを区別するための符号(アルファベット)を付加して説明するが、これらは同じ押圧装置44でもよく、押圧力が異なる押圧装置44でもよい。
【0074】
また、吸収体製造装置200では、吸収部材供給装置42を1つ設ける場合を示したが、吸収部材供給装置42を2つ設け、吸収部材を2層積層してもよい。この場合、各層の大きさを同じ大きさとしてもよいし、吸収体14の装着時に肌面側に位置する層(肌面側の層)の大きさを非肌面側の層の大きさよりも小さくしてもよい。
【0075】
後者の場合において、吸収部22を男性用とする際には、肌面側の層の中央を非肌面側の層の中央からずらし、吸収体14の装着時に尿道口の位置に合うようにすればよい。一方、吸収部22を女性用とする際には、肌面側の層の中央を非肌面側の層の中央に重ねる、または中央からずらし、吸収体14の装着時に尿道口の位置に合うようにすればよい。
【0076】
(ステップS2:表面材15(生地1)の製造)
繊維シートロール3aに巻かれた第2繊維シート3は、繊維シートロール3aから繰り出され、一対のエンボスロール40aによりエンボス加工が施される。エンボス加工は、第2繊維シート3を柔軟にする作用があるため、この処理を機械的柔軟化処理という。なお、吸収体製造装置200では、複数のエンボス40が用いられるため、これらを区別するため符号(アルファベット)を付加して説明するが、全て同じエンボス40を用いてもよいし、エンボスパターン、大きさ、材質等の異なるエンボス40を用いてもよい。
【0077】
弾性ロール28aに巻かれた弾性部材5は、弾性ロール28aから繰り出され、第1加熱装置19により加熱される。
【0078】
第1加熱装置19は、例えば30℃〜80℃の空気を供給する非接触の加熱装置である。例えば、吸収体製造装置200が設置された工場内の気温が15℃以下の場合には、弾性部材5が伸縮しにくくなるので、これを防ぐために第1加熱装置19が用いられる。弾性部材5としてポリウレタンを用いる場合には、ポリウレタンの耐熱性が80℃程度であるので、第1加熱装置19は、80℃以下(好ましくは、40℃〜60℃)の空気を供給するようにすればよい。
【0079】
なお、第1加熱装置19としては、電磁波または赤外線を用いてもよく、特に限定されるものではない。この第1加熱装置19による弾性部材5の加熱は、後述するステップS3の表面材15の加熱処理の一部である。また、工場内の気温が、例えば20℃以上に温度管理されていれば、第1加熱装置19を省略してもよい。
【0080】
第1加熱装置19により加熱された弾性部材5には、接着剤塗布装置41cによりホットメルト接着剤(接着剤7)が塗布される。なお、図面を簡単にするため、弾性ロール28aを1つしか図示していないが、使用する弾性部材5の本数に応じて複数の弾性ロール28aが配置されている。また、表面材15用の弾性部材5と、第1ギャザー17用の弾性部材5とは、同じ弾性力でもよく、異なる弾性力でもよい。後者の場合、表面材15用の弾性部材5の弾性力を第1ギャザー17用の弾性部材5の弾性力よりも強くすればよい。
【0081】
エンボス加工が施された第2繊維シート3と、ホットメルト接着剤が塗布された弾性部材5とは、一対の押圧ロールを有する押圧装置44bにより押圧され、これにより、第2繊維シート3と弾性部材5とが接合(接着)される。
【0082】
繊維シートロール2aに巻かれた第1繊維シート2は、搬送ロール43eにより繰り出される。この第1繊維シート2は、予め親水化処理が施されているものとする。
【0083】
弾性部材5が接合された第2繊維シート3と、第1繊維シート2とは、押圧装置44cにより押圧され、弾性部材5の周面に塗布されたホットメルト接着剤(接着剤7)により接合(接着)される。これにより、表面材15が製造される。
【0084】
なお、表面材15を吸収体製造装置200のインラインにおいて製造することに限らず、事前に表面材15を製造し、事前に製造した表面材15を不図示のロール部材に取り付け、吸収体製造装置200に投入するようにしてもよい。
【0085】
(ステップS3:表面材15(生地1)の加熱処理)
表面材15は、第2加熱装置20により加熱される。なお、前述した第1加熱装置19により加熱を行う場合は、ステップS3の表面材15の加熱処理に含まれる。第2加熱装置20は、通気、電磁波または赤外線のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではないが、非接触による加熱が好ましい。
【0086】
第2加熱装置20は、40℃〜150℃程度の設定温度で数秒から数十秒の間、表面材15を加熱し、第1加熱装置19と同じまたはそれ以上の熱量で加熱する。更に、第2加熱装置20は、表面材15の片面(例えば、第1繊維シート2側)を加熱してもよく、表面材15の両面を加熱してもよい。
【0087】
第2加熱装置20は、硬化したホットメルト接着剤を加熱により柔らかくして、表面材15の残留ひずみを解消することができる。
【0088】
ホットメルト接着剤の熱特性の一つにホットメルト接着剤が固体から液体に変わっていく境界温度域(以下、「軟化点」という)がある。軟化点は、ホットメルト接着剤の種類により異なるが、約85℃〜155℃程度である。本実施形態では、軟化点が約85℃〜120℃程度(好ましくは、約85℃〜100℃程度)のホットメルト接着剤を用いて第2加熱装置20によりホットメルト接着剤が軟化する手前(例えば、軟化点よりも1℃〜20℃程度低い温度)まで加熱する。これは、第2加熱装置20によりホットメルト接着剤の軟化点まで加熱すると、ホットメルト接着剤を介した第1繊維シート2と、第2繊維シート3との接合(接着)に影響を与えるからである。
【0089】
なお、前述したように、ポリウレタンの耐熱性が80℃程度であるので、弾性部材5の耐熱温度に近い軟化点のホットメルト接着剤、または弾性部材5の耐熱温度から20℃まで高い軟化点のホットメルト接着剤を用いることが好ましい。これは、上述したように、ホットメルト接着剤の軟化点よりも1℃〜20℃程度低い加熱温度が第2加熱装置20に設定されることになるからである。
【0090】
なお、第2加熱装置20には、弾性部材5の耐熱温度を超える温度が設定される可能性があるが、前述したように弾性部材5の周面にはホットメルト接着剤が塗布されており、また、弾性部材5は第1繊維シート2と第2繊維シート3とに挟まれており、更に加熱時間を管理することにより、弾性部材5自体は実質的に耐熱温度を越える温度にさらされることはない。
【0091】
第2加熱装置20により加熱処理された表面材15は、第3加熱装置45により加熱される。第3加熱装置45は、一対のロールを有した接触式の加熱装置であり、一対のロールの両方を加熱ロールにして表面材15の両面を加熱してもよく、一方のロール(例えば、第1繊維シート2側)のみを加熱ロールとしてもよい。また、一対のロールの数や配置も任意に設定することができる。
【0092】
第3加熱装置45による加熱温度も第1加熱装置19と同じまたはそれ以上の熱量で加熱すればよく、第2加熱装置20と同程度に設定すればよい。なお、第2加熱装置20により、表面材15の残留ひずみが解消できるのであれば、第3加熱装置45を省略してもよい。
【0093】
第2加熱装置20、第3加熱装置45による加熱により、ホットメルト接着剤を一時的に柔軟にし、かつ、表面材15の残留ひずみを解消することができる。なお、吸収体製造装置200においては、定期的(例えば、毎日の吸収体製造装置200による製造開始前)に表面材15のサンプルの収縮率を測定して、第2加熱装置20、第3加熱装置45による加熱温度、加熱時間などの加熱条件を設定するようにしてもよい。
【0094】
なお、第2加熱装置20、第3加熱装置45が、肌面側に位置することになる第1繊維シート2を加熱処理した場合には、第1繊維シート2の表面の毛羽立ちを抑制することができ、表面材15の肌触りを向上させることができる。
【0095】
(ステップS4:第1ギャザー17の製造)
繊維シートロール2bに巻かれた撥水性の不織布は、搬送ロール43fにより繰り出される。この繊維シートロール2bには、間隔を隔てて2つの撥水性の不織布が巻かれている。これは、
図6に示した2つの第1ギャザー17を製造するためである。1つの繊維シートロール2bに2つの撥水性の不織布を巻くことにより、2つの撥水性の不織布の搬送タイミングがずれることがなく、吸収体製造装置200をコンパクトにすることができる。なお、撥水性の不織布は、予め撥水処理が施されているものとする。
【0096】
弾性ロール28bに巻かれた弾性部材5は、弾性ロール28bから繰り出され、接着剤塗布装置41dによりホットメルト接着剤が塗布される。撥水性の不織布と、ホットメルト接着剤が塗布された弾性部材5とは、押圧装置44dにより押圧されて接合する。これにより、2つの第1ギャザー17を製造することができる。
【0097】
(ステップS5:表面材15と第1ギャザー17との接合)
2つの第1ギャザー17には、接着剤塗布装置41eによりホットメルト接着剤が塗布される。
【0098】
2つの第1ギャザー17と、表面材15とは、押圧装置44eにより押圧され、表面材15に2つの第1ギャザー17が接合される。
【0099】
なお、表面材15に2つの第1ギャザー17を接合してから、ステップS3の加熱処理を行うようにしてもよい。これにより、表面材15及び第1ギャザー17における残留ひずみをまとめて低減することができる。
【0100】
(ステップS6:表面材15と吸収部22との接合)
2つの第1ギャザー17が接合された表面材15と、吸収部22とは、押圧装置44fにより押圧され、吸収部22と表面材15とが接合される。その後、超音波接合装置46により、表面材15と、吸収部22とを超音波接合することにより、2つの表面材接合部23を形成する。これにより、表面材15の一部と、吸収部22の一部とが接合されるので、体液が表面材15から吸収部22に速やかに伝わり、利用者の不快感を軽減することができる。なお、表面材接合部23に代えて、もしくはこれと併用して、一対のエンボスロール40bによるエンボスを表面材15の表面全体に施してもよい。また、エンボスロールではなく、平ロールでもよく、この場合、加熱ロールでも構わない。これにより、表面材15と、吸収部22とが接触しやすくなり、体液を吸収部22に速やかに伝えることができる。
【0101】
(ステップS7:裁断)
吸収体14は、裁断装置47により裁断され、1個ずつの吸収体14となる。表面材15は残留ひずみが低減されているので、この裁断が行われても、吸収体14が変形することはない。
【0102】
なお、この裁断工程の後に、吸収体14の折込み工程や、箱詰め工程などを追加してもよい。また、吸収体14にサブレイヤーとして親水性の不織布を追加してもよい。
【0103】
図10のフローチャートは一例に過ぎず、各ステップの順番は製造都合により適宜入れ替えてもよい。
【0104】
このように、本実施形態によれば、第1繊維シート2と第2繊維シート3との間に、周面にホットメルト接着剤が塗布され伸長した状態の弾性部材5を挟んで積層し、表面材15を形成し、ホットメルト接着剤の軟化点以下、かつ、弾性部材5の耐熱温度に対して所定温度以上の温度で表面材15を加熱する。これにより、表面材15の残留ひずみを低減することができ、表面材15を用いた吸収体14の変形を防止することができる。
【0105】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、一実施形態の積層シート30に対して、第1繊維シート2と同様の第3繊維シートを第2繊維シート3の非肌面側に追加して3層構成の積層シートを形成し、使い捨てパンツ10の外装シート11として用いる場合について説明する。
【0106】
3層構成の生地を使い捨てパンツ10の外装シート11として用いる場合、第1繊維シート2と第3繊維シートの少なくとも一方を撥水性のシートとすることが望ましい。撥水性の不織布としては、3層のスパンポンド不織布を用いることができ、フッ素系、シリコーン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロイド系の撥水剤をコーティングする撥水処理を行うことが好ましい。なお、撥水性不織布の目付量は、一例として10〜50g/m
2が好ましく、製造原価の観点から10〜20g/m
2がより好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0107】
図11は、本発明の他の実施形態に係る使い捨てパンツ10に吸収体14を取り付けて、着用した様子を示す図である。以下、
図11を用いて、使い捨てパンツ10について説明する。なお、
図11では示していないが、吸収体14の非肌面側の取り付け面には、例えば、粘着テープが設けられており(例えば2箇所)、吸収体14が使い捨てパンツ10に着脱できるようになっている。
【0108】
使い捨てパンツ10は、外装シート11と、胴部装着部12とを有する。胴部装着部12は、外装シート11の一部を折り曲げて形成され、装着時に使用者の腰回りに位置する。
【0109】
本実施形態において、外装シート11は、使用者の肌面側から第1繊維シート2、弾性部材5、第2繊維シート3の順に積層されており、更に、第1繊維シート2と同様の第3繊維シートを第2繊維シート3の非肌面側に追加した構成となっている。第1繊維シート2、第3繊維シートは、撥水性の不織布が用いられており、フッ素系、シリコーン系またはパラフィン系等の撥水剤が塗布されている。
【0110】
胴部装着部12は、前述のように、外装シート11を折り曲げて形成される。このため、他の部分に比べて、弾性部材5(線状弾性体5a)が密に配置されており、使用者の腰回りに作用する弾性力が他の部分よりも強くなっている。よって、使い捨てパンツ10を装着した場合に、使い捨てパンツ10が下側にずれにくくなっている。なお、胴部装着部12は、外装シート11を折り曲げずに形成してもよい。
【0111】
弾性部材5は、図中の横方向に伸縮するように設けられているが、図中の縦方向に伸縮するように配置してもよい。
【0112】
また、
図11から明らかなように、使い捨てパンツ10には、模様が施されている。この模様は第2繊維シート3に印刷されており、グラビア印刷またはフレキソ印刷などの印刷方法を用いて適宜印刷すればよい。
【0113】
使い捨てパンツ10は、数回の洗濯には耐えることができるので、ある程度の期間使用することができ、経済的である。また、使い捨てパンツ10は、年齢、性別、体形を問わずに使用することができ(子供用、男性用、女性用など)、ペットなどの動物にも適用することができる。
【0114】
なお、使い捨てパンツ10でなく、オムツの外装体として、第1繊維シート2、弾性部材5、第2繊維シート3、第3繊維シートとを有する生地を用いてもよい。
【0115】
使い捨てパンツ10も弾性部材5にホットメルト接着剤を塗布しており、第2繊維シート3も用いているので、表面材15の製造で説明したような第1加熱装置19、第2加熱装置20、第3加熱装置45を用いた加熱処理を行って、外装シート11を製造することが望ましい。
【0116】
外装シート11の製造装置は、表面材15の製造装置に、第3繊維シートを設置するためのロール部材や、搬送ロール等を追加することにより実現できる。この場合、第1ギャザー17および吸収部22を製造するための製造装置は必要なく、使い捨てパンツ10を着用するために両足を入れる穴部を形成する穴開け装置等を追加することにより、使い捨てパンツ10の製造装置とすることができる。なお、第1加熱装置19を省略したり、第3加熱装置45を省略したりするなど、使い捨てパンツ10の製造に合わせて製造装置を変更してもよい。
【0117】
以上、本実施形態を説明してきたが、これに限られるものではなく、種々の変更や、適宜の組み合わせが可能であることは言うまでもない。例えば、線状弾性体5aの配置態様としは、X方向に直線状に伸びるものに限定されず、断続的な線状弾性体5aでもよく、湾曲する曲線状の線状弾性体5aを並列状に配列してもよく、波形の曲線状の線状弾性体5aが不規則に並んでいる態様で配列してもよい。多数の線状弾性体5aの配列において、各線状弾性体5aは、異なる伸縮率を有する線状弾性体5aを組み合わせでもよい。弾性部材5は、線状形態のものに限定されず、多数の穴または切り込みを設けて所定の通気性を備えるシート状の弾性体を用いることもできる。
【0118】
2016年3月16日出願の米国仮出願62/308974に含まれる内容は、すべて本願に援用される。