特許第6773772号(P6773772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773772
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】気体混合物を分離する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20201012BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B01D53/22
   C10L3/10
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-512209(P2018-512209)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公表番号】特表2018-532577(P2018-532577A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2016071261
(87)【国際公開番号】WO2017042310
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】15184639.1
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518069210
【氏名又は名称】アキソム アンゲバンテ プロツェステヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス スツィバッツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ビンテルシュペルガー
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02679297(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0111052(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02762220(EP,A1)
【文献】 特開2009−229154(JP,A)
【文献】 特開2014−159543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00 − 71/82
C10L 3/00 − 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する装置であって、
前記装置は、膜装置(1)と、前記膜装置(1)の上流に配置された、回転速度調節可能な圧縮機(3)とを有し、前記膜装置(1)は、気体入口(1a)と、気体製品出口(1b)と、排気出口(1c)とを有し、前記膜装置(1)は、前記気体入口(1a)及び前記排気出口(1c)の下流に位置する少なくとも一つの透過出口(1c’)を有し、前記膜装置(1)の前記透過出口(1c’)は、前記圧縮機(3)へと、又はその吸引側で前記圧縮機につながる気体供給源へと、導管を介して接続されており、前記気体製品出口(1b)又はその下流に圧力制御ユニット(2)を備え、主にCH/COからなり、かつメタン濃度30体積%以下の気体混合物が使用され、
前記排気出口(1c)は、直接又は間接的に排気内の気体製品濃度を測定することができる気体センサを有し、
前記回転速度調節可能な圧縮機(3)及び前記圧力制御ユニット(2)が、制御装置(7)へと接続されている、装置。
【請求項2】
前記排気出口(1c)又はその下流に、回転速度調節可能な圧縮機(4)及び/又は圧力制御ユニット(5)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記膜装置(1)の透過出口(1c’)から、前記圧縮機(3)へと、又はその吸引側で前記圧縮機につながる気体供給源へとつながる導管内に、圧力制御ユニット(6)を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記圧縮機(4)及び/又は前記圧力制御ユニット(5)が、制御装置(7)へと接続されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記圧力制御ユニット(6)が制御装置(7)へと接続されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
主にCH/COからなり、かつメタン濃度30体積%以下の気体混合物を、気体製品としてのCHと、排気としてのCOとに分離するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置の使用。
【請求項7】
主にCH/COからなり、かつメタン濃度30体積%以下の気体混合物を、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置を用いて気体製品及び排気に分離する方法であって、膜装置(1)の透過物が、前記透過出口(1c’)を通して部分的に並流で、及び前記排気出口(1c)を通して部分的に対向流で回収され、前記透過出口(1c’)を通して回収される前記透過物は前記圧縮機(3)で加圧されて前記気体入口(1a)を通して供給気体として前記膜装置(1)へと再循環され、前記排気出口(1c)を通して回収される前記透過物は排気として引き出され、さらに前記膜装置(1)のリテンテートは気体製品出口(1b)を通して気体製品として引き出され、
前記透過出口(1c’)を通して回収される前記透過物の引き出しは、前記制御装置(7)を介して前記圧縮機(3)及び前記圧力制御ユニット(2)を作動させることにより、前記気体センサによって測定される前記排気内の前記気体製品濃度が所定の割合を越えないよう制御又は調整される、方法。
【請求項8】
前記圧力制御ユニット(2)の制御弁を閉じること、又は圧縮機(3)の回転速度を増大させることによって、前記リテンテートの圧力が前記膜装置(1)内で増加する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体透過によって気体混合物を製品気体及び排気に分離する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気体透過膜装置において、気体製品及び排気の分離は、例えば、気体製品に富むリテンテートと、排気に富む透過物を得ることができる透過によって行われる。リテンテート中の気体製品の濃度、及び透過物中の排気の濃度は、他の要因のなかでも、いずれの場合においても使用される処理パラメータに依存し;一般に、高品質な気体製品は、増大したエネルギーの使用が常に必要である(より高い圧力によって、使用される供給気体に対する収率が低下する等)。したがって、気体製品の収率を上昇させるための、又はそのような方法の過程でより効率的にエネルギーを利用するための、改善された方法が望まれている。更に、気体透過プラントを設立するための投資コストをできるだけ低く保つことが望ましい。
【0003】
本技術の水準によれば、気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する装置は、加圧供給気体が、膜装置内でリテンテート及び透過物に分離されるように設計され、例えば、リテンテートは気体製品を含み、透過物は排気を含む。このワンステップの解決法の不利な点は、気体製品の品質が低く、気体製品の収量が低いことであり、このことは更なるエネルギー需要を伴う。更に、この装置の経済的利用は、高選択的な膜を用いてのみ可能である。
【0004】
気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する改善された装置は、第一の膜装置の透過物が、第二の膜装置のための供給気体として加圧された形態で用いられるよう設計され、両方の膜装置のリテンテート流は気体製品を含み、第二の膜装置の透過物の流れは排気を含む。任意に、供給気体が加圧された形態で存在しない場合、プラントの上流に圧縮機を配置してもよい。この装置の利点は、改善された気体製品の収率である。この解決法に対する不利な点は、気体製品の品質が未だ低く、第二の膜装置のために必要な気体の圧縮による更なるエネルギー需要である。更に、この装置の経済的利用は、高選択的な膜を用いてのみ可能である。
【0005】
更に、第一の膜装置のリテンテートが第二の膜装置のための供給気体として使われ、第二の膜装置の透過物が第一の膜装置の加圧供給気体に混合され、第二の膜装置のリテンテートが気体製品として引き出され、第一の膜装置の透過物が排気として引き出される装置が知られている。この場合、第二の膜装置の透過物が循環されるので、ある意味では、プラント及びそれに必要な全ての部品(圧縮器、導管、膜装置、冷却分離器、精密硫黄分離器等)の寸法を、第一の膜装置の循環された濾液の体積流に対応して拡大しなければならない。供給気体体積流量を100m/h、上記供給気体に対する第二の膜装置の透過物の混合を80m/hと仮定すれば、圧縮器の上流で180m/hの合計体積流量が得られ、それによってプラントは必要な大きさにされる。この方法の利点は、二段階実施であるため、より高い気体製品の収率を得ることができ、かつ、より選択的でない膜を使用することができるという事実であり;不利な点は、非常に大きい(1.2〜2.5倍の)寸法のプラントが必要であること、及び再循環のためにエネルギー需要が増大することである。
【0006】
米国特許第4,130,403号A(D1)は、膜装置のリテンテート出口の、更なる膜装置の気体供給源への後方結合を開示しており、これは上流に配置された単一の膜装置のみを有する。
【0007】
Argawal R.他(膜科学ジャーナル、Elsevier Scientific出版社、第112巻、No.2)は、2つの圧縮器を有するカスケード配置に関する。図6は、それぞれの第一の膜装置の気体入口への後方結合を示す。
【0008】
仏国特許第2917305号A1(D3)は、複数の膜装置のマトリクス配置を開示する。
【0009】
国際公開第2010/141963号A1は、気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する装置であって、上記装置は、少なくとも2つの膜装置(1)及び(2)と、第一の膜装置(1)の上流に配置された圧縮機(3)とを有し、膜装置(1)及び(2)は、それぞれ、気体入口(1a、2a)と、リテンテート出口(1b、2b)と、透過物出口(1c、2c)とを有し、第一の膜装置(1)のリテンテート出口(1b)は、第二の膜装置(2)の気体入口(2a)へと導管を介して接続され、第二の膜装置(2)の透過物出口(2c)は、圧縮機(3)へと、又は吸引側で圧縮機につながる気体供給源へと、導管を介して接続され、圧縮機(3)は、第一の膜装置(1)の気体入口(1a)へと導管を介して接続され、気体製品はリテンテート出口(2b)を経て得られ、排気は排気出口(1c)を経て得られる、装置を記載している。
【0010】
国際公開第2010/141963号A1によれば、そのような装置において、上流の膜装置(4)の透過物出口(4c)が圧縮機(3)の気体供給源に導管を介して接続されることが提供され、膜装置(4)は、上記更なる膜装置(5)のリテンテート出口(5b)を膜装置(4)の気体入口(4a)へと導管を介して接続することによって形成される、少なくとも一つの更なる上流の膜装置(5)を有し、更なる気体製品はリテンテート出口(4b)を経て得られ、更なる排気は透過物出口(5c)を経て得られる。
【0011】
全てのこれらの装置は、個々の膜装置が常に対向流で作動するという点で共通している。
【0012】
国際公開第2010/141963号A1は、気体入口と、リテンテート出口と、2つの透過出口とを有する膜装置であって、そのような膜装置の透過空間は、両方の透過出口の間に位置する領域の壁によって分離していてもよい、膜装置を記載している。そのような膜装置は、気体製品の収率を高めることができると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明は、エネルギーをより効率的に利用するとともに、装置を制御することによって調節可能な、排気中の気体製品の濃度を可能な限り低くすることができる、気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明は、気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する装置を提供し、上記装置は、膜装置(1)と、膜装置(1)の上流に配置された、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機(3)とを有し、膜装置(1)は、気体入口(1a)と、リテンテート又は気体製品出口(1b)と、排気出口(1c)とを有し、膜装置(1)は、気体入口(1a)の下流に配置された、少なくとも一つの更なる透過出口(1c’)を有し、膜装置(1)の透過出口(1c’)は、圧縮機(3)へと、又はその吸引側で圧縮機(3)につながる気体供給源へと、導管を介して接続されている。本発明によれば、リテンテート出口(1b)又はその下流に圧力制御ユニット(2)が提供され、主にCH/COからなり、かつメタン濃度が30体積%以下である気体混合物が用いられる。この、圧力制御ユニットと特定の気体混合物との組合せ(本発明の目的において、「主に」とは、気体混合物中に存在する割合が50体積%超、好ましくは55体積%超、60体積%超、65体積%超、70体積%超、75体積%超、80体積%超、85体積%超、特に好ましくは90体積%超、又は95体積%超であることを意味する。)は、供給気体中のメタン濃度を制限し、同時に、リテンテート圧力制御ユニットによってリテンテート空間内に抵抗を提供し、かつ、例えば弁又は制御弁に代表されることがあり、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機若しくは(好ましくは回転速度調節可能な)コンプレッサの吸引側、又は好ましくは回転速度調節可能な多段階圧縮機若しくはコンプレッサのある段階へとつながる供給源は、圧力制御ユニットを、それぞれの予めの設定に対応する調節可能な態様で閉鎖することを可能にするか、又は圧縮機若しくはコンプレッサの回転速度による抵抗を提供することを可能にするか、又は圧縮機若しくはコンプレッサを調整若しくは制御によって回転速度を調整することを可能にする。この文脈において、制御弁(2)の閉鎖は、必ずしもリテンテート空間の圧力増加を引き起こすわけではなく;例えば、制御弁(2)の閉鎖は、コンプレッサ(3)の回転速度の減少を引き起こし、それはリテンテート空間の圧力を高める代わりに、最終的に一定のままにしてもよい。ここで、唯一の必要条件は、存在する気体混合物のための、本発明による膜装置のリテンテート側の抵抗の提供である。このように、少なくとも部分的に制御された態様で、気体入口の下流に位置する透過出口(1c’)の領域では、膜装置は並流で作動させることができ、一方、主に排気出口(1c)である第一の透過出口の領域では、膜装置は通常適用される対向流で作動される。この文脈において、「少なくとも部分的に」又は「主に」は、並流及び対向流が同時に両方の透過出口で優先することを意味するものではなく(技術的に不可能である)、それぞれの透過出口を出る透過物は、選択された条件に応じて、透過側においてリテンテート側の流れ方向に対して並流又は対向流のいずれかで実際に作動している膜領域に由来することを意味する。これは、本発明による装置の作動において、排気中の気体製品濃度の減少に関し、及び気体製品の量の増加に関しても、驚くべきかつ著しい改良に繋がる。したがって、本発明によれば、主にCH/CO、例えば希薄ガス、炭鉱ガス、又はバイオガスからなる気体混合物を、本発明による装置によって、気体製品としてのCHと排気としての主にCOとに分離することは、本発明によって提供されるように供給気体中のメタン濃度が30体積%以下である限り、気体製品中のCHの98%超、好ましくは99.8%の驚くほど高い回収を達成するよう行うことができる。当然、自動化された態様で圧力制御ユニットを操作することも可能であり、例えば、本発明による装置の適切な場所にセンサを提供した場合、本発明による装置の内部又は外部の一つ又は複数の場所で測定される所定の限界値を遵守するために、制御装置を用いて圧力制御ユニットを開ける又は閉じることによって操作することも可能である。限界値は、例えば、排気中のメタン濃度を表してもよく、その場合、センサは、排気出口(1c)又はその近くに提供される気体センサでもよい。例えば、独国においては、メタン排出量(気体透過によるバイオガスの分離の気体製品又はリテンテート)は、排気中のメタンの最大排出可能量に関して、バイオガス処理において生じる総メタン質量の0.2体積%に制限されており、例えば、本発明の装置によるこの限界値の遵守は、制御装置を用いて自動化された態様で提供されてもよい。膜装置(1)の透過出口(1c’)を、圧縮機(3)へと、又はその吸引側で圧縮機につながる気体供給源へと、導管を介して接続することによって、加圧の前又は間に透過物を供給気体に供給することができる。上記供給源が増大した圧力レベルを必要とする場合、上記増大した圧力レベルは、更に提供された圧縮機又はコンプレッサ(以下明示的には記載しない)によって達成することがきる。理想的な場合、排気出口(1c)を介して本発明による装置を出る排気(CO)は、そのメタン含有量に関して任意の更なる精製を行うことなく、直接放出又は再利用することができる。
【0015】
本発明の好適な実施例によれば、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機(4)及び/又は圧力制御ユニット(5)が、第一の透過出口、すなわち排気出口(1c)又はその下流に提供される。圧力制御ユニット(例えば弁又は制御弁)を提供することは、本発明による装置の透過空間内に位置する弁を通る流速の減少に応じて背圧を生じ、それによって、並流で作動される分離膜の面積を増加させることを可能にする。一方で、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機を排気出口(1c)又は下流で作動させる場合、排気出口(1c)からの排気の引き出しが増大し、並流で作動する分離膜の面積が低減する。
圧力制御ユニット及び好ましくは回転速度調節可能な圧縮機を提供することで、本発明による装置は、任意の方向に制御することができる。
【0016】
膜装置(1)の透過出口(1c’)から、圧縮機(3)まで、又はその吸引側で圧縮機につながる気体供給源までつながる導管内に、圧力制御ユニット(6)を提供することも有利である。上述の好ましい実施形態の場合に類似して、膜装置(1)の透過出口(1c’)から、圧縮機(3)まで、又はその吸引側で圧縮機につながる気体供給までつながる導管内に、圧力制御ユニットを提供することは、(圧力制御ユニット、例えば弁又は制御弁が気体流速を低減したとき)本発明による装置の透過空間内の背圧を増大させることを可能にし、それは並流で作動する分離膜の面積の低減につながる。一方で、圧力制御ユニットを開いた場合、圧縮機(3)の吸引能力は、少なくとも透過出口(1c’)の領域において透過空間内の圧力損失を生じ、それは今度は並流で作動する分離膜の面積を増加させる。しかしながら、本発明の範囲は、膜装置(1)の透過出口(1c’)を出る導管が、平行膜装置の圧縮機へと、又はその吸引側で圧縮機につながる気体供給源へとつながっている実施形態も包含する。好ましくは、上記導管は、排気内の気体製品の濃度に依存する態様で制御又は調整された圧力制御ユニット(6)も備えている。
【0017】
本発明によれば、回転速度調節可能な圧縮機(3)及び圧力制御ユニット(2)が、制御装置(7)へと接続されていてもよい。気体センサが、例えば直接又は間接的に排気内の気体製品濃度を測定することができる、例えば、排気出口(1c)の領域における気体センサの提供は、既に述べたように、排気中の所定の気体製品割合を越えないよう、本発明による装置を作動させることを可能にする。
【0018】
他の本発明の好ましい実施形態は、制御装置(7)へと接続された、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機(4)及び/又は圧力制御ユニット(5)に特徴づけられる。例えば排気出口(1c)の領域における気体センサの提供は、気体センサが、例えば直接又は間接的に排気内の気体製品濃度を測定することができ、既に述べたように、排気中の所定の気体製品割合を越えないよう、本発明による装置を作動させることを可能にする。
【0019】
この文脈において、圧力制御ユニット(6)が制御装置(7)へと接続されていることもまた有利である。例えば、排気出口(1c)の領域における気体センサの提供は、気体センサが、例えば直接又は間接的に排気内の気体製品濃度を測定することができ、既に述べたように、排気中の所定の気体製品割合を越えないよう、本発明による装置を作動させることを可能にする。
【0020】
本発明の他の側面によれば、上記装置は、主にCH/COからなる気体混合物を、気体製品としてのCHと、排気としての主にCOとに分離するために使用される。気体のそのような混合物の例としては、希薄ガス、炭鉱ガス、バイオガス等である。
【0021】
本発明の更に別の態様は、気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する方法であって、膜装置(1)の透過物が、部分的に並流及び部分的に対向流で回収され、
並流で回収される透過物は、加圧されて供給気体として膜装置(1)に再循環され、対向流で回収される透過物は排気として引き出され、さらに膜装置(1)のリテンテートは気体製品として引き出され、並流で回収される透過物の引き出しは、排気中の気体製品の濃度に依存する態様で制御又は調整される、方法に関する。この場合、並流で回収される透過物の引き出しは、上記加圧を経て行われ、それによって、膜装置の透過物は供給気体として再循環される。
【0022】
好ましくは、膜装置(1)におけるリテンテートの圧力の増加が提供される。すでに説明したように、(抵抗(2)に関する上記の開示にしたがい)抵抗を提供することは、例えば、膜装置内に存在するリテンテートの圧力の増大につながり、それは今度は並流で回収される透過物の量の増大につながる。
【0023】
本発明を、添付の図面を参照しながら更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、膜装置(1)と、圧力制御ユニット(2)と、膜装置(1)の上流に配置されたコンプレッサ又は圧縮機(3)とを備える、本発明による装置のブロック図を示す。
図2図2は、更なる第二の圧力制御ユニット(5)と、更なる第二のコンプレッサ又は圧縮機(4)を有する、図1による装置のブロック図を示す。
図3図3は、更なる第三の圧力制御ユニット(6)を有する、図2による装置のブロック図を示す。
図4図4は、更なる制御装置(7)を有する、図3による装置のブロック図を示す。
図5図5は、本発明による同じ膜装置(部分的に並流での作動を伴う)を、対向流、並流で作動させたときに得られたそれぞれの値の比較を示す。
図6図6は、図5に示す結果について、同じ膜装置を用いて、並流で作動する膜面積の上昇変化を有する回収結果を示す。
図7a図7a及び図7bは、本発明において用いられる用語、「並流」及び「対向」及び「少なくとも部分的に」及び「主に」をそれぞれ示す。
図7b図7a及び図7bは、本発明において用いられる用語、「並流」及び「対向」及び「少なくとも部分的に」及び「主に」をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1による膜装置は、気体入口(1a)と、リテンテート出口(1b)と、更なる透過出口(1c’)とを有する。膜装置(1)において、対向流で作動する領域に存在する排気は、排気出口(1c)を介して放出され、並流で作動する領域の圧縮機(3)によって透過出口(1c’)を介して吸い取られた濾液は、圧縮機(3)を経て膜装置(1)への供給気体として再循環する。このように、並流で作動する領域において、膜装置(1)の圧縮機(3)、気体入口(1a)、及び透過出口(1c’)を介して分離された排気が循環される。気体製品はリテンテート出口(1b)を経て放出され、そこに配置された圧力制御ユニット(2)は、膜装置(1)のリテンテート空間内の圧力を増大させるのに役立ち、それによって、本発明に従う分離膜の部分的に並流での作動が制御可能になる。図1について−互いに対して透過出口が位置する正確な位置に関わらず(透過出口(1c’)は気体入口(1a)の下流に位置しなければならないということを除く。)、以下のことがあてはまる。
【0026】
気体入口(1a)からリテンテート出口(1b)へのリテンテートの流れ方向が、透過空間の左の領域から排気出口(1c)への流れ方向に対応するので、排気出口(1c)に対して(出口(1c)から見て)透過空間の左の領域に由来する透過物は、並流で回収される。一方、気体入口(1a)からリテンテート出口(1b)へのリテンテートの流れ方向が、透過空間の右の領域から排気出口(1c)への流れ方向とは反対であるので、(出口(1c)から見て)透過空間の右の領域に由来する透過物は、対向流で回収される。
【0027】
これは、透過出口1c’に関して同様であり、気体入口(1a)からリテンテート出口(1b)へのリテンテートの流れ方向が、透過空間の左の領域から透過出口(1c’)までの流れ方向に対応するので、(出口(1c’)から見て)透過空間の左の領域に由来する透過物は、並流で回収される。一方、気体入口(1a)からリテンテート出口(1b)へのリテンテートの流れ方向が、透過空間の右の領域から透過出口(1c’)までの流れ方向と反対であるので、(出口(1c’)から見て)透過空間の右の領域に由来する透過物は、対向流で回収される。それぞれ、並流型においてのみ、又は対向流型においてのみ作動する膜の領域に由来する透過物は、透過出口のいずれにも存在することができないことは明らかである。
【0028】
図2は、第二の圧力制御ユニット(5)、及び第二の好ましくは回転速度調節可能なコンプレッサ又は圧縮機(4)が、排気出口(1c)へと接続された導管内に提供された、図1に従う実施形態を示す。圧力制御ユニット(5)が閉じているときに、排気は膜装置(1)のリテンテート空間に後退して上がり、必然的に、リテンテート出口(1c’)を通したリテンテートの放出の増大につながり、それによって、並流で作動する分離膜の面積が増加する。一方、圧力制御ユニット(5)が完全に開かれ、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機(4)が始動した場合、リテンテート出口(1b)を通したリテンテートの放出が増大することになり、これは今度は、排気出口(1c)からの排気の引き出しの増大、及び並流で作動する分離膜の面積の減少につながる。
【0029】
図3は、更なる圧力制御ユニット(6)が、透過出口(1c’)と圧縮機(3)との間の導管、又は圧縮機(3)へとつながる供給管内に提供された、図2に従う実施形態を示す。圧縮機(3)の能力に関わらず、この圧力制御ユニット(6)は、透過出口(1c’)を介して膜装置(1)の透過空間から透過物の放出を低減することができ、それによって、透過出口(1c’)付近の透過空間の圧力条件が変化する。背圧を生成することは、リテンテート出口(1b)の方へリテンテートを更に押すことにつながり、それによって、並流で作動する分離膜の領域も低減される。
【0030】
図4は、圧力制御ユニット(2、5、6)、及び圧縮機(3、4)が、制御装置(7)へと接続された、図3に従う実施形態を示す。この文脈において、本発明は、個々の装置(2、3、4、5、6)と制御装置との接続もまた提供する点に明確に注意されたい。制御装置の操作のために場合によっては必要とされるセンサ、例えば気体センサ、圧力センサ、及び/又は流速センサは、図1〜4に示されていない。制御装置(7)は、圧力制御ユニット(2、5、6)の独立した開閉、並びに圧縮機(3、4)の回転速度の(また独立した)調整を提供することができるよう設計されている。
【0031】
図5から明らかなように、対向流及び並流の膜装置の操作のための値は、それぞれ、わずかに異なるのみであり;部分的に対向流及び部分的に並流の膜面積を作動させたときにのみ、回収速度の著しい増大が観察することができた。これは、メタン濃度が30体積%以下の供給気体を用いた、本発明による膜装置の使用、又は本発明による膜装置の操作は、排気中のメタンの割合を、これまでは不可能であるほど低い値まで低減することを可能するため有利であり、このことは、特に使用される供給気体からのメタンの分離効率に関して有利である。本発明による装置は、メタン含有供給気体からメタンを分離するためだけに使用できるものではなく、それぞれの気体混合物に適する透過性膜を使用する限り、あらゆる気体混合物のための気体製品の回収を著しく増加させることに適すると理解される。
【0032】
図7aから容易に見ることができるように、図1に関して、透過出口(1c’)を介して出る又は吸い取られる透過物の多くの割合(すなわち半分より多い)は、並流で作動する膜面積に由来する。
【0033】
ここで、図7aに図示する状況に基づいて、圧縮機(3)の回転速度が低減された場合、透過出口(1c’)を介して出る又は吸い取られる濾液の組成もまた変化し、並流で作動する膜面積に由来する透過物の割合はより小さくなる(図7bを参照)。
【0034】
すでに説明したように、圧力制御ユニットは、本発明による膜装置のリテンテート側の抵抗を提供する役割を果たし;圧力制御ユニット(2)なしでは、リテンテート空間の背圧がなく、したがって、分離は不可能である。本発明によれば、リテンテート空間内の圧力増加は、圧縮機(3)の回転速度を増加させることによって主に提供され、それによって、膜装置に供給される供給気体の量も変化する。
【0035】
さらに、本発明によって使用される分離膜で、膜を透過するメタンの濃度勾配が常にあることは、当業者にとって明らかであるが;しかしながら、透過空間に存在する透過物は、膜の左の部分(供給気体入口(1a)に近い)よりも、膜の右の部分(リテンテート出口(1b)に近い)においてメタンに富む。
【0036】
(例えば、制御弁(2)を更に閉じ、それによってリテンテート空間内に圧力がかかることによって)本発明による膜装置のリテンテート側に抵抗が生じ、そして、膜装置(1)の透過出口(1c’)が、圧縮機(3)に、又は吸引側で圧縮機につながる気体供給源に導管を介して接続されている場合、透過物は、透過出口(1c’)を介して引き出され、供給気体と再混合される。この場合、透過出口(1c’)を介して引き出される透過物の組成は、圧縮機(3)の選択された回転速度によって影響される可能性がある。回転速度を増加させることは、並流で作動する膜の領域に由来する透過物の量を増加させるとともに(図7a)、回転速度を低減することは、並流で作動する膜の領域に由来する透過物の量の対応する低減につながる(図7b)。
【0037】
膜を透過する透過物の総量を実質的に一定に保つことができる(圧縮機(3)の回転速度の増大によって生じるリテンテート空間の圧力増加、及び関連して変更された膜の分離能力は、対応して圧力制御ユニット(2)を開き、したがって抵抗を低減することによって補うことができる)ので、本発明によれば、圧縮機(3)の回転速度によって、排気中の組成物をそのメタン含有量に関して調整することができる。
【0038】
しかしながら、後者は、単に本発明による膜装置のリテンテート空間内の抵抗を提供することに役立つので、したがって、供給気体中のメタン濃度が30体積%以下に限り発生する発明の効果は、圧力制御ユニット(2)のみによっては達成されない。むしろ、所望の効果は、圧縮機(3)の回転速度によって、任意に圧力制御ユニット(2)と組み合わせて達成される。
以下の項目[1]〜[9]に、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
気体透過によって気体混合物を気体製品及び排気に分離する装置であって、
前記装置は、膜装置(1)と、前記膜装置(1)の上流に配置された、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機(3)とを有し、前記膜装置(1)は、気体入口(1a)と、リテンテート又は気体製品出口(1b)と、透過物又は排気出口(1c)とを有し、前記膜装置(1)は、前記気体入口(1a)の下流に位置する少なくとも一つの更なる透過出口(1c’)を有し、前記膜装置(1)の前記透過出口(1c’)は、前記圧縮機(3)へと、又はその吸引側で前記圧縮機につながる気体供給源へと、導管を介して接続されており、前記リテンテート出口(1b)又はその下流に圧力制御ユニット(2)を備え、主にCH/COからなり、かつメタン濃度30体積%以下の気体混合物が使用される、装置。
[2]
前記第一の透過出口(1c)又はその下流に、好ましくは回転速度調節可能な圧縮機(4)及び/又は圧力制御ユニット(5)を備える、請求項1に記載の装置。
[3]
前記膜装置(1)の透過出口(1c’)から、前記圧縮機(3)へと、又はその吸引側で前記圧縮機につながる気体供給源へとつながる導管内に、圧力制御ユニット(6)を備える、請求項1又は2に記載の装置。
[4]
前記回転速度調節可能な圧縮機(3)及び前記圧力制御ユニット(2)が、制御装置(7)へと接続されている、請求項1に記載の装置。
[5]
前記好ましくは回転速度調節可能な圧縮機(4)及び/又は前記圧力制御ユニット(5)が、制御装置(7)へと接続されている、請求項2又は4に記載の装置。
[6]
前記圧力制御ユニット(6)が制御装置(7)へと接続されている、請求項3又は5に記載の装置。
[7]
主にCH/COからなり、かつメタン濃度30体積%以下の気体混合物を、気体製品としてのCHと、排気としてのCOとに分離するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置の使用。
[8]
主にCH/COからなり、かつメタン濃度30体積%以下の気体混合物を、気体透過によって気体製品及び排気に分離する方法であって、膜装置(1)の透過物が、部分的に並流及び部分的に対向流で回収され、並流で回収される前記透過物は加圧されて供給気体として前記膜装置(1)へと再循環され、対向流で回収される前記透過物は排気として引き出され、さらに前記膜装置(1)のリテンテートは気体製品として引き出され、
並流で回収される前記透過物の引き出しは、前記排気中の前記気体製品の濃度に依存する態様で制御又は調整される、方法。
[9]
前記リテンテートの圧力が前記膜装置(1)内で増加する、請求項8に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b