【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、ガスバリア材料としてCNFを含む包装用バリアフィルムおよびシートにおける上記の問題を克服または軽減することが本発明の目的である。
【0017】
長期的な無菌包装に適した優れたガスバリア性を有する、液体、半固体または含水食品の積層包装材料などの、酸素感受性製品用包装材料を提供することも概して本発明の目的である。
【0018】
CNF材料自体の化学的修飾、例えば架橋またはCNF分子を異なる官能基で化学的に置換することにより、CNF材料の耐湿性を改善する試みが過去になされている。そのような化学的修飾は、当然ながらCNF材料自体の製造における追加の修飾法ステップを必要とし、それ自体が、コストおよび原料の利用度の両方を通常増加させる。
【0019】
したがって、包装材料の製造段階で、後で添加または実行され得る特徴によって、最終バリア包装材料製品においてさらに耐湿性を有する、結果的に、フィブリル化から直接得られる、天然の、元の状態の原料を使用する、代替のCNF材料を提供することが望ましい。
【0020】
ガスバリア材料が未修飾CNFフィブリル材料を含むバリアフィルムまたはシートを提供することが特定の目的であり、バリアフィルムまたはシートを含む包装容器内に包装された製品、特に食品、にガスバリア性を提供するために、フィルムまたはシートは長期間水分に耐えることができる。
【0021】
本発明のさらなる目的は、再生可能な材料の含有量が高い、そのようなバリアフィルムまたはシートを含む積層包装材料を提供することである。
【0022】
さらなる目的は、再生材料の分率および必要とされる再生方法のステップができるだけ少ない、容易に再生可能な積層包装材料を提供することである。
【0023】
特定の目的は、長期間にわたる食品保管のためのパッケージの製造を目的として、アルミニウム箔バリア材料に対してコスト効率が良く、良好なガスバリア性および良好な水蒸気バリア性を有する、非箔紙または非箔板紙の積層包装材料を提供することである。
【0024】
また本発明のさらなるより具体的な目的は、周囲条件下において維持された栄養品質で液体食品を長期保管するための無菌包装容器を製造するために、良好なガスバリア性、良好な水蒸気バリア性および層間の良好な内部接着性を有する、コスト効率の良い非箔状の紙または板紙系の、ヒートシール可能な包装用積層体を提供することである。
【0025】
これらの目的は、添付の特許請求の範囲に規定されている積層包装材料、包装容器および包装材料の製造方法によって本発明により実現可能である。
【0026】
本発明に関連して用語「長期保管」とは、包装容器が、包装された食品の品質、すなわち栄養価、衛生安全性および味を、周囲条件で少なくとも3か月、好ましくはそれより長く、6か月以上、例えば12か月以上保管することができることを意味する。
【0027】
「パッケージ完全性」という用語は、パッケージ耐久性、すなわち包装容器の漏れまたは破損に対する耐性を概して意味する。この特性に主に寄与するのは、包装用積層体内部で、積層包装材料の隣接する層の間に良好な内部接着が提供されることである。他の寄与は、材料層内部のピンホール、破裂などの欠陥に対する材料耐性からもたらされ、さらに他の寄与は、包装容器の形成時に材料が一緒に封止される封止接合部の強度からもたらされる。積層包装材料自体に関して、完全性については、主に、隣接する層へのそれぞれのラミネート層の接着ならびに個々の材料層の品質が重視される。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の第1の態様によれば、全般的な目的は、セルロースナノフィブリル(CNF)を含むガスバリア層を有する、酸素および他のガスの影響を受けやすい製品の包装に使用するためのバリアシートまたはフィルムによって実現され、ガスバリア層は気相蒸着コートされ、少なくとも1つの面がさらなるバリアコーティングで被覆され、さらなる気相蒸着バリアコーティングが、水蒸気バリア性を提供し、包装材料内で、フィルムが70%RH以上の高湿度条件、より詳細には80%RH以上の高湿度条件においてもガスバリア性を提供し得るようにする。水蒸気バリア性を提供するさらなる気相蒸着バリアコーティングは、例えば非晶質ダイヤモンドライクカーボンコーティング(DLC)であってよい。
【0029】
CNFは、木材セルロース繊維から作られた材料であり、個々のナノフィブリルが部分的または完全に互いから分離されている。CNFは通常非常に細く(約20nm)、長さは100nmから10μmの間であることが多い。しかしながら、ミクロフィブリルは長くてもよく、例えば10−100μmの間であるが、最大200μmの長さのものも使用し得る。水性スラリーまたは懸濁液中で、マイクロメートルの範囲の長さのフィブリル、および凝集したフィブリル、ならびに分離したフィブリルおよびナノメートルの範囲の長さのフィブリルが、CNFの定義に含まれる。
【0030】
一実施形態によれば、水蒸気バリアの間に水分感受性を有するCNF材料を封入するために、バリアシートまたはフィルムは、セルロースナノフィブリル(CNF)を含むガスバリア材料の1つの均質な層からなり、この層は少なくとも1つの面、好ましくは両面が気相蒸着されたバリアコーティングで被覆されている。
【0031】
さらなる実施形態によれば、バリアシートまたはフィルムにおけるガスバリア層は、CNFを含み、層の乾燥重量に対して、可塑剤化合物を25重量%まで、例えば20重量%含む。適切な可塑剤化合物または添加剤は、ポリオール、単糖類、デンプンなどの多糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびヒドロキシ官能性ならびにCNF組成物への可塑化効果を提供する同様の物質の中で見出される。食品包装の目的に適したそのような可塑剤化合物のうち特定の良好に機能する例は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グリセロール、2000−4000の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、および例えば87−79%など高い加水分解度を有するポリビニルアルコールからなる群から選択される。
【0032】
他の実施形態によれば、バリアシートまたはフィルムは、セルロースナノフィブリル(CNF)を含むガスバリア層で分散系コートされた基材層を含む。この実施形態のための適切な塗布量は、CNFが0.5から20重量%であるが、CNFの量は、同様にバインダーポリマーを少量含む組成物中では低くてよい。酸素バリア性にも寄与する可能性がある適切な分散系コーティングバインダーポリマーは、例えば、PVOH、酢酸ビニルポリマー、EVOH、アクリレートポリマーおよびコポリマー、ポリオレフィン、デンプンおよびセルロースエステルである。このようなポリマーバインダーの添加は、CNF組成物への可塑剤化合物添加剤の添加と、それらの添加剤とポリマーとが同じである場合に、重複する。
【0033】
しかしながら、最も好ましくは、可塑剤化合物または類似の高分子化合物の含有量は、20重量%以下であり、ガスバリア性に大きく寄与することはない。本発明の要旨および目的は、むしろ再生可能かつ天然の資源材料を単独で、または可能な限り多く用いて、他の材料をさほど添加することなく、ガスバリア性を提供することである。バリア特性を向上させるために、組成物に、無機充填剤粒子、層状ナノ粘土粒子およびコロイド粒子を追加することが考えられる。しかしながら、必要ではない組成の複雑性を避けることが望ましく、CNF層のみから十分なバリア特性を得ることが可能である。ローラーコーティング、スプレーコーティング、グラビアロールコーティング、リバースグラビアコーティング、カーテンコーティングなどの手段によって、基材フィルムまたはシートにCNF組成物の分散液を塗布することができる。
【0034】
バリアシートまたはフィルムがCNFガスバリア層で被覆された基材層を含む場合、基材層は、一実施形態によればポリマーフィルムである。異なる実施形態において、基材層は、紙基材、特に、12−70g/m
2の表面重量を有する薄紙である。あるいは、CNFコーティングは、より厚い紙または板紙上に直接コーティングすることができ、積層包装材料中にバルク層を形成し、70超350g/m
2までの表面重量を有する。しかしながら、そのような厚い板紙の基材材料上に被覆されているCNF層の気相蒸着コーティングは、現在の包装材料生産に関して経済的に実現可能なものではなく、より薄い紙基材が最も好ましい。
【0035】
特定の一実施形態によれば、ガスバリア層は、フィルムまたはシート表面の両側を、そのそれぞれの、反対側の面を、気相蒸着バリアコーティングで被覆される。
【0036】
本発明の第2の態様では、本発明のバリアフィルムまたはシートを含む積層包装材料が提供される。積層包装材料は、第1の最も外側の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層と、第2の最も内側の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層とをさらに含んでよい。
【0037】
一実施形態によれば、積層包装材料は、紙または板紙、または他のセルロース系バルク材料のバルク層と、第1の最も外側の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層と、第2の最も内側の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層とを含み、紙または板紙のコア層の内側に、包装材料から作られた包装容器の内側に向かって、コア層と最も内側の層との間に、バリアシートまたはフィルムが配置される。特定の実施形態において、少なくとも1つの気相蒸着水蒸気バリア層が、ガスバリア層と、最も内側のヒートシール可能なポリオレフィン層との間に配置される。
【0038】
さらなる実施形態によれば 、バリアシートまたはフィルムは、中間接着ポリマー結合層または中間熱可塑性ポリマー結合層によってバルク層に結合される。
【0039】
本発明の第3の態様では、本発明の積層包装材料を含む包装容器が提供され、さらなる実施形態によれば、包装容器は全体が積層包装材料で作られる。
【0040】
これまで、ガスバリア基準ならびに様々な機械的特性および他の物理的特性の必要性を満たす包装材料の設計において、様々な気相蒸着バリアコーティングが検討されてきた。
【0041】
気相蒸着されたバリア層は、物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)によって、好ましくは真空蒸着プロセスによって、好ましくはプラズマアシストまたはプラズマ化学気相成長法プロセス(PECVD)によって、CNFバリア材料の基材表面上に与えられる。他の気相蒸着法は、良好なバリアコーティングを生成せず、2つの連続したコーティングステップを必要とするか、または密度およびバリアがあまり良好でないコーティングを生成するか、またはその両方に当てはまる。大気圧プラズマコーティング法は、例えば、低密度の低バリアコーティングを生成することが知られている。
【0042】
本発明による薄フィルム気相蒸着層は、ナノメートルレベルの厚みを有し、すなわち該層はナノメートルで数えられる厚みを有し、それは例えば1−500nm(50−5000Å)であり、好ましくは1−200nm、より好ましくは5−100nm、最も好ましくは5−50nmである。
【0043】
概して、5nm未満であると、バリア特性は非常に低く、200nmを超えると、コーティングは可撓性が低く、したがって可撓性基材上に付与されたときに割れやすい。
【0044】
通常、バリア特性、特に水蒸気バリア特性を有するそのような気相蒸着コーティングは、金属化合物または無機金属化合物で形成されている。
【0045】
一実施形態によれば、実質的にアルミニウム金属からなる薄い気相蒸着層は、5−50nm、より好ましくは5−30nmの厚みを有してよく、これは従来の厚み、すなわち6.3μmのアルミニウム箔中に存在するアルミニウム金属材料の1%未満に相当する。金属気相蒸着コーティングは、有意に少量の金属材料を必要とするが、それらは依然としてある程度の低いバリア特性、特に水蒸気バリア特性を提供する。しかしながら、そのように蒸着材料の量が少ないことにより、再生利用において別個の材料部分を構成せず、必要とされる原料が非常に少量の状態でバリア特性を付加している。
【0046】
基材フィルムの表面処理のステップは、例えば、表面のイオン衝撃などによって、基材フィルムを金属化するときに、気相蒸着コーティングの前に行ってよい。
【0047】
適切な金属化層は、光学密度(OD)が1.8−3.0、好ましくは2.0−2.7である。光学密度が1.8より低い場合、金属化フィルムのバリア特性は低すぎる。一方、3.0を超えると、金属化層が脆くなりすぎ、長い時間基材フィルムを金属化する際の熱負荷が高いことに起因して、金属化工程中の熱安定性が低すぎるものとなる。コーティング品質と接着力は、明らかに悪影響を受ける。したがって、これらの値の間に最適値があり、好ましくは2.0−2.7の間である。
【0048】
さらに考えられるコーティングは、式AlO
x(式中、xは1.0−1.5の間にあり、好ましくはAl
2O
3である)を有する酸化アルミニウムのコーティングである。好ましくは、このようなコーティングの厚さは、5−300nm、より好ましくは5−100nm、最も好ましくは5−50nmである。
【0049】
通常、アルミニウム金属化層は、本質的に、使用される金属化被覆法の性質に起因して、酸化アルミニウムからなる薄い表面部分を有する。
【0050】
薄いコーティング金属化層、または無機金属化合物の層は、好ましくは真空気相蒸着によって付与されるが、電気メッキまたはスパッタリングなどのより低い生産性を有する当技術分野で一般的に知られている他の方法によって、さほど好ましくはないが、付与されてもよい。本発明による最も好ましい金属は、アルミニウムであるが、本発明によれば、真空蒸着、電気めっきまたはスパッタリングが可能な他の金属を使用することができる。したがって、Au、Ag、Cr、Zn、TiまたはCuなどの、さほど好ましくない、あまり一般的でない金属の使用も考えられる。概して、金属または金属と金属酸化物との混合物の薄いコーティングは、水蒸気に対するバリア特性を提供し、所望の機能が、水蒸気が多層フィルムまたは包装積層体の中へおよびそれらを通って移動するのを防ぐことである場合に使用される。最も好ましくは、金属化コーティングまたは無機金属コーティング中の金属はアルミニウム(Al)である。アルミニウム無機化合物のさらなる例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび炭化アルミニウム、またはこれらの混合物である。
【0051】
また、他の気相蒸着無機金属化合物層も本発明を実施するのに適する場合がある。また、ケイ素のような半金属からの同様の化合物も本発明に適する場合があり、コスト効率が良く、ある程度の水蒸気バリア特性を提供することができる限り、無機金属化合物という用語に含まれる。
【0052】
いくつかの無機コーティングは、プラズマ化学気相成長法プロセス(PECVD)によって付与されてよく、金属または金属化合物の蒸気は、おおむね酸化環境下で基材上に堆積される。酸化ケイ素コーティングは、例えば、PECVDプロセスによって付与されてよい。
【0053】
有利な一実施形態によれば、気相蒸着コーティングは、薄い炭素系のバリア層などの有機コーティングであってもよい。そのような炭素系層は、有利にはプラズマコーティング法、好ましくはPECVDによってコーティングされ、炭化水素ポリマーコーティングをもたらし、これは非晶質炭素またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングと呼ばれる。DLCは、ダイヤモンドの典型的な特性のいくつかを示す非晶質炭素材料の分類を定義する。好ましくは、例えばアセチレンまたはメタンなどの炭化水素ガスが、コーティングを製造するためのプラズマ中のプロセスガスとして使用される。そのような炭素系のコーティングは、概して、積層包装材料中の隣接するポリマーまたは接着剤層に対して良好な接着性を提供する。特にダイヤモンドライクカーボンコーティング(DLC)など、気相蒸着された水蒸気バリアコーティングが実質的な量の炭素を含有している積層材料において、特に良好な接着性が得られ、DLCはポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリエチレン系のコポリマーなどのポリマーと良好な接着適合性を示す。
【0054】
非晶質ダイヤモンドライクコーティングは、2−50nm、例えば2−40nm、例えば2−35nm、例えば5−35nm、例えば10−30nmの厚さで付与されてよい。
【0055】
概して、上記の気相蒸着コーティングは、幾らか低いレベルのガスバリア性、特に水蒸気バリア特性などのバリア特性を提供する。コーティングされるバリアフィルムまたはシートのCNF材料層がすでに高いレベルのガスバリア性を提供するので、良好な水蒸気バリア特性を有するコーティングが、本発明にとって適切である。また幾らかの固有の酸素バリア特性も提供する気相蒸着コーティングは、当然のことながら、少なくとも乾燥条件下で、全ガスバリア性をさらに向上させ得る。
【0056】
最も外側および最も内側のヒートシール可能な液密層に適した熱可塑性樹脂は、ポリエチレンおよびポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーなどのポリオレフィンであり、好ましくはポリエチレンであり、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、線状LDPE(LLDPE)、シングルサイト触媒メタロセンポリエチレン(m−LLDPE)およびそれらのブレンドまたはコポリマーからなる群から選択されるポリエチレン である。好ましい実施形態によれば、最も外側のヒートシール可能かつ液密である層はLDPEであり、最も内側のヒートシール可能な液密層は、最適な積層およびヒートシール特性のためのm−LLDPEおよびLDPEのブレンド組成物である。
【0057】
最も外側の層および最も内側の層に関して記載されているものと同じ熱可塑性ポリオレフィン系材料、特にポリエチレンはまた、積層材料の内側の結合層、すなわち紙または板紙などのバルクまたはコア層とバリアフィルムとの間、に適する。一実施形態では、熱可塑性結合層は、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)層などのポリエチレン層であってよい。
【0058】
代替的な実施形態によれば、例えばバルクまたはコア層とバリアフィルムとの間、または外側のヒートシール可能な層とバリアまたはプライマー被覆ポリマーフィルム基材との間などの、積層材料内部の適切な結合層または接合層は、改質ポリオレフィンなど、いわゆる接着熱可塑性ポリマーとも呼ばれ、これは、主にLDPEまたはLLDPEコポリマーに基づき、または、例えばカルボン酸基またはグリシジル官能基などの官能基を含むモノマー単位、例えば(メタ)アクリル酸モノマーまたは無水マレイン酸(MAH)モノマーを有するグラフトコポリマーであり、すなわちエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)またはエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA))、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー(EG(M)A)またはMAHグラフトポリエチレン(MAH−g−PE)である。このような改質ポリマーまたは接着ポリマーの他の例は、いわゆるアイオノマーまたはアイオノマーポリマーである。好ましくは、改質ポリオレフィンは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)またはエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)である。
【0059】
完成した包装容器の要件に応じて、対応する改質ポリプロピレン系熱可塑性接着剤または結合層も有用であり得る。
【0060】
そのような接着性ポリマー層または結合層は、同時押出コーティング操作においてそれぞれの外層と一緒に適用される。
【0061】
しかしながら、通常、上記接着性ポリマーの使用は、本発明のDLCコートされたフィルムへの結合には必要ではない。ポリオレフィン層、特にポリエチレン層との十分かつ適切な接着性は、隣接する層として、少なくとも200N/mのレベル、例えば少なくとも300N/mのレベルであると結論付けられる。
【0062】
したがって、一実施形態によれば、積層構造に含めるときに硬化する必要があるか、硬化するか、または乾燥する従来の接着剤またはプライマーを用いることなく、積層材料を構成することができる。
【0063】
接着測定は、LDPE積層の24時間後に180°剥離力試験装置(Telemetric Instrument AB)を用いて室温で行った。剥離はDLC/LDPE界面で行われ、剥離アームはバリアフィルムである。必要に応じて、湿潤状態下、すなわち、積層包装材料が、積層材料から作られた包装容器に保管された液体から、材料層を通って移動する水分で、および/または湿潤環境または高湿度環境での保管によって、飽和されているときの条件下での接着を評価するために、剥離の間、剥離した界面に蒸留水の水滴が加えられる。所与の接着測定値はN/mで示され、6回の測定の平均値である。
【0064】
200N/mを超える乾燥接着は、通常のパッケージ製造条件、例えば積層材料を曲げて折るときに、層が層間剥離しないことを確実にする。同様の強さの湿潤接着は、包装用積層体の層が、充填、パッケージ形成後、輸送、分配および貯蔵の間に層間剥離しないことを確実にする。
【0065】
内部結合ポリマー層は、一般的な技術および機械、例えばアルミニウム箔の積層、特に溶融ポリマーからのポリマー層の熱ラミネーション(押出)のために知られているものを使用することにより、DLCバリア層がコーティングされたポリマーフィルム基材上に直接コーティングすることができる。また、予め作製されたポリマーフィルムを使用し、それを局所的に溶融させることによって、例えば熱いシリンダーまたは加熱ローラーを用いて熱を加えることによって、バリアコートキャリアフィルムに直接結合させることが可能である。上記から、DLCバリアフィルムを、積層体中のアルミニウム箔バリアおよび積層包装材料への変換方法と同様の方法で取り扱うことができることは明らかである。ラミネーション装置および方法は、例えば、以前に知られたプラズマコーティングされた材料において必要とされ得るような特定の接着性ポリマーまたはバインダー/接合層を加えることによって、いかなる変更も必要としない。さらに、DLCバリア層がコーティングされた新しいバリアフィルムは、最終食品パッケージのバリア特性に悪影響を及ぼすことなく、アルミニウム箔程度に薄くすることができる。
【0066】
例えばLDPEなどのポリエチレンの隣接層にDLCバリアコーティング表面を積層する場合、バリアフィルムから寄与する酸素バリア性が、バリアフィルム自体のみでの測定よりも2−3倍高い値に増加することが分かっている。本発明の耐久性のあるDLCバリアコーティングを積層体に単に積層することによるこのバリアの改良は、以下の式による単純積層理論によって説明することができない。
1/OTR=SUMi(1/OTRi)
しかし、結果的に、各ラミネート層によるOTRの個々の寄与を超え総バリアを改善する。DLCコーティングとポリオレフィン表面との間の優れた接着が、2つの材料間の特に良好に統合された界面をもたらし、それによって酸素バリア特性が改善されると考えられている。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、乾燥および(剥離界面に水を入れることによる)(上述の)湿潤条件下で180°剥離試験法によって測定したDLCバリアコーティング層とさらなる積層結合ポリマー層との間の剥離力強度は、200N/mより高く、例えば300N/mより高い。乾燥接着力が200N/mを超えると、通常の製造条件下、例えば積層材料を曲げて折るときに、層が層間剥離しないことが確実となる。同様の強さの湿潤接着は、包装用積層体の層が、充填およびパッケージ形成後、輸送、分配および保管の間に層間剥離しないことを確実にする。
【0068】
好ましい実施形態の例および説明
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。