特許第6773812号(P6773812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6773812-ペダル踏力シミュレーション装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773812
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ペダル踏力シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/06 20060101AFI20201012BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20201012BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20201012BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20201012BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20201012BHJP
【FI】
   B60T7/06 E
   B60T8/17 B
   B60T13/122 B
   G05G1/30 E
   G05G5/03 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-559888(P2018-559888)
(86)(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公表番号】特表2019-514789(P2019-514789A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017055453
(87)【国際公開番号】WO2017202512
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2018年11月12日
(31)【優先権主張番号】102016208942.0
(32)【優先日】2016年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハンスマン,ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】キストナー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】スプロック,レイナル
(72)【発明者】
【氏名】フォック,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,クリス
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−182577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/06
B60T 8/17
B60T 13/122
G05G 1/30
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル踏力シミュレーション装置(1)であって、ハウジング(3)と少なくとも2つのコイルばね(5,6,7)とを有しており、前記ハウジング(3)内に操作可能な圧力ピストン(4)が軸方向に摺動可能に支承されており、前記コイルばね(5,6,7)が、前記圧力ピストン(4)の端面側(13)と前記ハウジング(3)の軸方向ストッパ(9)との間に互いに平行に配置されている形式のものにおいて、
前記コイルばね(5,6,7)と前記軸方向ストッパ(9)との間、および/または前記コイルばね(5,6,7)と前記圧力ピストン(4)との間に、それぞれ少なくとも1つの皿ばね(10,11)が挿入されていて、
前記コイルばね(5,6,7)が逆向きに巻かれていることを特徴とする、ペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項2】
ペダル踏力シミュレーション装置(1)であって、ハウジング(3)と少なくとも2つのコイルばね(5,6,7)とを有しており、前記ハウジング(3)内に操作可能な圧力ピストン(4)が軸方向に摺動可能に支承されており、前記コイルばね(5,6,7)が、前記圧力ピストン(4)の端面側(13)と前記ハウジング(3)の軸方向ストッパ(9)との間に互いに平行に配置されている形式のものにおいて、
前記コイルばね(5,6,7)と前記軸方向ストッパ(9)との間、および/または前記コイルばね(5,6,7)と前記圧力ピストン(4)との間に、それぞれ少なくとも1つの皿ばね(10,11)が挿入されていて、
前記圧力ピストン(4)の運動を前記軸方向ストッパ(9)の方向に制限するストッパ(22)が設けられていることを特徴とする、ペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項3】
ペダル踏力シミュレーション装置(1)であって、ハウジング(3)と少なくとも2つのコイルばね(5,6,7)とを有しており、前記ハウジング(3)内に操作可能な圧力ピストン(4)が軸方向に摺動可能に支承されており、前記コイルばね(5,6,7)が、前記圧力ピストン(4)の端面側(13)と前記ハウジング(3)の軸方向ストッパ(9)との間に互いに平行に配置されている形式のものにおいて、
前記コイルばね(5,6,7)と前記軸方向ストッパ(9)との間、および/または前記コイルばね(5,6,7)と前記圧力ピストン(4)との間に、それぞれ少なくとも1つの皿ばね(10,11)が挿入されていて、
前記圧力ピストン(4)がストッパとして、前記圧力ピストン(4)の前記端面側(13)から中心を通って軸方向に延在するロッド(14)を有しており、該ロッド(14)が前記圧力ピストン(4)の運動を軸方向で制限することを特徴とする、ペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの皿ばね(10,11)上に少なくとも1つの別の皿ばね(10,11)が載っており、それによって前記皿ばね(10,11)が積み重ねられた皿ばね装置(8)を形成し、この場合、前記皿ばね(10,11)と前記少なくとも1つの別の皿ばね(10,11)とが、互いに平行におよび/または鏡像対称的に整列されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項5】
前記皿ばね(10,11)が、金属、金属合金および/またはプラスチックを有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項6】
前記コイルばね(5,6,7)の応力除去された状態または前記圧力ピストン(4)の操作されていない状態で、前記コイルばね(5,6,7)のうちの少なくとも1つが前記圧力ピストン(4)の前記端面側(13)および/または前記軸方向ストッパ(9)に対して軸方向に間隔を保って配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項7】
前記コイルばね(5,6,7)が互いに同軸的に配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項8】
前記圧力ピストン(4)の前記端面側(13)が少なくとも1つの軸方向に突き出すストッパ段(15,16)を有しており、該ストッパ段(15,16)が軸方向に間隔を保って配置された前記コイルばね(6,7)に対応配設されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1 項記載のペダル踏力シミュレーション装置。
【請求項9】
車両、特に自動車のためのブレーキシステムにおいて、請求項1からまでのいずれか1項記載のペダル踏力シミュレーション装置(1)が設けられていることを特徴とする、車両のためのブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル踏力シミュレーション装置であって、ハウジングと少なくとも2つのコイルばねとを有しており、ハウジング内に操作可能な圧力ピストンが軸方向に摺動可能に支承されており、コイルばねが、圧力ピストンの端面側とハウジングの軸方向ストッパとの間に互いに平行に配置されている形式のものに関する。
【0002】
さらに本発明は、このようなペダル踏力シミュレーション装置を有する車両、特に自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭に述べた形式のペダル踏力シミュレーション装置は従来技術により公知である。このペダル踏力シミュレーション装置は、一般的な形式で、電子ブレーキシステム、いわゆるブレーキバイワイヤ式ブレーキシステムを備えた車両において使用される。この場合、ペダル踏力シミュレーション装置は、車両の運転者によるブレーキペダルの操作時にブレーキペダルの戻し力をシミュレートし、または生ぜしめる。この場合、生ぜしめられた戻し力は、通常の液圧式のブレーキシステムを備えた車両の運転により運転者に知られているブレーキペダル踏力感覚をシミュレートする。特許文献1によれば、互いに平行に配置された3つのコイルばねを備えたペダル踏力シミュレーション装置が開示されており、前記コイルばねは、軸方向に摺動可能な圧力ピストンの端面側とペダル踏力シミュレーション装置のハウジングの軸方向ストッパとの間に配置されている。ブレーキペダルの操作時に、圧力ピストンは、第1のコイルばねを圧縮若しくは押し縮めるように移動させ、この場合、圧力ピストンをさらに変位させると、第1のコイルばねおよび第2のコイルばねは一緒に圧縮され、圧力ピストンのさらなる変位後に、第1のコイルばね、第2のコイルばねおよび第3のコイルばねが一緒に圧縮される。同時に圧縮されたコイルばねに依存して、ブレーキペダルのさらなる操作に抗して作用しそれによってブレーキペダル踏力感覚をシミュレートする、合成された戻し力が発生される。特許文献2には、別のペダル踏力シミュレーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6347518号明細書
【特許文献2】米国特許第7357465号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、コイルばねと軸方向ストッパとの間、および/またはコイルばねと圧力ピストンとの間にそれぞれ少なくとも1つの皿ばねが挿入されている。請求項1の特徴を有する本発明によるペダル踏力シミュレーション装置は、皿ばねが簡単に制作可能であって、僅かな取り付けスペースを必要とするだけであり、強い圧縮力で負荷可能である、という利点を有している。一般的に、皿ばねは、軸方向の大きさが僅かである円錐台形の形で構成されているので、ペダル踏力シミュレーション装置のハウジング内に場所をとらずに配置することができる。しかも、皿ばねは、一般的に高い機械的なプリロードを有しているので、強い圧縮力で負荷されると、僅かに変位せしめられるだけであって、同時に高い戻し力を生ぜしめる。ばね装置は、少なくとも1つのコイルばねと少なくとも1つの皿ばねとから成っており、従って、例えば、コイルばねが既に完全に圧力ピストンによって圧縮されて最大の戻し力を生ぜしめると、皿ばねによって追加的な戻し力が生ぜしめられる可能性を提供する。これは、特に、制動しようとする車両のブレーキペダルが運転者により強い力で操作されるブレーキ操作時において、ブレーキペダル踏力感覚を改善する。
【0006】
本発明の好適な実施態様によれば、少なくとも1つの皿ばね上に少なくとも1つの別の皿ばねが載っており、それによってこれらの皿ばねが積み重ねられた皿ばね装置を形成し、この場合、皿ばねと少なくとも1つの別の皿ばねとが、互いに平行におよび/または鏡像対称的に整列されている。この場合、利点は、互いに上下に位置する少なくとも2つの皿ばねの組合せによって、複数の皿ばねの合成されたばね硬さが調節可能である、という点にある。従って、1つの皿ばねは、この皿ばねに作用する力、特に圧縮力に依存した弾性的な変形が小さければ小さいほど、より硬い。2つの皿ばねが互いに上下に並行に位置している場合、これらの皿ばねは同じ方向で互いに上下に層状に配置されている。この場合、好適には、上側の皿ばねはその周面が、下側に位置する皿ばねの周面上に当接している。このような形式で互いに平行に配置された2つの皿ばねは、例えば個別の皿ばねよりも大きいばね硬さを有している。一方の皿ばねが他方の皿ばねに対して鏡像対称的に配置されている場合、これらの皿ばねは異なる方向で互いに上下に層状に配置されている。このような形式の互いに鏡像対称的に配置された2つの皿ばねは全体的に、個別の皿ばねよりも小さいばね硬さを有している。個別の皿ばねおよび互いに鏡像対称的に配置された2つの皿ばねが同じ圧縮力で負荷されると、鏡像対称的に配置された皿ばねは、個別の皿ばねよりも大きく変位せしめられる。従って、皿ばねの配置によって、様々なばね硬さ若しくは様々な勾配のばね特性曲線を設定することができる。機械的な摩擦を最小にするために、平行に積み重ねられ、かつ平行に整列された皿ばねは、その周面に、好適には潤滑剤、例えば潤滑油を有している。
【0007】
特に好適には、それぞれの皿ばねは、金属、金属合金および/またはプラスチックを有するように構成されている。これによって、好適には、皿ばねが、機械的に負荷可能かつ弾性的に変形可能な、長い耐用年数を有する材料より製造されることが保証される。適切な材料は例えばばね鋼である。好適には、この材料は、耐食性および/または高い耐熱性等の追加的な特性を有している。
【0008】
本発明の好適な実施態様によれば、コイルばねの応力除去された状態または圧力ピストンの操作されていない状態で、コイルばねのうちの少なくとも1つが圧力ピストンの端面側および/または軸方向ストッパに対して軸方向に間隔を保って配置されている。この場合、コイルばねは圧力ピストンの操作時に相前後して圧縮され、それによってばね特性曲線に明確に影響を与える、という利点が得られる。この場合、特に、得られたばね硬さはコイルばねの軸方向長さおよびばね定数に依存している。ばね定数は一定および/または可変であってよい。例えば一定のばね定数を有する唯一のコイルばねが圧力ピストンによって変位せしめられると、圧力ピストンがコイルばねを押圧する圧縮力は変位に対して比例する。次いで、同様に一定のばね定数を有する第2のコイルばねが変位せしめられると、それぞれのばね定数は、第1および第2のコイルばねが一緒に変位される時点から重なり合う。圧縮力と変位との間の変化は、1つだけの変位されたコイルばねの比例的な変化とは異なる。従って、コイルばねと皿ばねとから成る組合せは、任意のばね硬さを生ぜしめるか、若しくはばね特性曲線、例えばプログレッシブなばね特性曲線を得ることを可能にする。
【0009】
特に好適には、コイルばねは互いに同軸的に配置されているように構成されている。この場合、コイルばねをペダル踏力シミュレーション装置のハウジング内に配置することによって、特に場所をとらない、という利点が得られる。このために、コイルばねの直径は好適には、それぞれ隣接し合うコイルばねが互いに自由に、かつ予め設定可能な半径方向の間隔を互いに保って配置されるように、選定されている。選択的に、コイルばねの直径は、同軸的に内側に配置されたコイルばねの外径と同軸的に外側に配置されたコイルばねの内径とが、少なくとも領域的に軸方向で重なり合うように、選定されている。これによって、例えば、より長い内側のコイルばねが僅かに変位するだけで既に、外側のコイルばね自体が圧力ピストンにより圧縮力で負荷されないうちに、より短い外側のコイルばねが変位せしめられることが保証される。
【0010】
本発明の好適な実施態様によれば、それぞれ互いに同軸的に配置されたコイルばねが逆向きに巻かれるように構成されている。これによって、コイルばねの操作時にコイルばねの絡まりが避けられるように保証される。これは、特にコイルばねの耐用年数を高め、ペダル踏力シミュレーション装置の正常な運転を保証する。
【0011】
好適な形式で、圧力ピストンの端面側が少なくとも1つの軸方向に突き出す、特に環状のストッパ段を有しており、このストッパ段が軸方向に間隔を保って配置されたコイルばねに対応配設されているように構成されている。これによって、圧力ピストンが長さの異なる少なくとも2つのコイルばねを圧縮力で負荷するまでの、圧力ピストンの変位が減少される、という利点が得られる。従って、圧力ピストンの僅かな変位で既に高いばね硬さを得ることが可能である。それぞれ同じ長さのコイルばね、しかしながら異なる長さのストッパ段を設けることも可能であるので、この場合、個別のコイルばねを相次いで操作することが可能である。ストッパ段の軸方向長さは、それぞれ軸方向で間隔を保ったコイルばねに対する圧力ピストンの端面側の間隔に少なくとも概ね相当する。選択的に、単数または複数のストッパ段を軸方向ストッパに配置することも可能である。
【0012】
本発明の好適な実施態様によれば、圧力ピストンの運動を軸方向ストッパの方向に制限するストッパが設けられている。この場合の利点は、コイルばねと皿ばねとがストッパの位置に依存して限定的にのみ圧縮可能であり、それによって最大ばねストロークが調節可能である、という点にある。これによって、例えばコイルばねおよび/または少なくとも1つの皿ばねの完全な圧縮が避けられる。ストッパは好適にはストッパリングとして、ペダル踏力シミュレーション装置のハウジングのハウジング内壁に沿って配置されているので、圧力ピストン、特にその外径は、ストッパリングに達する変位後にストッパリングに接触する。追加的に、ストッパは好適には軸方向で移動可能に支承されている。これは例えばストッパをハウジングにねじ結合することによって可能であり、この場合、ストッパリングをハウジング内の様々な位置に配置するために、少なくとも2つのねじ孔が軸方向で間隔を保ってハウジングのハウジング壁部に配置されている。ストッパは選択的に、ハウジング内壁と一体的に構成されているか、または例えば特にはんだ付け、溶接若しくは接着によってハウジング内壁に素材結合により固定されている。
【0013】
特に好適には、圧力ピストンがストッパとして、圧力ピストンの端面側から中心を通って軸方向に延在するロッドを有しており、このロッドが圧力ピストンの運動を軸方向で制限するように構成されている。この場合の利点は、ロッドがハウジング内でハウジングの中心に配置されていることに基づいて、僅かな取り付けスペースしか必要としない、という点にある。好適には、このロッドはコイルばね内を同軸的に延在しており、従って、コイルばねはロッドに沿ってガイドされる。これは、コイルばね装置のより高い形状安定性を保証する。ロッドの直径は、好適には、ロッドとガイドされたコイルばねの内径との間に半径方向の間隔が存在するように選定されており、従って、ロッドとコイルばねとの間の機械的な摩擦が最小化される。追加的にまたは選択的に、皿ばねは、ロッドの少なくとも一部を受けるための切欠を有しているので、ロッドはハウジングの軸方向ストッパに接触し得る。この切欠の直径は好適には、少なくとも概ねロッドの直径に相当する。
【0014】
請求項10の特徴を有する、車両、特に自動車のための本発明によるブレーキシステムは、ペダル踏力シミュレーション装置を有することを特徴とする。これによって、前記利点が得られる。その他の利点および好適な特徴は、前記説明および請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】1実施例によるペダル踏力シミュレーション装置の簡略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0017】
唯一の図面は、ここに図示していない車両2の、ハウジング3を有するペダル踏力シミュレーション装置1を示し、ハウジング3は、操作可能かつ軸方向に摺動可能な圧力ピストン4と、第1のコイルばね5と、第2のコイルばね6と、第3のコイルばね7と、皿ばね装置8とを有している。皿ばね装置8は、コイルばね5,6,7とハウジング2の底部上に配置された軸方向ストッパ9との間に挿入されている。
【0018】
皿ばね装置8は、第1の皿ばね10および第2の皿ばね11を有しており、この場合、第2の皿ばね11は第1の皿ばね10上に並列に載っている。第2の皿ばね11上に、軸方向に移動可能な特に金属製の支持ディスク12が配置されている。この支持ディスクは、その一方側がコイルばね5,6,7に支持面を提供し、他方側が、圧力ピストン4によってコイルばね5,6,7に加えられた圧縮力が皿ばね装置8に均一に伝達されることを保証する。
【0019】
コイルばね5,6,7は、互いに同軸的に配置されていて、それぞれ異なる長さ、直径、および実施例に従って異なる一定のばね定数を有しており、この場合、代替的に少なくとも1つのコイルばね5,6,7が可変なばね定数を有していてよい。最も長いコイルばね5は、圧力ピストン4の端面側13と支持ディスク12との間でプリロードをかけられていて、これに対して、コイルばね6,7は、圧力ピストン4の端面側13に対して軸方向で間隔を保って配置されている。圧縮若しくは圧縮解除時におけるコイルばね5,6,7のもつれを避けるために、コイルばね6はコイルばね5に対して逆向きに巻かれていて、コイルばね7はコイルばね6に対して逆向きに巻かれている。
【0020】
圧力ピストン4の端面側13は、端面側17を備えた第1のストッパ段15と、端面側18を備えた第2のストッパ段16とを有している。この場合、特に環状のストッパ段15がこのストッパ段15に対して軸方向に間隔を保ったコイルばね6に対応配設されていて、特に環状のストッパ段16がこのストッパ段16に対して軸方向に間隔を保っているコイルばね7に対応配設されている。
【0021】
ストッパ段15の軸方向長さは好適には、ストッパ段15の端面側17およびこの端面側17に対応配設されたコイルばね6が予め設定可能な間隔を互いに有するように選定されており、この場合、コイルばね6に対する端面側17の間隔は符号xで示されている。同様に、ストッパ段16の軸方向長さは好適には、ストッパ段16の端面側18およびこの端面側18に対応配設されたコイルばね7が予め設定可能な間隔を互いに有するように選定されており、この場合、コイルばね7に対する端面側18の間隔は符号xで示されていて、この場合、間隔xは好適には間隔xよりも大きい。ストッパ段15,16は、圧力ピストン4が3つのコイルばね5,6,7に同時に圧縮力を加えるまでの、圧力ピストン4の軸方向の変位が減少されることを保証する。これによって、圧力ピストン4の僅かな変位から既に大きいばね硬度を得ることが可能である。
【0022】
圧力ピストン4はロッド14を有しており、このロッド14は、圧力ピストン4の端面側13から軸方向ストッパ9に向かってコイルばね5の中心を通って延在していて、圧力ピストン4の運動を軸方向で制限する。ロッド14がハウジング3の軸方向ストッパ9と協働できるようにするために、皿ばね装置8、特に皿ばね10,11および支持ディスク12はそれぞれ、少なくとも概ねロッド14の直径に相当する中央の切欠若しくは内径を有している。
【0023】
車両2のブレーキペダル19を力で操作すると、圧力ピストン4は変位せしめられ、コイルばね5を圧縮力で負荷し、これによりコイルばね5は圧縮せしめられる。ブレーキペダル19を操作する力が大きければ大きいほど、圧力ピストン4によってコイルばね5に作用する圧縮力は大きい。コイルばね5は一定のばね定数を有しているので、コイルばね5の変位はまず圧縮力に比例する。
【0024】
圧力ピストン4の変位が間隔xを超えると直ちに、第1のコイルばね5と第2のコイルばね6とが一緒に圧縮される。コイルばね5,6のばね定数は、発生したばね硬度が増大するように重畳されるので、コイルばねのそれ以上の変位は、1つのコイルばね5だけにこれまで加えられた圧縮力よりも大きい圧縮力でのみ可能である。次いで圧力ピストン4が変位によって間隔xも超えると、第1のコイルばね5、第2のコイルばね6および第3のコイルばね7が一緒に圧縮される。発生したばね硬度はさらに増大する。
【0025】
第1のコイルばね5の圧縮時に既に、圧力ピストン4によって加えられた圧縮力が皿ばね装置8にも作用する。しかしながら好適には、皿ばね10,11は、すべての3つのコイルばね5,6,7が圧縮される程度に圧縮力が大きいときに初めて皿ばね10,11が変位されるように、プリロードをかけられている。圧力ピストン4をさらに最小変位させるためには、コイルばね5,6,7および皿ばね装置8に圧力ピストン4の最大圧縮力を作用させる必要がある。これによって、ブレーキペダル19の終端ストッパの近くになって初めてブレーキペダル19に最大戻し力が逆作用するようになり、それによって、通常の液圧式ブレーキシステムを備えた車両のブレーキペダル踏力感覚に相当するブレーキペダル踏力感覚がシミュレートされる。
【0026】
ロッド14の代わりに、圧力ピストン4の運動を制限するストッパ22を設けることも可能であり、このストッパ22はハウジング3のハウジング内壁にストッパリングとして配置されている。この場合、ストッパ22はねじ継手装置23によってハウジング3に固定されていて、好適には、例えば別のねじ継手装置24によって固定することによって軸方向で移動可能に配置されている。
【0027】
選択的に、圧力ピストン4を段部15,16なしで構成することも可能である。それによって、間隔xおよびxは拡大するので、コイルばね5,6,7の共通の圧縮は、圧力ピストン4のより大きい変位後に初めて作用する。コイルばね5,6,7を同じ長さで構成することも可能であり、この場合、圧力ピストン4の変位時にコイルばね5,6,7は一緒に圧縮される。
【0028】
追加的に、皿ばね11に対して鏡像対称的に、ここには図示されていない少なくとも1つの第3の皿ばねが皿ばね11上に配置されていてよい。これによって、生ぜしめられたばね硬度若しくはばね特性曲線を調整することができる。少なくとも1つの第3の皿ばねも、また皿ばね10,11も好適には、金属、金属合金および/またはプラスチックより製作されている。
【0029】
選択的にまたは追加的に、ここには図示されていない、支持ディスクを備えた別の皿ばね装置をコイルばね5,6,7と圧力ピストン4との間に配置してもよい。このために、圧力ピストンの端面側13は、圧力ピストン4上への別の皿ばね装置の良好な載設を保証するために、好適にはストッパ段15,16なしで構成されている。この場合、コイルばね5は好適には、別の皿ばね装置と軸方向ストッパ9との間、または別の皿ばね装置と皿ばね装置8との間でプリロードをかけられているので、別の皿ばね装置はコイルばね5によって摩擦締結式に圧力ピストン4に押し付けられる。別の皿ばね装置を圧力ピストン4に形状締結式または素材結合式に固定することも可能である。
【0030】
好適には、圧力ピストン4はハウジング3のハウジング内壁と圧力ピストン4の周壁外側面との間に半径方向の切欠20を有しており、この切欠20内にシールリング21が配置されている。シールリング21は、好適にはハウジング3のハウジング内壁と、このハウジング内壁に向き合う、切欠20の壁側との間で弾性的にプリロードをかけられている。
【0031】
前記実施例は、互いに任意に組合せ可能であり、前記実施例に限定されるものではない。前記ペダル踏力シミュレーション装置1によって、液圧式のブレーキングに対応するブレーキペダル踏力感覚を生ぜしめるために、任意のばね特性曲線若しくはばね硬度を実現することが可能である。特に、終端ストッパ領域内において、ブレーキペダル19およびひいては圧力ピストン4がほぼ完全に変位せしめられたときに、ブレーキペダル19に高い最終的な力若しくは戻し力が生ぜしめられ、ブレーキペダル踏力感覚が改善され得る。ペダル踏力シミュレーション装置1は、例えば部分的にまたは完全に「ブレーキバイワイヤ」ブレーキシステムによって駆動され得るすべての電気液圧式のブレーキシステムに使用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ペダル踏力シミュレーション装置
2 車両
3 ハウジング
4 圧力ピストン
5 第1のコイルばね
6 第2のコイルばね
7 第3のコイルばね
8 皿ばね装置
9 軸方向ストッパ
10 第1の皿ばね
11 第2の皿ばね
12 支持ディスク
13 端面側
14 ロッド
15 第1のストッパ段、段部
16 第2のストッパ段、段部
17,18 端面側
19 ブレーキペダル
20 切欠
21 シールリング
22 ストッパ
23,24 ねじ継手装置
,x 間隔
図1