特許第6773815号(P6773815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773815多官能オキセタン系化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773815
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】多官能オキセタン系化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 305/06 20060101AFI20201012BHJP
   C07D 407/14 20060101ALI20201012BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C07D305/06CSP
   C07D407/14
   C08G59/20
【請求項の数】29
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-565662(P2018-565662)
(86)(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公表番号】特表2019-521118(P2019-521118A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】CN2017092227
(87)【国際公開番号】WO2018010604
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】201610548580.7
(32)【優先日】2016年7月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャオチュン
【審査官】 池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−168561(JP,A)
【文献】 特開2009−079070(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/022165(WO,A1)
【文献】 特開平06−016804(JP,A)
【文献】 米国特許第06015914(US,A)
【文献】 特表2008−535975(JP,A)
【文献】 特開平11−246541(JP,A)
【文献】 特開2005−255671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される構造を有することを特徴とする多官能オキセタン系化合物。
【化1】
[式中、
R1はC1〜C40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C2〜C20のm価のアルケニル基又はC6〜C40のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子、-NH-又は
【化2】
で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しない。また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
R2はC1〜C20の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
R3は水素、ハロゲン、ニトロ基、C1〜C20の直鎖又は分岐のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C4〜C20のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のアルキルシクロアルキル基、C2〜C10のアルケニル基又はC6〜C20のアリール基を表し、これらの基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
mは3〜8の整数を表す。]
【請求項2】
R1はC1〜C40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C2〜C10の直鎖又は分岐のm価のアルケニル基又はC6〜C30のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子、-NH-又は
【化3】
で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよいことを特徴とする請求項1に記載の多官能オキセタン系化合物。
【請求項3】
R2はC1〜C10の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことを特徴とする請求項1に記載の多官能オキセタン系化合物。
【請求項4】
R2はC1〜C6の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことを特徴とする請求項3に記載の多官能オキセタン系化合物。
【請求項5】
R3は水素、C1〜C10の直鎖又は分岐のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C4〜C10のシクロアルキルアルキル基、C4〜C10のアルキルシクロアルキル基、C2〜C8のアルケニル基又はフェニル基を表すことを特徴とする請求項1に記載の多官能オキセタン系化合物。
【請求項6】
R3はC1〜C4の直鎖又は分岐のアルキル基、又はC4〜C8のシクロアルキルアルキル基を表すことを特徴とする請求項5に記載の多官能オキセタン系化合物。
【請求項7】
mが3〜6の整数であることを特徴とする請求項1に記載の多官能オキセタン系化合物。
【請求項8】
mが3〜4の整数であることを特徴とする請求項1に記載の多官能オキセタン系化合物。
【請求項9】
一般式(II)で示される水酸基含有化合物および一般式(III)で示されるオキセタン基含有エポキシ化合物を原料として、触媒存在の条件下で反応させ、生成物を得ることを含み、
反応式は、
【化4】
であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の多官能オキセタン系化合物の製造方法。
【請求項10】
下記一般式(IV)で示される構造を有するカチオン重合性モノマーであって下記一般式(I)で示される構造を有する多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリンとを反応させてなるカチオン重合性モノマー。
【化5】
[式中、
R1はC1〜C40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C2〜C20のm価のアルケニル基又はC6〜C40のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子、-NH-又は
【化6】
で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しない。また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
R2はC1〜C20の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、これらの基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
R3は水素、ハロゲン、ニトロ基、C1〜C20の直鎖又は分岐のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C4〜C20のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のアルキルシクロアルキル基、C2〜C10のアルケニル基又はC6〜C20のアリール基を表し、これらの基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
mは1〜8の整数を表す。]
【化7】
[式中、R1、R2、R3およびmは一般式(I)に記載された定義と同様である。]
【請求項11】
一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリンとを、アルカリ性条件下で反応させ、前記カチオン重合性モノマーを得ることを含み、
反応式は、
【化8】
であることを特徴とする請求項10に記載の一般式(IV)で示されるカチオン重合性モノマーの製造方法。
【請求項12】
下記一般式(I)で示される化合物と一般式(V)で示されるエステル化合物とを反応させてなることを特徴とするカチオン重合性モノマー。
【化9】
[式中、
R1はC1〜C40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C2〜C20のm価のアルケニル基又はC6〜C40のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子、-NH-又は
【化10】
で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しない。また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
R2はC1〜C20の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、これらの基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
R3は水素、ハロゲン、ニトロ基、C1〜C20の直鎖又は分岐のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C4〜C20のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のアルキルシクロアルキル基、C2〜C10のアルケニル基又はC6〜C20のアリール基を表し、これらの基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
mは1〜8の整数を表す。]
【化11】
[式中、R4C1〜C20の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C3〜C20のn価のシクロアルキル基、C4〜C20のn価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のn価のアルキルシクロアルキル基、C6〜C40のn価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が、酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
R5はC1〜C10の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、nは1〜8の整数を表す。
ただし、前記カチオン重合性モノマーが少なくとも2つのオキセタン基を有することである。]
【請求項13】
R4はC1〜C10の直鎖又は分岐のn価のアルキル基C3〜C10のn価のシクロアルキル基、C4〜C10のn価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C10のn価のアルキルシクロアルキル基、C6〜C20のn価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が、酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことを特徴とする請求項12に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項14】
R4はC1〜C8の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C7〜C12のn価のアリール基、n価のフェニル基を表すことを特徴とする請求項12に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項15】
R5はC1〜C4の直鎖又は分岐のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項12に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項16】
R5はメチル基又はエチル基から選ばれることを特徴とする請求項12に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項17】
nは1〜4の整数であることを特徴とする請求項12に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項18】
一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物と一般式(V)で示されるエステル化合物とを、触媒存在の条件下でエステル交換反応させることを含む、請求項12〜17のいずれか一項に記載のカチオン重合性モノマーの製造方法。
【請求項19】
前記エステル交換反応に使用される触媒はチタン酸エステル系化合物であることを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記エステル交換反応に使用される触媒は2-エチルヘキシルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソブチルチタネートのうち1種又は2種以上の組合せであることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の一般式(I)で示される化合物と一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを反応させてなることを特徴とするカチオン重合性モノマー。
【化12】
[式中、R6はp価の連結基を表し、pは1〜8の整数を表し、ただし、前記カチオン重合性モノマーが少なくとも2つのオキセタン基を有することである。]
【請求項22】
R6はC1〜C20の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C2〜C20のp価のアルケニル基、C3〜C20のp価のシクロアルキル基、C4〜C20のp価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のp価のアルキルシクロアルキル基、C6〜C40のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよいことを特徴とする請求項21に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項23】
R6はC1〜C10の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C2〜C10のp価のアルケニル基、C3〜C10のp価のシクロアルキル基、C4〜C10のp価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C10のp価のアルキルシクロアルキル基、C6〜C20のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基で置換されてもよいことを特徴とする請求項21に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項24】
R6はC1〜C8の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C6〜C12のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にC1〜C4のアルキル基で置換されてもよいことを特徴とする請求項21に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項25】
pは1〜4の整数であることを特徴とする請求項21に記載のカチオン重合性モノマー。
【請求項26】
一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物と一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを、触媒存在の条件下で反応させ、前記カチオン重合性モノマーを得ることを含むことを特徴とする請求項21〜25のいずれか一項に記載のカチオン重合性モノマーの製造方法。
【請求項27】
前記触媒はラウリン酸ジブチルすずであることを特徴とする請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の多官能オキセタン系化合物、又は請求項10、12〜17および21〜25のいずれか一項に記載のカチオン重合性モノマーの、カチオン光硬化組成物への使用。
【請求項29】
前記光硬化組成物にはエポキシ系モノマーが含有されることを特徴とする請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機化学分野に属し、具体的には、多官能オキセタン系化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化分野において、カチオン光硬化系には、酸素重合阻害の影響を受けず、硬化体積の収縮が小さいという利点を有し、使用される反応性希釈剤モノマーには、主にビニルエーテル系化合物、エポキシ系化合物およびオキセタン系化合物がある。
【0003】
エポキシ系モノマーは、耐熱性、粘着性および耐薬品性に優れた硬化物を得ることができるが、モノマー反応活性が比較的低い。ビニルエーテル系モノマーは、比較的高い重合活性を有するが、硬度、耐磨耗性、耐薬品性等の性能が劣り、ハードコート剤や各種基材の保護膜として用いることができない。これに対し、オキセタン系モノマーは、反応活性が高く、そして、硬化生成物が物理的性能に優れるため、硬化組成物に益々広く使われている。特に、(両者の利点を組み合わせるために)オキセタン系モノマーとエポキシ系モノマーとを配合して使用するのは、カチオン光硬化系の一般的な形態となっている。
【0004】
近年、オキセタン系モノマーに関する研究は深化し続けており、その多官能化がその適用性能をさらに高めるのに有利であることが見出された。例えば、中国特許CN103497691Aには偏光板製造に用いられる光硬化性接着剤組成物が開示されており、二官能オキセタン化合物
【0005】
【化1】
【0006】
とエポキシ化合物とを配合して使用することで、接着性と耐久性とのバランスの点で明らかに改良されている。日本特許JP4003264B2には、カチオン硬化系の硬化速度を大幅に向上できる二官能オキセタン化合物
【0007】
【化2】
【0008】
が開示されている。したがって、オキセタン系モノマーの多官能化は、例えば粘着剤、シーラント、封入剤などの分野、特にLEDデバイスの部品やモジュールに用いられるもののような様々な適用分野において注目されており、これらもオキセタン系カチオン重合性モノマー発展の必然的な成り行きである。しかしながら、既存の文献資料に報告されている多官能オキセタン系モノマーには相変わらず欠点があり、適用後硬化生成物の硬度、柔軟性および付着性などの性能は良いバランスを取りにくいという顕著な点があり、全体的な性能をさらに向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のオキセタン系モノマーの不足に対して、本発明は、より高い反応活性およびより優れた適用性能を持つ多官能オキセタン系化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。これらの多官能オキセタン系カチオン重合性モノマーとエポキシ化合物とを配合して使用する場合、硬化速度が速く、硬化生成物の硬度、柔軟性、付着性および耐熱性が非常に優れる。
前記した目的を実現するために、本発明は、まず、一般式(I)で示される構造を有する多官能オキセタン系化合物を提供する。
【0010】
【化3】
【0011】
式中、
R1はC1〜C40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C2〜C20のm価のアルケニル基又はC6〜C40のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子、-NH-又は
【0012】
【化4】
【0013】
で置換されてもよく(optionally)、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0014】
R2はC1〜C20の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0015】
R3は水素、ハロゲン、ニトロ基、C1〜C20の直鎖又は分岐のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C4〜C20のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のアルキルシクロアルキル基、C2〜C10のアルケニル基又はC6〜C20のアリール基を表し、これらの基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0016】
mは1〜8の整数を表す。
好ましくは、前記一般式(I)化合物には2つ以上のオキセタン基が含有される。そのため、mは2以上の数が好ましく、或いは、m=1の場合、R1には少なくとも1つのオキセタン基が含有すべきである。
【0017】
好ましい技術態様として、R1はC1〜C40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C2〜C10の直鎖又は分岐のm価のアルケニル基又はC6〜C30のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子、-NH-又は
【0018】
【化5】
【0019】
で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0020】
例示として、R1はC1〜C12の直鎖又は分岐の1〜4価のアルキル基、C2〜C6の直鎖又は分岐の1〜4価のアルケニル基、
【0021】
【化6】
【0022】
から選ばれてもよい。
【0023】
好ましくは、R2はC1〜C10の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。さらに好ましくは、R2はC1〜C6の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。
【0024】
好ましくは、R3は水素、C1〜C10の直鎖又は分岐のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C4〜C10のシクロアルキルアルキル基、C4〜C10のアルキルシクロアルキル基、C2〜C8のアルケニル基、フェニル基を表す。さらに好ましくは、R3はC1〜C4の直鎖又は分岐のアルキル基、又はC4〜C8のシクロアルキルアルキル基を表す。
【0025】
mは1〜6の整数が好ましく、より好ましくは1〜4の整数である。
【0026】
本発明の開示内容において、関連用語は、特に記載がない限り、当分野で一般的に理解される意味を有する。数値範囲は端点値および端点値の間にある全ての値を含み、例えば、「C1〜C10」はC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10を含み、「1〜4の整数」は1、2、3、4を含む。
【0027】
相応に、本発明は、一般式(II)で示される水酸基含有化合物および一般式(III)で示されるオキセタン基含有エポキシ化合物を原料として、触媒存在の条件下で反応させ、生成物を得ることを含み、
反応式は、
【0028】
【化7】
【0029】
である、前記一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物の製造方法にも関する。
【0030】
前記製造方法において、使用される触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシドなどのアルコールのアルカリ金属塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;ブチルリチウム、フェニルリチウム等のアルキル金属リチウム化合物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなどのリチウムアミド化合物でもよい。触媒の使用量は、当業者にとって容易に確定できるものであり、触媒使用量は、好ましくは一般式(II)で示される化合物のモル量の0.1〜20%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0031】
反応系は、原料の種類に応じて、有機溶媒を含んでいてもよい。適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒でもよい。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。合計使用量は、反応系の均一性および攪拌性に応じて適宜調整することができ、これは当業者にとって容易に確定できるものである。
【0032】
反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常25〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応圧力は特に限定されず、一般的に常圧であればよい。
【0033】
反応終了後、pH値を中性に調整し、濾過、水洗、抽出、減圧蒸留して、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物が得られる。
【0034】
さらに、本発明は、一般式(IV)で示される構造を有し、前記一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリンとを反応させてなるカチオン重合性モノマーも提供する。
【0035】
【化8】
【0036】
式中、R1、R2、R3およびmは一般式(I)に記載された定義と同様である。
【0037】
一般式(IV)で示されるカチオン重合性モノマーの製造方法は、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリンとを、アルカリ性条件下で反応させることを含み、
反応式は、
【0038】
【化9】
【0039】
である。
【0040】
一般式(IV)で示されるカチオン重合性モノマーの製造過程において、アルカリ性条件の構築は、当業者にとって容易に想到できるものである。例示として、反応系にアルカリ性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩を添加してもよい。アルカリ性化合物は、円滑な反応を促進することができ、その使用量は当業者にとって容易に確定できるものであり、アルカリ性化合物の使用量は、好ましくは一般式(I)で示される化合物のモル量の1〜20倍、より好ましくはm-10倍である。
【0041】
原料の種類に応じて、反応系において担体媒体として有機溶媒を選択的に使用することができる。適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒でもよい。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常25〜120℃、好ましくは30〜80℃である。反応終了後、水洗、抽出、減圧蒸留することにより、製品が得られる。
【0042】
さらに、本発明は、前記一般式(I)で示される化合物と一般式(V)で示されるエステル化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーも提供する。
【0043】
【化10】
【0044】
式中、R4はn価の連結基を表し、R5はC1〜C10の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、nは1〜8の整数を表す。
【0045】
ただし、カチオン重合性モノマーが少なくとも2つのオキセタン基を有することである。
【0046】
当該カチオン重合性モノマーは、mおよびnの値によって、モノヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ち、m=1)とモノエステル基化合物(即ち、n=1であり、そして、この時一般式Iで示される化合物においてR1に少なくとも1つのオキセタン基が含有される)又はポリエステル基化合物(即ちn>1)とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよいし、ポリヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ちm>1)とモノエステル基化合物又はポリエステル基化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよい。
【0047】
好ましい技術態様として、一般式(V)で示されるエステル化合物において、R4はC1〜C20の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C2〜C20のn価のアルケニル基、C3〜C20のn価のシクロアルキル基、C4〜C20のn価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のn価のアルキルシクロアルキル基、又はC6〜C40のn価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が、酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0048】
さらに好ましくは、R4はC1〜C10の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C2〜C10のn価のアルケニル基、C3〜C10のn価のシクロアルキル基、C4〜C10のn価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C10のn価のアルキルシクロアルキル基、又はC6〜C20のn価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が、酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。
【0049】
より好ましくは、R4はC1〜C8の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C7〜C12のn価のアリール基、n価のフェニル基を表す。
【0050】
好ましくは、前記エステル化合物において、R5はC1〜C4の直鎖又は分岐のアルキル基から選ばれ、特にメチル基又はエチル基から選ばれる。
【0051】
好ましくは、nは1〜4の整数である。
【0052】
例示として、一般式(V)で示されるエステル化合物は下記の化合物から選ばれるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0053】
【化11】
【0054】
前記カチオン重合性モノマーの製造方法は、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物と一般式(V)で示されるエステル化合物とを、触媒存在の条件下でエステル交換反応させることを含む。
【0055】
反応に使用される触媒は、好ましくはチタン酸エステル系化合物であり、より好ましくは2-エチルヘキシルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソブチルチタネートなどのうち1種又は2種以上の組合せである。触媒の使用量は、当業者にとって容易に確定できるものであり、触媒使用量は、好ましくは一般式(I)で示される化合物の0.05〜5wt%であり、より好ましくは0.1〜2wt%である。
【0056】
好ましくは、反応系には担体媒体として有機溶媒が含まれ、適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどがある。溶媒の使用量は、反応系の均一性および攪拌性に応じて適宜調整することができ、これは当業者にとって容易に確定できるものである。
【0057】
反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応終了後、水洗、濾過、減圧蒸留することにより、製品が得られる。
【0058】
さらに、本発明は、前記一般式(I)で示される化合物と一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーも提供する。
【0059】
【化12】
【0060】
式中、R6はp価の連結基を表し、pは1〜8の整数を表し、ただし、前記カチオン重合性モノマーが少なくとも2つのオキセタン基を有することである。
【0061】
当該カチオン重合性モノマーは、mおよびpの値によって、モノヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ち、m=1)とモノイソシアネート化合物(即ち、p=1であり、そして、この時一般式Iで示される化合物においてR1に少なくとも1つのオキセタン基が含有される)又はポリイソシアネート化合物(即ちp>1)とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよいし、ポリヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ちm>1)とモノイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよい。
【0062】
好ましい技術態様として、一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物において、R6はC1〜C20の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C2〜C20のp価のアルケニル基、C3〜C20のp価のシクロアルキル基、C4〜C20のp価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C20のp価のアルキルシクロアルキル基、又はC6〜C40のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0063】
さらに好ましくは、R6はC1〜C10の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C2〜C10のp価のアルケニル基、C3〜C10のp価のシクロアルキル基、C4〜C10のp価のシクロアルキルアルキル基、C4〜C10のp価のアルキルシクロアルキル基、C6〜C20のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基で置換されてもよい。
【0064】
より好ましくは、R6はC1〜C8の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C6〜C12のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にC1〜C4のアルキル基で置換されてもよい。
【0065】
好ましくは、pは1〜4の整数である。
【0066】
例示として、一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物は下記の化合物から選ばれるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0067】
【化13】
【0068】
前記カチオン重合性モノマーの製造方法は、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物と一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを、触媒存在の条件下で反応させることを含む。
反応に使用される触媒および使用量は、当業者にとって容易に確定できるものである。好ましくは、触媒はラウリン酸ジブチルすずであり、使用量は一般式(I)で示される化合物の0.05〜5wt%であり、より好ましくは0.1〜2wt%である。
【0069】
原料の種類に応じて、反応系において担体媒体として有機溶媒を選択的に使用することができる。適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒でもよい。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、反応系の均一性および攪拌性に応じて適宜調整することができ、これは当業者にとって容易に確定できることである。
反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常0〜100℃であり、好ましくは20〜80℃である。
【0070】
一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリン、一般式(V)で示されるエステル化合物、又は一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを反応させてなるのは、いずれも多官能オキセタン系化合物であり、一般式(I)化合物と類似し又はより良い性能を発現することができる。反応することにより一般式(I)に新たな官能基を導入することができ、より良い性能調整性が得られ、それぞれの系の適用要求を満足することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
なお、衝突がない場合、本発明における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。以下、実施例とともに本発明を詳しく説明する。
以下、具体的な実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例を本発明の保護範囲への制限とは理解し得ない。
【0072】
製造実施例
実施例1
【0073】
【化14】
【0074】
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた250mlの四つ口フラスコに、102g(0.5mol)の原料1、4g(0.1mol)の水酸化ナトリウムおよび100gのトルエンを順次に加えた。攪拌しながら80℃まで昇温し、86g(0.5mol)の原料2を1.5時間かけて滴下し、攪拌反応し続けた。原料1の含有量が変化しなくなるまで気相を追跡し、加熱を中止し、pHを中性まで調整し、濾過、水洗、抽出、減圧蒸留して、淡黄色の粘稠液体174gを得た。
【0075】
生成物、即ち化合物1の構造は、GC-MSおよび1H-NMRにより確認された。
MS(m/e):376(M);
1H-NMR(CDCl3,500MHz):δ0.96(6H,m),δ1.25(4H,s),δ2.01(1H,d),δ3.29(4H,s),δ3.52-3.54(12H,m),δ3.87(1H,m),δ4.65(8H,s)。
【0076】
実施例2
【0077】
【化15】
【0078】
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた250mlの四つ口フラスコに、188g(0.5mol)の化合物1、46g(0.5mol)のエピクロルヒドリンおよび20g(0.5mol)の水酸化ナトリウムを順次に加え、40℃で12時間反応させ、化合物1が完全になくなるまで気相を追跡し、反応終了後、水洗、抽出、減圧蒸留して、最終的に無色の粘稠液体198.7gを得た。
【0079】
生成物、即ち化合物2の構造は、GC-MSおよび1H-NMRにより確認された。
MS(m/e):432(M);
1H-NMR(CDCl3,500MHz):δ0.96(6H,m),δ1.25(4H,s),δ2.50(2H,d),δ2.86(1H,m),δ3.29(4H,s),δ3.49-3.54(15H,m),δ4.65(8H,s)。
【0080】
実施例3
【0081】
【化16】
【0082】
攪拌装置、温度計、精留塔および水分離装置を備えた四つ口フラスコに、188g(0.5mol)の化合物1、33g(0.25mol)のマロン酸ジメチルおよび200gのトルエンを加え、加熱還流して、系における水分を除去した。60℃程度まで冷却した後、2.5gのテトラエチルチタネートを加え、加熱還流して、反応させた。反応により生成したメタノールを取り出すために還流比を調整し、精留塔の頂部温度が110℃まで上昇すると、反応を中止し、温度を70℃まで下げ、水10gを加え、1時間撹拌した。熱いうちに濾過し、濾液を減圧蒸留して、淡黄色の粘稠液体197gを得た。
【0083】
生成物、即ち化合物3の構造は、GC-MSおよび1H-NMRにより確認された。
MS(m/e):821(M);
1H-NMR(CDCl3,500MHz):δ0.96(12H,m),δ1.25(8H,m),δ3.21(2H,s),δ3.29(8H,s),δ3.54-3.61(24H,m),δ4.61-4.65(18H,m)。
【0084】
実施例4
【0085】
【化17】
【0086】
攪拌装置、温度計を備えた四つ口フラスコに、188g(0.5mol)の化合物1および0.1gのラウリン酸ジブチルすずを加え、温度を40℃程度に制御し、42g(0.25mol)のヘキサメチレンジイソシアネートを滴下した。滴下した後、NCO値が0.05%以下に低下するまで保温反応し、反応を終了させた。
【0087】
生成物、即ち化合物4の構造は、GC-MSおよび1H-NMRにより確認された。
MS(m/e):920(M);
1H-NMR(CDCl3,500MHz):δ0.96(12H,m),δ1.25-1.55(16H,m),δ3.29(8H,s),δ3.54-3.61(24H,m),δ4.61-4.65(18H,m),δ8.0(2H,m)。
【0088】
実施例5
【0089】
【化18】
【0090】
実施例1の過程を参考にして、化合物5を製造し、その構造はGC-MSおよび1H-NMRにより確認された。
MS(m/e):406(M);
1H-NMR(CDCl3,500MHz):δ0.96(6H,m),δ1.25(4H,s),δ2.01(2H,d),δ3.29(4H,s),δ3.52-3.54(12H,m),δ3.87(2H,m),δ4.65(8H,s)。
【0091】
実施例6
【0092】
【化19】
【0093】
実施例3の過程を参考にして、化合物5から化合物6を製造した。
化合物6の構造は、IRにより確認された。
【0094】
【化20】
【0095】
実施例7
実施例1〜6の方法を参考にして、相応な試薬により、表1で示される構造を有する生成物7〜13を合成した。
【0096】
【表1-1】
【表1-2】
【0097】
性能試験
例示的な光硬化組成物を調製することにより、本発明の多官能オキセタン系モノマーの各適用性能(硬化速度、硬度、柔軟性、付着性、耐熱性などの点を含む)を評価する。
【0098】
試験中では、TTA21およびE-51をエポキシモノマーの代表として、PAG-202をカチオン光開始剤の代表として、背景技術に記載された化合物a及び/又はbをコントロールの多官能オキセタン系モノマーとする。
【0099】
【化21】
【0100】
1.硬化速度試験
表2で示される質量部で原料を配置し、暗室で均一に混合した後、サンプル約1mgを秤量し、アルミニウム坩堝上に広げた。水銀アークランプ紫外光源(OmniCure-S2000)を備えたPerkin Elmer示差走査熱量計(DSC8000)を用いて、サンプルをスキャンし、硬化させた。
【0101】
UVが最大硬化発熱を開始するのに要する時間、および90%UV硬化発熱量に達するのに必要な時間を記録し、ピーク頂点に達する時間がより短く、90%変換に達する時間がより短いのは、良好な硬化性能を示す。
【0102】
試験結果を表2にまとめる。
【0103】
【表2】
【0104】
表2から明らかなように、本発明の多官能オキセタン系モノマーとエポキシモノマーを配合してカチオン光硬化系に用いた後、硬化速度が速く、既存の同種構造の化合物、即ち化合物bよりも優れたことが分かった。
【0105】
2.硬化成膜後の性能試験
本発明の多官能オキセタンモノマー又は化合物aおよびbをエポキシモノマーTTA21と1:1の質量比でそれぞれ混合し、さらに2%の開始剤PAG-202を添加し、暗室で均一になるまで攪拌混合した後、25#ワイヤバーを用いて配合物を研磨紙により研磨されたブリキ板基材上に塗布し、厚み約25μmの塗布層を得た。その後、クローラ露光機(RW-UV.70201)に置いて、1回の露光量80mj/cm2で10回十分に露光し、その後24時間放置した後、試験を行った。
【0106】
(1)硬度試験
硬化フィルムを温度23℃、相対湿度50%の条件下で試験し、GB/T 6739-2006に規定された鉛筆硬度評価方法に基づき、鉛筆を試験器具に挿入し、クリップで固定した。水平に保持し、鉛筆の先端を塗膜表面に置いて、1mm/sの速度で自分から離れる方向へ少なくとも7mmの距離を押した。スクラッチが発生していない場合、試験していない領域で実験を繰り返し、少なくとも長さ3mm以上のスクラッチが出るまで硬度のより高い鉛筆に交換して、塗布層にスクラッチがない最も硬い鉛筆の硬度をコーティング層の硬度とする。
【0107】
(2)柔軟性試験
硬化フィルムを温度23℃、相対湿度70%の条件下で試験し、GB/T1731-93塗膜柔軟性試験方法に基づき、硬化塗布層を塗布したブリキ板の外側を長手方向に沿って10、5、4、3、2、1mmのロッド軸に順次に巻き付け、2〜3秒間曲げて、拡大鏡で観察した。塗布層が破壊する最も小さいロッド軸の直径を紫外線硬化性塗布層の柔軟性とする。
【0108】
(3)付着性試験
硬化フィルムを温度23℃、相対湿度50%の条件下で試験し、GB/T 9286-1998に規定される塗膜クロスカット評価方法に基づき、塗膜に100個のマスを切った。ナイフの先端は切断中に基材まで到達し、先端が鋭く、先端と塗膜が45度の角をなす。柔らかいブラシを使用してスクラップを除去し、3Mの透明テープを切られた100個のマスに貼り付け、テープを塗膜面およびマス部位にしっかりと接着させる。2分以内に、3Mテープの一端を60度の角度で1秒以内かけて穏やかに剥がし、以下の基準で評価する。
レベル0:切断縁は非常に平滑であり、剥がれることは全くない。
レベル1:切口交差部には塗布層が少し剥がれているが、クロスカット面積への影響は5%を有意に超えてはいけない。
レベル2:切口交差部、及び/又は、切口縁に沿って塗布層が剥がれており、影響は5%を有意に超えるが、15%を有意に超えてはいけない。
レベル3:切断縁に沿って塗布層が一部又は全体大きな破片として剥がれており、及び/又は、マスの異なる部分において一部又は全体剥がれており、影響されたクロスカット面積は15%を有意に超えるが、35%を有意に超えてはいけない。
レベル4:切断縁に沿って塗布層が大きな破片として剥がれており、及び/又は、一部のマスが一部又は全体剥がれており、影響されたクロスカット面積は35%を有意に超えるが、65%を有意に超えてはいけない。
レベル5:剥がれの程度はレベル4を超えている。
【0109】
(4)ガラス転移温度試験
示差走査熱量計(PE DSC8000)を用いて、硬化フィルムについて試験を行った。試験条件は、窒素雰囲気下で、-20℃から200℃まで10℃/minの速度で加熱し、200℃で1min保持した後、200℃から-20℃まで10℃/minの速度で冷却し、-20℃で1min保持して、次いで-20℃から200℃まで10℃/minの速度で加熱することにより、ガラス転移温度Tg(℃)を測定した。
【0110】
(5)熱分解温度試験
熱重量分析器(PE STA6000)を用いて、硬化フィルムについて熱重量分析を行った。初期に重量減少がない又は段々に減少する部分の切線と、重量が急激に減少するところの変曲点の切線とが交差する箇所の温度を熱分解温度T(℃)とし、以下の基準で評価した。
熱分解温度T(℃)は300以上である場合、△と記載される。
熱分解温度T(℃)は250〜300以上である場合、○と記載される。
熱分解温度T(℃)は250以下である場合、×と記載される。
【0111】
評価結果を表3にまとめる。
【0112】
【表3】
【0113】
表3から分かるように、本発明の多官能オキセタン系化合物は、化合物aに比べてカチオン光硬化系に適用された後の硬度、柔軟性、付着性、耐熱性の点で顕著な優位を占めている。構造上より類似する化合物bに比べて、本発明は柔軟性、付着性、耐熱性の点でより優れた性能を示し、全体性能がより優れている。
【0114】
要するに、本発明の多官能オキセタン系化合物は、カチオン光硬化系において優れた適用性能を有し、良好な構造及び性能調整性を有し、それぞれの系の適用要求を満足することができる。
【0115】
上述したことは本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明を各種の変更及び変化させることができる。本発明の精神及び原則内にある限り、行った一切の改正、等価置換、改良などが、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。