【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のオキセタン系モノマーの不足に対して、本発明は、より高い反応活性およびより優れた適用性能を持つ多官能オキセタン系化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。これらの多官能オキセタン系カチオン重合性モノマーとエポキシ化合物とを配合して使用する場合、硬化速度が速く、硬化生成物の硬度、柔軟性、付着性および耐熱性が非常に優れる。
前記した目的を実現するために、本発明は、まず、一般式(I)で示される構造を有する多官能オキセタン系化合物を提供する。
【0010】
【化3】
【0011】
式中、
R
1はC
1〜C
40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C
2〜C
20のm価のアルケニル基又はC
6〜C
40のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH
2-が酸素原子、-NH-又は
【0012】
【化4】
【0013】
で置換されてもよく(optionally)、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0014】
R
2はC
1〜C
20の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH
2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0015】
R
3は水素、ハロゲン、ニトロ基、C
1〜C
20の直鎖又は分岐のアルキル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基、C
4〜C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4〜C
20のアルキルシクロアルキル基、C
2〜C
10のアルケニル基又はC
6〜C
20のアリール基を表し、これらの基における1つ又は複数の水素原子はそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0016】
mは1〜8の整数を表す。
好ましくは、前記一般式(I)化合物には2つ以上のオキセタン基が含有される。そのため、mは2以上の数が好ましく、或いは、m=1の場合、R
1には少なくとも1つのオキセタン基が含有すべきである。
【0017】
好ましい技術態様として、R
1はC
1〜C
40の直鎖又は分岐のm価のアルキル基、C
2〜C
10の直鎖又は分岐のm価のアルケニル基又はC
6〜C
30のm価のアリール基を表し、これらの基における-CH
2-が酸素原子、-NH-又は
【0018】
【化5】
【0019】
で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、また、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0020】
例示として、R
1はC
1〜C
12の直鎖又は分岐の1〜4価のアルキル基、C
2〜C
6の直鎖又は分岐の1〜4価のアルケニル基、
【0021】
【化6】
【0022】
から選ばれてもよい。
【0023】
好ましくは、R
2はC
1〜C
10の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH
2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。さらに好ましくは、R
2はC
1〜C
6の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、その主鎖における-CH
2-が酸素原子で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。
【0024】
好ましくは、R
3は水素、C
1〜C
10の直鎖又は分岐のアルキル基、C
3〜C
10のシクロアルキル基、C
4〜C
10のシクロアルキルアルキル基、C
4〜C
10のアルキルシクロアルキル基、C
2〜C
8のアルケニル基、フェニル基を表す。さらに好ましくは、R
3はC
1〜C
4の直鎖又は分岐のアルキル基、又はC
4〜C
8のシクロアルキルアルキル基を表す。
【0025】
mは1〜6の整数が好ましく、より好ましくは1〜4の整数である。
【0026】
本発明の開示内容において、関連用語は、特に記載がない限り、当分野で一般的に理解される意味を有する。数値範囲は端点値および端点値の間にある全ての値を含み、例えば、「C
1〜C
10」はC
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9、C
10を含み、「1〜4の整数」は1、2、3、4を含む。
【0027】
相応に、本発明は、一般式(II)で示される水酸基含有化合物および一般式(III)で示されるオキセタン基含有エポキシ化合物を原料として、触媒存在の条件下で反応させ、生成物を得ることを含み、
反応式は、
【0028】
【化7】
【0029】
である、前記一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物の製造方法にも関する。
【0030】
前記製造方法において、使用される触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシドなどのアルコールのアルカリ金属塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;ブチルリチウム、フェニルリチウム等のアルキル金属リチウム化合物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなどのリチウムアミド化合物でもよい。触媒の使用量は、当業者にとって容易に確定できるものであり、触媒使用量は、好ましくは一般式(II)で示される化合物のモル量の0.1〜20%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0031】
反応系は、原料の種類に応じて、有機溶媒を含んでいてもよい。適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒でもよい。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。合計使用量は、反応系の均一性および攪拌性に応じて適宜調整することができ、これは当業者にとって容易に確定できるものである。
【0032】
反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常25〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応圧力は特に限定されず、一般的に常圧であればよい。
【0033】
反応終了後、pH値を中性に調整し、濾過、水洗、抽出、減圧蒸留して、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物が得られる。
【0034】
さらに、本発明は、一般式(IV)で示される構造を有し、前記一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリンとを反応させてなるカチオン重合性モノマーも提供する。
【0035】
【化8】
【0036】
式中、R
1、R
2、R
3およびmは一般式(I)に記載された定義と同様である。
【0037】
一般式(IV)で示されるカチオン重合性モノマーの製造方法は、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリンとを、アルカリ性条件下で反応させることを含み、
反応式は、
【0038】
【化9】
【0039】
である。
【0040】
一般式(IV)で示されるカチオン重合性モノマーの製造過程において、アルカリ性条件の構築は、当業者にとって容易に想到できるものである。例示として、反応系にアルカリ性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩を添加してもよい。アルカリ性化合物は、円滑な反応を促進することができ、その使用量は当業者にとって容易に確定できるものであり、アルカリ性化合物の使用量は、好ましくは一般式(I)で示される化合物のモル量の1〜20倍、より好ましくはm-10倍である。
【0041】
原料の種類に応じて、反応系において担体媒体として有機溶媒を選択的に使用することができる。適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒でもよい。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常25〜120℃、好ましくは30〜80℃である。反応終了後、水洗、抽出、減圧蒸留することにより、製品が得られる。
【0042】
さらに、本発明は、前記一般式(I)で示される化合物と一般式(V)で示されるエステル化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーも提供する。
【0043】
【化10】
【0044】
式中、R
4はn価の連結基を表し、R
5はC
1〜C
10の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、nは1〜8の整数を表す。
【0045】
ただし、カチオン重合性モノマーが少なくとも2つのオキセタン基を有することである。
【0046】
当該カチオン重合性モノマーは、mおよびnの値によって、モノヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ち、m=1)とモノエステル基化合物(即ち、n=1であり、そして、この時一般式Iで示される化合物においてR
1に少なくとも1つのオキセタン基が含有される)又はポリエステル基化合物(即ちn>1)とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよいし、ポリヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ちm>1)とモノエステル基化合物又はポリエステル基化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよい。
【0047】
好ましい技術態様として、一般式(V)で示されるエステル化合物において、R
4はC
1〜C
20の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C
2〜C
20のn価のアルケニル基、C
3〜C
20のn価のシクロアルキル基、C
4〜C
20のn価のシクロアルキルアルキル基、C
4〜C
20のn価のアルキルシクロアルキル基、又はC
6〜C
40のn価のアリール基を表し、これらの基における-CH
2-が、酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0048】
さらに好ましくは、R
4はC
1〜C
10の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C
2〜C
10のn価のアルケニル基、C
3〜C
10のn価のシクロアルキル基、C
4〜C
10のn価のシクロアルキルアルキル基、C
4〜C
10のn価のアルキルシクロアルキル基、又はC
6〜C
20のn価のアリール基を表し、これらの基における-CH
2-が、酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことである。
【0049】
より好ましくは、R
4はC
1〜C
8の直鎖又は分岐のn価のアルキル基、C
7〜C
12のn価のアリール基、n価のフェニル基を表す。
【0050】
好ましくは、前記エステル化合物において、R
5はC
1〜C
4の直鎖又は分岐のアルキル基から選ばれ、特にメチル基又はエチル基から選ばれる。
【0051】
好ましくは、nは1〜4の整数である。
【0052】
例示として、一般式(V)で示されるエステル化合物は下記の化合物から選ばれるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0053】
【化11】
【0054】
前記カチオン重合性モノマーの製造方法は、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物と一般式(V)で示されるエステル化合物とを、触媒存在の条件下でエステル交換反応させることを含む。
【0055】
反応に使用される触媒は、好ましくはチタン酸エステル系化合物であり、より好ましくは2-エチルヘキシルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソブチルチタネートなどのうち1種又は2種以上の組合せである。触媒の使用量は、当業者にとって容易に確定できるものであり、触媒使用量は、好ましくは一般式(I)で示される化合物の0.05〜5wt%であり、より好ましくは0.1〜2wt%である。
【0056】
好ましくは、反応系には担体媒体として有機溶媒が含まれ、適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどがある。溶媒の使用量は、反応系の均一性および攪拌性に応じて適宜調整することができ、これは当業者にとって容易に確定できるものである。
【0057】
反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応終了後、水洗、濾過、減圧蒸留することにより、製品が得られる。
【0058】
さらに、本発明は、前記一般式(I)で示される化合物と一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーも提供する。
【0059】
【化12】
【0060】
式中、R
6はp価の連結基を表し、pは1〜8の整数を表し、ただし、前記カチオン重合性モノマーが少なくとも2つのオキセタン基を有することである。
【0061】
当該カチオン重合性モノマーは、mおよびpの値によって、モノヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ち、m=1)とモノイソシアネート化合物(即ち、p=1であり、そして、この時一般式Iで示される化合物においてR
1に少なくとも1つのオキセタン基が含有される)又はポリイソシアネート化合物(即ちp>1)とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよいし、ポリヒドロキシル基の一般式(I)で示される化合物(即ちm>1)とモノイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物とを反応させてなるカチオン重合性モノマーでもよい。
【0062】
好ましい技術態様として、一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物において、R
6はC
1〜C
20の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C
2〜C
20のp価のアルケニル基、C
3〜C
20のp価のシクロアルキル基、C
4〜C
20のp価のシクロアルキルアルキル基、C
4〜C
20のp価のアルキルシクロアルキル基、又はC
6〜C
40のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH
2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基から選ばれる基で置換されてもよい。
【0063】
さらに好ましくは、R
6はC
1〜C
10の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C
2〜C
10のp価のアルケニル基、C
3〜C
10のp価のシクロアルキル基、C
4〜C
10のp価のシクロアルキルアルキル基、C
4〜C
10のp価のアルキルシクロアルキル基、C
6〜C
20のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH
2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にアルキル基で置換されてもよい。
【0064】
より好ましくは、R
6はC
1〜C
8の直鎖又は分岐のp価のアルキル基、C
6〜C
12のp価のアリール基を表し、これらの基における-CH
2-が酸素原子又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく、ただし、2つの-O-が直接に結合しないことであり、これらの基における1つ又は複数の水素原子は独立にC
1〜C
4のアルキル基で置換されてもよい。
【0065】
好ましくは、pは1〜4の整数である。
【0066】
例示として、一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物は下記の化合物から選ばれるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0067】
【化13】
【0068】
前記カチオン重合性モノマーの製造方法は、一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物と一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを、触媒存在の条件下で反応させることを含む。
反応に使用される触媒および使用量は、当業者にとって容易に確定できるものである。好ましくは、触媒はラウリン酸ジブチルすずであり、使用量は一般式(I)で示される化合物の0.05〜5wt%であり、より好ましくは0.1〜2wt%である。
【0069】
原料の種類に応じて、反応系において担体媒体として有機溶媒を選択的に使用することができる。適用される溶媒の種類は、反応に影響を及ぼすことなく反応原料を溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒でもよい。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、反応系の均一性および攪拌性に応じて適宜調整することができ、これは当業者にとって容易に確定できることである。
反応温度は、原料の種類によって異なるが、通常0〜100℃であり、好ましくは20〜80℃である。
【0070】
一般式(I)で示される多官能オキセタン系化合物とエピクロルヒドリン、一般式(V)で示されるエステル化合物、又は一般式(VI)で示されるイソシアネート化合物とを反応させてなるのは、いずれも多官能オキセタン系化合物であり、一般式(I)化合物と類似し又はより良い性能を発現することができる。反応することにより一般式(I)に新たな官能基を導入することができ、より良い性能調整性が得られ、それぞれの系の適用要求を満足することができる。