特許第6773822号(P6773822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773822AODラウト加工用レーザシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773822
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】AODラウト加工用レーザシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20201012BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20201012BHJP
【FI】
   B23K26/082
   B23K26/00 N
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-10116(P2019-10116)
(22)【出願日】2019年1月24日
(62)【分割の表示】特願2016-502393(P2016-502393)の分割
【原出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-111583(P2019-111583A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年2月19日
(31)【優先権主張番号】61/791,361
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ウンラート,マーク エー
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−528011(JP,A)
【文献】 特開2000−351087(JP,A)
【文献】 特開平5−33809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース上又はワークピース内に特徴部を加工するレーザ加工装置であって、
レーザパルスからなるビームを生成するレーザシステムと、
前記ビームと前記ワークピースとの間で相対運動を生じさせ、前記特徴部に沿って前記ビームをスキャンする位置決めシステムであって、音響光学偏向器を含む位置決めシステムと、
前記特徴部の第1の部分及び第2の部分に沿って前記ビームが連続的にスキャンされるように一連のレーザパルスを前記ワークピースに照射することによって前記特徴部の前記第1の部分及び前記第2の部分を連続的に加工するように前記レーザシステム及び前記位置決めシステムを制御するように構成されたコントローラと
を備え、
前記特徴部の前記第1の部分に沿ってスキャンされるビーム速度は、前記特徴部の前記第2の部分に沿ってスキャンされるビーム速度と異なり、
前記コントローラは、さらに、
それぞれ第1のパルスエネルギーを有するレーザパルスからなるビームを第1のパルス繰り返し周波数PRF1生成するように前記レーザシステムを制御するとともに、前記第1のパルス繰り返し周波数PRF1で生成された前記レーザパルスからなるビームを前記特徴部の前記第1の部分に沿ってスキャンするように前記位置決めシステムを制御し、
それぞれ前記第1のパルスエネルギーとは異なる第2のパルスエネルギーを有するレーザパルスからなるビームを前記第1のパルス繰り返し周波数PRF1とは異なる第2のパルス繰り返し周波数PRF2生成するように前記レーザシステムを制御するとともに、前記第2のパルス繰り返し周波数PRF2で生成された前記レーザパルスからなるビームを前記特徴部の前記第2の部分に沿ってスキャンするように前記位置決めシステムを制御し、
前記第1のパルス繰り返し周波数PRF1で生成される前記レーザパルスのうち最後のレーザパルスと前記第2のパルス繰り返し周波数PRF2で生成される前記レーザパルスのうち最初のレーザパルスとの間の期間tが
t=1/(2×PRF1)+1/(2×PRF2)
となるように前記レーザシステムを制御し、
前記第1のパルス繰り返し周波数PRF1で前記ワークピースに照射されるレーザパルスのパルスエネルギーが、前記第2のパルス繰り返し周波数PRF2で前記ワークピースに照射されるレーザパルスのパルスエネルギーと同一になるように前記一連のレーザパルスを伝搬するように前記音響光学偏向器を制御する
ように構成され
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記位置決めシステムは、ガルバノメータをベースとしたミラーをさらに含んでいる、請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記位置決めシステムは、前記ワークピースを移動するように構成されたステージを含んでいる、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)により2013年3月15日に提出された米国仮出願第61/791,361号の利益を主張するものであり、当該仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、レーザ加工装置及びこれを用いてワークピースを加工する方法に関するものである。
【背景情報】
【0003】
ワークピースの1以上の材料の内部における特徴部(例えば、貫通ビア、非貫通ビア、トレンチ、ラウト(routs)、切溝、及びその他の特徴部)のレーザ加工は、レーザパワー、パルス繰り返し周波数(PRF)、パルスエネルギー、パルス幅、バイトサイズ、及び他のパラメータなどのパラメータを使用して行うことができる。多くのレーザ加工用途においては、特徴部が形成される速度及び効率や最終的に形成された特徴部の品質が、そのような加工パラメータの影響を非常に受けやすいことがある。
【0004】
複合運動レーザ加工装置における適用例は、連続的な線形セグメント又は円弧セグメントからなるレーザ切断線である「ラウト」特徴部の加工である。従来、そのような加工は、プロセスビームを所望の軌跡に沿って一定の速度で移動することにより行われていた。この方法は、所定のレーザパワー及びPRFに対してワーク表面で一定のフルエンス及びバイトサイズを提供する。
【0005】
しかしながら、ラウトを加工しているときに、複合運動システムの力学的な制限(例えば、直動ステージ加速度又は速度やガルボスキャン領域)を超えてしまう可能性がある。あるラウト速度に対して、例えば、ラウトの方向を反転すると、システムの能力を超える最大直動ステージ加速度が簡単に生じ得る。
【開示の概要】
【0006】
本明細書において述べられる例としての本開示の実施形態は、上述した制限及びワークピース内でラウト及び他の特徴部をレーザ加工する従来の方法に関連する他の制限を解決するものである。ある実施形態は、レーザシステムの力学的制限を超えてしまうことを避けるために、ラウトや他の特徴部の加工速度を最適化又は向上する。
【0007】
一実施形態においては、レーザ加工システムは、ワークピース上又はワークピース内に加工される複数の特徴部に対応するレーザ加工コマンドをプロセスセグメントに分割する。レーザ加工パラメータ及びビーム軌跡をシミュレートし、プロセスセグメントのそれぞれに対する最大加工速度を決定する。レーザ加工システムは、ワークピース上又はワークピース内に複数の特徴部を加工するために最大加工速度のうちの1以上を選択する。
【0008】
一実施形態においては、複数の特徴部のそれぞれを加工するために最大加工速度のうち最低加工速度を用いる。他の実施形態においては、異なる加工速度を用いてそれぞれの連続ラウトシーケンスが加工される。他の実施形態においては、それぞれのプロセスセグメントが、その対応する最大加工速度を用いて加工される。
【0009】
追加の態様及び利点は、図面を参照して述べられる以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態におけるレーザ加工装置を模式的に示すものである。
図2図2は、図1に示される装置の様々な構成要素又は系に関連付けられたスキャン領域を模式的に示すものである。
図3図3及び図4は、本開示のある実施形態において、ワークピースに対してビーム位置をスキャンすることにより生成されるスポットのパターンを図で示すものである。
図4図3及び図4は、本開示のある実施形態において、ワークピースに対してビーム位置をスキャンすることにより生成されるスポットのパターンを図で示すものである。
図5図5は、図4に示されるスポットのパターンを形成するプロセスの一実施形態を模式的に示す図である。
図6図6は、ある実施形態においてプロセスセグメントに分割される複数のラウトシーケンスを模式的に示すものである。
図7図7は、様々な実施形態において、ラウトシーケンスに対応する複数のプロセスセグメントに対して選択される速度の時間グラフの例を模式的に示すものである。
図8図8は、一実施形態において、異なるパルス期間又はパルス繰り返し周波数に関連付けられた連続プロセスセグメントにわたるパルス同期を模式的に示すものである。
図9図9は、一実施形態においてAOD遅延タイミング調整を模式的に示すものである。
図10図10は、一実施形態における振幅コマンドデータストリームをグラフで示すものである。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ実施形態の例を説明する。本開示の精神及び教示を逸脱することのない多くの異なる形態及び実施形態が考えられ、本開示を本明細書で述べた実施形態に限定して解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態の例は、本開示が完全かつすべてを含むものであって、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。図面においては、理解しやすいように、構成要素のサイズや相対的なサイズが誇張されている場合がある。本明細書において使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図しているものではない。本明細書で使用される場合には、内容が明確にそうではないことを示している場合を除き、単数形は複数形を含むことを意図している。さらに、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、本明細書で使用されている場合には、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除するものではないことも理解されよう。特に示している場合を除き、値の範囲が記載されているときは、その範囲は、その範囲の上限と下限の間にあるサブレンジだけではなく、その上限及び下限を含むものである。
【0012】
本明細書において使用される場合には、パルス繰り返し周波数又は「PRF」という用語は、その逆数であるパルス期間(PP)又はパルス間隔(IPP)により特定される場合がある。典型的には、機械の使用者はPRFを使用するが、パワー制御又は他の実装を行う際にはパルス期間を特定する。したがって、これら2つの用語はこのような議論において適宜互いに交換可能に用いられる。
【0013】
I.システム例の概要
図1を参照すると、レーザ加工装置100は、ワークピース102に当たるように経路Pに沿ってレーザパルスビーム105を照射することにより、ワークピース102の1以上の材料の内部にラウトや他の特徴部(例えば、貫通ビア、非貫通ビア、トレンチ、及び切溝)を形成するように構成されている。ルーティング動作及び/又は他のツーリング動作(例えば、パーカッションドリル動作、トレパンドリル動作、スカイブ動作、及び切断動作)を行うようにレーザ加工装置100を制御することにより特徴部を形成してもよく、それぞれのツーリング動作は、1以上の工程を含んでいてもよい。図示されているように、レーザ加工装置100は、レーザシステム104、チャック106、ワークピース位置決めシステム108、ビーム位置決めシステム110、及びビーム変調システム112を含んでいてもよい。図示はされないが、レーザ加工装置100は、経路Pに沿った任意の点でレーザパルスビーム105を整形、拡大、集束、反射、及び/又はコリメートするように構成された1以上の補助システム(例えば、光学系、ミラー、ビームスプリッタ、ビームエキスパンダ、及び/又はビームコリメータ)をさらに含んでいてもよい。一実施形態においては、1以上の補助システムのセットを「光学部品列」ということがある。
【0014】
一実施形態においては、レーザパルスビーム105がワークピース102に当たる位置(すなわち、ワークピース102に対するビーム位置)を変えるように、ワークピース位置決めシステム108、ビーム位置決めシステム110、及びビーム変調システム112のうちの1つ以上のシステム又はすべてのシステムの動作を制御してもよい。加えて、あるいは他の実施形態においては、ワークピース102に対してビーム位置が変化する速度及び/又は加速度を変えるように、ワークピース位置決めシステム108、ビーム位置決めシステム110、及びビーム変調システム112のうちの1つ以上のシステム又はすべてのシステムの動作を制御してもよい。
【0015】
レーザパルスビーム105を生成するようにレーザシステム104を構成し得る。ビーム105内のレーザパルスは、例えば、赤外スペクトル、可視スペクトル、又は紫外スペクトルの波長を有し得る。例えば、ビーム105内のレーザパルスは、1064nm、532nm、355nm、266nmなどの波長を有し得る。一般的に、ビーム105内のレーザパルスは、約20kHzから約2000kHzの範囲のPRFで生成され得る。しかしながら、PRFが、20kHzより低くてもよく、あるいは2000kHzより高くてもよいことは理解されよう。例えば、モードロックレーザは200MHzまで稼働し得る。
【0016】
チャック106は、ワークピース102を好適に又は有利に支持可能な任意のチャックであってもよい。一実施形態においては、チャック106は、真空チャック、静電チャック、機械的チャックなど、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0017】
ワークピース位置決めシステム108は、X軸、Y軸、及び/又はZ軸(Z軸は、チャック106の表面に対して少なくとも実質的に垂直であり、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交している)に平行な1以上の方向に沿ってワークピース102を支持するチャック106を平行移動したり、X軸、Y軸、及び/又はZ軸のうち1つ以上の軸を中心としてチャック106を回転させたり、これと類似のことをしたり、又はこれらの組み合わせを行ったりするように構成される。一実施形態においては、ワークピース位置決めシステム108は、上述したチャックを移動するように構成された1以上のステージを含み得る。ワークピース102がチャック106によって支持されているときに、経路Pに対して第1のスキャン領域(例えば、図2に示されるような第1のスキャン領域200)内でワークピース102を(例えば、X軸及びY軸に沿って)移動又はスキャンするようにワークピース位置決めシステム108を動作させてもよい。一実施形態においては、約400から約700mmの範囲(例えば約635mm)の距離だけX軸に沿って任意の方向に、あるいは約400mmから約700mmの範囲(例えば約533mm)の距離だけY軸に沿って任意の方向に、あるいはこれらを組み合わせてワークピース102をスキャンするようにワークピース位置決めシステム108を動作させることができる。
【0018】
ビーム位置決めシステム110は、ワークピース102に対して第2のスキャン領域(例えば、図2に示されるような第2のスキャン領域202)内でビーム位置をスキャンするために、レーザパルスビーム105を偏向、反射、屈折、又は回折させるなど、あるいはこれらを組み合わせるように構成される。一実施形態においては、約1mmから約50mmの範囲(例えば約30mm)の距離だけX軸に沿って任意の方向に、あるいは約1mmから約50mmの範囲(例えば約30mm)の距離だけY軸に沿って任意の方向に、あるいはこれらを組み合わせてビーム位置をスキャンするようにビーム位置決めシステム110を動作させることができる。一般的に、ワークピース位置決めシステム108が第1のスキャン領域200内でワークピース102をスキャンできる速度及び/又は加速度よりも大きな速度及び/又は加速度でワークピース102に対してビーム位置をスキャンするようにビーム位置決めシステム110の動作を制御することができる。図示された実施形態においては、ビーム位置決めシステム110は、経路P内に配置されたガルバノメータをベースとした1対のミラー(ガルボ)110a及び110bを含んでいる。ガルボ110a及び110bは、(例えば、X軸又はY軸を中心として)回転するように構成されており、これにより経路Pを偏向して第2のスキャン領域202内でビーム位置をスキャンする。しかしながら、他の好適な態様又は有利な態様でビーム位置決めシステム110を構成してもよいことは理解されよう。
【0019】
ビーム変調システム112は、ワークピース102に対して第3のスキャン領域(例えば、図2に示されるような第3のスキャン領域204)内でビーム位置をスキャンするために、レーザパルスビームを偏向、反射、屈折、又は回折させるなど、あるいはこれらを組み合わせるように構成される。一実施形態においては、約0.05mmから約0.2mmの範囲(例えば約0.1mm)の距離だけX軸に沿って任意の方向に、あるいは約0.05mmから約0.2mmの範囲(例えば約0.1mm)の距離だけY軸に沿って任意の方向に、あるいはこれらを組み合わせてビーム位置をスキャンするようにビーム変調システム112を動作させることができる。当業者であれば、これらの範囲が例示として挙げられるものであり、より小さな範囲又はより大きな範囲内でビーム位置をスキャンしてもよいことを理解するであろう。一般的に、ビーム位置決めシステム110が第2のスキャン領域内でビーム位置をスキャンできる速度及び/又は加速度よりも大きな速度及び/又は加速度でワークピース102に対してビーム位置をスキャンするようにビーム変調システム112の動作を制御することができる
【0020】
一実施形態においては、ビーム変調システム112は、レーザパルスビーム105を偏向して第3のスキャン領域204内で単一の軸に沿ってビーム位置をスキャンするように構成された単一の音響光学偏向器(AOD)を含んでいる。他の実施形態においては、ビーム変調システム112が2つのAODを含んでおり、第1のAODは、レーザパルスビーム105を偏向し、第3のスキャン領域204内でX軸に沿ってビーム位置をスキャンするように構成されており、第2のAODは、レーザパルスビーム105を偏向し、第3のスキャン領域204内でY軸に沿ってビーム位置をスキャンするように構成されている。しかしながら、他の好適な態様又は有利な態様でビーム変調システム112を構成してもよいことは理解されよう。例えば、ビーム変調システム112は、AODに加えて、あるいはAODに代わるものとして、1以上の音響光学変調器(AOM)、電気光学偏向器(EOD)、電気光学変調器(EOM)、ファーストステアリングミラー(FSM)(例えば、(10kHzよりも高い)高帯域FSM)など、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0021】
レーザ加工装置100は、ワークピース位置決めシステム108、ビーム位置決めシステム110、ビーム変調システム112、及びレーザシステム104に通信可能に連結されたシステムコントローラ114をさらに含んでいてもよい。このシステムコントローラ114は、これらのシステム(ワークピース位置決めシステム108、ビーム位置決めシステム110、ビーム変調システム112、及び/又はレーザシステム104)のうちの1以上のシステム又はすべてのシステムの上述した動作を制御してワークピース102内に特徴部(例えば、ラウト、貫通ビア、非貫通ビア、トレンチ、切溝、及びその他の特徴部)を形成するように構成されている。一実施形態においては、システムコントローラ114は、レーザシステム104の動作を制御して、レーザシステム104により生成されるパルスのPRFを(例えば、約20kHzから約2000kHzの範囲内で)変更し得る。本明細書において開示される(例えば、約200kHzから約500kHzの範囲内の)高PRFレーザを用いる実施形態に関しては、システムコントローラ114が、レーザ光でラウトを形成しているときにPRFを変更する必要がない場合がある。
【0022】
一実施形態においては、システムコントローラ114は、ビーム変調システム112の動作を制御して、ワークピース102に対してビーム位置をスキャンしてワークピース102内(例えば、500μm又はその近傍以下のピッチで離間した特徴部を含む領域)に「高密度特徴部領域」を形成してもよい。システムコントローラ114は、高密度特徴部領域を形成している間にビーム位置決めシステム110及び/又はワークピース位置決めシステム108の動作をさらに制御してもよい。
【0023】
他の実施形態においては、システムコントローラ114は、ビーム位置決めシステム110の動作をさらに制御して、ワークピース102に対してビーム位置をスキャンして、ワークピース102内(例えば、500μm又はその近傍よりも大きい約1000μmなどのピッチで離間した特徴部を含む領域)に「中密度特徴部領域」を形成してもよい。システムコントローラ114は、中密度特徴部領域を形成している間にビーム変調システム112及び/又はワークピース位置決めシステム108の動作をさらに制御してもよい。
【0024】
さらに他の実施形態においては、システムコントローラ114は、ビーム位置決めシステム110の動作を制御し、ビーム変調システム112の動作を協調的にさらに制御して、ビーム位置決めシステム110の高速度制限、小さい領域での位置決め誤差、及び帯域制限を克服してもよい。例えば、レーザ加工装置100がビーム変調システム112を含んでいない場合は、ビーム内のレーザパルスが順次ワークピース102に当たって図3に示されるようなスポットの丸いパターンを形成するように(図示されているように、スポットの円形パターンは約600μmの最大幅を有している)、ビーム位置決めシステム110を制御してワークピース102に対してビーム位置をスキャンしてもよい。しかしながら、ビーム変調システム112の動作をビーム位置決めシステム110に協調させることにより、図4に示されるようなスポットの方形状のパターンを形成するようにレーザ加工装置100を構成してもよい(図示されているように、スポットの方形状のパターンは約600μm×約600μmの寸法を有している)。
【0025】
一実施形態においては、図5を参照すると、図4に示されるスポットのパターンは、ビーム位置決めシステム110を制御して第2のスキャン領域202内で線500のような線に沿ってビーム位置をスキャンすることにより形成することができ、(線500の端部が中央に位置している)第3のスキャン領域204内で(例えば、第3のスキャン領域204内の中央に位置する線502によって示される)ある方向に沿ってビーム位置をさらにスキャンしてレーザパルスが順次ワークピース102に当たって(例えば、図4に示されているような)スポット504の方形状のパターンを形成するようにビーム変調システム112を制御することができる。図5に関して先に述べた例示プロセスを適用することにより、およそ毎秒5メートル(m/s)の速さで、あるいはガルボの能力によってはそれよりも速く、ビーム位置をワークピース上でスキャンすることができる。しかしながら、ワークピース102上にスポットの好適な又は有利なパターンを形成するためにビーム変調システム112の動作をビーム位置決めシステム110と任意の態様により協調させてもよいことは理解できよう。
【0026】
一般的に、システムコントローラ114は、様々な制御機能を規定する演算ロジック(図示せず)を含み得る。システムコントローラ114は、ハードワイヤード状態機械(hardwired state machine)のような専用ハードウェアやプログラム命令を実行するプロセッサの形態及び/又は当業者が思いつくであろう異なる形態を有していてもよい。演算ロジックは、デジタル回路、アナログ回路、ソフトウェア、又はこれらの種類のハイブリッド結合を含み得る。一実施形態においては、システムコントローラ114は、演算ロジックに従ってメモリに格納された命令を実行するように構成された1以上の演算処理装置を含み得るプログラマブルマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、又は他のプロセッサを含んでいる。メモリ(例えば、コンピュータ読取可能な媒体)は、半導体、磁気、及び/又は光学の種類のうち1以上のタイプを含んでいてもよく、加えて/あるいは、揮発性及び/又は不揮発性のものであってもよい。一実施形態においては、メモリは、演算ロジックにより実行可能な命令を格納する。これに代えて、あるいはこれに加えて、メモリは、演算ロジックにより操作されるデータを格納し得る。ある構成においては、演算ロジック及びメモリは、ワークピース位置決めシステム108、ビーム位置決めシステム110、及び/又はビーム変調システム112の構成要素の動作的な側面を管理及び制御するロジックを行うコントローラ/プロセッサの形態に含まれている。他の構成においては、これらは分離され得る。
【0027】
本明細書で述べるように、レーザ加工装置100は、高速で非常に正確な位置に特徴部を形成するために、ビーム位置決めシステム110及びビーム変調システム112の協調的な動作を可能にするように構成されている。ある実施形態においては、レーザ加工装置100は、例えば、レーザエネルギーモニタ(LEM)116のような他のシステムに加えて、ビーム変調システム112及び114を有するレーザパワー制御(LPC)システムをさらに含み得る。一般的に、LPCシステムは、(例えば、品質管理や制御のために)個々のレーザパルスのパルスエネルギーを測定したり、個々のレーザパルスのパルスエネルギーを制御したり、パルスエネルギー及びPRFの高速変更を促進したり、個々のレーザパルスのパルスエネルギー制御をビーム位置に連係したり、レーザパルスの生成及び変調をビーム位置に連係したりなど、あるいはこれらを組み合わせたりするように構成され得る。
【0028】
II.ラウト加工の実施形態の例
上述したように、ラウト又は他の特徴部を加工する際に、図1に示されるレーザ加工装置100のような複合運動システムの力学的な限界(例えば、直動ステージ加速度又は速度やガルボスキャン領域)を超える可能性がある。再び図1及び図2を参照すると、例えば、ラウト又は他の特徴部のツール経路が第2のスキャン領域202のようなガルボ領域内にあれば、ガルボ110a,110bは、許容できる加工スループットに対して十分なビーム速度と加速度を提供し得る。しかしながら、ラウト又は他の特徴部のツール経路がガルボ領域よりも大きい場合には、ワークピース位置決めシステム108のステージを考慮に入れる必要があり得る。一般的に、従来のシステムにおいては、レーザシステム104のパワーの制限により最大加工速度が比較的低く維持されるので、ステージはレーザ加工についていくのに十分な速度を提供していた。レーザパワーが増加し続けると、加工速度も増加し、スループットが向上する。しかしながら、ステージの速度及び加速度の限界を超えると、レーザパワーを高めることにより得られる高いスループットの恩恵を得られなくなることがある。
【0029】
このように、本明細書に開示される実施形態は、(例えば、システムコントローラ114からレーザシステム104、ワークピース位置決めシステム108、ビーム位置決めシステム110、及び/又はビーム変調システム112のうちの1以上のシステムに発せられる)レーザ加工コマンドを、それぞれビーム位置、PRF又はパルス期間、レーザパルスに対するパルスエネルギー目標値、ビーム速度、及び他のレーザ加工パラメータ、又はこれらの組み合わせを記述した情報を含む一連の別個の「プロセスセグメント」に分割することによりツール経路やラウトの最適化を実現する。したがって、システムコントローラ114は、それぞれの「プロセスセグメント」に含まれる情報をビーム位置コマンド、パルス期間コマンド、及びレーザパルスエネルギーコマンドにフィルタ、分割、加工、又は変換するように構成されたセグメント加工サブシステムを含み得る。
【0030】
例えば、図6は、ある実施形態において、プロセスセグメントに分割された複数のラウトシーケンス610,612,614,616,618,620を模式的に示している。この例では、ラウトシーケンス610,612,614,616,618,620のそれぞれは、そのシーケンス中ずっとレーザをオンにすることにより(例えば、レーザパルス列を出射することにより)加工される連続線である。レーザ加工では、例えば、ラウトシーケンス610の最初のプロセスセグメント622の開始点でレーザをオンにし、続いてラウトシーケンス610のプロセスセグメント622,624,626,628,630,632を加工し、ラウトシーケンス610の最後のプロセスセグメント632の終点でレーザをオフにし、ビーム経路がラウトシーケンス612の最初のプロセスセグメント634の開始点に到達したときに、再びレーザをオンにし、続いてプロセスセグメント634,636を加工し、ラウトシーケンス612の最後のプロセスセグメント636の終点で再びレーザをオフにしてもよい。同様に、レーザ加工では、ラウトシーケンス614,616,618,620のそれぞれの開始点でレーザをオンにし、終点でレーザをオフにする。
【0031】
加工品質を一定に維持するために、プロセスセグメント間で(例えば、プロセスセグメント622とプロセスセグメント624との間で)及び/又はラウトシーケンス間で(例えば、ラウトシーケンス610とラウトシーケンス612との間で)1以上のレーザ加工パラメータを調整する必要があり得る。さらに、あるプロセスセグメント中にプロセス速度を上げてもよい。例えば、ステージの力学的制約によって、直線状のプロセスセグメント630を円弧セグメント628でのビーム速度よりも速いビーム速度で加工することができるようになり得る。後述するように、速度を変化させることにより、PRF又は他のレーザパラメータを変更する必要が生じ得る。このように、ある実施形態においては、システムコントローラ114は、それぞれのプロセスセグメントに対する最高速度を決定するためにレーザ加工パラメータ及びビームポジショナ軌跡をシミュレートする最適化ルーチンを行う。そして、システムコントローラ114は、ラウトシーケンス610,612,614,616,618,620のプロセスセグメントのそれぞれを加工するために、決定された速度のうち1以上の速度を選択する。
【0032】
図7は、様々な実施形態において、対応するラウトシーケンスの複数のプロセスセグメントに対して選択された速度の時間グラフの例を模式的に示している。1つ目の時間グラフ710において、プロセスセグメント712,714,716の1つの目の組は第1のラウトシーケンス717に対応し、プロセスセグメント718,720の2つ目の組は第2のラウトシーケンス722に対応する。第1のラウトシーケンス717は連続的であり、時刻T1でレーザをオンにし、時刻T2でレーザをオフにすることにより処理される。同様に、第2のラウトシーケンス722は連続的であり、時刻T3でレーザをオンにし、時刻T4でレーザをオフにすることにより処理される。
【0033】
上述したように、システムコントローラ114は、プロセスセグメント712,716に対する最大速度V1、プロセスセグメント714に対する最大速度V2、プロセスセグメント718に対する最大速度V3、及びプロセスセグメント720に対する最大速度V4を決定するためにレーザ加工パラメータ及びビームポジショナ軌跡をシミュレートする最適化ルーチンを行う。他の実施形態においては、図7に示されるような同一の最大速度を有する複数のセグメント(例えば、4つの連続プロセスセグメントが最大速度V3を有している)ではなく、異なる最大許容加工速度を有するようにそれぞれのプロセスセグメントを決定してもよいことに留意すべきである。第1のラウトシーケンス717と第2のラウトシーケンスとの間の間隔724には速度V5が割り当てられている。間隔724は、ビーム軌跡が第1のラウトシーケンス717の終点から第2のラウトシーケンス722の始点まで移動する間のレーザがオフの時間を表しているので、非レーザ加工時間を最小にしスループットを上げるように、割り当てられた速度V5を最大全体システム速度としてもよい。この例では、V5>V4>V3>V2>V1である。それぞれのプロセスセグメント及びシステム全体に対する最大速度は、力学的制約(例えば、ステージの速度及び加速度)を満足するような速度に決定される。
【0034】
加工速度を選択する第1の実施形態の例が第2の時間グラフ726に示されている。この実施形態においては、第1のラウトシーケンス717のすべて、間隔724、及び第2のラウトシーケンス722のすべてに対して最も遅い速度V1が選択される。換言すれば、この実施形態は、すべての力学的制約が満たされるまで単にラウト速度を下げることによってラウトの速度を選択する。これは、例えば、ビームポジショナ軌跡をシミュレートし、力学的制約に反していないかを確認し、すべての制約が満たされるまでラウト速度を繰り返し下げる最適化ルーチンを実行することによって行うことができる。
【0035】
この第1のラウト最適化を行うことの利点は、アプリケーション全体に対して均一な速度設定を行うことにあり、これは、プロセス制御の観点から望ましいことがある。任意のラウト速度の変化に対して、レーザパラメータを適切に修正する必要があり得る。例えば、バイトサイズ(レーザパルス間のピッチ)と線量(長さ当たりに蓄積されたレーザエネルギー)を元々のプロセスパラメータのものとほぼ同一に維持することが有用な場合がある。レーザ/材料の相互作用の詳細及びPRF(例えば、レーザパルス幅)の関数としてのレーザパラメータの変化によりこれらの基準プロセスパラメータから多少の変更を加えてもよい。場合によっては、レーザ/材料の感度が既知であれば、そのような変更をプログラミングしてもよい。例えば、ワークピースアブレーション速度(照射されるレーザエネルギーの単位当たりの除去される材料の体積)がパルス幅によって変化してもよい。PRFに対するレーザパルス幅とアブレーション速度感度とをマッピングした場合、所望の材料アブレーション体積を維持するように(例えば、レーザパワーを調整することにより)レーザフルエンスを適切に調整することができる。ビーム速度や熱負荷、他の加工パラメータのような他の加工感度に対して同様の補償手法を実施してもよい。
【0036】
しかしながら、ある加工用途に関しては、このアプローチの欠点は、一部のラウトシーケンス又はプロセスセグメントがアプリケーション全体を過度に制約し得るということである。さらに、最悪の場合(例えば速度の逆転)、ラウトシーケンスがアプリケーションの潜在的スループットを著しく低下させてしまうことがある。このように、あるアプリケーションにおいては、より速い速度で制約を満足する他のラウトに対して選択された速度とは異なる(より低い)速度で、最悪の場合のラウトを最適化することがより有用な場合がある。
【0037】
加工速度を選択する第2の実施形態の例が第3の時間グラフ728に示されている。この第2の実施形態の例は、2つ以上の加工速度を許容することにより、時間グラフ726に示される第1の例を修正するものである。それぞれの連続ラウトシーケンス717,722(例えば、シーケンス全体にわたってオンにされるレーザ)は独立して最適化される。しかしながら、最適化されたラウトシーケンス717,722のそれぞれは、単一の(最低の)速度で加工される。このように、時間グラフ728に示されるように、(V1<V4の場合)第1のラウトシーケンス717に対して速度V1が選択され、(V2<V3の場合)第2のラウトシーケンス722に対して速度V2が選択される。
【0038】
時間グラフ728に示される第2の例において、スループットをさらに向上するために、V5はT2及びT3において必要な加速度及び減速度を与えると仮定しているので、間隔724に対して最大システム速度V5が選択される。他の実施形態においては、速度変化の回数を減らすために、第1のラウトシーケンス717に対して選択された速度V1又は第2のラウトシーケンス722に対して選択された速度V2のいずれかが間隔724に対して選択される。さらに他の実施形態においては、第1のラウトシーケンス717に対して選択された速度V1から第2のラウトシーケンス722に対して選択された速度V2へ遷移させる(加速又は減速する)ために間隔724が用いられる。
【0039】
時間グラフ728に示される第2の実施形態の例は、時間グラフ726に示される第1の実施形態の例におけるスループットの制限に関する問題を少なくとも部分的に解決するものである。しかしながら、依然として過度に制限されている場合もあり得る。例えば、単一の長い蛇行ラウト、すなわち速度を交互に変化させた長い一連のラウトは、ラウト全体において依然として低速度に制限され得る。
【0040】
加工速度を選択する第3の実施形態の例は、第4の時間グラフ730に示されている。この例では、セグメントごとに速度及びPRF(又はパルス期間)が選択される。このため、第1のラウトシーケンス717について示されているように、プロセスセグメント712,716に対して最大速度V4が選択され、プロセスセグメント714に対して最大速度V1が選択される。同様に、第2のラウトシーケンス722については、プロセスセグメント718に対して最大速度V3が選択され、プロセスセグメント720に対して最大速度V2が選択される。
【0041】
ある実施形態においては、それぞれの連続したラウトシーケンス717,722を、ある最大サイズ(例えば0.5mm)を有するより小さなサブセグメントに分割することができる。(あるサブセグメントから次のサブセグメントへの遷移に費やされる時間はないので)それぞれのサブセグメントの終点をプロセス時間がゼロの「加工特徴部」として扱うことができ、これらの「特徴部」の間の移動時間がツーリング速度およびセグメント長さによって設定される。そして、セグメントの順番が予め定義されると、一連のセグメントを一連の別個のツーリング特徴部として扱うことができ、従来の最適化プロセスにより最適化することができる。最悪の場合、この最適化の結果は、ラウトシーケンス全体に対する速度の上限を設定するために使用され得る。例えば、第3の時間グラフ728に示される第2の例に関して上記で述べたように、このプロセスでは、ラウトシーケンスを最適化し、任意の点における最低速度を見つけ、ラウト全体をその速度に設定し得る。最速の全体加工時間を実現可能な実施形態の例(第4の時間グラフ730に示される第3の例)は、それぞれのサブセグメントに対して一意の速度を割り当てる。制約に反する傾向にあるプロセスセグメントにおいては、選択された速度が遅い一方で、制約に反しない「安全な」セグメントにおいては、速度が比較的高い。
【0042】
その後、上述したように、それぞれの一意のサブセグメント速度に対してプロセスパラメータ(例えば、PRF及びパワー)が調整され得る。一般的に、パワーと速度を固定するのではなく、パワー/材料加工の速度の比を特定することにより、多くのアブレーションプロセスをモデル化することができる。速度が下がると、例えば、一定のPRFでのPEを低下させるか、PRFを下げて一定のPEを維持するかのいずれかによってパワーを下げることによりこの比を維持することができる。パルスのタイミングをサブセグメントの境界と同期させることについて以下に述べる。
【0043】
ビーム変調システム112は、ラウトの最適化の第3の実施形態の例により要求されるプロセスサブセグメントの間のプロセス速度を瞬時に変化させることができるAODを含んでいることに留意されたい。AODがビーム位置を実質的に瞬時に偏向できることによって、ビーム軌跡の速度を瞬時に変えることができ、これにより(AOD偏向範囲の制約内で)プロセスサブセグメントの速度を任意に割り当てることができる。
【0044】
図8は、一実施形態において、異なるパルス期間又はパルス繰り返し周波数に関連付けられた連続プロセスセグメント820,822にわたるパルス同期を模式的に示している。パルス期間(PP)(すなわち1/PRF)は、パルス期間又はPRFにおける「シームレスな」変化を可能とするように同期不感帯なしにプロセスセグメント間で(例えば、プロセスセグメント820とその後のプロセスセグメント822との間で)変化し得る。あるパルス期間から他のパルス期間への遷移中に、2つのパルス期間のみが存在している。すなわち、これらの2つの間に中間の高さのパルス、又は異常に高いパルス、又は非常に低いパルスが存在しない。これにより、レーザシステム104は、任意のパルス期間で予測可能なパルスエネルギーでレーザパルス800を生成することができる。一般に、それぞれのプロセスセグメントにおいてワークピース102に伝搬されるレーザパルス800のPEを制御するために、AOD透過度が2つのパルス期間の設定の間で変化する。
【0045】
パルス期間の間の遷移(例えば、PP1とPP2との間の切替)を少なくとも実質的に「シームレス」にするために、システムコントローラ114は、プロセスセグメント820の最後のパルス期間PP1(例えば802で示されている)の間に新しいパルス期間を特定する。システムコントローラ114は、この新しいパルス期間(例えばPP2)を把握し、この新しい値により次のレーザパルスをセットアップする。システムコントローラ114は、PP1とPP2との間の切替が正しい時点(例えば1μs以内)で起きるようにこのコマンドのタイミングを合わせる。
【0046】
一実施形態においては、任意のパワーオンの一連のセグメントについて、最初のパルスと最後のパルスは、(PP/2)秒だけセグメント境界の内側で発せられる。このため、セグメント境界804に対してレーザパルスのタイミングが与えられる。ビーム位置の速度は、プロセスセグメント間で変化し得る。これにより、新しいパルス期間PP2に関連付けられた1つの遷移パルス806に対してバイトサイズが変化することとなる。他の実施形態においては、新しいパルス期間PP2は、新しいプロセスセグメント822用のレーザシステムにより生成されたレーザパルスのPEを変化させやすいので、新しいプロセスセグメント822中に生成されたレーザパルスに対するAOD透過度が確立される。このように、レーザシステム104により適切なプロセスセグメント内に適切なPEコマンド(AOD透過度)で遷移パルス806が生成される。
【0047】
図8に示される実施形態のパルス同期プロセスによれば、特定のプロセスセグメント中に生成された最初のレーザパルスは、プロセスセグメント開始後、(例えば、プロセスセグメント820に関連付けられたパルス期間PP1の半分に等しい)初期化期間808(例えば、PP1が1μsであれば、初期化期間は0.5μsである)内に生成される。さらに、特定のプロセスセグメント中に生成された最後のレーザパルスは、(例えば、プロセスセグメント820に関連付けられたパルス期間PP1の半分に等しい)終了期間810内に生成される。
【0048】
その最初のパルスが同期されると、システムコントローラ114は、最後のパルスがセグメント境界の(PP/2)だけ前で終わるように、適切にタイミングが合わされ、位置が合わされたセグメントを生成することができる。ある実施形態では、パルスが実際に特定のツール経路座標に至るように、セグメント境界の終点が時間的にずらされる(PP/2のバッファが提供される)。
【0049】
パワーオンの一連のプロセスセグメント内でPPが変化する場合、図8に示されるように、第1のPPの最後のパルス及び第2のPPの最初のパルスに対して同様のタイミングが続く。
【0050】
高いPRFを用いる実施形態(例えば、200MHzまでで動作するモードロックレーザを用いる場合)では、図8に示すような連続するプロセスセグメントにわたるパルス同期を行わない。高いPRFでは分離パルスに関する懸念が実質的になくなるので、そのような同期は必要とされない場合がある。これは、最も速度が速い場合に関しては、バイトサイズ(パルス間の距離)がスポットサイズの約5%〜10%未満である場合に起こりやすい。そのような実施形態においては、バイトサイズを維持するか否かの決定は、特定のアプリケーションに対するレーザ/材料の相互作用に基づく。
【0051】
III.タイミング調整の例
ある実施形態においては、少なくとも2つのタイミング調整がある。第1のタイミング調整(「AOD遅延」ということもある)は、AODのRF波形を発せられたレーザパルスに整列させ、第2のタイミング調整(「パルス列遅延」ということもある)は、パルス列全体をビームポジショナに整列させる。
【0052】
図9は、一実施形態におけるAOD遅延のタイミング調整を模式的に示している。AOD結晶910は、レーザパルス914が適切な音波セグメントの中心を通過するように整列された一連の伝搬音波912を立ち上げる。図示された例では、μ秒ごとにRFパワーが変化している。この図面はAOD結晶10と音波912とをおよその縮尺で描いたものであることに留意されたい。適切な位置合わせのために、レーザパルス914は音波912の中心を通過する。他方で、レーザパルス914が境界を通過する場合、レーザパルス914が歪むようになる。図9は、境界をRF振幅の変化として示しているが、RF周波数の変化を用いても同様の効果が生じる。
【0053】
一実施形態においては、図9に示唆されているように、AOD遅延をセットアップするための方法は、振幅を変化させた(例えば鋸波形振幅の)シーケンスを発し、発されたパルスの最大PEが最大化されるまでタイミングを変化させることを含んでいる。定義上、AOD遅延は、1つの更新期間(例えば1μ秒)よりも短い。ある実施形態では、これは、自動較正手順であり、与えられた系に対して固定されたままであってもよい。このタイミングは、ケーブル配線、レーザパラメータ、光路長、及び他のファクターの影響を受けることがある。
【0054】
図10は、一実施形態における振幅コマンドデータストリーム1010をグラフで示すものである。上述したパルスタイミングは、1μ秒以上のコマンドデータストリーム1010と同期していなくてもよい。この不確実性を考慮して、ある実施形態におけるコントローラは、図10に示される適用振幅コマンド1012に示されているように、パルスが発せられるまで、最も新しいAODコマンド1014を一定に維持する。コントローラは、AOD遅延補償のために何らかの「先読み」が組み込まれていてもよく、それはそのような実施形態を実施するのに有用である。
【0055】
ある実施形態においては、ビームポジショナが前後に掃引して平行線を生成する自動手順を用いて第2の遅延(パルス列遅延)が較正される。これらの線が適切に位置決めされるまで遅延が調整される。
【0056】
材料のレーザ加工は、レーザパワーの影響を受け、多くのアプリケーションにおいて、パルスレーザにより加工され、個々のパルスのパルスエネルギー(PE)の影響を受ける。例えば、典型的には、銅層を穿孔する際に高いPEが好ましく、典型的には、熱影響部(根焼き(charring)、溶融)や下地銅層へのダメージを生じることなく誘電体層をアブレートする際に低いPEが好ましい。そのような材料を柔軟に加工するために、ワーク表面に与えられるPEを任意に調整する方法が用いられる。
【0057】
レーザパワー又はPEを調整する従来の方法は、(偏光光学系や音響光学変調器などの)減衰光学系、又は(レーザ媒体への励起パワーを変化させることによる)レーザ光学出力パワーの直接制御を含んでいる。これらの従来のアプローチには、(機械的に調整された偏光光学系に対する)速度が遅い、(レーザ媒体又はQスイッチタイミングの制御において)レーザ伝搬が変化する、あるいは(すべての方法において)加工動作と連係しないなどの不利な点がある。
【0058】
ある実施形態は、パワー又はPEの変化をワーク表面でのレーザの位置決めに連係させる。スループットと加工品質とを最大化するために、パルスごとのレーザPEの連係及び制御を用いることができる。加えて、PEを制御し、加工済みワークピースの品質に影響を与え得るPEの偏差についてプロセスをモニタリングするために、それぞれの個々のレーザパルスのPEを測定することが好ましい。
【0059】
当業者は、本発明の根底にある原理を逸脱することなく上述の実施形態の詳細に対して多くの変更をなすことが可能であることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲のみによって決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10