特許第6773856号(P6773856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6773856
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】自動紙幣取扱いシステム
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/00 20190101AFI20201012BHJP
   G07D 11/12 20190101ALI20201012BHJP
   G07D 11/16 20190101ALI20201012BHJP
   G07D 11/17 20190101ALI20201012BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20201012BHJP
   B65H 31/26 20060101ALI20201012BHJP
   B65H 31/36 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G07D11/00 301
   G07D11/12
   G07D11/16 101H
   G07D11/16 101Z
   G07D11/17
   B25J13/00 Z
   B65H31/26
   B65H31/36
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-135155(P2019-135155)
(22)【出願日】2019年7月23日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】上溝 順亮
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴司
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−171818(JP,A)
【文献】 特開昭61−196396(JP,A)
【文献】 特開2006−082946(JP,A)
【文献】 特開2011−096128(JP,A)
【文献】 特開昭62−293396(JP,A)
【文献】 特開昭62−239293(JP,A)
【文献】 特開2016−031619(JP,A)
【文献】 特開2019−028730(JP,A)
【文献】 特開2016−224664(JP,A)
【文献】 特開昭62−162189(JP,A)
【文献】 実開平02−111883(JP,U)
【文献】 特開2007−083331(JP,A)
【文献】 特開平02−286501(JP,A)
【文献】 特開2011−173635(JP,A)
【文献】 特開2008−195501(JP,A)
【文献】 特開平2−116490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00− 3/16,
9/00−13/00
G07F 19/00
G07G 1/00− 5/00
B25J 1/00−21/02
B65H 31/00−31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣が格納される格納容器から前記紙幣を取り出すためのアームと、
前記アームが取り出した紙幣を搬送するための紙幣搬送装置と、を備え、
前記紙幣搬送装置は、前記アームが取り出した紙幣が投入される紙幣収納部を含み、
前記紙幣収納部には、少なくとも1つの側面の壁部に縦方向に隙間が形成されており、
前記アームは、前記格納容器から取り出した前記紙幣を挟持しながら水平方向の向きを維持した状態で前記隙間の上方から下方へと移動することによって、前記紙幣を前記紙幣収納部に収納する、自動紙幣取扱いシステム。
【請求項2】
紙幣が格納される格納容器から前記紙幣を取り出すためのアームと、
前記アームが取り出した紙幣を搬送するための紙幣搬送装置と、を備え、
前記紙幣搬送装置は、前記アームが取り出した紙幣が投入される紙幣収納部を含み、
前記紙幣収納部には、少なくとも1つの側面の壁部に縦方向に隙間が形成されており、
前記アームは、前記格納容器から取り出した前記紙幣を挟持しながら姿勢を維持した状態で前記隙間の上方から下方へと移動することによって、前記紙幣を前記紙幣収納部に収納する、自動紙幣取扱いシステム。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記アームにより取り出された姿勢の状態で紙幣を搬送する、請求項1または2に記載の自動紙幣取扱いシステム。
【請求項4】
前記搬送装置は、
前記アームが取り出した紙幣が投入される紙幣収納部と、
前記紙幣収納部を前記格納容器から離れる方向に直線的にスライドさせるためのレールとを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の自動紙幣取扱いシステム。
【請求項5】
搬送後の前記紙幣を前記搬送装置に収納した状態で整頓するための整頓機構をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の自動紙幣取り扱いシステム。
【請求項6】
搬送中または搬送終了時に、前記搬送装置の紙幣が前記搬送装置から飛びださないように防止する機構をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の自動紙幣取り扱いシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を搬送したり整理したりする自動紙幣取扱いシステムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「ロボットハンド付きの多関節型ロボットアーム(以下「ハンド付きアーム」ということがある。)を利用した紙幣処理装置」が提案されている(例えば、特開昭62−92095号公報等)。このような紙幣処理装置では、紙幣取揃えユニットで取り揃えられた紙幣束がハンド付きアームのロボットハンドに把持され、多関節型ロボットアームによって紙幣カウント紙幣確認ユニットまで搬送され、紙幣カウント紙幣確認ユニットにて紙幣束が金種別に仕分けされながら金種毎の枚数がカウントされる。そして、金種毎に仕分けされた紙幣束は金種別に別のハンド付きアームによって規定の位置まで搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−92095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、使い勝手のよい自動紙幣取扱いシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1局面に従うと、紙幣が格納される格納容器から紙幣を取り出すためのアームと、アームが取り出した紙幣を搬送するための紙幣搬送装置と、を備える自動紙幣取扱いシステムが提供される。アームは、格納容器から取り出した紙幣の水平方向の向きを維持した状態で紙幣搬送装置に移す。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によれば、使い勝手の良い自動紙幣取扱いシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る自動紙幣取扱いシステムの全体構成を示す平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る自動紙幣取扱いシステムの全体構成を示す右側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る紙幣格納容器の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る第1のアームの側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る第2のアームの側面図である。
図6】本発明の実施の形態に係るロボットハンドの斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係るロボットハンドの側面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る紙幣格納容器の前蓋が開いた状態の紙幣格納容器とロボットハンドとを示す側面図である。
図9】本発明の実施の形態に係るロボットハンドを紙幣格納容器に差し込んだ状態の紙幣格納容器とロボットハンドとを示す斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係るロボットハンドを紙幣格納容器に差し込んだ状態の紙幣格納容器とロボットハンドとを示す側面断面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る搬送装置を示す側面図である。
図12】本発明の実施の形態に係る搬送装置を示す平面図である。
図13】本発明の実施の形態に係る搬送装置の動作を示す第1の側面イメージ図である。
図14】本発明の実施の形態に係る搬送装置の動作を示す第1の側面イメージ図である。
図15】本発明の実施の形態に係るケースと第3のアームとを示す平面図である。
図16】本発明の実施の形態に係る第3のアームの側面図である。
図17】本発明の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
図18】本発明の実施の形態に係る容器種類データを示すイメージ図である。
図19】本発明の実施の形態に係る個別容器データを示すイメージ図である。
図20】本発明の実施の形態に係る鍵データを示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0009】
図1から図2に示すように、本実施の形態にかかる自動紙幣取扱いシステム1は、主に、BOX搬送装置800と、BOXセンサ850と、反転装置860と、第1のアーム200と、第2のアーム300と、紙幣搬送装置500と、プリンタ600と、第4のアーム700と、第3のアーム100と、撮影装置150と、収納部190と、それらを制御する制御装置とを有するものである。本実施の形態においては、これらの装置が、台50の上に載置される。より詳細には、制御装置は、台50の下に収納されており、台50の上には、操作部930と表示部940とが配置されている。
【0010】
台50の前部に搬送装置800が配置される。搬送装置800の後方の左側に第1のアーム200が配置される。搬送装置800の後方の右側に第2のアーム300が配置される。第1のアーム200の後方に第4のアーム700が配置され、第4のアーム700の後方にプリンタ600が配置される。第2のアーム300の後方に第3のアーム100が配置され、第3のアーム100の後方に収納部190が配置される。そして、第1のアーム200と第2のアーム300の間から、第4のアーム700と第3のアーム100の間にかけて、紙幣搬送装置500が配置される。
【0011】
以下、自動紙幣取扱いシステム1を構成する各部の機能や構成や動作などについて説明する。なお、以下では、説明のために、第3のアーム100から第2のアーム300の方に向かって前方といい、第2のアーム300から第3のアーム100の方に向かって後方といい、第1のアーム200から第2のアーム300に向かって右方といい、第2のアーム300から第1のアーム200に向かって左方といい、鉛直上向きを上方といい、鉛直下向きを下方という。換言すれば、図1における上方を各装置の前方といい、図1の下方を各装置の後方といい、図1の右方を各装置の右方といい、図1の左方を各装置の左方といい、図1の紙面の手前方向を各装置の上方といい、図1の紙面の奥方向を各装置の下方という。
<BOX搬送装置800>
【0012】
まず、BOX搬送装置800の構成について説明する。店舗の従業員によって、搬送装置800の端部(図1における上方側)に、図3に示すような紙幣格納容器400が載置される。紙幣格納容器400には紙幣が積層して収容される。搬送装置800は、紙幣格納容器400を第1のアーム200の近傍まで搬送する。
【0013】
本実施の形態においては、紙幣格納容器400には、鍵穴や前蓋の裏側の面に、紙幣格納容器400に関する情報を格納するICタグなどが埋め込まれる。たとえば、ICタグには、紙幣格納容器400に関する各種の情報、たとえば紙幣格納容器400の種類やセットされていた装置の識別情報など、が格納されている。そして、搬送装置800の近傍のカメラ851によって紙幣格納容器400を撮影することによって紙幣格納容器400の種類が特定される。また、搬送装置800の近傍のBOXセンサ850によって、光学センサによる通信とRFIDによる通信を行うことによって、ICタグの各種情報が読み出される。本実施の形態においては、制御装置900(図17参照)は、BOXセンサ850からのデータおよび第2のアーム300に取り付けられている撮像部350からの画像に基づいて、対象となる紙幣格納容器400に関する種類やサイズや鍵穴の位置や鍵穴の角度を取得して、それらの情報を第1のアーム200および第2のアーム300に受け渡す。
【0014】
制御装置900は、鍵穴の方向が第1のアーム200側にない場合、反転装置860を利用して、紙幣格納容器400の向きを変更する。
【0015】
なお、ICタグが埋め込まれた紙幣格納容器400に限らず、赤外線などを利用することによって、BOXセンサ850が紙幣格納容器400に関する各種の情報を読み取ってもよい。たとえば、BOXセンサ850が、ICセンサや赤外線センサやバーコードセンサや近接センサなどを有していることが好ましい。
<第1のアーム200>
【0016】
本実施の形態においては、図4に示すように、第1のアーム200は、紙幣格納容器400の前蓋420を開錠するための鍵210を有する。たとえば、第1のアーム200は、制御装置900からの鍵穴の位置や角度の情報など基づいて、鍵210の位置を前後左右上下に移動させたり、鍵210を回転させたりすることによって鍵210を紙幣格納容器400の鍵穴に差し込む。第1のアーム200は、制御装置900からの指令に基づいて、鍵210を回動させることによって紙幣格納容器400を開錠して、そのまま前蓋420を開ける。より詳細には、制御装置900は、第2のアーム300の撮像部350から得られた画像とに基づいて、鍵穴の上下左右の位置と鍵穴の回転角度とを正確に特定することによって、鍵210が鍵穴に差し込まれるように第1のアーム200に制御命令を送信する。
<第2のアーム300>
【0017】
図5に示すように、第2のアーム300は、多関節型ロボットアーム301の先に紙幣を把持するためのロボットハンド302を取り付けたものである。
【0018】
ロボットハンド302は、図6および図7に示されるように、二指型のロボットハンドであって、図5に示されるように第2のアーム300の先端に取り付けられている。そして、このロボットハンド302は、図6および図7に示されるように、主に、可動フィンガ310、固定フィンガ320、可動フィンガ昇降機構330、連結部340および撮像部350から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0019】
可動フィンガ310は、図6および図7に示されているように基部311、中間部312および爪部313から形成される。基部311は、図6に示されるように略長方形状の厚板部位である。中間部312は、図6に示されるように略台形状の厚板部位であって、基部311の先端から前方Dyに向かって延びている。なお、この中間部312は、前方Dyに向かうに従ってその幅が狭くなっている。爪部313は、図6に示されるように細長い略矩形の厚板部位であって、中間部312の先端から前方Dyに向かって延びている。また、ここで、この爪部313の先端部は図7に示されるように下側に突起した形状となっている。そして、この可動フィンガ310では、図7に示されるように中間部312の基端から爪部313の先端までの部位において中間部312の基端から爪部313の先端に向かうに従って上面が下方に傾斜している。また、図7に示されるように、この爪部313の下面にはラバーシートSrが貼付されている。そして、この可動フィンガ310は、基部311の基端側で可動フィンガ昇降機構330の前側昇降板332f(後述)に固定されている。また、可動フィンガ310と前側昇降板332fの結合強度を高めるために補強板315が配設されている(図6および図7参照)。この補強板315は、可動フィンガ310および前側昇降板332fの両方に固定されている。
【0020】
固定フィンガ320は、図6および図7に示されているように、基部321、中間部322、爪部323および突出部324から形成されている。基部321は、図6に示されるように略長方形状の厚板部位である。中間部322は、図6に示されるように略台形状の厚板部位であって、基部321の先端から前方Dyに向かって延びている。なお、この中間部322は、前方Dyに向かうに従ってその幅が狭くなっている。爪部323は、図6に示されるように細長い略矩形の厚板部位であって、中間部322の先端側の側面の幅方向中央から前方Dyに向かって延びている。この爪部323の上側には、図7に示されるように切欠きCvが設けられている。この結果、爪部323の先端部は図6に示されるように上側に突起した形状となっている。また、この固定フィンガ320では、図7に示されるように爪部323の中間位置から先端までの部位において中間位置から先端に向かうに従って下面が上方に傾斜している。突出部324は、図6に示されるように爪部323と同幅の細長い略矩形の厚板部位であって、爪部323の先端から前方Dyに向かって延びている。また、図7に示される通り、この突出部324の先端位置Tsは、可動フィンガ310の爪部313の先端位置Tmよりも前側に位置している。すなわち、固定フィンガ320の突出部324は、可動フィンガ310の爪部313よりも前方Dyに突出している。さらにこの突出部324には、滑り止めとしてのラバーシート(ゴムシート)Srが貼付されている。図7に示されるように、このラバーシートSrの貼付部位は、可動フィンガ310のラバーシートSrの貼付位置と対向していない。そして、この固定フィンガ320は、可動フィンガ昇降機構330の支持板331(後述)に固定されている。また、固定フィンガ320と支持板331の結合強度を高めるために左右に一対の補強板325が配設されている(図6および図7参照)。これらの補強板325は、固定フィンガ320および支持板331の両方に固定されている。そして、この固定フィンガ320は、図6および図7に示されるように、可動フィンガ310の昇降方向において可動フィンガ310と対向している。
【0021】
可動フィンガ昇降機構330は、図6および図7に示されるように、二段ストローク型の昇降機構であって、主に、支持板331、前側昇降板332f、後側昇降板332r、前側エアシリンダ機構333fおよび後側エアシリンダ機構333rから構成されている。支持板331は、後側エアシリンダ機構333rを支持している。後側エアシリンダ機構333rは、複動式のものであって、後側昇降板332rを昇降させるための駆動源である。そして、この後側エアシリンダ機構333rは、上述の通り支持板331に取り付けられている。後側昇降板332rには、前側エアシリンダ機構333fが取り付けられている。前側エアシリンダ機構333fは、複動式のものであって、前側昇降板332fを昇降させるための駆動源である。そして、上述の通り、前側昇降板332fには、可動フィンガ310が取り付けられている。すなわち、後側エアシリンダ機構333rは、後側昇降板332rを昇降させることによって前側エアシリンダ機構333f、前側昇降板332fおよび可動フィンガ310を昇降させる。一方、前側エアシリンダ機構333fは、前側昇降板332fを昇降させることによって可動フィンガ310を昇降させている。また、図6および図7に示されるように、前側エアシリンダ機構333fおよび後側エアシリンダ機構333rにはそれぞれエア給排気口335,336が設けられている。これらのエア給排気口335,336には、エア給排気管(図示せず)が接続されている。
【0022】
連結部340は、ロボットハンド302を第2のアーム300に連結させる部位であって、例えば、フランジ等である。
【0023】
撮像部350は、例えば、CCDカメラ等の小型カメラであって、図6および図7に示されるように可動フィンガ昇降機構330の支持板331から延びる支持アームSAにより可動フィンガ昇降機構330の右脇に固定されている。なお、この撮像部350は、間欠的に撮像を行いながら撮影した画像の電子データを制御装置(図示せず)に送信する。
【0024】
次に、本実施の形態に係る第2のアーム300が紙幣格納容器400から紙幣の束を抜き出す例を説明する。第2のアーム300の説明に先立ち、紙幣格納容器400について説明する。
【0025】
紙幣格納容器400は、図3に示されるように、主に、筐体410、前蓋420、挟持板411および支持台412a,412bから構成されている。筐体410は、図3に示されるように、前側が開口する直方体状の箱体である。なお、この筐体410の奥行寸法は、固定フィンガ320の長さよりも十分に長い寸法とされている。前蓋420は、略長方形状の板部材であって、ヒンジ等の開閉機構を介して筐体410の開口縁の上側に開閉可能に軸支されている。挟持板411は、支持台412a,412bと協働して紙幣の束MTを挟持する部材であって、筐体410の高さ方向中央よりやや上側に上下移動自在に配設されている。また、この挟持板411の前側中央には半円状の切欠きRsが設けられている。支持台412a,412bは、挟持板411と協働して紙幣の束MTを挟持する左右分離型の支持部材であって、筐体410の下側の左右に固定されている。これらの支持台412a,412b間にはスリットRtが形成されている。スリットRtは、奥行方向に向かって延びている。そして、紙幣格納容器400では、挟持板411が、その上側に配設される付勢部材(コイルスプリング等)によって下方に向かって付勢されている。すなわち、この紙幣格納容器400に収容される紙幣の束MTは、挟持板411によって支持台412a,412bに向かって押し付けられている。そして、この紙幣格納容器400は、図3に示されるように紙幣の長手方向が奥行方向に沿うようにして支持台412a,412bと挟持板411の間に紙幣の束MTを格納する。
【0026】
第2のアーム300が紙幣格納容器400中の紙幣の束MTを抜き出す際、たとえば、制御装置900により第2のアーム300が以下の通りに動作される。
【0027】
先ず、制御装置900が第2のアーム300の動作を制御してロボットハンド302を規定位置に移動させると共に規定方向に向ける(図8参照)。なお、ここで、規定位置は紙幣格納容器400の正面側の位置であり、規定方向は撮像部350が紙幣格納容器400の正面を撮像することができる方向である。
【0028】
次に、制御装置900は、第2のアーム300およびロボットハンド302を制御して可動フィンガ310を最高位置まで引き上げてから、支持台412a,412bのスリットRtに固定フィンガ320の先端部を差し込む(図9および図10参照)。なお、このとき、可動フィンガ310は、挟持板411の切欠きRsの上方に位置し、固定フィンガ320は、紙幣の束MTの直下に位置している(図10参照)。また、この際、固定フィンガ320はスリットRtの中間位置まで挿し込まれるが、可動フィンガ310は挟持板411の切欠きRsの上方位置までしか挿し込まれない(図10参照)。すなわち、固定フィンガ320は紙幣の束MTの長手方向の半分程度の長さに亘って紙幣の束MTの下側面と接触するが、可動フィンガ310は紙幣の束MTの紙幣の束MTの手前側の上側面にしか接触しない(図10参照)。
【0029】
続いて、制御装置900は、可動フィンガ310を下方に移動させて固定フィンガ320と共に紙幣の束MTを把持する。制御装置900は、第2のアーム300の動作を制御してロボットハンド302を後退させ、紙幣格納容器400から紙幣の束MTを抜き取る。
【0030】
そして特に本実施の形態においては、後述するように、制御装置900は、第2のアーム300の動作を制御して、ロボットハンド302の姿勢を変えずに、紙幣の束MTを紙幣搬送装置500に受け渡すものである。これによって、第2のアーム300は、次の紙幣格納容器400に対する鍵穴の撮影処理や紙幣の取り出し処理に速やかに移行することが可能になっている。
<紙幣搬送装置500>
【0031】
図1に示すように、紙幣搬送装置500は、台50の略中央部に配置され、第2のアーム300から受け渡された紙幣の束MTを、そのままを態勢で素早く第3のアーム100の近傍まで移動させるものである。図11および図12を参照して、紙幣搬送装置500は、紙幣を収納するための収納部510と、収納部510を第1のアーム200の横から第3のアーム100の横まで移動させるためのスライド機構520と、紙幣を整えるための整頓機構530とを含む。
【0032】
収納部510は、紙幣が載置される底面511と、紙幣が収納部510からはみ出さないように紙幣の4隅の囲むための壁部512,512,512,512とを含む。壁部512,512,512,512の幅や位置関係は、複数の国の複数の紙幣に対応しやすいものであることが好ましい。換言すれば、比較的大きな紙幣に関しては、紙幣と壁部512,512,512,512との間の隙間が小さく、比較的小さな紙幣に関しては、紙幣と壁部512,512,512,512との隙間が大きくなる。たとえば、壁部512,512,512,512で囲まれるスペースのサイズは、紙幣格納容器の内寸よりも若干広めに形成されている。
【0033】
底面511には、後述するように、第2のアーム300のロボットハンド302の固定フィンガ320を後方に引き抜いたりするための溝部511Xが前後方向に形成される。また、底面511には、第3のアーム100の固定フィンガ120が入り込むための溝部511Yが左右方向に形成される。
【0034】
なお、本実施の形態にかかる収納箱510は、上方が開口され、紙幣の束MTを投入するための第2のアーム300が通過するための隙間、すなわち後側の2つの壁部512,512の間、が側面に設けられ、紙幣の束MTを抜き取るための第3のアーム100が通過するための隙間、すなわち右側の2つの壁部512,512の間、が側面に設けられるものであるが、収納部510の形状に関しては、素早く紙幣の束MTを投入できればよく、このような形態には限られない。たとえば、1つの側面だけに隙間が形成されて、当該隙間を第1のアーム200と第2のアーム300とが共用する形態であってもよい。
【0035】
また、スライド機構520に関しては、収納部510を前後方向にスライドできればよく、特に形態は限定するものではない。たとえば、先端に収納部510が取り付けられたアクチュエータをモータによって摺動させてもよいし、モータによって駆動される駆動ローラや従動ローラなどを利用して収納部510と共に移動するチェーンやベルトを駆動してもよい。
【0036】
図13および図14を参照して、本実施の形態にかかる紙幣搬送装置500の動作について説明する。まず通常状態においては、紙幣搬送装置500の収納部510は、第3のアーム100の近傍に待機している。この状態で、紙幣格納容器400がBOX搬送装置800によって第2のアーム300の近傍まで搬送され、第1のアーム200によって開錠され、前蓋420が開放される。
【0037】
図13(A)に示すように、第2のアーム300はロボットハンド302を紙幣格納容器400に差し込んで、紙幣の束MTを掴み出す。なお、第2のアーム300は、ロボットハンド302を紙幣格納容器400に差し込んで紙幣の束MTを一旦手前に少し引っ張り出してから、ロボットハンド302を紙幣格納容器400に再度差し込んで紙幣の束MTをしっかり掴み直すことが好ましい。
【0038】
図13(B)に示すように、第2のアーム300が、紙幣格納容器400から紙幣を引き出す。
【0039】
本実施の形態においては、図13(C)に示すように、第2のアーム300は、紙幣格納容器400から紙幣を引き出してから、撮像部350によって紙幣格納容器400の内側を撮影して紙幣が残っていないか確認する。
【0040】
紙幣が残っていないことが確認できると、図13(D)に示すように、制御装置900が、スライド機構520を利用して収納部510を前方、すなわち第2のアーム300の近傍まで移動させる。より詳細には、スライド機構520が収納部510を第2のアーム300の基部の左隣まで移動させる。
【0041】
図14(A)に示すように、第2のアーム300の多関節型ロボットアーム301が、ロボットハンド302の姿勢を変えずに、ロボットハンド302を収納部510の直上に移動させる。
【0042】
図14(B)に示すように、第2のアーム300の多関節型ロボットアーム301が、ロボットハンド302の姿勢を変えずに、ロボットハンド302を収納部510内に移動させる。本実施の形態においては、第2のアーム300の多関節型ロボットアーム301が、ロボットハンド302の姿勢を変えずに、ロボットハンド302を下降させる。換言すれば、ロボットアーム301は、ロボットハンド302自体の向きや傾きを維持した状態で、ロボットハンド302を下方へ移動させるものである。
【0043】
このとき、ロボットハンド302の爪部313,323が収納部510内、すなわち壁部512,512,512,512の内側を下降して、ロボットハンド302の基部311,321が収納部510の外側を下降する。換言すれば、ロボットハンド302の中間部312,322または基部311,321が後側の2つの壁部512,512間を通って下降する。
【0044】
図14(C)に示すように、第2のアーム300は、ロボットハンド302が収納部510の底面511に達すると、紙幣の束MTの挟持を終了して、ロボットハンド302を収納部510から引き出す。すなわち、爪部313,323が、溝部511Xや、後側の2つの壁部512,512の間を通って後方へと引き抜かれる。第2のアーム300の多関節型ロボットアーム301が、ロボットハンド302を紙幣搬送装置500の経路上から外れた位置、たとえば紙幣格納容器400の鍵穴の撮影位置、に移動させる。
【0045】
図14(D)に示すように、制御装置900は、スライド機構520を利用して、収納部510を後方、すなわち第3のアーム100の近傍まで移動させる。特に本実施の形態においては、スライド機構520の後端部には、壁部512,512,512,512に囲まれた紙幣の束MTの角を整えるための整頓機構530が取り付けられている。
【0046】
整頓機構530は、縦長の樹脂製部材であって、前後方向に移動可能に構成されている。そして、整頓機構530は、収納部510がスライド機構520の後端部に移動してきたときに、整頓機構530の前端部が壁部512,512の内側にまで入り込む位置に配置されている。これによって、収納部510が、勢いよく後方へ移動して、スライド機構520の後端部で急に停止しても、紙幣が先に整頓機構530に接触して勢いを失うため、紙幣が後側の壁部512,512の間から外へ飛び出したり、紙幣が後側の壁部512,512に衝突して収納部510から上方へ飛び出したりする可能性を低減することができる。
【0047】
収納部510がスライド機構520の後端部に停止すると、第4のアーム700によって用紙が載置され、整頓機構530が前後方向に振動する。これによって、整頓機構530の前端部によって紙幣が前側の壁部512,512に押し付けられ、その結果、紙幣の束MTの角が整えられる。
【0048】
このように本実施の形態においては、図13の(A)(B)に示すように、ロボットアーム301は、ロボットハンド302を水平にした状態かつ前後方向に向けた状態を維持したままで、紙幣格納容器400に差し込んで紙幣の束MTを掴み出す。図13の(C)に示すように、ロボットアーム301は、紙幣格納容器400内を撮影するためにロボットハンド302を上下方向に向けるが、左右方向に振らないことが好ましい。そして、図13(D)から図14(C)に示すように、ロボットアーム301は、ロボットハンド302を水平にした状態かつ前後方向に向けた状態を維持したままで、収納部510の直上へ移動させてから、収納部510の内部まで下降させる。つまり、本実施の形態においては、ロボットハンド302を、紙幣を掴む方向と直角な方向、たとえば平面視において左右方向、に振る動作を減らすことによって、紙幣をこぼれさせずにロボットハンド302を高速で移動させることが可能になる。
【0049】
なお、ロボットハンド302を上下方向に振る動作を行わない形態であってもよい。すなわち、ロボットアーム301は、ロボットハンド302を水平にした状態かつ前後方向に向けた状態を維持したままで、紙幣格納容器400に差し込んで紙幣の束MTを掴み出して、収納部510の直上へ移動させてから、収納部510の内部まで下降させてもよい。つまり、ロボットハンド302を振る動作を減らすことによって、紙幣をこぼれさせずにロボットハンド302を高速で移動させることが可能になる。
<プリンタ600>
【0050】
プリンタ600は、紙幣の束MTが対象となる紙幣格納容器400から取り出したものであることを示す情報を用紙に印字して、当該用紙を排出する。より詳細には、本実施の形態においては、制御装置900は、BOXセンサ850から紙幣格納容器400に関する各種情報を取得する。制御装置900は、紙幣格納容器400の識別情報をプリンタ600に送信する。プリンタ600は、紙幣格納容器400の識別情報を用紙に印字して、当該用紙を排出する。
<第4のアーム700>
【0051】
第4のアーム700は、紙幣搬送装置500が紙幣を後方に搬送してくると、プリンタ600の用紙排出部にある用紙を把持する。なお、当該用紙には、プリンタ600によって、当該紙幣を格納していた紙幣格納容器400の識別情報が印字されている。第4のアーム700は、掴んだ用紙を収納部510内の当該紙幣の上面に載置する。その後、整頓機構530によって、用紙と紙幣の束MTとが一緒に整頓される。
【0052】
より詳細には、本実施の形態においては、整頓機構530によって紙幣の束MTを前後方向に整頓し、第4のアーム700によって紙幣の束MTを左右方向へ整頓する。本実施の形態においては、この二つの動作によって、収納部510の右上角へ紙幣の束MTを整頓する。
<第3のアーム100>
【0053】
第3のアーム100は、図15および図16に示されるように、主に、ロボットハンド110およびロボットアームRAから構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0054】
ロボットハンド110は、図15および図16に示されるように、二指型のロボットハンドである。また、ロボットハンド110は、ロボットアームRAの先端に固着されている。そして、このロボットハンド110は、図16に示されるように、主に、可動指111、固定指112、可動指往復動機構113、引きずり防止部117、引きずり防止部往復動機構118および連結部119から構成されている。
【0055】
可動指111は、図15および図16に示されるように、紙幣の束MTを把持するための二股形の部位である。可動指111の二指の両方が、固定指112(後述)と略平行に対向している厚版部位である。なお、可動指111は、可動指往復動機構113の第1昇降板114(後述)に固定されている。また、可動指111の側面には、マーカーが表示されている。
【0056】
固定指112は、図16に示されるように、紙幣の束MTを把持するための二股形(図示せず)の部位である。固定指112の二指の両方が、可動指111と略平行に対向している厚版部位である。なお、固定指112は、可動指往復動機構113の支持板116(後述)に固定されている。また、この固定指112において、可動指111のマーカー表示面の同じ側の側面には、マーカーが表示されている。可動指111および固定指112に表示されたマーカーは、可動指111および固定指112の対向方向に平行な方向に沿って並んでいる。
【0057】
可動指往復動機構113は、図16に示されるように、主に、第1昇降板114、第2昇降板115および支持板116から構成されている。第2昇降板115は第1昇降板114を支持しており、支持板116は第2昇降板115を支持している。第1昇降板114および第2昇降板115は、それぞれに配設される機構(例えば、エアシリンダ機構等)(図示せず)によってそれぞれ昇降させられる。つまり、第1昇降板114および第2昇降板115が昇降することで、第1昇降板114に固定された可動指111も昇降することになる。このため、固定指112および昇降する可動指111の間で紙幣の束MTを把持することが可能であり、さらに把持状態を解除することも可能である。
【0058】
引きずり防止部117は、図16に示されるように、矩形の板状部材であって、引きずり防止部往復動機構118(後述)の先端に固定されている。引きずり防止部117は、引きずり防止部往復動機構118によって前後方向に往復動させられる。
【0059】
引きずり防止部往復動機構118は、ロボットハンド110が紙幣の束MTの搬送先から退避する際に紙幣の束MTを引きずることを防止するための機構であって、図18に示されるように、固定指112の二指間に位置して固定指112と略平行になるように配設されており、可動指往復動機構113の支持板116に固定されている。また、引きずり防止部往復動機構118は、往復動する機構(例えば、エアシリンダ機構等)(図示せず)であると共に、引きずり防止部117を前後方向に往復動させる。
【0060】
引きずり防止部117および引きずり防止部往復動機構118が上述の通りに構成されることによって、紙幣の束MTを把持しているロボットハンド110が紙幣の束MTを搬送先に搬送して把持状態を解除して搬送先から退避する際に、引きずり防止部往復動機構118が前方に移動することで引きずり防止部117が紙幣の引きずりを防止する。このため、ロボットハンド110が退避する際に、紙幣の束MTが崩れることを防ぐことができる。
【0061】
連結部119は、図16に示されるように、ロボットハンド110をロボットアームRAに連結させる部位であって、例えば、フランジ等である。
【0062】
ロボットアームRAは、例えば、既存の多軸ロボットアームである。ロボットアームRAの基端は、図15および図16に示されるように、回転自在となるように固定台に取り付けられている。
【0063】
本実施の形態においては、第3のアーム100の近傍に撮影装置150が配置される。撮影装置150は、例えば、CCDカメラ等のデジタル式カメラであって、図15に示されるように、ロボットハンド110が点線で示される紙幣の束(破線)MTを把持した際にロボットハンド110の側面を撮影できる位置に配設されている。撮影装置150は、紙幣の束MTを把持している状態のロボットハンド110の可動指111と固定指112の側面を1画像におさまるように撮影して撮影データを取得する。そして、撮影装置150は、制御装置900からの制御信号に従って撮影データを制御装置900に送信する。なお、撮影装置150における一連の処理は、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持してから紙幣の束MTの搬送を始めるまでの間に行われる。
【0064】
本実施の形態においては、制御装置900が、撮影装置150から送られてくる撮影データに基づいたロボットハンド110の可動指111および固定指112のマーカー間の距離から紙幣の束MTの厚みを計測する。制御装置900は、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持している時のマーカー間の距離を撮影データから分析して計算することで紙幣の束MTの厚みを計測する。そして、制御装置900は、紙幣の束MTの厚みデータ(以下、「厚みデータ」という)に応じた紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を導出する。制御装置900は、例えば、厚みデータを後述するメモリに格納されている制御テーブルと照合して、厚みデータに対応する搬送速度および旋回半径を導出してもよいし、厚みデータから搬送速度を計算する計算式および厚みデータから旋回半径を計算する計算式に厚みデータを代入して、厚みデータに対応する搬送速度および旋回半径を導出してもよい。そして、制御装置900は、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径のデータを第3のアーム100に送信する。なお、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御することは、ロボットハンド110の搬送速度および旋回半径を制御することになる。
【0065】
次に、第3のアーム100による紙幣の収納処理の制御例について説明する。なお、ここで、紙幣の束MTの搬送先の一例として、図15に示されるようにターンテーブルTAの上に装着されたケースCAを採用している。この例は、本発明を限定するものでないことに留意すべきである。
【0066】
まず、制御装置900は、ロボットアームRAを制御して、所定位置に待機されたロボットハンド110が紙幣の束(図15の破線参照)MTを把持できる位置にロボットハンド110を移動させる。そして、制御装置900は、ロボットハンド110の可動指往復動機構113を制御して、あらかじめ上方に引き上げられていたロボットハンド110の可動指111を下方に移動させて固定指112と共に紙幣の束MTを把持させる。なお、ここで、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持しやすいように、紙幣の束MTはあらかじめ取り揃えられていることが好ましい。
【0067】
次に、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持している状態で、撮影装置150がロボットハンド110の可動指111と固定指112の側面を1画像におさまるように撮影する。撮影装置150は、撮影データを制御装置900に送信する。これら一連の処理は、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持してから第3のアーム100が紙幣の束MTの搬送を始めるまでの間に行われる。
【0068】
続いて、制御装置900が、撮影装置150から送信された撮影データを受信する。制御装置900は、撮影データにおけるロボットハンド110の可動指111と固定指112との位置関係から紙幣の束MTの厚みを計測する。そして、制御装置900は、厚みデータに対応する紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を導出し、それらのデータを第3のアーム100の制御部に送信する。これら一連の処理も、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持してから第3のアーム100が紙幣の束MTの搬送を始めるまでの間に行わる。そして、第3のアーム100は、導出された紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を利用して以下に記載される制御を実行する。
【0069】
制御装置900は、例えば、紙幣の束MTの厚みが厚くなるほど、紙幣の束MTの搬送速度を低下させて旋回半径を短くする。また、制御装置900は、紙幣の束MTの厚みが薄くなるほど、紙幣の束MTの搬送速度を上昇させて旋回半径を長くする。ただし、制御装置900は、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径のそれぞれに設定された最大値および最小値の範囲内で紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御する。そして、制御装置900は、ロボットアームRAを制御して紙幣の束MTを搬送先であるケースCAに搬送させる。なお、制御装置900は、紙幣の束MTがケースCAの中で順次積み上がるようにロボットアームRAを制御する。
【0070】
続いて、制御装置900は、ロボットアームRAを制御して、ロボットハンド110の可動指111および固定指112をケースCAの奥側にまで差し入れさせた後、引きずり防止部往復動機構118を制御して引きずり防止部117を前方に移動させると共に、可動指往復動機構113を制御して可動指111を上方に引き上げて把持状態を解除して紙幣の束MTを手放させる。そして、制御装置900は、ロボットアームRAを制御して、ロボットハンド110の傾斜角度を維持したままロボットハンド110をケースCAから退避させる。この時、引きずり防止部往復動機構118は前方に移動しているため、引きずり防止部117が紙幣の束MTの引きずりを防止する。そして、制御装置900は、ロボットハンド110がケースCAから完全に退避してから引きずり防止部往復動機構118を制御して引きずり防止部117を後方に引き戻す。最後に、制御装置900は、ロボットアームRAを制御して、ロボットハンド110を所定位置まで移動させて次の紙幣の束MTの搬送に備えさせる。
<収納部190>
【0071】
図15を参照して、収納部190は、ターンテーブルTAと、複数のケースCAとを含む。本実施の形態においては、2つのケースCAが、ターンテーブルTA上に互いに背中合わせとなるように配置される。第1のケースCAが、第3のアーム100の方を向き、第2のケースが、第3のアーム100と反対の方を向く。
【0072】
制御装置900は、撮影装置150からの画像データに基づいて第3のアーム100が掴んだ紙幣の束MTの厚みを計算し、当該紙幣の束MTの厚みを積算していくことによって第1のケースCAに積まれた紙幣の量を計算する。制御装置900は、第1のケースCAに所定量以上の紙幣が積まれると、ターンテーブルTAを回動させて第2のケースCAを第3のアーム100の方を向かせる。作業員は、この間に、第1のケースCAをターンテーブルから取り外して、次の作業を行うための装置に移動させる。
<制御装置900>
【0073】
次に、図17を参照しながら、制御装置900の構成について説明する。制御装置900は、CPU910や、メモリ920や、ディスプレイ930や、操作部940や、通信インターフェイス960などを搭載する。そして、CPU910は、メモリ920のプログラムに従って、自動紙幣取扱いシステム1の各部や制御装置900の各部を制御する。CPU910は、操作部940からの命令を受け付けたり、自動紙幣取扱いシステム1の動作状態をディスプレイ930に表示したりする。また、CPU910は、通信インターフェイス960を介して、自動紙幣取扱いシステム1の各部からデータを取得したり、自動紙幣取扱いシステム1の各部に制御したりする。
【0074】
たとえば、メモリ920は、図18に示すような容器種類データ921を記憶する。容器種類データ921は、紙幣格納容器の種類毎に、紙幣格納容器のサイズと、鍵穴の位置と、鍵穴の角度と、鍵の種類などを格納する。
【0075】
また、メモリ920は、図19に示すような個別容器データ922を記憶する。個別容器データ922は、紙幣格納容器の毎に、識別情報と、紙幣格納容器の種類と、セットされていた装置と、前回紙幣を回収した日時などを格納する。
【0076】
これによって、CPU910は、BOXセンサ850から受け取った情報に基づいて、個別容器データ922を参照することによって対象となる紙幣格納容器400の種類を特定したり、容器種類データ921を参照することによって鍵穴の位置や角度を特定したりする。そして、CPU910は、通信インターフェイス960を介して、鍵穴の位置や角度を第1のアーム200に送信する。
【0077】
また、CPU910は、第3のアーム100の撮影装置150からのデータに基づいて、今回掴んだ紙幣の束MTの厚みを計算したり、蓄積された紙幣の厚みをメモリ920に格納したり、所定の量の紙幣がケースCAに貯まったときに、ターンテーブルTAを回動させたりする。
<第2の実施の形態>
【0078】
第1のアーム200は、紙幣格納容器400の種類に応じた複数種類の鍵を有してもよい。そして、BOXセンサ850による検知によって、紙幣格納容器400に応じた鍵で前蓋420を開錠してもよい。
【0079】
より詳細には、制御装置900のメモリ920は、図20に示すような、鍵データ923を記憶する。鍵データ923は、鍵の種類毎に、識別情報と、基準となる鍵の位置に対する当該鍵の位置の補正値と、基準となる鍵の角度に対する当該鍵の角度の補正値と、当該鍵のサイズすなわち幅や高さや奥行きなど、を格納する。
【0080】
これによって、CPU910は、BOXセンサ850から受け取った情報に基づいて、個別容器データ922を参照することによって対象となる紙幣格納容器400の種類を特定したり、容器種類データ921を参照することによって鍵穴の位置や角度を特定したり、紙幣格納容器400に応じた鍵の種類や各種の補正値を特定したりする。そして、CPU910は、通信インターフェイス960を介して、鍵穴の位置や角度や鍵の種類や補正値を第1のアーム200に送信する。これによって、第1のアーム200は、補正値によって位置や角度を補正しながら、紙幣格納容器400の鍵穴に指定された鍵を差し込で開錠する。
<第3の実施の形態>
【0081】
また、上記の実施の形態においては、第2のアーム300は、紙幣格納容器400内の紙幣の束MTを掴んで、当該紙幣の姿勢を維持した状態で収納部510に紙幣を投入するものであった。しかしながら、第2のアーム300は、紙幣の姿勢を変えて収納部510に紙幣を投入してもよい。
【0082】
より詳細には、第2のアーム300が、1つの紙幣格納容器400内の紙幣を掴んでから、より素早く次の紙幣格納容器400の鍵穴を撮影できたり、より素早く次の紙幣格納容器400内の紙幣を掴めるようにできたりすることが好ましい。そのためには、姿勢が少しぐらい変わっても、搬送装置500によって第1のアーム200の紙幣を紙幣格納容器400から素早く遠ざけることができればよい。
<第4の実施の形態>
【0083】
上記の実施の形態の構成に限らず、各装置の役割が別の装置によって担われてもよいし、1つの装置の役割が複数の装置によって分担されてもよいし、複数の装置の役割が1つの装置によって担われてもよい。
【0084】
たとえば、第1のアーム200の機能を第2のアーム300が有していてもよいし、逆に、第2のアーム300の機能を第1のアーム200が有していてもよい。あるいは、第2のアーム300の撮影機能だけを第1のアーム200やさらに別のアームが有していてもよい。
【0085】
あるいは、たとえば、自動紙幣取扱いシステム1の制御構成なども、上記のものに限られない。たとえば、BOX搬送装置800と、BOXセンサ850と、反転装置860と、第1のアーム200と、第2のアーム300と、紙幣搬送装置500と、プリンタ600と、第4のアーム700と、第3のアーム100と、撮影装置150と、収納部190などの少なくともいずれかが、自身のコンピュータを持たずに、制御装置900によって直接制御されてもよい。
【0086】
あるいは逆に、BOX搬送装置800と、BOXセンサ850と、反転装置860と、第1のアーム200と、第2のアーム300と、紙幣搬送装置500と、プリンタ600と、第4のアーム700と、第3のアーム100と、撮影装置150と、収納部190などの少なくともいずれかが、プロセッサやメモリなどのコンピュータを自身で有することによって、制御装置900からは大まかな指令だけを受けて、細かい処理や計算をローカルで実行したり判断したりしてもよい。
<まとめ>
【0087】
上記の実施の形態においては、紙幣が格納される格納容器から紙幣を取り出すためのアームと、アームが取り出した紙幣を搬送するための紙幣搬送装置と、を備える自動紙幣取扱いシステムが提供される。アームは、格納容器から取り出した紙幣の水平方向の向きを維持した状態で紙幣搬送装置に移す。
【0088】
上記の実施の形態においては、紙幣が格納される格納容器から紙幣を取り出すためのアームと、アームが取り出した紙幣を搬送するための紙幣搬送装置と、を備える自動紙幣取扱いシステムが提供される。アームは、格納容器から取り出した紙幣の姿勢を維持した状態で紙幣搬送装置に移す。
【0089】
好ましくは、搬送装置は、アームにより取り出された姿勢の状態で紙幣を搬送する。
【0090】
好ましくは、搬送装置は、アームが取り出した紙幣が投入される紙幣収納部と、紙幣収納部を格納容器から離れる方向に直線的にスライドさせるためのレールとを含む。
【0091】
好ましくは、搬送後の紙幣を搬送装置に収納した状態で整頓するための整頓機構をさらに備える。
【0092】
好ましくは、自動紙幣取扱いシステム1は、紙幣の搬送中または搬送終了時に、搬送装置の紙幣が搬送装置から飛びださないように防止する機構をさらに備える。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 :自動紙幣取扱いシステム
50 :台
100 :第3のアーム
110 :ロボットハンド
111 :可動指
112 :固定指
113 :可動指往復動機構
114 :第1昇降板
115 :第2昇降板
116 :支持板
117 :防止部
118 :防止部往復動機構
119 :連結部
120 :固定フィンガ
150 :撮影装置
190 :収納部
200 :第1のアーム
210 :鍵
300 :第2のアーム
301 :多関節型ロボットアーム
302 :ロボットハンド
310 :可動フィンガ
311 :基部
312 :中間部
313 :爪部
315 :補強板
320 :固定フィンガ
321 :基部
322 :中間部
323 :爪部
324 :突出部
325 :補強板
330 :可動フィンガ昇降機構
331 :支持板
332f :前側昇降板
332r :後側昇降板
333f :前側エアシリンダ機構
333r :後側エアシリンダ機構
335 :エア給排気口
336 :エア給排気口
340 :連結部
350 :撮像部
400 :紙幣格納容器
410 :筐体
411 :挟持板
412a :支持台
412b :支持台
420 :前蓋
500 :紙幣搬送装置
510 :収納部
511 :底面
511X :溝部
511Y :溝部
512 :壁部
520 :スライド機構
530 :整頓機構
600 :プリンタ
700 :第4のアーム
800 :BOX搬送装置
850 :BOXセンサ
860 :反転装置
900 :制御装置
910 :CPU
920 :メモリ
930 :ディスプレイ
940 :操作部
960 :通信インターフェイス
CA :紙幣蓄積収納ケース
MT :紙幣の束
【要約】
【課題】使い勝手のよい自動紙幣取扱いシステムを提供する。
【解決手段】紙幣MTが格納される格納容器400から紙幣を取り出すためのアーム300と、アーム300が取り出した紙幣MTを搬送するための紙幣搬送装置500と、を備える自動紙幣取扱いシステム1が提供される。アーム300は、格納容器400から取り出した紙幣MTの水平方向の向きを維持した状態で紙幣搬送装置500に移す。
【選択図】図13
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20