特許第6773863号(P6773863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773863ミステリー駆動の機械式又は電気機械式の計時器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773863
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ミステリー駆動の機械式又は電気機械式の計時器
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/02 20060101AFI20201012BHJP
   G04B 19/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G04B45/02
   G04B19/02 Z
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-148716(P2019-148716)
(22)【出願日】2019年8月14日
(65)【公開番号】特開2020-38202(P2020-38202A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年8月14日
(31)【優先権主張番号】18192682.5
(32)【優先日】2018年9月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエルパスクワーレ・トルトーラ
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−142190(JP,A)
【文献】 特開2009−85758(JP,A)
【文献】 特表2005−537523(JP,A)
【文献】 実開平3−16090(JP,U)
【文献】 実開平2−63486(JP,U)
【文献】 特表2006−515060(JP,A)
【文献】 特表2010−506143(JP,A)
【文献】 スイス国特許出願公開第707437(CH,A3)
【文献】 特表2010−518355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 − 99/00
G04C 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(4)の境界を形成している腕時計ケース(2)を有する機械式又は電気機械式の計時器であって、
この腕時計ケース(2)は、底部において前記腕時計ケース(2)の境界を形成している裏部(6)と、上部において前記腕時計ケース(2)を閉じ有効表示開口(12)を定める光透過板(8)と、前記裏部(6)と前記光透過板(8)を互いに接続するミドル部(10)と、前記腕時計ケース(2)の前記内部空間(4)に収容される時計用ムーブメント(22)と、及びパイプ(36)に固定され情報を表示する少なくとも1つの針(18)とを有し、
この針(18)は、前記有効表示開口(12)を介して目に見えるようになり、少なくとも部分的に前記有効表示開口(12)内にて延在している少なくとも1つの駆動ベルト(30)によって前記腕時計ケース(2)に対して前記時計用ムーブメント(22)によって回転し、
当該計時器においては、前記腕時計ケース(2)の前記内部空間(4)が流体(34)で充填され、この流体(34)に前記少なくとも1つの駆動ベルト(30)が浸漬され、前記駆動ベルト(30)が前記流体(34)の光学的屈折率と実質的に等しい光学的屈折率を有する材料によって作られている
ことを特徴とする計時器。
【請求項2】
前記駆動ベルト(30、32)が作られている材料の光学的屈折率に対する前記流体(34)の光学的屈折率の比は、0.9〜1.1である
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器。
【請求項3】
前記流体(34)は光透過性である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の計時器。
【請求項4】
前記流体(34)及び前記少なくとも1つの駆動ベルト(30)は、色付けされており、有色の外観を強調するように可視スペクトルの一部をフィルタリングする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の計時器。
【請求項5】
前記流体は、浮遊する光不透過性の粒子を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の計時器。
【請求項6】
前記流体(34)は、液体又は油槽の油である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の計時器。
【請求項7】
前記少なくとも1つの駆動ベルト(30)を作るために用いられる材料は、蛍光性又はリン光性の顔料を含有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の計時器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの駆動ベルト(30)が作られている材料は、1〜10%の割合で蛍光性又はリン光性の顔料を含有する
ことを特徴とする請求項7に記載の計時器。
【請求項9】
前記駆動ベルト(30)はシリコーンによって作られている
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の計時器。
【請求項10】
前記少なくとも1つの駆動ベルト(30)は、空欠部がある形状をしており、前記少なくとも1つの針(18、20)が固定マウントされているパイプ(36)の歯列(50)と係合している
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の計時器。
【請求項11】
前記歯列(50)は光透過性であり、空欠部がある形状の前記少なくとも1つの駆動ベルト(30)の光学的屈折率と実質的に等しい光学的屈折率を有する
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器。
【請求項12】
前記時計用ムーブメント(22)は、前記有効表示開口(12)の外側に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の計時器。
【請求項13】
前記裏部(6)は光透過性である
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の計時器。
【請求項14】
別のパイプ(38)に固定される別の針(20)が、前記有効表示開口(12)内に配置されており、
少なくとも部分的に前記有効表示開口(12)において延在している別の駆動ベルト(32)によって前記時計用ムーブメント(22)によって前記腕時計ケース(2)に対して回転し、
この別の駆動ベルト(32)は、前記流体(34)と実質的に同じ光学的屈折率を有する
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の計時器。
【請求項15】
前記針(18、20)の一端(18a、20a)のみが目に見え、
前記針(18、20)の前記一端(18a、20a)を前記パイプ(36、38)に接続する部分(18b、20b)は、光学的屈折率が前記流体(34)の光学的屈折率と同じ又は非常に近い材料によって作られている
ことを特徴とする請求項14に記載の計時器。
【請求項16】
前記腕時計ケース(2)の前記内部空間(4)には気体ポケットがない
ことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器に関し、特に、腕時計や懐中時計のような移動させて用いることに適している計時器に関する。本発明は、より詳細には、ミステリー(不思議)駆動の機械式又は電気機械式の計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「機械式又は電気機械式の計時器」は、時針と分針のような時間又は他の情報を示すメンバーがバレルばね(機械式ムーブメントの場合)又は電源(電気機械式ムーブメントの場合)によってパワー供給される時計用ムーブメントによって駆動されるような計時器、特に、腕時計、を表す。
【0003】
機械式又は電気機械式のムーブメントを備える計時器については、研究開発が行われており、その設計者は独創性と創造性を強めている。特に、複雑機構、計時器の機械式ムーブメントの改善、又は設計革新に関連する開発がたくさん行われている。
【0004】
国際特許出願WO2004/006026は、駆動ベルトによって時間表示針を駆動する機械式ムーブメントを有する計時器について記載している。この時間表示針は、表盤の上で回転し、計時器の光透過板を通して目に見える。表盤は光不透過性であり、機械式ムーブメントと駆動ベルトを隠している。
【0005】
表盤がなかったり光透過性の表盤を有していたりして針の下にある腕時計ケースの内部空間をユーザーに見せている計時器がある。上記の計時器にこのような構成を採用すると、針駆動ベルトをユーザーが見ることができるようになる。
【0006】
表盤がなかったり光透過性の表盤を有していたりする計時器を設計する利点は、時計用ムーブメントを構成する様々な部品を所有者が詳細に見ることができることに基づいている。これらの部品のうちのいくつかの運動は知覚可能でないようにすることができる。このような計時器は、このような時計用ムーブメントが動作するまでの多くの努力を評価することができる所有者にとって非常に魅力的になる。
【0007】
ミステリー駆動タイプの計時器の場合には付加的な困難を克服しなければならない。このようないわゆるミステリー計時器は、その針が何もないところで空中浮揚しているような感覚を与えるために、その所有者を魅了し感心させている。その所有者は、浮遊している針がどのような目に見えない力で動いているのか、あるいはどのようにして万有引力の法則を回避することができているのかを探ろうとする。実際に、通常表盤が厳密に透明であるようなこのようなミステリー計時器においては、針と接続している部品が見えることはない。
【0008】
したがって、針駆動機構をどうにかして識別せずに針の裏にある腕時計ケースの内部空間を所有者が識別することができるようなミステリー駆動タイプの機械式又は電気機械式の計時器の需要がある。また、裏部が光透過性であってユーザーが一方の側から他方の側へと腕時計の裏部の光透過板まで透けて見ることができるような腕時計ケースを有する計時器の需要がある。そのようになっていると、駆動機構のミステリーの特徴がさらに強くなる。また、実装が単純であり、時間又は時間に関連する又は関連しない別の量を表示するメンバーの駆動をまったく知覚できないようにする新しいタイプの駆動機構を有するミステリー計時器の商業的な需要がある。
【0009】
本発明は、これらの要件の1つ又はそれ以上を満たす計時器を提供することを目標とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、時間に関連している量や時間に関連していない量を表示する少なくとも1つのメンバーを駆動するミステリー駆動ムーブメントを有する機械式又は電気機械式の計時器を提供することである。具体的には、本発明の目的は、計時器、例えば、腕時計、の所有者によってまったく知覚することができず、実装が幾分単純であるようなミステリー駆動機構を提供することである。実装が幾分単純であると、控えめな価格となり、したがって、購入者が購入しやすいようなミステリー計時器を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、内部空間の境界を形成している腕時計ケースを有する機械式又は電気機械式の計時器に関する。この腕時計ケースは、底部において前記腕時計ケースの境界を形成している裏部と、上部において前記腕時計ケースを閉じ有効表示開口を定める光透過板と、前記裏部と前記光透過板を互いに接続するミドル部と、前記腕時計ケースの前記内部空間に収容されるムーブメントと、及び情報を表示する少なくとも1つの針とを有する。この針は、前記有効表示開口を介して目に見えるようになり、少なくとも部分的に前記有効表示開口内にて延在している少なくとも1つのベルトによって前記腕時計ケースに対して前記ムーブメントによって回転する。当該計時器においては、前記腕時計ケースの前記内部空間が流体で充填され、この流体に前記少なくとも1つのベルトが浸漬され、前記ベルトが、前記流体の光学的屈折率と実質的に等しい光学的屈折率を有する材料によって作られている。
【0012】
本発明の特定の実施形態は、以下の特徴を有する。
− 前記少なくとも1つのベルトが浸漬される流体は光透過性である。
− 前記少なくとも1つの駆動ベルトを作るために用いられる材料は、蛍光性又はリン光性の顔料を含有する。
− 前記少なくとも1つの駆動ベルトが作られている材料は、蛍光性又はリン光性の顔料を1〜10%の割合で含有する。
− 有効表示開口の外側にムーブメントが配置される。
− 裏部は光透過性の板によって形成される。
− 流体は液体又は油槽の油である。
− ベルトが作られている材料の光学的屈折率に対する流体の光学的屈折率の比は、0.9〜1.1である。
− ベルトはシリコーンによって作られている。
− 前記少なくとも1つのベルトは空欠部がある形状をしており、少なくとも1つの針が固定マウントされフルート形状のピニオンと係合している。
− フルート形状のピニオンは、光透過性であり、空欠部がある形状の前記少なくとも1つのベルトの光学的屈折率と実質的に等しい光学的屈折率を有する。
− 有効表示開口内に別の針が配置されており、この別の針は、有効表示開口内にて少なくとも部分的に延在している別のベルトによってムーブメントによって腕時計ケースに対して回転し、この別のベルトは、流体と実質的に同じ光学的屈折率を有する。
− 腕時計ケースの内部空間には気体ポケットがない。
【0013】
これらの特徴のおかげで、本発明は、ベルトによって針を駆動するムーブメントを有する機械式又は電気機械式の計時器を提供する。前記ベルトは、腕時計ケースの内部空間に閉じ込められた、好ましくは光透過性である、流体に浸漬される。また、前記ベルトは、光透過性であり、かつ、流体の光学的屈折率と等しい又は非常に近い光学的屈折率を有する。したがって、ユーザーは、流体が光透過性であるために腕時計ケースの内部空間を透かして見ることができるが、流体の光学的屈折率とベルトが作られている材料の光学的屈折率が等しいために流体に浸漬されたベルトを流体に対して見分けることができない。したがって、腕時計ケースの内部空間を観察するユーザーによってベルトを知覚することができず、計時器においてミステリー駆動効果を実現することができる。
【0014】
添付の図面を参照しながら例についての下記の詳細な説明を読むことで本発明の別の特徴や利点が明らかになるであろう。この例は、単なる説明用であって本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る腕時計タイプの計時器の正面図である。
図2図1の腕時計の部分的な断面図である。
図3】針支持アーバーの断面図である。
図4】本発明の別の実施形態を示している図1と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、全体として見ると、腕時計ケースの内部空間内にあり腕時計の光透過板(風防)によって定められる有効表示開口の内側に少なくとも部分的に延在している駆動ベルトを知覚できないようにすることからなる創造性のある概念から発生したものである。この結果を達成するために、この腕時計ケースの内部空間には流体が充填され、この流体にはこの流体と同様な光学的屈折率を有する駆動ベルトが浸漬される。
【0017】
図1は、本発明に係る腕時計タイプの計時器1の1つの実施形態の例の正面図である。図2は、図1の線II−IIに沿った腕時計の部分的な断面図である。
【0018】
計時器1は、内部空間4の境界を形成している腕時計ケース2を有する。腕時計ケース2は、広く知られた形態で、裏部6、光透過板8及びミドル部10を有する。裏部6は、腕時計ケース2の底部の境界を形成している。光透過板8は、腕時計ケース2の上部を閉じ、光透過性であって、有効表示開口12を定める。ミドル部10は、裏部6と光透過板8を互いに接続する。ミドル部10の両側にホーン14が設けられ、広く知られた形態で、腕輪16を固定して計時器1をユーザーの手首に取り付けることを可能にする。当然、懐中時計のような他のタイプの計時器にも本発明を適用することができる。
【0019】
計時器1は、さらに、常用時を表示するように意図されている時針18と分針20を有する。時針18と分針20は、光透過板8と裏部6の間の腕時計ケース2の内部空間4内に収容される。ここで、時針18と分針20は、光不透過性であり、有効表示開口12を介して知覚可能である。時針18と分針20は、光透過板8に実質的に垂直な同じ軸のまわりに腕時計ケース2に対して回転可能にマウントされる。
【0020】
計時器1は、さらに、時計用ムーブメント22を有する。この時計用ムーブメント22は、腕時計ケース2の内部空間4内に収容される。ここで、時計用ムーブメント22は、ミドル部10の光不透過性である上側エッジ24によって隠される。図示している例において、時計用ムーブメント22が所有者から見て隠されているが、有効表示開口12を介して目に見えるようにして、この時計用ムーブメント22と、時針18と分針20の間の可視の機械的な駆動リンケージがないことによって得られるミステリー効果を強くすることも考えることができる。
【0021】
ここで、計時器1は、パワー供給源26と、及びパワー供給源26に接続される電子的パワー供給及び制御回路28を有する。また、パワー供給源26、及び電子的パワー供給及び制御回路28は、ミドル部10によって隠される。電子的パワー供給及び制御回路28は、パワー供給源26によって供給されるパワーによって時計用ムーブメント22を駆動するように構成している電気モーター(図示せず)にパワー供給するように構成している。したがって、ここで示している計時器1は、電気機械タイプのものである。明らかに、機械タイプの計時器にも同じように本発明を適用可能である。
【0022】
時針18と分針20は、対応する駆動ベルト、すなわち、時ベルト30と分ベルト32、を介して時計用ムーブメント22によって回転される。時駆動ベルト30と分駆動ベルト32は、例えば、空欠部がある形状のベルトである。時駆動ベルト30と分駆動ベルト32は、例えば、シリコーンによって作られている。時駆動ベルト30と分駆動ベルト32は、所有者が知覚できないように意図されているが、図1及び2においては、本発明についてより明確に理解するために明らかに目に見えるようになっている。時針18と分針20を駆動することができるようにするために、時駆動ベルト30と分駆動ベルト32は、少なくとも部分的に有効表示開口12内において延在している。
【0023】
本発明によると、腕時計ケース2の内部空間4には流体34が充填され、この流体34に時駆動ベルト30と分駆動ベルト32が浸漬される。流体34は、腕時計ケース2の内部空間4を満たして、目に見える気体ポケットや泡の存在を防ぐ。本発明の好ましい実施形態(これに限定されない)において、流体34は、典型的には、液体又は光透過性の油槽の油である。流体34は、その光透過性によって、腕時計ケース2の内部空間4、特に、時針18と分針20の下を、ユーザーが見ることを可能にする。また、光透過性の流体34を用いることによって、腕時計ケース2の内部空間4内に存在する異なる構成要素上の寄生グレアを抑えることができる。
【0024】
有効表示開口12を介してユーザーが時駆動ベルト30と分駆動ベルト32を識別することができることを防ぐために、流体34、時駆動ベルト30と分駆動ベルト32の光学的屈折率は実質的に等しい。時間駆動ベルト30と分駆動ベルト32の光学的屈折率に対する流体34の光学的屈折率の比は、例えば、0.9〜1.1であることができ、好ましくは、0.95〜1.05である。したがって、流体34と、時駆動ベルト30と分駆動ベルト32との間の界面において、光が実際上完全に透過する。このことによって、ユーザーが時駆動ベルト30と分駆動ベルト32を知覚することを防ぐことができる。
【0025】
好ましくは、裏部6も光透過性であり、このことによって、有効表示開口12を観察しているユーザーが裏部6の光透過板まで計時器1を透かして見ることができる。このように、計時器1は、時針18と分針20が腕時計ケース2の内部空間4内において浮かんでおり、いずれの機構によっても回転させられていないという印象をユーザーに与えることができる。
【0026】
図2に、針駆動及びガイド構造の例を詳細に示している。計時器1には、腕時計ケース2に対して回転可能にマウントされている時パイプ36があり、この時パイプ36に時針18が取り付けられている。計時器1には、さらに、腕時計ケース2に対して回転可能にマウントされている分パイプ38があり、この分パイプ38に分針20が取り付けられている。
【0027】
分パイプ38には、光透過板8の凹部40aに収容される第1の端38aと、及び裏部6の凹部40bに収容される第2の端38bとがある。このように、分パイプ38は、光透過板8と裏部6に垂直な軸のまわりを回転可能にマウントされる。分パイプ38は、ブリッジ42又は分パイプ38が貫通する光透過性板によって回転ガイドされることができる。ブリッジ42は光透過性であることができる。時パイプ36は、分パイプ38のまわりに回転可能にマウントされ、この分パイプ38のまわりにて同軸に位置している。時パイプ36の軸位置は、その下端においてブリッジ42によって、そして、その上端においてワッシャー46によって、定められる。時パイプ36には、ブリッジ42に当接する肩部があることができる。ワッシャー46を分パイプ38のまわりに圧入することができる。ワッシャー46は光透過性であることができる。
【0028】
分パイプ38には、フルート形状の下端があり、これは、ブリッジ42の下に位置している。このフルート形状の端は、分歯列48を形成している。また、この分歯列48は、分パイプ38上で駆動されるフルート形状のピニオンによって設けることができる。フルート形状の分駆動ベルト32は、分パイプ38の分歯列48と係合する。このように、分駆動ベルト32は、滑らずに分パイプ38を回転させることができる。時パイプ36には、さらに、ブリッジ42上に位置しているフルート形状の下端がある。時パイプ36のフルート形状の端は、時歯列50を形成する。また、この時歯列50は、時パイプ36上で駆動されるフルート形状のピニオンによって設けることができる。空欠部がある形状の時駆動ベルト30は、時歯列50と係合する。このように、時駆動ベルト30は、滑らずに時パイプ36を回転させることができる。時パイプ36と分パイプ38は、流体34の光学的屈折率と実質的に等しい光学的屈折率を有する光透過性材料によって作ることができる。
【0029】
図3は、時針18と分針20をそれぞれ時パイプ36と分パイプ38に固定する例を示している。ここで、時針18と分針20は、時パイプ36と分パイプ38の対応する半径方向の穴内に力で入れ込まれる。
【0030】
本発明が上記の実施形態に限定されず、当業者であれば添付の請求の範囲において定められる本発明の範囲から逸脱せずに様々な単純な改変や変種を考え出すことができることは明らかである。なお、特に、腕時計ケースの内部空間が充填される流体、また、駆動ベルトは、半透明、すなわち、光を拡散しつつ光透過性、であることができる。流体と駆動ベルトは、色付けされていることができる。すなわち、可視スペクトルの一部をフィルタリングして色付けされた外観を目立つようにすることができる。このような色付けによって、例えば、時針と分針の色をさらに目立つようにすることができる。また、流体は、浮遊する光不透過性の粒子を含有することができる。
【0031】
図4に示している本発明の特定の実施形態によると、時針18と分針20の端18a、20aのみが目に見え、時針18と分針20の端18a、20aをそれぞれ時パイプ36と分パイプ38に接続する部分18b、20bは、流体34の光学的屈折率と同じ又は非常に近い光学的屈折率を有する材料によって作られている。本発明のこの特定の実施形態によって、腕時計ケースの中心との明確なリンケージがなく時針と分針の端のみが知覚可能であり腕時計ケースに対して動くような機構を設けることによって本発明に係る計時器のミステリー効果をさらに強くすることが可能になる。
【0032】
本発明の別の特定の実施形態において、時駆動ベルト30と分駆動ベルト32を作るために用いられる材料は、典型的には1〜10%の少ない割合にて、蛍光性又はリン光性の顔料を含有する。このような顔料は、特定の照明や暗所においてのみ、通常の状態では目に見えない機械的リンケージの時針と分針の間、そして、これらを指示する時パイプと分パイプの間を目に見えるようにする。
【符号の説明】
【0033】
1 腕時計タイプの計時器
2 腕時計ケース
4 内部空間
6 裏部
8 光透過板
10 ミドル部
12 有効表示開口
14 ホーン
16 腕輪
18 時針
18a 時針の端
18b 時針の端を時パイプに接続する部分
20 分針
20a 分針の端
20b 分針の端を分パイプに接続する部分
22 時計用ムーブメント
24 上側エッジ
26 パワー供給源
28 電源及び制御回路
30 時駆動ベルト
32 分駆動ベルト
34 流体
36 時パイプ
38 分パイプ
38a 第1の端
38b 第2の端
40a 凹部
40b 凹部
42 ブリッジ
46 ワッシャー
48 分歯列
50 時歯列
図1
図2
図3
図4