特許第6773864号(P6773864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773864
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】キャップ付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/04 20060101AFI20201012BHJP
   B65D 41/04 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B65D53/04 100
   B65D41/04 200
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-152450(P2019-152450)
(22)【出願日】2019年8月23日
(62)【分割の表示】特願2018-107356(P2018-107356)の分割
【原出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-196232(P2019-196232A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄治
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−003325(JP,A)
【文献】 特開2005−014942(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/104679(WO,A1)
【文献】 特開2015−003737(JP,A)
【文献】 特開2014−201315(JP,A)
【文献】 特開2014−177291(JP,A)
【文献】 特開2011−240937(JP,A)
【文献】 特開2014−051326(JP,A)
【文献】 特開2007−045452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/04
B65D 41/04
B65D 47/34
B65D 53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部にキャップを装着したキャップ付き容器であって、
前記キャップが、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、前記キャップ本体内に設けられたライナーとを備えたライナー付きキャップであり、
前記口部の上端部に、外側に折り返したカール部が形成され、
前記キャップが、前記天板部の周縁を前記ライナーと共に前記垂下の方向に肩絞り加工で変形させられ、
前記カール部が、その外周面の上部に形成された外周面上部と、前記外周面上部よりも下部に形成され半径方向内側に曲げられた屈曲部とを有し、
前記ライナーが、前記外周面上部から前記屈曲部にまで達して密着した密着面を有し、
前記ライナーのうち前記密着面よりも下方に配された部分が、前記外周面上部よりも半径方向外側に位置して前記カール部に接触しておらず、
前記ライナーが、前記天板部の内面側に配される摺動層と、
前記摺動層に積層された密封層とを備え、
前記密封層が、半径方向外側に形成され外周に向かって外周端まで漸次厚くなる傾斜部を有していることを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップ付き容器において、
前記ライナーが、円盤状に一定厚さで形成された第1平坦部と、
前記第1平坦部よりも半径方向外側に形成され外周に向かって漸次厚くなる傾斜部とを有し、
前記密封層が、円盤状に一定厚さで形成された前記第1平坦部と、
前記第1平坦部の半径方向外側であって少なくとも前記口部の上端が接触する部分に前記第1平坦部よりも厚く平坦に形成された第2平坦部と、
前記第2平坦部の半径方向外側に形成され前記傾斜部とを有していることを特徴とするキャップ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に薄肉ボトル缶に適したキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体の天板部に、モールド樹脂をドロップし、ライナーをモールド成形するインシェルモールドキャップを製造する方法が知られている。この際のライナーは、平坦状のもの、周縁部が一定の幅で均一な厚肉とされているもの、又は外周に向かって一定の角度を持って厚くなる外周部を有したもの等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、容器本体の口部がはめ込まれる溝形状をライナーに設けたキャップも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一般に、アルミニウム製のボトル缶等には金属キャップが使用されている。この金属製キャップは、ボトル缶本体の口部にキャッピングする場合、通常、いわゆるロールオンキャップ方式が採用されている。すなわち、雄ねじ部が形成された口部にキャップを被せた後に、上から一定の加重を加えながら、ローラーにより側方から口部の雄ねじ部に沿って筒状周壁部に雌ねじ部を形成することで、ねじ成形とキャッピングとを同時に行っている。
また、このとき、いわゆる肩絞り加工も行っている。すなわち、プレッシャーパッドにより天板部を筒状周壁部の垂下方向に押し付けると同時に、プレッシャーブロックにより天板部の周縁をライナーと共に筒状周壁部の垂下方向にさらに変形させる肩絞り加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−37497号公報
【特許文献2】特開2008−201435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
近年、より薄肉のボトル缶が検討されており、従来よりも薄肉のボトル缶本体に従来の高荷重でキャップをキャッピングすると、口部の板厚も薄くなってコラム強度が低下し、口部の雄ねじ部が座屈して開栓トルクが高くなってしまう問題があった。このため、低い荷重でキャッピングすると、肩絞り加工で変形したライナーの外周部が口部の外側に密着する長さであるサイドシール長さが、十分に確保できず、密封性が低くなってしまう不都合があった。特に、外周部まで平坦な従来のライナーであると、サイドシール長さが不十分になってしまう。
また、従来のライナーのように、口部に接触する部分が単に平坦状になっている場合、キャップに非接着なライナーであると、キャッピングの際にボトル缶本体とライナーとの軸心がずれて、調芯できない場合があった。また、急な傾斜による段差形状を有する場合や溝形状を有した場合では、口部の上端部が段差部分や溝部分を超えて位置ずれしてしまう場合があり、上記と同様に調芯できない場合があった。特に、内側に山部があるような溝形状を有した場合(特許文献2に記載のライナー等)では、開栓後に再び栓をするときに、口部の上端が山部に当たって閉め難くなってしまう問題がある。
このように調芯ができない場合、サイドシール長さが不十分な部分が円周方向で発生し、やはり密封性が部分的に低くなってしまう不都合があった。さらに、外周に向かって一定の角度を持って厚くなる外周部を有したライナーをキャップに非接触で設置した場合では、傾斜した外周部によって調芯が可能であるが、ライナーの口部が接触する部分が薄く、やはり十分な密封性が得られない。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、低荷重でキャッピングしても高い密封性が得られると共に調芯もできるキャップ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るキャップ付き容器は、容器本体の口部にキャップを装着したキャップ付き容器であって、前記キャップが、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、前記キャップ本体内に設けられたライナーとを備えたライナー付きキャップであり、前記口部の上端部に、外側に折り返したカール部が形成され、前記キャップが、前記天板部の周縁を前記ライナーと共に前記垂下の方向に肩絞り加工で変形させられ、前記カール部が、その外周面の上部に形成された外周面上部と、前記外周面上部よりも下部に形成され半径方向内側に曲げられた屈曲部とを有し、前記ライナーが、前記外周面上部から前記屈曲部にまで達して密着した密着面を有し、前記ライナーのうち前記密着面よりも下方に配された部分が、前記外周面上部よりも半径方向外側に位置して前記カール部に接触していないことを特徴とする。
【0008】
第2の発明に係るキャップ付き容器は、第1の発明において、前記ライナーが、円盤状に一定厚さで形成された第1平坦部と、前記第1平坦部よりも半径方向外側に形成され外周に向かって漸次厚くなる傾斜部とを有し、前記ライナーが、前記天板部の内面側に配される摺動層と、前記摺動層に積層された密封層とを備え、前記密封層が、円盤状に一定厚さで形成された前記第1平坦部と、前記第1平坦部の半径方向外側であって少なくとも前記口部の上端が接触する部分に前記第1平坦部よりも厚く平坦に形成された第2平坦部と、前記第2平坦部の半径方向外側に形成され外周に向かって漸次厚くなる前記傾斜部とを有していることを特徴とする。
【0009】
上記キャップ付き容器では、キャッピング時に外側ほど厚く形成された傾斜部が肩絞り加工の変形量が少なくても口部の外側に十分に密着すると共に、テーパ形状の傾斜部によって調芯されることで、円周方向で均一で十分なサイドシール長さを確保することができる。
また、傾斜部の密着面がカール部以上に長くなく、開栓後に再びキャップを口部に装着して栓をする場合に締め易くなる。
また、上記キャップ付き容器では、密封層が、上記第1平坦部と、上記第2平坦部と、上記傾斜部とを有しているので、キャッピング時に外側ほど厚く形成された傾斜部が肩絞り加工の変形量が少なくても口部の外側に十分に密着すると共に、テーパ形状の傾斜部によって調芯されることで、円周方向で均一で十分なサイドシール長さを確保することができる。また、口部の上端が接触する部分が第1平坦部よりも厚い第2平坦部であるため、十分な肉厚によって、この部分においても高い密封性を得ることができる。
【0010】
また、このキャップ付き容器では、薄肉のボトル缶本体等の口部に低荷重で上記ライナー付きキャップをキャッピングしても高い密封性を得ることができる。
さらに、傾斜部がカール部の外周面上部に密着していると共に、厚い第2平坦部によって高い密封性が得られるので、キャッピング時にライナーが調芯されて位置ずれがなく、高い密封性を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
第2の発明に係るキャップ付き容器によれば、キャッピング状態でライナーが調芯されて位置ずれがなく、高い密封性を有している。
したがって、本発明では、薄肉のボトル缶本体に低荷重でキャッピングしても密封性が高く、ライナーの調芯もできるので、円周方向においても均一な密封性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るキャップ付き容器の一実施形態において、キャップ用ライナーを示す要部の拡大断面図である。
図2】本実施形態において、口部にキャップを被せた状態の半分を示す断面図(a)及び要部の拡大断面図(b)である。
図3】本実施形態において、口部にキャップをキャッピングした状態の半分を示す断面図(a)及び要部の拡大断面図(b)である。
図4】本発明に係るキャップ付き容器の従来例において、キャップ用ライナーを示す要部の拡大断面図である。
図5】本発明の従来例において、口部にキャップを被せた状態の半分を示す断面図(a)及び要部の拡大断面図(b)である。
図6】本発明の従来例において、口部にキャップをキャッピングした状態の半分を示す断面図(a)及び要部の拡大断面図(b)である。
図7】本発明に係るキャップ付き容器の実施例について、各部の寸法を示すための要部の断面図である。
図8】本発明に係る実施例について、トッププレッシャーとサイドシール長さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るキャップ付き容器の一実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために一部について縮尺を適宜変更している。
【0014】
本実施形態のキャップ用ライナー1は、図1から図3に示すように、例えばアルミニウム製ボトル缶(いわゆるアルミ缶)用であって、容器本体4の口部5を封じ天板部6aと該天板部6aの周縁から垂下した筒状周壁部6bとからなるキャップ本体6内に設けられるものである。
このキャップ用ライナー1は、全体が合成樹脂で円盤状に形成され、キャップ本体6に対して回転自由に設置される。
【0015】
上記キャップ用ライナー1は、天板部6aの内面側に配される摺動層2と、摺動層2に積層され摺動層2よりも柔軟な密封層3とを備えている。
上記密封層3は、円盤状に一定厚さで形成された第1平坦部3aと、第1平坦部3aの半径方向外側であって少なくとも口部5の上端が接触する部分に第1平坦部3aよりも厚く平坦に形成された第2平坦部3bと、第2平坦部3bの半径方向外側に形成され外周に向かって漸次厚くなる傾斜部3cとを有している。
【0016】
また、本実施形態のライナー付きキャップ10は、容器本体4の口部5を封じるライナー付きキャップであって、上記の天板部6aと該天板部6aの周縁から垂下した筒状周壁部6bとからなるキャップ本体6と、天板部6aの内面に設けられた上記ライナー1とを備えている。
【0017】
インシェルモールド方式でライナー1を設置する場合、インシェルモールド工程で押出機から押し出され溶融されたエラストマー等軟質樹脂の一定量を、摺動層2のシートが挿入されたキャップ本体6に入れ、直ちに冷却された金型で、上記第1平坦部3a、第2平坦部3b及び傾斜部3cを有した形状の密封層3を形作る。この密封層3の形状は、摺動層2の外径より小さく、かつ同心円を描いている。
【0018】
さらに、本実施形態のキャップ付き容器20は、容器本体4の口部5にキャップ10を装着したアルミニウム製ボトル缶等である。すなわち、このキャップ付き容器20は、上記キャップ10を口金部である口部5に巻き締めた状態で備えている。
上記口部5の上端部には、外側に折り返したカール部5aが形成されている。このカール部5aは、口部5の上端部をカールさせるカール加工と、カールした部分をかしめるスロットル加工とで形成される。したがって、カール部5aの外周面は、スロットル加工により平坦面を有している。
【0019】
また、上記キャップ10は、天板部6aの周縁をライナー1と共に前記垂下の方向に肩絞り加工で変形させられ、傾斜部3cが、カール部5aの外周面に密着している。すなわち、カール部5aの外周面の平坦な面に、傾斜部3cが面接触して密着している。
なお、上記傾斜部3cは、カール部5aの下端5bよりも上方でカール部5aの外周面に密着している。
【0020】
このように上記カール部5aは、図3に示すように、その外周面の上部に形成された外周面上部と、前記外周面上部よりも下部に形成され半径方向内側に曲げられた屈曲部とを有している。
また、このキャップ付き容器20では、上記傾斜部3cが、前記外周面上部から前記屈曲部にまで達して密着した密着面を有している。
さらに、ライナー1のうち前記密着面よりも下方に配された部分は、前記外周面上部よりも半径方向外側に位置してカール部5aに接触していない。
【0021】
上記摺動層2は、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、各種ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等の硬質の合成樹脂で形成される。
上記密封層3としては、エラストマー又は樹脂とエラストマーとのブレンド等が採用され、エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、塩ビ系エラストマー等が採用可能である。
【0022】
上記筒状周壁部6bは、ナール(図示略)、ライナー係止突起6c、ミシン目6d、ビード(図示略)及びスカート部6eを備えている。上記ライナー係止突起6cは、筒状周壁部6bの内側に凹んだ断面三角形状または半円形状をなし、周方向に間隔をおいて複数個配され内方に突出形成されたものであり、ライナー1をその下面側から支持する機能と缶内圧力を放出するベント機能と実質上の洗浄口の役目とを有する。
【0023】
上記キャップ10は、アルミニウム合金等の金属で成型したいわゆるボトル缶等の容器本体4に被せられ、キャップ10にキャッピング加工を施すことにより、キャップ10が口部5に巻き締められて被着され、キャップ付き容器20とされる。
なお、上記キャップ10を口部5に被せた際、ライナー1がキャップ10に非接着であるため、内側に向いた傾斜部3cの傾斜面によって、ライナー1の軸心が口部5の軸心と一致するようにライナー1自体が動いて調芯が行われる。また、この際、口部5の上端が、ちょうど第2平坦部3bの外縁部、すなわち傾斜部3cとの境界部分に位置決めされて配される。
【0024】
上記キャッピング加工工程は、プレッシャーブロック、ネジローラー、スカートローラー等からなるキャッピング装置を用いて行われる。
すなわち、口部5に被せたキャップ10の天板部6aを、プレッシャーブロックでボトル底部の方向に押圧し、この状態でプレッシャーブロックによる絞り加工により、キャップ10の肩部にキャップ傾斜部6fを形成する。さらに、この状態でネジローラーによりネジ部6gを形成し、スカートローラーで口部5のカブラ部5cにスカート部6eを巻きつけることで、キャッピング加工が行われる。
【0025】
このようにキャップ10が口部5に巻きつけられることにより、キャップ10は天板部6aの内面側のライナー1が口部5に圧接される状態になる。これによりキャップ付き容器20の内容物が密封された状態になる。なお、内容物の充填は、当然にキャップ10をキャップ付き容器20に被せる直前に行われる。
一方、開栓するときは、キャップ10を回してミシン目6dから切断し、キャップ10を口部5から外すことにより、口部5が開栓され内容物が取り出されることになる。そして、取り外したキャップ10を口部5に再び取り付けることにより、再閉栓することが可能になっている。
【0026】
このように本実施形態のキャップ用ライナー1では、密封層3が、上記第1平坦部3aと、上記第2平坦部3bと、上記傾斜部3cとを有しているので、キャッピング時に外側ほど厚く形成された傾斜部3cが肩絞り加工の変形量が少なくても口部5の外側に十分に密着すると共に、テーパ形状の傾斜部3cによって調芯されることで、円周方向で均一で十分なサイドシール長さSSLを確保することができる。また、口部5の上端が接触する部分が第1平坦部3aよりも厚い第2平坦部3bであるため、十分な肉厚によって、この部分においても高い密封性を得ることができる。
【0027】
したがって、本実施形態のライナー付きキャップ10では、上記ライナー1を用いることで、薄肉のボトル缶本体等の口部5に低荷重でキャッピングしても高い密封性を得ることができる。
さらに、本実施形態のキャップ付き容器20では、上記ライナー付きキャップ10を用いて、その傾斜部3cがカール部5aの外周面に密着していると共に、厚い第2平坦部3bによって高い密封性が得られるので、キャッピング時にライナー1が調芯されて位置ずれがなく、高い密封性を有している。
また、傾斜部3cが、カール部5aの下端よりも上方でカール部5aの外周面に密着しているので、傾斜部3cがカール部5a以上に長くなく、開栓後に再びキャップ10を口部5に装着して栓をする場合に締め易くなる。
【実施例】
【0028】
本発明に係るキャップ付き容器の実施例について、図7及び図8を参照して説明する。
本発明の実施例として、38mm口径ボトルにおいて、図7に示すように、第2平坦部3bと傾斜部3cとの半径方向長さ(幅)L1と、傾斜部3cの半径方向長さ(幅)L2と、第2平坦部3bの厚さT1と、傾斜部3cの最大厚さT2とを変えたものを複数作製した。その代表例を、表1及び表2に示す。なお、表1に示す「10°テーパ」は、表2に示す実施例1である。また、表1中の「20°テーパ」は実施例2である。
【0029】
【表1】

【表2】
【0030】
なお、実施例1における傾斜部3cの傾斜面の角度θは10°であり、実施例2における傾斜部3cの傾斜面の角度θ(第2平坦部に対する角度)は20°である。また、いずれの実施例も第1平坦部3aの厚さT0を0.25mmとした。
このように作製した実施例について、口部にキャッピング及び肩絞り加工を行い、その際のトッププレッシャーに対するサイドシール長さSSLを測定した結果を図8に示す。
【0031】
なお、サイドシール長さSSLは、口部の雄ねじ部のねじ始まりを基準に、0°,120°,240°の3等配でX線断面写真を撮り、カール部の直線部分(スロットル加工による平坦部分)に沿う長さを測定した(5本×3等配=15データの平均値を図8にプロットした。)。
また、比較として傾斜部3cがなく第1平坦部3a及び第2平坦部3bだけの従来例についても作製し、同様に評価した。
【0032】
これらの結果、本発明の実施例では、同じトッププレッシャーにおいて従来例に比べてサイドシール長さSSLが17〜22%長くなり、密封性が向上している。また、傾斜部3cの傾斜面の角度θが大きい方が、サイドシール長さSSLが長くなった。さらに、本発明の実施例では、従来例よりも中心軸からの軸ずれ(位置のばらつき)も少なくなった。
なお、トッププレッシャーとサイドシール長さSSLとは相関があり、トッププレッシャーを高くするとサイドシール長さSSLも長くなる。
【0033】
これらの評価結果から、傾斜部3cの半径方向長さL2は、1.0mm≦L2≦1.7mmの範囲とすることが好ましい。すなわち、38mm口径ボトルの場合、L2が1.7mmを超えると、第2平坦部3bと傾斜面3cとの境界Pがキャップの中心側に寄り過ぎて、口部の上端よりも内側に入ってしまい、センタリング効果(調芯効果)が小さくなってしまう。また、L2が1.0mm未満であると、第2平坦部3bと傾斜部3cとの境界Pが外側に寄り過ぎて、サイドシール長さSSLを確保し難くなる。
【0034】
また、傾斜部3cの最大厚さT2は、1.0mm≦T2≦1.3mmの範囲とすることが好ましい。すなわち、T2が1.3mmを超えると、サイドシール長さSSLを確保する効果は変わらないが、樹脂使用量は増加してしまう。また、T2が1.0mm未満になると、密封層3の最外周厚さが薄くなって、サイドシール長さSSLが十分に確保に難くなる。
【0035】
さらに、傾斜部3cの傾斜面の角度θは、10°≦θ≦20°の範囲とすることが好ましい。すなわち、θが20°を超えると、サイドシール長さSSLを確保する効果は変わらない。また、θが10°未満であると、センタリング効果が十分に得られない。
【0036】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…キャップ用ライナー、2…摺動層、3…密封層、3a…第1平坦部、3b…第2平坦部、3c…傾斜部、4…容器本体、5…口部、5a…カール部、6…キャップ本体、6a…天板部、6b…筒状周壁部、10…ライナー付きキャップ、20…キャップ付き容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8