(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6773878
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物内部状況点検方法及びその方法に使用するシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/12 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
G01N29/12
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-228782(P2019-228782)
(22)【出願日】2019年12月19日
【審査請求日】2019年12月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593153428
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115120
【氏名又は名称】ユニオンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】堀 隆一
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚武
(72)【発明者】
【氏名】荒木 昇太
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】神保 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】星 和久
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−191202(JP,A)
【文献】
特開昭62−231634(JP,A)
【文献】
特開2019−060692(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0069192(US,A1)
【文献】
特開2018−124205(JP,A)
【文献】
特開2014−119406(JP,A)
【文献】
特開2018−128278(JP,A)
【文献】
特開2012−168022(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104007176(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 − G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象となるコンクリート構造物の点検部位表面において、点検領域を囲う境界上の複数の地点に弾性波検出センサを配置し、
前記点検領域における前記弾性波検出センサが配置されていない複数の地点に打撃具を配置し、
前記コンクリート構造物における前記弾性波検出センサの配置された平面に対し前記打撃具により与えられる打撃力を検出する打撃力検出センサを前記打撃具の各々に対応させて配置し、
前記打撃力検出センサで得られた打撃力計測波形の平滑化された波形の立ち上がり検出点と、前記弾性波検出センサの各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形の平滑化された波形の立ち上がり又は立ち下がりの検出点に基づき、発振地点から受振地点に至る弾性波の伝播時間を算出し、
前記計測波形を高速フーリエ変換(FFT)し、求められた卓越周波数、1次から5次の周波数、及びそれらの振幅から、弾性波速さを求めることを特徴とするコンクリート構造物内部状況点検方法。
【請求項2】
前記計測波形を、前記コンクリート構造物が健全な状態において得られた弾性波基本データに基づき生成される基本波形と比較する請求項1に記載のコンクリート構造物内部状況点検方法。
【請求項3】
点検対象となるコンクリート構造物の点検部位表面において、点検領域を囲う境界上の複数の地点に配置された弾性波検出センサの複数と、
前記点検領域における前記弾性波検出センサが配置されていない複数の地点に配置された打撃具の複数と、
前記打撃具の各々に対応して配置され、前記コンクリート構造物における前記弾性波検出センサの配置された平面に対し前記打撃具により与えられる打撃力を検出する打撃力検出センサの複数と、
前記弾性波検出センサ及び前記打撃力検出センサにより得られた計測データを取得し処理する演算処理装置を備え、
前記演算処理装置は、前記打撃力検出センサで得られた打撃力計測波形の平滑化された波形の立ち上がり検出点と、前記弾性波検出センサの各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形の平滑化された波形の立ち上がり又は立ち下がりの検出点に基づき、発振地点から受振地点に至る弾性波の伝播時間を算出し、前記計測波形を高速フーリエ変換(FFT)し、求められた卓越周波数、1次から5次の周波数、及びそれらの振幅から、弾性波速さを求めることを特徴とするコンクリート構造物内部状況点検システム。
【請求項4】
前記演算処理装置は、前記計測波形を、前記コンクリート構造物が健全な状態において得られた弾性波基本データに基づき生成される基本波形と比較表示する表示装置を備える請求項3に記載のコンクリート構造物内部状況点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の内部に生じた損傷等の有無をコンクリート表面から検査することによりコンクリート構造物の内部が健全な状態であるかどうかの判定を行う、コンクリート構造物内部状況点検方法とその方法に使用するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の内部に生じた損傷等を、コンクリート構造物を破壊することなく検出するための様々な手法が提案されている。
【0003】
例えば、特開2011−191202には、セメント硬化物の表面に設置された複数の弾性波検出センサが検出する複数の弾性波を用いて表面波トモグラフィ解析を行い、表面波位相速さ分布を表示することによってセメント硬化物の内部に生じた空間を可視化する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−191202
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の弾性波検出センサを用いて表面波トモグラフィ解析を行う従来の手法では、受振地点において弾性波検出センサにより得られた弾性波の波形に基づき、弾性波が発振地点から受振地点に到るまでに要する時間(到達時間)を正確に計測することが難しく、解析の精度が低下するおそれがあった。
【0006】
また、コンクリートの表面から弾性波を検出するため、表面弾性波の伝播速さだけではコンクリート内部の振動に関する情報が少なく、この点においても内部状態の推定の精度が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、複数の弾性波検出センサを用いて、コンクリート構造物の内部に生じた損傷等の有無をコンクリート表面から検査することにより、コンクリート構造物の内部が健全な状態であるかどうかの判定を高い精度で行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリート構造物内部状況点検方法では、点検対象となるコンクリート構造物の点検部位表面において、点検領域を囲う境界上の複数の地点に弾性波検出センサを配置し、前記点検領域における前記弾性波検出センサが配置されていない複数の地点に打撃具を配置し、前記コンクリート構造物
における前記弾性波検出センサの配置された平面に対し前記打撃具により与えられる打撃力を検出する打撃力検出センサを前記打撃具の各々に対応させて配置する。
【0009】
そして、前記打撃力検出センサで得られた打撃力計測波形の平滑化された波形の立ち上がり検出点と、前記弾性波検出センサの各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形の平滑化された波形の立ち上がり又は立ち下がりの検出点に基づき、発振地点から受振地点に至る弾性波の伝播時間を算出する。
【0010】
また、前記計測波形を高速フーリエ変換(FFT)し、求められた卓越周波数、1次から5次の周波数、及びそれらの振幅から、弾性波速さを求める。
【0011】
前記計測波形を、前記コンクリート構造物が健全な状態において得られた弾性波基本データに基づき生成される基本波形と比較してもよい。
【0012】
コンクリート構造物内部状況点検システムは、点検対象となるコンクリート構造物の点検部位表面において、点検領域を囲う境界上の複数の地点に配置された弾性波検出センサの複数と、前記点検領域における前記弾性波検出センサが配置されていない複数の地点に配置された打撃具の複数と、前記打撃具の各々に対応して配置され、前記コンクリート構造物
における前記弾性波検出センサの配置された平面に対し前記打撃具により与えられる打撃力を検出する打撃力検出センサの複数と、前記弾性波検出センサ及び前記打撃力検出センサにより得られた計測データを取得し処理する演算処理装置を備える。
【0013】
そして、前記演算処理装置は、前記打撃力検出センサで得られた打撃力計測波形の平滑化された波形の立ち上がり検出点と、前記弾性波検出センサの各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形の平滑化された波形の立ち上がり又は立ち下がりの検出点に基づき、発振地点から受振地点に至る弾性波の伝播時間を算出し、前記計測波形を高速フーリエ変換(FFT)し、求められた卓越周波数、1次から5次の周波数、及びそれらの振幅から、弾性波速さを求める。
【0014】
前記演算処理装置は、前記計測波形を、前記コンクリート構造物が健全な状態において取得された弾性波基本データに基づき生成される基本波形と比較表示する表示装置を備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、点検対象となるコンクリート構造物の点検領域内部における、打撃具により与えた弾性波の速さ分布を高い精度で求めることが可能となり、コンクリート構造物の内部が健全な状態であるかどうかの判定を高い精度で行うことができる。
【0016】
また、弾性波検出センサの各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形を、コンクリート構造物が健全な状態において取得された弾性波基本データに基づき生成される基本波形と比較表示することで、コンクリート構造内部状況の簡易診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るコンクリート構造物内部状況点検システムを構成する計測装置の斜視図である。
【
図2】点検領域内部のスローネス分布を示す図である。
【
図4】各受振地点における基本波形と計測波形を比較して示す図である。
【
図5】特定の受振地点における基本波形と計測波形を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照しながら、本発明に係るコンクリート構造物内部状況点検方法及びその方法に使用するシステムの実施形態を説明する。
この実施形態では、
図1に示す計測装置10が使用される。計測装置10は、点検対象となるコンクリート構造物の点検部位表面に対し平行配置される基板1を有し、基板1に、8個の弾性波検出センサ2と、8個の打撃具3が、基板1を貫通する状態で取り付けられている。なお、
図1では、弾性波検出センサ2と打撃具3の基板1への取り付け状態を明確にするため、計測装置10を部分的に破断して示すものとする。
【0019】
点検対象となるコンクリート構造物の点検部位表面において、弾性波検出センサ2の接触点は受振地点と、打撃具3により打撃の与えられる地点は発振地点となるが、弾性波検出センサ2と打撃具3の配置は、発振地点が受振地点のいずれとも異なる場所になるものとされている。この実施形態では、発振地点から受振地点に至る健全経路が構成する多角形の面積の最大面積を小さくし、更に面積上位50の多角形の面積のバラつきを抑える地点となる配置とされている。ただし、発振地点と受振地点の決め方に制限はなく、点検対象の形状や状態を考慮し最適な配置とすればよい。
【0020】
また、受振地点は、点検対象となるコンクリート構造物の点検部位表面において、点検領域を囲う境界上に位置するものとなっている。この実施形態では、1辺が200mmの正方形の内側が点検領域とされている。
【0021】
なお、この実施形態では、受振地点の数、すなわち、弾性波検出センサ2の数は8個とされているが、その数に制限はなく、点検対象の形状や状態を考慮し最適な数とすればよい。ただし、8個以上とすることが好ましい。また、弾性波を検出する手法に制限はないが、加速度を利用した検出法が好適である。そして、加速度を利用して検出する場合、用いるセンサのレンジは20G以上が好ましく、100G以上がより好ましく、200G以上が更に好ましい。
【0022】
打撃具3には、ソレノイドを使用した公知のものが採用されているが、点検部位の表面に対し力をコントロールして加えることができるものであれば制限はない。点検部位の形状や状態を考慮し最適なものを採用すればよい。
【0023】
打撃具3の各々の先端部には、コンクリート構造物に対し打撃具3により与えられる打撃力を検出する打撃力検出センサ4が取り付けられている。打撃力検出センサ4には、圧電・圧縮型の公知のフォースセンサが採用されているが、打撃具3の打撃力を計測できるものであれば制限はない。点検部位の形状や状態を考慮し最適なものを採用すればよい。
【0024】
弾性波検出センサ2及び打撃力検出センサ4で得られた計測データは、基板1の上方に配置されている天板5に取り付けられたデータ変換装置6で図示しない演算処理装置で処理できる形式のデータに変換され、当該演算処理装置に入力され、処理されるものとなっている。なお、
図1において、各配線の図示は省略されている。
【0025】
この実施形態では、データ変換装置6として、公知のADコンバータが採用されている。データ変換装置6の仕様は、弾性波検出センサ2、打撃力検出センサ4及び演算処理装置の仕様に応じたものとすればよいが、弾性波検出センサ2として加速度センサを採用した場合、分解能が10bit以上、好ましくは12〜24bit、より好ましくは18〜24bitで、サンプリング周波数が1MHz以上のサンプリングを実行できるものが好ましい。
【0026】
演算処理装置は、データ変換装置6から取得したデータに基づき、後述のデータ処理及び演算処理ができる機能を備えるものであればよく、公知のパーソナルコンピュータを使用してもよい。
【0027】
基板1の四隅には、車輪7が取り付けられている。車輪7の回転数はデータ変換装置6で計測され、演算処理装置に入力されるものとなっている。そして、点検作業が終了した領域から次の点検領域に計測装置10を移動させる場合、車輪7の回転数に基づき移動距離を算出し、複数の点検領域の相対位置を特定することが可能とされている。
【0028】
この計測装置10を使用して、点検対象となるコンクリート構造物の内部構造を点検する場合、まず、弾性波検出センサ2が点検部位表面に強く押し付けられる状態で、計測装置10を点検部位表面に配置する。
【0029】
計測装置10の配置作業が完了したら、打撃具3により、点検部位表面に打撃を与える。打撃具3により打撃を与える回数に制限はなく、点検部位の状態等に応じて適宜決めることができる。例えば、各打撃具3で1回ずつ、すなわち、この実施形態では合計8回の打撃を与えることとしてもよく、或いは、各打撃具3で複数回ずつ、すなわち、この実施形態では合計で8の倍数回の打撃を与えることとしてもよい。
【0030】
また、各打撃具3による打撃は、コンクリート表面及び内部の弾性波の減衰を確認できる時間を確保できる間隔で実施することが好ましい。
【0031】
この実施形態では、各打撃具3で与える打撃の回数が10とされ、打撃の時間間隔が500ミリ秒とされ、演算処理装置を介してデータ変換装置6に記憶されている。そして、各打撃具3の動作が、データ変換装置6により制御されるものとなっている。
【0032】
点検部位表面に打撃具3により打撃が与えられると、その打撃毎に、弾性波検出センサ2及び打撃力検出センサ4で得られた計測データが、データ変換装置6において演算処理装置で処理できる形式のデータに変換され、演算処理装置に入力される。
【0033】
演算処理装置では、打撃力検出センサ4で得られた打撃力計測波形の平滑化された波形の立ち上がり検出点と、弾性波検出センサ2の各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形の平滑化された波形の立ち上がり又は立ち下がりの検出点に基づき、発振地点から受振地点に至る弾性波の伝播時間が算出される。
【0034】
波形の平滑化は、例えば、計測波形に二次多項式をあてはめることにより行うことができる。また、計測波形に二次多項式をあてはめる手法として、公知の手法、例えば、Savitzky−Golayフィルタを採用することができる。
【0035】
得られた伝播時間のバラつきが無視できない場合は、複数回の打撃から伝播時間の代表値を選ぶことが好ましい。伝播時間の代表値は、例えば、以下の数式(1)で定義される、各打撃回における発振地点毎の差分の二乗和diff[n,i]が最小となる打撃回の伝播時間を代表値として採用してもよい。
【0036】
【数1】
なお、数式(1)において、n、kは打撃回、iは発振地点の通し番号、jは受振地点の通し番号である。この実施形態において、i、jは、1から8までの数値となる。また、TD
M[n(k),i,j]は、n(k)回目の打撃回におけるi番目の発振地点からj番目の受振地点までの伝播時間である。
【0037】
演算処理装置では、更に、算出された伝播時間に基づくトモグラフィ解析が実行され、スローネス分布が求められる。得られたスローネス分布は、演算処理装置が備える表示装置に出力されるため、その出力されたスローネス分布を参照して点検領域の内部状況を点検することができる。
【0038】
トモグラフィ解析で使用するセルは、発生地点と受振地点を結ぶ健全経路が通過するものとなるように決定し、ノード(計算点)は、各セルの頂点及び辺上に設けることが好ましい。例えば、この実施形態の200mm×200mmの正方形の検出領域に対して、5セル×5セルの合計25セルを設け、各セルの1辺を4分割する数のノードを設けてもよい。或いは、17セル×17セルの合計289セルを設け、各セルの1辺を2分割する数のノードを設けてもよい。ただし、セルとノードの数に制限はなく、点検部位の状態や解析条件等に応じて適宜決めることができる。
【0039】
演算処理装置では、また、点検部位の速さ分布が求められる。速さ分布の算出にあたっては、弾性波検出センサ2の各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形を高速フーリエ変換(FFT)し、求められた卓越周波数、1次から5次の周波数、及びそれらの振幅から弾性波速さを求める。そして、トモグラフィ解析で使用するセルに、この弾性波速さを与え調和平均から速さ分布を算出する。この際、弾性波速さは、トモグラフィ解析で使用するセルに対し、発振地点から受振地点方向へ、左右22.5度、合計45度の影響線内で与えることが好ましい。
【0040】
得られた速さ分布は、既述のスローネス分布と同様に、演算処理装置が備える表示装置に出力されるため、その出力された速さ分布を参照して点検領域の内部状況を点検することができる。
【0041】
更にまた、演算処理装置は、コンクリート構造物が健全な状態において得られたデータを弾性波基本データとして、この弾性波基本データに基づき基本波形を生成する。そして、この基本波形は、弾性波検出センサ2の各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形と比較可能な形で、演算処理装置が備える表示装置に出力されるため、その出力された波形を参照して点検領域の内部状況を点検することができる。
【実施例】
【0042】
計測装置10を使用し、既設道路橋の橋台の内部状況の点検を行った。点検部位のスローネス分布を
図2に、速さ分布を
図3に、基本波形と計測波形の比較表示を
図4及び
図5に示す。なお、点検対象の橋台には、予め公知の打音点検が実施されており、その打音点検により変状有と判定された部位と変状無と判定された部位の双方を、点検部位とした。
図4及び
図5に示す基本波形は、変状無(健全)と判定された部位で得られたものである。また、
図4において、中央位置の上下方向に引かれた想像線の左側が健全な場合に得られる波形を、右側が変状有の場合に得らえる波形を示し、いずれの場合においても、中央が発振地点での波形を、その周囲が各受振地点での波形を示している。
【0043】
図2〜5で示された結果は、打音点検や、目視できる部位の状態(表面のひび割れ)と合致することが確認された。
【0044】
基本波形と計測波形の比較表示においては、
図5に示すように、包絡線をあわせて表示してもよい。これにより、基本波形と計測波形の波形形態の比較を容易に行うことができる。
図5は基本波形(健全)と計測波形(損傷)を示している。
【符号の説明】
【0045】
1 基板
2 弾性波検出センサ
3 打撃具
4 打撃力検出センサ
5 天板
6 データ変換装置
7 車輪
10 計測装置
【要約】
【課題】複数の弾性波検出センサを用いて、コンクリート構造物の内部に生じた損傷等の有無をコンクリート表面から検査することにより、コンクリート構造物の内部が健全な状態であるかどうかの判定を高い精度で行う。
【解決手段】点検領域を囲う境界上の複数の地点に弾性波検出センサを配置し、弾性波検出センサが配置されていない複数の地点に打撃具を配置し、打撃力検出センサを打撃具の各々に対応させて配置する。打撃力検出センサで得られた打撃力計測波形の平滑化された波形の立ち上がり検出点と、弾性波検出センサの各々において得られた計測データに基づき生成される計測波形の平滑化された波形の立ち上がり又は立ち下がりの検出点に基づき、発振地点から受振地点に至る弾性波の伝播時間を算出し、計測波形を高速フーリエ変換し、求められた卓越周波数、1次から5次の周波数、振幅から、弾性波速さを求める。
【選択図】
図1