(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転子の前記大内径部内に前記軸受部の一部が位置するように配置され、前記マフラ室吐出口の開口面積をS1とし、前記大内径部と前記軸受部間の通路面積をS2としたとき、S1<S2を満たす、
請求項1に記載の回転式圧縮機。
前記回転子の前記大内径部内に前記軸受部の一部が位置するように配置され、前記マフラ室吐出口の開口面積をS1とし、前記大内径部と前記軸受部間の通路面積をS2としたとき、S1<S2を満たす、
請求項2に記載の回転式圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の回転式圧縮機および冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。本願において、Z方向、R方向およびθ方向は以下のように定義される。Z方向はシャフト31の軸方向である。軸方向の第1側である+Z側は、例えば鉛直方向の上側である。軸方向の第2側である−Z側は、例えば鉛直方向の下側である。なお、Z方向を軸方向Zと呼ぶ場合がある。R方向はシャフト31の径方向である。+R側は、径方向の外側であって、シャフト31の中心軸から離れる側である。−R方向は、径方向の内側であって、シャフト31の中心軸に近づく側である。なお、R方向を径方向Rと呼ぶ場合がある。θ方向は、シャフト31の中心軸の周方向である。なお、θ方向を周方向θと呼ぶ場合がある。
【0008】
始めに、冷凍サイクル装置について簡単に説明する。
図1は、本実施形態の回転式圧縮機2の断面図を含む冷凍サイクル装置1の概略構成図である。
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、回転式圧縮機2に接続された放熱器としての凝縮器3と、凝縮器3に接続された膨張装置4と、膨張装置4に接続された吸熱器としての蒸発器5とを備えている。
【0009】
回転式圧縮機2は、いわゆるロータリ式の圧縮機である。回転式圧縮機2は、例えば、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒(流体)を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。なお、回転式圧縮機2の具体的な構成については後述する。
【0010】
凝縮器3は、回転式圧縮機2から吐出される高温・高圧の気体冷媒から放熱して、高温・高圧の気体冷媒を高圧の液体冷媒にする。
膨張装置4は、凝縮器3から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温・低圧の液体冷媒にする。
蒸発器5は、膨張装置4から送り込まれる低温・低圧の液体冷媒を気化させ、低圧の気体冷媒にする。そして、蒸発器5において、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪うことで周囲が冷却される。なお、蒸発器5を通過した低圧の気体冷媒は、上述した回転式圧縮機2の内部に取り込まれる。
【0011】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒との間で相変化しながら循環し、気体冷媒から液体冷媒に相変化する過程で放熱し、液体冷媒から気体冷媒に相変化する過程で吸熱する。そして、これらの放熱や吸熱を利用して暖房や冷房などが行われる。
【0012】
次に、上述した回転式圧縮機2の具体的な構成について説明する。
本実施形態の回転式圧縮機2は、圧縮機本体11と、アキュムレータ12とを備える。
アキュムレータ12は、いわゆる気液分離器である。アキュムレータ12は、上述した蒸発器5と圧縮機本体11との間に設けられている。アキュムレータ12は、吸い込みパイプ21を通じて圧縮機本体11の複数のシリンダ41,42に接続されている。アキュムレータ12は、蒸発器5で気化された気体冷媒を圧縮機本体11に供給する。
【0013】
圧縮機本体11は、シャフト31と、シャフト31を回転させる電動機部32と、シャフト31の回転によって気体冷媒を圧縮する圧縮機構部33と、これらシャフト31、電動機部32および圧縮機構部33を収容した円筒状のケース34とを備えている。
【0014】
シャフト31およびケース34は、軸線Oに対して同軸状に配置されている。電動機部32は、ケース34のなかで、軸線Oに沿う+Z側(
図1における上側)に配置されている。圧縮機構部33は、ケース34のなかで、軸線Oに沿う−Z側(
図1における下側)に配置されている。
【0015】
電動機部32は、いわゆるインナーロータ型のDCブラシレスモータである。具体的には、電動機部32は、固定子36と、回転子37とを備える。固定子36は、筒状に形成され、ケース34の内壁面に焼嵌めなどによって固定されている。回転子37は、固定子36の内側に配置されている。回転子37は、シャフト31の上部に連結されている。回転子37は、固定子36に設けられたコイルに電流が供給されることで、シャフト31を回転駆動する。
【0016】
次に、圧縮機構部33について説明する。
圧縮機構部33は、複数のシリンダ41,42と、仕切板43と、主軸受44と、副軸受45と、複数のローラ46,47と、主マフラ部材130と、副マフラ部材180とを備える。
【0017】
複数のシリンダは、第1シリンダ41と、第2シリンダ42とを含む。第1シリンダ41および第2シリンダ42は、互いの間に隙間を空けて軸方向Zに重ねて配置されている。第1シリンダ41および第2シリンダ42の各々は、軸方向Zに開口した筒状に形成されている。これにより、第1シリンダ41には、第1シリンダ室51となる内部空間が形成されている。第2シリンダ42には、第2シリンダ室52となる内部空間が形成されている。第1シリンダ41および第2シリンダ42の各々には、上述した吸い込みパイプ21が個別に接続されている。第1シリンダ室51および第2シリンダ室52には、アキュムレータ12で気液分離された気体冷媒が吸い込みパイプ21を通じて供給される。
【0018】
仕切板43は、第1シリンダ41と第2シリンダ42との間に配置され、第1シリンダ41と第2シリンダ42との間に挟まれている。仕切板43は、第1仕切板140と、第2仕切板160と、を有する。第1仕切板140は、第1シリンダ41の内部空間に面して、第1シリンダ室51の一面を規定している。同様に、第2仕切板160は、第2シリンダ42の内部空間に面して、第2シリンダ室52の一面を規定している。また、仕切板43には、軸方向Zにシャフト31が通される開口部55が設けられている。仕切板43の具体的な構成については後述する。
【0019】
主軸受44は、第1シリンダ41に対して第1仕切板140とは反対側である電動機部32側に位置する。主軸受44は、第1仕切板140とは反対側から第1シリンダ41の内部空間に面して、第1シリンダ室51の別の一面を規定している。主軸受44の具体的な構成については後述する。一方で、副軸受45は、第2シリンダ42に対して第2仕切板160とは反対側である反電動機部32側に位置する。副軸受45は、第2仕切板160とは反対側から第2シリンダ42の内部空間に面して、第2シリンダ室52の別の一面を規定している。
【0020】
ここで、上述したシャフト31は、第1シリンダ41,第2シリンダ42、および仕切板43を貫通するとともに、主軸受44と副軸受45とによって回転可能に支持されている。シャフト31には、第1偏心部61と、第2偏心部62とが設けられている。第1偏心部61は、シャフト31のなかで第1シリンダ室51に対応する部分に設けられ、第1シリンダ室51内に配置されている。第2偏心部62は、シャフト31のなかで第2シリンダ室52に対応する部分に設けられ、第2シリンダ室52内に配置されている。第1偏心部61および第2偏心部62の各々は、軸方向Zに沿う円柱状に形成されている。第1偏心部61および第2偏心部62は、軸線Oに対して径方向Rに同一量ずつ偏心している。第1偏心部61および第2偏心部62は、軸方向Zから見た平面視で例えば同形同大に形成されるとともに、周方向θに180°の位相差をもって配置されている。
【0021】
複数のローラは、第1ローラ46と、第2ローラ47とを含む。第1ローラ46および第2ローラ47の各々は、軸方向Zに沿う筒状に形成されている。第1ローラ46は、第1偏心部61の外周側に配置されている。一方で、第2ローラ47は、第2偏心部62の外周側に配置されている。第1ローラ46および第2ローラ47の各々は、シャフト31の回転に伴い、各ローラ46,47の外周面46a,47aを各シリンダ41,42の内周面に摺接させながらシリンダ室51,52の内側で偏心回転する(
図2参照)。
【0022】
次に、シリンダの内部構成について説明する。
ここで、第1シリンダ41の内部構成と第2シリンダ42の内部構成は、偏心部61,62およびローラ46,47の位相差に応じて異なる部分以外は、互いに略同じである。このため、ここでは第1シリンダ41の内部構成を代表して説明する。そして、第2シリンダ42において第1シリンダ41と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0023】
図2は、
図1のF2−F2線における圧縮機構部33の断面図である。
図2に示すように、第1シリンダ41の内周面には、径方向Rの外側に向けて延びたベーン溝71が設けられている。このベーン溝71は、軸方向Zにおいて第1シリンダ41の全体に亘って形成されている。ベーン溝71には、径方向Rに沿ってスライド移動可能なベーン72が挿入されている。ベーン72は、図示しない付勢手段によって径方向Rの内側に向けて付勢され、その先端部が第1シリンダ室51内で第1ローラ46の外周面46aに当接している。これにより、ベーン72は、第1シリンダ室51の内部を、吸込室74と圧縮室75とに仕切っている。ベーン72は、第1ローラ46の偏心回転に伴って第1シリンダ室51内に進退する。これにより、第1シリンダ室51内に気体冷媒を吸い込む吸込動作および第1シリンダ室51内で気体冷媒を圧縮する圧縮動作が行われる。
【0024】
また、第1シリンダ41には、吸込孔76と、吐出溝77とが設けられている。
吸込孔76は、第1シリンダ室51から径方向Rの外側に向けて第1シリンダ41を貫通している。吸込孔76の径方向Rの外側の端部には、上述した吸い込みパイプ21が接続されている。一方で、吸込孔76の径方向Rの内側の端部は、第1シリンダ室51の吸込室74に連通している。吸込孔76は、吸い込みパイプ21から送られた気体冷媒を第1シリンダ室51の吸込室74に流入させる。
【0025】
一方で、吐出溝77は、圧縮室75に設けられている。吐出溝77は、第1シリンダ41の内周面に軸方向Zに沿って設けられ、主軸受44の主軸受吐出孔78(
図1参照)に連通している。吐出溝77は、圧縮室75で圧縮された気体冷媒を主軸受44の主軸受吐出孔78に導く。一方で、第2シリンダ42に設けられた吐出溝77は、副軸受45の副軸受吐出孔79(
図1参照)に連通している。第2シリンダ42の吐出溝77は、圧縮室75で圧縮された気体冷媒を副軸受45の副軸受吐出孔79に導く。
【0026】
図1に示すように、主マフラ部材130は、主軸受44との間に主マフラ室105を形成する。第1シリンダ41の圧縮室75で圧縮された気体冷媒(以下、圧縮ガスと言う場合がある。)は、主軸受吐出孔78から主マフラ室105に吐出される。主マフラ室105は、主マフラ室吐出口106を有する。主マフラ室105に吐出された圧縮ガスは、主マフラ室吐出口106からケース34の内部に吐出される。主マフラ部材130の具体的な構成については後述する。副マフラ部材180は、副軸受45との間に副マフラ室185を形成する。第2シリンダ42の圧縮室75で圧縮された気体冷媒は、副軸受吐出孔79から副マフラ室185に吐出される。副マフラ室185は、第2シリンダ42、仕切板43および第1シリンダ41に形成された貫通孔(不図示)を介して、主マフラ室105に連通する。そのため、副マフラ室185に吐出された圧縮ガスは、主マフラ室吐出口106からケース34の内部に吐出される。
【0027】
ケース34は、電動機部32の回転子37の+Z側に、吐出管35を有する。吐出管35は、ケース34の内部に吐出された圧縮ガスを、凝縮器3など、ケース34の外部における冷凍サイクル装置の構成機器に吐出する。
【0028】
次に、圧縮機構部33に設けられた給油通路80について説明する。
ここで、第1偏心部61の内部構成と第2偏心部62の内部構成は、互いに略同じである。このため、ここでは第1偏心部61の内部構成を代表して説明する。
【0029】
図3は、
図1のP部における主軸受44周辺の拡大図である。
図3に示すように、給油通路80は、シャフト31に設けられた主通路81と、第1偏心部61に設けられた副通路82および連通路84とを有する。
【0030】
主通路81は、軸線Oと同軸状に設けられ、シャフト31の内部に形成されている。主通路81は、軸方向Zに沿ってシャフト31の内部を延びている。主通路81は、副軸受45に支持されるシャフト31の端部においてシャフト31の外部に開口している。ここで、ケース34内には、潤滑油Jが収容されており、圧縮機構部33の一部が潤滑油J内に浸かっている。主通路81には、ケース34に収容された潤滑油Jが流入する。また、主通路81の内部には、シャフト31の回転に伴って、潤滑油Jを主通路81内に汲み上げるねじり板等のポンプ手段(不図示)が設けられている。
【0031】
副通路82は、例えば偏心部61の外周面61aに設けられた溝である。言い換えると、副通路82は、偏心部61の外周面61aとローラ46の内周面46bとの間に形成されている。副通路82は、軸方向Zに沿って延びており、軸方向Zにおいて偏心部61,62の全体に亘って形成されている。
【0032】
連通路84は、径方向Rに沿って偏心部61の内部に設けられている。連通路84は、主通路81と副通路82との間に設けられ、主通路81と副通路82とを接続している。これにより、主通路81内の潤滑油Jは、シャフト31の回転に伴う遠心力によって、連通路84を通じて副通路82に供給される。副通路82に供給された潤滑油Jは、副通路82から圧縮機構部33の摺動部分に供給される。
【0033】
主軸受44、主マフラ部材130および回転子37の構成について詳しく説明する。
最初に、主軸受44の構成について詳しく説明する。
図3に示すように、主軸受44は、軸受部100と、閉塞部110と、を有する。軸受部100および閉塞部110は、金属材料により一体的に形成される。主軸受44は、全体を鋳造した後に、一部に機械加工を施して形成される。そのため、主軸受44の外表面の大部分は鋳肌で形成される。
【0034】
軸受部100は、軸方向Zにおいて電動機部32と圧縮機構部33との間に配置され、シャフト31の外周を支持する。軸受部100は円筒状に形成される。軸受部100の−Z側は、外径が一定に形成される。軸受部100の+Z側には、外径が−Z側より小さい径小部102が形成される。径小部102は、+Z側に向かって先細るように形成される。
閉塞部110は、圧縮機構部33の第1シリンダ室51の+Z側(第3側)を閉塞する。閉塞部110は円盤状に形成される。閉塞部110は、軸受部100の−Z側の端部に連続する。閉塞部110については、より具体的な構成を後述する。
【0035】
次に、主マフラ部材130の構成について詳しく説明する。
主マフラ部材130は、鋼板材料等により形成される。主マフラ部材130は、主軸受44の軸受部100の+R側に配置される。主マフラ部材130は、主軸受44との間に主マフラ室105を形成する。主マフラ部材130の−Z側の端部には、+R側に広がるフランジ部138が形成される。フランジ部138は、主軸受44の閉塞部110の+Z側の端面に固定される。主マフラ部材130は、+Z側に向かって先細るように漏斗状に形成される。主マフラ部材130の+Z側の端部には、内径が一定のまま軸方向Zに沿って伸びる整流部134が形成される。整流部134は、主軸受44の軸受部100と同軸状に配置される。整流部134は、圧縮ガスの流れを、環状で+Z側に向かうように整流する。整流部134の内周面は、主軸受44の軸受部100の外周面100aとの間に、環状の主マフラ室吐出口106を形成する。主マフラ室吐出口106は、整流部134の+Z側の端部に形成される。主マフラ室吐出口106は、圧縮ガスを主マフラ室105からケース34の内部に吐出する。
【0036】
次に、回転子37の構成について詳しく説明する。
回転子37は、大内径部92と、圧縮ガス流路94と、を有する。
大内径部(カウンタボア)92は、−Z側の端面から一定の深さに形成される。大内径部92は、シャフト31の全周囲にわたってリング状に形成され、シャフト31が連結される部分よりも内径が大きくされている。大内径部92の内部には、主軸受44の軸受部100の径小部102が挿入される。これにより、回転子37と主軸受44とが軸方向Zにおいて重なる。したがって、回転式圧縮機2を軸方向Zにおいて小型化できる。なお、シャフト31の給油通路80に汲み上げられて圧縮機構部33の潤滑に利用されなかった潤滑油Jを、シャフト31の外周面から大内径部92の内部に吐出してもよい。
圧縮ガス流路94は、大内径部92の底面から回転子37の+Z側の端面にかけて、回転子37を貫通する。複数の圧縮ガス流路94が、周方向θに間隔を空けて形成される。
【0037】
ここで、圧縮ガスの吐出動作について詳しく説明する。
前述したように、第1シリンダ室51で圧縮された気体冷媒(圧縮ガス)は、主軸受吐出孔78から主マフラ室105に吐出される。主マフラ室105に吐出された圧縮ガスは、主マフラ室吐出口106からケース34の内部に吐出される。電動機部32は、回転子37に形成された圧縮ガス流路94など、電動機部32を軸方向Zに貫通する空間を有する。ケース34の内部における電動機部32の−Z側に吐出された圧縮ガスは、圧縮ガス流路94などの空間を通って、電動機部32の+Z側に流れる。電動機部32の+Z側に流れた圧縮ガスは、吐出管35(
図1参照)から冷凍サイクル装置の構成機器に吐出される。
【0038】
ところで、ケース34の内部に収容された潤滑油Jは、シャフト31の給油通路80に汲み上げられて、圧縮機構部33の摺動部分に供給される。そのため、第1シリンダ室51で圧縮された気体冷媒(圧縮ガス)には潤滑油Jが含まれる。潤滑油Jを含んだ圧縮ガスが冷凍サイクル装置の構成機器に供給されると、冷凍サイクル装置の構成機器の効率が低下する。また潤滑油Jを含んだ圧縮ガスが回転式圧縮機2の外部に吐出されると、圧縮機構部33において潤滑油Jが不足する。
【0039】
これに対して本実施形態では、主マフラ室吐出口106を形成する主軸受44の軸受部100の外周面100aが、大内径部92の内周面92aより、+R側に配置される。すなわち、軸線Oから、軸受部100の外周面100aまでの距離(外周面100aの半径)をR1とする。軸線Oから、大内径部92の内周面92aまでの距離(内周面92aの半径)をR2とする。このとき、本実施形態の回転式圧縮機2はR1>R2を満たす。
【0040】
この構成によれば、主マフラ室吐出口106から+Z方向に吐出された圧縮ガス108が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。このとき回転子37は回転しているので、圧縮ガス108に含まれる潤滑油108aは、遠心力により+R方向に飛ばされる。一方、圧縮ガス108に含まれる気体冷媒108bは、大内径部92の内部に流入する。さらに気体冷媒108bは、大内径部92の底面に形成された圧縮ガス流路94に流入し、吐出管35から外部に吐出される。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。したがって、回転式圧縮機2から吐出される圧縮ガスへの潤滑油の混入を抑制できる。これに伴って、冷凍サイクル装置の構成機器の効率が低下するのを防止できる。また、圧縮機構部33における潤滑油Jの不足を防止できる。
【0041】
なお、大内径部92および圧縮ガス流路94の内部でも、重力および遠心力により、圧縮ガスから潤滑油が分離される。
図1に示すように、シャフト31の+Z側の端部には、フランジディスク96が装着される。フランジディスク96は、シャフト31の全周囲において+R側に広がる。フランジディスク96は、圧縮ガス流路94の+Z側を覆うように配置される。圧縮ガス流路94から+Z側に吐出された圧縮ガスは、フランジディスク96に衝突する。フランジディスク96はシャフト31と共に回転しているので、圧縮ガスに含まれる潤滑油は、遠心力により+R方向に飛ばされる。このようにフランジディスク96でも、圧縮ガスから潤滑油が分離される。
【0042】
図3に示すように、軸方向Zにおける主マフラ室吐出口106と回転子37との距離をL1とする。軸方向Zにおける大内径部92の深さをL2とする。このとき、本実施形態の回転式圧縮機2はL1<L2を満たす。L1がL2より小さいので、主マフラ室吐出口106から吐出された圧縮ガス108の大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。また、L2がL1より大きいので、軸受部100の多くの部分を大内径部92の内部に配置できる。したがって、回転式圧縮機2を軸方向Zにおいて小型化できる。
【0043】
また、主マフラ室吐出口106の軸方向Zに直交する開口面積をS1とする。回転子37の−Z側の端面における大内径部92の内周面と軸受部100の径小部102の外周面100a間の通路面積をS2とする。このとき、本実施形態の回転式圧縮機2はS1<S2を満たす。S1がS2より小さいので、主マフラ室吐出口106からの圧縮ガスの吐出速度が速くなる。そのため、吐出された圧縮ガスの大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。また、S2がS1より大きいので、圧縮ガス108に含まれる気体冷媒108bが、大内径部92内に流入しやすくなる。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。
【0044】
また、主マフラ室吐出口106の軸方向Zに直交する開口面積をS1とする。圧縮機構部33の吐出孔の総開口面積をS3とする。ここで、圧縮機構部33の吐出孔の総開口面積S3は、圧縮機構部33における全ての圧縮ガス吐出孔の開口面積を合計したものである。すなわち、圧縮機構部33の吐出孔の総開口面積は、主軸受吐出孔78、副軸受吐出孔79、後述する第1仕切板吐出孔143および第2仕切板吐出孔の開口面積を合計したものである。このとき、本実施形態の回転式圧縮機2はS1<S3を満たす。S1がS3より小さいので、主マフラ室吐出口106からの圧縮ガスの吐出速度が速くなる。そのため、吐出された圧縮ガスの大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。
【0045】
主軸受44の閉塞部110の構成について詳しく説明する。
ここで、主軸受44の閉塞部110の構成と副軸受45の閉塞部の構成は、互いに略同じである。このため、ここでは主軸受44の閉塞部110の構成を代表して説明する。
図4は、
図3のF4−F4線における圧縮機構部33の断面図である。
図5は、
図4のF5−F5線における圧縮機構部33の断面図である。なお
図4では、弁体120およびストッパ122の記載を省略している。
【0046】
図5に示すように、閉塞部110は、主軸受吐出孔78と、弁体120と、ストッパ122と、弁体固定部124と、を有する。本願において、X方向は以下のように定義される。
図4に示すように、主軸受吐出孔78の中心と弁体固定部124の中心とを結ぶ線の伸びる方向がX方向である。X方向において、主軸受吐出孔78の側が+X側であり、弁体固定部124の側が−X側である。
【0047】
図5に示すように、閉塞部110は、圧縮機構部33の第1シリンダ室51の+Z側(第3側)を閉塞する。閉塞部110は円盤状に形成される。閉塞部110の+Z側の表面には凹部111が形成される。凹部111には、弁体120およびストッパ122が収容される。凹部111はX方向に沿って伸びる。凹部111の底には、薄肉の底壁112が形成される。
【0048】
主軸受吐出孔78は、凹部111の+X側に形成される。主軸受吐出孔78は、底壁112を貫通して形成される。ところで、第1シリンダ室51において圧縮動作が終了しても、主軸受吐出孔78の内側には圧縮ガスが残る。この圧縮ガスが第1シリンダ室51の内部に再膨張すると、新たな気体冷媒の吸込動作が妨害されるので、回転式圧縮機2の圧縮効率が低下する。そのため、主軸受吐出孔78の内側の死容積を小さくすることが望ましい。本実施形態では、主軸受吐出孔78が薄肉の底壁112に形成されるので、主軸受吐出孔78の内側の死容積が小さい。
【0049】
弁体120は、金属材料等により板状に形成される。弁体120は、底壁112の+Z側に配置される。弁体120は、主軸受吐出孔78から弁体固定部124にかけてX方向に伸びる。弁体120の+X側の弁頭部は、Z方向に移動して主軸受吐出孔78を開閉する。
【0050】
ストッパ122は、金属材料等により、弁体120よりも厚い板状に形成される。ストッパ122は、弁体120の+Z側に配置される。ストッパ122は、主軸受吐出孔78から弁体固定部124にかけてX方向に伸びる。ストッパ122は、−X側から+X側にかけて+Z側に湾曲している。ストッパ122は、弁体120の+X側の弁頭部が、+Z側に過大に変位するのを規制する。
【0051】
弁体固定部124は、凹部111の−X側の端部に形成される。弁体固定部124は、リベットまたはネジなどを有する。弁体固定部124は、弁体120およびストッパ122の−X側の端部を、凹部111の底壁112に固定する。
【0052】
閉塞部110の凹部111の底壁112における+Z側の表面(以下、単に表面と言う。)の形状について説明する。
図5に示すように、主軸受吐出孔78の周囲では、底壁112の表面が反シリンダ室51側である+Z側(第3側)に突出して、弁座114が形成される。弁体固定部124では、底壁112の表面が弁座114と同等に+Z側に突出する。弁座114の周囲の第1領域115では、底壁112の表面が弁座114より低く形成される。
図4に示すように、第1領域115は、弁座114の周囲から弁体固定部124の近くまで伸びる。これにより、弁体固定部124に固定された弁体120が、弁座114に確実に当接して、主軸受吐出孔78を閉塞する。
【0053】
図5に示すように、底壁112の+X側の端部には傾斜面119が形成される。傾斜面119は、主軸受吐出孔78の周囲から、凹部111の開口縁部にかけて、+X側および+Z側に伸びる。傾斜面119は、−X側から+X側にかけて徐々に傾斜が大きくなる曲面状に形成される。主軸受吐出孔78から+Z方向に吐出された圧縮ガスは、弁体120に衝突して+X方向に進路を変える。+X方向に進行した圧縮ガスは、傾斜面119により流れをガイドされ、凹部111の+X側の端部から+Z方向に吐出される。すなわち傾斜面119は、弁座114と弁体120との間から吐出された圧縮ガスを+Z側に案内する。これにより、主マフラ室吐出口106から圧縮ガスを高速で+Z側に吐出できる。なお
図4に示すように、凹部111は、+X側の端部から閉塞部110の外周に沿って周方向θに延長される。圧縮ガスは、凹部111の周方向θの端部から+Z方向に吐出される。
【0054】
図5に示すように、弁座114の周囲の第1領域115と傾斜面119との間に、−Z側に窪んだ第2領域117が形成される。第2領域117は、第1領域115の+X側の端部から略垂直に−Z側に窪んで形成される。第2領域117から傾斜面119にかけて、底壁112の表面は+Z側に連続的に変化する。傾斜面119のうち、軸方向Zの位置が第1領域115より−Z側の部分は第2領域117に含まれる。
図4において、第2領域117にはハッチングが施されている。
【0055】
本実施形態では、第1領域115より−Z側に窪んだ第2領域117を有する。そのため、弁座114と弁体120との間から+X方向に吐出された圧縮ガスの流通抵抗が小さくなる。これにより、
図3に示す主マフラ室吐出口106から圧縮ガスが高速で+Z側に吐出される。そのため、吐出された圧縮ガスの大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。
【0056】
ところで、第2領域117では第1領域115に比べて底壁112の厚さが薄くなる。そのため、第2領域117において底壁112の剛性の確保が課題になる。
図4に示すように、第2領域117のうち、軸方向Zから見て第1シリンダ室51に重なる部分を内側部分117bとする。内側部分117bには、第1シリンダ室51から大きな圧力が作用するため、剛性が要求される。一方で、第2領域117のうち、軸方向Zから見て第1シリンダ室51の周囲の第1シリンダ41に重なる部分を外側部分117aとする。外側部分117aには第1シリンダ室51から圧力が作用しないので、剛性が要求されない。本実施形態では、外側部分117aの面積が内側部分117bの面積より大きい。これにより、第2領域117の底壁112を薄くした場合でも、第2領域117における底壁112の剛性を確保できる。
【0057】
図6は、実施形態の変形例であって、
図3のF4−F4線に相当する部分における圧縮機構部の断面図である。実施形態と同様の構成となる部分の説明は省略される。
図6に示す変形例では、凹部211の+X側の端部が、周方向θに延長されることなく、そのまま+X側に伸びている。変形例では、凹部211の+X側の端部が、X方向およびZ方向に直交するY方向に広がっている。実施形態と同様に変形例でも、弁座214の周囲の第1領域215と傾斜面219との間に、−Z側に窪んだ第2領域217が形成される。そのため、圧縮ガスの流通抵抗が小さい。また第2領域217のうち、外側部分217aの面積が内側部分217bの面積より大きい。これにより、第2領域217における底壁212の剛性を確保できる。
【0058】
仕切板43の構成について詳しく説明する。
近時では、回転式圧縮機2の大容量化が望まれている。ただし、ケース34の共通化の要求もあって、各シリンダ室51,52を径方向Rに拡大するのは困難である。そこで、各シリンダ室51,52を軸方向Zに拡大して、回転式圧縮機2を大容量化している。大容量の回転式圧縮機2では、圧縮ガスの吐出量が多くなる。しかし、各シリンダ室51,52の径方向Rへの拡大は困難であるため、主軸受吐出孔78の開口面積の拡大には限界がある。そこで大容量の回転式圧縮機2は、仕切板吐出口を有し、圧縮ガスを仕切板に吐出する。
【0059】
図5に示すように、仕切板43は、第1仕切板140と、第2仕切板160と、を有する。ここで、第1仕切板140の構成と第2仕切板160の構成は、互いに略同じである。このため、ここでは第1仕切板140の構成を代表して説明する。前述したように、第1仕切板140は、第1シリンダ41の内部空間に面して、第1シリンダ室51の一面を規定している。
【0060】
第1仕切板140は、第1仕切板吐出孔143と、弁体150と、ストッパ152と、弁体固定部154と、を有する。本願において、X´方向は以下のように定義される。第1仕切板吐出孔143の中心と弁体固定部154の中心とを結ぶ線の伸びる方向がX´方向である。X´方向において、第1仕切板吐出孔143の側が+X´側であり、弁体固定部154の側が−X´側である。
【0061】
第1仕切板140は、圧縮機構部33の第1シリンダ室51の−Z側を閉塞する。第1仕切板140は円盤状に形成される。第1仕切板140の−Z側の表面には凹部141が形成される。凹部141には、弁体150およびストッパ152が収容される。凹部141はX´方向に沿って伸びる。凹部141の底には、薄肉の底壁142が形成される。
【0062】
第1仕切板吐出孔143は、凹部141の+X´側に形成される。第1仕切板吐出孔143は、底壁142を貫通して形成される。第1仕切板吐出孔143が薄肉の底壁142に形成されるので、第1仕切板吐出孔143の内側の死容積は小さい。また、第1仕切板140の凹部141の容積は、主軸受44の閉塞部110の凹部111の容積に比べて小さい。そのため、第1仕切板140の凹部141を流通可能な圧縮ガスの流量は、閉塞部110の凹部111を流通可能な圧縮ガスの流量に比べて少ない。したがって、第1仕切板吐出孔143の開口面積は、主軸受吐出孔78の開口面積に比べて小さい。
【0063】
弁体150は、金属材料等により板状に形成される。弁体150は、底壁142の−Z側に配置される。弁体150は、第1仕切板吐出孔143から弁体固定部154にかけてX´方向に伸びる。弁体150の+X´側の弁頭部は、Z方向に移動して第1仕切板吐出孔143を開閉する。
【0064】
ストッパ152は、金属材料等により、弁体150よりも厚い板状に形成される。ストッパ152は、弁体150の−Z側に配置される。ストッパ152は、第1仕切板吐出孔143から弁体固定部154にかけてX´方向に伸びる。ストッパ152は、−X´側から+X´側にかけて−Z側に湾曲している。ストッパ152は、弁体150の+X´側の弁頭部が、−Z側に過大に変位するのを規制する。
【0065】
弁体固定部154は、凹部141の−X´側の端部に形成される。弁体固定部154は、リベットまたはネジなどを有する。弁体固定部154は、弁体150およびストッパ152の−X´側の端部を、凹部141の底壁142に固定する。
【0066】
第1仕切板吐出孔143の周囲では、底壁142の表面が−Z側(第3側)に突出して、弁座144が形成される。弁体固定部154では、底壁142の表面が弁座144と同等に−Z側に突出する。弁座144の周囲の第1領域145では、底壁142の表面が弁座144より低く形成される。第1領域145は、弁座144の周囲から弁体固定部154の近くまで伸びる。これにより、弁体固定部154に固定された弁体150が、弁座144に確実に当接して、第1仕切板吐出孔143を閉塞する。
【0067】
第1仕切板140を、主軸受44の閉塞部110と比較して説明する。
図1に示すように、第1仕切板140は、第1シリンダ41と第2シリンダ42との間に配置される。第1シリンダ室51にはシャフト31の第1偏心部61が配置され、第2シリンダ室52にはシャフト31の第2偏心部62が配置される。第1偏心部61および第2偏心部62は、周方向θに180°の位相差をもって配置される。そのため、シャフト31の回転により、シャフト31の第1偏心部61と第2偏心部62との間の部分(以下、中間部分と言う。)には、大きな曲げモーメントが作用する。第1仕切板140の高さを高くすると、シャフト31の中間部分が長くなる。そのため、回転時の曲げモーメントによってシャフト31の中間部分が曲がりやすくなり、シャフト31の信頼性が低下する。
【0068】
第1仕切板140および閉塞部110には、第1シリンダ室51から大きな圧力が作用する。これにより第1仕切板140および閉塞部110が変形すると、第1ローラ46(
図3参照)との干渉が発生する。そのため、第1仕切板140および閉塞部110の剛性を確保する必要がある。第1仕切板140の剛性を確保するには、
図5に示す第1仕切板140の高さH2を高くすることが有効である。しかし、前述した理由により第1仕切板140の高さH2を高くすることは困難である。一方で、閉塞部110の高さH1を高くすることは可能である。
【0069】
そこで本実施形態では、第1仕切板140の軸方向Zにおける高さH2が、閉塞部110の軸方向Zにおける高さH1よりも小さい。一方で、第1仕切板140の底壁142の第1領域145の軸方向Zにおける厚さT2が、閉塞部110の底壁112の第1領域115の軸方向Zにおける厚さT1よりも大きい。第1仕切板140の高さH2が小さいので、シャフト31の信頼性を確保できる。第1仕切板140の高さH2が小さくても、底壁142の厚さT2が大きいので、第1仕切板140の剛性を確保できる。一方、閉塞部110の高さH1が大きいので、底壁112の厚さT1が小さくても、閉塞部110の剛性を確保できる。閉塞部110の底壁112の厚さT1が小さいので、主軸受吐出孔78の死容積を小さくできる。
ここでは、第1仕切板140と主軸受44の閉塞部110との関係について説明したが、第2仕切板160と副軸受45の閉塞部との関係についても同様である。
【0070】
以上に詳述したように、
図1に示す本実施形態の回転式圧縮機2は、シャフト31と、電動機部32と、圧縮機構部33と、主マフラ部材130と、ケース34と、を持つ。電動機部32は、回転子37と、固定子36と、を有する。回転子37は、シャフト31の軸方向Zの+Z側に配置されシャフト31に固定される。固定子36は、回転子37の+R側に配置される。圧縮機構部33は、シャフト31の軸方向Zにおける+Z側とは反対の−Z側に配置され、シャフト31の回転によりガスを圧縮する。主マフラ部材130は、圧縮機構部33を構成する電動機部32側の主軸受44の軸受部100の+R側に配置され、圧縮機構部33で圧縮された圧縮ガスが吐出される主マフラ室105を形成するとともに、内周面と軸受部100の外周面100a間に主マフラ室吐出口106を形成する。ケース34は、シャフト31、電動機部32、圧縮機構部33および主マフラ部材130を内部に収容するとともに、+Z側に吐出管35を有し底部に潤滑油Jを貯留する。前記回転子37は、大内径部92と、圧縮ガス流路94と、を有する。大内径部92は、−Z側の端面側に形成される。圧縮ガス流路94は、大内径部92の底面から+Z側の端面にかけて貫通する。主マフラ室吐出口106を形成する軸受部100の外周面100aは、大内径部92の内周面92aより、径方向Rの+R側に配置される。
【0071】
この構成によれば、主マフラ室吐出口106から+Z方向に吐出された圧縮ガス108が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。このとき回転子37は回転しているので、圧縮ガス108に含まれる潤滑油108aは、遠心力により+R方向に飛ばされる。一方、圧縮ガス108に含まれる気体冷媒108bは、大内径部92の内部に流入する。さらに気体冷媒108bは、大内径部92の底面に形成された圧縮ガス流路94に流入し、吐出管35から外部に吐出される。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。したがって、回転式圧縮機2から吐出される圧縮ガスへの潤滑油の混入を抑制できる。これに伴って、冷凍サイクル装置の構成機器の効率が低下するのを防止できる。また、圧縮機構部33における潤滑油Jの不足を防止できる。
【0072】
本実施形態の回転式圧縮機2は、軸方向Zにおける主マフラ室吐出口106と回転子37との距離をL1とし、軸方向Zにおける大内径部92の深さをL2としたとき、L1<L2を満たす。
この構成によれば、L1がL2より小さいので、主マフラ室吐出口106から吐出された圧縮ガスの大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。また、L2がL1より大きいので、軸受部100の多くの部分を大内径部92の内部に配置できる。したがって、回転式圧縮機2を軸方向Zにおいて小型化できる。
【0073】
本実施形態の回転式圧縮機2は、回転子37の大内径部92内に軸受部100の一部が位置するように配置され、主マフラ室吐出口106の開口面積をS1とし、大内径部92の内周面と軸受部100の径小部102の外周面100a間の通路面積をS2としたとき、S1<S2を満たす。
この構成によれば、S1がS2より小さいので、主マフラ室吐出口106からの圧縮ガスの吐出速度が速くなる。そのため、吐出された圧縮ガスの大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。また、S2がS1より大きいので、圧縮ガス108に含まれる気体冷媒108bが、大内径部92に流入しやすくなる。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。
【0074】
本実施形態の回転式圧縮機2は、主マフラ室吐出口106の開口面積をS1とし、圧縮機構部の吐出孔の総開口面積をS3としたとき、S1<S3を満たす。ここで、圧縮機構部の吐出孔の総開口面積S3は、圧縮機構部33における全ての圧縮ガス吐出孔の開口面積を合計したものである。
この構成によれば、S1がS3より小さいので、主マフラ室吐出口106からの圧縮ガスの吐出速度が速くなる。そのため、吐出された圧縮ガスの大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。
【0075】
図5に示すように、本実施形態の回転式圧縮機2において、圧縮機構部33は、主軸受44の閉塞部110を有する。閉塞部110は、ガスを圧縮する第1シリンダ室51の+Z側を閉塞する。閉塞部110は、主軸受吐出孔78と、弁体120と、弁座114と、傾斜面119と、第2領域117と、を有する。弁体120は、主軸受吐出孔78を開閉する。弁座114は、主軸受吐出孔78の周囲から第1シリンダ室51の反対側に突出する。傾斜面119は、弁体120と弁座114との間から吐出された圧縮ガスを案内する。第2領域117は、弁座114の周囲の第1領域115と傾斜面119との間に設けられ第1領域115より第1シリンダ室51側に窪む。
この構成によれば、第1領域115より−Z側に窪んだ第2領域117を有する。そのため、弁座114と弁体120との間から吐出された圧縮ガスの流通抵抗が小さくなる。これにより、
図3に示す主マフラ室吐出口106から圧縮ガス108が高速で吐出される。そのため、吐出された圧縮ガスの大部分が、回転子37の−Z側の端面に衝突する。これにより、圧縮ガスに含まれる潤滑油を分離できる。
【0076】
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、本実施形態の回転式圧縮機2と、凝縮器3と、膨張装置4と、蒸発器5と、を備える。凝縮器3は、回転式圧縮機2に接続される。膨張装置4は、凝縮器3に接続される。蒸発器5は、膨張装置4に接続される。
この構成によれば、冷凍サイクル装置1は、吐出される圧縮ガスへの潤滑油の混入を抑制できる回転式圧縮機2を有する。そのため、蒸発器および凝縮器などの効率低下を抑制できる。したがって、効率の高い冷凍サイクル装置を提供できる。また冷凍サイクル装置1は、圧縮機構部33における潤滑油Jの不足を防止できる回転式圧縮機2を有する。したがって、信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供できる。
【0077】
実施形態の主軸受44の軸受部100および閉塞部110は、一体に形成される。これに対して軸受部100および閉塞部110は、別体に形成されてもよい。
実施形態の回転式圧縮機2のシリンダの個数は、第1シリンダ41および第2シリンダ42の2個である。これに対してシリンダの個数は、1個でもよく、3個以上でもよい。
実施形態の圧縮機構部33は、ローラおよびブレードが別体に形成されたロータリ式の圧縮機を採用している。これに対して圧縮機構部33は、ローラおよびブレードが一体に形成されたスイング式の圧縮機を採用してもよい。
【0078】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、主マフラ室吐出口106を形成する軸受部100の外周面100aが、大内径部92の内周面92aより、径方向Rの+R側に配置される。これにより、回転式圧縮機2から吐出される圧縮ガスへの潤滑油の混入を抑制できる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。