特許第6773897号(P6773897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773897
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20201012BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20201012BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61K31/485
   A61K9/70 401
   A61K47/22
   A61K47/32
   A61K47/34
   A61P25/04
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-514437(P2019-514437)
(86)(22)【出願日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】JP2018016117
(87)【国際公開番号】WO2018198925
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-86357(P2017-86357)
(32)【優先日】2017年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-129601(P2017-129601)
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-129741(P2017-129741)
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島 滝登
(72)【発明者】
【氏名】松戸 俊之
(72)【発明者】
【氏名】石垣 賢二
【審査官】 古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/060122(WO,A1)
【文献】 特開2012−255043(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/041714(WO,A1)
【文献】 特開昭61−083116(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/102393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、ブトルファノール及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤と、を含有し、
前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤が2−メルカプトベンズイミダゾールである、貼付剤。
【請求項2】
前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.01〜2.0質量%である請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記粘着基剤が、ゴム系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記粘着剤層におけるブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が、ブトルファノール酒石酸付加塩換算で、前記粘着剤層の全質量に対して3〜20質量%である請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤層が、粘着付与剤及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種を更に含有する請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤に関するものであり、より詳しくは、ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブトルファノールは、モルフィナン骨格分子構造を有する17−(シクロブチルメチル)モルフィナン−3,14−ジオール(17−(Cyclobutylmethyl)morphinan−3,14−diol)の一般名である。ブトルファノールはオピオイド系鎮痛薬に分類される薬物であり、一般に、その酒石酸付加塩である酒石酸ブトルファノールを含有する注射剤として利用されている。ブトルファノールはまた、例えば、米国特許第3775414号明細書(特許文献1)において、N−シクロブチルメチル−3,14−ジヒドロキシモルフィナン(N−cyclobutylmethyl−3,14−dihydroxymorphinan)として開示されている。
【0003】
さらに、例えば、M.Svozilら、Drug Development and Industrial Pharmacy、2007年、33(5)、p.559−67(非特許文献1)には、ブトルファノールを経皮吸収製剤の薬物として用いることが記載されている。また、国際公開第2016/060122号(特許文献2)には、支持体層と粘着剤層とを備え、前記粘着剤層にブトルファノール及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、高級脂肪族アルコールと、非架橋型でありかつ構成モノマーとして酢酸ビニルを含有しないポリビニルピロリドンと、を含有する貼付剤が記載されている。さらに、このような貼付剤の粘着剤層に含有される粘着基剤としては、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤、及びウレタン系粘着基剤等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3775414号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/060122号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M.Svozilら、Drug Development and Industrial Pharmacy、2007年、33、p.559−567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが更なる検討をおこなったところ、支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層がブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩と粘着基剤とを含有する貼付剤においては、製造方法や保存方法によっては、ブトルファノールの分解生成物であるブトルファノール酸化体が生成して前記粘着剤層中に含有されてしまうことを見出した。医薬品においては、薬効や製剤特性に関する要求を満たす他にも、安全性の確認のために設けられている様々な基準を満たす必要がある。このような基準としては、例えば、医薬品規制調和国際会議(ICH:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)において、「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン(ICH Q3B(R2))」が設けられているが、前記ブトルファノール酸化体は、かかるガイドラインの下で報告義務のある分解生成物に該当する可能性がある。そのため、このようなブトルファノール酸化体の生成をより確実に防止したいという医薬品開発上の新たな要請が生じた。
【0007】
本発明は上記要請に鑑みてなされたものであり、従来の貼付剤に比べてブトルファノール酸化体の生成が顕著に抑制される貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層がブトルファノール及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種(以下、場合により「ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩」という)、並びに、粘着基剤を含有する貼付剤において、前記粘着剤層に、抗酸化剤として特に硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を更に配合することによって、ブトルファノール酸化体が殆ど生成せず、さらに、長期間保存してもその生成を顕著に抑制できることを見出した。加えて、このような貼付剤においては前記粘着剤層(特にゴム系粘着基剤を含有する粘着剤層)における結晶析出(ブトルファノールフリー体の結晶析出)も更に十分に抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、ブトルファノール及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤と、を含有し、
前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤が2−メルカプトベンズイミダゾールである、ものである。
【0011】
また、本発明の貼付剤においては、前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.01〜2.0質量%であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の貼付剤においては、前記粘着基剤が、ゴム系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層におけるブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が、ブトルファノール酒石酸付加塩換算で、前記粘着剤層の全質量に対して3〜20質量%であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が、粘着付与剤及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種を更に含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の貼付剤に比べてブトルファノール酸化体の生成が顕著に抑制される貼付剤を提供することが可能となる。さらに本発明によれば、粘着剤層における結晶析出もより十分に抑制されるため、特に経時安定性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0017】
本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、ブトルファノール及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤と、を含有するものである。
【0018】
本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える。本発明の貼付剤としては、前記支持体層と、該支持体層の少なくとも一方の面に積層された前記粘着剤層とを備えることが好ましい。前記支持体層としては、前記粘着剤層を支持し得るものであれば特に制限されず、貼付剤の支持体層として公知のものを適宜採用することができる。本発明に係る支持体層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミニウムなどの金属が挙げられる。これらの中でも、薬物非吸着性や薬物非透過性の観点からは、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。前記支持体層の形態としては、例えば、フィルム;シート、シート状多孔質体、シート状発泡体等のシート類;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体が挙げられる。また、前記支持体層の厚みとしては、特に制限されないが、貼付剤を貼付する際の作業容易性及び製造容易性の観点からは、5〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0019】
本発明の貼付剤としては、前記粘着剤層の前記支持体層とは反対の面上に離型ライナーを更に備えるものであってもよい。かかる離型ライナーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミ、紙などの材質からなるフィルムやシート及びこれらの積層体が挙げられる。これらの離型ライナーとしては、前記粘着剤層から容易に剥離できるように該粘着剤層と接触する側の面に含シリコーン化合物コートや含フッ素化合物コート等の離型処理が施されたものであることが好ましい。
【0020】
<薬物>
本発明に係る粘着剤層は、薬物としてブトルファノール及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。本発明において、ブトルファノール(Butorphanol)とは、分子式C2129NOで表わされる17−(シクロブチルメチル)モルフィナン−3,14−ジオール(17−(Cyclobutylmethyl)morphinan−3,14−diol)を指す。
【0021】
本発明において前記粘着剤層中に含有されるブトルファノールの形態としては、フリー体(遊離体)であってもその薬学的に許容される塩であってもよく、製造中及び/又は製造された製剤中においてブトルファノールの薬学的に許容される塩が脱塩されてフリー体となったものであってもよく、これらのうちの1種であっても2種以上の混合物であってもよい。ブトルファノールの薬学的に許容される塩としては、薬物の安定性がより向上する傾向にあるという観点から、酸付加塩であることが好ましい。前記酸付加塩の酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、リノレン酸、フマル酸が挙げられる。これらの中でも、ブトルファノールの薬学的に許容される塩としては、下記構造式(1)で表される酒石酸付加塩(酒石酸ブトルファノール)であることが好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
本発明において、前記粘着剤層中に含有されるブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量(ブトルファノールの含有量又はブトルファノールの薬学的に許容される塩の含有量、或いは、両者がいずれも含有されている場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、ブトルファノール酒石酸付加塩換算で、前記粘着剤層の全質量に対して3〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、3〜12質量%であることが更に好ましい。ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が前記下限未満であると、ブトルファノールの皮膚透過性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ブトルファノールの結晶が析出し易くなったり粘着剤層の粘着力が低下したりする傾向にある。
【0024】
また、本発明において、前記粘着剤層中に含有されるブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量としては、ブトルファノール酒石酸付加塩換算、かつ、前記粘着剤層の単位面積あたりの含有量で、0.2〜2.0mg/cmであることが好ましく、0.2〜1.5mg/cmであることがより好ましく、0.2〜1.2mg/cmであることが更に好ましい。ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の単位面積あたり含有量が前記下限未満であると、ブトルファノールの最大皮膚透過速度が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ブトルファノールの結晶が析出し易くなったり粘着剤層の粘着力が低下したりする傾向にある。
【0025】
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、ブトルファノール及びその薬学的に許容される塩以外の他の薬物を更に含有していてもよい。前記他の薬物としては、例えば、非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナク、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アンフェナク等)、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、ホモクロルシクロジン等)、降圧剤(ジルチアゼム、ニカルジピン、ニルバジピン、メトプロロール、ビソプロロール、トランドラプリル等)、抗パーキンソン剤(ぺルゴリド、ロピニロール、ブロモクリプチン、セレギリン等)、気管支拡張剤(ツロブテロール、イソプレテノロール、サルブタモール等)、抗アレルギー剤(ケトチフェン、ロラタジン、アゼラスチン、テルフェナジン、セチリジン、アシタザノラスト等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン等)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン等)、非麻薬性鎮痛薬(ブプレノルフィン、トラマドール、ペンタゾシン)、麻酔系鎮痛剤(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル等)、泌尿器官用剤(オキシブチニン、タムスロシン等)、精神神経用剤(プロマジン、クロルプロマジン等)、ステロイドホルモン剤(エストラジオール、プロゲステロン、ノルエチステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン等)、抗うつ剤(セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム等)、抗痴呆薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン等)、抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン等)、中枢神経興奮剤(メチルフェニデート等)、骨粗しょう症治療薬(ラロキシフェン、アレンドロネート等)、乳がん予防薬(タモキシフェン等)、抗肥満薬(マジンドール、ジブトラミン等)、不眠症改善薬(メラトニン等)、抗リウマチ薬(アクタリット等)が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような他の薬物が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量としては、合計で、前記粘着剤層の全質量に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0026】
<粘着基剤>
本発明に係る粘着剤層は、粘着基剤を含有する。前記粘着基剤としては、ゴム系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤及びアクリル系粘着基剤が挙げられ、中でも、ゴム系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、結晶析出抑制効果を特に発揮できる傾向にある観点からは、ゴム系粘着基剤であるか、又は、ゴム系粘着基剤とシリコーン系粘着基剤との組み合わせであることがより好ましく、ブトルファノールの皮膚透過性により優れ、かつ、より高水準の肌への付着性(本発明において、貼付剤の付着性とは、貼付剤の肌に接する面が肌にぴったりとついて剥がれない性質のことをいう)を発揮できるという観点からは、ゴム系粘着基剤とシリコーン系粘着基剤との組み合わせであることが更に好ましい。
【0027】
前記ゴム系粘着基剤としては、天然ゴム、合成ゴムが挙げられ、貼付剤の粘着剤層としてより十分な粘着力を維持できる傾向にあるという観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブテン等の極性官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基等)を有していない合成ゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。また、これらのゴム系粘着基剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、貼付剤の粘着剤層としてより十分な粘着力を維持できる傾向にあるという観点から、SIS又はPIBをそれぞれ単独で用いるか、或いは、SISとPIBとを質量比(SISの質量:PIBの質量)が9:1〜1:9の範囲(更に好ましくは9:1〜1:3の範囲)となるように組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0028】
本発明において、シリコーン系粘着基剤とは、下記構造式(2)で表されるシロキサン単位を含み、シロキサン結合(−Si−O−)を主鎖とするポリマー(ポリシロキサン)を指す。
【0029】
【化2】
【0030】
式(2)で表されるシロキサン単位において、nは2以上の数を示す。また、R及びRは、それぞれ独立に、各Si原子に結合した基を示す。R及びRとしては、特に限定されないが、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルコキシ基であることが好ましい。また、前記ポリマーとしては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであっても、これらが複合されたものであってもよい。前記ポリマーの末端としても、特に限定されないが、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、又はトリメチルシリルオキシ基であることが好ましい。
【0031】
前記シリコーン系粘着基剤としては、ASTM規格(ASTM D 1418)において、MQ(ポリジメチルシロキサン、式(2)中のR及びRがメチル基)、VMQ(ポリメチルビニルシロキサン)、PMQ(ポリメチルフェニルシロキサン)、PVMQ(ポリフェニルビニルメチルシロキサン)と表されるシリコーンゴムや、これらのうちの少なくとも1種とポリジトリメチルシリルシロキサン等のシリコーンゴム以外のシリコーン樹脂との混合物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記シリコーンゴム以外のシリコーン樹脂が混合される場合、シリコーン系粘着基剤の全質量に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。本発明に係るシリコーン系粘着基剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びポリフェニルビニルメチルシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種のシリコーンゴムを含有することが好ましい。また、本発明に係るシリコーン系粘着基剤としては、前記シリコーンゴムが有するシラノール基が、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、又はトリメチルシリルオキシ基でキャッピング(エンドキャッピング)されたものであることがより好ましい。
【0032】
また、これらのシリコーン系粘着基剤としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、ダウ・コーニング社より次の型番:BIO−PSA7−410X、BIO−PSA7−420X、BIO−PSA7−430X、BIO−PSA7−440X、BIO−PSA7−450X、BIO−PSA7−460X(前記各Xは、それぞれ独立に1又は2である)、BIO−PSA AC7−4201、BIO−PSA AC7−4301、BIO−PSA AC7−4302、MD7−4502、MD7−4602、7−9700、MG7−9800、MG7−9850、BIO−PSA 7−4560(ホットメルトシリコーン粘着剤)等で提供されるシリコーン粘着剤を用いてもよく、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
さらに、前記シリコーン系粘着基剤としては、粘着剤層の凝集性を高めることを目的として、例えば、メチル基を有する場合には過酸化物を配合することによって当該メチル基の水素原子を脱水素させて同メチル基間を架橋させたもの;ビニル基を有する場合にはSiH基含有シロキサン化合物からなる架橋剤を結合させて同ビニル基間を架橋させたもの;水酸基を有する場合(すなわちシラノール基を有する場合)には脱水縮合によって同シラノール基間を架橋させたもの等であってもよい。
【0034】
前記アクリル系粘着基剤としては、「医薬品添加物辞典2016(日本医薬品添加剤協会編集)」に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸アセトアセトキシエチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有されるアクリル系高分子の他、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体、アクリル酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、アクリル酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸2−ヒドロキシエチル・メタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明において、前記粘着剤層中に含有される前記粘着基剤の含有量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計含有量)としては、前記粘着剤層の全質量に対して15〜96質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましい。前記粘着基剤の含有量が前記下限未満であると粘着剤層の粘着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとブトルファノールの皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0036】
また、本発明において、前記粘着剤層中に前記粘着基剤として前記ゴム系粘着基剤が含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して5〜95質量%であることが好ましく、15〜95質量%であることがより好ましく、20〜95質量%であることが更に好ましい。前記ゴム系粘着基剤の含有量が前記下限未満であると粘着剤層の粘着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとブトルファノールの皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0037】
また、前記粘着基剤として前記ゴム系粘着基剤及び前記シリコーン系粘着基剤が含有される場合、前記ゴム系粘着基剤の含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して5〜95質量%であることが好ましく、5〜85質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましく、7〜40質量%であることが特に好ましい。前記ゴム系粘着基剤の含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の肌への付着性向上効果が十分に奏されなくなる傾向にあり、また、製造時にゴム系粘着基剤とシリコーン系粘着基剤とが均一に混ざりにくくなる傾向にある。他方、前記上限を超えると、前記シリコーン系粘着基剤の含有量が相対的に減るため、粘着剤層の肌への付着性、特に、温冷水条件下や高湿条件下における付着性向上効果が十分に奏されなくなる傾向にある。
【0038】
また、本発明において、前記粘着剤層中に前記粘着基剤として前記シリコーン系粘着基剤が含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して1〜95質量%であることが好ましく、5〜95質量%であることが好ましく、5〜85質量%であることがより好ましい。前記シリコーン系粘着基剤の含有量が前記下限未満であると粘着剤層の粘着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとブトルファノールの皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0039】
また、前記粘着基剤として前記ゴム系粘着基剤及び前記シリコーン系粘着基剤が含有される場合、前記シリコーン系粘着基剤の含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して1〜47質量%であることが好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、1〜42質量%であることが更に好ましく、1〜38質量%であることが更により好ましく、1〜36質量%であることが特に好ましい。前記シリコーン系粘着基剤の含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の肌への付着性、特に、温冷水条件下や高湿条件下における付着性向上効果が十分に奏されなくなる傾向にある。他方、前記上限を超えると、前記ゴム系粘着基剤の含有量が相対的に減るため、粘着剤層の粘着力が低下する傾向にあり、また、製造時にゴム系粘着基剤とシリコーン系粘着基剤とが均一に混ざりにくくなる傾向にある。
【0040】
さらに、本発明において、前記粘着剤層中に前記粘着基剤として前記ゴム系粘着基剤及び前記シリコーン系粘着基剤が含有される場合、前記ゴム系粘着基剤と前記シリコーン系粘着基剤との質量比(ゴム系粘着基剤の質量:シリコーン系粘着基剤の質量)としては、9.5:0.5〜1.9:8.1であることが好ましく、9.5:0.5〜2.5:7.5であることがより好ましく、9.5:0.5〜3.0:7.0であることが更に好ましく、9.5:0.5〜4.0:6.0であることが特に好ましい。また、9.0:1.0〜1.9:8.1であることも好ましく、8.0:2.0〜1.9:8.1であることもより好ましく、7.6:2.4〜1.9:8.1であることも更に好ましく、5.0:5.0〜2.5:7.5であることも特に好ましい。前記ゴム系粘着基剤に対する前記シリコーン系粘着基剤の含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の肌への付着性、特に、温冷水条件下や高湿条件下における付着性向上効果が十分に奏されなくなる傾向にある。他方、前記上限を超えると、粘着剤層の肌への付着性向上効果が十分に奏されなくなったり、製造時にゴム系粘着基剤とシリコーン系粘着基剤とが均一に混ざりにくくなったりする傾向にある。
【0041】
<抗酸化剤>
本発明に係る粘着剤層は、抗酸化剤として、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を含有する。前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を更に含有することにより、薬物の皮膚透過性等の基本的な性能を低下させることなく、ブトルファノール酸化体の生成を顕著に抑制することができる。
【0042】
本発明に係る硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤としては、例えば、イミダゾール系抗酸化剤(2−メルカプトベンズイミダゾール(2−MBI)等)、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、N−アセチルシステイン、及びチオグリセロールが好ましい例として挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明に係る硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤としては、ブトルファノール酸化体の生成抑制効果が特に高くなる傾向にあるという観点から、イミダゾール系抗酸化剤から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、2−メルカプトベンズイミダゾールであることが特に好ましい。
【0043】
本発明において、前記粘着剤層中に含有される硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の含有量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して0.01〜2.0質量%であることが好ましく、0.01〜1.0質量%であることがより好ましく、0.04〜1.0質量%であることが更に好ましく、0.05〜1.0質量%であることが更により好ましく、0.1〜1.0質量%であることが特に好ましく、0.1〜0.5質量%であることが更に好ましい。前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の含有量が前記下限未満であると、ブトルファノール酸化体の生成抑制効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えて含有させても、それ以上のブトルファノール酸化体の生成抑制効果は期待できなくなる傾向にある。
【0044】
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤以外の他の抗酸化剤を更に含有していてもよい。前記他の抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等のフェノール系抗酸化剤;トコフェロール及びそのエステル誘導体;アスコルビン酸、クエン酸等の有機酸;アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等の脂肪酸エステル;メチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン系化合物;クエン酸ナトリウム、EDTAナトリウム、EDTA等の有機酸塩が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような他の抗酸化剤が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量としては、合計で、前記粘着剤層の全質量に対して5.0質量%以下であることが好ましい。
【0045】
<吸収促進剤>
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、吸収促進剤(経皮吸収促進剤)を更に含有していてもよい。前記吸収促進剤としては、例えば、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及び脂肪族アルコールエーテルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、これらの中でも、ブトルファノールの最大皮膚透過速度(Jmax)が特に大きくなる傾向にある観点から、脂肪族アルコール及び脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0046】
(脂肪族アルコール)
本発明に係る脂肪族アルコールとしては、炭素数が6〜20の一価の脂肪族アルコールであることが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数が前記下限未満である場合には皮膚刺激性が強くなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、製剤中にロウ状の塊状物を生じる恐れがある。炭素数が6〜20の脂肪族アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、オクチルドデカノール、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ブトルファノールの皮膚透過性がより良好となる傾向にあるという観点から、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、及びオクチルドデカノールからなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0047】
(脂肪酸エステル)
本発明に係る脂肪酸エステルとしては、炭素数が6〜20の脂肪酸のアルキルエステル(脂肪酸アルキルエステル)、炭素数が6〜20の脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンとのエステル(グリセリン脂肪酸エステル)、炭素数が6〜20の脂肪酸とポリオキシアルキレンとのエステル(ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル)、及び炭素数が6〜20の脂肪酸と糖類とのエステル(糖類の脂肪酸エステル)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
本発明において、前記脂肪酸アルキルエステルは、炭素数が6〜20の脂肪酸と低級アルキルアルコールとのエステル化合物である。このような脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、リノール酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ブトルファノールの皮膚透過性がより良好となる傾向にあるという観点から、ミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピルからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0049】
本発明において、前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノラウレート(モノラウリン)、ポリグリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート(モノステアリン)、ポリグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート(モノオレイン)、ポリグリセリンモノオレエート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリンが挙げられる。前記ポリグリセリンの重合度としては、50以下であることが好ましい。これらの中でも、前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノラウレート、ポリグリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、及びポリグリセリンモノオレエートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0050】
また、前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンのOH基にポリオキシエチレン(POE)基が更に付加されたものであってもよい。前記ポリオキシエチレン基におけるオキシエチレンの重合度としては、50以下であることが好ましい。
【0051】
本発明において、前記ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは、炭素数が6〜20の脂肪酸のカルボキシ基部分に、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、オキシエチレンとオキシプロピレンとの共重合化合物等のポリオキシアルキレンがエステル結合した化合物である。このようなポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸エチレングリコール、ポリオキシエチレンモノラウレート(以下、場合により、ポリオキシエチレンを「POE」と、オキシエチレンを「OE」と記載する)、プロピレングリコールモノラウレート(PGML)、ポリオキシプロピレンモノラウレート(以下、場合により、ポリオキシプロピレンを「POP」と、オキシプロピレンを「OP」と記載する)、モノパルミチン酸エチレングリコール、POEモノパルミテート、プロピレングリコールモノパルミテート、POPモノパルミテート、モノステアリン酸エチレングリコール、POEモノステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、POPモノステアレート、モノオレイン酸エチレングリコール、POEモノオレエート、プロピレングリコールモノオレエート、POPモノオレエート、ジオレイン酸プロピレングリコール、ポリエチレングリコールジステアレートが挙げられる。POE、POP、OEとOPとの共重合体において、各重合度としては、それぞれ独立に、50以下であることが好ましい。これらの中でも、前記ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、ブトルファノールの最大皮膚透過速度(Jmax)が特に大きくなる傾向にある観点から、プロピレングリコールモノラウレートであることが特に好ましい。
【0052】
本発明において、前記糖類の脂肪酸エステルは、炭素数が6〜20の脂肪酸のカルボキシ基部分に糖類がエステル結合した化合物である。前記糖類としては、4単糖(エリスロース、トレオース)、5単糖(キシロース、アラビノース)、6単糖(グルコース、ガラクトース)、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール)、2糖類(ショ糖、乳糖、麦芽糖)などが挙げられる。このような糖類の脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノラウレート(スパン20)、ソルビタンモノパルミテート(スパン40)、ソルビタンモノステアレート(スパン60)、ソルビタントリステアレート(スパン65)、ソルビタンモノオレエート(スパン80)、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート(スパン83)が挙げられる。
【0053】
また、前記糖類の脂肪酸エステルとしては、糖残基中のOH基にポリオキシエチレン(POE)基が更に付加されたものであってもよい。前記ポリオキシエチレン基におけるオキシエチレンの重合度としては、50以下であることが好ましい。このような化合物としては、ポリソルベート20(ツウィーン(Tween)20)、ポリソルベート40(ツウィーン40)、ポリソルベート60(ツウィーン60)、ポリソルベート65(ツウィーン65)、ポリソルベート80(ツウィーン80)等が挙げられる。
【0054】
(脂肪酸アミド)
本発明に係る脂肪酸アミドとしては、炭素数が6〜20の脂肪酸のアミドが挙げられ、例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、エチレンビス−ステアリン酸アミド、ステアリン酸モノアミド、オレイン酸モノアミド、エチレンビス−オレイン酸アミド、エルカ酸モノアミド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
(脂肪族アルコールエーテル)
本発明において、前記脂肪族アルコールエーテルは、炭素数が6〜20の脂肪族アルコールのOH基部分に、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、オキシエチレンとオキシプロピレンの共重合化合物、グリセリン、ポリグリセリン等のポリオキシアルキレンがエーテル結合した化合物である。このような脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEパルミチルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
本発明に係る粘着剤層に含有されてもよい前記吸収促進剤としては、他に、POE硬化ヒマシ油類、レシチン類、リン脂質、大豆油誘導体、トリアセチン等が挙げられる。
【0057】
また、本発明に係る粘着剤層としては、前記吸収促進剤が界面活性剤として機能する界面活性化合物であることも好ましい。このような界面活性化合物としては、上記のうち、例えば、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、前記界面活性化合物としては、非イオン性であることが好ましい。
【0058】
本発明において、このような吸収促進剤が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計含有量)としては、ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩との質量比(ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の酒石酸付加塩換算質量:吸収促進剤の質量)が、20:1〜1:10、より好ましくは15:1〜1:7となる量であることが好ましい。また、この場合、前記吸収促進剤の粘着剤層全質量に対する含有量としては、1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。前記吸収促進剤の含有量が上記範囲内にあると、ブトルファノールの皮膚透速度をより大きくすることができる傾向にある。
【0059】
<添加剤>
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、吸着剤、脱塩剤、粘着付与剤、可塑剤、薬物のための溶解剤、充填剤、安定化剤、保存剤等の添加剤を更に含有していてもよい。
【0060】
(吸着剤)
前記吸着剤としては、吸湿性を有する無機及び/又は有機の物質が挙げられ、より具体的には、タルク、カオリン、ベントナイト等の鉱物;フュームドシリカ(アエロジル(登録商標)等)、含水シリカ等のケイ素化合物;酸化亜鉛、乾燥水酸化アルミニウムゲル等の金属化合物;乳酸、酢酸等の弱酸;デキストリン等の糖;ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、クロスポビドン、カルボキシビニルポリマー及びブチルメタクリレートメチルメタクリレートコポリマー等の高分子ポリマーが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明に係る粘着剤層としては、ブトルファノールの結晶の析出をより抑制することが可能となる観点から、ポリビニルピロリドン(PVP)を更に含有することが好ましい。
【0061】
前記吸着剤(好ましくはポリビニルピロリドン)が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層の単位面積あたりの含有量で、0.05〜2mg/cmであることが好ましく、また、前記粘着剤層の全質量に対する含有量で、1〜20質量%であることが好ましい。さらに、ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩との質量比(ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の酒石酸付加塩換算質量:ポリビニルピロリドンの質量)で、20:1〜1:10となる量であることが好ましい。前記ポリビニルピロリドンの含有量が前記下限未満である場合には、ブトルファノールの更なる結晶析出抑制効果が奏されにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、ブトルファノールの皮膚透過性が低下したり、粘着剤層の粘着力が低下したりする傾向にある。
【0062】
(脱塩剤)
前記脱塩剤は、主に塩基性薬物の全部又は一部をフリー体(遊離体)に変換することを目的として配合される。このような脱塩剤としては、特に限定はされないが、例えば、前記薬物としてブトルファノールの酸付加塩を配合してブトルファノールフリー体を含有する製剤を得る場合には、塩基性物質であることが好ましく、金属イオン含有脱塩剤、塩基性窒素原子含有脱塩剤であることがより好ましい。前記金属イオン含有脱塩剤としては、酢酸ナトリウム(無水酢酸ナトリウムを含む)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記脱塩剤としては、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが特に好ましい。なお、本発明に係る粘着剤層としては、前記塩基性薬物及び前記脱塩剤に由来する化合物(例えば、酒石酸ブトルファノールと酢酸ナトリウムとを組み合わせた場合には、酒石酸ナトリウム)を更に含有していてもよい。このような脱塩剤、並びに、塩基性薬物及び脱塩剤に由来する化合物が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量としては、薬物の分解を抑制するという観点から、ブトルファノールの酒石酸付加塩換算の酸塩基当量1に対して、脱塩剤換算の酸塩基当量で0.5〜5当量であることが好ましく、0.5〜4当量であることがより好ましい。
【0063】
(粘着付与剤)
前記粘着付与剤は、主に前記粘着基剤、好ましくは前記ゴム系粘着基剤の粘着性を高めることを目的として配合される。このような粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂及びキシレン系樹脂等の粘着付与樹脂が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような粘着付与剤が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計含有量)としては、粘着剤層の粘着力の向上及び/又は剥離時の局所刺激性の緩和という観点から、前記粘着剤層の全質量に対して0.5〜60質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましく、3〜50質量%であることが更に好ましく、3〜40質量%であることが特に好ましい。
【0064】
(可塑剤)
前記可塑剤は、主に前記粘着剤層の粘着物性、前記粘着剤層の製造における流動特性、前記薬物の経皮吸収特性等を調整することを目的として配合される。このような可塑剤としては、例えば、シリコーンオイル;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン、スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記可塑剤としては、シリコーンオイル、流動パラフィン、液状ポリブテンが好ましい。このような可塑剤が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計含有量)としては、粘着剤層の粘着力の向上及び/又は剥離時の局所刺激性の緩和という観点から、前記粘着剤層の全質量に対して0.1〜60質量%であることが好ましく、0.5〜25質量%、3〜50質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが更に好ましい。
【0065】
(溶解剤)
前記溶解剤は、主に前記薬物の溶解を促進することを目的として配合される。このような溶解剤としては、例えば、酢酸等の有機酸、脂肪族アルコール、界面活性剤が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記溶解剤としては、有機酸、脂肪族アルコールが好ましい。
【0066】
(充填剤)
前記充填剤は、主に前記粘着剤層の粘着力を調整することを目的として配合される。このような充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム;ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
上記の添加剤が前記粘着剤層中に更に含有される場合、その含有量としては、合計で、前記粘着剤層の全質量に対して70質量%以下であることが好ましい。
【0068】
本発明に係る粘着剤層としては、単位面積(貼付面の面積)あたりの全質量が25〜250g/mであることが好ましく、40〜200g/mであることがより好ましい。前記単位面積あたりの質量が前記下限未満であると、ブトルファノールの皮膚透過性が低下したり、粘着剤層の粘着力が低下したり、製造時において粘着剤層の厚みの制御が困難となったりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、長期間の貼付を目的とする貼付剤としてはブトルファノールの皮膚透過性が上昇し過ぎたり製造時において粘着剤層の厚みの制御が困難となったりする傾向にある。
【0069】
また、本発明に係る粘着剤層の貼付面の面積としては、治療の目的や適用対象に応じて適宜調整することができ、通常、0.5〜200cmの範囲である。
【0070】
本発明の貼付剤としては、製造後から使用時までの間、包装容器内に包装(好ましくは封入)された包装体としてもよい。前記包装容器としては、特に制限されず、貼付剤の包装容器として通常使用できるものを適宜用いることができ、例えば、プラスチック(例えばポリエチレン)製包装袋、金属層(例えばアルミニウム層)が形成されたプラスチック製包装袋、金属製包装袋(例えばアルミニウム性包装袋)等を用いることが好ましい。
【0071】
また、前記貼付剤が前記包装容器内に包装された包装体としては、脱酸素手段を更に備えていてもよい。前記脱酸素手段としては、前記包装容器内に封入される、鉄粉を用いた脱酸素剤やビタミンCを主成分とする脱酸素剤(より具体的には、エージレスシリーズ(三菱ガス化学株式会社製)、ファーマキープシリーズ(三菱ガス化学株式会社製)等);脱酸素機能を有する層(より具体的には、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅、鉄、ハイドロサルファイト、活性炭等の粉末が混合された層等)を備える前記包装容器が挙げられる。
【0072】
本発明の貼付剤は、特に制限されず、公知の貼付剤の製造方法を適宜採用することによって製造することができる。例えば、先ず、ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩、前記粘着基剤、前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤、及び必要に応じて前記吸収促進剤、溶媒や前記添加剤等を常法に従って練合して均一な粘着剤層組成物を得る。前記溶媒としては無水エタノール、トルエン、ヘプタン、メタノール等が挙げられる。次いで、この粘着剤層組成物を前記支持体層の面上(通常は一方の面上)に所望の単位面積あたり質量となるように塗布した後、必要に応じて加温して前記溶媒を乾燥除去して粘着剤層を形成し、更に必要に応じて所望の形状に裁断することにより、本発明の貼付剤を得ることができる。
【0073】
また、本発明の貼付剤の製造方法としては、前記粘着剤層の前記支持体層と反対の面上に前記離型ライナーを貼り合わせる工程を更に含んでいてもよく、前記粘着剤層組成物を先ず前記離型ライナーの一方の面上に所望の単位面積あたり質量となるように塗布して粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記離型ライナーと反対の面上に前記支持体層を貼り合わせ、必要に応じて所定の形状に裁断することによって本発明の貼付剤を得てもよい。さらに、得られた貼付剤は、必要に応じて、前記包装容器内に封入して包装体としてもよい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、酸化体量測定試験、結晶析出評価試験及び皮膚透過試験は、それぞれ以下に示す方法によりおこなった。
【0075】
<酸化体量測定試験>
製造直後、ポリエチレン製の包装袋に封入した状態で60℃において1週間保存後、及びポリエチレン製の包装袋に封入した状態で40℃、75%RHにおいて3ヶ月間保存後、の少なくともいずれかの貼付剤(粘着剤層の貼付面の面積:2.5cm)について、それぞれ、粘着剤層中の酸化体量を測定した。酸化体量の測定は、先ず、各貼付剤から離型ライナーを除去してガラス製の遠沈管に入れ、テトラヒドロフラン0.5mLを加えて振とうし、粘着剤層を溶解させた。これに、アセトニトリルと水との混合液(アセトニトリル:水=1:1(体積比))5mLを更に加えて振とうした後、溶液の一部を採取してメンブレンフィルターで濾過した。次いで、得られた濾過液を試料溶液として、高速液体クロマトグラフ法により、試料溶液中のブトルファノール及び/又はその塩、並びに、ブトルファノール酸化体のピークエリア面積を求めた。高速液体クロマトグラフは、検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)、カラム:ODSカラムを用いて、試料注入後の時間:0〜38.5分において、移動相A(12.6mM炭酸水素アンモニウム緩衝液(pH9.0))及び移動相B(メタノール)の混合比(移動相A/移動相B(体積比))が、55/45〜35/65となるように濃度勾配を制御しておこなった。次いで、下記式:
酸化体量[質量%]=A/A×100
[式中、Aはブトルファノール酸化体のピークエリア面積を示し、Aはブトルファノール及び/又はその塩のピークエリア面積を示す。]
により、各貼付剤の粘着剤層中の酸化体量[質量%]を算出した。なお、ブトルファノール酸化体のピークエリアは、ブトルファノールの保持時間に対する相対保持時間(RRT)が0.24付近の位置に現れるピークエリアをブトルファノール酸化体のピークエリアとした。
【0076】
<結晶析出評価試験>
製造直後、未包装の状態で40℃、75%RHにおいて1日間保存後、未包装の状態で40℃、75%RHにおいて10日間保存後、及び未包装の状態で40℃、75%RHにおいて1ヶ月間保存後、の少なくともいずれかの貼付剤(粘着剤層の貼付面の面積:2.5cm)について、それぞれ、粘着剤層における結晶析出の評価をした。評価は、貼付剤3枚について各粘着剤層の表面を目視で観察し、次の基準:
A:結晶析出が認められない
B:製剤として使用可能であるが、結晶析出が一部に認められる
C:結晶析出が全面に認められ、製剤として不適である
によって、各貼付剤の粘着剤層における結晶析出を評価した。
【0077】
<皮膚透過試験(インビトロ(in vitro)ヘアレスマウス皮膚透過試験)>
先ず、ヘアレスマウス胴体部の皮膚を剥離して脂肪を除去し、表皮側に2.5cmの大きさに切断して離型ライナーを除去した貼付剤を貼付した。これを真皮側がレセプター液に接するようにフロースルータイプのフランツ型透過試験セルにセットし、前記セルにレセプター溶液(PBS)を満たした。次いで、レセプター溶液が32℃に保温されるように、暖めた循環水を外周部に循環させながら約2.5ml/hrの流速でレセプター溶液を送液し、4時間毎に24時間までレセプター溶液を採取した。採取したレセプター溶液中のブトルファノールの濃度(酒石酸換算)を高速液体クロマトグラフ法により測定し、各時間において、粘着剤層の単位面積における1時間あたりのブトルファノール皮膚透過量(酒石酸換算、単位:μg/cm/hr)を算出し、この最大値を最大皮膚透過速度(Jmax)とした。
【0078】
(実施例1)
先ず、酒石酸ブトルファノール6.0質量部、シリコーン系粘着基剤(シリコーン粘着剤、型番:BIO−PSA7−4201、ダウ・コーニング社製)22.6質量部、ゴム系粘着基剤(SIS:PIB=4:6(質量比))19.1質量部、粘着付与剤(粘着付与樹脂)22.0質量部、可塑剤(流動パラフィン)11.7質量部、2−メルカプトベンズイミダゾール(2−MBI)0.5質量部、及びその他成分(脱塩剤、吸収促進剤及び吸着剤)18.1質量部を、適量の溶媒(無水エタノール及びトルエン)に加えて混合し、粘着剤層組成物を得た。次いで、得られた粘着剤層組成物を離型ライナー(離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム)上に塗布し、溶媒を乾燥除去して、単位面積あたり質量が80g/mとなるように粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の前記離型ライナーと反対の面上に支持体層(ポリエチレンテレフタレート製フィルム)を積層し、支持体層/粘着剤層/離型ライナーの順に積層された貼付剤を得た。
【0079】
(比較例1〜6)
2−メルカプトベンズイミダゾール(2−MBI)に代えて各種抗酸化剤(比較例1:ジブチルヒドロキシトルエン、比較例2:ジブチルヒドロキシアニソール、比較例3:アスコルビン酸、比較例4:没食子酸プロピル、比較例5:トコフェロールアセテート、比較例6:EDTA・2ナトリウム)を配合し、粘着剤層組成物の配合組成を下記の表1に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0080】
(比較例7)
2−メルカプトベンズイミダゾール(2−MBI)を配合せず、粘着剤層組成物の配合組成を下記の表1に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、貼付剤を得た。
【0081】
(比較例8)
ゴム系粘着基剤、粘着付与剤及び可塑剤を配合せず、粘着剤層組成物の配合組成を下記の表1に示す組成となるようにしたこと以外は比較例7と同様にして、貼付剤を得た。
【0082】
(比較例9)
シリコーン系粘着基剤、ゴム系粘着基剤、粘着付与剤及び可塑剤に代えてアクリル系粘着基剤(商品名:MAS811、コスメディ製薬株式会社製)を配合し、粘着剤層組成物の配合組成を下記の表1に示す組成となるようにしたこと以外は比較例7と同様にして、貼付剤を得た。
【0083】
(実施例2〜10)
粘着剤層組成物の配合組成を下記の表2に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0084】
実施例1〜10及び比較例1〜9で得られた貼付剤について、それぞれ、上記の酸化体量測定試験、結晶析出評価試験、及び皮膚透過試験をおこなった。表1に、実施例1及び比較例1〜9で得られた貼付剤の各粘着剤層組成物の配合組成(溶媒を除く)、並びに、製造直後、60℃で1週間保存後、及び40℃(75%RH)で3ヶ月間保存後の酸化体量をそれぞれ示し、表2に、実施例1〜10及び比較例7で得られた貼付剤の各粘着剤層組成物の配合組成(溶媒を除く)、並びに、製造直後、及び60℃で1週間保存後の酸化体量をそれぞれ示す。また、表3に、実施例3、4、6、7及び比較例7で得られた貼付剤について結晶析出評価試験をおこなった結果をそれぞれ示す。なお、実施例3、4、6、7及び比較例7の各々において、結晶析出評価試験を行った3枚の貼付剤間で粘着剤層の表面状態に差異はなく、それぞれ表3に示す評価結果であった。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表1〜2に示した結果から明らかなように、抗酸化剤として、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤である2−メルカプトベンズイミダゾール(2−MBI)を配合した本発明の貼付剤(実施例1〜10)では、長期間保存後もブトルファノール酸化体が殆ど又は全く生成せず、その生成を顕著に抑制できることが確認された。また、表3に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤においては、粘着剤層における結晶析出も特に抑制されることが確認された。なお、実施例1〜10で得られた貼付剤においては、上記の皮膚透過試験の結果、いずれの貼付剤においても十分な皮膚透過性が発揮され、薬物の皮膚透過性は低下しないことが確認された。
【0089】
また、表1に示した結果から明らかなように、貼付剤の抗酸化剤として従来一般的であった他の抗酸化剤を配合しても(比較例1〜6)、抗酸化剤を配合しなかった貼付剤(比較例7)と同様に、製造直後からブトルファノール酸化体が生成していた。なお、比較例1については、ジブチルヒドロキシトルエンの含有量を2倍(1.0質量部)とした貼付剤も作製して同様に酸化体量測定試験をおこなったが、含有量を増やしてもブトルファノール酸化体の生成抑制効果は認められなかった。
【0090】
(比較例10〜13)
比較例7で得られた貼付剤を2.5cmの大きさに切断して各脱酸素剤(比較例10:エージレスZJ−15PT(三菱ガス化学株式会社製)、比較例11:ファーマキープKC(三菱ガス化学株式会社製)、比較例12:ファーマキープKD(三菱ガス化学株式会社製))と共に、又は脱酸素剤無し(比較例13)で、それぞれポリエチレン製の包装袋に入れて密封し、各包装体を得た。
【0091】
比較例10〜13で得られた包装体を60℃において5日間保存後、各包装体中の貼付剤について、それぞれ、上記の酸化体量測定試験に記載の方法で粘着剤層中の酸化体量を測定した。表4に、比較例10〜13で得られた包装体の各粘着剤層組成物の配合組成(溶媒を除く)、脱酸素剤、及び60℃で5日間保存後の酸化体量をそれぞれ示す。
【0092】
【表4】
【0093】
表4に示した、抗酸化手段として脱酸素剤のみを用いた場合(比較例10〜12)及び脱酸素剤を用いない場合(比較例13)間の比較と比べても、本発明の硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を配合した貼付剤におけるブトルファノール酸化体の生成抑制効果は顕著であった。
【0094】
(実施例11〜12、比較例14〜15)
粘着剤層組成物の配合組成を下記の表5に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0095】
実施例11〜12及び比較例14〜15で得られた貼付剤について、それぞれ、上記の酸化体量測定試験及び結晶析出評価試験をおこなった。表5に、実施例11〜12及び比較例14〜15で得られた貼付剤の各粘着剤層組成物の配合組成(溶媒を除く)、並びに、製造直後、及び60℃で1週間保存後の酸化体量をそれぞれ示す。また、表6に、実施例11〜12及び比較例14〜15で得られた貼付剤について結晶析出評価試験をおこなった結果をそれぞれ示す。なお、実施例11〜12及び比較例14〜15の各々において、結晶析出評価試験を行った3枚の貼付剤間で粘着剤層の表面状態に差異はなく、それぞれ表6に示す評価結果であった。
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
表5に示した結果から明らかなように、抗酸化剤として、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤である2−メルカプトベンズイミダゾール(2−MBI)を配合した本発明の貼付剤では、ブトルファノール及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が多い場合(実施例11)や、粘着剤層にゴム系粘着基剤を含有しない場合(実施例12)であっても、長期間保存後においてブトルファノール酸化体が殆ど又は全く生成せず、その生成を顕著に抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、従来の貼付剤に比べてブトルファノール酸化体の生成が顕著に抑制される貼付剤を提供することが可能となる。また、本発明によれば、粘着剤層における結晶析出も更に十分に抑制されるため、特に経時安定性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。