特許第6773907号(P6773907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773907液晶滴下工法用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773907
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20201012BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C09K3/10 B
   C09K3/10 L
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-529280(P2019-529280)
(86)(22)【出願日】2019年5月10日
(86)【国際出願番号】JP2019018764
(87)【国際公開番号】WO2019221027
(87)【国際公開日】20191121
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-95397(P2018-95397)
(32)【優先日】2018年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 慶枝
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101054505(CN,A)
【文献】 特開2016−081064(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/136284(WO,A1)
【文献】 特開2009−275166(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/001895(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/061910(WO,A1)
【文献】 特開2016−218257(JP,A)
【文献】 特開2017−227826(JP,A)
【文献】 特開2010−170069(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102016011898(DE,A1)
【文献】 特開2005−227366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、熱硬化剤と、最大粒子径が前記液晶表示素子のセルギャップの100%以上の柔軟粒子とを含有し、
前記硬化性樹脂は、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物を含み、
前記1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物は、1分子中に3つ以上のエポキシ基とイソシアヌル骨格とを有する化合物、及び/又は、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有するグリシジルアミン型エポキシ化合物であり、
PSA型液晶表示素子の基板間における液晶の封止に用いられる
ことを特徴とする液晶滴下工法用シール剤。
【請求項2】
前記硬化性樹脂は、エポキシ基を有さない(メタ)アクリル化合物を含有しない請求項1記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
前記1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物は、前記1分子中に3つ以上のエポキシ基とイソシアヌル骨格とを有する化合物である請求項1又は2記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の液晶滴下工法用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料。
【請求項5】
請求項1、2若しくは3記載の液晶滴下工法用シール剤又は請求項記載の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制でき、接着性に優れ、かつ、表示性能に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているようなシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方にシール剤を塗布して枠状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を貼り合わせ、シール部に紫外線等の光を照射したり加熱したりすることによりシール剤を硬化させ、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができ、現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。小型化の手法として、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、「狭額縁設計」ともいう)。
しかしながら、滴下工法で狭額縁設計の液晶表示素子を製造すると、シール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、シール剤を光照射により硬化させる場合、照射した光が遮られてシール剤の内部に光が到達し難く、シール剤の硬化が不充分となることがある。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出して液晶汚染を発生させやすくなるという問題があった。
【0004】
そこで、シール剤を熱のみによって硬化させることが検討されてきたが、光照射による硬化なしでは、加熱した際に液晶が流動し、硬化途中のシール剤部に差し込んでシールパターンの破れ等が発生したり、加熱により粘度の低下したシール剤により液晶が汚染されたりするという問題があった。
特に近年、パネルの狭額縁化につれ、塗布されるシール剤の線幅も細くなり、貼り合わせた後のシール断面積が小さくなっている。そのため、シールパターンの破れ等が発生しやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制でき、接着性に優れ、かつ、表示性能に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と、熱硬化剤と、最大粒子径が前記液晶表示素子のセルギャップの100%以上の柔軟粒子とを含有し、前記硬化性樹脂は、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物を含み、前記1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物は、1分子中に3つ以上のエポキシ基とイソシアヌル骨格とを有する化合物、及び/又は、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有するグリシジルアミン型エポキシ化合物であり、PSA型液晶表示素子の基板間における液晶の封止に用いられる液晶滴下工法用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
近年、高速応答性や高いコントラストを実現することができる液晶表示素子としてPSA(Polymer Sustained Alignment)型液晶表示素子が注目されている。PSA型液晶表示素子では、重合性化合物を含有する液晶組成物が用いられ、液晶表示素子のセル内に充填された該液晶組成物に光を照射すること等により該液晶組成物中の重合性化合物を重合させて基板上に凹凸形状を形成することで、均一なプレチルト角を付与して液晶分子の配向を制御している。しかしながら、従来のシール剤を用いてPSA型液晶表示素子の封止を行った場合、基板上に形成される凹凸形状にばらつきが生じ、均一なプレチルト角を付与できないことがあるという問題があった。
【0009】
本発明者は、従来のシール剤を用いてPSA型液晶表示素子の封止を行った場合に基板上に形成される凹凸形状にばらつきが生じる原因が、硬化性樹脂として一般的にシール剤に含まれる(メタ)アクリル化合物にあると考えた。即ち、硬化性樹脂中の(メタ)アクリル化合物が液晶に溶出することで液晶中の重合性化合物を重合させる際に該(メタ)アクリル化合物の重合も起こり、該(メタ)アクリル化合物が重合した部分で目的のものと異なる凹凸形状が形成されているものと考えた。そこで本発明者は、(メタ)アクリル化合物を含有しない、又は、(メタ)アクリル化合物の含有量を少なくしたシール剤を用いてPSA型液晶表示素子を封止することを検討したが、このようなシール剤を用いた場合、液晶によるシール剤への差し込みが生じやすくなるという問題があった。そこで本発明者は、最大粒子径が液晶表示素子のセルギャップの100%以上である柔軟粒子を配合することにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制することを検討した。しかしながら、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を充分に抑制するために柔軟粒子を多量に配合すると、得られるシール剤が接着性に劣るものとなるという問題があった。そこで本発明者は、更に、硬化性樹脂として1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物を用いることを検討した。その結果、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制でき、接着性に優れ、かつ、表示性能に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の液晶表示素子用シール剤における、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果は、シール剤を熱のみによって硬化させる場合に特に顕著となる。また、本発明の液晶表示素子用シール剤は、PSA型液晶表示素子用シール剤として好適に用いられる。
【0010】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物(以下、「3官能以上のエポキシ化合物」ともいう)を含む。本発明の液晶表示素子用シール剤が上記3官能以上のエポキシ化合物を含有することにより、液晶のシール剤への差し込みを抑制することができ、かつ、得られる液晶表示素子が表示性能に優れるものとなる。
【0011】
上記3官能以上のエポキシ化合物は、反応性に優れ、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなることから、1分子中に6つ以上のエポキシ基を有することが好ましい。
また、上記3官能以上のエポキシ化合物は、液晶のシール剤への差し込みを抑制する効果に優れることから、1分子中に3つ以上のエポキシ基とイソシアヌル骨格とを有する化合物、及び/又は、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有するグリシジルアミン型エポキシ化合物であることが好ましい。より好ましくは、1分子中に3つ以上のエポキシ基とイソシアヌル骨格とを有する化合物である。
【0012】
上記3官能以上のエポキシ化合物としては、具体的には例えば、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物等が挙げられる。なかでも、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物が好ましく、下記式(1)で表される化合物がより好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
上記硬化性樹脂は、上記3官能以上のエポキシ化合物に加えて他の硬化性樹脂を含有してもよい。上記他の硬化性樹脂を含有する場合、上記硬化性樹脂100重量部中における上記3官能以上のエポキシ化合物の含有量の好ましい下限は50重量部、好ましい上限は95重量部である。上記3官能以上のエポキシ化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の液晶への溶出、及び、液晶のシール剤への差し込みを抑制する効果により優れるものとなる。上記3官能以上のエポキシ化合物の含有量のより好ましい下限は60重量部、より好ましい上限は90重量部である。
【0017】
上記他の硬化性樹脂としては、単官能エポキシ化合物又は2官能エポキシ化合物が好適に用いられる。
【0018】
上記単官能エポキシ化合物又は上記2官能エポキシ化合物としては、多官能エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させてなる、1分子中にエポキシ基を1つ又は2つ有する部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂(以下、単に「部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂」ともいう)が好ましい。特に、得られる液晶表示素子用シール剤の速硬化性が向上し、液晶によるシール剤への差し込みを抑制する効果により優れるものとなることから、上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を後述する熱ラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることが好ましい。
【0019】
上記単官能エポキシ化合物のうちその他のものとしては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0020】
上記2官能エポキシ化合物のうちその他のものとしては、例えば、ビスフェノールA型2官能エポキシ化合物、ビスフェノールF型2官能エポキシ化合物、ビスフェノールS型2官能エポキシ化合物、2,2’−ジアリルビスフェノールA型2官能エポキシ化合物、水添ビスフェノール型2官能エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型2官能エポキシ化合物、レゾルシノール型2官能エポキシ化合物、ビフェニル型2官能エポキシ化合物、スルフィド型2官能エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型2官能エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型2官能エポキシ化合物、ナフタレン型2官能エポキシ化合物、グリシジルアミン型2官能エポキシ化合物、アルキルポリオール型2官能エポキシ化合物、ゴム変性型2官能エポキシ化合物、2官能グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0021】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記他の硬化性樹脂としてエポキシ基を有さない(メタ)アクリル化合物を含有してもよいが、PSA型液晶表示素子の場合の液晶への溶出による凹凸形状への悪影響を抑制する観点から、該エポキシ基を有さない(メタ)アクリル化合物を含有しないことが好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0022】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有する。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0023】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド、日本ファインケム社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH−J、アミキュアUDH、アミキュアUDH−J等が挙げられる。
上記日本ファインケム社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、MDH等が挙げられる。
【0024】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく、熱硬化性により優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0025】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、重合開始剤を含有することが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
なかでも、上記重合開始剤としてラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。後述する柔軟粒子によるスプリングバックは、該柔軟粒子の最大粒子径だけでなくシール剤の硬化速度にも影響を受ける。上記ラジカル重合開始剤は、熱硬化剤に比べて硬化速度を格段に速くすることができるため、上記柔軟粒子と組み合わせて用いることにより、上記柔軟粒子により発生しやすいスプリングバックの発生を抑制し、得られる液晶表示素子がギャップ保持性により優れるものとなる。
【0026】
上記ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。なかでも、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。特に、上述したように、得られる液晶表示素子用シール剤の速硬化性が向上し、液晶によるシール剤への差し込みを抑制する効果により優れるものとなることから、上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を上記熱ラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0027】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物等で構成されるものが挙げられる。なかでも、液晶汚染を抑制する観点から、アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましく、高分子アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)がより好ましい。
上記熱ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を反応させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0028】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶への悪影響を防止しつつ、硬化性樹脂へ容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0029】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ開始剤としては、例えば、V−65、V−501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0030】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0031】
上記熱ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0032】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾインエーテル化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−(フェニルチオ)フェニル)−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0033】
上記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤が好適に用いられる。
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生タイプのものであってもよいし、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0034】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0035】
上記光カチオン重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0036】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0037】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、PSA型液晶表示素子の基板間における液晶の封止に好適に用いられる。
本発明の液晶表示素子用シール剤は、最大粒子径が液晶表示素子のセルギャップの100%以上である柔軟粒子(以下、単に「柔軟粒子」ともいう)を含有する。上記柔軟粒子は、液晶表示素子を製造する際に、他のシール剤成分と液晶との間の障壁となって、液晶がシール剤に差し込むこと、及び、シール剤が液晶へ溶出することを防止する役割を有する。また、上記柔軟粒子を配合することにより、基板を貼り合わせた後、シール剤が硬化するまでの基板のずれを防止することができる。
液晶表示素子のセルギャップは、表示素子により異なるため限定されないが、一般的な液晶表示素子のセルギャップは、2μm以上10μm以下である。
【0038】
上記柔軟粒子の最大粒子径は、液晶表示素子のセルギャップの100%以上である。上記柔軟粒子の最大粒子径が液晶表示素子のセルギャップの100%以上であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制できるものとなる。上記柔軟粒子の最大粒子径は、液晶表示素子のセルギャップの100%を超えることが好ましい。また、上記柔軟粒子の最大粒子径は、5μm以上であることが好ましい。
また、上記柔軟粒子の最大粒子径の好ましい上限は20μmである。上記柔軟粒子の最大粒子径が20μm以下であることにより、スプリングバックを抑制し、得られる液晶表示素子がギャップ保持性により優れるものとなる。上記柔軟粒子の最大粒子径のより好ましい上限は15μmである。
更に、上記柔軟粒子の最大粒子径は、セルギャップの260%以下であることが好ましい。上記柔軟粒子の最大粒子径がセルギャップの260%以下であることにより、スプリングバックを抑制し、得られる液晶表示素子がギャップ保持性により優れるものとなる。上記柔軟粒子の最大粒子径のより好ましい上限はセルギャップの220%、更に好ましい上限はセルギャップの170%である。
なお、本明細書において、上記柔軟粒子の最大粒子径及び後述する平均粒子径は、シール剤に配合する前の粒子については、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することにより得られる値を意味する。上記レーザー回折式粒度分布測定装置としては、マスターサイザー2000(マルバーン社製)等を用いることができる。また、シール剤に含まれる粒子については、走査型電子顕微鏡を用いて、1万倍の倍率で観察した10個の粒子の粒子径の最大値及び平均値を意味する。上記走査型電子顕微鏡としては、電界放出形走査電子顕微鏡S−4800(日立ハイテクノロジーズ社製)等を用いることができる。
また、液晶表示素子中においては、シール剤の硬化物中に、貼り合わせた基板によって押しつぶされることで形状に歪みが生じている柔軟粒子の存在が確認されれば、上記柔軟粒子の最大粒子径が液晶表示素子のセルギャップの100%以上であると言える。
【0039】
上記柔軟粒子は、上記レーザー回折式分布測定装置により測定された柔軟粒子の粒度分布のうち、5μm以上の粒子径の粒子の含有割合が体積頻度で60%以上であることが好ましい。5μm以上の粒子径の粒子の含有割合が体積頻度で60%以上であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。5μm以上の粒子径の粒子の含有割合は、80%以上であることがより好ましい。
【0040】
上記柔軟粒子は、上記レーザー回折式分布測定装置により測定された柔軟粒子の粒度分布のうち、液晶表示素子のセルギャップの100%以上の粒子の含有割合が体積頻度で70%以上であることが好ましい。液晶表示素子のセルギャップの100%以上の粒子の含有割合が体積頻度で70%以上であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子は、液晶表示素子のセルギャップの100%以上の粒子の含有割合が体積頻度で100%、即ち、液晶表示素子のセルギャップの100%以上の粒子のみで構成されることがより好ましい。
【0041】
上記柔軟粒子の平均粒子径の好ましい下限は2μm、好ましい上限は15μmである。上記柔軟粒子の平均粒子径が2μm以上であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の平均粒子径が15μm以下であることにより、得られる液晶表示素子がギャップ保持性により優れるものとなる。上記柔軟粒子の平均粒子径のより好ましい下限は4μm、より好ましい上限は12μmである。
【0042】
上記柔軟粒子としては、全体の最大粒子径が上述した範囲であれば、最大粒子径の異なる2種以上の柔軟粒子を混合して用いてもよい。即ち、最大粒子径が液晶表示素子のセルギャップの100%未満の柔軟粒子と、最大粒子径が液晶表示素子のセルギャップの100%以上の柔軟粒子とを混合して用いてもよい。
【0043】
上記柔軟粒子の粒子径の変動係数(以下、「CV値」ともいう)は、30%以下であることが好ましい。上記柔軟粒子の粒子径のCV値が30%以下であることにより、得られる液晶表示素子がギャップ保持性により優れるものとなる。上記柔軟粒子の粒子径のCV値は、28%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書において上記「粒子径のCV値」は、下記式により求められる値を意味する。
粒子径のCV値(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100
【0044】
上記柔軟粒子は、最大粒子径や平均粒子径やCV値が上述した範囲外のものであっても、分級することにより、最大粒子径や平均粒子径やCV値を上述した範囲内とすることができる。また、粒子径が液晶表示素子のセルギャップの100%未満である柔軟粒子は、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染の抑制に寄与せず、シール剤に配合するとチクソ値を上昇させることがあるため、分級により除去しておくことが好ましい。
上記柔軟粒子を分級する方法としては、例えば、湿式分級、乾式分級等の方法が挙げられる。なかでも、湿式分級が好ましく、湿式篩分級がより好ましい。
【0045】
上記柔軟粒子は、負荷を与えるときの原点用荷重値から所定の反転荷重値に至るまでの圧縮変位をL1とし、負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位をL2としたとき、L2/L1を百分率で表した回復率が80%以下であることが好ましい。上記柔軟粒子の回復率が80%以下であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の回復率のより好ましい上限は70%、更に好ましい上限は60%である。
また、上記柔軟粒子の回復率は、実質的には5%以上となる。
なお、上記柔軟粒子の回復率は、微小圧縮試験機を用いて、粒子1個に一定負荷(1g)をかけ、その負荷を除去した後の回復挙動を解析することにより導出することができる。
【0046】
上記柔軟粒子は、1gの負荷を与えたときの圧縮変位をL3とし、粒子径をDnとしたとき、L3/Dnを百分率で表した1g歪みが30%以上であることが好ましい。上記柔軟粒子の1g歪みが30%以上であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の1g歪みのより好ましい下限は40%である。
なお、上記柔軟粒子の1g歪みは、微小圧縮試験機を用いて、粒子1個に1gの負荷をかけ、その時の変位量を測定することにより導出することができる。
【0047】
上記柔軟粒子は、粒子が破壊した時点の圧縮変位をL4とし、粒子径をDnとしたとき、L4/Dnを百分率で表した破壊歪みが50%以上であることが好ましい。上記柔軟粒子の破壊歪みが50%以上であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の破壊歪みのより好ましい下限は60%である。
なお、上記柔軟粒子の破壊歪みは、微小圧縮試験機を用いて、粒子1個に負荷をかけていき、その粒子が破壊する変位量を測定することにより導出することができる。上記圧縮変位L4は、負荷荷重に対して変位量が不連続に大きくなる時点を、粒子が破壊した時点として算出する。負荷荷重を大きくしても変形するだけで破壊しない場合、破壊歪みは100%以上と考える。
【0048】
上記柔軟粒子は、ガラス転移温度の好ましい下限が−200℃、好ましい上限が40℃である。上記柔軟粒子のガラス転移温度は、低いほど液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する観点では良好な傾向にあるが、−200℃以上であることにより、粒子としてのハンドリング性により優れるものとなる。上記柔軟粒子のガラス転移温度が40℃以下であることにより、得られる液晶表示素子がギャップ保持性により優れるものとなる。上記柔軟粒子のガラス転移温度のより好ましい下限は−150℃、より好ましい上限は35℃である。
なお、上記柔軟粒子のガラス転移温度は、JIS K 7121の「プラスチックスの転移温度測定方法」に基づいた示差走査熱量測定(DSC)により測定される値を示す。
【0049】
上記柔軟粒子としては、例えば、シリコーン系粒子、ビニル系粒子、ウレタン系粒子、フッ素系粒子、ニトリル系粒子等が挙げられる。なかでも、シリコーン系粒子、ビニル系粒子が好ましい。
【0050】
上記シリコーン系粒子としては、樹脂への分散性の観点からシリコーンゴム粒子が好ましい。
上記シリコーン系粒子のうち市販されているものとしては、例えば、KMP−594、KMP−597、KMP−598、KMP−600、KMP−601、KMP−602(いずれも信越化学工業社製)、トレフィルE−506S、EP−9215(いずれも東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられ、これらを分級して用いることができる。上記シリコーン系粒子は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記ビニル系粒子としては、(メタ)アクリル粒子が好適に用いられる。
上記(メタ)アクリル粒子は、原料となる単量体を公知の方法により重合させることで得ることができる。具体的には例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で単量体を懸濁重合する方法、ラジカル重合開始剤の存在下で非架橋の種粒子に単量体を吸収させることにより種粒子を膨潤させてシード重合する方法等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0052】
上記(メタ)アクリル粒子を形成するための原料となる単量体としては、単官能単量体を用いることができる。
上記単官能単量体としては、例えば、アルキルモノ(メタ)アクリレート、酸素原子含有モノ(メタ)アクリレート、ニトリル含有モノ(メタ)アクリル単量体、フッ素原子含有モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記アルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記酸素原子含有モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ニトリル含有モノ(メタ)アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
フッ素原子含有モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、単独重合体のガラス転移温度が低く、1g荷重を加えたときの変形量を大きくすることができることから、アルキルモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0053】
また、架橋構造を持たせるため上記単量体として多官能単量体を用いてもよい。
上記多官能単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸骨格トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、架橋点間分子量が大きく、1g荷重を加えたときの変形量を大きくすることができることから、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
上記単量体全体中における上記多官能単量体の使用量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は90重量%である。上記多官能単量体の使用量が1重量%以上であることにより、上記柔軟粒子の耐溶剤性が向上し、他のシール剤成分と混合した際に膨潤等の問題を引き起こさず、均一に分散しやすくなる。上記多官能単量体の使用量が90重量%以下であることにより、上記柔軟粒子の回復率を低くすることができ、スプリングバック等の問題が起こりにくくなる。上記多官能単量体の使用量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0055】
更に、上記単量体としては、これらのアクリル系の単量体に加えて、例えば、スチレン系単量体や、ビニルエーテル類や、ビニルエステル類や、不飽和炭化水素や、ハロゲン原子含有単量体や、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の単量体を用いてもよい。
上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
上記ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
上記ハロゲン原子含有単量体としては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等が挙げられる。
【0056】
また、上記ビニル系粒子としては、例えば、ポリジビニルベンゼン粒子、ポリクロロプレン粒子、ブタジエンゴム粒子等を用いてもよい。
【0057】
上記ウレタン系粒子のうち市販されているものとしては、例えば、アートパール(根上工業社製)、ダイミックビーズ(大日精化工業社製)等が挙げられ、これらを分級して用いることができる。
【0058】
上記柔軟粒子の硬度の好ましい下限は3、好ましい上限は50である。上記柔軟粒子の硬度がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子がギャップ保持性により優れるものとなる。上記柔軟粒子の硬度のより好ましい下限は10、より好ましい上限は40、更に好ましい下限は20である。
なお、本明細書において上記「柔軟粒子の硬度」は、JIS K 6253に準拠した方法により測定されるデュロメータA硬さを意味する。
【0059】
本発明の液晶表示素子用シール剤中における上記柔軟粒子の含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は60重量%である。上記柔軟粒子の含有量が5重量%以上であることにより、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の含有量が60重量%以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなる。上記柔軟粒子の含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は50重量%、更に好ましい下限は20重量%、更に好ましい上限は40重量%である。
【0060】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0061】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
上記充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0063】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0064】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらは、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0065】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0066】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0067】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0068】
上記チタンブラックは、波長300nm以上800nm以下の光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370nm以上450nm以下の光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。従って、上記光ラジカル重合開始剤又は上記光カチオン重合開始剤として、上記チタンブラックの透過率の高くなる波長(370nm以上450nm以下)の光によって反応を開始可能なものを用いることで、本発明の液晶表示素子用シール剤の光硬化性をより増大させることができる。また一方で、本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
上記チタンブラックは、1μmあたりの光学濃度(OD値)が、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほどよく、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特にないが、通常は5以下となる。
【0069】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを配合した本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0070】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、三菱マテリアル社製のチタンブラック、赤穂化成社製のチタンブラック等が挙げられる。
上記三菱マテリアル社製のチタンブラックとしては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N、14M−C等が挙げられる。
上記赤穂化成社製のチタンブラックとしては、例えば、ティラックD等が挙げられる。
【0071】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0072】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0073】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の接着性、硬化後の強度、及び、描画性を大きく低下させることなく、より優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0074】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0075】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、熱硬化剤と、柔軟粒子と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0076】
本発明の液晶表示素子用シール剤に導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0077】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0078】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
本発明の液晶表示素子としては、狭額縁設計の液晶表示素子が好ましい。具体的には、液晶表示部の周囲の枠部分の幅が2mm以下であることが好ましい。
また、本発明の液晶表示素子を製造する際の本発明の液晶表示素子用シール剤の塗布幅は1mm以下であることが好ましい。
【0079】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、以下の各工程を有する方法等が挙げられる。
まず、ITO薄膜等の電極及び配向膜を有する2枚の透明基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で重合性化合物を含有する液晶組成物の微小滴を基板のシールパターンの枠内に滴下塗布し、真空下で他方の透明基板を重ね合わせる工程を行う。その後、加熱により本発明の液晶表示素子用シール剤を硬化させる工程を行う。更に、電圧印加状態にて、光照射等により液晶組成物中の重合性化合物を重合させ、基板上に凹凸形状を形成する工程を行う方法により、PSA型液晶表示素子を得ることができる。また、上記加熱により本発明の液晶表示素子用シール剤を硬化させる工程の前に、光照射によりシール剤を仮硬化させる工程を行ってもよいが、本発明の液晶表示素子用シール剤における、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果は、シール剤を熱のみによって硬化させる場合に特に顕著となる。
【発明の効果】
【0080】
本発明によれば、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制でき、接着性に優れ、かつ、表示性能に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0082】
(部分アクリル変性ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂の合成)
ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製、「YSLV80DE」)1000重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸229重量部を、空気を送り込みながら90℃で還流撹拌し、5時間反応させた。得られた樹脂100重量部を、反応物中のイオン性不純物を吸着させる為にクオルツとカオリンの天然結合物(ホフマンミネラル社製、「シリチンV85」)10重量部が充填されたカラムで濾過し、部分アクリル変性ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂を得た。
【0083】
(レゾルシノール型エポキシアクリレートの合成)
レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製、「デナコールEX−201」)1000重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸649重量部を、空気を送り込みながら90℃で5時間還流撹拌して反応させた。得られた樹脂100重量部を、反応物中のイオン性不純物を吸着させる為にクオルツとカオリンの天然結合物(ホフマンミネラル社製、「シリチンV85」)10重量部が充填されたカラムで濾過し、レゾルシノール型エポキシアクリレートを得た。
【0084】
(シリコーンゴム粒子の分級)
シリコーンゴム粒子(信越化学工業社製、「KMP−601」)をメタノール中に分散させ、8μmの目開きの篩と5μmの目開きの篩とで粒子径が5〜8μmの範囲となるように湿式篩分級した。分級した粒子を回収して乾燥し、シリコーンゴム粒子の分級処理品を得た。篩はポリイミドフィルムにレーザーで超高精度微細加工を施して得た極めて精度の高い穴を有するものを用いた。
得られたシリコーンゴム粒子の分級処理品について、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製、「マスターサイザー2000」)を用いて測定した最大粒子径は8μmであった。
また、6μmの目開きの篩と3μmの目開きの篩とで粒子径が3〜6μmの範囲となるように湿式篩分級したこと以外は同様にして、シリコーンゴム粒子の分級処理品(最大粒子径6μm)を得た。
更に、3μmの目開きの篩で粒子径が3μm以下の範囲となるように湿式篩分級したこと以外は同様にして、シリコーンゴム粒子の分級処理品(最大粒子径3μm)を得た。
【0085】
(実施例1〜10、比較例1〜3)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1〜10、比較例1〜3の液晶表示素子用シール剤を調製した。
【0086】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0087】
(接着性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSP−2050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させた。スペーサー粒子を分散させたシール剤の極微量をガラス基板(20mm×50mm×厚さ0.7mm)の中央部に取り、同型のガラス基板をその上に重ね合わせた。液晶表示素子用シール剤を押し広げ、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、接着試験片を得た。
得られた接着試験片について、テンションゲージを用いて接着強度を測定した。接着強度が200N/cm以上であった場合を「○」、接着強度が150N/cm以上200N/cm未満であった場合を「△」、接着強度が150N/cm未満であった場合を「×」として接着性を評価した。
【0088】
(差し込み防止性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSP−2050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させた。スペーサー粒子を分散させたシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、脱泡処理を行った。脱泡処理を行ったシール剤を、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にてITO薄膜及び配向膜を有するガラス基板に長方形の枠を描く様に塗布した。続いて、重合性化合物を含有する液晶組成物(MLC−6883(メルク社製)にビフェニル4,4’−ジイルビス(2−メチルアクリレート)を1重量%添加したもの)の微小滴を液晶滴下装置にて滴下塗布した。液晶組成物を滴下塗布したガラス基板に本発明の液晶表示素子用シール剤を介してITO薄膜及び配向膜を有する別のガラス基板を重ね合わせた後、真空貼り合わせ装置にて5Paの真空下にて貼り合わせ、セルを得た。得られたセルを120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させた。次いで、電圧印加状態にて、水銀ランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長313nm)を50秒照射して液晶組成物中の重合性化合物を重合させ、凹凸形状を形成することにより液晶表示素子(セルギャップ5μm)を得た。
得られた各液晶表示素子について、シールパターンの形状観察を行った。内部の液晶によりシールパターンの形状が乱されていなかったものを「◎」、シールパターンの形状が僅かに乱されていたものを「○」、シールパターンの形状が大きく乱されているが液晶がシールパターンを突き破ってはいなかったものを「△」、液晶がシールパターンを突き破って外部に漏れ出していたものを「×」として差し込み防止性を評価した。
【0089】
(液晶表示素子の表示性能)
上記「(差し込み防止性)」の評価と同様にして得られた各液晶表示素子について、60℃、90%RHの環境下で100時間電圧印加状態とした後のシール剤付近の液晶配向乱れ(表示むら)を目視にて確認した。
液晶表示素子に表示むらが全く見られなかった場合を「○」、液晶表示素子のシール剤付近(周辺部)に表示むらが見えた場合を「△」、表示むらが周辺部のみではなく、中央部まで広がっていた場合を「×」として液晶表示素子の表示性能を評価した。
なお、評価が「○」の液晶表示素子は実用に全く問題のないレベルであり、「△」の液晶表示素子は表示設計によっては問題になる可能性があるレベルであり、「×」の液晶表示素子は実用に耐えないレベルである。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制でき、接着性に優れ、かつ、表示性能に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。