【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0035】
〔実施例1〕
米19.2質量部、米粒麦19.2質量部、油脂(なたね油)0.9質量部に対し、水60.7質量部を加えて炊飯して麦飯を得た。
それとは別に調味料として醤油及び発酵調味料を合計15質量部(水分70〜80質量%程度)、水81.5質量部、馬鈴薯由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(王子コーンスターチ社製「トレコメックスAET−4」)を4.8質量部混合し、澱粉の糊化温度以上に加熱して澱粉糊液を得た。
油脂(なたね油)2.7質量部で卵液10.1質量部を1分間炒めた。次いで具材(たけのこ、にんじん、焼豚)15.9質量部を1分間炒めた。そこに、上記炊飯した麦飯を60.5質量部、調味料としてオイスターソース、醤油、食塩、チキンエキスを合計5.9質量部投入し更に1分間炒めて、チャーハンを得た。炒める温度は200〜280℃とした。炒めた直後のチャーハン95.1質量部に上記で調製した澱粉糊液4.9質量部を混合した(混合時の混合物の温度:約20℃)。包装材として、ポリエチレンとポリアミド(ナイロン)の貼り合わせフィルム(厚さ60μm、水蒸気透過性30cc/(m
2・day・MPa))を用いて気密に包装した。包装後のチャーハンを−20℃で冷凍させた。大麦及び米からなる穀類の炊飯物100質量部に対し、澱粉糊液の量は8質量部であり、澱粉の量としては0.4質量部であった。
【0036】
〔比較例1〕
実施例1において、澱粉糊液の調製、及び炒めた後のチャーハンへの澱粉糊液の混合を行わなかった。その点以外は実施例1と同様にして、冷凍チャーハンを得た。
【0037】
〔比較例2〕
実施例1において、澱粉糊液の調製を行わず、炒めた直後のチャーハン95.1質量部に澱粉糊液4.9質量部を混合する代わりにヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉2質量部を混合した。その点以外は実施例1と同様にして、冷凍チャーハンを得た。
【0038】
(評価1:チャーハン物性測定1)
冷凍14日目における実施例1、比較例1の冷凍チャーハンを、それぞれ250g包装材から出して皿に盛り、ラップ(材質ポリ塩化ビニリデン)をかけて電子レンジで500W、5分の加熱にて解凍した。
解凍したチャーハンの物性をクリープメーターRE2-33005C2型(株式会社山電社製)により測定した。方法は上部に開口部を有する有底円筒状の容器(直径40mm、高さ15mm)にチャーハン12gを、過剰に力を加えることなく厚さ12mmに均一に充填し、その上方から圧縮・弾性用アダプタ(直径16mm円柱形)を、アダプタの中心軸と容器の中心軸が一致するようにして、1mm/秒の速度で容器に充填された食品の上表面を基準にチャーハンの厚みの50%の振幅で上下運動をさせて測定し、その結果得られたデータを同社製の自動解析装置にて解析したものである。測定時点のチャーハンの温度は約20℃であった。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
硬さ荷重の数値は、大きいほど飯粒を噛みしめた時により硬さを感じることを示し、付着性の数値は大きいほど飯粒同士の付着性が高いことを示す。付着性の数値が高いことは、実際に口に入れて食べた場合における食べやすさに寄与する。
表1の結果に示されるように糊液の粘性によって付着性の数字が高くなっている。従って、飯粒同士の付着性が高くなって、食べやすさの向上に寄与していることが判る。また澱粉糊液を混合した実施例1は糊液の水分の影響を受け、比較例1に比べてやや硬さ荷重が下がっており、澱粉糊液の水分を吸って柔らかくなったと考えられる。
【0041】
(評価2:チャーハン物性測定2)
冷凍14日目における実施例1、比較例1の冷凍チャーハンを、それぞれ250g皿に盛り、ラップ(材質ポリ塩化ビニリデン)をかけて電子レンジで500W、5分の加熱にて解凍した。
解凍したチャーハンの物性をクリープメーターRE2-33005C2型(株式会社山電社製)により測定した。方法は上部に開口部を有する有底円筒状の容器(直径40mm、高さ15mm)にチャーハン12gを、過剰に力を加えることなく厚さ12mmに均一に充填した後に容器を反転させてチャーハンのみを取り出した。取り出した円柱状のチャーハン(直径40mm、高さ12mm)の上方から圧縮・弾性用アダプタ(直径16mm円柱形)を、アダプタの中心軸とチャーハンの中心軸が一致するようにして、1mm/秒の速度で、チャーハンの厚みの90%まで下方に侵入させて測定し、その結果得られたデータを同社製の自動解析装置にて解析したものである。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
最大荷重の数値が大きいほど、チャーハンの飯粒の塊を潰すのに必要な力(荷重)が大きいことを示す。最大荷重の値が高いほど、チャーハンを皿などに盛り付けた時に飯粒同士がきちんと付着して崩れにくくなる。
表2の結果に示されるように澱粉糊液を混合した実施例1は最大荷重が比較例1よりも大きい。従って、飯粒同士のくっつきあう力は澱粉糊液(あん)を混合した実施例1の方が比較例1よりも強くなっており、麦飯の保形性が高くなっていることが判る。
【0044】
(評価3:冷凍チャーハンの官能評価)
冷凍14日目における実施例1、比較例1及び2の冷凍チャーハンを、それぞれ250g皿に盛り、ラップ(材質ポリ塩化ビニリデン)をかけて電子レンジで500W、5分の加熱にて解凍した。
これらのチャーハンについて、健常な成人である10人のパネラー(男性5人、女性5人、平均年齢36歳)に食べさせ、以下の方法で評価した。
【0045】
(食感:パラパラ感・パサパサ感)
「非常にパサパサした食感であり、まずい」と感じる場合を0点、「適度にパラパラしており、パサパサした食感とは感じられない」場合を10点として、10段階評価で評価させた。
【0046】
(食感:麦飯の硬さ)
「麦飯が硬すぎて食べ難い」と感じる場合を0点、「適度な硬さであり食べやすい」と感じる場合を10点として、10段階評価で評価させた。
【0047】
(総合評価)
「非常にまずい」と感じる場合を0点、「非常においしい」と感じる場合を10点として、10段階評価で評価させた。
【0048】
パネラーの評価点の平均点を下記表3に示す。
【表3】
【0049】
表3の結果に示されるように、澱粉糊液を混合した実施例1のチャーハンは澱粉糊液を混合していない比較例1のチャーハンよりもパサパサした硬い食感が改善され、美味しさの評価が高くなっている。また実施例1と比較例2との比較より、特許文献2に記載の発明と同様に澱粉を乾燥状態で使用する場合に比べ、本発明では澱粉糊液を使用することで、パサパサした食感や硬さの改善効果に優れることもわかる。
【0050】
〔実施例2〕
米12質量部、米粒麦12質量部、その他雑穀(粟、きび、ごま)合計2質量部、調味料(かつお風味調味料、発酵調味料、食塩、しょうゆ等)1質量部に対し、水38質量部を加えて炊飯したものに、五目具材(れんこん、にんじん、鶏肉、枝豆、昆布、きざみ梅)合計16質量部を混合して五目入りの麦飯を得た。
それとは別に調味料として発酵調味料、風味調味料、チキンコンソメを合計1.5質量部(これらの調味料中の水分量は平均3質量%程度)、水4質量部、馬鈴薯由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(王子コーンスターチ社製「トレコメックスAET−4」)を0.3質量部混合し、澱粉の糊化温度以上に加熱して澱粉糊液を得た。
五目入りの麦飯に対し澱粉糊液を混合させた。混合比率は五目以外の麦飯100質量部に対して、澱粉糊液5質量部とした。これにより、米粒麦、米及び雑穀の混合物の表面に、澱粉糊液を付着させた(混合時の混合物の温度:約80℃)。包装材として、ポリエチレンとポリアミド(ナイロン)の貼り合わせフィルム(厚さ60μm、水蒸気透過性30cc/(m
2・day・MPa))を用いて混合物を気密に包装した。包装後の五目入り麦飯を−20℃で冷凍させて、冷凍五目入り麦飯を得た。なお、得られた冷凍五目入り麦飯中、麦飯100質量部に対し、澱粉糊液の澱粉の量としては0.3質量部である。
【0051】
〔実施例3及び4、比較例3〕
実施例3では、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を、ワキシーコーン由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉に変更した。また、実施例4では、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を、タピオカ由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉に変更した。更に、比較例3では、澱粉糊液を用いなかった。それらの点以外は実施例2と同様にして、冷凍五目入り麦飯を得た。
【0052】
(評価4:五目麦飯の物性評価)
冷凍14日目における比較例3、実施例2〜4の冷凍した五目入り麦飯を、それぞれ250g皿に盛り、ラップ(材質ポリ塩化ビニリデン)をかけて電子レンジで500W、5分の加熱にて解凍した。
解凍した五目入り麦飯について、上記の評価1と同様の方法で硬さ荷重と付着性を測定した。結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示すように各実施例において、澱粉糊液を添加しない場合(比較例3)に比して、澱粉糊液を添加した実施例2〜4は、硬さ荷重が比較例3と同程度でありながら、付着性が比較例3に比して向上していることが判る。従って、飯粒同士の付着性が高くなって、食べやすさの向上に寄与していることが判る。
なお澱粉糊液における澱粉濃度を15質量%としたり、澱粉糊液の添加量を15質量部とする以外は実施例2と同条件とした冷凍五目入り麦飯について硬さ荷重を実施例2と同様に測定したところ、実施例2と同程度の結果が得られた。
【0055】
また実施例2〜4、及び後述する実施例5及び6について、米粒のまとまり具合を触感で評価し、澱粉糊液を添加することで比較例3に比べて保形性を向上させることができることについて確認した。
【0056】
(評価5:五目麦飯の官能評価1)
冷凍14日目における実施例2、比較例3の冷凍された五目入り麦飯を、それぞれ250g皿に盛り、ラップ(材質ポリ塩化ビニリデン)をかけて電子レンジで500W、5分の加熱にて解凍した。
解凍した五目入り麦飯について、健常な成人である10人のパネラー(男性5人、女性5人、平均年齢 34歳)に喫食させ、以下の方法で評価した。
【0057】
(食感:パラパラ感・パサパサ感)
「非常にパサパサした食感であり、まずい」と感じる場合を0点、「適度にパラパラしており、パサパサした食感とは感じられない」と感じる場合を10点として、10段階評価で評価させた。
【0058】
(食感:麦飯の硬さ)
「麦飯が硬すぎて食べ難い」と感じる場合を0点、「適度な硬さであり食べやすい」と感じる場合を10点として、10段階評価で評価させた。
【0059】
(総合評価)
「非常にまずい」と感じる場合を0点、「非常においしい」と感じる場合を10点として、10段階評価で評価させた。
【0060】
パネラーの評価点の平均点を下記表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
表5の結果に示されるように、澱粉糊液を混合した実施例2の冷凍五目入り麦飯は澱粉糊液を混合していない比較例3よりもパサパサした硬い食感が改善され、美味しさの評価が高くなっている。
【0063】
〔実施例5及び6〕
実施例5では、表6に示すように、実施例2において、澱粉糊液中のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の濃度を変更させた。濃度の変更はヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の使用量を0.3質量部から0.17質量部に変更することにより行った。
実施例6では、実施例2において、表6に示すように、澱粉糊液の添加量を変化させた。
表6には、五目を除く麦飯に対する澱粉糊液の量を示す。
【0064】
(評価6:五目麦飯の官能評価2)
実施例2、5及び6の冷凍五目入り麦飯について、評価5と同様にして解凍させた後に、健常な成人である10人のパネラー(男性5人、女性5人、平均年齢 34歳)に喫食させ、以下の方法で評価した。
【0065】
(食感:粘り性)
10人のパネラーに「パサパサした食感であり、食べにくい」と感じる場合を0点、「適度な粘りがあり食べやすい」と感じる場合を5点、「ベタベタした食感であり、食べにくい」と感じる場合を10点とする10段階評価で評価させた。
それぞれのパネラーの平均点を集計し、以下の評価基準で評価した。結果を表6に示す。
0点以上2.0点未満:×
2.0点以上4.0点未満:○
4.0点以上6.0点未満:◎
6.0点以上8.0点未満:○
+
8.0点以上10.0点以下:×
+
【0066】
【表6】
【0067】
表6に示す通り、澱粉糊液における澱粉の濃度及び澱粉糊液の添加量を調整することで、粘りの官能評価を最適化することができることが判る。
【0068】
〔実施例7〜11〕
実施例7では実施例1において、澱粉糊液におけるヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の濃度及び澱粉糊液の添加量を表7に記載のように変更した。実施例8〜11では、澱粉糊液の添加量を表7に記載のように変更した。更に実施例10では、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を、ワキシーコーン由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉に変更した。また、実施例11では、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を、タピオカ由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉に変更した。それらの点以外は実施例1と同様にして、冷凍チャーハンを得た。
なお実施例7において澱粉糊液の濃度は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の量を4.8質量部から3.0質量部に変更した。
【0069】
(評価7:チャーハンの物性評価3)
冷凍14日目における実施例7〜11の冷凍チャーハンを、それぞれ250g皿に盛り、ラップ(材質ポリ塩化ビニリデン)をかけて電子レンジで500W、5分の加熱にて解凍した。
解凍したチャーハンについて、上記の評価1と同様の方法で硬さ荷重と付着性を測定した。結果を表7に示す。
【0070】
【表7】
【0071】
表7に示すように各実施例において、澱粉糊液を添加しない場合(比較例1)に比して、澱粉糊液を添加した実施例7〜11は、硬さ荷重が比較例1と同程度でありながら、付着性が比較例1に比して向上していることが判る。従って、飯粒同士の付着性が高くなって、食べやすさの向上に寄与していることが判る。
なお澱粉糊液における澱粉濃度を15質量%としたり、澱粉糊液の添加量を15質量部とする以外は実施例8と同条件とした冷凍チャーハンについて硬さ荷重を実施例8と同様にして測定したところ、実施例8と同程度の結果が得られた。
【0072】
また比較例1、実施例7〜11について、アダプタをチャーハンの厚みの50%まで下方に侵入させて測定した以外は上記評価2と同様の方法で最大荷重を測定したところ、比較例1の最大荷重が4.20Nであったのに対し、実施例7〜11は最大荷重が8.20〜8.41N程度となり、保形性が向上したことを確認した。
【0073】
(評価8:チャーハンの官能評価2)
実施例7〜9の冷凍チャーハンについて、評価7と同様にして解凍させた後、健常な成人である10人のパネラー(男性5人、女性5人、平均年齢 35歳)に喫食させ、以下の方法で評価した。
【0074】
(食感:粘り性)
10人のパネラーに「パサパサした食感であり、食べにくい」と感じる場合を0点、「適度な粘りがあり食べやすい」と感じる場合を5点、「ベタベタした食感であり、食べにくい」と感じる場合を10点とする10段階評価で評価させた。
それぞれのパネラーの平均点を集計し、以下の評価基準で評価した。結果を表8に示す。
0点以上2.0点未満:×
2.0点以上4.0点未満:○
4.0点以上6.0点未満:◎
6.0点以上8.0点未満:○
+
8.0点以上10.0点以下:×
+
【0075】
【表8】