特許第6773940号(P6773940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6773940
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】複合構成体、及び両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20201012BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20201012BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20201012BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20201012BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20201012BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B32B7/022
   C09J7/10
   C09J133/06
   C09J7/38
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-517607(P2020-517607)
(86)(22)【出願日】2020年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2020011887
【審査請求日】2020年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2019-50410(P2019-50410)
(32)【優先日】2019年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】肥田 知浩
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−60132(JP,A)
【文献】 特開平9−25470(JP,A)
【文献】 特開2009−18778(JP,A)
【文献】 特開2017−206677(JP,A)
【文献】 特許第4502722(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 7/10
C09J 7/38
C09J133/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料と、布帛と、前記合成樹脂材料と布帛の間に配置され、かつこれらを貼り合わせる両面粘着テープとを備える複合構成体であって、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上であり、前記布帛がポリエステル繊維布帛である複合構成体。
【請求項2】
合成樹脂材料と、布帛と、前記合成樹脂材料と布帛の間に配置され、かつこれらを貼り合わせる両面粘着テープとを備える複合構成体であって、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上であり、前記両面粘着テープがアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を備える複合構成体。
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤が、アクリル系重合体(A)を含み、
前記アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)100質量部と、カルボキシ基含有モノマー(X1)4〜18質量部とを含むモノマー成分の共重合体である請求項に記載の複合構成体。
【請求項4】
前記アクリル系粘着剤が、アクリル系重合体(A)を含み、前記アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が30万〜200万であり、かつ分散度が2.5以下である請求項2又は3に記載の複合構成体。
【請求項5】
前記布帛がポリエステル繊維布帛である請求項のいずれか1項に記載の複合構成体。
【請求項6】
前記両面粘着テープが、基材レス両面粘着テープである請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合構成体。
【請求項7】
前記両面粘着テープが、前記布帛に直接接着される請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合構成体。
【請求項8】
前記両面粘着テープの厚さが、100μm以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の複合構成体。
【請求項9】
前記両面粘着テープが、前記布帛に全面貼りにより貼り合わされる請求項1〜のいずれか1項に記載の複合構成体。
【請求項10】
前記合成樹脂材料がポリイミド系樹脂である請求項1〜のいずれか1項に記載の複合構成体。
【請求項11】
合成樹脂材料と、布帛とを接着させるための両面粘着テープであって、
ポリイミド樹脂からなる標準樹脂試料と、ポリエステル繊維布帛からなる標準布帛試料とを前記両面粘着テープを介して貼り合わせて測定された、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上である両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合成樹脂材料、布帛、及びこれらを接着させる両面粘着テープを備える複合構成体、及び合成樹脂材料と布帛とを接着させるための両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂材料の表面を保護し、また、合成樹脂材料表面を加飾することを目的として、合成樹脂材料に布帛を貼り合わせることが様々な分野で行われている。例えば、車輌、住宅、電子機器分野において、布帛が貼り合わされた合成樹脂材料は、近年の高性能化に伴い、耐熱性が要求されることが多く、例えば100℃以上、場合によっては140℃以上の超高温下でも十分な耐荷重性能が要求されることがある。
【0003】
布帛は、表面が粗面であることから、ホットメルト接着剤や液状接着剤などの接着剤を布帛内部に染み込ませて、樹脂層に貼り合わせることが知られている。例えば特許文献1では、熱可塑性樹脂からなる非発泡層に、不織布表皮材が積層された積層シートにおいて、非発泡層と不織布表皮材とが、ホットメルト接着剤、液状接着剤などからなる接着剤層を介して接着されることが開示されている。
【0004】
また、布帛と合成樹脂材料の接着は、例えば、特許文献2に開示されるように、布帛などからなる加飾シートの裏面にフィルムを積層して、そのフィルムを介して、合成樹脂材料に貼り合わせることも知られている。さらに、例えば、特許文献3には、繊維層に積層される接着層として、アクリル系ブロック共重合体を含有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−18778号公報
【特許文献2】特許第4502722号公報
【特許文献3】特開2017−206677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、接着剤を布帛内部に染み込ませたうえで、布帛を樹脂材料に貼り合わせると、接着剤が布帛表面に染み出して、布帛の風合いが低下するという不具合がある。また、ホットメルト接着剤は、高温環境下での接着力が不十分であることも多い。
一方で、特許文献2のように布帛の裏面にフィルムを貼り合わせると、布帛の風合いが確保できるものの、布帛とフィルムの貼り合わせは一体成型などが必要であり作業性が低下する。また、布帛は、フィルムが貼り合わされたことで、成型性、追従性なども失われるという問題もある。
【0007】
さらに、特許文献3では、繊維材料の風合いが確保できる点が示されるが、接着剤は熱ラミネートにより繊維材料に積層されている。すなわち、特許文献3の接着剤は、感圧接着性が不十分であり、貼り付けに煩雑な作業が必要とされる。さらに、接着剤と繊維材料との層間接着強度が高いことが示されるが、高温環境下では接着強度が高いことが示されず、例えば140℃程度の超高温下において十分な耐荷重性能を有することが示唆されるわけでもない。
【0008】
そこで、本発明は、合成樹脂材料、布帛、及びこれらを接着させる両面粘着テープを備える複合構成体であって、布帛の風合いを損なうことなく、良好な作業性で布帛と合成樹脂材料を貼り合わせることが可能であり、かつ超高温下においても十分な耐荷重性能を有する、複合構成体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、合成樹脂材料と、布帛の貼り合わせに両面粘着テープを使用し、かつ複合構成体の140℃におけるせん断強度を所定の値以上とすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]を提供する。
[1]合成樹脂材料と、布帛と、前記合成樹脂材料と布帛の間に配置され、かつこれらを貼り合わせる両面粘着テープとを備える複合構成体であって、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上である複合構成体。
[2]前記両面粘着テープが、基材レス両面粘着テープである上記[1]に記載の複合構成体。
[3]前記両面粘着テープが、前記布帛に直接接着される上記[1]又は[2]に記載の複合構成体。
[4]前記両面粘着テープの厚さが、100μm以下である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の複合構成体。
[5]前記両面粘着テープが、前記布帛に全面貼りにより貼り合わされる上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の複合構成体。
[6]前記布帛がポリエステル繊維布帛である上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の複合構成体。
[7]前記合成樹脂材料がポリイミド系樹脂である上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の複合構成体。
[8]前記両面粘着テープが、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層を備える上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の複合構成体。
[9]前記アクリル系粘着剤が、アクリル系重合体(A)を含み、
前記アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)100質量部と、カルボキシ基含有モノマー(X1)4〜18質量部とを含むモノマー成分の共重合体である上記[8]に記載の複合構成体。
[10]前記アクリル系粘着剤が、アクリル系重合体(A)を含み、前記アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が30万〜200万であり、かつ分散度が2.5以下である上記[8]又は[9]に記載の複合構成体。
[11]合成樹脂材料と、布帛とを接着させるための両面粘着テープであって、
ポリイミド樹脂からなる標準樹脂試料と、ポリエステル繊維布帛からなる標準布帛試料とを前記両面粘着テープを介して貼り合わせて測定された、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上である両面粘着テープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、合成樹脂材料、布帛、及びこれらを接着させる両面粘着テープを備える複合構成体であって、布帛の風合いを損なうことなく、良好な作業性で布帛と合成樹脂材料を貼り合わせることが可能であり、かつ超高温下においても十分な耐荷重性能を有する、複合構成体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】140℃におけるせん断強度を測定するための評価用サンプルを示し、図1(A)が平面図であり、図1(B)が側面図である。
図2】140℃における耐荷重評価にて使用される評価用サンプルの側面図である。
図3】耐荷重評価試験の評価方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[複合構成体]
本発明の複合構成体は、合成樹脂材料と、布帛と、合成樹脂材料と布帛の間に配置され、かつこれらを貼り合わせる両面粘着テープとを備え、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上となるものである。
本発明の複合構成体は、布帛のように粗面を有する材料と合成樹脂材料との複合構成体でありながらも、140℃程度の超高温下においても、耐荷重性能が良好となる。そのため、複合構成体に強い荷重が付加されたりしても、布帛や合成樹脂材料が剥がれたり、ずれたりする不具合が生じにくくなる。
また、両面粘着テープを使用することで、合成樹脂材料と布帛とを貼り合わせる際の作業性を良好にできる。具体的には、合成樹脂材料と布帛と貼り合わせた後、直ちに接着力(せん断強度)を高くすることができ、さらには、両面粘着テープを布帛に予め積層し長期間保管した後でも、貼り合わせを行うことができる。さらに、両面粘着テープを使用することで、接着剤などが布帛表面に染み出して布帛の風合いが低下することも防止できる。
【0013】
複合構成体は、140℃におけるせん断強度が、15mN/mm未満となると、超高温下における耐荷重性能が不十分となり、布帛や合成樹脂材料に大きな荷重や衝撃が作用されると、布帛や合成樹脂材料が剥がれたり、ずれたりする不具合が生じる。
超高温下における耐荷重性能をより優れたものとする観点から、複合構成体の140℃におけるせん断強度は、15mN/mm以上であることが好ましく、25mN/mm以上であることがより好ましく、35mN/mm以上であることがさらに好ましい。また、製造容易性、実用性の観点から、複合構成体の140℃におけるせん断強度は、例えば、500mN/mm以下であることが好ましく、300mN/mm以下であることがより好ましく、100mN/mm以下であることがさらに好ましい。
なお、複合構成体のせん断強度は、複合構成体において使用する合成樹脂材料、布帛、及び両面粘着テープと同じものを用意し、これらより評価用サンプルを作成し、その評価用サンプルのせん断強度を測定することで求めることができる。評価用サンプル作成方法、及びせん断強度の測定方法の詳細は、後述する実施例に示すとおりである。
【0014】
以下、複合構成体を構成する各部材についてより詳細に説明する。
[両面粘着テープ]
両面粘着テープは、合成樹脂材料と布帛を貼り合わせるために使用される。両面粘着テープは、合成樹脂材料と布帛の間に薄層状となるものであれば限定されず、後述するように、合成樹脂材料又は布帛のいずれか一方に塗布されて形成されたものでもよいが、予め作製された両面粘着テープを合成樹脂材料又は布帛に貼り付けたものであることが好ましい。
【0015】
両面粘着テープは、基材レス両面粘着テープであってもよいし、基材を有する両面粘着テープであってもよいが、基材レス両面粘着テープであることが好ましい。基材レス両面粘着テープを使用することで両面粘着テープの厚さを薄くできるとともに、布帛に対する追従性が良好になり、上記した140℃におけるせん断強度を高くしやすくなる。
基材レス両面粘着テープは、粘着剤層単体からなるものである。両面粘着テープとして基材レス両面粘着テープを使用することで、単層の粘着剤層の両面が、合成樹脂材料と布帛それぞれに接着することになる。
【0016】
基材を有する両面粘着テープは、基材と、基材の両面それぞれに設けられた粘着剤層とを備えるものであり、一方の粘着剤層を合成樹脂材料に、他方の粘着剤層を布帛に接着させることになる。両面粘着テープが基材を有する場合、基材は特に限定されず、例えば、不織布、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン等のプラスチックフィルム、金属箔等を用いることができる。基材の厚みは特に限定されないが、一定の強度と両面粘着テープの薄さを確保する観点から、好ましくは10〜50μmである。
【0017】
本発明において、両面粘着テープにおいて各粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが挙げられる。これらのなかでは、超高温下におけるせん断強度を確保しやすい観点、及び車輌における低VOCの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
以下、粘着剤として、アクリル系粘着剤が使用される場合について詳細に説明する。
【0018】
(アクリル系重合体(A))
アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体(A)を含む。アクリル系重合体(A)は、少なくともアクリル系モノマーを含むモノマー成分を重合したものである。アクリル系重合体(A)は、極性基を有する重合体であることが好ましい。
極性基としては、活性水素を有し、好ましくは後述する架橋剤(B)と反応可能な官能基であり、具体的には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。これらの官能基のなかでは、カルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、少なくともカルボキシ基を含有することがより好ましい。カルボキシ基及び水酸基は、後述する架橋剤(B)との反応性が高く、容易に架橋構造を形成することが可能である。また、極性の高いカルボキシ基を有するアクリル系重合体(A)を使用することで、粘着剤層中のアクリル系重合体(A)が布帛の表面と化学的に結合し、超高温下におけるせん断強度を向上させやすくなる。
【0019】
アクリル系重合体(A)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)と、極性基含有モノマー(A2)との共重合体、又は、上記モノマー(A1)及び(A2)と、(A1)及び(A2)以外のその他のモノマー(A3)との共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)と、極性基含有モノマー(A2)との共重合体が好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの一方又はこれら両方を意味する用語として使用し、他の類似する用語も同様である。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(A1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(A1)の中でも、超高温下におけるせん断強度を向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が2〜8のアルキルアクリレートを含むことがより好ましい。アルキル基の炭素数が2〜8のアルキルアクリレートは、モノマー(A1)全量基準で、例えば50〜100質量%が好ましく、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
【0021】
極性基含有モノマー(A2)のうちカルボキシ基を含有するモノマー(以下、「カルボキシ基含有モノマー(X1)」ともいう)としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では、上記せん断強度を向上させる観点からはアクリル酸及びメタアクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
また、極性基含有モノマー(A2)のうち水酸基を含有するモノマー(以下、「水酸基含有モノマー(X2)」ともいう)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、せん断強度を向上させる観点からは水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
極性基含有モノマー(A2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
極性基含有モノマー(A2)としては、カルボキシ基含有モノマー(X1)及び水酸基含有モノマー(X2)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、少なくともカルボキシ基含有モノマー(X1)を含むことがより好ましい。また、カルボキシ基含有モノマー(X1)及び水酸基含有モノマー(X2)からなる群から選ばれる少なくとも1種としては、好ましくは、アクリル酸、メタアクリル酸、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0023】
上記(A1)及び(A2)以外のその他のモノマー(A3)としては、モノマー(A1)及び(A2)と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル基を有する化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル等が挙げられる。モノマー(A3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
アクリル系重合体(A)に用いるモノマー成分の使用量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)100質量部に対して、極性基含有モノマー(A2)が好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜18質量部、さらに好ましくは5〜15質量部、よりさらに好ましくは5〜11質量部の範囲である。極性基含有モノマー(A2)の使用量が上記範囲内であると、極性基と架橋剤(B)との架橋反応が進行し易くなる。また、超高温下におけるせん断強度を向上させやすくなる。
【0025】
また、上記したように、極性基含有モノマー(A2)は、カルボキシ基含有モノマー(X1)を含むことが好ましい。アクリル系重合体(A)を構成するモノマー成分において、カルボキシ基含有モノマー(X1)の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)100質量部に対して、好ましくは3〜18質量部、より好ましくは3〜15質量部、さらに好ましくは5〜11質量部の範囲である。カルボキシ基含有モノマー(X1)の使用量が上記範囲内であると、超高温下におけるせん断強度を向上させやすくなる。また、極性基と架橋剤(B)との架橋反応が進行し易くなる。
【0026】
(A1)及び(A2)以外のモノマー(A3)の使用量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下であり、2質量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0027】
また、粘着剤層の接着性能を良好にし、上記したせん断強度を向上させる観点から、アクリル系重合体(A)に用いる全モノマー成分中のモノマー(A1)及びモノマー(A2)の合計量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、上限は100質量%である。
【0028】
アクリル系重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が30万〜200万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましく、60万〜150万であることがさらに好ましく、70万〜110万であることがよりさらに好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることで、粘着剤層の粘着性能を高めて、超高温下におけるせん断強度を良好にしやすくなる。重量平均分子量は、重合開始剤の使用量、重合温度等の重合条件を調整するか、重合方法を選択することにより調整できる。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0029】
また、本発明では、超高温下におけるせん断強度を所定値以上に調整しやすくする観点から、アクリル系重合体(A)の分散度(Mw/Mn)は小さいことが好ましい。例えばアクリル系重合体(A)の分散度(Mw/Mn)は、例えば10以下、好ましくは7.5以下、であるが、超高温下におけるせん断強度を高くする観点からより好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。また製造容易性の観点からは、分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.1以上である。分散度(Mw/Mn)は、重量平均分子量と同様の方法で測定できる。
【0030】
両面粘着テープを薄くしつつ、超高温下におけるせん断強度を向上させる観点からは、分散度Mw/Mnを低くしつつ、アクリル系重合体(A)の分子量を高くすることが特に好ましい。したがって、そのような観点から、分散度を2.5以下、より好ましくは2.0以下としつつ、重量平均分子量(Mw)を30万〜200万、より好ましくは50万〜200万、さらに好ましくは60万〜150万、よりさらに好ましくは70万〜110万とすることが特に好ましい。また、分散度及び重量平均分子量をこれら範囲内としつつ、カルボキシ基含有モノマー(X1)の含有量を上記した範囲内に調整することが特に好ましい。
【0031】
アクリル系重合体(A)は、アクリル系粘着剤の主成分となるものであり、アクリル系粘着剤全量(不揮発分基準)に対して、通常、50質量%以上、好ましくは55〜98質量%、より好ましくは60〜95質量%である。
【0032】
アクリル系重合体(A)は、前述したモノマー成分をフリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法により重合して得ることができる。これらの中では、分子量を高くしつつ、分散度を低く抑える観点からリビングラジカル重合法が好ましい。また、重合方法としては、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0033】
フリーラジカル重合法では、モノマー成分を重合開始剤の存在下重合させるとよい。重合開始剤としては、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート又はジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0034】
またアゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜2質量部である。
【0035】
重合を行う際には、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としてはチオール化合物が好ましく、例えば、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、チオグリコール酸ブチル;プロパンチオール類;ブタンチオール類;チオホスファイト類等が挙げられる。
連鎖移動剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜2質量部である。
【0036】
リビングラジカル重合においては、好ましくは有機テルル重合開始剤を用いる。有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。
上記有機テルル化合物として、例えば、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機テルル化合物中のメチルテラニル基は、エチルテラニル基、n−プロピルテラニル基、イソプロピルテラニル基、n−ブチルテラニル基、イソブチルテラニル基、t−ブチルテラニル基、フェニルテラニル基等であってもよく、また、これらの有機テルル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記有機テルリド化合物として、例えば、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。これらの有機テルリド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが好ましい。
【0038】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的としてアゾ系重合開始剤を用いてもよい。アゾ系重合開始剤は、例えば、上記で列挙した化合物を使用すればよい。
リビングラジカル重合においては、分散安定剤を用いてもよい。上記分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
(架橋剤(B))
本発明のアクリル系粘着剤は、上記したアクリル系重合体(A)に加えて、架橋剤(B)を含有することが好ましい。架橋剤(B)は、例えばアクリル系重合体(A)が有する極性基との反応により、粘着剤層を架橋しうる成分であり、複合構成体の上記せん断強度を高めやすくなる。
架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0040】
イソシアネート系架橋剤は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物が好ましい。
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、コロネートL−45E、コロネートL−55E(東ソー社製)等の各種ポリイソシアネート化合物、スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)等のビューレットポリイソシアネート化合物、デスモジュールIL、HL(バイエルAG社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン社製)等のイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、スミジュールL(住友バイエルウレタン社製)、コロネートL、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0041】
エポキシ系架橋剤は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、E−AX、E−5C(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0042】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
また、金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられ、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムキレートが好ましい。市販品としては、アルミキレートA、アルミキレートM(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
アクリル系粘着剤における架橋剤(B)の含有量は、粘着剤の種類などに応じて適宜設定すればよいが、例えば、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、よりさらに好ましくは1.5質量部以上である。架橋剤(B)の含有量をこれら下限値以上とすることで、粘着剤層の布帛に対する接着性が良好となり、上記したせん断強度を高めやすくなる。また、アクリル系粘着剤における架橋剤(B)の含有量の上限は、特に限定されないが、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、例えば20質量部、好ましくは15質量部である。
【0044】
(粘着付与樹脂(C))
アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)に加えて、さらに粘着付与樹脂(C)を含有することが好ましい。粘着付与樹脂(C)としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、クマロン系樹脂、ケトン系樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、上記したせん断強度を向上させる観点から、粘着付与樹脂(C)としてはロジン系樹脂及びテルペンフェノール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ロジン系樹脂単独、又はロジン系樹脂及びテルペンフェノール系樹脂を併用することがより好ましい。ロジン系樹脂としては、例えば、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン等が挙げられる。また、テルペンフェノール系樹脂はテルペン構造とフェノール構造とを有する樹脂である。
粘着付与樹脂(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
アクリル系粘着剤中の粘着付与樹脂(C)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは3〜45質量部、さらに好ましくは4〜40質量部、よりさらに好ましくは5〜35質量部である。上記含有量の範囲内とすることで、粘着剤層に適切なせん断強度を付与できる。
【0046】
アクリル系粘着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、充填剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、粘度調節剤等の粘着剤に配合される添加剤が適宜配合されてもよい。
また、アクリル系粘着剤は、有機溶剤等により希釈されてもよい。希釈溶剤は、アクリル系重合体(A)を合成するときに使用した溶媒でもよいし、アクリル系重合体(A)を合成した後に加えられたものでもよい。
【0047】
本発明の両面粘着テープの厚みは、好ましくは100μm以下である。厚みを100μm以下とすることで、複合構造体を薄くでき、小型の電子機器などにおいて好適に使用できる。そのような観点から、両面粘着テープの厚みは、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、よりさらに好ましくは40μm以下である。また、両面粘着テープの厚みは、一定のせん断強度を確保する観点から、5μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。なお、本発明では、このように厚みを薄くするためには、上記のとおり両面粘着テープは、粘着剤層単体からなるものが好ましい。
また、基材を有する両面粘着テープの厚さは、上記と同様であるが、布帛側に貼り付けられる粘着剤層の厚みは20μm以上とすることが好ましい。
【0048】
複合構成体において、両面粘着テープと布帛の間は、接着補助用のフィルムなどの他の部材が配置されず、両面粘着テープが布帛に直接接着されることが好ましい。本発明では、両面粘着テープが布帛に直接接着されても、両面粘着テープが布帛表面まで染み出すことが防止され、布帛の風合いが良好となる。
【0049】
また、複合構成体において、両面粘着テープは、布帛に全面貼りされることが好ましい。ここで、全面貼りとは、布帛の合成樹脂材料に重ねられた部分(領域)のうち、実質的にすべての領域(具体的には、面積割合で95%以上の領域)に両面粘着テープが貼られることを意味し、好ましくは99%以上、より好ましくは100%の領域に両面粘着テープが貼られる。複合構成体は、全面貼りされることで、超高温下における耐荷重性能が高くなりやすくなる。もちろん、両面粘着テープは、必ずしも布帛に全面貼りされる必要はなく、布帛の一部の領域に貼られてもよい。
【0050】
[合成樹脂材料]
本発明で使用する合成樹脂材料は、シート状、ブロック状、フィルム状などのいかなる形態であってもよい。後述するように、本発明の複合構成体は、エンジン周りの躯体、筐体又は構成部品、電源又はその他電子部品の筐体又は構成部品などに使用されるが、合成樹脂材料は、例えば、筐体や構成部品若しくは躯体の一部または全部を構成するとよい。
【0051】
合成樹脂材料に使用する合成樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0052】
上記したなかでは、ポリイミド系樹脂が好ましい。ポリイミド系樹脂は、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子であり、ポリイミド、ポリイミドアミドなどが挙げられる。ポリイミド系樹脂は、耐熱性を有し、上記したようにヒーターなどの熱源や、電源などの近傍に使用され、140℃程度の超高温になっても軟化せず、劣化もしにくい。また、アクリル系粘着剤との接着性も良好である。そのため、上記した140℃におけるせん断強度を高く維持しやすくなる。
【0053】
[布帛]
布帛としては、特に限定されず、不織布、織布、編布などが挙げられる。これらの中では、織布が好ましい。また、織布としては、ダブルラッセル織物生地(例えば、商品名「スペースファブリック」、セーレン社製)やチュール生地(例えば、商品名「シルリード」、東レ社製)などが挙げられる。布帛の目付は、10〜3000g/mが好ましく、50〜1000g/mがより好ましい。布帛の目付を上記範囲内とすることで、超高温下におけるせん断強度を所定の範囲内に調整しやすくなる。
【0054】
布帛は、一方の面が他方の面に比べて平滑であり、凹凸の高低差が少ないことが好ましい。なお、一方の面は、両面粘着テープが接着される側の面を意味する。このような構成により、両面粘着テープは、相対的に平滑な面に接着されることになるので、せん断強度を向上させやすくなる。一方で、他方の面は、両面粘着テープが接着されない複合構成体の外表面となるが、凹凸の高低差を相対的に大きくすることで、加飾性、装飾性を付与しやすくなる。
【0055】
布帛は、合成繊維から構成される布帛であることが好ましく、具体的には、ポリエステル繊維布帛、ポリアミド繊維布帛、アクリル繊維布帛、レーヨン繊維布帛、ポリ塩化ビニル繊維布帛などが挙げられ、これらの中ではポリエステル繊維布帛が好ましい。ポリエステル繊維布帛に使用されるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。布帛にポリエステル繊維布帛を使用することで、上記したアクリル系粘着剤との接着性が良好となり、超高温下におけるせん断強度を向上させやすくなる。
なお、布帛が不織布の場合は、コットン、麻及びウール等の天然繊維を使用することができる。
【0056】
[複合構成体の用途]
本発明の複合構成体は、自動車などの各種車輛用途、住宅用途、電子機器用途などに使用される。複合構成体は、例えば、熱源に近い位置で使用され、より具体的には、エンジン周りの躯体、筐体又は構成部品、電源又はその他の熱を発する電子部品の構成部品又は筐体などに使用される。複合構成体は、布帛によって合成樹脂材料の表面を保護したり、加飾したりすることが可能である。特に、本発明では、上記したように布帛の風合いが良好に維持されるので、複合構成体の加飾性、装飾性が優れたものとなる。
また、本発明の複合構成体は、上記のようにエンジン、電源などの高温になる部材近傍で使用されても、140℃におけるせん断強度が高くなるので、耐荷重性能が優れたものになる。
【0057】
[複合構成体の製造方法]
本発明の複合構成体は、合成樹脂材料と布帛とを用意して、これらを両面粘着テープにより貼り合わせることで得ることができる。この際、両面粘着テープは、合成樹脂材料及び布帛の一方に予め積層したうえで、合成樹脂材料と布帛を両面粘着テープを介して貼り合わせるとよいが、布帛に予め積層することが好ましい。
両面粘着テープは、例えば、合成樹脂材料又は布帛のいずれか一方に粘着剤を塗布し、必要に応じて適宜加熱乾燥して形成してもよいが、予め作製された両面粘着テープを合成樹脂材料又は布帛に貼り付けることが好ましく、これらのなかでは布帛に貼り付けることがより好ましい。両面粘着テープが貼り付けられた合成樹脂材料又は布帛は、両面粘着テープを介して、さらに布帛又は合成樹脂材料に貼り合わされることで複合構成体が得られる。
【0058】
両面粘着テープを予め作製する方法は特に限定されないが、両面粘着テープが粘着剤層単層からなる場合は、粘着剤を、剥離シート等の支持体に塗布し、必要に応じて適宜加熱乾燥することにより粘着剤層を形成するとよい。支持体上に形成された粘着剤層(両面粘着テープ)は、合成樹脂材料又は布帛に貼り付けるとよいが、支持体は、両面粘着テープを介して、合成樹脂材料と布帛を貼り合わせる前に、粘着剤層から剥離するとよい。
また、両面粘着テープが基材を有する場合、粘着剤を基材の両面に塗布し、次いで加熱乾燥することにより粘着剤層を形成して両面粘着テープを製造することができる。
粘着剤の加熱乾燥条件は適宜選択できるが、粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、アクリル系粘着剤を希釈する有機溶剤等の揮発成分を除去し、かつ、架橋剤により適切に架橋させる観点から、90〜120℃で1〜10分程度加熱乾燥することが好ましい。
【0059】
別の側面において本発明は、両面粘着テープを提供するものである。本発明の両面粘着テープは、合成樹脂材料と、布帛とを接着させるための両面粘着テープであり、ポリイミド樹脂からなる標準樹脂試料と、ポリエステル繊維布帛からなる標準布帛試料とを両面粘着テープを介して貼り合わせて測定された、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上となるものである。
このように両面粘着テープの所定条件下で測定されるせん断強度を高くすることで、両面粘着テープを使用して合成樹脂材料と布帛とを接着した際、超高温下においても耐荷重性能が良好になる。また、上記したとおり、合成樹脂材料と布帛と貼り合わせる際の作業性を良好になる。なお、140℃におけるせん断強度は、標準樹脂試料としてポリイミドシート(「カプトン500H」、東レ・デュポン株式会社製)を使用し、標準布帛試料としてはダブルラッセル織物生地(商品名「スペースファブリック」、セーレン社製、目付160g/m、ポリエステル繊維使用品)を使用し、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0060】
超高温下における耐荷重性能をより優れたものとする観点から、両面粘着テープは、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上であることが好ましく、25mN/mm以上であることがより好ましく、35mN/mm以上であることがさらに好ましく、また、製造容易性、実用性の観点から、両面粘着テープの上記せん断強度は、例えば、500mN/mm以下であることが好ましく、300mN/mm以下であることがより好ましく、100mN/mm以下であることがさらに好ましい。
なお、別の側面における両面粘着テープの具体的構成については、上記した複合構成体に使用する両面粘着テープと同様であるのでその説明は省略する。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0062】
[評価方法]
本発明においては、各物性の測定、及び評価は以下の要領で行った。
<重量平均分子量及び分散度>
重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、ゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)を用いて測定した。上記装置にサンプルを流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して、MwおよびMw/Mnを求めた。カラムとしてはGPC KF−806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0063】
<140℃におけるせん断強度>
30mm×40mmの布帛に12.5mm×25mmの両面粘着テープを貼り合わせた。この際、両面粘着テープの長手方向を布帛の幅方向に一致させ、かつ両面粘着テープを布帛の端部近傍に配置させて貼り合わせた。両面粘着テープは、一方の面が剥離シートで保護されたものであり、剥離シートにより保護されない他方の面を布帛に貼り合わせた。両面粘着テープの貼り合わせは、ホットドッグラミネータ(商品名「Leon13DX」、ラミーコーポレーション社製)を用いて速度:9で行った。
次いで、両面粘着テープの剥離シートを剥がして、両面粘着テープの一方の面に合成樹脂シート(サイズ30mm×40mm、厚み125μm)を、2kgローラを1往復させて貼り合わせて、図1に示すように、合成樹脂シート21と布帛22とを、両面粘着テープ23で貼り合わせてなる評価用サンプル20を得た。
そして、卓上形精密万能試験機(商品名「AGS−X」、島津製作所社製)により、合成樹脂シート21と布帛22それぞれを把持して、評価用サンプル20をせん断方向に200mm/分の速度で引張り、最大荷重をせん断強度とした。
【0064】
<冷熱サイクル経時後の140℃におけるせん断強度>
30mm×40mmの布帛に12.5mm×25mmの両面粘着テープを貼り合わせた。この際、両面粘着テープの長手方向を布帛の幅方向に一致させ、かつ両面粘着テープを布帛の端部近傍に配置させて貼り合わせた。両面粘着テープは、一方の面が剥離シートで保護されたものであり、剥離シートにより保護されない他方の面を布帛に貼り合わせた。両面粘着テープの貼り合わせは、ホットドッグラミネータ(商品名「Leon13DX」、ラミーコーポレーション社製)を用いて速度:9で行った。
次いで、両面粘着テープの剥離シートを剥がして、両面粘着テープの一方の面に合成樹脂シート(サイズ30mm×40mm、厚み125μm)を、2kgローラを1往復させて貼り合わせて、図1に示すように、合成樹脂シート21と布帛22とを、両面粘着テープ23で貼り合わせてなる評価用サンプル20を得た。
貼り合わせた試験片を冷熱衝撃装置(商品名「TSA−103EL−A」、エスペック社製)を用いて、140℃×30分と−30℃×30分を交互に温度を変化させる工程を1000サイクル実施した。その後卓上形精密万能試験機(商品名「AGS−X」、島津製作所社製)により、合成樹脂シート21と布帛22それぞれを把持して、評価用サンプル20をせん断方向に200mm/分の速度で引張り、最大荷重をせん断強度とした。
【0065】
<140℃における耐荷重評価>
30mm×40mmの布帛に12.5mm×25mmの両面粘着テープを貼り合わせた。この際、両面粘着テープの長手方向を布帛の幅方向に一致させ、かつ両面粘着テープを布帛の端部近傍に配置させて貼り合わせた。両面粘着テープは、一方の面が剥離シートで保護されたものであり、剥離シートにより保護されない他方の面を布帛に貼り合わせた。両面粘着テープの貼り合わせは、ホットドッグラミネータ(商品名「Leon13DX」、ラミーコーポレーション社製)を用いて速度:9で行った。
次いで、両面粘着テープの剥離シートを剥がして、両面粘着テープの一方の面にSUS板(50mm×75mm、厚さ3mm)を、2kgローラを1往復させて貼り合わせて、図2に示すように、SUS板31と布帛32とを、両面粘着テープ33で貼り合わせてなる評価用サンプル30を得た。
評価用サンプルは、恒温槽にて140℃の環境下に30分間放置することで加熱し、その後、図3に示すように、評価用サンプル30の布帛32の下端に100gの錘35を掛けて、140℃環境下で試験サンプル30を鉛直方向に沿って配置し、錘35が落ちるまでの時間を測定した。錘35を200gの錘に変更し、同様に錘35が落ちるまでの時間を測定し、以下の評価基準で評価した。
A:100g、200gの錘いずれの場合でも、2時間以上錘が落下しなかった。
B:200gの錘の場合には、2時間未満で錘が落下したが、100gの錘の場合には2時間以上錘が落下しなかった。
C:100g、200gの錘いずれの場合でも、2時間未満で錘が落下した。
【0066】
<風合い評価>
140℃のせん断強度測定で作成した評価用サンプルにおいて、布帛表面に接着剤、粘着剤の染み出しが見えれば「NG」、見えなければ「OK」とした。
【0067】
(有機テルル重合開始剤の調製)
Tellurium(40メッシュ、金属テルル、アルドリッチ社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに懸濁させ、これに1.6mol/Lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(アルドリッチ社製)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した。この反応溶液に、エチル−2−ブロモーイソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物の2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチルを得た。
【0068】
(アクリル系粘着剤A−1の調製)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、上記で調製した2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル38μL、V−60(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、表1に示す比率で2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、アクリル酸(AAc)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を合計100gとなるように投入した。また、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合によりアクリル系重合体(A)含有溶液を得た。アクリル系重合体(A)の重合平均分子量、分散度は、表1に示す通りであった。
【0069】
上記アクリル系重合体(A)含有溶液100質量部(不揮発分換算)に対し、(B)成分である架橋剤7.2質量部、及び、(C)成分である、ロジン系樹脂1を7質量部、ロジン系樹脂2を7質量部、及びテルペンフェノール系樹脂を7質量部配合して、アクリル系粘着剤A−1を調製した。
【0070】
(アクリル系粘着剤A−2の調製)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、上記で調製した2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル38μL、V−60(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、表1に示す比率で2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、アクリル酸(AAc)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を合計100gとなるように投入した。また、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合によりアクリル系重合体(A)含有溶液を得た。アクリル系重合体(A)の重合平均分子量、分散度は、表1に示す通りであった。
【0071】
上記アクリル系重合体(A)含有溶液100質量部(不揮発分換算)に対し、(B)成分である架橋剤7.2質量部、及び、(C)成分である、ロジン系樹脂1を30質量部配合して、アクリル系粘着剤A−2を調製した。
【0072】
(アクリル系粘着剤Bの調製)
温度計、攪拌機、冷却管及び滴下漏斗を備えた反応器に、表1に示す配合割合でn−ブチルアクリレート(BA)100質量部、及びアクリル酸(AAc)からなるモノマー混合物を酢酸エチル100質量部に溶解した溶液を仕込んだ。ここに、重合開始剤であるラウロイルパーオキサイド6mmolを添加して、還流下にて10時間重合を行い、アクリル系重合体溶液を得た。アクリル系重合体(A)の重合平均分子量、分散度は、表1に示す通りであった。
上記アクリル共重合体溶液100質量部(不揮発分換算)に対し、(B)成分である架橋剤2.4質量部、及び、(C)成分である、ロジン系樹脂1を7質量部配合して、アクリル系粘着剤Bを調製した。
【0073】
(アクリル系粘着剤Cの調製)
温度計、攪拌機、冷却管及び滴下漏斗を備えた反応器を用意した。反応器に、表1に示す配合割合でn−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、酢酸ビニル(VAC)、アクリル酸(AAc)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)からなるモノマー混合物を酢酸エチル100質量部に溶解した溶液を仕込んだ。ここに、重合開始剤であるラウロイルパーオキサイド6mmolを添加して、還流下にて10時間重合を行い、アクリル系重合体溶液を得た。アクリル系重合体(A)の重合平均分子量、分散度は、表1に示す通りであった。
上記アクリル共重合体溶液100質量部(不揮発分換算)に対し、(B)成分である架橋剤0.8質量部、及び、(C)成分である、ロジン系樹脂3を14質量部、ロジン系樹脂4を10質量部配合して、アクリル系粘着剤Cを調製した。
【0074】
[実施例1]
(両面粘着テープの作製)
支持体である剥離シート(住化加工紙社製「SLB−80WD」)にアクリル系粘着剤A−1を塗布し、110℃で2分間加熱乾燥した後、支持体から剥離して、アクリル系粘着剤から形成された粘着剤層単体からなる厚さ30μmの両面粘着テープを得た。また、布帛として、ポリエステル繊維布帛(PET繊維布帛、商品名「スペースファブリック」、セーレン社製、目付160g/m、ポリエステル繊維使用品)を用意し、かつ合成樹脂シートとしてポリイミドシート(「カプトン500H」、東レ・デュポン株式会社製、厚み125μm)を用意した。両面粘着テープ、ポリイミドシート及びポリエステル繊維布帛により、各評価方法に従って、複合構成体からなる評価用サンプルを作成した。
【0075】
[実施例2]
両面粘着テープの厚みを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0076】
[実施例3]
アクリル系粘着剤A−1を、アクリル系粘着剤A−2に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0077】
[実施例4]
アクリル系粘着剤A−1を、アクリル系粘着剤Bに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0078】
[実施例5、6]
両面粘着テープの厚みを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例4と同様に実施した。
【0079】
[比較例1]
アクリル系粘着剤A−1を、アクリル系粘着剤Cに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0080】
[比較例2、3]
両面粘着テープの厚みを表2に示すとおりに変更した以外は、比較例1と同様に実施した。
【0081】
[比較例4]
アクリル系粘着剤Aの代わりに、市販の2液系エポキシ接着剤(東都化学工業株式会社製、「ベストンPM4」)を使用して、主剤:硬化剤=1:1の比率で混合・塗布して評価用サンプルを作成した。なお、評価用サンプルは、布帛に2液系エポキシ接着剤を塗布して、その後、布帛と合成樹脂シートとを貼り合わせて140℃で2時間放置することで作成した。
【0082】
【表1】

※架橋剤、及び粘着付与樹脂の質量部は、アクリル系重合体(A)100質量部基準の質量部である。
【0083】
表1に示す架橋剤、粘着付与樹脂は、以下のとおりである。
(架橋剤(B))
イソシアネート系架橋剤:東ソー社製「コロネートL−45E」
(粘着付与樹脂(C))
ロジン系樹脂1:ロジン系樹脂、荒川化学工業社製「ペンセル D―135」
ロジン系樹脂2:ロジン系樹脂、荒川化学工業社製「KE359」
ロジン系樹脂3:ロジン系樹脂、荒川化学工業社製「エステルガムH」
ロジン系樹脂4:ロジン系樹脂、ハリマ化成社製「ハリタックPCJ」
テルペンフェノール系樹脂:ヤスハラケミカル社製「YSポリスターG150」
【0084】
【表2】
【0085】
以上の実施例に示すように、140℃におけるせん断強度を所定値以上とすることで、複合構成体の超高温下における耐荷重性能を良好にすることができた。それに対して、比較例に示すように140℃におけるせん断強度が所定値未満となると、耐荷重性能が不十分であった。
【0086】
【表3】
【0087】
また、実施例1、6、及び比較例4については、表3に示すように、布帛の風合いについて確認したところ、実施例1、6では、両面粘着テープを使用したことで、粘着剤が布帛表面に染み出さずに風合いが優れたものとなった。それに対して、比較例4では、液状の2液系の接着剤を使用したため、接着剤が布帛表面に染み出して布帛の風合いが損なわれた。
【0088】
さらに、各実施例では、布帛と合成樹脂材料とを貼り合わせると高いせん断強度が直ちに確保できた。また、布帛と両面粘着テープを貼り合わせたうえで長期間(例えば、1週間程度)放置した後でも、その布帛は両面粘着テープを介して合成樹脂シートに貼り合わせることができる。したがって、布帛に両面粘着テープを貼り合わせた状態で一定期間保管できるので、作業性に優れたものであった。
一方で、比較例4では、布帛と合成樹脂材料の貼り合わせに長時間要した。また、接着剤を、一旦布帛に塗布すると、所定時間で硬化するので、布帛に粘着剤を塗布した状態で保管できず、作業性が悪かった。
【符号の説明】
【0089】
20、30 評価用サンプル
21 合成樹脂シート
22、32 布帛
23、33 両面粘着テープ
31 SUS板
35 錘
【要約】
布帛の風合いを損なうことなく、良好な作業性で布帛と合成樹脂材料を貼り合わせることが可能であり、かつ超高温下においても十分な耐荷重性能を有する、複合構成体を提供する。
複合構成体は、合成樹脂材料と、布帛と、前記合成樹脂材料と布帛の間に配置され、かつこれらを貼り合わせる両面粘着テープとを備える複合構成体であって、140℃におけるせん断強度が15mN/mm以上である。
図1
図2
図3