(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773949
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ベントナイト混合土の測定方法、及びベントナイト混合土の測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/201 20180101AFI20201012BHJP
E02D 1/02 20060101ALI20201012BHJP
G21F 9/36 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
G01N23/201
E02D1/02
!G21F9/36 541E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-22117(P2017-22117)
(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公開番号】特開2018-128372(P2018-128372A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年11月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・第60回地盤工学シンポジウム論文集(2016年11月28日発送) ・第60回地盤工学シンポジウムでの発表(2016年12月7日)
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】永井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】千々松 正和
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳夫
【審査官】
嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−138202(JP,A)
【文献】
特開昭59−154347(JP,A)
【文献】
特開平08−074238(JP,A)
【文献】
特開2004−093385(JP,A)
【文献】
特開2016−191582(JP,A)
【文献】
特開2010−139246(JP,A)
【文献】
特開昭53−093094(JP,A)
【文献】
米国特許第04439675(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
E02D 1/02
G21F 9/36
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原位置のベントナイト混合土の物性を測定する方法において、
原位置のベントナイト混合土と同等の比率でベントナイトが混合されたベントナイト混合土試料を用意し、さらに乾燥密度及び含水比の組み合わせを変えた複数種類の該ベントナイト混合土試料を試験体として作成する試験体作成工程と、
RI計器を用いて、複数種類の前記試験体それぞれの湿潤密度及び含水量を、第1湿潤密度及び第1含水量として取得する事前RI測定工程と、
破壊型測定手法によって、複数種類の前記試験体それぞれの湿潤密度及び含水量を、第2湿潤密度及び第2含水量として取得する事前破壊型測定工程と、
前記事前RI測定工程で取得された複数の前記第1湿潤密度と、前記事前破壊型測定工程で取得された複数の前記第2湿潤密度と、に基づいて、該第1湿潤密度と該第2湿潤密度の関係を示す密度補正式を設定する密度補正式設定工程と、
前記事前RI測定工程で取得された複数の前記第1含水量と、前記事前破壊型測定工程で取得された複数の前記第2含水量と、に基づいて、該第1含水量と該第2含水量の関係を示す含水量補正式を設定する含水量補正式設定工程と、
原位置のベントナイト混合土をRI計器によって測定することで、測定湿潤密度及び測定含水量を取得するとともに、該測定湿潤密度を前記密度補正式に基づいて補正して実湿潤密度を求め、該測定含水量を前記含水量補正式に基づいて補正して実含水量を求める、実測定工程と、
を備えたことを特徴とするベントナイト混合土の測定方法。
【請求項2】
前記測定湿潤密度をρ1、前記実湿潤密度をρ2、第1補正係数をA、第2補正係数をBとしたとき、前記密度補正式設定工程で設定される前記密度補正式が次式であり、
ρ2=(ρ1−A)÷B
前記測定含水量をw1、前記実含水量をw2、第3補正係数をC、第4補正係数をDとしたとき、前記含水量補正式設定工程で設定される前記含水量補正式が次式である、
w2=(w1−C)÷D
ことを特徴とする請求項1記載のベントナイト混合土の測定方法。
【請求項3】
前記密度補正式設定工程では、境界湿潤密度を設定するとともに、該境界湿潤密度を下回る範囲の前記第1補正係数及び前記第2補正係数と、該境界湿潤密度を上回る範囲の前記第1補正係数及び前記第2補正係数と、を異なる値とすることで、該境界湿潤密度を下回る範囲と該境界湿潤密度を上回る範囲で2種類の前記密度補正式を設定する、
ことを特徴とする請求項2記載のベントナイト混合土の測定方法。
【請求項4】
原位置のベントナイト混合土の物性を測定する装置において、
原位置のベントナイト混合土の湿潤密度と含水量を、測定湿潤密度及び測定含水量として取得するRI測定手段と、
前記RI測定手段で取得した前記測定湿潤密度を、あらかじめ設定された密度補正式に基づいて補正して実湿潤密度を求める湿潤密度算出手段と、
前記RI測定手段で取得した前記測定含水量を、あらかじめ設定された含水量補正式に基づいて補正して実含水量を求める実含水量算出手段と、を備え、
前記密度補正式は、複数の第1湿潤密度と複数の第2湿潤密度との関係から設定され、
前記含水量補正式は、複数の第1含水量と複数の第2含水量との関係から設定され、
前記第1湿潤密度及び前記第1含水量は、複数種類の試験体に対してRI測定を行って得られた湿潤密度及び含水量であり、
前記第2湿潤密度及び前記第2含水量は、複数種類の前記試験体に対して破壊型測定を行って得られた湿潤密度及び含水量であり、
前記試験体は、原位置のベントナイト混合土と同等の比率でベントナイトが混合されたベントナイト混合土試料を用意し、さらに乾燥密度及び含水比の組み合わせを変えて得られたものである、
ことを特徴とするベントナイト混合土の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ベントナイト混合土の物性の測定に関する技術であり、より具体的には、RI(Radio Isotope)計器を用いてベントナイト混合土の湿潤密度と含水量を測定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベントナイト混合土は、低透水性という性能を有することから、埋設物への遮水を目的とした覆土として利用されることが多く、例えば浅地中ピット処分の覆土としても用いられている。浅地中ピット処分は、放射能レベルが比較的低い廃棄物を埋設処分する方法であり、
図7に示すように地表面から浅い位置に構築したコンクリートピット内に廃棄物を収納して埋設する方法である。そして、廃棄物を収納したコンクリートピットの周囲には、地下水等の移流速度の低減を目的としてベントナイト混合土が設置されることがある。
【0003】
覆土として設置されるベントナイト混合土は、その性能として特に低透水性が要求される。透水性を確認するには透水係数を測定するのが直接的であるが、この測定には数十日を要することから、次施工段階に移行する根拠として施工時に測定するのは現実的ではない。そこで通常は、透水性の代替特性である乾燥密度を測定することで、ベントナイト混合土の低透水性を確認している。
【0004】
乾燥密度は、盛土の締固めの品質管理を行うためにも用いられ、その測定手法は、原位置の盛土の一部を採取する測定方法(以下、「破壊型測定手法」という。)と、原位置の盛土を乱すことなく測定する方法(以下、「非破壊型測定手法」という。)に大別される。破壊型測定手法には、土を採取した試験孔に砂を充填する砂置換法(JISA1214)や不攪乱のサンプルを採取して直接測定するコアサンプリング法などがあり、一方の非破壊型測定手法としては、RI計器を用いた測定(以下、「RI測定」という。)を挙げることができる。RI計器は、γ線と中性子線を放出するもので、γ線の変化を検知することで密度を測定し、中性子線の変化を検知することで水分量を測定することができる。
【0005】
従来、盛土の締固めの品質管理として乾燥密度を測定する場合は、砂置換法やコアサンプリング法といった破壊型測定手法が主流であった。しかしながら破壊型測定手法は、炉乾燥など現地以外での作業が必要であり、この炉乾燥に相当の時間(24時間程度)を要することから現地施工に手戻りが生じることもあった。これに対してRI測定は、現地以外での作業が不要であり、そのため短時間で測定することができ速やかに結果を施工に反映させることができる。また、施工面を乱すことなく密度や含水比を測定することができる点も、RI測定の利点である。
【0006】
そこで近年では、盛土の締固めの品質管理においても高速道路や一部のダムをはじめとしてRI測定が導入されるようになり、RI測定を用いた締固め管理が標準化されつつある。また特許文献1のように、RI測定と他の測定方法を組み合わせた技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−138202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように盛土の品質管理としてはRI測定が広がりつつあるが、覆土として設置されるベントナイト混合土の品質管理としてはそれほど導入されていない。これは、ベントナイト混合土に対するRI測定の適用性が理由として挙げられる。もちろん原位置のベントナイト混合土をRI計器で測定すれば、密度と水分量が得られ乾燥密度も確認することができるが、砂置換法やコアサンプリング法の測定と照らし合わせると両者の結果はあまり整合しないことが知られている。そのため、ベントナイト混合土の品質管理として乾燥密度を測定する場合は、砂置換法やコアサンプリング法が主流であり、RI測定を採用するケースでも砂置換法等により数多くの試験数で確認測定を行っているのが実情である。
【0009】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、RI測定によってベントナイト混合土の物性を精度よく求めることができる測定方法と測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、あらかじめRI測定の結果と破壊型測定手法による結果から両者の関係を表す補正式を設定し、実際に得られたRI測定の結果を補正式によって補正することで、より信頼性の高いベントナイト混合土の物性を求める、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0011】
本願発明のベントナイト混合土の測定方法は、現位置のベントナイト混合土の物性を測定する方法であり、試験体作成工程と、事前RI測定工程、事前破壊型測定工程、密度補正式設定工程、含水量補正式設定工程、実測定工程を備えた方法である。このうち試験体作成工程では、ベントナイト混合土試料(原位置のベントナイト混合土と同等の比率でベントナイトが混合されたもの)を用意し、さらに乾燥密度及び含水比の組み合わせを変えた複数種類のベントナイト混合土試料を「試験体」として作成する。事前RI測定工程では、RI計器を用いて複数種類の試験体それぞれの湿潤密度及び含水量を「第1湿潤密度」及び「第1含水量」として取得し、事前破壊型測定工程では、破壊型測定手法によって複数種類の試験体それぞれの湿潤密度及び含水量を「第2湿潤密度」及び「第2含水量」として取得する。また密度補正式設定工程では、複数の第1湿潤密度(事前RI測定工程で取得)と複数の第2湿潤密度(事前破壊型測定工程で取得)に基づいて、第1湿潤密度と第2湿潤密度の関係を示す「密度補正式」を設定する。含水量補正式設定工程では、複数の第1含水量(事前RI測定工程で取得)と複数の第2含水量(事前破壊型測定工程で取得)に基づいて、第1含水量と第2含水量の関係を示す「含水量補正式」を設定する。そして実測定工程では、RI計器によって現位置のベントナイト混合土を測定して「測定湿潤密度」及び「測定含水量」を取得するとともに、この測定湿潤密度を密度補正式に基づいて補正して「実湿潤密度」を求め、測定含水量を含水量補正式に基づいて補正して「実含水量」を求める。
【0012】
本願発明のベントナイト混合土の測定方法は、密度補正式設定工程で設定される密度補正式を第1補正係数Aと第2補正係数Bを用いて設定し、含水量補正式設定工程で設定される含水量補正式を第3補正係数Cと第4補正係数Dを用いて設定する方法とすることもできる。この場合、測定湿潤密度をρ1、実湿潤密度をρ2とすると、密度補正式は次式で表される。
ρ2=(ρ1−A)÷B
また、測定含水量をw1、実含水量をw2とすると、含水量補正は次式で表される。
w2=(w1−C)÷D
【0013】
本願発明のベントナイト混合土の測定方法は、「境界湿潤密度」を設定したうえで密度補正式を設定する方法とすることもできる。この場合、密度補正式設定工程では、境界湿潤密度を下回る範囲の第1補正係数A
1及び第2補正係数B
1と、境界湿潤密度を上回る範囲の第1補正係数A
2及び第2補正係数B
2をそれぞれ異なる値とし、すなわち境界湿潤密度を下回る範囲と上回る範囲で2種類の密度補正式を設定する。
【0014】
本願発明のベントナイト混合土の測定装置は、現位置のベントナイト混合土の物性を測定する装置であり、RI測定手段と、実湿潤密度算出手段、実含水量算出手段を備えたものである。このうちRI測定手段は、原位置のベントナイト混合土の測定湿潤密度及び測定含水量を取得するものである。また実湿潤密度算出手段は、測定湿潤密度をあらかじめ設定された密度補正式に基づいて補正して実湿潤密度を求めるものであり、実含水量算出手段は、測定含水量をあらかじめ設定された含水量補正式に基づいて補正して実含水量を求めるものである。なお密度補正式は、複数の第1湿潤密度と第2湿潤密度との関係から設定され、含水量補正式は、複数の第1含水量と第2含水量との関係から設定される。
【発明の効果】
【0015】
本願発明のベントナイト混合土の測定方法、及びベントナイト混合土の測定装置には、次のような効果がある。
(1)これまでベントナイト混合土への適用が困難とされてきたRI測定が可能となることから、測定にかかる労力と時間が砂置換法やコアサンプリング法といった破壊型測定手法に比べ飛躍的に低減される。
(2)測定にかかる労力と時間が低減される結果、比較的容易に広い範囲を測定することができ、すなわち原位置のベントナイト混合土を面的に品質管理することが可能となる。
(3)RI測定結果の信頼性が向上することからRI測定による測点数を大幅に増加することができ、これにより砂置換法やコアサンプリング法による試験数を著しく削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願発明のベントナイト混合土の測定方法の主な工程の流れを示すフロー図。
【
図2】11種類の試験体における乾燥密度と含水比の組み合わせを示す説明図。
【
図3】(a)は第1湿潤密度と第2湿潤密度の関係を示すグラフ図、(b)は第1含水比と第2含水比の関係を示すグラフ図。
【
図4】密度補正式と含水量補正式に適用される定数を示す説明図。
【
図5】(a)は第1湿潤密度の補正値と第2湿潤密度の関係を示すグラフ図、(b)は第1含水比の補正値と第2含水比の関係を示すグラフ図。
【
図6】本願発明のベントナイト混合土の測定装置の主な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明のベントナイト混合土の測定方法、及びベントナイト混合土の測定装置の一例を、図に基づいて説明する。
【0018】
1.ベントナイト混合土の測定方法
はじめに本願発明のベントナイト混合土の測定方法について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本願発明のベントナイト混合土の測定方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0019】
本願発明は、現位置のベントナイト混合土をRI測定するにあたって、あらかじめ測定値を補正するための補正式を設定することを1つの特徴としている。この補正式を設定するためには、ベントナイト混合土の試料(サンプル)に対してRI測定と破壊型測定(砂置換法やコアサンプリング法など)を行う。そのため、まずは原位置のベントナイト混合土と同条件のベントナイト混合土の試料(以下、「ベントナイト混合土試料」という。)を用意する。具合的には、原位置のベントナイト混合土と同等の比率でベントナイトが混合されたものをベントナイト混合土試料とする。例えば、原位置のベントナイト混合土のベントナイト混合率が30%であれば、30%のベントナイトと70%の砂(例えばコンクリート骨材用の山砂)を混合したものをベントナイト混合土試料とするとよい。また、現位置で使用されるベントナイトの種類も(Na型のクニゲルV1やCa型のクニボンドなど)同一にすることが望ましい。なお、補正式の設定までの工程(
図1のStep10〜Step50)は、現場(原位置周辺)で行うこともできるし、現場とは異なる実験室等で行うこともできる。
【0020】
ベントナイト混合土試料が用意できると、試験体を作成する(Step10)。ここで試験体とは、RI測定と破壊型測定を行う対象物であり、ベントナイト混合土試料を用いて作成される。このとき、同じベントナイト混合土試料を使用し、乾燥密度と含水比の組み合わせが異なる複数種類(
図1ではN種類)の試験体が作成される。例えば
図2では、同じベントナイト混合土試料から11種類(ケース)の試験体を作成した例を示している。
【0021】
試験体は、試験用土槽(例えば鋼製土槽)を用いて作成することができる。
図2に示すように11種類の試験体を作成する場合は、11の試験用土槽を用意し、それぞれベントナイト混合土試料を詰めていく。そして、11の試験用土槽のベントナイト混合土試料に対して、それぞれ締固めの度合いを変えることによって、11種類の乾燥密度と含水比の組み合わせをもつ試験体を作成するわけである。なお試験体は、試験用土槽を用いるもののほか、実験フィールドに構築する試験盛土体とすることもできる。後に説明する事前破壊型測定として、コアサンプリング法を採用する場合は試験用土槽を用いた試験体で測定できるが、砂置換法を採用する場合は試験盛土体の試験体とするとよい。
【0022】
複数種類の試験体を作成すると、事前RI測定(Step20)と事前破壊型測定(Step30)を行う。事前RI測定は、それぞれの試験体に対してRI測定を行う工程である。既述のとおりRI計器は、γ線の変化を検知することで密度を測定し、中性子線の変化を検知することで水分量を測定することができる。ここで用いるRI計器は、透過型、散乱型のどちらを採用してもよいが、比較的設置が容易である散乱型のRI計器を採用する方が望ましい。なおここでは便宜上、事前破壊型測定の結果と区別するため、事前RI測定で得られる湿潤密度を「第1湿潤密度」と、含水量を「第1含水量」ということとする。
【0023】
一方の事前破壊型測定は、それぞれの試験体に対して破壊型測定を行う工程であり、試験体の形態に応じて砂置換法やコアサンプリング法を適宜採用することができる。ここでは便宜上、事前破壊型測定で得られる湿潤密度を「第2湿潤密度」と、含水量を「第2含水量」ということとする。なお、事前RI測定(Step20)と事前破壊型測定(Step30)はどちらから行ってもよいし、試験体が大きい場合は同時に行ってもよい。ただし、事前破壊型測定を先に行うと表面の平坦性がやや悪くなるため事前RI測定が難しくなることもあり、特に(試験用土槽など)試験体が小さい場合は事前RI測定から先に行うのが望ましい。
【0024】
11種類の試験体それぞれに対して事前RI測定と事前破壊型測定を行い、11ケースの第1湿潤密度と第1含水量、11ケースの第2湿潤密度と第2含水量が得られると、密度補正式を設定(Step40)し、含水量補正式を設定(Step50)する。
【0025】
図3は事前RI測定と事前破壊型測定の結果の関係を示すグラフ図であり、(a)は第1湿潤密度と第2湿潤密度の関係を示すものであって、第2湿潤密度(事前破壊型測定)を横軸にとり、第1湿潤密度(事前RI測定)を縦軸にとった座標系に、同一種類の試験体を測定した第1湿潤密度と第2湿潤密度を座標としてプロットしたものである。したがって、同一種類の試験体を測定した第1湿潤密度と第2湿潤密度の値が近似していれば、
図3(a)に示す破線付近にプロットされる。
【0026】
一方、
図3(b)は第1含水量と第2含水量の関係を示すものであるが、含水量の代わりに含水比を用いて表している。なおここでは便宜上、事前RI測定で得られる含水量に基づいて求められる含水比を「第1含水比」と、事前破壊型測定で得られる含水量に基づいて求められる含水比を「第2含水比」ということとする。すなわち
図3(b)は、第2含水比(事前破壊型測定)を横軸にとり、第1含水比(事前RI測定)を縦軸にとった座標系に、同一種類の試験体を測定した第1含水比と第2含水比を座標としてプロットしたものである。したがって、同一種類の試験体を測定した第1含水比と第2含水比の値が近似していれば、
図3(b)に示す破線付近にプロットされる。
【0027】
密度補正式は、RI測定で得られた現位置のベントナイト混合土の湿潤密度(以下、「測定湿潤密度」という。)から実際の湿潤密度(以下、「実湿潤密度」)を求めるための補正式であって、
図3(a)のグラフに基づいて求められる回帰直線(あるいは回帰曲線)によって設定される。例えば、測定湿潤密度をρ1、実湿潤密度をρ2、第1補正係数をA、第2補正係数をBとしたとき、密度補正式は次式とすることができる。
ρ2=(ρ1−A)÷B ・・・(式1)
【0028】
含水量補正式は、RI測定で得られた現位置のベントナイト混合土の含水量(以下、「測定含水量」という。)から実際の含水量(以下、「実含水量」)を求めるための補正式であって、
図3(b)のグラフを基礎として設定される。なお
図3(b)のグラフは第1含水比と第2含水比の関係を示すものであるが、試験体の乾燥密度は既知であり、ここまでで第1湿潤密度と第2湿潤密度が得られていることから、第1含水比を第1含水量に、第2含水比を第2含水量に換算する(含水量は、含水比と、乾燥密度、湿潤密度から求められる)ことで第1含水量と第2含水量の関係を示すグラフを作成することができ、このグラフに基づいて求められる回帰直線(あるいは回帰曲線)によって含水量補正式を設定するわけである。例えば、測定含水量をw1、実含水量をw2、第3補正係数をC、第4補正係数をDとしたとき、含水量補正式は次式とすることができる。
w2=(w1−C)÷D ・・・(式2)
【0029】
ところで
図3(a)を見ると、湿潤密度が小さい試験体を測定した結果ほど第1湿潤密度と第2湿潤密度の値が近似し、湿潤密度が大きい試験体を測定した結果ほど第1湿潤密度と第2湿潤密度の値が相違していることが分かる。そして、第1湿潤密度と第2湿潤密度の近似(相違)の程度は、湿潤密度の大小に応じて漸次的に変化するのではなく、ある湿潤密度を境界として段階的に変化している。例えば
図3(a)では、湿潤密度2.10g/cm
3を下回る範囲では第1湿潤密度と第2湿潤密度の値が比較的近似しているのに対して、湿潤密度2.10g/cm
3を上回る範囲では第1湿潤密度と第2湿潤密度の値が極端に相違している。
【0030】
そこで密度補正式は、湿潤密度に応じて2種類設定するとよい。具体的には密度補正式の種類を分ける境界となる湿潤密度(以下、「境界湿潤密度」という。)を設定するとともに、この境界湿潤密度を下回る範囲(以下、「小密度範囲」という。)に適用する密度補正式を設定し、境界湿潤密度を上回る範囲(以下、「大密度範囲」という。)に適用する密度補正式を設定するわけである。
【0031】
小密度範囲と大密度範囲で異なる密度補正式を設定する場合、密度補正式に用いる定数を変えることで2種類の密度補正式を設定することができる。例えば、式1を密度補正式とするときは、小密度範囲と大密度範囲で異なる第1補正係数Aと第2補正係数Bを採用するわけである。
図3(a)のケースを参照してさらに具体的に説明すると、境界湿潤密度が2.10g/cm
3で設定され、
図4に示すように小密度範囲(2.10g/cm
3未満)に適用する第1補正係数A
1(0.506)と、大密度範囲(2.10g/cm
3以上)に適用する第1補正係数A
2(0.147)とは異なる値が採用され、小密度範囲に適用する第2補正係数B
1(0.755)と、大密度範囲に適用する第2補正係数B
2(1.000)とは異なる値が採用される。
【0032】
なおここまで説明したように密度補正式は、湿潤密度に応じて2種類のものを設定することもできるし、3種類以上の密度補正式を設定することもできる。あるいは、湿潤密度にかかわらず1種類の密度補正式を設定してもよい。また含水量補正式に関しても、含水量にかかわらず1種類の含水量補正式を設定することもできるし、含水量に応じて2種類以上の含水量補正式を設定してもよい。
【0033】
図5は、事前RI測定による値を補正式で補正した値(以下、単に「補正値」という。)と、事前破壊型測定の結果の関係を示すグラフ図であり、(a)は第1湿潤密度の補正値と第2湿潤密度の関係を示すものであって、第2湿潤密度を横軸にとり、第1湿潤密度の補正値を縦軸にとった座標系に、同一種類の試験体を測定した第1湿潤密度の補正値と第2湿潤密度を座標としてプロットしたものである。一方、
図5(b)は第1含水比の補正値(第1含水量の補正値によって求められた値)と第2含水量の関係を示すものであり、第2含水比を横軸にとり、第1含水比の補正値を縦軸にとった座標系に、同一種類の試験体を測定した第1含水比の補正値と第2含水比を座標としてプロットしたものである。
図5を見ると、密度補正式によって補正された第1湿潤密度の補正値は第2湿潤密度と極めて近似しており、含水量補正式によって補正された第1含水比の補正値は第2湿含水比と極めて近似している。すなわち、密度補正式と含水量補正式を利用すれば破壊型測定をRI測定で代替することができることが分かる。特に
図3と
図5を比較すると、密度補正式と含水量補正式を利用した効果が明確に理解できる。
【0034】
密度補正式と含水量補正式が設定できると、現場試験を行う(Step60)。実際に、現位置のベントナイト混合土に対してRI測定と破壊型測定を行い、密度補正式と含水量補正式を用いてRI測定結果を補正した補正値と、破壊型測定の結果を照らし合わせる。このとき、密度補正式と含水量補正式により得られた補正値が破壊型測定の結果に近い値であれば次の工程(Step70)に進み、両者の結果が大きく相違する場合は、試験体の種類を変えて密度補正式と含水量補正式を再度設定するとよい。なお、現場試験(Step60)は状況に応じて省略することもできる。
【0035】
現場試験を経て(あるいは現場試験を行うことなく)密度補正式と含水量補正式が確定すると、現位置のベントナイト混合土に対してRI測定を行う(Step70)。そして、現位置RI測定で得られた「測定湿潤密度」を入力値とし、密度補正式を利用して「実湿潤密度」を求め(Step80)、同様に現位置RI測定で得られた「測定含水量」を入力値とし、含水量補正式を利用して「実含水量」を求める(Step90)。実湿潤密度と実含水量が得られると、これらに基づいて乾燥密度を算出し(Step100)、現位置のベントナイト混合土の透水性を確認する。
【0036】
2.ベントナイト混合土の測定装置
次に本願発明のベントナイト混合土の測定装置について
図6を参照しながら説明する。
図6は、本願発明のベントナイト混合土の測定装置100の主な構成を示すブロック図である。なお、本願発明のベントナイト混合土の測定装置100は、ここまで説明したベントナイト混合土の測定方法に使用する装置であり、したがってベントナイト混合土の測定方法で説明した内容と重複する説明は避け、ベントナイト混合土の測定装置100に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、ベントナイト混合土の測定方法で説明したものと同様である。
【0037】
図6に示すようにベントナイト混合土の測定装置100は、RI測定手段130と、実湿潤密度算出手段113、実含水量算出手段123を含んで構成され、その他、密度補正式設定手段111、密度補正式記憶手段112、含水量補正式設定手段121、含水量補正式記憶手段122、出力手段140を含んで構成することもできる。
【0038】
密度補正式設定手段111や、湿潤密度算出手段113、含水量補正式設定手段121、実含水量算出手段123は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型端末やスマートフォン、あるいはPDA(Personal Data Assistance)などによって構成することができる。コンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイ(表示手段)を含むものもある。なお、一般的なPCであればマウスやキーボード等のデバイスから入力するが、タブレット型端末やスマートフォンではタッチパネルを用いた操作(タップ、ピンチイン/アウト、スライド等)で入力することが多い。
【0039】
密度補正式設定手段111は、事前RI測定により得られた第1湿潤密度と、事前破壊型測定により得られた第2湿潤密度に基づいて密度補正式を設定する手段であり、ここで設定された密度補正式は密度補正式記憶手段112に記憶される。この密度補正式記憶手段112は、ベントナイト混合土の測定装置100内に構築してもよいし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとして構築することもできる。
【0040】
含水量補正式設定手段121は、事前RI測定により得られた第1含水量と、事前破壊型測定により得られた第2含水量に基づいて含水量補正式を設定する手段であり、ここで設定された含水量補正式は含水量補正式記憶手段122に記憶される。この含水量補正式記憶手段122も密度補正式記憶手段112と同様、ベントナイト混合土の測定装置100内に構築してもよいし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとして構築することもできる。
【0041】
RI計器を利用したRI測定手段130は、γ線と中性子線を放出するもので、γ線の変化を検知することで密度を測定し、中性子線の変化を検知することで水分量を測定することができるものである。RI計器は透過型のものと散乱型のものがあり、ここではどちらを採用してもよいが、比較的設置が容易である散乱型のRI計器を採用する方が望ましい。
【0042】
実湿潤密度算出手段113は、RI測定手段130で得られた測定湿潤密度と、密度補正式記憶手段112から読み出した密度補正式によって、実湿潤密度を算出する手段であり、実含水量算出手段123は、RI測定手段130で得られた測定含水量と、含水量補正式記憶手段122から読み出した含水量補正式によって、実含水量を算出する手段である。そして、実湿潤密度算出手段113と実含水量算出手段123で算出された実湿潤密度と実含水量は、ディスプレイやプリンタといった出力手段140で出力される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明のベントナイト混合土の測定方法、及びベントナイト混合土の測定装置は、浅地中ピット処分の覆土として利用できるほか、埋設処分された廃棄物の覆土として広く利用することができる。本願発明は、いままさに喫緊の課題となっている放射性廃棄物の処理に対して好適な解決策を提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0044】
100 ベントナイト混合土の測定装置
111 密度補正式設定手段
112 密度補正式記憶手段
113 実湿潤密度算出手段
121 含水量補正式設定手段
122 含水量補正式記憶手段
123 実含水量算出手段
130 RI測定手段
140 出力手段