【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) 刊行物への発表による公開 平成31年1月15日に情報処理学会発行,情報処理Vol.60,No.2 通巻647号,第150〜151頁にて掲載 (2) テレビの取材による公開 放送日 平成30年11月3日 放送番組 日本テレビ ズームインサタデー (3) テレビの取材による公開 放送日 平成30年10月5日 放送番組 テレビ東京 未来への自由研究 〜発想UNLEASH〜
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記装置本体の付属部材として、前記固体粒子層の内部に調理鍋が完全に埋没しないように支持する鍋支持部材を有し、前記鍋支持部材が前記装置本体に着脱可能に設けられる請求項1から7の何れか1項に記載の調理加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の加熱調理器具は、誘導加熱コイルにより加熱される領域を広くとることができるので、従来よりも加熱ムラを解消できるかもしれないが、調理物の全体を均一に加熱することはできない。
【0011】
また、特許文献2のブラストチラー装置は熱伝導率の小さな熱媒体である空気を用いているため急速冷却の時間に限界があり、更なる冷却調理の時間を短縮できれば料理のおいしさ、栄養価、品質を一層改善できる可能性があるだけでなく、調理の効率も向上する。
【0012】
また、大量の加熱調理や冷却調理を行うスーパー等の業務用の調理部門では、熱源が加熱調理温度や冷却調理温度までに達するまでの時間が長いか短いかが調理の効率化に影響する。更には、一つの加熱調理装置を使用して調理物の種類ごとに調理温度を変えなくてはならない場合、目的の調理温度になるまでの時間は調理の効率化に影響する。
このように、現存する加熱調理及び冷却調理のための装置は一長一短があり、満足できるものではない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、直接加熱のような高温で調理しても加熱ムラを防止できると共に、短時間で調理温度になるので特に業務用において調理の効率化を図ることができる調理加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の調理加工装置は目的を達成するために、調理物を調理加工する調理加工装置において、上面が開放された容器形状の装置本体と、装置本体に充填されて固体粒子層を形成し、調理加工する温度に対する耐熱性を有すると共に水や食用油よりも比熱が小さく熱伝導率が大きい食品安全上問題ない多数の固体粒子と、固体粒子層に気体を噴出する気体噴出手段と、固体粒子層を加熱及び冷却の少なくとも一方の熱処理を行う熱源手段と、気体噴出手段の気体噴出量及び前記熱源手段による固体粒子層の温度を制御する制御手段と、を備え、固体粒子層を介して調理物に熱を付与することを特徴とする。
【0015】
本発明は、熱媒体としての水や食用油と比べて一見すると取扱い難い固体粒子に気体を噴出させて流動化させることにより、水や食用油と同じように取扱い易くすることができ、しかも水や食用油よりも高温化が可能であると共に水や食用油よりも比熱が小さく熱伝導率が大きい固体粒子の特性を巧みに利用して調理加工用の装置として具現化したものである。
【0016】
本発明によれば、固体粒子(例えば砂)を充填した容器形状の装置本体内の底部に設けた気体噴出手段から気体(例えば空気)を噴出する噴出量を制御することで、気体によって固体粒子を舞い上げる力と重力とのバランスがつり合い、固体粒子層に液体のような流動性を持たせることができる。
【0017】
これにより、固体粒子層の内部に調理物を直接沈めたり、調理物を入れた調理鍋を沈めたりすることが簡単にできるようになる。また、固体粒子層が液状化することで固体粒子層の内部に熱対流が生じるので、固体粒子層の温度を均一化することができる。
【0018】
したがって、例えば加熱調理する場合、固体粒子層を加熱する熱源手段を制御手段で制御して固体粒子層を加熱調理する温度に設定することにより、水や食用油による間接加熱のように調理物あるいは調理物を入れた調理鍋を均一に加熱することができる。
【0019】
また、固体粒子層は調理加工する温度に対する耐熱性を有する多数の固体粒子で形成されており、例えば固体粒子として砂を使うことで、固体粒子層の温度を1000℃以上に設定することも可能である。
これにより、本発明の調理加工装置は、直接加熱のような高温で調理しても加熱ムラにならないようにできる。
【0020】
また、固体粒子は水や食用油よりも比熱が小さく熱伝導率が大きく、熱を蓄積して短時間で目的の調理温度に達するので、調理の効率化を図ることができると共に急速加熱や急速冷却を従来よりも短時間で行うことができる。
【0021】
したがって、本発明の調理加工装置は、直接加熱のような高温で調理しても加熱ムラを防止できると共に、短時間で調理温度になるので特に業務用において調理の効率化を図ることができる。
【0022】
また、本発明の調理加工装置で冷却調理を行う場合には、調理物あるいは調理済み物を空気や水や食用油よりも熱伝導率の大きな固体粒子層で直接冷却することができるので、冷却調理の時間短縮を図ることができる。この冷却調理の場合にも、固体粒子層が液状化することで固体粒子層の内部に熱対流が生じるので、固体粒子層の温度が均一化される。この結果、固体粒子層のどの部分で冷却調理しても同じになる。
【0023】
本発明において、固体粒子は砂、鉄の何れかであることが好ましい。これらは耐熱性が大きく高温を得ることができると共に水や食用油よりも比熱が小さく熱伝導率が高い固体粒子であり食品安全上問題ない。
【0024】
本発明において、固体粒子は塩であることが好ましい。
固体粒子として塩を使用することで、単に高温を得るための熱媒体としての機能以外に調理物に味付けする調味料としての機能を有する。
【0025】
本発明において、固体粒子は食品用乾燥剤であることが好ましい。
固体粒子として食品用乾燥剤を使用することで、調理物の加熱(又は冷却)と同時に調理物の乾燥も行うことができる。
【0026】
本発明において、装置本体の付属部材として、固体粒子層の内部に調理鍋が完全に埋没しないように支持する鍋支持部材を有し、鍋支持部材が装置本体に着脱可能に設けられることが好ましい。
【0027】
固体粒子層に気体を噴出することで固体粒子層が流動化して固体粒子層が液状化する。これにより、調理物を入れた調理鍋を固体粒子層に載置すると、調理鍋が固体粒子層の内部に完全に埋没する場合がある。この対策として、気体の噴出量を調整することで、固体粒子層の流動性が小さくなり調理鍋が固体粒子層の内部に完全に埋没しないようにできるが、固体粒子層の熱対流も小さくなる。
【0028】
したがって、鍋支持部材を装置本体に着脱可能に設けることで、固体粒子層の液状化の程度に関係なく固体粒子層に大きな熱対流を生じさせることができ、加熱料理における加熱ムラを一層防止できる。鍋支持部材が必要ない時は装置本体から外しておけばよく、邪魔にならない。
【0029】
本発明において、装置本体の付属部材として、調理物を鉄板焼きする鉄板が固体粒子層の表面に接触して装置本体に着脱可能に設けられると共に、鉄板には固体粒子層に噴出される気体を逃がす気体抜き孔が形成されていることが好ましい。
【0030】
本発明の調理加工装置は、固体粒子層の温度を焼き料理温度の高温まで高くでき、しかも固体粒子層の温度を均一にできるため、鉄板焼き装置として好適である。
【0031】
これにより、鉄板のどの部分の温度も同じになるので、例えば複数枚の肉やお好み焼等の調理物を一度に焼くときに、鉄板のどの部分で焼いても複数の調理物に均等に熱を伝えることができる。したがって、特に業務用において一度にたくさんの焼き物をする場合に調理の効率化を図ることができる。
【0032】
また、鉄板には固体粒子層に噴出される気体を逃がす気体抜き孔が形成されているので、鉄板を固体粒子層の表面に密着させることができ、固体粒子層の熱を鉄板に効果的に付与することができる。更に、鉄板が必要ない時は装置本体から外しておけばよく、邪魔にならない。
【0033】
本発明において、装置本体の付属部材として、固体粒子層の上部位置と下部位置とを水平方向に仕切る一対の金網が装置本体に着脱自在に設けられることが好ましい。
【0034】
例えば、調理物をアルミホイールに包んで固体粒子層の内部に埋没させて加熱(又は冷却)調理する場合、気体の噴出よって調理物が固体粒子層から浮上し易くなる。これにより、調理物に対する加熱(又は冷却)が不十分になる場合がある。
【0035】
したがって、本発明の態様のように、固体粒子層の上部位置と下部位置とを水平方向に仕切る一対の金網を設け、一対の金網の間に調理物を配置すれば、調理物が固体粒子層から浮上することを防止できる。また、一対の金網が必要ない時は装置本体から外しておけばよく、邪魔にならない。
【0036】
本発明において、装置本体の付属部材として、固体粒子層の流動化した比重よりも大きい比重の圧力鍋を有することが好ましい。
【0037】
これにより、固体粒子層を流動化した状態で調理物を入れた圧力鍋を固体粒子層に完全に埋没させることができる。したがって、圧力鍋の全周囲から均一温度の固体粒子層の熱を均等に受けた状態で加圧調理を行うことができる。
【0038】
本発明において、固体粒子層に含有される気体を抜く吸引手段と、固体粒子層の表面に載置され、固体粒子層の表面から固体粒子層の内部への大気の侵入を防止すると共に装置本体に対して上下動可能な蓋部材と、を有することが好ましい。
【0039】
これは、固体粒子の特性を利用したものであり、固体粒子層の表面に載置した蓋部材によって固体粒子層の表面から固体粒子層の内部への大気の侵入を防止しながら、固体粒子層から気体(例えば空気)を抜くことにより、固体粒子層は大気により圧縮される。これにより、固体粒子層の固体粒子同士が集合して固まる方向に作用するので、固体粒子層は石のように硬くなる。この作用を利用することでビニール袋に入れた調理物や調理済み物を簡単に圧縮パックすることができる。即ち、固体粒子層が流動性を有する状態でビニール袋に入れた調理物や調理済み物を固体粒子層に沈めた後、固体粒子層の空気を抜くことで真空パックと同様のことを行うことができる。
【0040】
また、加熱調理と圧縮パックの組み合わせ、あるいは冷却調理とを圧縮パックの組み合わせを同じ装置で行うこともできる。
【0041】
本発明の調理加工装置は目的を達成するために、調理物を調理加工する調理加工装置において、上面が開放された容器形状の装置本体と、装置本体に充填されて固体粒子層を形成し、調理加工する温度に対する耐熱性を有すると共に食品安全上問題ない多数の食品用乾燥剤粒子と、固体粒子層に気体を噴出する気体噴出手段と、固体粒子層を加熱及び冷却の少なくとも一方の熱処理を行う熱源手段と、気体噴出手段の気体噴出量及び熱源手段による固体粒子層の温度を制御する制御手段と、を備え、固体粒子層を介して調理物に熱を付与することを特徴とする。
【0042】
本発明の調理加工装置によれば、調理加工と調理物や調理済み物の乾燥とを一つの装置で行うことができるので、調理加工と同時に調理物の保存性を向上できる。場合によっては、調理物の調理加工と乾燥とを同時に行うことも可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の調理加工装置によれば、直接加熱のような高温で調理しても加熱ムラを防止できると共に、短時間で調理温度になるので特に業務用において調理の効率化を図ることができる。また、本発明の調理加工装置は冷却調理の時間短縮を図ることができるので、料理のおいしさ、栄養価、品質を一層改善できる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面にしたがって本発明の調理加工装置の好ましい実施の形態について説明する。
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0046】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を" 〜 "を用いて表す場合は、" 〜 "で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
[調理加工装置の第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態の調理加工装置の外観図、
図2は調理加工装置のコントロールボックスを外して内部の構成を示した概念図、
図3は
図2の調理加工装置の装置本体をa-a線に沿って切断した断面図である。
【0047】
なお、本実施の形態では、固体粒子として砂(食品衛生上問題ないように洗浄したもの)を使用し、気体として空気を使用した例で説明する。また、本実施の形態では、固体粒子として砂を使用するが、固体粒子層の用語は砂層とはせずにそのまま使用する。
【0048】
図1から
図3に示すように、本発明の実施の形態の調理加工装置10は、主として、上面が開放された容器形状の装置本体12と、装置本体12に充填されて固体粒子層14を形成すると共に調理加工する温度に対する耐熱性を有する多数の砂14Aと、固体粒子層14に気体を噴出する気体噴出手段16(
図2〜
図3参照)と、固体粒子層14を加熱及び冷却の少なくとも一方の熱処理を行う熱源手段18(
図2〜
図3参照)と、気体噴出手段16の気体噴出量及び熱源手段による固体粒子層14の温度を制御する制御手段20(
図2及び
図3参照)と、で構成される。
【0049】
また、
図1に示すように、装置本体12に隣接してコントロールボックス22が装置本体12と一体的に設けられる。
【0050】
容器形状に形成された装置本体12の砂14Aが充填される少なくとも内側面は調理温度に対する耐熱性を有する材質で形成される。材質としては、例えばステンレス、鉄、耐熱性プラスチック、セラミックス等が好ましい。
【0051】
また、
図1から
図3では、装置本体12の形状を矩形の容器形状としたが、この形状に限定するものではなく、例えば底を有する円筒形の容器形状も好ましい。また、装置本体12の大きさ(容器の大きさ)は家庭用の調理加工装置と業務用の調理加工装置とで適宜設計することができる。
【0052】
装置本体12に充填される砂14Aの充填量は特に限定されないが、固体粒子層14への空気の噴出により装置本体12の外に砂14Aが飛散しないように、装置本体12の高さの7〜8割の位置まで充填されることが好ましい。
【0053】
また、コントロールボックス22には、
図2及び
図3に示すように、制御手段20及び制御手段20によって制御される気体噴出手段16及び熱源手段18の各機器類が収納される。また、コントロールボックス22から、コンセント(図示せず)に挿入するプラグ24Aを備えた電気コード24が延設され、コンセントにプラグ24Aを差し込むことで、制御手段20及び電気を必要とする各機器に電気が供給される。
【0054】
コントロールボックス22の側面には、電源スイッチ25、噴出量調整ダイヤル26、加熱温度調整ダイヤル28、冷却温度調整ダイヤル30、及び温度センサ32(
図3参照)で測定した固体粒子層14の温度を表示する温度表示メータ34が設けられる。そして、噴出量調整ダイヤル26、加熱温度調整ダイヤル28、冷却温度調整ダイヤル30を調整することによって、固体粒子層14に噴出する空気の噴出量、固体粒子層14を加熱する加熱温度、固体粒子層14を冷却する冷却温度を設定することができる。
【0055】
装置本体12に充填される固体粒子は、調理温度として最も温度が高くなる焼き調理の温度に加熱しても物理的及び化学的な性質が変わらず粒状を維持でき且つ食品衛生上問題ない固体粒子条件を備えていればどのようなものでもよい。
【0056】
本実施の形態では、固体粒子として砂14Aの例で説明しているが、砂14A以外にも鉄等の粒子を好ましく使用することができる。更には、上記した固体粒子条件を備えた塩等の調味料を使用することで調理物への味付けも同時に行うことができる。
【0057】
また、固体粒子として、食品用乾燥剤を使用することもできる。食品用乾燥剤としては、シリカゲル、生石灰、塩化カルシウム加工品(耐熱性無機質の担体に塩化カルシウムを浸み込ませて潮解性をなくしたもの)、シリカアルミナゲル等を挙げることができる。
【0058】
固体粒子として食品用乾燥剤を使用することで、調理物の加熱(又は冷却)と同時に調理物の乾燥も行うことができる。
【0059】
また、固体粒子は、空気の噴出により固体粒子層14を流動させて固体粒子層14に熱対流を発生させ易いことが必要であり、固体粒子の平均粒径は0.10〜0.15mm、カサ比重1.1〜1.3のものを使用することが好ましい。砂14Aの場合には珪砂7号を好適に使用することができる。
【0060】
図2及び
図3に示すように、気体噴出手段16は、主として、噴出管16Aと、空気コンプレッサ16Bと、噴出管16Aと空気コンプレッサ16Bとを繋ぐ空気配管16Cと、空気配管16Cに設けられた噴出量調整バルブ16D及び開閉バルブ16Eと、で構成される。
【0061】
気体噴出手段16から噴出する気体としては、本実施の形態で使用する空気が一般的であるが、食品衛生上問題ない気体であれば使用可能である。また、空気に臭いを含ませたもの、例えば燻製のための煙を使用することもできる。
【0062】
噴出管16Aは装置本体12の底部に配設され、空気コンプレッサ16B、空気配管16C、噴出量調整バルブ16D及び開閉バルブ16Eはコントロールボックス22に収納される。
【0063】
そして、空気コンプレッサ16B、噴出量調整バルブ16D、及び開閉バルブ16Eは信号ケーブル(又は無線)によって制御手段20に接続され、制御手段20からの指示で動作する。
【0064】
また、熱源手段18は、加熱手段18Aと冷却手段18Bとの少なくとも一方を有していればよいが、本実施の形態の調理加工装置10では、加熱手段18Aと冷却手段18Bの両方を有する場合で説明する。
【0065】
図2及び
図3に示すように、加熱手段18Aは、主として、噴出管16Aと、空気コンプレッサ16Bと、風量調整バルブ16Dと、開閉バルブ16Eと、装置本体12の底部に設けた電熱ヒータ36と、電熱ヒータ36と制御手段20とを繋ぐ電気配線38と、固体粒子層14の温度を検出する上記した温度センサ32とで構成される。これにより、電熱ヒータ36で固体粒子層14を直接加熱すると共に電熱ヒータ36で加熱された空気が固体粒子層14に噴出されることにより固体粒子層14を加熱する。即ち、気体噴出手段16の構成が加熱手段18Aの構成の一部を兼用する。
【0066】
この場合、電熱ヒータ36は装置本体12の底部であって、噴出管16Aの上方に配置される。また、温度センサ32は信号ケーブル(又は無線)によって制御手段20に接続される。また、電熱ヒータ36のヒータ形状は、噴出管16Aから固体粒子層14に噴出される空気の流れを邪魔しないように格子形状に形成される(
図4参照)。
【0067】
そして、噴出管16Aから噴出された空気は電気ヒータ36で加熱され、加熱された空気が電熱ヒータ36の格子状の隙間から固体粒子層14に噴出される。なお、電熱ヒータ36は格子形状に限定するものではなく、噴出管16Aから噴出された空気が通り抜け易い形状であればよい。
【0068】
これにより、固体粒子層14が加熱されると共に噴出する空気の噴出量を制御することで、空気によって砂14Aを舞い上げる力と重力とのバランスがつり合い、固体粒子層14に液体のような流動性を持たせることができる。即ち、固体粒子層14に空気を噴出することで固体粒子層14が液状化する。この結果、固体粒子層14の砂に熱対流が生じるので固体粒子層14を均一に加熱することができる。
【0069】
なお、本実施の形態の調理加工装置10では、加熱手段として、装置本体12に電熱ヒータ36を配置する方法を採用したが、これに限定されるものではない。例えば、噴出管16Aから噴出する空気を予め加熱し、加熱空気を噴出管16Aから噴出させてもよい。
【0070】
また、冷却手段18Bは、噴出管16Aから噴出する空気を予め冷却し、冷却空気を噴出管16Aから噴出させてように構成したものである。
図2及び
図3に示すように、冷却手段18Bは、主として、噴出管16Aと、空気コンプレッサ16Bと、風量調整バルブ16Dと、開閉バルブ16Eと、空気コンプレッサ16Bと開閉バルブ16Eを繋ぐ空気配管16Cの途中に設けた冷却器40と、固体粒子層14の温度を検出する上記した温度センサ32とで構成される。即ち、気体噴出手段16の構成が冷却手段18Bの構成の一部を兼用する。
【0071】
そして、冷却器40で冷却された冷却空気が噴出管16Aから固体粒子層14に噴出される。これにより、固体粒子層14が冷却されると共に噴出する空気の噴出量を制御することで、空気によって固体粒子を舞い上げる力と重力とのバランスがつり合い、固体粒子層14に液体のような流動性を持たせることができる。この結果、固体粒子層14に熱対流が生じるので固体粒子層14を均一に冷却することができる。
【0072】
なお、冷却手段18Bとしては加熱手段18Aの電熱ヒータ36と同様に装置本体12の底部に冷却パネル(図示せず)を設けることもできる。この場合も冷却パネルを空気が通り抜け易いようなパネル形状を格子形状等にするとよい。
【0073】
制御手段20には、風量調整部20A、加熱温度調整部20B、及び冷却温度調整部20Cがあり、風量調整部20Aは空気コンプレッサ16B、噴出量調整バルブ16D、及び開閉バルブ16Eを制御する。加熱温度調整部20Bは電熱ヒータ36を制御し、冷却温度調整部20Cは冷却器40を制御する。
【0074】
図4は、装置本体12に複数の噴出管16Aと電熱ヒータ36とを組み込む前の斜視図である。
図4に示すように、噴出管16Aは鉄枠42に設置される。鉄枠42は、装置本体12の底面サイズと同等に形成された平板42Aの上に複数本のT字状をした仕切板42Bが間隔を置いて平行に固着される。そして、仕切板42Bと仕切板42Bとの間に長溝42Cが形成され、この複数の長溝42Cにそれぞれ噴出管16Aが載置される。
【0075】
これにより、複数本の噴出管16Aが装置本体12内の底部に平行に配置される。ここで、鉄枠42は、噴出管16Aを固定できるものならば鉄枠に限らず調理温度に対する耐熱性を有する材料を使用することができ、例えば耐熱プラスチック、セラミック樹脂等を使用できる。
【0076】
図4では、7本の噴出管16Aの例で説明したが、この本数に限定するものではない。噴出管16Aの材質としては、鉄枠42と同様に耐熱性を有する材料であればよく、例えば耐熱プラスチック、セラミック樹脂等を使用できる。
【0077】
噴出管16Aは、一端が閉塞されるとともに他端が装置本体12外部の空気配管16Cに連結部材44を介して連結される(
図2から
図4参照)。
図4の符号52は連結部材44を装置本体12に固定する連結孔であり、連結孔52と連結部材44との隙間は図示しないシール剤により密封されている。
【0078】
また、
図4に示すように、制御手段20まで配線される電気配線38には第1の接続プラグ38Aが設けられると共に、電熱ヒータ36には第1の接続プラグ38Aと接続される第2の接続プラグ36Aが設けられる。そして、電熱ヒータ36を装置本体12に組み込む際に、第1の接続プラグ38Aと第2の接続プラグ36Aとを連結する。
【0079】
図5は、噴出管16Aを説明する斜視図である。
【0080】
図5の(A)に示すように、噴出管16Aは長手方向の上面に一定の間隔を置いて噴出口46が開口される。
図5の(A)では、噴出口46の形状として噴出管16Aの周方向に穿設されたスリット形状としたが丸穴形状でもよい。
【0081】
また、
図5の(B)に示すように、噴出管16Aには噴出口46が被覆されるように耐熱性のフィルタ48が巻回される。なお、
図5の(B)では1つの噴出口46のみにフィルタ48を被覆しているが、全ての噴出口46にフィルタ48を被覆する(
図6参照)。フィルタ48のメッシュは、噴出口46から空気を噴出できる一方、噴出口46から噴出管16Aの内部に砂14Bが入り込まない大きさである。なお、フィルタ48を噴出管16Aに固定する方法としては、接着剤等で固着してもよいが、
図5の(B)のように耐熱性の結束バンド50で固定することが好ましい。これにより、フィルタ48の交換を容易に行えるとともに噴出管16Aの掃除も容易に行える。
【0082】
図6は、装置本体12に複数の噴出管16Aと電熱ヒータ36とを組み込んだ後の平面図である。なお、噴出管16Aと電熱ヒータ36とを区別し易いように電熱ヒータ36は破線で示している。
【0083】
図6に示すように、複数本の噴出管16Aが載置された鉄枠42が装置本体12内の底部に置かれ、各噴出管16Aが連結部材44及び空気配管16Cを介して装置本体12外の空気コンプレッサ16Bに連結される。
【0084】
空気コンプレッサ16Bの必要圧力としては、固体粒子層14を液状に流動化できることが必要である。また、固体粒子層14の流動化において、複数本の噴出管16Aを装置本体12内の底部に平行に配置したときに、噴出口46の配置(
図4及び
図6のフィルタ48の配置と同じ)が千鳥状に配置されることが好ましい。これにより、装置本体12内の固体粒子層14の底面に対して噴出管16Aの噴出口46を均等に配置することができる。
【0085】
次に、上記構成の調理加工装置10を用いて、煮物調理、保温調理、冷却調理、鉄板焼き調理、焼き調理、加圧調理について説明する。また、各調理を行う上で、装置本体12に付属させることが好ましい付属部材を説明する。
【0086】
(煮物調理)
図7の(A)は、本発明の実施の形態の調理加工装置10を用いて煮物調理をしている断面図である。
【0087】
先ず、
図1で説明したコントローラボックス22の電源スイッチ25を入れると共に噴出量調整ダイヤル26を所望の気体噴出量に設定すると共に加熱温度調整ダイヤル28を煮物調理の加熱温度に設定する。
【0088】
これにより、噴出管16Aから固体粒子層14に空気が噴出され、固体粒子層14が流動化して液状化する。したがって、調理物(食材)と水(出汁も含む)とを入れた煮物用鍋54(調理鍋の一種)を、砂14Aが煮物用鍋54に入らない適度な深さまで(例えば半分程度)沈める。
【0089】
また、煮物用鍋54の調理物を加熱中にかき混ぜることがあり、煮物用鍋54は固体粒子層14に沈めた状態で動かないように固定する必要がある。この場合、気体噴出量を調整して固体粒子層14の液状化の程度を調整することで達成することができる。
【0090】
即ち、噴出量調整ダイヤル26を調整して、煮物用鍋54を固体粒子層14に沈める際は空気噴出量を多くして固体粒子層14を液状化の程度を大きくする。そして、煮物用鍋54を固体粒子層14に沈めたら、空気噴出量を絞って液状化の程度を小さくすることで煮物用鍋54が動かない程度まで固体粒子層14を硬くする。
【0091】
また、電熱ヒータ36で固体粒子層14を直接加熱すると共に電熱ヒータ36で温められた空気が固体粒子層14に噴出されることによって、固体粒子層14は調理温度に加熱される。この固体粒子層14の加熱において、液状化した固体粒子層14には
図7の(A)に示すように熱対流Tが発生し固体粒子層14の全体が均一温度になる。これにより、固体粒子層14から煮物用鍋54の各部分(特に沈めた部分)に均等に熱が付与されるので、煮物調理をする際に加熱ムラをなくすことができる。また、固体粒子層14のどの部分で煮物調理をしても同じ温度で調理することができる。
【0092】
この場合、装置本体12に水を貯留して加熱しても熱対流は生じ水の温度は均一化するが、砂14Aの比熱は水の比熱より小さく、砂14Aの熱伝導率は水の熱伝導率よりも顕著に大きい。これにより、砂14Aは水に比べ温まり易く急速に蓄熱されるので、固体粒子層14を短時間で調理温度まで上昇させることができ、調理の効率化を図ることができる。調理の効率化は、特に時間当たり製造できる調理量がコストに影響する業務分野において重要である。
【0093】
また、砂14Aは水や食用油では得ることができない超高温(1000℃以上)を得ることができるので、高温加熱が好ましい調理を行うことができ、調理の幅を広げることができる。
【0094】
ここで参考までに、砂、鉄、水、食用油の比熱と熱伝導率とを比較すると、次のようになる。なお、砂については石英ガラスのデータである。
【0095】
[種 類] [比熱(kJ/kg・K)] [熱伝導率(W/(m・K)]
砂 0.710 1.350
鉄 0.461 67.00
水 4.182 0.602
食用油 1.967 0.166
【0096】
また、煮物用鍋54を固体粒子層14に沈め過ぎないようにする別の方法として、
図7の(B)に示すように、装置本体12の付属部材として、煮物用鍋54が固体粒子層の内部に完全に埋没しないように支持する鍋支持部材56が装置本体12に着脱可能に設けられることが好ましい。
【0097】
鍋支持部材56は平坦状の平板部56Aの周縁に装置本体12の上端周縁に引っ掛かる断面逆L字状の引っ掛け部56Bが形成される。また、平板部56Aの中央部に煮物用鍋54の胴大部より大きな径で煮物用鍋54が挿入された状態で装着される装着孔56Cが形成される。そして、装着孔56Cの周縁部に煮物用鍋54の把手54Aが引っ掛かるようにすることで、煮物用鍋54を鍋支持部材56に対して簡単に着脱できる。
【0098】
これにより、固体粒子層14の液状化の程度に関係なく、煮物用鍋54を固体粒子層に適度に沈めることができるので、固体粒子層14の内部に大きな熱対流Tを生じさせることができ、固体粒子層14の温度を一層均一化できる。
【0099】
この場合、鍋支持部材56に形成する装着孔56Cは1つに限定されず、使用する煮物用鍋54の異なる胴径に合わせて直径の異なる装着孔56Cを複数形成することが好ましい。複数の装着孔56Cを形成しても、固体粒子層14の温度は均一なので、装着孔56Cによって調理温度にバラツキが生じることはない。
【0100】
(煮物の保温)
上記の如く煮物を作った後、煮物を食事に提供するまで保温する場合には、加熱温度調整ダイヤル28を保温温度に設定する。この保温においても、固体粒子層14は均一な保温温度に維持されるので、煮物に保温ムラがないように保温することができる。この場合、砂14Aは比熱が小さく冷め易いので、固体粒子層14の温度を調理温度から保温温度に迅速に移行させることができる。これにより、調理の効率化を図ることができる。
【0101】
(煮物の冷却調理)
上記の如く煮物を作った後、保存するために冷却調理する場合には、加熱温度調整ダイヤル28を切って(加熱手段の駆動を停止する)冷却温度調整ダイヤル30を冷却温度に設定する。これにより、冷却器40で冷やされた空気が噴出管16Aから固体粒子層14に噴出され、固体粒子層14が冷却される。この場合も、固体粒子層14に熱対流が発生して固体粒子層14を均一に冷却するので、冷却ムラをなくすことができる、また、砂14Aは水に比べて比熱が小さく冷め易いので、固体粒子層14の温度を調理温度から冷却温度に迅速に移行させることができる。これにより、調理の効率化を図ることができる。
【0102】
(鉄板焼き調理)
図8は、本発明の実施の形態の調理加工装置10を用いて鉄板焼き調理をしている断面図である。
【0103】
鉄板焼き用の調理加工装置10は、装置本体12の付属部材として、
図8に示すように、鉄板58を装置本体12に設ける必要がある。この場合、鉄板58の周縁部に固体粒子層14に噴出される空気を逃がす空気抜き孔58Aを形成するとよい。また、鉄板58と固体粒子層14との間に隙間が形成されないように装置本体12に固体粒子を十分に充填することが好ましい。
【0104】
そして、
図1で説明したコントローラボックス22の電源スイッチ25を入れると共に噴出量調整ダイヤル26及び加熱温度調整ダイヤル28を所望の気体噴出量及び加熱温度に設定する。
【0105】
これにより、噴出管16Aから固体粒子層14に空気が噴出され、固体粒子層14が流動化して液状化すると共に、電熱ヒータ36及び電熱ヒータ36で温められた空気が固体粒子層14に噴出されることによって、固体粒子層14は鉄板焼き温度に加熱される。この固体粒子層14の加熱において、液状化した固体粒子層14には
図8に示すように熱対流Tが発生し固体粒子層14の全体が均一温度になる。これにより、鉄板58の各部分に加熱ムラなく鉄板焼き温度を付与することができる。
【0106】
これにより、鉄板58の各部分での加熱ムラがなくなるので、例えば肉、野菜、お好み焼き等の調理物を加熱ムラなく鉄板焼きすることができる。特に業務用において一度にたくさんの調理物を鉄板焼きする場合に調理の効率化を図ることができる。
【0107】
ちなみに、従来の鉄板焼きのようにガス、電気で鉄板を加熱する場合、ガスバーナや電熱ヒータがある部分とない部分とで鉄板の各部分に加熱ムラが発生し易い。これにより、調理物にも加熱ムラが発生し易くなる。
【0108】
(焼き調理)
図9は、本発明の実施の形態の調理加工装置を用い、焼き調理を行っている図であり、
図9は一例としてアルミホイールに包んだサツマイモWを固体粒子層14に完全に埋没させて焼き芋を作っている断面図である。
【0109】
焼き用の調理加工装置10は、装置本体12の付属部材として、
図9に示すように、固体粒子層14に埋没させたサツマイモWが液状化した固体粒子層14中で浮上して固体粒子層14から露出したり、沈降して電熱ヒータ36に接触したりしないように一対の金網60(上側金網60Aと下側金網60B)とを設けることが好ましい。上側金網60Aと下側金網Bとは装置本体12に対して着脱自在に設けることが好ましい。
【0110】
そして、
図1で説明したコントローラボックス22の電源スイッチ25を入れると共に噴出量調整ダイヤル26及び加熱温度調整ダイヤル28を所望の気体噴出量及び加熱温度に設定する。
【0111】
これにより、噴出管16Aから固体粒子層14に空気が噴出され、固体粒子層14が流動化して液状化すると共に、電熱ヒータ36及び電熱ヒータ36で温められた空気が固体粒子層14に噴出されることによって、固体粒子層14は焼き調理温度に加熱される。この固体粒子層14の加熱において、液状化した固体粒子層14には
図9に示すように熱対流Tが発生し固体粒子層14の全体が均一温度になる。
【0112】
これにより、固体粒子層14に埋没させたサツマイモWには全方位から均等に熱が付与されるので、加熱ムラなく焼き芋を作ることができる。
【0113】
この場合、装置本体12に水を貯留して加熱しても熱対流は生じ水の温度は均一化するが、アルミホイールに包んだサツマイモWを水の中に入れて焼くことはできない。仮に水が浸入しない密封袋にサツマイモWを入れたとしても水の沸点は100℃であり、砂14Aのような高温にすることはできないので、焼き芋を作ることはできない。
【0114】
本発明の実施の形態の調理加工装置10を用いた焼き調理としては、焼き芋以外にも、魚、肉、野菜等をアルミホイールに包んで焼くことができる。調理物に砂16Aが若干付着しても水のように調理物の内部まで侵入することはないので、簡単に除去できる。
【0115】
特に、魚、肉を焼く場合に、固体粒子として砂16Aに代えて塩を使用し、魚、肉をアルミホイールで包まずに塩の中に直接埋設して加熱すれば、塩釜焼と同様の調理を行うことができる。塩を使用する場合、塩は砂よりも軽いので、砂よりも粒径を大きくすることが好ましい。これにより、固体粒子層14に空気を噴出したときに、塩が舞い上がりにくくなる。
【0116】
本発明の実施の形態の調理加工装置10は、水では不可能な焼き調理のような高温を得ることができ、しかも噴出される空気によって水のように熱対流を生じることができる固体粒子層14の特性を調理加工という技術分野に巧みに利用したものである。
【0117】
(焼き物の保温及び冷却調理)
上記の如く焼き物を作った後、焼き物を食事に提供するまで保温する場合には、加熱温度調整ダイヤル26を保温温度に設定する。また、上記の如く焼き物を作った後、保存するために冷却調理する場合には、加熱温度調整ダイヤル26を切って(加熱手段の駆動を停止する)冷却温度調整ダイヤル28を冷却温度に設定する。
【0118】
この焼き物の保温及び冷却調理の場合にも、上述した煮物の保温や冷却調理と同様に、保温ムラや冷却ムラをなくすことができると共に、調理の効率を向上させることができる。
【0119】
(加圧調理)
図10は、本発明の実施の形態の調理加工装置10を用い、加圧調理を行っている断面図である。
【0120】
加圧調理用の調理加工装置10は、装置本体12の付属部材として、
図10に示す圧力鍋62を設けるか又は既存の圧力鍋を用意する。
【0121】
そして、
図1で説明したコントローラボックス22の電源スイッチ25を入れると共に噴出量調整ダイヤル26及び加熱温度調整ダイヤル28を所望の気体噴出量及び加熱温度に設定する。
【0122】
これにより、噴出管16Aから固体粒子層14に空気が噴出され、固体粒子層14が流動化して液状化するので、調理物(食材)と水(出汁も含む)とを入れた圧力鍋62を
図10の(B)に示すように固体粒子層14の内部に埋没させる。
【0123】
圧力鍋62を固体粒子層14の内部に埋没させる方法としては、調理人が液状化した固体粒子層14の内部に埋没させてもよい。しかし、
図10の(A)に示すように、固体粒子層14の表面に圧力鍋62を載置しておき、気体噴出量を増やし液状化の程度を大きくすることで、圧力鍋62の自重で固体粒子層14の内部に沈降させることができる。
【0124】
また、電熱ヒータ36及び電熱ヒータ36で温められた空気が固体粒子層14に噴出されることによって、固体粒子層14は調理温度に加熱される。この固体粒子層14の加熱において、液状化した固体粒子層14には
図10の(B)に示すように熱対流Tが発生し固体粒子層14の全体が均一温度になるので、圧力鍋62の各部分に加熱ムラなく調理温度を付与することができる。
【0125】
(加圧調理物の保温及び冷却調理)
上記の加圧調理物を作った後、加圧調理物を食事に提供するまで保温する場合には、加熱温度調整ダイヤル26を保温温度に設定する。また、上記の如く加圧調理物を作った後、保存するために冷却調理する場合には、加熱温度調整ダイヤル26を切って(加熱手段の駆動を停止する)冷却温度調整ダイヤル28を冷却温度に設定する。この場合、焼き物とは異なり圧力鍋62のまま保温及び冷却調理する。
【0126】
この加圧調理物の保温及び冷却調理の場合にも、上述した煮物の保温や冷却調理と同様に、保温ムラや冷却ムラをなくすことができると共に、調理の効率を向上させることができる。
【0127】
[調理加工装置の別態様]
図11に示す本発明の別態様の調理加工装置100は、上記説明した調理加工装置10に、固体粒子層14に含有される空気を抜く吸引手段64と、固体粒子層14の表面に載置され、固体粒子層14の表面から固体粒子層14の内部への大気の侵入を防止すると共に装置本体12に対して上下動可能な蓋部材64Aと、を更に備えるようにしたものである。
【0128】
即ち、
図11に示すように、吸引手段64は、冷却器40と開閉バルブ16Eとの間に設けた三方弁64Bと、吸引用配管64Cを介して三方弁64Bと連結される真空装置64Dとで構成される。
【0129】
そして、三方弁64Bの切り替え及び真空装置64DのON―OFFは制御手段20によって制御される。これにより、制御手段20により三方弁64Aを切り替えることにより、気体噴出手段16と吸引手段64とを切り替えることができる。
【0130】
即ち、三方弁64が空気コンプレッサ16Bと開閉バルブ16Eとを連通することで気体噴出手段16が構成され、三方弁64が真空装置64Cと開閉バルブ16Eとを連通することで吸引手段64が構成される。
【0131】
なお、吸引手段64は固体粒子層14に含有される空気を抜くことができれば上記構成に限定するものではない。
【0132】
蓋部材64Aは、固体粒子層14の表面に落とし蓋のように載置される。この場合、固体粒子層14の表面から固体粒子層14の内部への大気の侵入を防止するため、蓋部材64の外縁が装置本体12側辺の内面との間に隙間が生じないように形成される。
【0133】
但し、固体粒子層14に載置された蓋部材64Aは、吸引手段64が固体粒子層14の空気を抜いて固体粒子層14の内部が減圧したときに大気圧が蓋部材64Aを上から押して固体粒子層14を圧縮できることが必要である。
【0134】
したがって、蓋部材64の外縁が装置本体12側辺の内面との間に隙間が生じないように形成されるが、装置本体12に対して上下動可能になっていることが必要である。このため、装置本体12の側辺は、
図7から
図10のように胴径が上から下へ小さくなる傾斜形状ではなく、
図11のように胴径が上から下へ同じ垂直形状に形成される。
【0135】
このように、固体粒子層14から空気を抜くことにより、砂14A同士が集合して固まる方向に作用するので、固体粒子層14は石のように硬くなる。この作用を利用することでビニール袋X入れた調理物Y(又は調理済み物)を簡単に圧縮パックすることができる。
【0136】
従来は調理物Yを入れたビニール袋Xの内部の空気を抜くことで真空パックするが、本発明の別態様の調理加工装置100では調理物Yを入れたビニール袋Xを外側から押圧することで圧縮パックする。
【0137】
即ち、固体粒子層14が流動性を有する状態でビニール袋Xに入れた調理物Yを固体粒子層14に沈めた後、固体粒子層14の空気を抜く。これにより、液状化していた固体粒子層14が次第に硬くなり調理物Yを入れたビニール袋Xを押圧してビニール袋X内部の空気を追い出す。これにより、圧縮パックすることができる。
【0138】
例えば、ビニール袋Xに調理物Y(食材)と調味料とを入れて圧縮パックすることにより、圧力鍋と同様の効果や、調理物Yに調味料をしみ込ませる効果を得ることができる。この場合、圧力鍋は水を沸騰させた蒸気圧を利用して内部圧力を高めることで調理物Yを加圧する。したがって、水分の少ない食材や加水できない食材には向かない。
【0139】
一方、本発明の調理加工装置100では、固体粒子層14の空気を抜いて固体粒子層14を圧縮することでビニール袋Xに入った調理物Yを加圧するので、どんな食材でも、且つ100℃以下でも100℃以上でも任意の温度で圧力鍋と同様の効果を得ることができる。
【0140】
また、本発明の別態様の調理加工装置100は、加熱調理と圧縮パックとの組み合わせ、あるいは冷却調理と圧縮パックとの組み合わせを同じ装置で行うこともできる。
【0141】
[調理加工装置の第2の実施の形態]
本発明の調理加工装置の第2の実施の形態は、固体粒子として、食品用乾燥剤粒子を使用したものであり、基本的な装置構成は
図1から
図11で説明した第1の実施の形態の調理加工装置10と同様である。
【0142】
即ち、本発明の第2の実施の形態の調理加工装置10は、上面が開放された容器形状の装置本体12と、装置本体12に充填されて固体粒子層14を形成し、調理加工する温度に対する耐熱性を有すると共に食品安全上問題ない多数の食品用乾燥剤粒子14Aと、固体粒子層14に気体を噴出する気体噴出手段16(
図2〜
図3参照)と、固体粒子層14を加熱及び冷却の少なくとも一方の熱処理を行う熱源手段18(
図2〜
図3参照)と、気体噴出手段16の気体噴出量及び熱源手段による固体粒子層14の温度を制御する制御手段20(
図2及び
図3参照)と、で構成される。
【0143】
食品用乾燥剤としては、シリカゲル、ゼオライト(例えば商品名:モレキュラーシーブ)、塩化カルシウム加工品(耐熱性無機質の担体に塩化カルシウムを浸み込ませて潮解性をなくしたもの)、シリカアルミナゲル等を挙げることができる。
【0144】
このように、固体粒子として、食品用乾燥剤の粒子を使用することによって、加熱又は冷却の調理加工と調理物あるいは調理済み物の乾燥とを一つの装置で行うことができるので、調理物あるいは調理済み物の保存性を向上することができる。また、場合によっては。調理物の調理と乾燥とを同時に行うことも可能となる。