(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、前記フラックス全体の総量に対して、アミンを0質量%以上8質量%以下、有機ハロゲン化合物を0質量%以上8質量%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0質量%以上3質量%以下、又は酸化防止剤を0質量%以上8質量%以下で含む、請求項2〜8のいずれか1項に記載のフラックス。
前記はんだ粉末は、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含む、請求項10に記載のはんだペースト。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を以下により詳しく説明する。
本明細書において、はんだ合金組成に関する「ppm」は、特に指定しない限り「質量ppm」である。「%」は、特に指定しない限り「質量%」である。
【0031】
<ロジン化合物>
本実施の形態のロジン化合物は、15質量%を超え70質量%以下のアガチン酸類と、ロジンと、を含む。
【0032】
ロジン化合物中のアガチン酸類としては、例えば、アガチン酸、ジヒドロアガチン酸、テトラヒドロアガチン酸等が挙げられる。
【0033】
ロジン化合物全体の質量に対するアガチン酸類の含有量は、15質量%を超え70質量%以下であり、15質量%を超え40質量%以下が好ましく、15質量%を超え30質量%以下がより好ましい。
アガチン酸類の含有量が上記範囲内であれば、フラックスとした際のはんだ付け性に優れ、信頼性が高い。
アガチン酸類の含有量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置による分子量測定法を用いて測定する。
【0034】
本実施の形態におけるロジン化合物中のロジンには、天然ロジン、変性ロジンのいずれかを含むものを用いることができる。このようなロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、一種又は二種以上を使用することができる。
【0035】
<ロジン化合物の製造方法>
次に、本実施の形態のロジン化合物の製造方法について説明する。
【0036】
上述した本実施の形態のロジン化合物の製造方法は、下記の工程(a)と工程(b)とを有する。
工程(a):1質量%以上15質量%以下のアガチン酸類を含む原料ロジン化合物、を蒸留して、前記原料ロジン化合物中のアガチン酸類を濃縮する工程
工程(b):前記工程(a)後の、濃縮したアガチン酸類を含む粗ロジン化合物を蒸留して精製し、15質量%を超え70質量%以下のアガチン酸類を含むロジン化合物を得る工程
【0037】
工程(a)で、原料として用いる1質量%以上15質量%以下のアガチン酸類を含む原料ロジン化合物としては、アガチン酸類を含む限り特に限定されないが、天然ロジン及び水添ロジンからなる群より選択されるものを用いることが好ましい。例えば、原料ロジン化合物としては、中国産、ベトナム産又はインドネシア産の南亜松ロジン等の天然ロジン、当該天然ロジンの水添ロジン等を用いることが好ましい。
【0038】
工程(a)で用いる蒸留装置としては、特に限定されないが、バッチ式蒸留装置、連続式蒸留装置、薄膜式蒸留装置等を用いることができる。
工程(a)において原料ロジン化合物を蒸留する際の圧力は、50Pa以上400Pa以下が好ましく、100Pa以上300Pa以下がより好ましく、100Pa以上250Pa以下がさらに好ましい。
工程(a)において原料ロジン化合物を蒸留する際の温度は、100℃以上300℃以下が好ましく、150℃以上280℃以下がより好ましく、200℃以上270℃以下がさらに好ましい。
工程(a)において原料ロジン化合物を蒸留する際の蒸留時間は、0.5時間以上24時間以下が好ましく、1時間以上12時間以下がより好ましく、1.5時間以上5時間以下がさらに好ましい。
【0039】
工程(b)の精製で用いる蒸留装置としては、特に限定されないが、バッチ式蒸留装置、連続式蒸留装置、薄膜式蒸留装置等を用いることができる。
工程(b)において、前記工程(a)後の、濃縮したアガチン酸類を含む粗ロジン化合物を蒸留する際の圧力は、50Pa以上400Pa以下が好ましく、100Pa以上300Pa以下がより好ましく、100Pa以上250Pa以下がさらに好ましい。
工程(b)において、前記粗ロジン化合物を蒸留する際の温度は、100℃以上300℃以下が好ましく、150℃以上280℃以下がより好ましく、200℃以上270℃以下がさらに好ましい。
工程(b)において、前記粗ロジン化合物を蒸留する際の蒸留時間は、0.5時間以上24時間以下が好ましく、1時間以上12時間以下がより好ましく、1.5時間以上5時間以下がさらに好ましい。
【0040】
本実施の形態のロジン化合物の製造方法においては、所望の濃度のアガチン酸類が得られるまで工程(a)を繰り返すことが好ましく、工程(a)の繰り返し回数は、1回以上100回以下が好ましく、2回以上50回以下がより好ましく、3回以上10回以下がさらに好ましい。
また、かかるロジン化合物の製造方法における工程(a)は、濃縮後の原料ロジン化合物に、1質量%以上15質量%以下のアガチン酸類を含む原料ロジン化合物をさらに添加する操作を含んでいてもよい。
【0041】
従来のロジンの製造方法においては、原料ロジンを蒸留することにより、揮発性の初留分及び蒸留装置内に残存したピッチ成分(釜残)を除去して、アビエチン酸等のモノカルボン酸の樹脂酸を含む主留分を取り出し、その後、精製することにより精製ロジンを得ていた。
一方、本実施の形態のロジン化合物の製造方法においては、アガチン酸類が含まれる原料ロジン化合物を選定し、揮発性の初留分及びアビエチン酸等のモノカルボン酸の樹脂酸を含む主留分を蒸留して除去し、蒸留装置内に残存した成分に含まれるアガチン酸類を濃縮することにより、アガチン酸類を高濃度で含有するロジン化合物を得ている。これにより、アガチン酸類はジカルボン酸であるため酸価が高く、高濃度とした場合に、フラックスのはんだ付け性を効率的に高められる。また、アガチン酸類を単離することなしにロジン中で濃縮させるため、工業スケールにおいても容易に低コストで製造することが可能となる。
【0042】
<フラックス>
本実施の形態のフラックスは、上述した特定のロジン化合物を含有するものであり、はんだペースト用フラックスとして特に好適なものである。
本実施の形態においては、フラックス中に含まれるアガチン酸類の含有量が多いほど、はんだ付け性が高められる。
例えば、フラックス中に含まれるアガチン酸類の含有量は、フラックス全体の総量に対して、0.5質量%を超え20質量%以下が好ましく、1質量%以上16質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
フラックス中に含まれるアガチン酸類の含有量が上記範囲内であれば、フラックスとした際のはんだ付け性に優れ、信頼性が高い。
また、フラックス中に含まれるアガチン酸類の含有量は、フラックスの固形分(溶剤を除くもの)の総量に対して、2〜40質量%が好ましく、5〜35質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
【0043】
例えば、本実施の形態のフラックスは、上述した特定のロジン化合物に加え、更に、チキソ剤及び溶剤を含有するものが挙げられる。
【0044】
フラックス中に含まれるロジン化合物の含有量は、フラックス全体の総量に対して、2質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
本実施の形態で用いられるチキソ剤としては、例えば、アミド化合物、エステル化合物、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。
【0046】
チキソ剤であるアミド化合物としては、モノアミド、ビスアミド、ポリアミドが挙げられる。
例えば、かかるアミド化合物は、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、p−トルアミド、p−トルエンメタンアミド、芳香族アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、置換アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールアミド、脂肪酸エステルアミド等のモノアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシ脂肪酸(脂肪酸の炭素数C6〜24)アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、メチレンビスオレイン酸アミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、芳香族ビスアミド等のビスアミド;
飽和脂肪酸ポリアミド、不飽和脂肪酸ポリアミド、芳香族ポリアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、環状アミドオリゴマー、非環状アミドオリゴマー等のポリアミドが挙げられる。
【0047】
前記環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー等が挙げられる。
【0048】
また、前記非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸とモノアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合等が挙げられる。モノカルボン酸又はモノアミンを含むアミドオリゴマーであると、モノカルボン酸、モノアミンがターミナル分子(terminal molecules)として機能し、分子量を小さくした非環状アミドオリゴマーとなる。また、非環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸と、ジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミド化合物である場合、非環状高分子系アミドポリマーとなる。更に、非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とモノアミンとが非環状に縮合したアミドオリゴマーも含まれる。
【0049】
チキソ剤であるエステル化合物としては、例えば、ヒマシ硬化油等が挙げられる。
【0050】
ソルビトール系チキソ剤としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、(D−)ソルビトール、モノベンジリデン(−D−)ソルビトール、モノ(4−メチルベンジリデン)−(D−)ソルビトール等が挙げられる。
【0051】
チキソ剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
前記チキソ剤は、アミド化合物及びエステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
かかるチキソ剤の含有量は、フラックス全体の総量に対して、0.1〜15.0質量%が好ましく、0.2質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。
【0052】
前記アミド化合物には、ポリアミド、ビスアミド及びモノアミドからなる群より選択される少なくとも一種を含むものを用いることが好ましい。本実施の形態のフラックスは、前記アミド化合物を、フラックス全体の総量に対して、0質量%超15.0質量%以下含むことが好ましく、0.2質量%以上10.0質量%以下含むことがより好ましい。
【0053】
前記エステル化合物には、ヒマシ硬化油を含むものを用いることが好ましい。本実施の形態のフラックスは、前記エステル化合物を、フラックス全体の総量に対して、0質量%以上8.0質量%以下含むことが好ましく、0質量%以上5.0質量%以下含むことがより好ましい。
【0054】
本実施の形態で用いられる溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。
アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、ジメチルトリグリコール、ジブチルジグリコール、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の脂肪族グリコールエーテル系溶剤;フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル等の芳香族グリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
溶剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0055】
本実施形態のフラックスは、ロジン、チキソ剤及び溶剤以外の成分を含有してもよい。ロジン、チキソ剤及び溶剤以外の成分としては、例えば、有機酸、アミン、ハロゲン系活性剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0056】
有機酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0057】
また、有機酸としては、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸が挙げられる。
【0058】
例えば、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸の反応物であるトリマー酸、リノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノレン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、上述した各ダイマー酸の水添物である水添ダイマー酸、上述した各トリマー酸の水添物である水添トリマー酸等が挙げられる。
【0059】
有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施の形態のフラックスは、有機酸を、フラックス全体の総量に対して、0質量%以上15質量%以下含むことが好ましく、0.2質量%以上10質量%以下含むことがより好ましい。
【0060】
アミンとしては、モノエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、エチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6’−tert−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0061】
アミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態のフラックスは、アミンを、フラックス全体の総量に対して、0質量%以上8質量%含んでもよい。
【0062】
ハロゲン系活性剤としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0063】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素とを反応させた化合物である。
アミンハロゲン化水素酸塩におけるアミンとしては、上述したアミンを用いることができ、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の水素化物(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素)が挙げられる。また、アミンハロゲン化水素酸塩に代えて、あるいはアミンハロゲン化水素酸塩と合わせてホウフッ化物を含んでもよく、ホウフッ化物としてホウフッ化水素酸等が挙げられる。
アミンハロゲン化水素酸塩としては、アニリン塩化水素、シクロヘキシルアミン塩化水素、アニリン臭化水素、ジフェニルグアニジン臭化水素、ジトリルグアニジン臭化水素、エチルアミン臭化水素等が挙げられる。
【0064】
有機ハロゲン化合物としては、trans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、イソシアヌル酸トリス(2,3−ジブロモプロピル)、無水クロレンド酸等が挙げられる。
【0065】
本実施の形態のフラックスは、有機ハロゲン化合物を、フラックス全体の総量に対して、0質量%以上8質量%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0質量%以上3質量%以下含んでもよい。
【0066】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
本実施の形態のフラックスは、酸化防止剤を、フラックス全体の総量に対して、0質量%以上8質量%以下含むことが好ましい。
【0067】
本実施の形態のフラックスは、更に、ロジン以外の樹脂成分を含有してもよい。
ロジン以外の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂等が挙げられる。
変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
【0068】
本実施形態のフラックスは、更に、界面活性剤を含有してもよい。
ここでの界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール類、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド等が挙げられる。
【0069】
以上説明した本実施形態のフラックスは、はんだペースト用として特に好適なものである。かかるフラックスをはんだペーストに適用することで、はんだ付け性に優れ、信頼性を高められる。
【0070】
また、本実施形態のフラックスは、はんだペースト用に限定されず、フローはんだ付け用の液状フラックスとしても適用できる。この液状フラックスは、主成分が溶剤であり、イソプロピルアルコール等の揮発性溶剤を含有し、スプレー塗布などが一般的な使用方法とされる。例えば、本実施形態のフラックスを適用した液状フラックスとしては、特許第6322881号公報に記載のフラックスにおけるロジン系樹脂の一部又は全体を、本発明に係るロジン化合物に置換したフラックスが挙げられる。本実施形態のフラックスを液状フラックスに適用することでも、はんだ付け性に優れ、信頼性を高められる。
【0071】
上述した本発明の効果が得られる理由は定かではないが以下のように推測される。
ロジンは、結晶性が高い成分である。フラックス残渣の主成分であるロジンが原因で、残渣に亀裂が入ることで割れが生じると、その亀裂から吸湿しやすくなる等の不都合がある。アガチン酸類は全て、ロジン、特に主成分であるアビエチン酸の構造と比較しても柔軟な構造を有している。このため、アガチン酸類の含有量が増えるほど、ロジンの結晶化が阻害されて、柔らかい残渣になりやすい。このため、本実施形態のロジン化合物を含有するフラックスによれば、本発明の効果が得られると考えられる。
【0072】
<はんだペースト>
本実施の形態のはんだペーストは、上述したフラックスと、はんだ粉末とを含有する。
【0073】
はんだ粉末は、Sn単体のはんだの粉体、または、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn−In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、Pb、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金の粉体で構成されるものを任意に用いることができる。
【0074】
一実施形態として、はんだ粉末は、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含むもの(以下「はんだ粉末(Sp)」という。)が好ましい。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0075】
1.合金組成
(1)As:25〜300質量ppm
Asは、はんだペーストの粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asは、フラックスとの反応性が低く、また、Snに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが25質量ppm未満であると、増粘抑制効果を十分に発揮することができない。As含有量の下限は25質量ppm以上であり、好ましくは50質量ppm以上であり、より好ましくは100質量ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は300質量ppm以下であり、好ましくは250質量ppm以下であり、より好ましくは200質量ppm以下である。
【0076】
(2)Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種
Sbは、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。本実施形態におけるはんだ合金がSbを含有する場合、Sb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、更に好ましくは100質量ppm以上であり、特に好ましくは300質量ppm以上である。一方、Sb含有量が多すぎると、濡れ性が劣化するため、適度な含有量にする必要がある。Sb含有量の上限は3000質量ppm以下であり、好ましくは1150質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下である。
【0077】
Bi及びPbは、Sbと同様に、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、Bi及びPbは、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに、溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
【0078】
Pb、並びにSb、及びBiの少なくとも1元素が存在すれば、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる。本実施形態におけるはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、更に好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。Pb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、更に好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。
【0079】
一方、これらの元素の含有量が多すぎると、固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広すぎると、溶融はんだの凝固過程において、BiやPbの含有量が少ない高融点の結晶相が析出するために液相のBiやPbが濃縮される。その後、更に溶融はんだの温度が低下すると、BiやPbの濃度が高い低融点の結晶相が偏析してしまう。このため、はんだ合金の機械的強度等が劣化し、信頼性が劣ることになる。特に、Bi濃度が高い結晶相は硬くて脆いため、はんだ合金中で偏析すると信頼性が著しく低下する。
【0080】
このような観点から、本実施形態におけるはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の上限は10000質量ppm以下であり、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは600質量ppm以下であり、更に好ましくは500質量ppm以下である。Pb含有量の上限は5100質量ppm以下であり、好ましくは5000質量ppm以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下であり、更に好ましくは850質量ppm以下であり、特に好ましくは500質量ppm以下である。
【0081】
(3) (1)式
本実施形態におけるはんだ合金は、下記(1)式を満たす必要がある。
【0082】
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
上記(1)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0083】
As、Sb、Bi及びPbは、いずれも増粘抑制効果を示す元素であり、これらの合計が275質量ppm以上である必要がある。(1)式中、As含有量を2倍にしたのは、AsがSbやBiやPbと比較して増粘抑制効果が高いためである。
【0084】
(1)式が275未満であると、増粘抑制効果が十分に発揮されない。(1)式の下限は275以上であり、好ましくは350以上であり、より好ましくは1200以上である。一方、(1)式の上限は、増粘抑制効果の観点では特に限定されることはないが、ΔTを適した範囲にする観点から、好ましくは25200以下であり、より好ましくは10200以下であり、更に好ましくは5300以下であり、特に好ましくは3800以下である。
【0085】
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(1a)式及び(1b)式である。
【0086】
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1a)
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1a)及び(1b)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0087】
(4) (2)式
本実施形態におけるはんだ合金は、下記(2)式を満たす必要がある。
【0088】
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0089】
As及びSbは含有量が多いと、はんだ合金の濡れ性が劣化する。一方、Bi及びPbは、Asを含有することによる濡れ性の劣化を抑制するが、含有量が多すぎるとΔTが上昇してしまうため、厳密な管理が必要である。特に、Bi及びPbを同時に含有する合金組成では、ΔTが上昇しやすい。これらを鑑みると、Bi及びPbの含有量を増加させて過度に濡れ性を向上させようとすると、ΔTが広がってしまう。一方、AsやSbの含有量を増加させて増粘抑制効果を向上させようとすると、濡れ性が劣化してしまう。そこで、本実施形態では、As及びSbのグループ、Bi及びPbのグループに分け、両グループの合計量が適正な所定の範囲内である場合に、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び濡れ性のすべてが同時に満たされるのである。
【0090】
(2)式が0.01未満であると、Bi及びPbの含有量の合計がAs及びSbの含有量の合計と比較して相対的に多くなるため、ΔTが広がってしまう。(2)式の下限は0.01以上であり、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.41以上であり、更に好ましくは0.90以上であり、特に好ましくは1.00以上であり、最も好ましくは1.40以上である。一方、(2)式が10.00を超えると、As及びSbの含有量の合計が、Bi及びPbの含有量の合計より相対的に多くなるため、濡れ性が劣化してしまう。(2)式の上限は10.00以下であり、好ましくは5.33以下であり、より好ましくは4.50以下であり、更に好ましくは2.67以下であり、更により好ましくは2.50以下であり、特に好ましくは2.30以下である。
【0091】
なお、(2)式の分母は「Bi+Pb」であり、これらを含有しないと(2)式が成立しない。すなわち、本実施形態におけるはんだ合金は、Bi及びPbの少なくとも一種を必ず含有することになる。Bi及びPbを含有しない合金組成は、前述のように、濡れ性が劣る。
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(2a)式である。
【0092】
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2a)
上記(2a)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0093】
(5) Ag:0〜4質量%及びCu:0〜0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種
Agは、結晶界面にAg
3Snを形成してはんだ合金の信頼性を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb及びBiと共存することにより、これらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量は、好ましくは0〜4質量%であり、より好ましくは0.5〜3.5質量%であり、更に好ましくは1.0〜3.0質量%である。
【0094】
Cuは、はんだ継手の接合強度を向上させることができる任意元素である。また、Cuはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb及びBiと共存することにより、これらの増粘抑制効果を助長する。Cu含有量は、好ましくは0〜0.9質量%であり、より好ましくは0.1〜0.8質量%であり、更に好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0095】
(6)残部:Sn
本実施形態におけるはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本発明では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても、前述の効果に影響することはない。Inは、含有量が多すぎるとΔTが広がるため、1000質量ppm以下であれば前述の効果に影響することはない。
【0096】
2.はんだ粉末
本実施形態におけるはんだ粉末は、JIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号1〜8を満たすサイズ(粒度分布)を満たしていることが好ましい。より好ましくは記号4〜8を満たすサイズ(粒度分布)であり、更に好ましくは記号5〜8を満たすサイズ(粒度分布)である。粒径がこの条件を満たすと、粉末の表面積が大きすぎず粘度の上昇が抑制され、また、微細粉末の凝集が抑制されて粘度の上昇が抑えられることがある。このため、より微細な部品へのはんだ付けが可能となる。
【0097】
フラックスの含有量:
フラックスの含有量は、はんだペーストの全質量に対して5〜95質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
はんだペースト中のフラックスの含有量がこの範囲であると、はんだ粉末に起因する増粘抑制効果が十分に発揮される。加えて、プリント基板及び電子部品の金属表面の腐食がより抑えられ、信頼性が高められる。
【0098】
本実施形態のはんだペーストは、更に、酸化ジルコニウム粉末を含有することが好ましい。酸化ジルコニウムを含有することにより、経時変化に伴うペーストの粘度上昇を抑制することができる。これは、酸化ジルコニウムを含有することにより、はんだ粉末表面の酸化膜厚がフラックス中に投入する前の状態を維持するためと推測される。詳細は不明であるが、以下のように推察される。通常、フラックスの活性成分は常温でもわずかに活性を持っているため、はんだ粉末の表面酸化膜が還元により薄くなり、粉末同士が凝集する原因になっている。そこで、はんだペーストに酸化ジルコニウム粉末を添加することで、フラックスの活性成分が酸化ジルコニウム粉末と優先的に反応し、はんだ粉末表面の酸化膜が凝集しない程度に維持されると推察される。
【0099】
このような作用効果を十分に発揮するために、はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の含有量は、はんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0質量%であることが好ましい。0.05質量%以上であると、上記作用効果を発揮することができ、20.0質量%以下であると、金属粉末の含有量を確保することができ、増粘防止効果を発揮することができる。酸化ジルコニウム粉末の含有量は、より好ましくは0.05〜10.0質量%であり、更に好ましい含有量は0.1〜3質量%である。
【0100】
はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の粒径は、5μm以下であることが好ましい。粒径が5μm以下であると、ペーストの印刷性を維持することができる。粒径の下限は特に限定されることはないが、0.5μm以上であればよい。
上記酸化ジルコニウム粉末の粒径は、酸化ジルコニウム粉末のSEM写真を撮影し、0.1μm以上の各粉末について画像解析により投影円相当径を求め、その平均値とする。
【0101】
酸化ジルコニウムの形状は、特に限定されないが、異形状であればフラックスとの接触面積が大きく増粘抑制効果がある。球形であると、良好な流動性が得られるためにペーストとしての優れた印刷性が得られる。所望の特性に応じて適宜形状を選択すればよい。
【0102】
はんだペーストの製造方法:
本実施形態のはんだペーストは、当業界で一般的な方法により製造される。
まず、はんだ粉末の製造は、溶融させたはんだ材料を滴下して粒子を得る滴下法や遠心噴霧する噴霧法、バルクのはんだ材料を粉砕する方法等、公知の方法を採用することができる。滴下法や噴霧法において、滴下や噴霧は、粒子状とするために不活性雰囲気や溶媒中で行うことが好ましい。そして、上記各成分を加熱混合してフラックスを調製し、フラックス中に上記はんだ粉末を導入し、撹拌、混合して製造することができる。
【0103】
<本実施の形態のフラックス及びはんだペーストの作用効果例>
本実施の形態においては、特定の割合でアガチン酸類を含むロジン化合物と、好ましくはチキソ剤及び溶剤と、を含むフラックスを採用するため、プリント基板及び電子部品の金属表面の腐食がより抑えられてはんだ付け性に優れ、かつ、信頼性が高められる。
加えて、かかるフラックスと、はんだ粉末としてSnとともに特定の元素(As、Pb並びにSb及びBiの少なくとも一種)を特定の割合で併用した合金組成を有するはんだ合金、を含むはんだ粉末と、を組み合わせたはんだペーストでは、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、濡れ性に優れ、高い機械的特性を示す。更には、このはんだペーストによれば、腐食性を低くでき、信頼性を高めることができる。
【0104】
本発明に係るはんだペーストを用いた接合方法は、例えばリフロー法を用いて常法に従って行えばよい。フローソルダリングを行う場合のはんだ合金の溶融温度は概ね液相線温度から20℃程度高い温度でよい。また、本実施の形態におけるはんだ合金を用いて接合する場合には、凝固時の冷却速度を考慮した方が組織の微細化の観点から好ましい。例えば2〜3℃/s以上の冷却速度ではんだ継手を冷却する。この他の接合条件は、はんだ合金の合金組成に応じて適宜調整することができる。
【0105】
本実施の形態におけるはんだ合金は、その原材料として低α線量材を使用することにより低α線量合金を製造することができる。このような低α線量合金は、メモリ周辺のはんだバンプの形成に用いられるとソフトエラーを抑制することが可能となる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0107】
[ロジン化合物の製造]
ロジン化合物(I)の製造:
ベトナム産水添ロジン200kgを減圧蒸留装置に仕込み、窒素シール下に200Paの減圧下において、250℃で3時間蒸留を行った。そして、初留分、主留分などの各留分を取り除き、減圧蒸留装置に残存したロジン化合物(IA)を得た。
次に、減圧蒸留装置内のロジン化合物(IA)にベトナム産水添ロジン100kgをさらに加え(再投入)、上記と同様の蒸留条件で3時間蒸留を行い、減圧蒸留装置に残存したロジン化合物(IB)を得た。そして、液相温度235℃以上260℃以下の留分を取り出し、最終精製物であるロジン(I)を得た。
【0108】
ロジン化合物(II)の製造:
上記「ロジン化合物(I)の製造」と同様の蒸留を3回繰り返して行い(すなわち、水添ロジンの再投入、蒸留、水添ロジンの再投入、蒸留を繰り返して、釜残のアガチン酸を濃縮)、最終精製物であるロジン化合物(II)を得た。
【0109】
ロジン化合物(III)の製造:
上記「ロジン化合物(I)の製造」と同様の蒸留を5回繰り返して行い、最終精製物であるロジン化合物(III)を得た。
【0110】
ロジン化合物(IV)の製造:
上記「ロジン化合物(I)の製造」と同様の蒸留を7回繰り返して行い、最終精製物であるロジン化合物(IV)を得た。
【0111】
ロジン化合物(V)の製造:
上記「ロジン化合物(I)の製造」におけるロジン化合物(IA)を、ロジン化合物(V)として用いた。
【0112】
そして、得られたロジン化合物(I)〜(V)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置を用い、分子量を測定することにより、各ロジン化合物に含まれる成分の分析を行った。この評価結果を以下の表1に示す。
なお、表1中の各成分の数値は、ロジン化合物全体の質量に対する各成分の質量%を表す。
【0113】
【表1】
【0114】
[フラックスの調製]
ロジン化合物としてロジン化合物(I)25質量部と、チキソ剤であるアミド化合物としてポリアミド6質量部と、溶剤としてテトラエチレングリコールモノメチルエーテル69質量部と、を混合してフラックス(実施例1に示す組成からなるフラックス)を調製した。
【0115】
また、表2〜10に示す通り、前記の実施例1と同様にして、各成分を混合することにより、実施例2〜50及び比較例1〜3に示す各組成からなるフラックスをそれぞれ調製した。
【0116】
なお、表2〜10における組成は、フラックスの全量を100質量%とした場合の質量%である。
表中、ポリアミドとして脂肪族ポリアミドを用いた。ビスアミドとしてヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドを用いた。モノアミドとしてp−トルアミドを用いた。
【0117】
次に、表2〜10に示す各例のフラックスを用いた場合について、フラックスの酸価(mgKOH/g)の測定を行い、はんだ付け性の評価を行った。また、フラックスの水溶液比抵抗(電気抵抗率)(Ω・m)の測定を行い、信頼性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0118】
<はんだ付け性の評価>
(1)検証方法
表2〜10に示す各例のフラックスについて、JIS Z 3197:2012に基づいて酸価(mgKOH/g)を測定した。そして、以下の判定基準に従って、はんだ付け性の評価を行った。
【0119】
(2)判定基準
○:フラックスの酸価が50mgKOH/g以上であり、十分な活性を有する。
×:フラックスの酸価が50mgKOH/g未満であり、活性が不十分である。
はんだペーストにおいて、フラックスの酸価が高くなるほど、金属表面を清浄化する作用が強くなり、はんだ付け性が良いことを意味する。
【0120】
<信頼性の評価>
(1)検証方法
表2〜10に示す各例のフラックスについて、JIS Z 3197:2012に基づいて水溶液比抵抗(電気抵抗率)(Ω・m)を測定した。そして、以下の判定基準に従って、信頼性の評価を行った。
【0121】
(2)判定基準
○○:フラックスの水溶液比抵抗が1000Ω・m以上である。
○:フラックスの水溶液比抵抗が500Ω・m以上1000Ω・m未満である。
×:フラックスの水溶液比抵抗が500Ω・m未満である。
はんだペーストにおいて、フラックスの水溶液比抵抗が高くなるほど、金属表面の腐食抑制効果が強くなり、信頼性が高いことを意味する。
【0122】
<総合評価(1)>
〇:表2〜10において、はんだ付け性、信頼性の各評価が、いずれも〇である。
×:表2〜10において、はんだ付け性、信頼性の各評価の各評価のうち、少なくとも1つが×である。
【0123】
評価した結果を表2〜10に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
【表9】
【0132】
【表10】
【0133】
実施例1に示す組成からなるフラックスを用いた場合、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
これらの結果から、実施例1に示す組成からなるフラックスと、後述の試験例1〜108に示す各合金組成からなるはんだ粉末のそれぞれと、を混合(はんだ粉末:フラックス=89:11(質量比))することにより、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、濡れ性に優れ、高い機械的特性を有するとともに、はんだ付け性に優れ、かつ、信頼性が高められたはんだペーストを調製できると言える。
【0134】
実施例2〜4に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、チキソ剤であるアミド化合物の種類を変える、複数種類のアミド化合物を組み合わせることでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0135】
実施例5に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、複数種類のアミド化合物を組み合わせる、エステル化合物を含むことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0136】
実施例6に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、複数種類のアミド化合物を組み合わせる、エステル化合物を含む、溶剤の種類を変えることでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0137】
実施例7〜8に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)の量を増減することでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0138】
実施例9〜12に示すように、ロジン化合物の種類を変える、複数種類のロジン化合物を組み合わせることでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0139】
実施例13〜15に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸を含む、チキソ剤であるアミド化合物の量を増やすことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0140】
実施例16〜20に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸の種類を変える、複数種類の有機酸を組み合わせる、有機酸の量を変えることでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0141】
実施例21、22に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸を含む、アミンを含むことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0142】
実施例23、24に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸を含む、ハロゲン系活性剤を含むことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0143】
実施例25に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸を含む、酸化防止剤を含むことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0144】
実施例26に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸の量を減らしても、アミンを含む、ハロゲン系活性剤を含む、酸化防止剤を含むことにより、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0145】
実施例27、28に示すように、有機酸を含み、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)の量を変えても、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0146】
実施例29〜33に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、エステル化合物を含み、有機酸の種類を変える、複数種類の有機酸を組み合わせる、有機酸の量を変えることでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0147】
実施例34、35に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、エステル化合物を含み、有機酸を含み、アミンを含むことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0148】
実施例36、37に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、エステル化合物を含み、有機酸を含み、ハロゲン系活性剤を含むことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0149】
実施例38に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、エステル化合物を含み、有機酸を含み、酸化防止剤を含むことでも、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0150】
実施例39に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、エステル化合物を含み、有機酸の量を減らしても、アミンを含み、ハロゲン系活性剤を含み、更に酸化防止剤を含むことにより、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0151】
実施例40、41に示すように、有機酸を含み、エステル化合物を含み、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)の量を変えても、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0152】
実施例42に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸を含み、エステル化合物を含み、アミド化合物の量を増やしても、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0153】
実施例43〜46に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸を含み、エステル化合物を含み、アミド化合物の量を減らしても、エステル化合物の量を増やすことにより、フラックスのチキソ性、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0154】
実施例47に示すように、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含み、有機酸を含み、チキソ剤であるアミド化合物の量を増やしても、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0155】
実施例48、49に示すように、有機酸を含み、チキソ剤であるアミド化合物の含有量を減らしても、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含むことにより、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0156】
実施例50に示すように、有機酸を含み、エステル化合物を含み、本発明で規定された範囲内のロジン化合物(I)を含むことにより、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られた。
【0157】
これに対して、比較例1に示すように、アガチン酸類の含有量が本発明で規定された範囲外であるロジン化合物(V)を含むことにより、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られなかった。
【0158】
また、比較例2に示すように、本発明で規定された範囲内でロジン化合物を含まないと、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して十分な効果が得られなかった。
【0159】
また、比較例3との対比より、本発明を適用したフラックスにおいては、有機酸がより少ない量で、金属表面の清浄化、及び金属表面の腐食抑制効果のいずれに対しても十分な効果が得られることが確認された。
【0160】
以上説明したように、実施例1〜50に示す組成からなるフラックスを用いた場合、金属表面の清浄化、金属表面の腐食抑制効果に対して、いずれも十分な効果が得られた。
【0161】
[はんだペーストの製造]
表11〜16に示す合金組成からなり、JIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号4を満たすサイズ(粒度分布)のはんだ粉末(試験例1〜108、試験例201〜278)を作製した。
但し、試験例1、5〜11、13〜15、18、19、23〜29、31〜33、36、37、41〜47、49〜51、54、55、59〜65、67〜69、72、73、77〜83、85〜87、90、91、95〜101、103〜105、108のはんだ粉末が、上述した「はんだ粉末(Sp)」に該当するものである。
【0162】
前記の、実施例21に示す組成からなるフラックスと、表11〜16に示す各例の合金組成からなるはんだ粉末と、を混合して、はんだペーストを作製した。フラックスとはんだ粉末との質量比は、フラックス:はんだ粉末=11:89とした。
【0163】
各例のはんだ粉末を用いた場合について、はんだペーストにおける粘度の経時変化を測定した。また、はんだ粉末の液相線温度及び固相線温度を測定した。更に、作製直後のはんだペーストを用いて濡れ性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0164】
<はんだペーストにおける粘度の経時変化の評価>
(1)検証方法
作製直後の各はんだペーストについて、株式会社マルコム社製:PCU−205を用い、回転数:10rpm、25℃、大気中で12時間粘度を測定した。
【0165】
(2)判定基準
A:12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍以下である。
B:12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍を超える。
【0166】
<ΔTの評価>
(1)検証方法
フラックスと混合する前のはんだ粉末について、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:EXSTAR DSC7020を用い、サンプル量:約30mg、昇温速度:15℃/minにてDSC測定を行い、固相線温度及び液相線温度を得た。得られた液相線温度から固相線温度を引いてΔTを求めた。
【0167】
(2)判定基準
A:ΔTが10℃以下である。
B:ΔTが10℃を超える。
【0168】
<濡れ性の評価>
作製直後の各はんだペーストをCu板上に印刷し、リフロー炉でN
2雰囲気中、1℃/sの昇温速度で25℃から260℃まで加熱した後、室温まで冷却した。冷却後のはんだバンプの外観を光学顕微鏡で観察することで濡れ性を評価した。
【0169】
A:溶融しきれていないはんだ粉末が観察されない場合。
B:溶融しきれていないはんだ粉末が観察された場合。
【0170】
<総合評価(2)>
A:表11〜16において、経時変化、ΔT、濡れ性の各評価が、いずれも〇である。
B:表11〜16において、経時変化、ΔT、濡れ性の各評価のうち、少なくとも1つが×である。
【0171】
評価した結果を表11〜16に示す。
【0172】
【表11】
【0173】
【表12】
【0174】
【表13】
【0175】
【表14】
【0176】
【表15】
【0177】
【表16】
【0178】
表11〜16に示すように、試験例1〜108のはんだ粉末を用いた場合、いずれの合金組成においても、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことが確認された。
【0179】
これに対して、試験例201、214、227、240、253及び266のはんだ粉末を用いた場合、Asを含有しないため、増粘抑制効果が発揮されない結果を示した。
【0180】
試験例202、215、228、241、254及び267のはんだ粉末を用いた場合、(1)式が下限未満であるため、増粘抑制効果が発揮されない結果を示した。
【0181】
試験例203、216、229、242、255及び268のはんだ粉末を用いた場合、(2)式が上限を超えるため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0182】
試験例204、205、217、218、230、231、243、244、256、257、269及び270のはんだ粉末を用いた場合、As含有量及び(2)式が上限を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0183】
試験例206〜208、219〜221、232〜234、245〜247、258〜260及び271〜273のはんだ粉末を用いた場合、Sb含有量が上限を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0184】
試験例209、210、222、223、235、236、248、249、261、262、274及び275のはんだ粉末を用いた場合、Bi含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0185】
試験例211、213、224、226、237、239、250、252、263、265、276及び278のはんだ粉末を用いた場合、Pb含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0186】
試験例212、225、238、251、264及び277のはんだ粉末を用いた場合、Bi及びPbを含有せず(2)式が成立しなかったため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0187】
また、実施例1〜20、22〜50に示す各組成からなるフラックスと、試験例1〜108に示す各合金組成からなるはんだ粉末と、をそれぞれ混合(はんだ粉末:フラックス=89:11(質量比))して作製したはんだペーストの場合も、実施例21に示す組成からなるフラックスを用いたはんだペーストの場合と同様、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことが確認された。
【0188】
これらの結果から、実施例1〜50に示す各組成からなるフラックスのそれぞれと、試験例1〜108に示す各合金組成からなるはんだ粉末のそれぞれと、を混合することにより、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、濡れ性に優れ、高い機械的特性を有するとともに、はんだ付け性に優れ、かつ、信頼性が高められたはんだペーストを調製できると言える。
【0189】
また、上述した各評価において、フラックスに配合したロジン化合物(I)〜(V)を、ベトナム産ロジン(未水添ロジン)から製造したロジン化合物、に変更した場合の各評価においても、ロジン化合物(I)〜(V)を配合した場合と同様の結果が得られた。
【解決手段】フラックスは、アガチン酸類の含有割合が高い新規なロジン化合物を含有し、好ましくは、チキソ剤及び溶剤を更に含有する。はんだペーストは、新規なロジン化合物を含むフラックスと、特定のはんだ粉末とを含有する。はんだ粉末は、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnの合金組成を有し、(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含む。