特許第6774021号(P6774021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6774021フレキシブル探触子の感度校正方法及び超音波探傷用対比試験片並びに超音波探傷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774021
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】フレキシブル探触子の感度校正方法及び超音波探傷用対比試験片並びに超音波探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/30 20060101AFI20201012BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20201012BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20201012BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G01N29/30
   G01N29/265
   G01N29/48
   G01N29/24
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-197187(P2016-197187)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-59800(P2018-59800A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】田村 尚之
(72)【発明者】
【氏名】春田 瑛介
(72)【発明者】
【氏名】畠中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】辻 達夫
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−224232(JP,A)
【文献】 特開2016−090272(JP,A)
【文献】 実開平06−040856(JP,U)
【文献】 実開昭56−105838(JP,U)
【文献】 特開昭63−059200(JP,A)
【文献】 特開2013−168573(JP,A)
【文献】 特開2004−333387(JP,A)
【文献】 米国特許第04462082(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 − G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子を有するフレキシブル探触子を被試験体の曲面に沿って接触配置して超音波探傷を行う際のフレキシブル探触子の感度校正方法であって、
断面が互いに相似する複数の曲面と、前記複数の曲面毎に設定された領域内における該曲面から互いに深さが異なる部位に位置する複数の孔を有する超音波探傷用対比試験片を製作し、
該超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面毎に前記フレキシブル探触子の前記複数の振動子を沿わせて接触配置して超音波の送受信を行い、
前記複数の孔の深さを横軸とすると共に前記複数の孔からのエコー強度を縦軸とした距離振幅特性曲線によるエコー高さ区分線を前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面それぞれに対して作成し、
前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面のうちの前記被試験体の前記曲面と同じ形状の曲面に対して作成されたエコー高さ区分線乃至は近似する形状の曲面に対して作成したエコー高さ区分線を前記距離振幅特性曲線による前記被試験体の前記曲面のエコー高さ区分線として設定するフレキシブル探触子の感度校正方法。
【請求項2】
前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面が互いに曲率半径の異なる円弧状の曲面であり、前記被試験体の前記曲面における曲率半径の値が前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面のうちの近似する2つの曲面における各曲率半径の間の値である場合には、前記2つの曲面に対してそれぞれ作成された前記距離振幅特性曲線によるエコー高さ区分線間を線形に補間するエコー高さ区分線を作成して、前記被試験体の前記曲面のエコー高さ区分線として設定する請求項1に記載のフレキシブル探触子の感度校正方法。
【請求項3】
前記被試験体の前記曲面が隅肉溶接における余盛の曲面である請求項1又は2に記載のフレキシブル探触子の感度校正方法。
【請求項4】
複数の振動子を被試験体の曲面に沿って接触配置して超音波探傷を行うフレキシブル探触子の感度校正で用いる超音波探傷用対比試験片であって、
断面形状が互いに相似する複数の曲面と、
前記複数の曲面毎に設定された領域内における該曲面から互いに深さが異なる部位に位置する複数の孔を有する超音波探傷用対比試験片。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル探触子の感度校正方法で超音波探傷時における感度の調整が成された前記フレキシブル探触子を用いて前記被試験体の超音波探傷を行うに際して、
前記被試験体の前記曲面に前記フレキシブル探触子の前記複数の振動子を沿わせて接触配置すると共に該フレキシブル探触子を前記曲面に沿って移動させつつ超音波の送受信を行い、
前記被試験体のきずからのエコー強度が前記被試験体の前記曲面用に設定された前記距離振幅特性曲線による検出判定基準線を越える範囲をきず指示長さとして判定する超音波探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の振動子を有するフレキシブル探触子を被試験体の曲面に沿って接触配置して超音波探傷を行うに際して、フレキシブル探触子の探傷感度を調整するのに用いられるフレキシブル探触子の感度校正方法及び超音波探傷用対比試験片並びに超音波探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非破壊検査の1つとして、超音波を用いた探傷試験が従来から行われている。被試験体内に入射した超音波は、進む距離(ビーム路程)が長くなるにつれて減衰する。つまり、被試験体内に同じ大きさのきずが複数存在する場合には、超音波探触子からの距離が遠いきずの信号強度は距離が近いきずよりも小さくなる。したがって、超音波探傷を行う場合には、超音波の距離による減衰を考慮した超音波探触子の探傷感度の調整(感度校正)が必要になる。
【0003】
従来における感度校正方法としては、JIS-Z 3060に記載された超音波探傷用対比試験片を用いる感度校正方法がある。
【0004】
この感度校正方法は、まず、被試験体の板厚に合わせた超音波探傷用対比試験片を選択する。そして、この超音波探傷用対比試験片に設置された複数の横孔のうちのエコー強度(横孔で反射して戻る超音波の信号強度)が最大になる横孔を特定し、この横孔のエコー強度が80%になるように感度を調整して基準感度とする。次いで、この感度で他の横孔のエコー強度を測定して、距離振幅特性曲線(Distance amplitude curve:DAC)を作成するようにしている。
【0005】
ここで、距離振幅特性曲線とは、超音波が被試験体中を進む距離によって、エコー高さが変化する程度を示す曲線であり、同じ大きさのきずであればその部位にかかわらず同じように評価できるようにするためのものである。
【0006】
この後、感度校正方法によって探傷感度の調整が成された超音波探触子を用いて被試験体に対する超音波探傷を行う場合には、被試験体に超音波探触子を接触配置して移動させつつ超音波の送受信を行い、距離振幅特性曲線による検出判定基準線(例えば、エコー強度が最大になる横孔の25%レベル)を越える範囲をきず指示長さとして検出する。
なお、上記感度校正方法における超音波探傷用対比試験片を用いた感度調整や距離振幅特性曲線の作成に関しては、例えば、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日刊工業新聞 2013年11月26日発行 「絵とき 超音波探傷 基礎のきそ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年において、曲面を有する被試験体に対して超音波探傷を行うべく、複数の振動子を有するフレキシブル探触子を用いた超音波探傷方法が検討されている。
【0009】
ここで、フレキシブル探触子は、帯状のフレキシブル基板と、このフレキシブル基板に並べて配置される複数の振動子を備えている。フレキシブル基板は、主として高分子材料から成る可撓性又は柔軟性を有するもので、被試験体上において曲面に合わせて変形することで、複数の振動子を被試験体の曲面に沿って接触配置させることができる。
なお、フレキシブル基板はシート状を成すものであってもよい。
【0010】
しかしながら、このようなフレキシブル探触子の感度校正方法は未だ確立されておらず、JIS-Z 3060に記載された超音波探傷用対比試験片を用いて行っているのが現状である。
【0011】
したがって、フレキシブル探触子に適した感度校正を行い得る感度校正方法の構築が待ち望まれており、これを解決することが従来の課題となっていた。
【0012】
本発明は、上述した課題に着目してなされたものであり、曲面を有する被試験体に対して超音波探傷を実施し得るフレキシブル探触子に最適な感度調整を行うことが可能であるフレキシブル探触子の感度校正方法及び超音波探傷用対比試験片並びに超音波探傷方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、複数の振動子を有するフレキシブル探触子を被試験体の曲面に沿って接触配置して超音波探傷を行う際のフレキシブル探触子の感度校正方法であって、断面が互いに相似する複数の曲面と、前記複数の曲面毎に設定された領域内における該曲面から互いに深さが異なる部位に位置する複数の孔を有する超音波探傷用対比試験片を製作し、該超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面毎に前記フレキシブル探触子の前記複数の振動子を沿わせて接触配置して超音波の送受信を行い、前記複数の孔の深さを横軸とすると共に前記複数の孔からのエコー強度を縦軸とした距離振幅特性曲線によるエコー高さ区分線を前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面それぞれに対して作成し、前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面のうちの前記被試験体の前記曲面と同じ形状の曲面に対して作成されたエコー高さ区分線乃至は近似する形状の曲面に対して作成したエコー高さ区分線を前記距離振幅特性曲線による前記被試験体の前記曲面のエコー高さ区分線として設定する構成としている。
【0014】
本発明の第2の態様において、前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面が互いに曲率半径の異なる円弧状の曲面であり、前記被試験体の前記曲面における曲率半径の値が前記超音波探傷用対比試験片の前記複数の曲面のうちの近似する2つの曲面における各曲率半径の間の値である場合には、前記2つの曲面に対してそれぞれ作成された前記距離振幅特性曲線によるエコー高さ区分線間を線形に補間するエコー高さ区分線を作成して、前記被試験体の前記曲面のエコー高さ区分線として設定する構成としている。
【0015】
本発明の第3の態様において、前記被試験体の前記曲面が隅肉溶接における余盛の曲面である構成としている。
【0016】
本発明の第4の態様は、複数の振動子を被試験体の曲面に沿って接触配置して超音波探傷を行うフレキシブル探触子の感度校正で用いる超音波探傷用対比試験片であって、断面形状が互いに相似する複数の曲面と、前記複数の曲面毎に設定された領域内における該曲面から互いに深さが異なる部位に位置する複数の孔を有する構成としている。
【0017】
本発明の第5の態様は、請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル探触子の感度校正方法で超音波探傷時における感度の調整が成された前記フレキシブル探触子を用いて前記被試験体の超音波探傷を行うに際して、前記被試験体の前記曲面に前記フレキシブル探触子の前記複数の振動子を沿わせて接触配置すると共に該フレキシブル探触子を前記曲面に沿って移動させつつ超音波の送受信を行い、前記被試験体のきずからのエコー強度が前記被試験体の前記曲面用に設定された前記距離振幅特性曲線による検出判定基準線を越える範囲をきず指示長さとして判定する構成としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るフレキシブル探触子の感度校正方法によれば、曲面を有する被試験体に超音波探傷を実施し得るフレキシブル探触子に対して最適な感度調整を行うことが可能であるという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブル探触子の感度校正方法で感度調整されたフレキシブル探触子による超音波探傷要領を示す概略説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係るフレキシブル探触子の感度校正方法で用いられる超音波探傷用対比試験片の一形態例を示す全体斜視説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係るフレキシブル探触子の感度校正方法により超音波探傷用対比試験片の複数の曲面毎に作成したエコー高さ区分線を示す距離振幅特性曲線図である。
図4】本発明の一実施形態に係る超音波探傷方法のきず指示長さを検出する一実施要領を示す検出判定基準図(a)〜(c)である。
図5】本発明に係るフレキシブル探触子の感度校正方法で用いられる超音波探傷用対比試験片の他の形態例を示す側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るフレキシブル探触子の感度校正方法及び超音波探傷用対比試験片並びに超音波探傷方法を図面に基づいて説明する。
図1図4は、本発明に係るフレキシブル探触子の感度校正方法及び超音波探傷用対比試験片並びに超音波探傷方法の一実施形態を示しており、この実施形態では、超音波探傷を実施する被試験体が、隅肉溶接における円弧状曲面を有する余盛の部分である場合を例に挙げて説明する。
【0021】
この実施形態で例示する被試験体は、図1に示すように、底板Whに側板Wsを隅肉溶接により接合する際の余盛(溶接金属)Weの部分である。そして、被試験体の曲面は、余盛Weの溶接方向に沿う断面が円弧状の凹曲面Waであり、この余盛Weの凹曲面Waには、底板Wh及び側板Wsとの各境目部分が含まれる。
【0022】
このような余盛Weの部分に超音波探傷を実施するのに用いるフレキシブル探触子1は、図外のパルス送受信器と接続するコネクタ部11と、複数の振動子12と、これらの振動子12を直線状に並べて保持するベルト(帯状の基板)13を備えている。このベルト13に保持される複数の振動子12は、超音波探傷時において、図示しないグリセリンペーストやマシン油等の接触媒質を介して余盛Weの凹曲面Waの円弧に沿うようにして接触配置される。
なお、図1における大小多数の円は、複数の振動子12から発せられる超音波の広がりの一部を示している。
【0023】
超音波が余盛We内を進むにしたがって減衰することを考慮して、フレキシブル探触子1の探傷感度の調整(感度校正)を行う必要がある。フレキシブル探触子1の探傷感度を調整するに際しては、まず、図2に示すように、直方体形状の超音波探傷用対比試験片20(以降、対比試験片20と呼称する。)を製作する。
【0024】
この場合、対比試験片20の上面20aには、長手方向(図2左右方向)に沿って3つの溝21,22,23が互いに並行に並べて形成されている。これらの溝21,22,23の各内面はいずれも断面が円弧状の凹曲面21a,22a,23aであり、互いに曲率半径を違えて形成されている。凹曲面21a,22a,23aの各曲率半径はそれぞれR10,R15,R20であり、対比試験片20の上面20aから凹曲面21a,22a,23aの各最下点までの距離はいずれも10mmとなっている。
【0025】
また、対比試験片20の断面が互いに相似する3つの溝21,22,23毎に設定された近傍領域内には、口径φ3mmの幅方向(図2奥行方向)に沿う横孔21b,22b,23bが複数個ずつ配置されている。例えば、溝21近傍の複数個の横孔21bは、凹曲面21aから互いに深さが異なる部位に位置しており、この実施形態において、横孔21bは、凹曲面21aから4mm、8mm、12mm、16mm、20mm離れた部位に合計5個配置されている。溝22,23近傍の各横孔22b,23bも、溝21近傍の横孔21bと同様にして5個ずつ配置されている。
【0026】
なお、対比試験片20の材質は特に限定しないが、音響特性を考慮して被試験体である余盛Weの部分と同じか同等の材質から成るものとすることが望ましい。
【0027】
次いで、対比試験片20の3つの溝21,22,23毎において、各々の凹曲面21a,22a,23aに、図2に仮想線で示すように、フレキシブル探触子1の複数の振動子12を沿わせて、図示しないグリセリンペーストやマシン油等の接触媒質を介して接触配置して超音波の送受信を行う。
【0028】
そして、図3に示すように、複数の横孔21b,22b,23bのうちのエコー強度が最大になる横孔、この実施形態では溝23のR20の凹曲面23aから12mm離れた部位に位置する横孔23bを特定し、この横孔23bのエコー強度が予め設定した割合になるように感度を調整して基準感度とする。
【0029】
次に、この基準感度に基づいて、複数の横孔21b,22b,23bの深さ(横孔までの距離)を横軸とすると共に複数の横孔21b,22b,23bからのエコー強度を縦軸とした距離振幅特性曲線を作成し、この距離振幅特性曲線によるエコー高さ区分線を対比試験片20の3つの溝21,22,23における各凹曲面21a,22a,23a毎にそれぞれ作成する。
【0030】
ここで、この実施形態に係る対比試験片20と同じ縦横幅寸法で、且つ、同じ材質の対比試験片(図示せず)を製作した。また、この対比試験片に、口径φ3mmの横孔を対比試験片20の横孔21bと同じ位置に同数配置した。
この対比試験片の平らな上面にフレキシブル探触子1を接触配置して超音波の送受信を行い、これで取得したR0のエコー高さ区分線を参考に示す。
【0031】
続いて、対比試験片20の3つの溝21,22,23における各凹曲面21a,22a,23aの中に、余盛Weの凹曲面Waと同じ曲率半径の凹曲面(例えば凹曲面21a)がある場合には、この凹曲面21aに対して作成されたR10のエコー高さ区分線を距離振幅特性曲線による余盛Weの凹曲面Waのエコー高さ区分線として設定する。
【0032】
このとき、対比試験片20の3つの溝21,22,23における各凹曲面21a,22a,23aの中に、余盛Weの凹曲面Waと同じ曲率半径の凹曲面がない場合には、凹曲面Waに近似する曲率半径の凹曲面(例えば凹曲面22a又は凹曲面23a)に対して作成されたいずれかのエコー高さ区分線に近似するエコー高さ区分線を距離振幅特性曲線による余盛Weの凹曲面Waのエコー高さ区分線として設定する。
【0033】
具体的には、余盛Weの凹曲面Waの曲率半径がR17.5である場合には、まず、この凹曲面Waの曲率半径に近似する曲率半径R15の凹曲面22aに対して距離振幅特性曲線によるR15のエコー高さ区分線を作成する。
次いで、凹曲面Waの曲率半径に近似する曲率半径R20の凹曲面23aに対して距離振幅特性曲線によるR20のエコー高さ区分線を作成する。
そして、距離振幅特性曲線によるR15及びR20の各エコー高さ区分線間を線形に補間するR17.5のエコー高さ区分線を作成して、これを余盛Weの凹曲面Waのエコー高さ区分線として設定する。
【0034】
このように、上記した実施形態に係るフレキシブル探触子の感度校正方法では、被試験体である余盛Weの凹曲面Waの形状に近似する3つの凹曲面21a,22a,23aを有する対比試験片20を用いて、フレキシブル探触子1の探傷感度の調整を行うようにしている。
【0035】
したがって、余盛Weの凹曲面Waと同じ曲率半径の凹曲面が対比試験片20にある場合には勿論のこと、余盛Weの凹曲面Waと同じ曲率半径の凹曲面が対比試験片20にない場合であったとしても、余盛Weの凹曲面Waに超音波探傷を実施するフレキシブル探触子1に適した感度調整を行い得ることとなる。
【0036】
次に、上記したフレキシブル探触子の感度校正方法で超音波探傷時における感度の調整が成されたフレキシブル探触子1を用いて、余盛Weに対して超音波探傷を行う要領を説明する。
【0037】
まず、余盛Weの凹曲面Waに、フレキシブル探触子1を配置する。この際、図1に示すように、ベルト13に保持される複数の振動子12は、図示しないグリセリンペーストやマシン油等の接触媒質を介して余盛Weの凹曲面Waの円弧に沿うようにして接触配置される。
【0038】
この後、フレキシブル探触子1による超音波の送受信を開始し、超音波を送受信しながら余盛Weの凹曲面Waに配置したフレキシブル探触子1を凹曲面Waに沿って平行に移動させる(左右に走査する)。
【0039】
そして、図4(a)に示すように、上記したフレキシブル探触子の感度校正方法において余盛Weの凹曲面Wa用に設定された検出判定基準線Sをエコー強度が越えた場合には、このエコー強度が越えた図1のI点を深さ10mm弱の位置にあるきずFの一方の端部とする。
【0040】
この際、距離振幅特性曲線による検出判定基準線Sは、例えば、余盛Weの凹曲面Wa用に設定されたR17.5のエコー高さ区分線におけるエコー強度の25%レベル付近に設定される。
【0041】
次いで、図4(b)に示すように、エコー強度が検出判定基準線Sを大きく越える図1のII点を経て、図4(c)に示すように、再びエコー強度が検出判定基準線Sを僅かに越える図1のIII点をきずFの他方の端部とし、図1のI点からIII点までの範囲をきずFの指示長さとする(きずFの指示深さは10mm弱)。
【0042】
このように、上記した実施形態に係る超音波探傷方法では、凹曲面Waを有する余盛Weに対して、感度調整が良好になされたフレキシブル探触子1によって超音波探傷を実施するので、余盛Weに生じているきずの検出精度が向上すると共に、きずの大きさの的確な評価を行い得ることとなる。
【0043】
上記した実施形態に係るフレキシブル探触子の感度校正方法では、対比試験片20が、互いに相似する3つの凹曲面21a,22a,23aと、これらの凹曲面21a,22a,23a毎に各近傍に配置された複数の横孔21b,22b,23bを有する構成としているが、これに限定されるものではない。
【0044】
他の構成として、例えば、図5に示すように、対比試験片30が、3つの突条31,32,33の互いに相似するR150,R100,R50の凸曲面31a,32a,33aと、これらの凸曲面31a,32a,33a毎に設定された領域内における該凸曲面31a,32a,33aから互いに深さが異なる部位に配置された複数の横孔31b,32b,33bを有する構成としてもよい。
【0045】
また、上記した実施形態に係るフレキシブル探触子の感度校正方法では、被試験体の前記曲面が隅肉溶接における余盛の曲面である場合を示したが、これに限定されるものではなく、被試験体の前記曲面が摩擦攪拌接合におけるビードの曲面であってもよい。
【0046】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 フレキシブル探触子
12 振動子
20,30 対比試験片(超音波探傷用対比試験片)
21a,22a,23a 凹曲面(曲面)
21b,22b,23b 横孔(孔)
31a,32a,33a 凸曲面(曲面)
31b,32b,33b 横孔(孔)
F きず
S 検出判定基準線
Wa 凹曲面(曲面)
We 余盛(被試験体)
図1
図2
図3
図4
図5