特許第6774029号(P6774029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000002
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000003
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000004
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000005
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000006
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000007
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000008
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000009
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000010
  • 特許6774029-ガラス樹脂積層体 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774029
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ガラス樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   B32B17/10
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-79586(P2017-79586)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-176551(P2018-176551A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】磯本 武彦
(72)【発明者】
【氏名】野崎 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 義雄
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/098769(WO,A1)
【文献】 特開昭63−147844(JP,A)
【文献】 特開2008−303084(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157610(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/174956(WO,A1)
【文献】 特開2016−210034(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143636(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
C03C 27/00 − 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、ガラスシートと、前記ガラスシートと前記樹脂層とを接合する接着層と、前記接着層の内部に介在する機能性フィルムと、を備えるガラス樹脂積層体において、
前記接着層は、前記樹脂層と前記機能性フィルムとの間に位置する第一の部分と、前記ガラスシートと前記機能性フィルムとの間に位置する第二の部分と、前記第一の部分の端部と前記第二の部分の端部とを融合してなる融合部と、を備え
前記ガラスシートの面積は、前記樹脂層の面積よりも小さく設定されており、
前記ガラスシートの端部は、前記樹脂層の端部よりも内側に位置しており、
前記融合部は、前記樹脂層の前記端部と前記ガラスシートの前記端部との間で露出して前記ガラスシートの前記端部を覆っていることを特徴とするガラス樹脂積層体。
【請求項2】
前記機能性フィルムの面積は、前記ガラスシートの面積よりも小さく設定されており、
前記機能性フィルムの端部は、前記ガラスシートの前記端部よりも内側に配される請求項1に記載のガラス樹脂積層体。
【請求項3】
前記樹脂層は、第一の面と第二の面とを含み、
前記ガラスシートは、前記第一の面に積層される第一ガラスシートと、前記第二の面に積層される第二ガラスシートとを含み、
前記接着層は、前記第一ガラスシートを前記第一の面に接合する第一接着層と、前記第二ガラスシートを前記第二の面に接合する第二接着層とを含み、
前記機能性フィルムは、前記第一接着層と前記第二接着層の少なくとも一方の内部に介在する請求項1又は2に記載のガラス樹脂積層体。
【請求項4】
前記機能性フィルムは、前記第一接着層の内部に介在する第一機能性フィルムと、前記第二接着層の内部に介在する第二機能性フィルムとを含む請求項に記載のガラス樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスシートと樹脂層とを積層してなるガラス樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラスは、耐候性、耐薬品性、耐擦傷性に優れる反面、物理衝撃や熱衝撃に対し、破損しやすいという欠点を有する。この欠点を解消するため、例えば、ガラスシートの一方の面又は両面に樹脂層を貼り合わせたガラス樹脂積層体が提案されている。樹脂は、ガラスと比較して、耐候性、耐薬品性、耐擦傷性に劣る反面、ガラスよりも比重が小さく、物理衝撃にも強いという利点がある。そのため、ガラス樹脂積層体においては、ガラスシートと樹脂層の各々における短所を、各々の長所によって補うことが可能となると共に、同じ板厚を有するガラスシートに比べて、大幅な軽量化を図ることができる。
【0003】
さらに近年では、ガラスシートと樹脂層との間に機能性膜を介在させることで、種々の用途に適した機能を発揮するガラス樹脂積層体も開発されている。例えば特許文献1には、樹脂層の両面に接着層を介してガラスシートが積層一体化され、樹脂層の少なくとも片面側において、接着層中に中間シートが設けられてなるガラス樹脂積層体が開示されている。このガラス樹脂積層体における中間シートは、赤外線遮蔽機能、電磁波遮蔽機能、意匠性等の様々な機能を有する。
【0004】
上記ガラス樹脂積層体の具体的構成について図10を参照しながら説明する。図10に示すガラス樹脂積層体101は、樹脂層102と、ガラスシート103と、接着層104と、中間シート(機能性フィルム)105とを備える。接着層104は、シート状に構成れる第一の部分104a及び第二の部分104bを備える。中間シート105は、これら第一の部分104aと第二の部分104bとの間に配される。また、中間シート105は、樹脂層102及びガラスシート103と同じ寸法を有しており、その端面105aが露出した状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−117191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように中間シート105の端面105aが露出していると、大気中の水分による影響を受け、或いはこの端面105aの損傷によって、中間シート105の機能喪失や端面105aを基点として中間シート105の剥離を招くおそれがある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、ガラス樹脂積層体に含まれる機能性フィルムの機能喪失や剥離を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、 樹脂層と、ガラスシートと、前記ガラスシートと前記樹脂層とを接合する接着層と、前記接着層の内部に介在する機能性フィルムと、を備えるガラス樹脂積層体において、前記接着層は、前記樹脂層と前記機能性フィルムとの間に位置する第一の部分と、前記ガラスシートと前記機能性フィルムとの間に位置する第二の部分と、前記第一の部分の端部と前記第二の部分の端部とを融合してなる融合部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、接着層における第一の部分と第二の部分との融合部によって機能性フィルムの端部を被覆することにより、機能性フィルムの端部をガラス樹脂積層体の端部において露出しないように構成にできる。したがって、機能性フィルムの端面は、外気に触れることも異物が接触して損傷することもない。これにより、機能性フィルムの機能喪失や剥離を確実に防止できる。
【0010】
前記機能性フィルムの面積は、前記ガラスシートの面積よりも小さく設定されており、 前記機能性フィルムの端部は、前記ガラスシートの端部よりも内側に位置することが望ましい。このように、機能性フィルムの端部をガラスシートの端部よりも内側に配することにより、ガラスシートによって機能性フィルム全体を被覆し、保護することができる。
【0011】
前記ガラスシートの面積は、前記樹脂層の面積よりも小さく設定されており、前記ガラスシートの端部は、前記樹脂層の端部よりも内側に位置することが望ましい。これにより、ガラスシートの端部への異物の接触による損傷を防止できる。
【0012】
前記融合部は、前記樹脂層の端部と前記ガラスシートの端部との間で露出してなることが好ましい。これにより、融合部によって、機能性フィルムの端部だけでなく、ガラスシートの端部をも、好適に保護することができる。
【0013】
上記構成のガラス樹脂積層体において、前記樹脂層は、第一の面と第二の面とを含み、 前記ガラスシートは、前記第一の面に積層される第一ガラスシートと、前記第二の面に積層される第二ガラスシートとを含み、前記接着層は、前記第一ガラスシートを前記第一の面に接合する第一接着層と、前記第二ガラスシートを前記第二の面に接合する第二接着層とを含み、前記機能性フィルムは、前記第一接着層と前記第二接着層の少なくとも一方の内部に介在するように構成されてもよい。
【0014】
また、上記構成のガラス樹脂積層体において、前記機能性フィルムは、前記第一接着層の内部に介在する第一機能性フィルムと、前記第二接着層の内部に介在する第二機能性フィルムとを含むものであってもよい。複数の機能性フィルムを備えることで、ガラス樹脂積層体は多機能性を有するものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス樹脂積層体に含まれる機能性フィルムの機能喪失や剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態に係るガラス樹脂積層体の断面図である。
図2】ガラス樹脂積層体の平面図である。
図3】ガラス樹脂積層体の製造方法の一工程を示す側面図である。
図4】ガラス樹脂積層体の製造方法の一工程を示す側面図である。
図5】ガラス樹脂積層体の製造方法の一工程を示す断面図である。
図6】ガラス樹脂積層体の製造方法の一工程を示す断面図である。
図7】第二実施形態に係るガラス樹脂積層体の断面図である。
図8】第三実施形態に係るガラス樹脂積層体の断面図である。
図9】第四実施形態に係るガラス樹脂積層体の断面図である。
図10】従来のガラス樹脂積層体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図6は、本発明に係るガラス樹脂積層体及びその製造方法の第一実施形態を示す。
【0018】
図1に示すように、ガラス樹脂積層体1は、樹脂層2と、樹脂層2の第一の面2aに積層されるガラスシート3と、ガラスシート3を樹脂層2に接合する接着層4と、接着層4の内部に介在する機能性フィルム5とを備える。
【0019】
図2に示すように、ガラス樹脂積層体1は、正方形状に構成されるが、この形状に限定されない。樹脂層2、ガラスシート3、接着層4及び機能性フィルム5は、ガラス樹脂積層体1の形状に対応して、正方形状に構成される。本実施形態に係るガラス樹脂積層体1では、樹脂層2の面積が最も大きく、ガラスシート3の面積が次に大きく、機能性フィルム5の面積が最も小さい。接着層4の面積は、樹脂層2の面積と同程度とされている。
【0020】
したがって、図2に示すように、樹脂層2の一辺の長さ寸法D1は、ガラスシート3の一辺の長さ寸法D2よりも長い。接着層4の一辺の長さ寸法D3は、樹脂層2の一辺の長さ寸法D1とほぼ等しい。機能性フィルム5の一辺の長さ寸法D4は、ガラスシート3の一辺の長さ寸法D2よりも短い。
【0021】
樹脂層2の一辺の長さ寸法D1とガラスシート3の一辺の長さ寸法D2との差(D1−D2)は、4mm以下とされることが好ましい。樹脂層2の一辺と、対応するガラスシート3の一辺との間隔W1は、2mm以下とされることが好ましく、より好ましくは1mm以上2mm以下である。また、ガラスシート3の一辺の長さ寸法D2と機能性フィルム5の一辺の長さ寸法D4との差(D2−D4)は、4mm以下とされることが好ましい。ガラスシート3の一辺と、対応する機能性フィルム5の一辺との間隔W2は、2mm以下とされることが好ましく、より好ましくは1mm以上2mm以下である。
【0022】
樹脂層2は、第一の面2aと、第二の面2bと、第一の面2aと第二の面2bとの間の端部(端面)2cとを有する。樹脂層2は、第一の面2aと第二の面2bとがほぼ同じ面積を有する樹脂製の板又はフィルムにより構成される。本実施形態では、樹脂層2の第一の面2aにガラスシート3が積層されている。樹脂層2の厚みは、0.01mm以上20mm以下とされ、より好ましくは0.05mm以上15mm以下、最も好ましくは、0.1mm以上10mm以下とされる。
【0023】
樹脂層2の材質としては、ポリカーボネート、ポリメタアクリル酸メチル樹脂(PMMA)が好ましく、その他に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等の各種樹脂材料を利用できる。
【0024】
ガラスシート3は、樹脂層2に接合される第一の面3aと、この第一の面3aとは反対側に位置する第二の面3bと、第一の面3aと第二の面3bとの間に形成される端部(端面)3cとを有する。
【0025】
ガラスシート3の第一の面3aは、接着層4によって樹脂層2の第一の面2aに接合される。ガラスシート3の第二の面3bは、ガラス樹脂積層体1の外面を構成するものである。ガラスシート3の端部3cは、接着層4によって被覆されている。ガラスシート3は、樹脂層2の第一の面2a又は第二の面2bの範囲内に位置している。したがって、ガラスシート3の端部3cは、樹脂層2の端部2cよりも内側に設けられる。ここで、樹脂層2の「内側」とは、樹脂層2の周縁部により区画される範囲の内側をいう。本実施形態において、樹脂層2の周縁部は、正方形状に構成される樹脂層2の四辺により構成される。
【0026】
ガラスシート3としては、樹脂層2よりも薄板のものが好ましく、その厚みは、1000μm以下とされ、好ましくは10μm以上700μm以下とされ、さらに好ましくは50μm以上500μm以下とされる。
【0027】
ガラスシート3の材質としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ガラスシート3として無アルカリガラスを使用することで、化学的に安定なガラスとすることができる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0028】
ガラスシート3は、その厚みを300μm以下にまで薄肉化しても、大きく撓むことのない適正な剛性を有するように、そのヤング率を可能な限り大きくすることが望ましい。この観点から、ガラスシート3のヤング率は、50GPa以上とされ、好ましくは60GPa以上とされ、70GPa以上とされることが最も好ましい。
【0029】
ガラスシート3は、公知のフロート法、ロールアウト法、スロットダウンドロー法、リドロー法等を使用することができるが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、一枚のガラスシートを連続成形するというものである。
【0030】
オーバーフローダウンドロー法により、厚み300μm以下のガラスシート3を大量かつ安価に作製することができる。これにより作製されたガラスシート3は、研磨や研削、ケミカルエッチング等によってガラスシート3の厚みの調整をする必要がない。また、オーバーフローダウンドロー法は、成形時にガラスシート3の両面が成形体と接触しない成形法であり、得られたガラスシート3の両面(透光面)は火造り面となり、研磨しなくても高い表面品位を得ることができる。これにより、ガラスシート3に対する接着層4の密着力を向上させることができ、より正確かつ精密にガラスシート3と樹脂層2とを積層させることが可能となる。
【0031】
接着層4の厚みは、1μm以上1000μm以下とされる。接着層4の材質としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、及びUV硬化樹脂が好適に使用され得るが、その他に、アクリル系粘着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、紫外線硬化性アクリル系接着剤、紫外線硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性メラミン系接着剤、熱硬化性フェノール系接着剤等が使用され得る。
【0032】
接着層4は、樹脂層2と機能性フィルム5との間に位置する第一の部分4aと、ガラスシート3と機能性フィルム5との間に位置する第二の部分4bとを有する。機能性フィルム5は、接着層4の内部、すなわち第一の部分4aと第二の部分4bとの間に介在する。第一の部分4aの端部と第二の部分4bの端部とは、融合して一体に構成される。以下、この部分を「融合部」といい、符号4cで示す。
【0033】
融合部4cは、機能性フィルム5の端部5aが露出しないように、当該機能性フィルム5を被覆する。すなわち、機能性フィルム5は、接着層4の第一の部分4aと第二の部分4bとの間に配されることで、その全てが接着層4に被覆される。また、融合部4cは、樹脂層2の端部2cとガラスシート3の端部3cとの間で露出している。
【0034】
図1及び図2に示すように、機能性フィルム5は、ガラスシート3の第一の面3a及び第二の面3bの範囲内に配置される。これにより、機能性フィルム5の端部5aは、ガラスシート3の端部3cよりも内側に設けられる。なお、ガラスシート3の「内側」とは、ガラスシート3の周縁部により区画される範囲の内側をいう。本実施形態では、ガラスシート3の周縁部は、正方形状に構成されるガラスシート3の四辺により構成される。
【0035】
機能性フィルムの厚みは、0.012mm以上0.3mm以下であることが好ましく、0.038mm以上0.2mm以下であることがより好ましく、0.05mm以上0.1mm以下であることが更に好ましい。機能性フィルムの厚みは、接着層4の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0036】
機能性フィルム5は、樹脂であることが好ましい。樹脂としては、ポリエステル、オレフィン、ポリカーボネート、アクリルなどが用いられる。透明性や平滑性が必要な場合には機能性フィルム5にPETを用いることが好ましく、耐熱性や遮光性が必要な場合には機能性フィルム5にポリプロピレンやポリカーボネートなどを用いることが好ましい。
【0037】
機能性フィルム5は、パルプなどで形成される紙であってもよい。紙は印字や図柄印刷のために広く普及しており、情報掲示や図柄表示の目的に適している。また、紙は一般的に半透過性を有するため、ガラス樹脂積層体1を通過する透過光の量を調整する調光機能を付与することができる。このような特性を活用し、機能性フィルム5として紙を用いたガラス樹脂積層体1は、間仕切り、階段、ベランダの壁面用パネルなどの建材として好適に用いることができる。
【0038】
機能性フィルム5は、紙原料にポリエステルなどの樹脂を複合した複合シートであってもよい。複合シートを用いた場合、破れにくく、ガラス樹脂積層体1の製造時に発塵が生じにくいという利点がある。また、機能性フィルム5と接着層4の接着性が向上するという利点もある。
【0039】
機能性フィルム5は、樹脂シートなどの基材に模様などを印刷したものであってもよい。この場合、紙を用いなくても印刷によって紙質を再現したり、紙では表現できない意匠性を付与したりすることもできる。なお、機能性フィルム5に不織布を用いてもよい。
【0040】
機能性フィルム5に意匠性を付与する場合、樹脂シートなどの基材に木目調や金属調の模様を印刷したものを用いてもよい。この場合、建材、家具、機器のカバー部材として好適に用いることができる。木目調や金属調の模様を印刷する場合、基材は、ポリプロピレンなどの不透過性を有するシートを用いることが好ましい。金属調の模様を印刷した機能性フィルム5を用いた場合、ガラスシート3の光沢により金属光沢を再現することができる。
【0041】
機能性フィルム5は、意匠性に替えて又は意匠性に加えて、物理的な機能を有していてもよい。例えば、機能性フィルム5は赤外線遮蔽機能を有していてもよい。この場合、遮熱窓や遮熱壁として好適に用いることができる。機能性フィルム5に赤外線遮蔽機能を付与する方法としては、PETなどの樹脂シートを基材としてその表面に赤外線を吸収又は反射する膜を形成することが挙げられる。
【0042】
機能性フィルム5は電磁波遮蔽機能を有していてもよい。この場合、人体に有害な電磁波またはその環境に不要な電磁波を遮蔽する窓や壁として好適に用いることができる。具体的には、医療施設での利用が考えられる。機能性フィルム5に電磁波遮蔽機能を付与する方法としては、PETなどの樹脂シートを基材としてその表面にITO膜や銅膜などの透明導電膜を成膜することが挙げられる。
【0043】
機能性フィルム5は可視光線に対して半透過性を有していてもよい。この場合、各種機器のカバー部材や間仕切りとして好適に用いることができる。機能性フィルム5に半透過性を付与する方法としては、上述したように、機能性フィルム5に紙又は紙に類するものを用いる他に、PETなどの樹脂シートの表面を、サンドブラスト処理や化学処理などにより粗面化することが挙げられる。このような処理を行う場合、光の透過度は、表面の粗さを変更したり、粗面化処理を片面又は両面に施したりすることで調整することができる。
【0044】
機能性フィルム5は可視光線の反射機能を有していてもよい。この場合、安全で軽量な鏡として用いることができる。反射機能を付与する方法としては、樹脂シートなどの基材の表面に反射膜を成膜することが挙げられる。反射膜の形成範囲は全面であってもよいし、一部であってもよい。また、反射膜に半透過性を付与し、ハーフミラーとしてもよい。
【0045】
機能性フィルム5は、タッチセンサ、圧力センサ、光学センサ等に係るセンサパターンを有していてもよい。センサパターンは、蒸着、スパッタリングその他の成膜法により、機能性フィルム5の表面に形成される。
【0046】
以下、上記構成のガラス樹脂積層体1を製造する方法について図3乃至図6を参照しながら説明する。図3に示すように、ガラス樹脂積層体1を構成する各要素、すなわち樹脂層2(樹脂板)、ガラスシート3、接着層4(接着シート)、及び機能性フィルム5を用意する(準備工程)。この場合、接着層4は、第一の部分4aに相当する接着シート及び第二の部分4bに相当する接着シートを含む。第一の部分4aに係る接着シートの厚みは、第二の部分4bに相当する接着シートの厚みよりも厚く設定されるが、これに限定されない。
【0047】
次に、図4に示すように、各要素2〜5を重ね合わせる。このとき、機能性フィルム5は、接着層4における第一の部分4aに相当する接着シートと、第二の部分4bに相当する接着シートとに挟まれた状態となる。その後、各要素2〜5を重ねた状態で、これらをオートクレーブ装置により熱圧着して接合させる。接着層4(第一の部分4a及び第二の部分4b)は、加熱により軟化し、その端部同士が融合する(図5参照)。これにより、接着層4に融合部4cが形成される。融合部4cは、機能性フィルム5の端部5aを被覆するとともに、樹脂層2の端部2cとガラスシート3の端部3cとの間で露出した状態となる。
【0048】
また、加熱により接着層4が軟化している状態において、ガラスシート3は押圧されて接着層4の第一の部分4aの一方の面に埋め込まれる(図5参照)。これにより、ガラスシート3の端部3cは、接着層4の融合部4cによって被覆される。
【0049】
その後、図6に示すように、カッタ6によって融合部4cの一部が切除される。カッタ6は、軟化した融合部4cの温度以上の温度となるように予め加熱されている。カッタ6は、融合部4cが凸状の曲面(図6の二点鎖線を参照)となるように、当該融合部4cの一部を切除する。接着層4が硬化することにより、図1に示すガラス樹脂積層体1が完成する。
【0050】
なお、紫外線硬化性の接着剤(UV硬化樹脂)を用いてガラス樹脂積層体1を製造する場合には、オートクレーブ装置を使用せず、この内部に機能性フィルム5を含むように塗布された接着剤に紫外線を照射する。
【0051】
以上説明した本実施形態に係るガラス樹脂積層体1によれば、樹脂層2とガラスシート3との間に配される機能性フィルム5の端部5aを接着層4の融合部4cによって被覆することにより、当該端部5aを露出させることなく保護できる。これにより、ガラス樹脂積層体1における機能性フィルム5の機能喪失や剥離を確実に防止できる。また、機能性フィルム5の端部5aをガラスシート3の端部3cよりも内側に配することで、当該ガラスシート3によって、機能性フィルム5を全体的に被覆し、保護することができる。
【0052】
図7は、ガラス樹脂積層体の第二実施形態を示す。上記の第一実施形態では、機能性フィルム5の一辺の長さ寸法D4は、ガラスシート3の一辺の長さ寸法D2よりも小さく設定されていたが、本実施形態では、当該長さ寸法D2よりも大きく設定される。また、第一実施形態と同様に、機能性フィルム5の一辺の長さ寸法D4は、樹脂層2の一辺の長さ寸法D1よりも小さく設定される。機能性フィルム5の端部5aは、第一実施形態と同様に、樹脂層2の端部2cとガラスシート3の端部3cとの間で露出する接着層4の融合部4cによって被覆されている。
【0053】
図8は、ガラス樹脂積層体の第三実施形態を示す。上記の第一実施形態では、接着層4の内部に一層の機能性フィルム5が介在していたが、本実施形態では、接着層4の内部に二層の機能性フィルム5A,5Bが介在する。機能性フィルム5A,5Bは、樹脂層2側に位置する第一機能性フィルム5Aと、ガラスシート3側に位置する第二機能性フィルム5Bとを含む。第一機能性フィルム5Aと第二機能性フィルム5Bとは同形とされるが、異なる寸法を有していてもよい。第一機能性フィルム5A及び第二機能性フィルム5Bは、各々異なる機能を有する。
【0054】
接着層4は、樹脂層2と第一機能性フィルム5Aとを接合する第一の部分4aと、ガラスシート3と第二機能性フィルム5Bとを接合する第二の部分4bと、第一機能性フィルム5Aと第二機能性フィルム5Bとを接合する第三の部分4dとを含む。接着層4は、第一の部分4aの端部と、第二の部分4bの端部と、第三の部分4dの端部とが融合してなる融合部4cを有する。第一機能性フィルム5Aの端部5a及び第二機能性フィルム5Bの端部5aは、この融合部4cに被覆されている。
【0055】
図9は、ガラス樹脂積層体の第四実施形態を示す。上記の第一実施形態では、樹脂層2の第一の面2aに一枚のガラスシート3が積層されていたが、本実施形態に係るガラス樹脂積層体1は、樹脂層2の第一の面2a及び第二の面2bの両面に二枚のガラスシート3A,3Bが積層されてなる。すなわち、ガラスシート3A,3Bは、樹脂層2の第一の面2aに積層される第一ガラスシート3Aと、第二の面2bに積層される第二ガラスシートとを含む。第一ガラスシート3A及び第二ガラスシート3Bには、同じ種類の材質のものを使用してよく、異なった材質のものを使用してもよい。第一ガラスシート3A及び第二ガラスシート3Bは、その用途に応じて異なる厚みを有していてもよい。
【0056】
接着層4A,4Bは、第一ガラスシート3Aを樹脂層2の第一の面2aに接合する第一接着層4Aと、第二ガラスシート3Bを第二の面2bに接合する第二接着層4Bとを含む。各接着層4A,4Bは、第一実施形態と同様に、第一の部分4a、第二の部分4b及び融合部4cを有する。
【0057】
機能性フィルム5A,5Bは、第一接着層4Aの内部に介在する第一機能性フィルム5Aと、第二接着層4Bの内部に介在する第二機能性フィルム5Bとを含む。各機能性フィルム5A,5Bの端部5aは、対応する各接着層4A,4Bの融合部4cによって被覆される。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
上記の実施形態では、正方形状のガラス樹脂積層体1を例示したが、これに限定されない。ガラス樹脂積層体1は、その用途に応じて、円形、長方形、多角形、異形形状その他の各種形状に構成され得る。
【符号の説明】
【0060】
1 ガラス樹脂積層体
2 樹脂層
2a 第一の面
2b 第二の面
2c 樹脂層の端部
3 ガラスシート
3A 第一ガラスシート
3B 第二ガラスシート
3c ガラスシートの端部
4 接着層
4A 第一接着層
4B 第二接着層
4a 第一の部分
4b 第二の部分
4c 融合部
5 機能性フィルム
5A 第一機能性フィルム
5B 第二機能性フィルム
5a 機能性フィルムの端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10