(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774044
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ファン及び圧縮機の静翼
(51)【国際特許分類】
F04D 29/54 20060101AFI20201012BHJP
F04D 19/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
F04D29/54 E
F04D29/54 G
F04D19/02
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-560022(P2019-560022)
(86)(22)【出願日】2018年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2018024392
(87)【国際公開番号】WO2019123697
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-244148(P2017-244148)
(32)【優先日】2017年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】林 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】室岡 武
(72)【発明者】
【氏名】榎 友謹
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/024461(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0167503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/54
F04D 19/02
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボファンエンジンの構成要素であるファンまたは圧縮機の静翼であって、
前記静翼は、高さ方向の各位置における断面である翼型が、前縁と後縁の間をそれぞれ延びる凹状の正圧面と凸状の負圧面から成り、
前記断面において、
前記負圧面上の点における接線と前記ターボファンエンジンの軸方向とのなす角を負圧面翼面角(βSS)、前記前縁における負圧面翼面角を入口負圧面翼面角(βSSin)、前記後縁における負圧面翼面角を出口負圧面翼面角(βSSex)として、(式1)により定義されるパラメータ(δSS)を負圧面正規化翼面角と称し、
δSS=(βSSin−βSS)/(βSSin−βSSex) (式1)
前記正圧面上の点における接線と前記ターボファンエンジンの軸方向とのなす角を正圧面翼面角(βPS)、前記翼型のキャンバーライン上の点における接線と前記ターボファンエンジンの軸方向とのなす角をキャンバーライン角、前記前縁におけるキャンバーライン角を入口キャンバーライン角(γin)、前記後縁におけるキャンバーライン角を出口キャンバーライン角(γex)として、
(式2)により定義されるパラメータ(δPS)を正圧面正規化翼面角と称し、
δPS=(γin−βPS)/(γin−γex) (式2)
前記前縁と前記後縁を結ぶ線分を翼弦、前記翼弦の長さを翼弦長(c)として、前記正圧面及び前記負圧面の上の点から前記前縁まで前記翼弦と平行な方向に計った距離(x)を前記翼弦長(c)により除したパラメータ(xc)をコード比と称するとき、
コード比0.05の位置における負圧面正規化翼面角が0.35以下であり、
コード比0.34の位置における負圧面正規化翼面角が0.62以下であり、
コード比0〜0.95の範囲において、正圧面正規化翼面角の翼弦方向変化率(d(δPS)/dxc)が0.9以下である、静翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターボファンエンジンの構成要素であるファン及び圧縮機の静翼、特に翼周りの流れの減速を制御することによって翼面上の層流域を拡大し損失を低減したファン及び圧縮機の静翼に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボファンエンジンの構成要素であるファン及び圧縮機は、それぞれ動翼及び静翼を備えている。一例として、ファン静翼を、
図3に示す。なお、以下の説明で用いられる「径方向」、「周方向」、「軸方向」は、それぞれ、ファン静翼が組み込まれるターボファンエンジンの径方向、周方向、軸方向と一致する方向である。
【0003】
図3は、ファン静翼SVの概略斜視図である。ファン静翼SVは、翼部AFとアウタバンドOB及びインナバンドIBとから成っている。翼部AFは、作動流体である空気が流れる環状流路内を径方向に延びる部位であり、当該翼部AFが周方向に等間隔に配置されることにより、翼列が形成される。アウタバンドOB及びインナバンドIBは、それぞれ翼部AFの径方向外端及び内端と接続された板状の部位であり、周方向に隣接して配置されることにより、それぞれ上述した環状流路の外側及び内側境界面を構成する。
【0004】
図4A及び
図4Bは、いずれも
図3におけるI−I断面図であり、あるスパン方向位置(翼部AFの高さ方向の位置)における翼部AFの断面形状、すなわち翼型を示している。なお、同図において矢印X、θは、それぞれ軸方向、周方向を示している。
翼型は、前縁LEと後縁TEの間をそれぞれ延びる凹状の正圧面PS及び凸状の負圧面SSから構成されている。なお、前縁LEと後縁TEを結ぶ線分を翼弦(コード)という。また、翼弦の長さを翼弦長、翼弦に沿う方向を翼弦方向という。なお、「正圧面」及び「負圧面」という語は、本来は翼部の表面を構成する曲面を表すものであるが、本明細書においては、翼型の輪郭を構成する曲線を表すものとして用いている。
【0005】
図4A及び
図4Bに示すように、翼型はキャンバーライン(翼型中心線)CLに沿って湾曲しているが、この湾曲は、前縁LEから後縁TEまでの翼面角(β)の変化として捉えることができる。
【0006】
負圧面SSの翼面角、即ち負圧面翼面角(βSS)は
図4Aに示すように、負圧面SS上の点(PSS)における接線(TSS)と軸方向(X)とのなす角であり、このうち、前縁LEにおける負圧面翼面角を入口負圧面翼面角(βSSin)、後縁TEにおける翼面角を出口負圧面翼面角(βSSex)と呼ぶことにする。
同様に、正圧面PSの翼面角、即ち正圧面翼面角(βPS)は、
図4Bに示すように、正圧面PS上の点(PPS)における接線(TPS)と軸方向(X)とのなす角である。
【0007】
負圧面翼面角βSSは、一般に入口負圧面翼面角βSSinが出口負圧面翼面角βSSexより大きいため、前縁LEから後縁TEへ向かって次第に減少する。
【0008】
一方、正圧面翼面角βPSは、一般に、前縁LE近傍の領域において、前縁LEと比較して一旦増大(接線TPSが図において反時計方向に回転)した後、後縁TEへ向かって次第に減少(接線TPSが図において時計方向に回転)する。これは、正圧面PSが、前縁LE近傍の領域において局所的に膨らんだ部位を有していることによるものである。
【0009】
ここで、翼面角の変化の態様を客観的に捉えるためのパラメータとして、正規化翼面角を導入することにする。
【0010】
負圧面翼面角βSSの変化の態様を表すパラメータ、即ち負圧面正規化翼面角(δSS)は、(式1)により定義される。
δSS=(βSSin−βSS)/(βSSin−βSSex) (式1)
【0011】
(式1)から分かるように、負圧面正規化翼面角δSSは、負圧面SS上の点における負圧面翼面角βSSの前縁LEにおける負圧面翼面角(入口負圧面翼面角βSSin)からの減少量を、前縁LEから後縁TEに至るまでの負圧面翼面角の総減少量(入口負圧面翼面角βSSinから出口負圧面翼面角βSSexを減じた角)によって正規化したパラメータであり、前縁LE(=0)から後縁TE(=1)まで単調に増加する。
【0012】
一方、正圧面翼面角βPSの変化の態様を表すパラメータ、即ち正圧面正規化翼面角(δPS)は、(式2)により定義される。
δPS=(γin−βPS)/(γin−γex) (式2)
【0013】
ここで、γは、
図4Bに示すように、キャンバーラインCL上の点(PCL)における接線(TCL)と軸方向(X)とのなす角、即ちキャンバーライン角であり、γinは前縁LEにおけるキャンバーライン角、即ち入口キャンバーライン角、γexは後縁TEにおけるキャンバーライン角、即ち出口キャンバーライン角である。
【0014】
(式2)において、正規化のために前縁LE及び後縁TEにおける正圧面翼面角βPSではなく、キャンバーライン角γを用いたのは、正圧面PSにおいては、前縁LEにおける正圧面翼面角βPSと後縁TEにおける正圧面翼面角βPSとの差((式1)における分母に相当)が微小であり、その結果δPSの値が過大となるため、これを避けるための措置である。
【0015】
正圧面正規化翼面角δPSは、上述した正圧面翼面角βPSの変化に対応して、前縁LEから後縁TEへ向かうにつれ一旦減少して最小となった後、後縁TEまで単調に増加する。
【0016】
このように、前縁LEから後縁TEへ向かっての正規化翼面角の変化は、翼面角の変化と対応しているので、翼面角の変化の緩急(すなわち、翼型の湾曲の大小)は、正規化翼面角の変化の緩急として捉えることができる。また、正規化翼面角を用いることにより、異なる翼の間でも翼面角の変化の緩急を比較することが可能となる。
【0017】
なお、翼型の湾曲の態様を調整することにより損失を低下させた圧縮機の翼が、特許文献1に開示されている。同文献が開示する翼においては、翼型のキャンバーライン(中心線)上の点における接線と軸方向とのなす角をβ’、前縁、後縁における当該角をそれぞれβin’、βex’とするとき、(式3)により定義されるパラメータ(δ’)が0.5に等しくなるキャンバーライン上の点を、翼弦方向において所定の範囲に配置している。
δ’=(βin’−β’)/(βin’−βex’) (式3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2016/024461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、周方向に隣り合う2つの翼部の間にそれぞれ形成される翼間流路は、翼の入口側(上流側)から出口側(下流側)へ向かって流路面積が拡大する拡散流路となっている。したがって、翼の入口側から出口側へ向かうにつれ、流路面積の拡大に伴って流速の低下すなわち減速が生じる(ファン及び圧縮機の静翼の翼間流路に流入する空気の流速は、一般に亜音速であるため)。
【0020】
このとき、流路面積が急激に拡大する部位においては、急激な減速が生じ、翼面上に形成された境界層が層流状態から乱流状態へ遷移する。
【0021】
層流境界層内では、壁面近傍の速度勾配が小さいため、壁面における剪断応力、すなわち摩擦応力は小さいが、乱流境界層内では、壁面近傍の速度勾配が大きいため、摩擦応力は大きくなる。そのため、翼面上において、層流境界層が形成された領域(層流域)が大きく、乱流境界層が形成された領域(乱流域)が小さいほど、翼に作用する摩擦抗力は小さくなり、翼間流れの摩擦損失は小さくなる。
【0022】
したがって、翼型の設計にあたっては、層流域をなるべく広くするために、境界層の層流状態から乱流状態への遷移位置がなるべく下流側に位置するよう配慮することが必要である。
【0023】
従来例のファン静翼では、翼面上の境界層が早期に(すなわち、上流側で)層流状態から乱流状態へ遷移して層流域が小さくなり、結果的に翼間流れの摩擦損失が大きくなっていた。
【0024】
そこで、従来例のファン静翼の翼周りの流れの速度分布を詳細に分析した結果、負圧面においては、比較的上流側の領域において急激な減速が生じており、この領域で境界層の遷移が生じていることが分かった。
【0025】
急激な減速が生じる部位は、上述したように、翼間流路の流路面積が急激に拡大する部位であると考えられるが、翼間流路の流路面積の拡大の緩急は、翼面角の減少の緩急と対応している。すなわち、翼面角が急激に減少する部位があると、それより下流側において、翼間流路の流路面積が急激に拡大するため、流れの急激な減速が生じ、境界層の層流状態から乱流状態への遷移が生じる可能性が高い。
【0026】
以上のことから、翼面角の減少の緩急を調整することによって翼間流路の流路面積の拡大の緩急を調整し、これによって翼周りの流れの減速を適切に制御すれば、翼面上の境界層の遷移を遅らせて(すなわち、遷移位置をより下流側として)層流域を大きくし、結果的に翼間流れの摩擦損失を低減できることが分かる。
【0027】
本開示は、以上の考察に基づいてなされたものであって、翼周りの流れの減速を適切に制御することによって翼面上の境界層の遷移を遅らせ(すなわち、遷移位置をより下流側とし)、翼面上の層流域を拡大し損失を低減したファン及び圧縮機の静翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するために、本開示の静翼は、ターボファンエンジンの構成要素であるファンまたは圧縮機に適用されるものであって、高さ方向の各位置における断面である翼型が、前縁と後縁の間をそれぞれ延びる凹状の正圧面と凸状の負圧面から成り、前記断面において、前記負圧面上の点における接線と前記ターボファンエンジンの軸方向とのなす角を負圧面翼面角(βSS)、前記前縁における負圧面翼面角を入口負圧面翼面角(βSSin)、前記後縁における負圧面翼面角を出口負圧面翼面角(βSSex)として、(式1)により定義されるパラメータ(δSS)を負圧面正規化翼面角と称し、前記正圧面上の点における接線と前記ターボファンエンジンの軸方向とのなす角を正圧面翼面角(βPS)、前記翼型のキャンバーライン上の点における接線と前記ターボファンエンジンの軸方向とのなす角をキャンバーライン角、前記前縁におけるキャンバーライン角を入口キャンバーライン角(γin)、前記後縁におけるキャンバーライン角を出口キャンバーライン角(γex)として、(式2)により定義されるパラメータ(δPS)を正圧面正規化翼面角と称し、前記前縁と前記後縁を結ぶ線分を翼弦、前記翼弦の長さを翼弦長(c)として、前記正圧面及び前記負圧面の上の点から前記前縁まで前記翼弦と平行な方向に計った距離(x)を前記翼弦長(c)により除したパラメータ(xc)をコード比と称するとき、コード比0.05の位置における負圧面正規化翼面角が0.35以下であり、コード比0.34の位置における負圧面正規化翼面角が0.62以下であり、コード比0〜0.95の範囲において、正圧面正規化翼面角の翼弦方向変化率(d(δPS)/dxc)が0.9以下である。
δSS=(βSSin−βSS)/(βSSin−βSSex) (式1)
δPS=(γin−βPS)/(γin−γex) (式2)
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、翼面上の境界層の層流状態から乱流状態への遷移を遅らせる(すなわち、遷移位置をより下流側とする)ことにより、層流域を拡大し、摩擦損失を低減させるという、優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の実施形態のファン静翼の、あるスパン方向位置における断面形状(翼型)を、従来例のファン静翼の翼型と比較して示す概略説明図である。
【
図2A】本開示の実施形態のファン静翼の負圧面正規化翼面角の翼弦方向分布を、従来例のファン静翼と比較して示す図である。
【
図2B】本開示の実施形態のファン静翼の正圧面正規化翼面角の翼弦方向分布を、従来例のファン静翼と比較して示す図である。
【
図3】ターボファンエンジンのファン静翼の概略斜視図である。
【
図4A】
図3におけるI−I断面図(ファン静翼の断面形状(翼型)を示す図)であって、負圧面翼面角の定義を示している。
【
図4B】
図3におけるI−I断面図(ファン静翼の断面形状(翼型)を示す図)であって、正圧面翼面角の定義を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
従来例のファン静翼では、負圧面のコード比約0.20〜0.35の領域において急激な減速が生じていた。このことは、当該領域に、負圧面翼面角が急激に減少する部位、換言すれば負圧面正規化翼面角が急激に増加する部位が存在することを意味している。なお、コード比(xc)は、前縁から翼弦方向に計った距離(x)を翼弦長(c)で除した無次元値である。
【0033】
また、正圧面においては、従来例のファン静翼においても、翼面上の境界層が層流状態に維持されているためには、正圧面翼面角の変化率に上限を設けることが好ましい。
【0034】
そこで、本開示の実施形態のファン静翼では、以下の方針に沿って、従来例のファン静翼から翼型を変化させている。
(1)負圧面について、コード比約0.20〜0.35の領域においては、減速を抑えるため、負圧面翼面角の変化を小さく抑える。そのために、これよりも上流のコード比約0.05近傍の領域において、当該領域における流速の極大値が従来例のファン静翼と同等以下となる範囲内で、負圧面翼面角の変化を大きくする。
(2)正圧面について、正圧面正規化翼面角(δPS)の翼弦方向変化率(d(δPS)/dxc)に上限を設ける。
【0035】
このようにして得られた本開示の実施形態のファン静翼の、あるスパン方向位置における断面形状(翼型)IVを、従来例のファン静翼の翼型PAと比較して
図1に示す。また、本開示の実施形態のファン静翼の正規化翼面角の翼弦方向分布を、従来例のファン静翼の翼型と比較して
図2A〜
図2Bに示す。なお、
図2Aは負圧面正規化翼面角の分布を、
図2Bは正圧面正規化翼面角の分布を、それぞれ示している。なお、これらの図では、縦軸に正規化翼面角を、横軸に翼弦方向位置を、それぞれプロットしているが、翼弦方向位置は、コード比xcを用いて表示している。
【0036】
図2Aに示すように、負圧面においては、コード比0.05の位置における負圧面正規化翼面角δSSを0.35以下とする(グラフにおける(a)参照)ことにより、その近傍の領域における流速の極大値を従来例のファン静翼と同等以下に抑えると共に、これより下流側の負圧面正規化翼面角δSSの変化を緩やかにすることにより、コード比約0.20〜0.35の領域における減速を抑えている。
【0037】
また、
図2Bに示すように、正圧面においては、図中に矢印Rで示したコード比0〜0.95の範囲において、正圧面正規化翼面角(δPS)の翼弦方向変化率(d(δPS)/dxc)の上限値を0.9とすることにより、境界層の乱流状態への遷移を回避している。
【0038】
このように、本開示の実施形態のファン静翼では、従来例のファン静翼と比較して、正規化翼面角の変化の態様の調整を通じて、翼周りの流れの減速が適切に制御され、その結果、翼面上の層流域が拡大し、損失が低減されている。
【0039】
ここで、本開示の実施形態のファン静翼の負圧面における遷移位置はコード比0.34の位置であり、当該遷移位置における負圧面正規化翼面角は0.62である。
【0040】
したがって、上記遷移位置における負圧面正規化翼面角を、本開示の実施形態のファン静翼と同一またはそれより小さくすることにより、翼面上の層流域を本開示の実施形態のファン静翼以上に拡大することができると考えられる。この条件は、具体的には以下のとおりである(
図2Aのグラフにおける(b)参照)。
・コード比0.34の位置における負圧面正規化翼面角を0.62以下とする。
【0041】
以上を踏まえ、本開示の実施形態のファン静翼は、以下の条件を満足するものとする。
・負圧面について、コード比0.05の位置における負圧面正規化翼面角δSSを0.35以下とする。
・負圧面について、コード比0.34の位置における負圧面正規化翼面角δSSを0.62以下とする。
・正圧面について、コード比0〜0.95の範囲において、正圧面正規化翼面角δPSの翼弦方向変化率(d(δPS)/dxc)を0.9以下とする。
【0042】
なお、以上においては、本開示の翼をターボファンエンジンの構成要素であるファンの静翼に適用した例について説明したが、本開示の翼は、ターボファンエンジン以外のガスタービンの圧縮機及び単一の装置としてのファンまたは圧縮機の静翼に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
SV ファン静翼
AF 翼部
OB アウタバンド
IB インナバンド
PS 正圧面
SS 負圧面
LE 前縁
TE 後縁
CL キャンバーライン
β 翼面角
δ 正規化翼面角
γ キャンバーライン角