【実施例】
【0028】
以下、本発明について実施例を示し、より詳細に説明する。なお、例中の%及び部はいずれも重量基準を意味する。
【0029】
○試験例1.〜試験例3.
【0030】
(調製方法)
表1〜表3各々の油相欄に記載された配合に従い油相部を調製した。同様に表1〜表3各々の水相欄に記載された配合に従い水相部を調製した。
油相部を25℃とし、ホモミクサー(TKホモミクサーMARKII:プライミクス(株)製)にて8000rpmで攪拌しながら、水相部を配合した。この状態で、10分間攪拌し、茶抽出物及びソルビトール含有油脂組成物を得た。
【0031】
(使用した原材料・添加物)
・油脂として、不二製油株式会社製「菜種白絞油」又はパームオレイン「パームエースN」を用いた。
・PGPRには、阪本薬品工業株式会社製ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル「CRS-75」を用いた。
・茶抽出物には、太陽化学株式会社製、商品名:サンフェノン90S、ポリフェノール含量80%以上を用いた。
・ソルビトールには、物産フードサイエンス株式会社製「ソルビトールFP」を用いた。
・スクロースには、富士フイルム和光純薬株式会社製「スクロース」を用いた。
・グリセリンには、キシダ化学株式会社製「食添 グリセリン」を用いた。
・エリスリトールには、株式会社 カーギルジャパン製「ZEROSE」を用いた。
・マンニトールには、物産フードサイエンス株式会社製「マンニトール」を用いた。
・ラクチトールには、物産フードサイエンス株式会社製「ラクチトールLC-0」を用いた。
・マルチトールには、株式会社 カーギルジャパン製「MALTIDEX」を用いた。
・グルコースには、和光純薬 株式会社製「グルコース」を用いた。
・トレハロースには、株式会社 林原製「トレハ」を用いた。
【0032】
(評価方法)
平均粒子径:
動的光散乱法によって平均粒子径を求めた。また、粒子径が1000nmを超えるものは、レーザー回折法にて求めた。
茶抽出物及びソルビトール含有油脂組成物の酸化安定性評価:
基準油脂分析試験法(2.5.1.2-1996)の「安定性試験」のCDM試験(定義:試料を反応容器で120℃で加熱しながら、清浄空気を送り込む。酸化により生成した揮発性分解物を水中に捕集し、水の伝導率が急激に変化する折曲点までの時間をいう)により、CDM値を求め評価した。
茶抽出物を同量含みソルビトールを含まない、ソルビトール未配合区に対するCDM値の上昇率(%)を求め効果を対比した(例えば、実施例1の場合、茶抽出物を同量含む比較例2に対するCDM値の上昇率を算出)。
茶抽出物を同量含みソルビトールを含まないCDM値に対し、10%以上の延長効果を有したものを合格とした。
茶抽出物及びソルビトール含有油脂組成物の渋み・雑味の評価:
実施例及び比較例で得られた油脂について風味評価を行った。
風味評価は熟練したパネル4名で行い、合意により風味評価点を決定した。渋み・雑味が1点以上の場合、合格と判断した。
2点:渋み・雑味を感じない。
1点:比較例1と異なる風味であるが、明確な渋み・雑味は感じられない。
0点:渋み・雑味が感じられる。
【0033】
試験例1.
表1配合と、(調製方法)に従い油脂組成物を作製し、(評価方法)に従い評価を行なった。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
茶抽出物とソルビトールを共に配合することで、茶抽出物を単独で添加するよりも、油脂組成物の酸化安定性をより向上することができた。その効果は茶抽出物配合量が多い程有効であった。
また、ソルビトールを茶抽出物と併用した方が、渋みや雑味も低減する傾向にあった。パームオレインでも同様の効果が確認できた。
【0036】
試験例2.
表2配合と、(調製方法)に従い油脂組成物を作製し、(評価方法)に従い評価を行った。結果を表2に示す。
ただし、実施例14、15に関しては、茶抽出物とソルビトールを別々の水相を調製し、用いた。即ち、実施例14は、茶抽出物0.036部と水0.054部及びソルビトール0.069部と水0.045部、実施例15は、茶抽出物0.036部と水0.054部及びソルビトール0.138部と水0.09部の各水相を調製し、茶抽出物水溶液及びソルビトール水溶液を得た。
油相部の半量を25℃とし、ホモミクサー(TKホモミクサーMARKII:プライミクス(株)製)にて8000rpmで攪拌しながら、茶抽出物水溶液を配合し、この状態で10分間攪拌し、中間物Aを得た。また、油相部 の半量を25℃とし、同様に攪拌しながら、ソルビトール水溶液を配合し、この状態で10分間攪拌し、中間物Bを得た。中間物A及びBを混合し、茶抽出物及びソルビトール含有油脂組成物を得た。
【0037】
【表2】
【0038】
茶抽出物に対するソルビトールの配合量に応じ、酸化安定性の改善効果は変動し、茶抽出物に対し0.5〜15倍量のソルビトールの配合量が適切であった。
ソルビトールのみでは酸化安定性は向上しないことがわかった。また、茶抽出物とソルビトールは同一水溶液中に存在する必要はない。
【0039】
試験例3.ソルビトール以外の多価アルコール、糖アルコール、糖の効果を検証した。
表3配合と、(調製方法)に従い油脂組成物を作製し、(評価方法)に従い評価を行った。結果を表3に示す。
なお、CDM値の評価においては、ソルビトール以外の多価アルコール、糖アルコール、糖の各成分未配合区に対するCDM値の上昇率(%)を求め、ソルビトールの効果(実施例5)(実施例7)と対比した。
【0040】
【表3】
【0041】
茶抽出物に対し、酸化安定性の向上効果を付与する物質はソルビトールのみであり、特異的な効果といえる。
【0042】
○油脂のみの保存試験結果(60℃静置)
(茶抽出物及びソルビトール含有油脂組成物の酸化安定性の評価)
作製品の渋み・雑味 風味評価は熟練したパネル4名で行い、合意により風味評価点を決定した。渋み・雑味が1点以上の場合、合格と判断した。
2点:渋み・雑味を感じない。
1点:比較例1と異なる風味であるが、明確な渋み・雑味は感じられない。
0点:渋み・雑味が感じられる。
・菜種油調製品 80gを100mlガラス瓶に入れ、密封する。
・該ガラス瓶を、暗所60℃にて28日間保存する。
・保存後に、過酸化物価(POV)の測定及び、風味評価を行う。風味の評価項目を油脂の劣化臭とし、4名のパネラ−による10段階での官能評価により行った。
保存21日目の段階で評価点数5以上の評価となった油脂を良好と判断した。
官能評価 油脂劣化臭:数字が大きい方が劣化臭が弱く、数字が小さい方が劣化臭が強い。
【0043】
【表4】
【0044】
実施例は、茶抽出物含量が同等で、POV及び風味が良好に維持されていた。実施例は茶抽出物が2倍量の比較例と同等の品質となった。また、渋み雑味の点でも優れることがわかった。
【0045】
○アプリケーション評価(米菓スプレーにて保存試験)
(米菓の作製法と評価方法)
市販の米菓(ノンオイル、着味無し)80部に対し、作製した各油脂組成物 20部をスプレーにて被覆し、米菓を作製した。
米菓の風味評価を行った。評価結果を表5に示す。
作製品の渋み・雑味 風味評価は熟練したパネル4名で行い、合意により風味評価点を決定した。渋み・雑味が1点以上の場合、合格と判断した。
2点:渋み・雑味を感じない。
1点:比較例1と異なる風味であるが、明確な渋み・雑味は感じられない。
0点:渋み・雑味が感じられる。
米菓をアルミ蒸着袋に入れ、60℃暗所にて保存し、経時的に米菓からヘキサンにて抽出した油脂のPOVを測定した。
また、保存後の風味を評価した。風味の評価項目を油脂の劣化臭とし、4名のパネラ−による10段階での官能評価により行った。保存7日目の段階で評価点数5以上の評価となった油脂を良好と判断した。
官能評価 油脂劣化臭:数字が大きい方が劣化臭が弱く、数字が小さい方が劣化臭が強い。
【0046】
【表5】
【0047】
実施例は、茶抽出物含量が同等で、POV及び風味が良好に維持できた。実施例は茶抽出物が2倍量の比較例と同等の品質となった。また、渋み雑味の点でも優れることがわかった。油脂のみと同様の結果が得られた。