特許第6774052号(P6774052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774052
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   G02B7/04 D
   G02B7/04 E
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-163583(P2016-163583)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-31874(P2018-31874A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃平
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−341369(JP,A)
【文献】 特開2014−092563(JP,A)
【文献】 特開2009−192965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するとともに前記レンズの光軸方向へ移動可能なレンズ枠と、送りネジと前記送りネジを回転させる駆動源とを有し前記レンズ枠を前記光軸方向へ移動させる移動機構とを備え、
前記レンズ枠には、前記光軸方向で前記レンズ枠を貫通する貫通穴が形成され、
前記送りネジは、前記送りネジの軸方向と前記光軸方向とが一致するように前記貫通穴に挿通され、
前記光軸方向の一方側を第1方向側とし、前記第1方向側の反対側を第2方向側とすると、
前記移動機構は、前記レンズ枠を前記第1方向側に付勢する付勢部材と、前記レンズ枠の前記第1方向側に配置され前記送りネジにねじ結合するナットと、前記光軸方向において前記ナットと前記レンズ枠との間に配置される低摩擦部材とを備え、
前記レンズ枠と前記低摩擦部材との間の摩擦係数、および、前記ナットと前記低摩擦部材との間の摩擦係数の少なくともいずれか一方は、前記レンズ枠と前記ナットとが接触しているとした場合の前記レンズ枠と前記ナットとの間の摩擦係数よりも小さくなっていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記レンズ枠と前記低摩擦部材との間の摩擦係数、および、前記ナットと前記低摩擦部材との間の摩擦係数は、前記レンズ枠と前記ナットとが接触しているとした場合の前記レンズ枠と前記ナットとの間の摩擦係数よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記低摩擦部材は、環状かつ平板状に形成されるワッシャであり、
前記低摩擦部材の内周側に前記送りネジが挿通されていることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記低摩擦部材は、円環状に形成されていることを特徴とする請求項3記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記光軸方向から見たときに、前記低摩擦部材の内周面は、前記ナットの外形の中に納まっていることを特徴とする請求項3または4記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記光軸方向から見たときに、前記低摩擦部材は、前記ナットの外形の中に納まっていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記低摩擦部材の厚さは、前記送りネジのピッチ以上の厚さであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記低摩擦部材の比重は、前記レンズ枠の比重および前記ナットの比重の少なくともいずれか一方よりも大きいことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記低摩擦部材は、ポリテトラフルオロエチレンで形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に用いられるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置に用いられるレンズ鏡筒が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ鏡筒は、フォーカスレンズと、フォーカスレンズを保持するレンズ枠と、レンズ枠を光軸方向へ案内するガイド軸と、光軸方向前方へレンズ枠を付勢するバネと、レンズ枠が光軸方向後方から接触する中継部材と、中継部材を光軸方向へ案内する中継ガイド軸とを備えている。また、このレンズ鏡筒は、モータと、モータの回転軸に形成される送りネジにねじ結合するナットとを備えている。送りネジは、中継部材のナット当接部に形成される貫通穴に挿通されている。ナットは、ナット当接部の光軸方向前方に配置されている。中継部材には、レンズ枠を介してバネの付勢力が作用しており、ナット当接部は、ナットに接触している。
【0003】
特許文献1に記載のレンズ鏡筒では、送りネジが一方向へ回転してナットが光軸方向前方に移動すると、レンズ枠は、バネの付勢力によって、中継部材と一緒にナットに追従して光軸方向前方へ移動する。一方、このレンズ鏡筒では、送りネジが反対方向へ回転してナットが光軸方向後方に移動すると、レンズ枠は、中継部材を介してナットに押されて光軸方向後方へ移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−138140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者の検討によると、特許文献1に記載のレンズ鏡筒のように送りネジとナットとを用いてレンズ枠を光軸方向へ移動させる場合、移動中のレンズ枠に振動(がたつき)が生じることが明らかになった。具体的には、ナットの内周面に形成されるメネジと送りネジとの間の隙間の影響で、送りネジに沿って移動するナットに振動が生じていること、および、ナットの振動がレンズ枠に伝達されて移動中のレンズ枠に振動が生じていることが明らかになった。また、本願発明者の検討によると、移動中のレンズ枠に振動が生じるため、レンズ枠が移動しているときの画像に像ぶれが発生することが明らかになった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、送りネジとナットとを用いてレンズ枠を移動させる場合であっても、移動中のレンズ枠の振動を抑制することが可能なレンズ鏡筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ鏡筒は、レンズを保持するとともにレンズの光軸方向へ移動可能なレンズ枠と、送りネジと送りネジを回転させる駆動源とを有しレンズ枠を光軸方向へ移動させる移動機構とを備え、レンズ枠には、光軸方向でレンズ枠を貫通する貫通穴が形成され、送りネジは、送りネジの軸方向と光軸方向とが一致するように貫通穴に挿通され、光軸方向の一方側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とすると、移動機構は、レンズ枠を第1方向側に付勢する付勢部材と、レンズ枠の第1方向側に配置され送りネジにねじ結合するナットと、光軸方向においてナットとレンズ枠との間に配置される低摩擦部材とを備え、レンズ枠と低摩擦部材との間の摩擦係数、および、ナットと低摩擦部材との間の摩擦係数の少なくともいずれか一方は、レンズ枠とナットとが接触しているとした場合のレンズ枠とナットとの間の摩擦係数よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0008】
本発明のレンズ鏡筒では、光軸方向においてナットとレンズ枠との間に低摩擦部材が配置されており、レンズ枠と低摩擦部材との間の摩擦係数、および、ナットと低摩擦部材との間の摩擦係数の少なくともいずれか一方は、レンズ枠とナットとが接触しているとした場合のレンズ枠とナットとの間の摩擦係数よりも小さくなっている。そのため、本発明では、レンズ枠と低摩擦部材との間の摩擦係数がレンズ枠とナットとの間の摩擦係数よりも小さくなっていれば、ナットとレンズ枠とが接触しているとしたときにナットとレンズ枠との間に生じる摩擦力よりも、低摩擦部材とレンズ枠との間に生じる摩擦力が小さくなる。また、ナットと低摩擦部材との間の摩擦係数がレンズ枠とナットとの間の摩擦係数よりも小さくなっていれば、ナットとレンズ枠とが接触しているとしたときにナットとレンズ枠との間に生じる摩擦力よりも、低摩擦部材とナットとの間に生じる摩擦力が小さくなる。
【0009】
すなわち、本発明では、ナットとレンズ枠とが接触しているとしたときにナットとレンズ枠との間に生じる摩擦力よりも、低摩擦部材とレンズ枠との間に生じる摩擦力および低摩擦部材とナットとの間に生じる摩擦力の少なくともいずれか一方が小さくなる。そのため、本発明では、送りネジに沿って移動する際のナットの、光軸方向に直交する方向における振動がレンズ枠に伝達されにくくなる。したがって、本発明では、送りネジとナットとを用いてレンズ枠を移動させる場合であっても、移動中のレンズ枠の振動を抑制することが可能になる。
【0010】
本発明において、レンズ枠と低摩擦部材との間の摩擦係数、および、ナットと低摩擦部材との間の摩擦係数は、レンズ枠とナットとが接触しているとした場合のレンズ枠とナットとの間の摩擦係数よりも小さくなっていることが好ましい。このように構成すると、ナットとレンズ枠とが接触しているとしたときにナットとレンズ枠との間に生じる摩擦力よりも、低摩擦部材とレンズ枠との間に生じる摩擦力および低摩擦部材とナットとの間に生じる摩擦力の両方が小さくなる。したがって、送りネジに沿って移動する際のナットの、光軸方向に直交する方向における振動がレンズ枠により伝達されにくくなり、その結果、移動中のレンズ枠の振動を効果的に抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、低摩擦部材は、環状かつ平板状に形成されるワッシャであり、低摩擦部材の内周側に送りネジが挿通されていることが好ましい。この場合には、たとえば、低摩擦部材は、円環状に形成されている。このように構成すると、環状に形成される低摩擦部材の内周側に送りネジが挿通されているため、ナットとレンズ枠との間からの低摩擦部材の外れを防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、光軸方向から見たときに、低摩擦部材の内周面は、ナットの外形の中に納まっていることが好ましい。このように構成すると、環状に形成される低摩擦部材の全周に亘って、ナットとレンズ枠との間に低摩擦部材を確実に配置することが可能になる。したがって、ナットとレンズ枠との接触を確実に防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、光軸方向から見たときに、低摩擦部材は、ナットの外形の中に納まっていることが好ましい。このように構成すると、低摩擦部材と他の構成との干渉を防止しやすくなる。
【0014】
本発明において、低摩擦部材の厚さは、送りネジのピッチ以上の厚さであることが好ましい。このように構成すると、送りネジが回転したときに、送りネジのネジ山やネジ溝に沿って送りネジの径方向へ低摩擦部材が移動して振動するのを防止することが可能になる。したがって、低摩擦部材の振動に起因するレンズ枠の振動を抑制することが可能になる。
【0015】
本発明において、低摩擦部材の比重は、たとえば、レンズ枠の比重およびナットの比重の少なくともいずれか一方よりも大きくなっている。この場合には、移動時の低摩擦部材の慣性を大きくすることが可能になるため、移動時の低摩擦部材の振動を抑制することが可能になる。したがって、低摩擦部材の振動に起因するレンズ枠の振動を抑制することが可能になる。
【0016】
本発明において、低摩擦部材は、ポリテトラフルオロエチレンで形成されていることが好ましい。このように構成すると、低摩擦部材とレンズ枠との間に生じる摩擦力および低摩擦部材とナットとの間に生じる摩擦力をより小さくすることが可能になる。したがって、送りネジに沿って移動する際のナットの、光軸方向に直交する方向における振動がレンズ枠により伝達されにくくなり、その結果、移動中のレンズ枠の振動を効果的に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のレンズ鏡筒では、送りネジとナットとを用いてレンズ枠を移動させる場合であっても、移動中のレンズ枠の振動を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ鏡筒の概略断面図である。
図2図1に示すレンズ枠、保持部材および移動機構の分解斜視図である。
図3図2に示すレンズ枠の一部および移動機構を異なる方向から示す分解斜視図である。
図4図3に示すレンズ枠、ナットおよびワッシャに送りネジが挿通された状態の断面図である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかるワッシャの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(レンズ鏡筒の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ鏡筒1の概略断面図である。図2は、図1に示すレンズ枠5、保持部材8および移動機構6の分解斜視図である。図3は、図2に示すレンズ枠5の一部および移動機構6を異なる方向から示す分解斜視図である。図4は、図3に示すレンズ枠5、ナット14およびワッシャ15に送りネジ11が挿通された状態の断面図である。
【0021】
本形態のレンズ鏡筒1は、デジタルカメラ等の撮像装置(図示省略)に用いられる。このレンズ鏡筒1は、レンズ2と、レンズ2を保持するレンズ保持体3とを備えている。また、レンズ鏡筒1は、フォーカスレンズ4(以下、「レンズ4」とする)を備えている。レンズ4は、レンズ4の光軸とレンズ2の光軸とが一致するように配置されている。また、レンズ鏡筒1は、レンズ4を保持するとともにレンズ2、4の光軸の方向(光軸方向)へ移動可能なレンズ枠5と、レンズ枠5を光軸方向へ移動させる移動機構(焦点調整機構)6とを備えている。
【0022】
以下の説明では、光軸方向の一方側(図1等のZ1方向側)を「前」側とし、その反対側(図1等のZ2方向側)を「後(後ろ)」側とする。本形態では、前側は被写体側となっており、後ろ側は像側となっている。また、本形態の前側は、光軸方向の一方側である第1方向側となっており、後ろ側は、第1方向側の反対側である第2方向側となっている。
【0023】
レンズ保持体3は、レンズ枠5を移動可能に保持する保持部材8を備えている。保持部材8は、筒状に形成されており、レンズ保持体3の後端側部分を構成している。レンズ枠5は、保持部材8の内周側に配置されており、レンズ4は、レンズ2よりも後ろ側に配置されている。レンズ鏡筒1が用いられる撮像装置がデジタルカメラである場合には、レンズ4の後ろ側に撮像素子が配置されている。保持部材8には、レンズ枠5を光軸方向(前後方向)へ案内するためのガイド軸9が固定されている。また、保持部材8には、レンズ枠5を光軸方向へ案内するためのガイド溝8a(図2参照)と、移動機構6を構成する後述のナット14の回転を防止するためのガイド溝8bとが形成されている。
【0024】
レンズ枠5は、樹脂材料で形成されている。具体的には、レンズ枠5は、ポリカーボネイト(PC)で形成されている。このレンズ枠5は、レンズ4が固定されるレンズ保持部5aと、保持部材8に保持される被保持部5bと、レンズ保持部5aと被保持部5bとの間を繋ぐ連結部5cとを備えている。連結部5cは、レンズ保持部5aからレンズ4の径方向の外側へ伸びるように形成されている。被保持部5bには、ガイド軸9が挿通される筒状ガイド部5dと、ガイド溝8aに係合するガイド部5eとが形成されている。また、被保持部5bには、移動機構6を構成する後述の送りネジ11が挿通される貫通穴5fが形成されている。貫通穴5fは、前後方向で被保持部5bを貫通している。
【0025】
移動機構6は、送りネジ(リードスクリュー)11と、送りネジ11を回転させる駆動源としてのモータ12と、レンズ枠5を前側へ付勢する付勢部材としてのバネ13(図1参照)と、送りネジ11にねじ結合するとともにレンズ枠5の前側に配置されるナット14と、前後方向においてナット14とレンズ枠5との間に配置される低摩擦部材としてのワッシャ15とを備えている。なお、図1では、移動機構6の構成部品のうちのバネ13のみを図示している。また、図2図3では、バネ13の図示を省略している。
【0026】
送りネジ11は、送りネジ11の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。すなわち、送りネジ11の軸方向は、光軸と平行に配置されている。また、送りネジ11は、貫通穴5fに挿通されている。モータ12は、図示を省略する取付け部材を介して保持部材8に取り付けられている。送りネジ11は、モータ12の出力軸に固定されている。バネ13は、たとえば、引張りコイルバネであり、バネ13の一端(前端)は、保持部材8に取り付けられ、バネ13の他端(後端)は、レンズ枠5に取り付けられている。保持部材8には、バネ13の一端が掛けられるバネ係止用フックが形成され、レンズ枠5には、バネ13の他端が掛けられるバネ係止用フック5i(図2参照)が形成されている。保持部材8に形成されるバネ係止用フックは、保持部材8の側壁に隠れているため、図示されていない。なお、送りネジ11は、モータ12の出力軸に形成されていても良い。また、バネ13は、圧縮コイルバネまたはネジリコイルバネあるいは板バネ等であっても良い。
【0027】
ナット14は、樹脂材料で形成されている。具体的には、ナット14は、ポリカーボネイトで形成されている。ナット14は、環状に形成されており、ナット14の内周面には、メネジが形成されている。また、ナット14には、外周側へ突出する突起14aが形成されている。突起14aは、保持部材8のガイド溝8bに係合しており、突起14aとガイド溝8bとによって送りネジ11を中心とするナット14の回転が防止されている。
【0028】
ワッシャ15は、環状かつ平板状に形成されている。本形態のワッシャ15は、円環状に形成されている。ワッシャ15の内径(孔15aの内径)は、送りネジ11の外径よりも若干大きくなっており、ワッシャ15の内周側には、送りネジ11が挿通されている。上述のように、ワッシャ15は、前後方向においてナット14とレンズ枠5との間に配置され、レンズ枠5は、バネ13によって前側に付勢されている。そのため、ワッシャ15の前面は、ナット14の後面に接触している。また、ワッシャ15の後面は、レンズ枠5の前面に接触している。具体的には、被保持部5bの前面の、貫通穴5fの周縁には、前後方向に直交する平面状の接触面5gが形成されており、ワッシャ15の後面は、接触面5gに接触している。なお、図3における接触面5gの上側には、補強用の肉厚部5hが接触面5gよりも前側に向かって突出するように形成されている。肉厚部5hは、接触面5gが形成された部分を除く被保持部5bの全体に亘って形成されている。
【0029】
ワッシャ15は、樹脂材料で形成されている。具体的には、ワッシャ15は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されている。また、上述のように、レンズ枠5およびナット14は、ポリカーボネイトで形成されている。そのため、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、および、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数は、レンズ枠5とナット14とが接触しているとした場合のレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数よりも小さくなっている。また、ワッシャ15の比重は、レンズ枠5の比重およびナット14の比重よりも大きくなっている。
【0030】
ワッシャ15の内径は、上述のように、送りネジ11の外径よりも若干大きくなっており、前後方向から見たときに、ワッシャ15の内周面は、ナット14の外形の中に納まっている。すなわち、前後方向から見たときに、ナット14の外形の中にワッシャ15の内周面が納まるように、送りネジ11の外径、ナット14の外径およびワッシャ15の内径が設定されている。また、本形態では、前後方向から見たときに、ワッシャ15は、ナット14の外形の中に納まっている。すなわち、前後方向から見たときに、ナット14の外形の中にワッシャ15が納まるように、送りネジ11の外径、ナット14の外径、ワッシャ15の内径およびワッシャ15の外径が設定されている。
【0031】
ワッシャ15の厚さ(前後方向の厚さ)は、送りネジ11のピッチ(隣り合うネジ山間の距離)以上の厚さとなっている。本形態では、ワッシャ15の厚さと送りネジ11のピッチとが等しくなっている。たとえば、ワッシャ15の厚さおよび送りネジ11のピッチは、0.2(mm)となっている。
【0032】
レンズ鏡筒1では、送りネジ11が一方向へ回転して前側へナット14が移動すると、レンズ枠5は、バネ13の付勢力によってナット14に追従して前側へ移動する。また、送りネジ11が反対方向へ回転して後ろ側へナット14が移動すると、レンズ枠5は、ワッシャ15を介してナット14に押されて後ろ側へ移動する。
【0033】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のレンズ鏡筒1は、レンズ4を保持するとともに前後方向(レンズ4の光軸方向)へ移動可能なレンズ枠5と、送りネジ11と送りネジ11を回転させるモータ12とを有しレンズ枠5を前後方向へ移動させる移動機構6とを備えている。また、レンズ枠5には、前後方向(光軸方向)でレンズ枠5を貫通する貫通穴5fが形成され、送りネジ11は、送りネジ11の軸方向と光軸方向とが平行になるように貫通穴5fに挿通されている。さらに、移動機構6は、レンズ枠5を前側に付勢するバネ13と、レンズ枠5の前側に配置され送りネジ11にねじ結合するナット14と、前後方向においてナット14とレンズ枠5との間に配置されるワッシャ15とを備えている。また、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、および、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数は、レンズ枠5とナット14とが接触しているとした場合のレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数よりも小さくなっている。さらに、レンズ枠5は、送りネジ11が回転して前側へナット14が移動すると、バネ13の付勢力でナット14に追従して前側へ移動し、送りネジ11が回転して後ろ側へナット14が移動すると、ナット14に押されて後ろ側へ移動する。
【0034】
このように、本形態では、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、および、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数が、レンズ枠5とナット14とが接触しているとした場合のレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数よりも小さくなっているため、ナット14とレンズ枠5とが接触しているとしたときにナット14とレンズ枠5との間に生じる摩擦力よりも、ワッシャ15とレンズ枠5との間に生じる摩擦力、および、ワッシャ15とナット14との間に生じる摩擦力が小さくなる。したがって、本形態では、送りネジ11に沿って移動する際のナット14の、前後方向に直交する方向における振動がレンズ枠5に伝達されにくくなる。その結果、本形態では、送りネジ11とナット14とを用いてレンズ枠5を移動させる場合であっても、移動中のレンズ枠5の振動を抑制することが可能になる。
【0035】
特に本形態では、ワッシャ15がポリテトラフルオロエチレンで形成されているため、ワッシャ15とレンズ枠5との間に生じる摩擦力およびワッシャ15とナット14との間に生じる摩擦力をより小さくすることが可能になる。したがって、本形態では、送りネジ11に沿って移動する際のナット14の、前後方向に直交する方向の振動がレンズ枠5により伝達されにくくなり、その結果、移動中のレンズ枠5の振動を効果的に抑制することが可能になる。
【0036】
本形態のように、前後方向から見たときに、ワッシャ15の内周面は、ナット14の外形の中に納まっていることが好ましい。すなわち、本形態のように、円環状に形成されるワッシャ15の内周面の全周に亘って、ナット14とレンズ枠5との間にワッシャ15が配置されていることが好ましい。この場合には、ナット14とレンズ枠5との接触を確実に防止することが可能になる。また、この場合には、ワッシャ15の前側の面は、孔15aの周囲の全周に亘ってナット14に接触する。また、ワッシャ15の後ろ側の面は、孔15aの周囲の全周に亘ってレンズ枠5に接触する。そのため、ワッシャ15が前後に傾くことを防止できる。仮に、前後方向から見たときに、ワッシャ15の内周面が、ナット14の外形の中に納まらない場合には、ワッシャ15が前後に傾き、ワッシャ15がナット14とレンズ枠5との間で片押しの状態となり、ワッシャ15が破損してしまう虞がある。
【0037】
本形態のように、ワッシャ15の厚さは、送りネジ11のピッチ以上の厚さとなっていることが好ましい。この場合には、送りネジ11が回転したときに、送りネジ11のネジ山やネジ溝に沿って送りネジ11の径方向へワッシャ15が移動して振動するのを防止することが可能になる。したがって、ワッシャ15の振動に起因するレンズ枠5の振動を抑制することが可能になる。仮に、ワッシャ15の厚さが送りネジ11のピッチ未満の厚さとなっている場合には、ワッシャ15が送りネジ11のネジ溝内に落ちる虞がある。ワッシャ15が送りネジ11のネジ溝内に落ちると、ワッシャ15がネジ溝の傾斜方向に傾斜する。そのため、ワッシャ15がナット14とレンズ枠5との間で片押しの状態となり、ワッシャ15が破損してしまう虞がある。
【0038】
また、本形態のように、ワッシャ15の比重は、レンズ枠5の比重およびナット14の比重よりも大きくなっていることが好ましい。この場合には、移動時のワッシャ15の慣性を大きくすることが可能になる。したがって、移動時のワッシャ15の振動を抑制することが可能になり、その結果、ワッシャ15の振動に起因するレンズ枠5の振動を抑制することが可能になる。
【0039】
本形態のように、ワッシャ15は、環状かつ平板状に形成されており、ワッシャ15の内周側に送りネジ11が挿通されていることが好ましい。この場合には、ナット14とレンズ枠5との間からのワッシャ15の外れを防止することが可能になる。また、本形態のように、前後方向から見たときに、ワッシャ15がナット14の外形の中に納まっていることが好ましい。この場合には、ワッシャ15とレンズ枠5の肉厚部5hとの干渉を防止しやすくなる。
【0040】
また、本形態のように、被保持部5bの接触面5gは、肉厚部5hの前面よりも後方に配置されていることが好ましい。また、肉厚部5hおよびナット14は、接触面5gとナット14との間にワッシャ15を挟み込んだ状態で、互いに干渉しない形状に形成されていることが好ましい。つまり、接触面5gとの間にワッシャ15を挟み込んだ状態のナット14の後面は、肉厚部5hの前面よりも後方に位置することが好ましい。すなわち、肉厚部5hとナット14とは、光軸と直交する方向で互いに重なり合う部分を有することが好ましい。この場合には、被保持部5bの後面とナット14の前面までの厚さが薄くなり、移動機構6の小型化を図ることができる。なお、前後方向から見たときに、ワッシャ15がナット14の外形の中に納まらない場合には、ワッシャ15の後面が肉厚部5hの前面に接触(干渉)してしまう虞がある。つまり、被保持部5bの後面とナット14の前面までの厚さを薄くできなくなってしまうおそれがある。これに対し、上述したように、前後方向から見たときに、ワッシャ15がナット14の外形の中に納まるようにすると、レンズ枠5の肉厚部5hとワッシャ15との干渉を確実に防止でき、移動機構6の小型化を図ることができる。
【0041】
(他の実施の形態)
上述した形態では、ワッシャ15は、ポリテトラフルオロエチレンで形成されているが、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、および、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数が、レンズ枠5とナット14とが接触しているとした場合のレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数よりも小さくなるのであれば、ワッシャ15は、ポリテトラフルオロエチレン以外の材料で形成されていても良い。たとえば、ワッシャ15は、ポリスライダーで形成されていても良い。また、上述した形態では、レンズ枠5とナット14とがポリカーボネイトで形成されているが、レンズ枠5とナット14とが異なる材料で形成されていても良い。
【0042】
上述した形態では、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、および、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数が、ナット14とレンズ枠5とが接触しているとした場合のレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数よりも小さくなっているが、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、または、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数が、ナット14とレンズ枠5とが接触しているとした場合のレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数以上となっていても良い。たとえば、ワッシャ15の前面側とワッシャ15の後面側とが異なる材料で形成されている場合に、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、または、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数が、ナット14とレンズ枠5とが接触しているとしたときのレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数以上となっていても良い。
【0043】
この場合であっても、レンズ枠5とワッシャ15との間の摩擦係数、および、ナット14とワッシャ15との間の摩擦係数のいずれか一方が、ナット14とレンズ枠5とが接触しているとした場合のレンズ枠5とナット14との間の摩擦係数よりも小さくなっているため、ナット14とレンズ枠5とが接触しているとしたときにナット14とレンズ枠5との間に生じる摩擦力よりも、ワッシャ15とレンズ枠5との間に生じる摩擦力、または、ワッシャ15とナット14との間に生じる摩擦力が小さくなる。したがって、送りネジ11に沿って移動する際のナット14の、前後方向に直交する方向の振動がレンズ枠5に伝達されにくくなる。
【0044】
上述した形態では、ワッシャ15の内径は、送りネジ11の外径よりも若干大きくなっているが、図5(A)に示すように、ワッシャ15の内径は、送りネジ11の外径より大幅に大きくなっていても良い。この場合、図5(B)に示すように、ワッシャ15の内径D1をとし、送りネジ11の外径をD2とし、ナット14の外径をD3とすると、
D1<D2/2+D3/2
となっていることが好ましい。このようになっていると、前後方向から見たときに、ワッシャ15の内周面がナット14の外形の中に納まるため、上述した形態と同様に、ナット14とレンズ枠5との接触を確実に防止することが可能になる。
【0045】
上述した形態では、ワッシャ15は、円環状に形成されているが、ワッシャ15は、楕円環状に形成されていても良いし、四角環状等の多角環状に形成されていても良い。また、上述した形態では、ワッシャ15は、環状に形成されているが、ナット14とレンズ枠5との間からワッシャ15が外れないのであれば、ワッシャ15は、環状以外の形状に形成されていても良い。たとえば、ワッシャ15は、U形状やC形状等に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 レンズ鏡筒
4 レンズ(フォーカスレンズ)
5 レンズ枠
5f 貫通穴
6 移動機構
11 送りネジ
12 モータ(駆動源)
13 バネ(付勢部材)
14 ナット
15 ワッシャ(低摩擦部材)
Z1 第1方向側
Z2 第2方向側
図1
図2
図3
図4
図5