特許第6774062号(P6774062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774062
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】裁断機
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/20 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   B26D7/20
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-136106(P2018-136106)
(22)【出願日】2018年7月19日
(65)【公開番号】特開2020-11350(P2020-11350A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115821
【氏名又は名称】株式会社リヒトラブ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 莞二
(72)【発明者】
【氏名】有本 佳照
(72)【発明者】
【氏名】岩本 真一
(72)【発明者】
【氏名】岩上 優樹
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−017987(JP,U)
【文献】 国際公開第2017/199842(WO,A1)
【文献】 特開2008−177229(JP,A)
【文献】 実開昭57−059097(JP,U)
【文献】 実開平02−097599(JP,U)
【文献】 米国特許第02007731(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃と、
該切断刃の下方に配置され、第一方向に延びたマットと、
前記第一方向に延びており、前記マットを抜き出し可能に保持する保持溝と、
前記第一方向に直角な第二方向に対向する前記保持溝の第一側面及び第二側面それぞれに形成され、前記マットを位置決めする複数の位置決め突起と
を備え、
前記複数の位置決め突起は、少なくとも、前記マットの両端部を前記第二方向に位置決めし、
前記複数の位置決め突起は、
前記保持溝の端部において前記第一側面及び第二側面にそれぞれ形成された第一位置決め突起と、
前記保持溝の中途部において前記第一側面及び第二側面にそれぞれ形成された第二位置決め突起と
を備え、
前記第一側面に形成された前記第二位置決め突起と前記第二側面に形成された前記第二位置決め突起との間の寸法は、前記第一側面に形成された前記第一位置決め突起と前記第二側面に形成された前記第一位置決め突起との間の寸法よりも長い
裁断機。
【請求項2】
前記保持溝の一端部に蓋が配置されており、
前記複数の位置決め突起には、前記保持溝の一端部側の突出幅が前記保持溝の他端部側の突出幅よりも短い傾斜面がそれぞれ形成されている
請求項1に記載の裁断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、シート状の被裁断物、例えば紙を裁断する裁断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カッターナイフの下方に、断面四角形の受木嵌合溝を形成し、該受木嵌合溝に、断面四角形の細長い受木(マット)を嵌合させるペーパー裁断機が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−89494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断面四角形の受木嵌合溝に、断面四角形の受木を円滑に嵌合させるために、受木嵌合溝と受木との間にはクリアランスが設けられる。しかし、被裁断物を裁断する時に、受木の位置がずれて、被裁断物が移動し、切れ目が蛇行するおそれがあった。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、切断刃を受けるマットの位置ずれを防止する裁断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る裁断機は、切断刃と、該切断刃の下方に配置され、第一方向に延びたマットと、前記第一方向に延びており、前記マットを保持する保持溝と、前記第一方向に直角な第二方向に対向する前記保持溝の第一側面及び第二側面それぞれに形成され、前記マットを位置決めする複数の位置決め突起とを備え、前記複数の位置決め突起は、少なくとも、前記マットの両端部を前記第二方向に位置決めする。
【0007】
本開示においては、マットに平行な第一方向に直角な第二方向において、複数の位置決め突起によって、マットの両端部が位置決めされ、裁断時におけるマットの位置ずれが防止される。
【0008】
本開示に係る裁断機は、前記複数の位置決め突起は、前記保持溝の端部において前記第一側面及び第二側面にそれぞれ形成された第一位置決め突起と、前記保持溝の中途部において前記第一側面及び第二側面にそれぞれ形成された第二位置決め突起とを備え、前記第一側面に形成された前記第二位置決め突起と前記第二側面に形成された前記第二位置決め突起との間の寸法は、前記第一側面に形成された前記第一位置決め突起と前記第二側面に形成された前記第一位置決め突起との間の寸法よりも長い。
【0009】
本開示においては、保持溝の中途部において、第二位置決め突起の間の寸法は長く、保持溝の端部において、第一位置決め突起の間の寸法は短い。そのため、保持溝の端部からマットを挿入した場合に、保持溝の中途部における抵抗が小さくなり、マットを円滑に挿入させることができる。また保持溝への挿入が完了した場合、マットの両端部は第一位置決め突起によって確実に位置決めされる。
【0010】
本開示に係る裁断機は、前記保持溝の一端部に蓋が配置されており、前記複数の位置決め突起には、前記保持溝の一端部側の突出幅が前記保持溝の他端部側の突出幅よりも短い傾斜面がそれぞれ形成されている。
【0011】
本開示においては、蓋を取り外して、保持溝の一端部からマットを挿入した場合、マットが位置決め突起に接触しても、傾斜面によって、マットと位置決め突起との間に生じる抵抗が小さくなり、マットが保持溝に円滑に挿入される。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る裁断機にあっては、マットに平行な第一方向に直角な第二方向において、複数の位置決め突起によって、マットの両端部が位置決めされ、裁断時におけるマットの位置ずれが防止される。そのため、被裁断部の切れ目が蛇行することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】展開した状態の裁断機を略示する斜視図である。
図2】裁断部を略示する平面図である。
図3図2に示すIII−III線を切断線とした断面図である。
図4図2に示すIV−IV線を切断線とした断面図である。
図5図2に示すV−V線を切断線とした断面図である。
図6】裁断部を略示する前面図である。
図7】裁断部を略示する後面図である。
図8】マットホルダ及びカッターマットを略示する部分拡大平面図である。
図9】カッターマットの使用方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施の形態に係る裁断機1を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では、図に示す上下前後左右を使用する。図1は、展開した状態の裁断機1を略示する斜視図である。裁断機1は、前後方向に延びる裁断部20と、裁断部20の左側に配置された左ベース2と、裁断部20の右側に配置された右ベース7とを備える。左ベース2及び右ベース7の前後左右上下寸法は略同じである。
【0015】
左ベース2の右側面両端部及び右ベース7の左側面両端部それぞれに、前後方向を軸方向とした枢軸(図示略)が設けられている。前記枢軸は、裁断部20の前後両端部に形成された挿入孔(図6図7参照)に挿入され、左ベース2及び右ベース7は回転可能に裁断部20に連結されている。左ベース2及び右ベース7それぞれの底面を接触させるように、左ベース2及び右ベース7を回転させることによって、裁断機1は、あたかも本のように折り畳まれる。折り畳まれた裁断機1は、狭いスペース、例えば一般家庭にある本棚に収納させることができる。
【0016】
図2は、裁断部20を略示する平面図、図3は、図2に示すIII−III線を切断線とした断面図、図4は、図2に示すIV−IV線を切断線とした断面図、図5は、図2に示すV−V線を切断線とした断面図、図6は、裁断部20を略示する前面図、図7は、裁断部20を略示する後面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、裁断部20は、前後に延びた箱状のマットホルダ21を備える。マットホルダ21の上側は開口している。マットホルダ21の前端部には前エンドパネル22が設けられている。図6に示すように、前エンドパネル22には、前述した左ベース2及び右ベース7それぞれの前側の枢軸が回転可能に挿入される二つの挿入孔22aが形成されている。
【0018】
図7に示すように、マットホルダ21の後端部には、二つの後エンドパネル23が設けられている。二つの後エンドパネル23は左右に離れている。各後エンドパネル23に挿入孔23aが形成されている。挿入孔23aには、前述した左ベース2及び右ベース7それぞれの後側の枢軸が回転可能に挿入される。マットホルダ21の後端部には蓋24が取り付けられている。蓋24は、左右方向における二つの後エンドパネル23の間、及び二つの後エンドパネル23の上側を塞ぐ。なお二つの後エンドパネル23の間には、後述する保持溝21aが配置されており、蓋24は保持溝21aの後端部開口を塞ぐ。蓋24は取り外すことができる。
【0019】
図2及び図5に示すように、マットホルダ21の左右方向中央部に、前後に延びた保持溝21aが形成されている。保持溝21aの左右側面それぞれに、前後に並んだ複数の位置決め突起21bが形成されている。保持溝21aには、細長い直方体状のカッターマット25が挿入されており、位置決め突起21bは左右方向においてカッターマット25を位置決めする。位置決め突起21bの詳細は後述する。
【0020】
図4に示すように、保持溝21aよりも左側又は右側において、マットホルダ21には収納室21dが形成されている。収納室21dは、マットホルダ21の前端部及び後端部にそれぞれ形成されている。収納室21dの上側は開口している。収納室21dには、レールホルダ26が収納されている。
【0021】
図3に示すように、レールホルダ26の左右方向中央部には、カッターマット25が挿入される前後方向に延びた溝26aが形成されている。図13に示すように、溝26aの左右において、レールホルダ26は上面部26cを備え、該上面部26cから下方に円筒ボス26bが突出している。円筒ボス26bの周囲には付勢部材、例えばばね27が設けられている。ばね27はレールホルダ26を上方に付勢している。なお、ばね27に代えて、ゴム又は弾性力を有する合成樹脂材を使用してもよい。
【0022】
マットホルダ21の前端部に配置されたレールホルダ26において、溝26aの下面部に、前後方向に延びたスリット26dが形成されている。マットホルダ21の下方にプッシャー29が配置されており、プッシャー29の一部がスリット26dに下から挿入されている。プッシャー29の一部は、カッターマット25の前端に対向する。プッシャー29は前後方向に移動可能であり、プッシャー29を後方に移動させることによって、プッシャー29はカッターマット25の前端を押し、カッターマット25を後方に移動させることができる。
【0023】
図2図5及び図7に示すように、二つのレールホルダ26の上側に、前後方向に延びた二つのレール28が保持されている。二つのレール28は左右に離れており、平面視において、二つのレール28の間からカッターマット25が露出する。図5に示すように、ばね27の付勢力によって、レール28とマットホルダ21との間には、被裁断物が挿入される隙間28aが設けられる。
【0024】
二つのレール28にはスライダ30が設けられている。スライダ30は、レール28に沿って移動可能である。スライダ30はハンドル31及び切断刃32を備え、ハンドル31の下側に切断刃32が配置されている。ハンドル31及び切断刃32は付勢部材(図示略)によって、上方に付勢されており、付勢部材の付勢力に抗して、ハンドル31を下降させた場合、切断刃32も下降する。
【0025】
右ベース7及び左ベース2を展開させた状態で、レール28とマットホルダ21との間の隙間28aに被裁断物を挿入し、ハンドル31を押し下げて、スライダ30を移動させることによって、切断刃32は被裁断物を裁断することができる。
【0026】
図8は、マットホルダ21及びカッターマット25を略示する部分拡大平面図である。前述したように、保持溝21aの左右側面それぞれに位置決め突起21bが形成されている。保持溝21aの左側面に形成された位置決め突起21bと、保持溝21aの右側面に形成された位置決め突起21bは左右方向に対向する。なお前記左側面に形成された位置決め突起21bと、前記右側面に形成された位置決め突起21bとを千鳥状に配置してもよい。
【0027】
位置決め突起21bは、平面視において、軸方向に沿った上下方向に延びる切断面によって流線形を切断したような半流線形状をなし、後端側の突出幅が前端側の突出幅よりも短くなるような形状をなす。即ち、位置決め突起21bは、保持溝21aの後端部側の突出幅が前端部側の突出幅よりも短い傾斜面21cを有する。なお位置決め突起21bは傾斜面21cを有していればよく、半流線形状に代えて、頂点の丸い三角形状又は半円形状などの他の形状でもよい。
【0028】
カッターマット25をマットホルダ21に保持させる場合、蓋24を取り外し、図8の矢印にて示すように、保持溝21aの後端部開口からカッターマット25を挿入させる。カッターマット25の挿入時において、カッターマット25と位置決め突起21bとの摩擦が傾斜面21cによって軽減され、カッターマット25は保持溝21aに円滑に挿入される。挿入されたカッターマット25は、左右の位置決め突起21bによって、左右方向に位置決めされる。
【0029】
図8に示すように、最も前側に位置する左右の位置決め突起21bの間の左右寸法をd1とし、最も後側に位置する左右の位置決め突起21bの間の寸法をd3とする。また最も前側に位置する位置決め突起21bと、最も後側に位置する位置決め突起21bとの間、即ち保持溝21aの中途部に形成された左右の位置決め突起21bの間の左右寸法をd2とした場合、d2は、d1又はd3よりも長い。d2は、d1又はd3よりも長いので、カッターマット25の挿入時において、保持溝21aの中途部にてカッターマット25と位置決め突起21bとの摩擦が生じにくい。
【0030】
一方、保持溝21aの前端部及び後端部において、カッターマット25は、左右の位置決め突起21bによって強く挟まれ、カッターマット25の左右方向への位置ずれが防止される。そのため、被裁断部の切れ目が蛇行することを防止することができる。なおd1及びd3の大小関係は適宜設定される。最も前側又は後側に位置する位置決め突起21bは第一位置決め突起に相当し、前記中途部に位置する位置決め突起21bは、第二位置決め突起に相当する。
【0031】
図9は、カッターマット25の使用方法を説明する断面図である。図9Aに示すように、切断刃32によって被裁断物50(例えば紙)を切断する場合、被裁断物50は、切断刃32とカッターマット25との間に配置され、切断刃32を下降させて、前後方向に移動させることによって、被裁断物50が切断される。このとき、切断刃32は、細長い直方体状のカッターマット25の上面を押すので、該上面の押された部分の左右両側に突部25aが形成される。即ち、カッターマット25の上面に凹凸が形成される。該凹凸の程度が大きくなると、未切断部分発生又は切れ目の蛇行などの切断不良が発生する。そのため、必要に応じて、蓋24を取り外し、プッシャー29を後方に移動させて、カッターマット25を保持溝21aから抜き出し、その軸回りに90度回転させて、再度、保持溝21aに挿入させる。
【0032】
図9Bに示すように、再度保持溝21aに挿入されたカッターマット25の突部25aは、カッターマット25の左側又は右側に位置する。換言すれば、カッターマット25の左右幅は、回転前に比べて長くなる。突部25aは、保持溝21aの左側面又は右側面に形成された位置決め突起21bに接触しやすく、カッターマット25と位置決め突起21bとの間で摩擦が生じやすい。
【0033】
上述したように、保持溝21aの中途部における寸法d2を、保持溝21aの前端部及び後端部における寸法d1、d3よりも長くすることによって、前記中途部にて、保持溝21aの左右方向におけるクリアランスを大きくすることができ、突部25aが形成された場合でも、前記中途部における摩擦の発生を軽減させて、カッターマット25の円滑な挿入を実現させることができる。一方、保持溝21aへの挿入が完了した場合、カッターマット25の両端部は、最前端及び最後端に配置された位置決め突起21bによって確実に位置決めされる。即ち、左右方向におけるカッターマット25の位置決めと、カッターマット25の円滑な挿入とを両立させることができる。
【0034】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
2 左ベース
7 右ベース
20 裁断部
21 マットホルダ
21a 保持溝
21b 位置決め突起
21c 傾斜面
24 蓋
25 カッターマット(マット)
25a 突部
30 スライダ
31 ハンドル
32 切断刃
50 被裁断物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9