(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774082
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ねじ締め装置のトルク調整方法および装置
(51)【国際特許分類】
B25B 23/157 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
B25B23/157 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-104116(P2016-104116)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-209748(P2017-209748A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390041380
【氏名又は名称】戸津 勝行
(72)【発明者】
【氏名】戸津 勝行
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−321166(JP,A)
【文献】
実開昭62−153021(JP,U)
【文献】
特開平07−256528(JP,A)
【文献】
特開昭53−106999(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0192860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/157
B25B 21/00
F16D 15/00
B23P 19/06
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ等の駆動手段の回転駆動出力軸に遊星歯車減速機構およびクラッチ機構を介して所要の回転工具を結合し、所要のねじ締め作業において、ねじ取付け対象物に対するねじの締付け完了に伴い前記回転工具に生じる負荷トルクが予め設定したトルク値に達した際に、前記クラッチ機構がクラッチ動作して前記回転工具の回転駆動を停止制御するように構成してなるねじ締め装置において、
前記クラッチ機構は、前記遊星歯車減速機構のインターナルギヤの円錐状閉塞底面部または外周面部に設けたクラッチカムに対応するように鋼球を配置し、前記鋼球に対しトルク調整用電磁石によりトルク調整されるクラッチ作動部材の一端部により当接保持し、
前記トルク調整用電磁石は、円筒ケースに電磁石ユニットを収納し、前記クラッチ作動部材として、前記電磁石ユニットの鉄心との一端部に、前記クラッチ機構の鋼球に当接する保持部材に永久磁石を当接して対向配置し、前記鉄心と永久磁石とが相互に磁気反発力を生じるように設定し、
ねじ締め作業に際して、前記電磁石のコイル電流を可変調整することにより、ねじ締めによる負荷トルクに対応するように前記電磁石の磁力の設定値を調整することを特徴とするねじ締め装置のトルク調整方法。
【請求項2】
電動モータ等の駆動手段の回転駆動出力軸に遊星歯車減速機構およびクラッチ機構を介して所要の回転工具を結合し、所要のねじ締め作業において、ねじ取付け対象物に対するねじの締付け完了に伴い前記回転工具に生じる負荷トルクが予め設定したトルク値に達した際に、前記クラッチ機構がクラッチ動作して前記回転工具の回転駆動を停止制御するように構成してなるねじ締め装置において、
前記クラッチ機構として、前記遊星歯車減速機構のインターナルギヤの円錐状閉塞底面部または外周面部に設けたクラッチカムに対応するように鋼球を配置する構成とし、前記鋼球に対し、電磁石による磁力により保持するクラッチ作動部材を備えたトルク調整用電磁石を設け、
前記トルク調整用電磁石は、円筒ケースに電磁石ユニットを収納した構成からなり、前記クラッチ作動部材として、前記電磁石ユニットの鉄心との一端部に、前記クラッチ機構の鋼球に当接する保持部材に永久磁石を当接して対向配置し、前記鉄心と永久磁石とが相互に磁気反発力を生じるように構成し、
ねじ締め作業に際して、前記クラッチ機構がクラッチ動作を行うねじ締め負荷トルクに対応するように、前記電磁石のコイル電流を可変調整して前記電磁石の磁力の設定値を調整可能に構成することを特徴とするねじ締め装置のトルク調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータ等の回転駆動出力軸にクラッチ機構を介してドライバービット等の回転工具を結合したねじ締め装置において、前記クラッチ機構によるねじ締め負荷トルクのトルク調整を、電磁石を利用して外部操作により簡便にして迅速かつ適正に行うことができるねじ締め装置のトルク調整方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、クラッチ式電動ドライバーにおいて、所要のねじ締め作業に際し、最適の締付けトルクでねじ締めを行うために、クラッチ機構を構成するスプリングの弾力を調整するスプリング弾力調節装置を開発し、特許を得た(特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に記載のスプリング弾力調節装置は、一端部をクラッチ板に当接すると共に他端部にスプリングを係合して弾力調節可能に構成したクラッチスリーブを備えたクラッチ機構において、一端部よりクラッチスリーブを挿通すると共に他端部よりスプリングを挿通する円筒形内装部材を設け、この内装部材の他端部側外周にストッパを介してクリック溝を有するねじ溝を螺設し、このねじ溝外周に間隙調節リングを交換自在に介装し、さらに前記ねじ溝に螺合すると共に前記クリック溝に嵌入し得るボールを有しかつ前記スプリングの他端部と係合し前記間隙調節リングを前記ストッパとの間において挾持するように構成したナットを設けた構成からなる。
【0004】
すなわち、前記特許文献1に記載のスプリング弾力調節装置においては、数種類の軸方向において厚みの異なる間隙調節リングを用意しておき、それらを単独または複数個使用して、前記ナットを一杯に締め上げることにより、前記間隙調節リングの厚みによってスプリングの作用する弾力値をそれぞれ可調整に制限することにより、クラッチ動作するねじ締めトルク値の設定を調節することができるものである。
【0005】
また、従来のクラッチ機構を設けた電動ドライバーにおいて、クラッチ機構によりトルク検出を行う方式を採用する場合、通常前記特許文献1に記載されるようなスプリング弾力調節装置からなる、外部操作可能なトルク調整機構が設けられる。すなわち、この種のトルク調成機構は、回転工具の支持軸に対し同軸的にその周囲を囲繞する位置に設けられる。しかしながら、この種の電動ドライバーを自動操作機等と組合せて使用する場合には、前記回転工具の支持軸の周囲には種々の機構が組合せ配置されることから、それらの配置スペースを確保する必要があると共に、トルク調整機構の調整を行う場合には、電動ドライバー本体を自動操作機およびその周辺機構から取り外して行う必要が有り、前記調整作業が煩雑となる。
【0006】
このような観点から、本出願人は、前述したトルク調整機構の設定位置を、把持部ケーシングに内蔵される電動モータの出力軸の軸方向延長線上において接続配置される回転工具の支持軸に、その軸方向に対し傾斜させて把持部ケーシングより突出するように接続配置した電動回転工具を開発し、特許を得た(特許文献2参照)。
【0007】
そして、本出願人は、さらに前記特許文献2に記載の電動回転工具において、トルク調整機構を構成する場合、クラッチ機構の構成として、インターナルギヤの閉塞底面部を円錐状に形成し、その円錐状外側底面部にクラッチ動作を行うための突起部を設けたクラッチカム面を形成し、このクラッチカム面の突起部と対応する位置に鋼球を配置して、この鋼球をトルク調整機構としてのトルク設定機構のトルク調整用ばねを介して、回転工具軸に対し斜め方向に独立させて弾力的に保持するようにした電動回転工具のトルク制御方式を開発し、特許を得た(特許文献3参照)。
【0008】
さらにまた、本出願人は、前記特許文献2および特許文献3の代案として、クラッチ機構の構成として、インターナルギヤのクラッチ面が対向する把持部ケーシングの一部を、その半径方向外方に突出させて、トルク調整機構としてのトルク調整ばね収納ケースを形成してなる、トルク検出および自動停止機構を備える電動回転工具を開発し、特許を得た(特許文献4参照)。
【0009】
前記特許文献4に記載のトルク調整機構においては、クラッチ機構としてのインターナルギヤのクラッチ面に、トルク調整機構としてのトルク調整ばね収納ケースに収納されたトルク調整ばねがクラッチ板を介して鋼球を半径方向外方から強制的に押付けると共に、前記収納ケースの他端部にトルク調整キャップを調整可能に取付けた構成からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−31330号公報
【特許文献2】特許第4721535号公報
【特許文献3】特許第4999236号公報
【特許文献4】特許第3600255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した特許文献1−4において提案したクラッチ機構に対するトルク調整機構を採用する電動回転工具においては、前記トルク調整機構として、いずれもクラッチ機構としてのインターナルギヤの一部にクラッチ面を設けて、このクラッチ面に対して鋼球を当接配置すると共に、前記鋼球を、コイルばねを介して保持する構成とし、前記コイルばねの弾力を調整することにより、クラッチ動作が行われるねじ締めトルクの調整を行うように構成したものである。
【0012】
従って、前記従来のトルク調整機構においては、電動ドライバー等のねじ締め装置に設けたトルク調整機構に対し、直接手動操作によりコイルばねの弾力調整を行う必要があることから、適正な調整作業を行うためには、経験と熟練とを必要とするばかりでなく、作業も煩雑かつ面倒となる等の難点があった。
【0013】
そこで、本発明者は、前記難点を解消すべく種々検討並びに試作を行った結果、従来のコイルばねに代えて、あるいはコイルばねと共に、電磁石を使用することにより、この電磁石の発生する磁力に基づく金属の吸着力または反発力を利用して、クラッチ機構の動作すなわち「ねじ締めトルク」の設定を、外部から容易かつ簡便に、しかも適正に行うことができることを突き止めた。
【0014】
しかるに、電磁石は、鉄心のまわりにコイルを巻き、通電することにより一時的に磁力を発生させるものであり、この場合、電磁石の発生する磁力(磁束密度B)はコイルに流れる電流(コイル電流I)の大きさに比例することが知られている。そこで、クラッチ機構のクラッチ動作を行う鋼球に対する保持部材として、一端を非磁性材料で形成して鋼球に当接させると共に、他端の一部を磁性材料で形成して電磁石により予め設定した磁力により保持させてその長手方向に変位可能に構成したクラッチ作動部材を設けることにより、ねじ締め作業において前記電磁石のコイル電流を適宜調整し、鋼球の変位動作を検出するように設定して、ねじ締めトルクのトルク調整を円滑に行うことを可能とした。
【0015】
従って、本発明の目的は、電動モータ等の回転駆動出力軸にクラッチ機構を介してドライバービット等の回転工具を結合したねじ締め装置において、前記クラッチ機構によるねじ締め負荷トルクのトルク調整を、電磁石を利用して外部操作により簡便にして迅速かつ適正に行うことができるねじ締め装置のトルク調整方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載のねじ締め装置のトルク調整方法は、電動モータ等の駆動手段の回転駆動出力軸に遊星歯車減速機構およびクラッチ機構を介して所要の回転工具を結合し、所要のねじ締め作業において、ねじ取付け対象物に対するねじの締付け完了に伴い前記回転工具に生じる負荷トルクが予め設定したトルク値に達した際に、前記クラッチ機構がクラッチ動作して前記回転工具の回転駆動を停止制御するように構成してなるねじ締め装置において、
前記クラッチ機構は、前記遊星歯車減速機構のインターナルギヤの円錐状閉塞底面部または外周面部に設けたクラッチカムに対応するように鋼球を配置し、前記鋼球に対しトルク調整用電磁石によりトルク調整されるクラッチ作動部材の一端部により当接保持し、
前記トルク調整用電磁石は、円筒ケースに電磁石ユニットを収納し、前記クラッチ作動部材として、前記電磁石ユニットの鉄心との一端部に、前記クラッチ機構の鋼球に当接する保持部材に永久磁石を当接して対向配置し、前記鉄心と永久磁石とが相互に磁気反発力を生じるように設定し、
ねじ締め作業に際して、前記電磁石のコイル電流を可変調整することにより、ねじ締めによる負荷トルクに対応するように前記電磁石の磁力の設定値を調整することを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項
2に記載のねじ締め装置のトルク調整装置は、電動モータ等の駆動手段の回転駆動出力軸に遊星歯車減速機構およびクラッチ機構を介して所要の回転工具を結合し、所要のねじ締め作業において、ねじ取付け対象物に対するねじの締付け完了に伴い前記回転工具に生じる負荷トルクが予め設定したトルク値に達した際に、前記クラッチ機構がクラッチ動作して前記回転工具の回転駆動を停止制御するように構成してなるねじ締め装置において、
前記クラッチ機構
として、前記遊星歯車減速機構のインターナルギヤの円錐状閉塞底面部または外周面部に設けたクラッチカムに対応するように鋼球を配置する構成とし、
前記鋼球に対し、電磁石による磁力により保持するクラッチ作動部材を備えたトルク調整用電磁石を設け、
前記トルク調整用電磁石は、円筒ケースに電磁石ユニットを収納した構成からなり、前記クラッチ作動部材として、前記電磁石ユニットの鉄心との一端部に、前記クラッチ機構の鋼球に当接する保持部材に永久磁石を当接して対向配置し、前記鉄心と永久磁石とが相互に磁気反発力を生じるように構成し、
ねじ締め作業に際して、前記クラッチ機構がクラッチ動作を行うねじ締め負荷トルクに対応するように、前記電磁石のコイル電流を可変調整して前記電磁石の磁力の設定値を調整可能に構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置によれば、電動モータ等の駆動手段の回転駆動出力軸に遊星歯車減速機構およびクラッチ機構を介して所要の回転工具を結合し、所要のねじ締め作業において、ねじ取付け対象物に対するねじの締付け完了に伴い前記回転工具に生じる負荷トルクが、予め設定したトルク値に達した際に、前記回転工具の回転駆動を停止制御するように構成してなるねじ締め方法および装置において、前記クラッチ機構に対し作用するトルク調整機構として、前記クラッチ機構のクラッチ動作に対し電磁石による磁力により保持するクラッチ作動部材を備えたトルク調整用電磁石を設け、ねじ締め作業に際して、前記電磁石のコイル電流を可変調整することにより、ねじ締めによる負荷トルクに対応するように前記電磁石の磁力の設定値を調整するように構成することにより、従来のスプリングの弾力調整を行う方式に比較して、電磁石のコイルに対する通電回路における供給電流の調整を行う電気制御方式を採用することができることから、トルク調整作業を容易かつ簡便にして、しかも外部調整作業も容易に行うことができる。
【0030】
本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置によれば、本出願人が先に提案したクラッチ機構に対するトルク調整方式の電動回転工具の把持部ケーシングの構成を応用して、本発明に係る電磁石を応用したトルク調整方式を、容易かつ簡便な組立て構成とすることができると共に、低コストに製造することができる。
【0031】
本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置によれば、従来のクラッチ機構に対するトルク調整方式と同様に、クラッチ機構の動作状態を検出してクラッチ機構のクラッチ動作に伴う回転工具の回転駆動の停止制御を、簡便かつ適正に行うように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置の一実施態様としてのねじ締め装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図1に示すねじ締め装置のクラッチ機構に対するトルク調整機構としてのトルク調整用電磁石の構成と電気系統とを示す要部断面説明図である。
【
図3】
図2に示すトルク調整用電磁石の組立て構成を示す説明図である。
【
図4】本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置の別の実施態様であって、
図2に示すトルク調整用電磁石の変形例を示す要部断面説明図である。
【
図5】本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置のさらに別の実施態様であって、
図5に示すトルク調整用電磁石の変形例を示す要部断面説明図である。
【
図6】本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置のさらにまた別の実施態様であって、トルク調整用電磁石のさらに別の変形例を示す要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法につき、その方法を実施する装置との関係に基づいて、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明に係るねじ締め装置におけるトルク調整装置を設けたねじ締め装置の典型的な一実施態様を示す概略構成説明図である。すなわち、
図1において、参照符号10はねじ締め装置としての電動ドライバーを示し、この電動ドライバー10においては、把持部ケーシング12内に、図示しないが、従来公知の構成要素として、電動モータと、この電動モータを駆動するための駆動スイッチと、前記電動モータの駆動出力軸に減速機構およびクラッチ機構を結合した構成が、それぞれ内蔵されている。そして、前記クラッチ機構を介して回転工具としてのドライバービット14を結合した構成からなる。
【0035】
本実施例における電動ドライバー10としては、先の従来技術において説明したように、クラッチ機構のトルク調整を行うためのトルク調整機構30を、回転工具としてのドライバービット14と同軸に形成される回転支持軸16(
図2)に対し、図示するように傾斜させて、把持部ケーシング12より突出するように設けた構成からなる(
図1、
図2参照)。
【0036】
図2および
図3は、本発明に係る前記構成配置からなるねじ締め装置としての電動ドライバー10における、クラッチ機構18に対するトルク調整機構30の一実施例を示すものある。
【0037】
図2において、本実施例のトルク調整機構30を設ける電動ドライバー10のクラッチ機構18は、電動モータの回転駆動軸に結合される遊星歯車減速機構20のインターナルギヤ22の円錐状閉塞底面部21の外側面を、クラッチカム面23としてその一部にクラッチ動作を行うための突起部24を設け、このクラッチカム面23の突起部24に対応するように、前記遊星歯車減速機構20を囲繞するケーシング26の一部に、図示するような開口部27を設けて、この開口部27内に鋼球28を転動可能に収納配置した構成からなる。
【0038】
そこで、本実施例のトルク調整機構30は、前記構成からなるクラッチ機構18の鋼球28に対し、所要のトルク設定を行ってクラッチ動作を行うための保持部材として、従来のトルク調整用ばねに代えて、トルク調整用電磁石40を設けたものである。
【0039】
しかるに、本実施例におけるトルク調整用電磁石40は、
図2および
図3に示すように、ステンレス鋼または合成樹脂等からなる非磁性材料により形成した中空2重円筒ケース42からなり、この2重円筒ケース42の内部に、中空円筒形にして一端にフランジ部33を形成した鉄心32に、コイル34を巻いた電磁石ユニット36を、前記鉄心32のフランジ部33側を、例えば正極となるように収納配置した構成からなる。このようにして、中空2重円筒ケース42内に収納配置された電磁石ユニット36に巻かれたコイル34は、前記ケース42の外部に一対の導線35を導出して所要の直流電源に接続するように設定する。
【0040】
そして、前記構成からなるトルク調整用電磁石40には、前記中空2重円筒ケース42の中空部43を貫通するクラッチ作動部材としてのクラッチ作動杆38を設ける。前記クラッチ作動杆38は、ステンレス鋼等の非磁性材料で形成して、その一端部を前記クラッチ機構18の鋼球28に対し当接保持し、他端部には前記トルク調整用電磁石40に磁気吸着される残留磁気の小さい珪素鋼板等で形成した吸着板39を設けて、前記トルク調整用電磁石40の一端側に対しクラッチ作動杆38の長手方向に接合離反可能に構成配置する(
図2参照)。
【0041】
このように構成したトルク調整用電磁石40は、ねじ締め作業に際して、前記電磁石ユニット36のコイル電流を可変調整することにより、ねじ締めによる負荷トルクに対応するように前記電磁石の磁気吸着力の設定値を調整するため、前記ケース42の外部に導出される導線35の一部に可変抵抗器44を設ける(
図2参照)。従って、本実施例においては、この可変抵抗器44を電動ドライバー10の把持部ケーシング12の外部から、適宜調整可能に設定することができる。
【0042】
また、前記トルク調整用電磁石40においては、クラッチ機構18のクラッチ動作に伴うクラッチ作動杆38の変位を検出するため、クラッチ作動杆38の他端部に設けた吸着板39に対応してリミットスイッチからなるクラッチ動作検出器48を設け、前記検出器48によるクラッチ動作の検出に際して、電動ドライバー10の回転駆動を停止制御すると共に、前記電磁石ユニット36にコイル電流を供給する導線35に設けたコイル用電源スイッチ46を遮断して、前記トルク調整用電磁石40の機能を一時停止するように設定することができる(
図2参照)。
【0043】
図4は、本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置の
要部を示す実施態様であって、前述した
図2に示すトルク調整用電磁石40の変形例を示すものである。
【0044】
図4に示す実施例においては、前述した
図2に示すトルク調整用電磁石40において、クラッチ作動杆38をクラッチ機構18の鋼球28に対し弾力的に押圧保持するように、クラッチ作動杆38の吸着板39に対向させて圧縮コイルばね50を設けたものである。その他の構成については、
図2に示すトルク調整用電磁石40と同一であり、従って同一の構成要素については同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0045】
このように構成したトルク調整用電磁石40においては、クラッチ機構18の鋼球28に対するねじ締め負荷トルクの基本的なトルク値を、前記圧縮コイルばね50の押圧力で設定し、さらに前記電磁石40による磁力を調整することによって、所要のねじ締め負荷トルクに対応して適正なクラッチ動作を行うように設定することができる。
【0046】
図5は、本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置の
他の実施態様であって、前述した
図4に示すトルク調整用電磁石40の変形例を示すものである。
【0047】
図5に示す実施例においては、前述した
図3に示すトルク調整用電磁石40において、前記圧縮ばね50に代えて扁平円筒形に形成した永久磁石52を設けたものである。その他の構成については、前記実施例と同様に、
図2に示すトルク調整用電磁石40と同一であり、従って同一の構成要素については同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、本実施例において、クラッチ機構18のクラッチ動作に伴うクラッチ作動杆38の変位を検出するクラッチ動作検出器48としては、図示しないが、公知の近接スイッチをトルク調整用電磁石40の適所に設けることができる。
【0048】
このように構成したトルク調整用電磁石40においては、前記永久磁石52がクラッチ作動杆38の吸着板39を介して前記電磁石40と相互に吸着保持されるように設定することにより、前述した
図4に前記示す実施例と同様に、クラッチ機構18の鋼球28に対するねじ締め負荷トルクの基本的なトルク値を、前記永久磁石52の磁気吸着力により設定され、さらに前記電磁石40による磁力を調整することによって、所要のねじ締め負荷トルクに対応して適正なクラッチ動作を行うように設定することができる。
【0049】
図6は、本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置の
典型的な実施態様
を示すものであって、トルク調整用電磁石40の
好適な構成例を示すものである。
【0050】
図6に示す実施例において、本実施例のトルク調整用電磁石40は、ステンレス鋼または合成樹脂等からなる非磁性材料により形成した円筒ケース54の内部に、中実の円筒形にして一端にフランジ部57を形成した鉄心56に、コイル58を巻いた電磁石ユニット60を、例えば前記鉄心56のフランジ部57側が正極となるように、収納配置した構成とする。このようにして、円筒ケース54内に収納配置された電磁石ユニット60に巻かれたコイル58は、前記ケース54の外部に一対の導線59を導出して所要の直流電源に接続するように設定したものである。
【0051】
このように構成された電磁石ユニット60は、クラッチ機構18の鋼球28に対して、フランジ部62aを有する鋼球保持部材62の中央突出部62bを、クラッチ作動部材として当接すると共に、前記鋼球保持部材62のフランジ部62aの平面に対し扁平円筒形にして、例えば図示のように相対する平面の極性を設定した永久磁石64の一方の平面を当接配置する。そして、前記永久磁石64の他方の平面に対向させて、前記電磁石ユニット60の鉄心56のフランジ部57側を、相互に同一極性となるようにして対向配置する。なお、本実施例において、クラッチ機構18のクラッチ動作に伴う鋼球保持部材62等の変位を検出するクラッチ動作検出器48としては、図示しないが、公知の近接スイッチをトルク調整用電磁石40の適所に設けることができる。
【0052】
このように構成したトルク調整用電磁石40においては、前記電磁石ユニット60の鉄心56のフランジ部57側と、前記鋼球保持部材62に当接する永久磁石64とが、相互に磁力反発作用して、前記クラッチ機構18の鋼球28を保持することができる。従って、
前記クラッチ機構18の鋼球28に対するねじ締め負荷トルクの基本的なトルク値を、前記電磁石40と前記永久磁石64との磁気反発力により設定され、さらに前記電磁石40による磁力を調整することによって、所要のねじ締め負荷トルクに対応して適正なクラッチ動作を行うように設定することができる。
【0053】
以上、本発明に係るねじ締め装置のトルク調整方法および装置の好適な実施例についてそれぞれ説明したが、本発明のトルク調整機構としてのトルク調整用電磁石40のクラッチ機構18対する構成配置について、回転工具としてのドライバービット14と同軸に形成される回転支持軸16に対し、
図2に示すように所要角度で傾斜させた場合を示したが、前述した公知の特許文献4に示されるように、クラッチ機構18を遊星歯車減速機構のインターナルギヤ22の垂直な外側面に設ける場合においても、本発明にの係るトルク調整方法および装置を適正かつ有効に応用することができる。
【0054】
また、本発明のトルク調整機構としてのトルク調整用電磁石の構成について、前述した実施例のみに限定されることなく、電磁石ユニットの構成配置および前記電磁石ユニットを収納するケースの形状や構成、並びにクラッチ機構の鋼球に対応するクラッチ作動部材の形状およびその構成配置等について、種々の設計変更が可能であり、またコイル電流の調整手段についても、公知の種々の手段による設計変更が可能であり、その他本発明の精神を逸脱しない範囲内において多くの設計変更を行うことができる。
【0055】
従って、本発明に係るトルク調整方法および装置は、前述した実施例に示した電動ドライバーのみならず、公知の種々の構成からなるクラッチ機構を使用するねじ締め装置に対しても、広範囲に亘って有効かつ適正に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 ねじ締め装置(電動ドライバー)
12 把持部ケーシング
14 回転工具(ドライバービット)
16 回転支持軸
18 クラッチ機構
20 遊星歯車減速機構
21 インターナルギヤ
22 円錐状閉塞底面部
23 クラッチカム面
24 突起部
26 ケーシング
27 開口部
28 鋼球
30 トルク調整機構
32 鉄心
33 フランジ部
34 コイル
35 導線
36 電磁石ユニット
38 クラッチ作動杆
39 吸着板
40 トルク調整用電磁石
42 中空2重円筒ケース
43 中空部
44 可変抵抗器
46 コイル用電源スイッチ
48 クラッチ動作検出器
50 圧縮コイルばね
52 永久磁石
54 円筒ケース
56 中実の鉄心
57 フランジ部
58 コイル
59 導線
60 電磁石ユニット
62 鋼球保持部材
62a フランジ部
62b 中央突出部
64 永久磁石