【文献】
丸山晃佐 松崎貴史 亀田洋志,状態推定を用いたスキャン間積分による低SNR移動目標の探知技術,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2009年 5月22日,第109巻 第69号,Pages 13-18,ISSN 0913-5685
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、アクティブ方式のレーダーやソナーであるアクティブセンサー2は、放射波3を放射する。アクティブセンサー2の周囲に物体1が存在すると、放射波3は物体1で反射し、反射波4としてアクティブセンサー2に戻る。アクティブセンサー2は、反射波4を受信して受信信号を生成し、
図7に示す信号処理装置101に出力する。受信信号に基づいて、信号処理装置101は、アクティブセンサー2について予め定められた基準方位9を基準とする方位である検出方位5、アクティブセンサー2から物体1までの距離である検出距離6を算出する。近年では、ステルス技術の発達により、検出対象となる船舶、航空機、水中航走体等における電波や音波の反射率が低減している。このため、ステルス技術を適用した船舶、航空機、水中航走体等を物体1として検出するのが難しくなっている。
【0021】
パッシブ方式のレーダーやソナーでは、受信信号を積分することにより受信信号のSN比を改善する方式が採用されている。一般に受信信号をN回積分(Nは自然数)すると、次式に示すようなSN比の改善効果が得られる。この効果は加算利得とも呼ばれている。
SN比=√(N)…(式1)
【0022】
SN比の改善効果を
図2に示す。例えば、受信信号を9回積分すると、SN比は3倍に改善する。16回の積分ではSN比が4倍に改善する。しかし、アクティブセンサーに対して、受信信号を積分してSN比を改善する手法をそのまま適用することはできなかった。
【0023】
その理由について説明する。移動する船舶、航空機、水中航走体、車両等(これらのアクティブセンサーを搭載する移動体を搭載移動体と記す)に装備されたアクティブセンサー2は、搭載移動体の移動に伴って受信信号の方位及び距離が変化する。
【0024】
搭載移動体だけではなく、検出対象である物体1も移動する場合、搭載移動体から見て物体1は不規則に移動する。特に、物体1が船舶、航空機、水中航走体、車両等の高速で移動する移動体の場合、アクティブセンサー2の位置を基準とする受信信号を積分することは難しい。
【0025】
例えば、
図3に示すように、物体1とアクティブセンサー2と位置関係が、当初、
図3左側の配置にあるとする。時間経過に伴って、物体1とアクティブセンサー2と位置関係が、
図3右側の配置に変化する。この時間経過では、物体1とアクティブセンサー2が両方とも移動している。これらを比較すると分かるように、物体1とアクティブセンサー2の動きはどちらも単純で小さい。しかし、アクティブセンサー2から見た物体1の検出方位5、検出距離6は、時間経過に伴って大きく変化している。このため、検出方位5、検出距離6をそのまま積分しても所望の効果を得ることができない。
【0026】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態であるアクティブセンサーシステムについて説明する。本アクティブセンサーシステムは次のような信号処理を行う。
【0027】
(ステップ1)
図4に示すように、アクティブセンサーの1回の走査によって、アクティブセンサーの位置を基準とする相対座標系で位置を表した受信信号が得られる。この受信信号の座標系を絶対座標系(経緯度等)に変換する。
【0028】
(ステップ2)ステップ1のようにして、最新の走査と、過去N回の走査により得られた絶対座標系で表した受信信号(絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11)を、
図5に示すように記憶装置(絶対位置座標毎受信信号レベル分布メモリ12)に予め格納する。
【0029】
これらN+1セットの各セットから一座標ずつ抽出した、N+1個の座標(起点座標13、絶対位置座標14、絶対位置座標15)を、
図6に示すようにひとつの軌跡(推定軌跡の例16)とみなす。ひとつの軌跡をなす各座標の受信信号を用いて積分処理を行う。積分処理の結果に基づいて、その軌跡を辿って移動した物体を暫定的に検出する。積分処理により受信信号のSN比が改善される。
【0030】
(ステップ3)ステップ2で暫定的に求めた、ある軌跡を辿って移動した物体について、その軌跡に基づいて、その物体の移動方向、移動速度を求める。この時点で、検出したい物体の移動速度の特徴と一致しない軌跡は、検出結果から除外する。たとえば、検出したい物体が固定翼の航空機である場合、時速200Km以下の軌跡は鳥などの検出対象以外の物体と判断することができる。このため、ステップ2で検出した物体であっても、移動速度が時速200Km以下の場合には検出結果から除外する。
【0031】
(ステップ4)ステップ1〜ステップ3による信号処理は、1回の走査に対応して行われる。このような信号処理を、連続して行った複数の走査それぞれについて行う。得られた複数の検出結果に含まれる軌跡それぞれについて、軌跡の連続性の有無を判定する。連続性がある場合、アクティブセンサーシステムは、その軌跡を辿って移動した物体が存在すると最終的に判定、検出し、例えば液晶表示装置等のディスプレイ装置に、その物体に関してステップ2で求めた軌跡、ステップ3で求めた移動方向、移動速度等を、画像情報として検出結果を出力する。検出結果の出力形態は画像に限定されるものではなく、音声として、或いは、音声と画像の組み合わせとして出力されてもよい。
【0032】
本実施の形態の信号処理方式によれば、搭載移動体(移動する船舶、航空機、水中航走体、車両等)に装備したアクティブセンサー(レーダーやソナー)を用いて、高速で移動する物体を検出する際であっても、有効な積分処理を行うことができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態であるアクティブセンサーシステム100について説明する。アクティブセンサーシステム2は、船舶、航空機、水中航走体、車両等に搭載されるシステムである。以下、これらのアクティブセンサー2を搭載する移動体を搭載移動体と呼ぶものとする。アクティブセンサー2が放射波3を送信する。
【0035】
アクティブセンサー2は、レーダーやソナー等のように、放射波3を送信し、検出対象となる物体1で放射波3が反射した反射波4を受信し、受信信号を出力する。放射波3はアクティブセンサー2から放射した電波や音波である。反射波4は、放射波3が物体1により反射した電波や音波である。
【0036】
アクティブセンサー2は、方位毎にかつ距離毎に受信信号レベルを測定し、出力するセンサーである。例えば、
図3に示すように、物体1についての受信信号レベルを、予め定められた基準方位9(例えば搭載移動体の正面の向き)を基準として定められる、検出方位5の向きに向かって、検出距離6の距離からの受信信号レベルとして出力する。つまり、アクティブセンサー2は、アクティブセンサー2の現在位置を基準とする相対座標系で表現した受信信号レベルを出力する。
【0037】
アクティブセンサー2は、移動する船舶、航空機、水中航走体、車両等に装備されているものとする。また、アクティブセンサー2の検出対象である物体1も移動しているものとする。このようなとき、
図3に示すように、物体1の移動に加えて、アクティブセンサー2自身の移動の影響を受けて検出方位5、検出距離6が時間変化する。このように、物体1とアクティブセンサー2の両方が移動する場合、検出方位5、検出距離6は共に不規則に変化する。このため、積分処理を単純に適用することができない。
【0038】
アクティブセンサー2は、基準方位9を基準として定められる、所定の角度範囲の方位について、距離毎に受信信号レベルを測定する。この所定の角度範囲の全体において、方位毎かつ距離毎に受信信号レベルを一回ずつ測定することを、一回の走査と呼ぶものとする。尚、レーダーやソナー等のアクティブセンサー2が方位及び距離に対応した受信信号を出力する動作については当業者に周知であるため、詳しい説明を省略する。
【0039】
アクティブセンサーシステム100では、受信信号に対して信号処理を行うことにより物体1を検出する。アクティブセンサーシステム100は、アクティブセンサー2に加えて、受信信号正規化処理部17、絶対位置座標変換処理部19、絶対位置座標毎受信信号レベル分布メモリ12、推定軌跡積分処理部20、針路速度計算処理部21、物体検出判定処理部22を備える。
【0040】
受信信号正規化処理部17は反射波4に基づく受信信号を正規化する。反射波4は、アクティブセンサー2と物体1の間の距離の2乗に反比例して減衰する。受信信号正規化処理部17は、このような距離に起因する受信信号の減衰を相殺する処理を行う。
【0041】
航法装置18は、アクティブセンサー2の絶対位置座標(経度及び緯度)、針路、速度等を測定するための装置である。つまり、航法装置18は、アクティブセンサー2の位置を絶対座標系で測位すると共に、1回の走査中の時間経過毎のアクティブセンサー2の絶対位置及び基準方位9を取得するための装置である。
【0042】
航法装置18はアクティブセンサーシステム100を搭載した搭載移動体の航法装置を用いることとしてもよい。一般に航法装置には様々な種類のものが存在するが、必要な精度が得られるものであれば、測定の原理や方法は問わずに航法装置18として用いることができる。本実施の形態では、航法装置18は、アクティブセンサー2の位置を絶対座標系で測位するための手段としてGPS(Global Positioning System)受信機を備えるものとして説明する。また、本実施の形態では、航法装置18は、1回の走査中の時間経過毎の基準方位9を取得する手段として、ジャイロスコープを備えるものとして説明する。
【0043】
絶対位置座標変換処理部19は、受信信号レベル値の座標表現を相対座標系から絶対座標系に変換する。受信信号正規化処理部17は、
図4に示すような、アクティブセンサー2から見た基準方位9からの方位と、アクティブセンサー2からの距離に応じた受信信号レベル値を出力する。
【0044】
この受信信号レベル値の座標はアクティブセンサー2の現在位置を基準とする相対座標系で表現されている。この受信信号レベル値の座標を、絶対位置座標変換処理部19は、航法装置18にて測位した、アクティブセンサー2の絶対座標系における位置に基づいて、絶対座標系に変換する。
【0045】
図4において、基準方位9はアクティブセンサー2の走査の基準となる方位である。基準方位9はアクティブセンサー2の搭載移動体の姿勢により変化する。一般的には、基準方位9は、船舶、航空機、水中航走体、車両等の胴体の前方を表す水平方位である。検出方位5は基準方位9からの水平角である。方位及び距離毎の受信信号レベル値の分布10は相対座標系で表された受信信号である。即ち、方位及び距離毎の受信信号レベル値の分布10は、アクティブセンサー2の1回の走査により得られた、検出方位5及び検出距離6毎の受信信号レベル値の分布を示す。一方、絶対座標毎受信信号レベル分布データ11は、相対座標系で表された受信信号である。絶対座標毎受信信号レベル分布データ11は、アクティブセンサー2の1回の走査により得られた、検出方位5と検出距離6によって位置を表した受信信号レベル値を、緯度経度等の絶対位置座標によって位置を表した受信信号レベル値に変換する。
【0046】
絶対位置座標受信信号分布メモリ12は、絶対座標毎受信信号レベル分布データ11を、直近の過去N+1回(Nは予め定められた自然数)の走査結果に相当する分だけ格納する記憶装置である。つまり、絶対位置座標受信信号分布メモリ12は、N+1セットの絶対座標毎受信信号レベル分布データ11を格納する。アクティブセンサー2の走査に伴って、絶対位置座標変換処理部19が新たな絶対座標毎受信信号レベル分布データ11を生成すると、絶対位置座標受信信号分布メモリ12は、現に格納している絶対座標毎受信信号レベル分布データ11のうち最も古いものを消去して、その代わりに新たなものを格納する。回数N+1は後述する推定軌跡積分処理部20が行うひとつの軌跡当たりの積分の回数に対応する。
【0047】
推定軌跡積分処理部20は、絶対位置座標受信信号分布メモリ12に格納したN+1セットの絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11に基づいて、時間経過と推定軌跡から受信信号レベル値の積分処理を行う。
【0048】
絶対位置座標受信信号分布メモリ12には、最新の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11、1回前の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11、…、N回前の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11からなる、N+1セットの絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11が格納される。推定軌跡積分処理部20は、これらN+1セットの絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11のそれぞれから、一座標ずつ選択した座標からなる軌跡を求める。
【0049】
まず、最新の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11から、いずれかの座標を起点座標13として選択する。
【0050】
次に、Xを1からNまでの任意の整数として、1〜N回前の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11から次のようにして一座標を選択する。X回前の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11において、起点座標13に相当する座標を起点とし、所定の距離内にある座標を候補座標群として抽出する。そして、候補座標群の中からひとつの座標を選択する。ここでいう所定の距離は、最新の走査からX回前の走査までの経過時間と物体1の想定移動速度に関連して定められる。
【0051】
このようにして、N+1セットの絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11のそれぞれから、一座標ずつ座標を選択すると、N+1個の座標を得る。これをひとつの軌跡とする。
【0052】
推定軌跡積分処理部20は、N回前の走査から最新の走査の間に、この軌跡を辿って移動した物体の有無を判定する。そのような物体が有る場合、推定軌跡積分処理部20は、その軌跡を辿って移動した物体を検出する。
【0053】
物体の有無の判定は、軌跡をなす各座標の受信信号レベル値を積分し、所定の閾値と比較して行う。積分値が閾値以上であれば、推定軌跡積分処理部20は、その軌跡を辿って移動した物体を検出する。閾値未満であれば、推定軌跡積分処理部20は、その軌跡を辿って移動した物体を検出しない。
【0054】
針路速度計算処理部21は、推定軌跡積分処理部20が出力した物体1の推定軌跡に基づいて、物体1の起点及び終点を計算する。また、推定軌跡積分処理部20は、計算した物体1の起点、終点と経過時間に基づいて、物体1の針路及び速度を計算する。針路速度計算処理部21は、推定軌跡積分処理部20が出力した物体1の絶対座標系における推定軌跡と、自身が計算した物体1の絶対座標系における針路、速度とを出力する。
【0055】
物体検出判定処理部22は、針路速度計算処理部21が出力した速度と、検出対象とする物体の速度に関する特徴とを比較して、針路速度計算処理部21が出力した速度が、検出対象とする物体のものか否かを判定する。この判定結果に基づいて、物体検出判定処理部22は、針路速度計算処理部21からの出力のうち、特徴に合致するもののみを出力する。
【0056】
検出対象とする物体の速度範囲に適合する場合、物体検出判定処理部22は、その物体についての針路速度計算処理部21をそのまま出力する。一方、検出対象とする物体の速度範囲に適合しない場合、物体検出判定処理部22は、その物体についての針路速度計算処理部21を出力しないで破棄する。破棄する代わりに、速度範囲に適合しないことを示す情報と共に出力することとしてもよい。
【0057】
一例として、アクティブセンサーシステム100の検出対象が固定翼航空機である場合の物体検出判定処理部22の動作について説明する。ここでは、アクティブセンサー2はアクティブレーダーである。通常、固定翼航空機は、例えばマッハ3に相当する時速3675Kmを上限とし、例えば失速速度である時速250Kmを下限とする速度範囲を有する。アクティブセンサーシステム100が固定翼航空機を検出対象として想定する場合には、この速度範囲に該当する推定軌跡を物体として検出する。上限を上回るか下限を下回る場合には、その物体は固定翼航空機ではないとみなす。この場合、物体検出判定処理部22は、その物体についての針路速度計算処理部21の出力を破棄するか、固定翼航空機以外のものであることを示す情報と共に出力する。
【0058】
別の例として、アクティブセンサーシステム100の検出対象が回転翼航空機または小型無人航空機(ドローン)である場合の物体検出判定処理部22の動作について説明する。ここでは、アクティブセンサー2はアクティブレーダーである。通常、回転翼航空機や小型無人航空機は、ホバリング状態の時速0Kmを下限とし、例えば時速300Kmを上限とする速度範囲を有する。このため、物体検出判定処理部22は、例えば時速0〜300Kmの速度範囲に合致する物体についての針路速度計算処理部21の出力のみをそのまま出力する。合致しない物体については、物体検出判定処理部22は、針路速度計算処理部21の出力を破棄するか、回転翼航空機及び小型無人航空機以外のものであることを示す情報と共に出力する。
【0059】
別の例として、アクティブセンサーシステム100の検出対象が水中航走体である場合の物体検出判定処理部22の動作について説明する。ここでは、アクティブセンサー2はソナーである。例えば水中航走体は30ノットから60ノットの速度範囲を有すると考えられる。このため、物体検出判定処理部22は、例えば30〜60ノットの速度範囲に当てはまる物体については、針路速度計算処理部21の出力をそのまま出力する。一方、物体検出判定処理部22は、例えば30〜60ノットの速度範囲に当てはまらない物体については、物体検出判定処理部22は、針路速度計算処理部21の出力を破棄するか、水中航走体以外のものであることを示す情報と共に出力する。
【0060】
別の例として、搭載移動体が船舶であり、アクティブセンサー2がソナーであって、アクティブセンサーシステム100の検出対象が、搭載移動体である船舶が衝突を回避すべき危険な漂流物である場合の物体検出判定処理部22の動作について説明する。危険な漂流物には例えば流木や機雷がある。危険な漂流物は自ら航行することはなく、潮流や海流に乗って移動する。このため、危険な漂流物は潮流や海流に相当する例えば5ノット以下の速度範囲を有する。このとき、物体検出判定処理部22は、例えば5ノット以下の物体については、針路速度計算処理部21の出力をそのまま出力する。一方、例えば5ノットを越える物体については、物体検出判定処理部22は、針路速度計算処理部21の出力を破棄するか、危険な漂流物以外のもの(何らかの航行手段を有するもの)であることを示す情報と共に出力する。
【0061】
次に、アクティブセンサーシステム100の動作について説明する。アクティブセンサーシステム100は移動体に搭載されていて、アクティブセンサー2は移動しているものとする。
【0062】
(ステップ11)アクティブセンサー2は、物体1を検出するため、電波や音波等の放射波3を放射する。
図1に示すようにアクティブセンサー2は放射波3を放射する。
【0063】
(ステップ12)物体1が存在しているとき、物体1は放射波3を反射し、反射波4を放射する。
図1に示すように、放射波3は検出対象である物体1で反射して反射波4となる。アクティブセンサー2は反射波4を受信する。この反射波4を最小化する技術が一般的なステルス技術と呼ばれる。もともと物体1のサイズが非常に小さい場合も反射波4は小さい。
【0064】
(ステップ13)アクティブセンサー2は、1回の走査により所定の走査範囲内にある物体1からの反射波4を受信信号として受信すると、
図1に示す検出方位5及び検出距離6の座標毎の受信信号を受信信号正規化処理部17に出力する。
【0065】
(ステップ14)受信信号正規化処理部17は、物体1とアクティブセンサー2の距離の2乗に比例して反射波4の受信信号が減衰する効果を打ち消すための処理を行う。この処理を正規化処理と呼ぶものとする。
【0066】
受信信号正規化処理部17が行う正規化処理は以下のようなものである。まず、アクティブセンサー2による1回の走査結果の受信信号に対し、同じ検出距離6の受信信号について全ての検出方位5の受信信号の平均値を算出する。次に、算出した平均値で検出方位5毎の受信信号を割り算する。次に、検出距離6毎の平均値で正規化する。最後に、このようにして正規化した受信信号を、絶対位置座標変換処理部19に出力する。
【0067】
例えば、アクティブセンサー2が、方位分解能0.1deg、距離分解能50m、走査方位範囲±45degであるとする。このとき、検出距離6が10,000mであるような受信信号は−45.0〜+45.0の走査方位範囲の中に900個存在する。これは、0.1deg刻みの方位−45.0、−44.9、−44.8…+44.9、+45.0のそれぞれについて、検出距離6が10,000mであるような受信信号が存在するからである。これら900個の受信信号の平均値を計算する。そして、これら900個の受信信号を、それぞれその計算した平均値で割り算する。
【0068】
(ステップ15)絶対位置座標変換処理部19は、受信信号を表す座標系を、相対座標系から絶対座標系に変換する。即ち、絶対位置座標変換処理部19は、航法装置18から入力したアクティブセンサー2の絶対座標系における位置(緯度経度等)、基準方位及び速度の情報に基づいて、受信信号正規化処理部17から入力したアクティブセンサー2の位置基準の検出方位5及び検出距離6毎の受信信号(相対座標系で表された受信信号)を、絶対位置座標毎の受信信号分布データ(絶対座標系で表された受信信号)に変換する。この処理を座標変換処理と呼ぶものとする。
【0069】
絶対位置座標変換処理部19が行う座標変換処理は以下のようなものである。上述のように、航法装置18は、アクティブセンサー2の絶対座標系(例えば経度及び緯度)における位置を取得するための手段としてGPS受信機を備える。また、航法装置18は、1回の走査中の時間経過毎の絶対位置及び基準方位9を測定するための手段としてジャイロスコープを備える。絶対位置座標変換処理部19は、GPS受信機から絶対座標系における位置情報を取得する。また、ジャイロスコープから1回の走査中の時間経過毎の絶対位置及び基準方位9位置及び基準方位9を取得し、この絶対位置及び基準方位9に基づいて、検出距離6毎の検出方位5を決定する。
【0070】
ここで、1回の走査を開始してから終了するまでの間のアクティブセンサー2の絶対位置座標の更新について
図8を参照して説明する。1回の走査を開始する時点では、アクティブセンサー2は絶対位置23にいる。このときアクティブセンサー2の基準方位は24である。航法装置18はGPS受信機で絶対位置23を測定する。また、航法装置18はジャイロスコープ等の慣性航法装置で基準方位24を測定する。この1回の走査を行う間にも、アクティブセンサー2(或いはアクティブセンサー2を搭載した搭載移動体)は、経路25に沿って移動する。その1回の走査が終了する時点では、アクティブセンサー2は絶対位置26に移動する。このときのアクティブセンサー2の基準方位は27である。航法装置18はGPS受信機で絶対位置26を測定する。また、航法装置18はジャイロスコープ等の慣性航法装置で基準方位27を測定する。航法装置18はジャイロスコープ等の慣性航法装置により経路25におけるアクティブセンサー2の時間経過による絶対位置及び基準方位の変化を測定する。
【0071】
後のステップにおいて、推定軌跡積分処理部20が絶対座標系における積分処理を行う。この積分処理を正しく機能させるためには、アクティブセンサー2の絶対位置座標、針路(基準方位)を時間経過毎に高精度に測定することが求められる。
【0072】
例えばソナーの場合、水中での音速を秒速1500m、検出距離6を3000mと仮定して、音波が往復するための所要時間を考慮すると、1回の走査に4秒間かかる。この4秒間にソナーを装備した船舶や水中航走体は移動し、位置や基準方位が変化する。このため移動に伴う誤差を補正する必要がある。
【0073】
また、例えば航空機に搭載したレーダーの場合、アクティブセンサー2は時速1000Km以上のスピードで移動する。秒速300mで移動するアクティブセンサー2において、絶対位置座標の精度が50mとすると、±25mの位置精度を得るために12回/秒以上のレートでアクティブセンサー2の絶対位置座標及び針路(基準方位)を更新しなければならない。本発明による積分処理を効果的に実現するには、1秒間に20回以上の更新レートにより緯度経度等の絶対位置座標、基準方位及び速度の情報を更新することが望ましい。
【0074】
なお、移動する船舶、航空機、水中航走体、車両等の姿勢と移動方向には微妙なずれが生じる。例えば船舶の針路について、波浪の影響を受けて進行方向と船首方向がずれることはよくある現象である。従って、絶対位置座標の変化から針路(基準方位)を決定せず、ジャイロスコープ等の慣性航法装置からの姿勢情報で針路(基準方位)を決定する必要がある。
【0075】
次に、1回の走査中の時間経過毎のアクティブセンサー2の絶対位置座標と針路(基準方位)が決定したら、
図4に示すように時間経過毎に検出方位5及び検出距離6毎の受信信号データを絶対位置座標の受信信号データに変換する。
【0076】
方位及び距離毎の受信信号レベル値の分布10では、受信信号データは、検出方位5及び検出距離6の属性も有する。このため、方位及び距離毎の受信信号レベル値の分布10から絶対位置座標である緯度及び経度への変換は、次の計算式で表現される。
緯度y1=y + SIN(A−θ)×L÷R…(式2)
経度x1=x + COS(A−θ)×L÷R×COS(y)…(式3)
ただし、アクティブセンサー2に関する値を次のように定める。絶対座標の緯度をy(deg)とする。経度をx(deg)とする。検出方位5をA(deg)とする。検出距離6をL(m)とする。基準方位をθとする。絶対位置座標に変換した緯度をy1(deg)とする。絶対位置座標に変換した経度をx1(deg)とする。また、地球の表面上で緯度1(deg)に相当する距離をR(m)で表す。経度1degの距離は緯度により変化するので、式2ではCOS(緯度)による補正を行っている。
【0077】
このように、式1、式2を用いて、方位及び距離毎の受信信号のレベル分布10の位置座標を、絶対位置座標である緯度経度で表現した(x1,y1)に変換する。変換した後、絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11上の絶対位置座標(x2,y2)に変換する。
【0078】
絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11上の絶対位置座標における緯度をy2(deg)とし、経度をx2(deg)とする。緯度y1(deg)と緯度y2(deg)の距離をW(deg)とする。W(deg)は次式により計算することができる。
W(deg)=√[{(x1−x2)×COS(y1)}^2+(y1−y2)^2]…(式4)
【0079】
絶対位置座標変換処理部19は、
図4に示す、絶対座標毎受信信号レベルデータ11の格子状の緯度及び経度毎に、方位及び距離毎の受信信号レベル値の分布10の緯度及び経度との距離Wを計算する。距離Wが最短になる緯度y1及び経度x1を求めて、その方位及び距離毎の受信信号レベル値の分布10の各受信信号レベル値を、緯度y2及び経度x2の絶対座標毎受信信号レベル値に代入して、絶対位置座標毎受信信号レベル分布メモリ12に記憶する。
【0080】
ただし、距離W(deg)が絶対座標毎受信信号レベル分布データ11の格子の間隔である距離分解能(deg)よりも極端に大きい場合(例えばW(deg)>距離分解能の2倍)は、緯度y2、経度x2の絶対座標毎受信信号レベル値をNULL(無効値)に設定する。
【0081】
例えば、絶対座標毎受信信号レベル分布データ11が、緯度10deg四方であり、距離分解能が0.0005deg(約55m)の場合を考える。このとき、ひとつの絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11に含まれる、受信信号レベル値の数は(10÷0.0005)^2=4億件となる。従って、緯度y2及び経度x2で表される絶対位置座標の数は4億件となる。
【0082】
例えば、アクティブセンサー2の検出範囲を次のように仮定する。方位範囲を±45degとする。方位分解能を0.1degとする。最大距離を緯度10degとする。距離分解能を0.0005deg(約55m)とする。このとき、方位及び距離毎の緯度y1及び経度x1の受信信号レベル値の数は(90÷0.1)×(10÷0.0005)=1800万件となる。前述の例において、距離W(deg)を計算する組み合わせは、計算回数を効率化しない場合に4億件×1800万件=7.2×10^15になる。通常は緯度y2、経度x2の近傍の緯度y1、経度x1のみ距離W(deg)を計算する。
【0083】
(ステップ16)推定軌跡積分処理部20では、
図5に示す、絶対位置座標毎受信信号レベル分布メモリ12に記憶した、絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11について、
図6に示す推定軌跡の組み合わせ毎の積分処理を行う。
【0084】
図5に示すように、絶対位置座標毎受信信号レベル分布メモリ12には、最新の走査により得られた絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11と、積分回数Nに対応する、Nセットの絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11との合計N+1セットの絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11が格納される。
【0085】
図6において、13は、推定軌跡積分処理の起点座標(x,y,0)を示す。起点座標(x,y,0)は、アクティブセンサー2による最新の走査結果に基づく、絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11における、任意の絶対位置座標の受信信号レベルである。絶対位置座標データ(0)、(1)、(2)は、順に、最新の走査から数えて0回前、1回前、2回前の絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11を示す。14は、1回前の走査結果による絶対位置座標(x−1,y+1,1)を示す。15は、2回前の走査結果による絶対位置座標(x−2,y+2,2)を示す。16は、3回の走査結果について、物体1が起点座標13(x,y,0)から絶対位置座標14(x−1,y+1,1)を経由して絶対位置座標15(x−2,y+2,2)に至る推定軌跡の例を示す。
【0086】
今、起点座標13を(x,y,0)とする。括弧()内の0は、最新の走査から数えて0回前の走査、即ち、最新の走査に基づく絶対座標毎受信信号レベル分布データ11、
図6の絶対位置座標データ(0)における座標であることを示す。(x,y,1)は1回前の走査に基づく絶対座標毎受信信号レベル分布データ11、即ち、
図6の絶対位置座標データ(1)において、起点座標13(x,y,0)に対応する座標を示す。(x,y,2)は2回前の走査に基づく絶対座標毎受信信号レベル分布データ11、即ち、
図6の絶対位置座標データ(2)において、起点座標13(x,y,0)に対応する座標を示す。以下、(x,y,3)、(x,y,4)、…(x,y,N)について同様である。Nは任意の自然数である。
【0087】
ここで、絶対位置座標毎受信信号レベル分布11の格子の分解能は、物体1及びアクティブセンサー2が、1回の走査の所要時間の間に移動する距離よりも大きくなるよう分解能を決定する。このとき、アクティブセンサー2による1回前の走査に基づいて生成した、絶対座標毎受信信号レベル分布データ11において、物体1が移動した軌跡の範囲を(x−1,y−1,1)〜(x+1,y+1,1)と推定することができる。言い換えると、1回前の走査から最新の走査までの間に物体1が移動して、物体1が現在の座標である起点座標13に存在することから推定すると、物体1は、1回前の走査の時点では、起点座標13を中心とする一定の距離内にいたと推定することができる。この距離は、最新の走査、即ち、起点座標13を含む絶対座標毎受信信号レベル分布データ11を生成する際の走査からの経過時間に関連して定められる。つまり、アクティブセンサー2が走査を行う時間間隔に関連して定められる。
【0088】
例えば、物体1の移動速度が最大時速3000Kmであり、アクティブセンサー2を装備した航空機の移動速度が最大時速3000Kmであり、1回の走査時間が0.05秒であると仮定する。この場合、アクティブセンサー2を基準とした物体1の相対速度は最大時速6000Km(秒速約1667m)である。また、アクティブセンサー2と物体1の間における、0.05秒間の相対的な移動距離は最大約83mである。アクティブセンサー2の移動については航法装置18からの位置情報により補正することができる。このため、問題になるのは物体1の移動距離のみである。1回の走査時間である0.05秒の間に、物体1が移動する距離は、最大約42mである。このとき、絶対位置座標毎受信信号レベル分布11の格子の分解能を例えば約55mにすると、1回の走査時間における物体1の移動距離が絶対位置座標毎受信信号レベル分布11の格子の1マス以内になる。
【0089】
つまり、起点座標13である(x,y,0)に物体1が存在する場合、1回分の走査に要する時間を遡ると、物体1は、9個の座標(x−1,y−1,1)〜(x+1,y+1,1)のいずれかに存在していたと考えることができる。同様に、起点座標13である(x,y,0)に物体1が存在する場合、2回分の走査に要する時間を遡ると、物体1は、25個の座標(x−2,y−2,2)〜(x+2,y+2,2)のいずれかに存在していたと考えられる。更に同様にして、3回の走査中に物体1が移動した軌跡は、9×9=81通りとなる。このように、N回の走査により物体1が移動した軌跡の組み合わせは、9^(N−1)で表される。例えば16回の走査結果における1物体が移動した軌跡の組み合わせは、9^15=2.059×10^14とおりとなる。
【0090】
推定軌跡積分処理部20は、これらの組み合わせにおいて、絶対座標毎受信信号レベル分布データ11を積分し、予め設定した閾値を越えた場合、その軌跡に物体1が存在していると判定し、検出する。
【0091】
ここで、N=2としてこの検出方法について説明する。起点座標13になんらかの移動体が存在すると仮定する。このとき、その移動体は、上述のように、1回前、2回前の走査の時点では、それぞれ、起点座標13を中心とする9個、25個の座標群のいずれかに存在したはずである。この座標群を候補座標群と呼ぶものとする。
【0092】
2回前の走査から最新の走査までの間に移動体が辿る軌跡は3つの座標の組み合わせからなる。最新の走査による絶対座標毎受信信号レベル分布データ11のひとつの座標(起点座標13)、1回前の走査による絶対座標毎受信信号レベル分布データ11のひとつの座標、2回前の走査による絶対座標毎受信信号レベル分布データ11のひとつの座標の合計3つである。
【0093】
上述のように、2回前、1回前の走査による絶対座標毎受信信号レベル分布データ11の候補座標群は、それぞれ、9個、9個である。起点座標13は1個である。従って、これら3つの座標の組み合わせからなる軌跡は、9×9×1=81通り存在する。
【0094】
図6の例では、これらの座標は、順に、起点座標13(x,y,0)、絶対位置座標14(x−1,y+1,1)、絶対位置座標15(x−2,y+2,2)に対応する。推定軌跡積分処理部20は、同一の軌跡を構成するN+1個(この場合は3個)の座標の受信信号に基づいて積分処理を行う。
図6の推定軌跡の例16の場合であれば、起点座標13(x,y,0)の受信信号、絶対位置座標14(x−1,y+1,1)の受信信号、絶対位置座標15(x−2,y+2,2)の受信信号の3つの受信信号に基づく積分処理を行う。推定軌跡積分処理部20は、このような積分処理を、81通りの軌跡すべてについて行い、軌跡毎に積分値を算出する。
【0095】
推定軌跡積分処理部20は、算出した積分値を予め定められた閾値と比較する。積分値が閾値以上の場合、推定軌跡積分処理部20は、その軌跡を辿って移動した物体が存在したと判定し、その物体を検出する。積分値が閾値未満の場合、推定軌跡積分処理部20は、その軌跡を辿った物体は存在しないと判定し、その物体を検出しない。
【0096】
N回前の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11においてその軌跡を構成するものとして選択した座標を、その軌跡の始点とする。起点座標13をその軌跡の終点とする。
【0097】
推定軌跡積分処理部20は、以上のような処理を、最新の走査結果に基づく絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11の受信信号レベルそれぞれについて行う。上述の説明では、
図6を参照しつつ、起点座標13として座標(x,y)を選択し、2回前の走査からの軌跡を検出するものとして説明したが、同様の動作を、最新の走査結果に基づく絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11の座標それぞれについて行う。例えば、絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11が、x、yは整数であり、0≦x≦99、0≦y≦99であるような格子点の受信信号からなる場合、100×100=10000個の格子点をそれぞれ起点座標13として、上述の処理を行う。
【0098】
尚、N=3、4、5…の場合、更に、3回前、4回前、5回前、…の走査による絶対座標毎受信信号レベル分布データ11の候補座標群のひとつの座標を軌跡に追加して同様の処理を行う。軌跡を構成する座標の数は、1回前からN回前の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11のそれぞれから抽出したひとつの座標、計N個の座標と、最新の走査による絶対位置座標毎受信信号レベル分布データ11の起点座標13とを合わせたN+1個になる。
【0099】
図2を参照して、推定軌跡積分処理部20による、検出可能距離7とSN比8の改善効果について説明する。
【0100】
SN比8は、受信信号の積分効果により改善されるSNをdB単位で表したものである。受信信号の積分効果により、積分回数の平方根に比例してSN比8が改善する。SN比8が改善すると同一物体からの反射波4をより遠距離から検出することが可能になり、検出可能距離7が延びる。
【0101】
図2の例では、SN比8が1の場合に物体1を検出できるアクティブセンサー2を仮定した。このようなアクティブセンサー2による受信信号に積分効果を作用させると、検出可能距離7、SN比8の両方を改善することができる。例えば16回の走査結果を積分することにより、検出可能距離7が2倍になり、SN比8が6dB(4倍)改善する。
【0102】
16回の走査結果における物体1が移動した軌跡の組み合わせの受信信号レベルを全て計算すると、計算量が膨大になり実現が難しい。このため、推定軌跡積分処理の積分すべてを一度に行う代わりに、積分回数の全体を複数の段階に分割し、ある段階の積分を行った後で受信信号レベルが大きい座標についてのみ、その次の段階の積分を行うこととしてもよい。
【0103】
例えば最初の4回の走査結果における物体1が移動した軌跡の組み合わせの受信信号レベルを計算した段階で、まず、雑音成分が1/√(4)=1/2になった効果の有無を予め設定した閾値により判別する。次に、雑音低減後に信号の成分に起因する受信信号レベルが大きいデータについてのみ、次の4回の走査結果における推定軌跡積分処理を行う。このように推定軌跡積分処理を段階的に行うこととすれば、無駄な計算を削減することができる。
【0104】
(ステップ17)推定軌跡積分処理部20がある軌跡を辿った物体を検出した場合、針路速度計算処理部21は、その軌跡の始点から終点への方位、始点から終点までの直線距離、始点から終点までの経過時間を算出する。例えば、
図6の推定軌跡の例16の場合、始点は絶対位置座標15、即ち、(x−2,y+2)である。終点は起点座標13、即ち、(x,y)である。始点から終点への方位は(x,y)−(x−2,y+2)=(2,−2)である。始点から終点までの直線距離は√[{x−(x−2)}^2+{y−(y+2)}^2]=√8である。始点から終点までの経過時間は、例えば、アクティブセンサー2が走査を行う周期をT秒としたときN×T秒で求める。
【0105】
次に、針路速度計算処理部21は、始点から終点までの直線距離とその経過時間に基づいて、その物体の始点から終点までの速度を求める。
図6の推定軌跡の例16の場合、(√8)/NT秒である。これにより、針路速度計算処理部21は、
図6の推定軌跡の例16として検出した物体は、始点から終点への方位(2,−2)に向かって、速度(√8)/NT秒で移動していると判定する。
【0106】
針路速度計算処理部21は、上述の結果をそのまま後述する物体検出情報出力部22に渡してもよいが、検出対象とする物体の速度の特性に基づいてフィルタリングを行い、検出対象とする物体についての出力を抽出することとしてもよい。また、検出対象以外の物体の速度に関する特性に基づいてフィルタリングを行い、検出対象ではない物体についての出力を除外することとしてもよい。更に、これら抽出及び除外のフィルタリングを組み合わせて用いることとしてもよい。
【0107】
例えば、一般に、固定翼の航空機は、空中をある程度の速度で移動しなければ翼に揚力を発生させて飛行することができない。また、固定翼の航空機は鳥類等の生物よりも高速で移動する。よって、アクティブセンサー2がアクティブレーダーであり、アクティブセンサーシステム100が固定翼の航空機を検出対象とする場合、推定軌跡積分処理部20の出力のうち、ある程度よりも低速の物体に関するものを、針路速度計算処理部21は除外することとしてもよい。
【0108】
また、水中や水上を漂う危険な漂流物、例えば機雷や流木等では、移動速度はゼロに近い。このため、アクティブセンサーシステム100が、船舶、水中航走体等に搭載され、アクティブセンサー2がソナーであって、特に危険な漂流物の検出を目的とする場合、推定軌跡積分処理部20の出力のうち、ある程度よりも低速の物体に関するもののみを、針路速度計算処理部21は抽出することとしてもよい。
【0109】
更に、こうした速度の高低に基づくフィルタリングだけではなく、速度の持続時間に基づくフィルタリングを行うこととしてもよい。例えば、渡り鳥等の一部の例外を除き、ほとんどの飛行生物は高速飛行を持続可能な時間が短時間に限定される。このため、例えばドローンを一般的な飛行生物と区別して検出するために、上述の速度の高低に基づくフィルタリングを行うと共に、一定以上の速度を持続した時間を測定することとしてもよい。この場合、針路速度計算処理部21は、その一定以上の速度の持続時間を予め設定した持続時間の閾値と比較する。そして、推定軌跡積分処理部20の出力のうち、持続時間の閾値を超えたもののみを物体検出情報出力処理部22に出力する。
【0110】
検出対象とする物体の速度の特性に基づくフィルタリングを行う場合、検出対象とする物体の速度に関する設定情報(速度の範囲を示す閾値、持続時間の閾値等)を、例えば針路速度計算処理部21として動作する情報処理装置の記憶装置に予め格納しておく。この設定に基づいて、針路速度計算処理部21は、推定軌跡積分処理部20の出力からフィルタリングを行う。針路速度計算処理部21は、検出対象とする物体の速度特性に適合するものを抽出し、或いは、検出対象としない物体の速度特性に適合するものを除外する。
【0111】
(ステップ18)物体検出情報出力処理部22は、針路速度計算処理部21により算出した物体1の推定軌跡(最新位置を含む)、針路及び速度をコンピュータディスプレイ等の画面に表現した地図上に表示する。
【0112】
アクティブセンサーシステム100の動作(ステップ11〜ステップ18)についての説明は以上である。
【0113】
上述の説明では、受信信号正規化処理部17、航法装置18、絶対位置座標変換処理部19、絶対位置座標毎受信信号レベル分布メモリ12、推定軌跡積分処理部20、針路速度計算処理部21は、アクティブセンサー2における1回の走査毎に上述の動作を実行し、その結果を、物体検出情報出力処理部22にて出力した。つまり、アクティブセンサー2による1回の走査と、物体検出情報出力処理部22による1回の出力が対応していた。
【0114】
これに代わって、アクティブセンサー2による複数回の走査と、物体検出情報出力処理部22による1回の出力を対応させることとしてもよい。このとき、針路速度計算処理部21は、アクティブセンサー2による1回の走査に対して、上述の信号処理を行い、ある軌跡を辿って移動した物体を一乃至複数検出するが、この時点では物体検出情報出力処理部22に出力しない。
【0115】
その代わりに、針路速度計算処理部21は、検出結果を例えばそのときの最新の走査を行った時刻と対応させて記憶装置に格納する。つまり、1回の走査に対して1セットの検出結果を記憶装置に格納する。これを連続する複数回の走査について行った後、連続して行った走査による検出結果に含まれる軌跡が、互いに連続しているか否かを針路速度計算処理部21は評価する。連続性の有無の評価は、単に、互いの針路、速度、軌跡が近似しているか否かで評価してもよい。
【0116】
例えば、連続した3回の走査による検出結果において、軌跡が互いに連続している場合、針路速度計算処理部21は、その3回の検出結果を物体検出情報出力処理部22に出力する。このようにすることにより、アクティブセンサーシステム100は、検出結果の信頼性を高めることができる。
【0117】
尚、アクティブセンサーシステム100が有効に動作するためには、以下の条件を満足することが好ましい。
・アクティブセンサー2による受信信号の方位及び距離の測定精度が高いこと。
・航法装置18から入力する姿勢情報及び位置情報の測定精度が高いこと。
・膨大な組み合わせの推定軌跡積分処理を行う計算能力を有すること。
【0118】
本実施の形態によれば、次のような効果を奏する。
【0119】
第1の効果として、レーダーやソナー等のアクティブセンサーによる物体検出において、今までは検出困難であった微弱な信号を検出することができる。レーダーの場合は、RCS(Radar Cross Section)が小さいステルス性を有する物体を、今までよりも遠距離から検出することができる。ソナーの場合はTS(Target Strength)が小さい小型水中航走体やダイバー等を今までよりも遠距離から検出することができる。
【0120】
第2の効果として、レーダーやソナー等のアクティブセンサーによる物体検出において、物体の針路(移動方向)及び速度を検出条件に含めて、期待する速度の物体を選択的に検出することができる。
【0121】
ドップラー効果を利用して受信信号の周波数変化を検出する手法では、速度の遅い物体や、速度は速いが相対距離が変化しにくい針路を移動する物体については、物体からの反射波と雑音を分離することが難しい。本実施の形態によれば、ドップラー効果に関係なくアクティブセンサーの物体検出能力を向上することができる。
【0122】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態では、2次元の捜索を行うレーダーやソナー等のアクティブセンサーに本発明を適用した形態について説明した。本実施の形態では、3次元の捜索を行うアクティブセンサーに適用した形態について説明する。
【0123】
本実施の形態でも、基本的な構成は
図7のアクティブセンサーシステム100と同じなので、これをそのまま用いて説明する。ただし、本実施の形態のアクティブセンサーシステム100では、受信信号の位置は3次元座標で表される。アクティブセンサー2の出力は、方位、距離に加えて、俯仰角の要素を有する。アクティブセンサーシステム100の他のブロックも3次元の座標情報を取り扱う。
【0124】
3次元座標で表された受信信号を処理するため、本実施の形態では、
図10に示すように、地球の丸さを考慮した以下の補正計算を行う。
【0125】
まず
図10の各部について説明する。Aはアクティブセンサー2の位置を示す。Bは物体1の位置を示す。AB間の距離は検出距離6に相当する。角度θ1(deg)はアクティブセンサー2から物体1までの俯仰角を示す。AE間の距離は、アクティブセンサー2の高度(海面からの距離)を示す。EC間の距離は地球が丸いことを無視した場合における、アクティブセンサー2から物体1までの水平距離に相当する。BC間の距離は地球が丸いことを無視した場合における、物体1の高度に相当する。Dは物体1について地球上の緯度経度で表現される位置を示す。Eはアクティブセンサー2について地球上の緯度経度で表現される位置を示す。Gは地球の中心を示す。DG間の距離及びEG間の距離は地球の半径である約6378Kmに相当する。角度θ2(deg)は、アクティブセンサー2と物体1の位置関係を地球上の座標系として緯度で表現した角度を示す。実際にはAとBは緯度と経度で表現されるが、地球表面上で経度に相当する距離は緯度によって変化するので、緯度に換算する。BD間の距離は、地球が丸いことを考慮した場合における、物体1の高度(海面からの距離)を示す。
【0126】
図10の位置関係から、アクティブセンサー2により検出した物体1までの距離(AB)及び俯仰角θ1並びにアクティブセンサー2の高度(AE)から、緯度経度で表現される座標系におけるアクティブセンサー2から物体1までの距離(θ2)及び物体1の高度(BD)を計算する必要がある。
【0127】
上記の計算方法を説明するため、
図10においてAG方向をY軸、Y軸に直交する方向をX軸とすると、A、B、C、D、E、F、Gの各位置は次の計算式で表現することができる。
A=(0,EG+AE)…(式5)
B=(cosθ1×AB,sinθ1×AB+EG+AE)…(式6)
C=(cosθ1×AB,EG+AE)…(式7)
D=(sinθ2×EG,cosθ2×EG)…(式8)
θ2=atan{(cosθ1×AB)÷(sinθ1×AB+EG+AE)}…(式9)
BG=√{(EG+AE+sinθ1×AB)^2+(cosθ1×AB)^2}…(式10)
BD=BG−EG…(式11)
【0128】
上記の計算式により、既知の情報としてアクティブセンサー2の高度(AE)、物体1の俯仰角(θ1)、物体までの距離(AB)、地球の半径(EG)から、物体1までの水平距離(θ2)及び高度(BD)を算出することができる。
【0129】
また、3次元座標系において推定軌跡積分処理部20が行う処理について、
図11を用いて説明する。
【0130】
図11の各部について説明する。起点座標28(x,y,z,0)は、絶対位置座標毎受信信号分布メモリ12における任意の位置の最新の絶対座標毎受信信号レベル分布データ11を示す。絶対位置座標29(x−1,y−1,z+1,1)は、アクティブセンサー2による1回前の絶対座標毎受信信号レベル分布データ11において、物体1が移動した軌跡の範囲を(x−1,y−1,z−1,1)〜(x+1,y+1,z+1,1)と推定した場合の(x−1,y−1,z+1,1)に相当する位置を示す。X軸30は、絶対位置座標毎受信信号分布メモリ12において東西方向を表現したX軸を示す。Y軸31は、絶対位置座標毎受信信号分布メモリ12において南北方向を表現したY軸を示す。Z軸32は、絶対位置座標毎受信信号分布メモリ12において上下方向を表現したZ軸を示す。絶対位置座標33(x+1,y+1,z+1,1)は、アクティブセンサー2による1回前の絶対座標毎受信信号レベル分布データ11において、物体1が移動した軌跡の範囲を(x−1,y−1,z−1,1)〜(x+1,y+1,z+1,1)と推定した場合の(x+1,y+1,z+1,1)に相当する位置を示す。絶対位置座標34(x−1,y−1,z−1,1)は、アクティブセンサー2による1回前の絶対座標毎受信信号レベル分布データ11において、物体1が移動した軌跡の範囲を(x−1,y−1,z−1,1)〜(x+1,y+1,z+1,1)と推定した場合の(x−1,y−1,z−1,1)に相当する位置を示す。
【0131】
アクティブセンサー2による最新の走査結果として、起点座標28(x,y,z,0)に物体1が存在する場合、1回分の走査に要する時間を遡ると、物体1は座標(x−1,y−1,z−1,1)〜(x+1,y+1,z+1,1)の27通りの範囲内に存在していたと考えることができる。
【0132】
例えば1回分の走査に要する時間を遡った座標(x−1,y−1,z−1,1)に着目し、2回の走査に要する時間を遡ると、物体1は座標(x−2,y−2,z−2,2)〜(x,y,z,2)の27通りの範囲内に存在していたと考えられる。従って、3回の走査中に物体1が移動した軌跡は、27×27=729通りとなる。
【0133】
これまで説明してきたように、N回の走査により物体1が3次元の空間を移動した軌跡の組み合わせは、27^(N−1)通りとなる。例えば16回の走査結果における物体1が移動した軌跡の組み合わせは、27^15=2.954×10^21通りとなる。
【0134】
これらの組み合わせにおいて、絶対座標毎受信信号レベル分布データ11を積分し、予め設定した閾値を越えた軌跡に物体1が存在していると判定し、検出する。例えば16回の走査結果を積分することにより、SN比が4倍になり、検出可能距離が2倍になる。
【0135】
本実施の形態では、特に、航法装置18が出力する基準方位9の精度が重要である。ジャイロスコープ等による姿勢情報の誤差が大きいと、絶対位置座標変換処理部19による変換処理の精度が大きく低下する。そのため、推定軌跡積分処理部20によるSN比の改善効果を得ることが難しくなる恐れがある。
【0136】
そこで、本実施の形態では、航法装置18にて測定した基準方位9を次のようにして補正する。
図12を参照して説明する。
【0137】
基準目標36は絶対座標系における自身の位置を測定する測定手段を備える設備である。測定手段は例えばGPS受信機である。また、基準目標36は無線通信手段を備える。無線通信手段により、上記の測定手段による測定値をアクティブセンサーシステム100に送信する。
【0138】
この測定値を受信するため、アクティブセンサーシステム100は、
図7に図示した各部に追加して、基準目標36の無線通信手段と無線通信可能な無線通信手段を備える。基準目標36、アクティブセンサーシステム100の無線通信手段は、どのような周波数で通信するものであってもよいし、どのような通信方式で通信するものであってもよい。
【0139】
基準目標36は、無線通信手段を用いて、測定値を定期的に送信することとしてもよいし、アクティブセンサーシステム100からの要求に応じて測定値を送信することとしてもよい。
【0140】
アクティブセンサー2を装備した搭載移動体は、基準目標36がアクティブセンサー2の走査範囲に入るように飛行または航行する。絶対位置座標変換処理部19は、アクティブセンサー2の出力と、航法装置18の姿勢情報取得装置(例えばジャイロスコープ)の出力とに基づいて、基準目標36の相対座標系における方位を取得する。この方位を基準目標検出方位37とする。
【0141】
他方、アクティブセンサーシステム100の無線通信手段が基準目標36から測定値及び測定時刻を受信すると、絶対位置座標変換処理部19は、基準目標36から受信した測定値(基準目標絶対位置38)と、航法装置18の測位手段(例えばGPS受信機)にて測定した、絶対座標系におけるアクティブセンサー2の座標とに基づいて、基準目標絶対位置38の方位を算出する。この算出した方位を基準目標絶対方位39とする。
【0142】
絶対位置座標変換処理部19は、基準目標検出方位37と基準目標絶対方位39の差分を求め、この差分に基づいて、航法装置18のジャイロスコープで測定したジャイロ基準方位35を補正し、補正した基準方位40を算出する。以後、絶対位置座標変換処理部19は、補正した基準方位40に基づいて、相対座標系から絶対座標系への座標変換を行う。このように、絶対位置座標変換処理部19は、航法装置18のジャイロスコープの姿勢情報に含まれる誤差を補正した上で、高精度の座標変換を行うことができる。
【0143】
具体的には、絶対位置座標変換処理部19は次の補正計算を行う。
【0144】
アクティブセンサー2の緯度と経度による位置座標を(x0,y0)とする。アクティブセンサーにより検出した基準目標36の位置を緯度と経度で表現した位置座標を(x1,y1)とする。ジャイロ基準方位35をθ0、基準目標検出方位37がθ3とすると、θ3は次の式で計算することができる。
θ3=atan[(y1−y0)÷{(x1−x0)×cos(y0)}]−θ0…(式12)
【0145】
基準目標36が連絡してきた基準目標絶対位置38の緯度と経度による位置座標を(x2,y2)とする。基準目標絶対方位39をθ4とすると、θ4は次の式で計算することができる。
θ4=atan[(y2−y0)÷{(x2−x0)×cos(y0)}]−θ0…(式13)
【0146】
θ3とθ4の差分がジャイロ基準方位35の誤差である。補正した基準方位40、即ちθ5は、次の式で計算することができる。
θ5=(θ4−θ3)−θ0…(式14)
【0147】
補正した基準方位40を基に絶対位置座標変換処理部19を実行することにより、航法装置18の姿勢検出ジャイロの誤差を補正することができる。これにより、絶対位置座標変換処理部19の計算精度を確保することが可能となる。その結果、推定軌跡積分処理部20による積分の効果を得ることができる。
【0148】
図12では、水平方位のジャイロ基準方位の補正方法について説明したが、垂直方向のジャイロ基準方向の補正も同様にして行うことができる。
【0149】
アクティブセンサー2が航空機に搭載されたレーダーの場合、基準目標36は、GPS受信機と無線通信機を搭載した航空機が望ましい。この航空機は無人機でも有人機でもよい。
【0151】
アクティブセンサー2が船舶に搭載されたレーダーの場合の基準目標36は、GPS受信機と無線通信機を搭載した有人または無人の船舶が望ましい。
【0152】
アクティブセンサー2が水上船舶に搭載したソナーの場合の基準目標36は、GPS受信機と無線通信機を搭載した有人または無人の水上船舶が望ましい。
【0153】
上記の実施形態の一部又は全部は以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0154】
(付記1)
移動体に搭載されたアクティブセンサーから放射波を放射して、
移動する物体で反射した前記放射波を受信して、受信信号を生成する
前記アクティブセンサーの前記受信信号を処理するための信号処理システムであって、
前記アクティブセンサーは、予め定められた時間間隔毎に走査を行い、
前記信号処理システムは、
前記アクティブセンサーによる1回の前記走査によって得られる前記受信信号の分布であって、前記アクティブセンサーの位置を基準として定められる相対座標で位置を表現した前記受信信号の分布である、相対座標受信信号分布を、絶対座標で位置を表現した前記受信信号の分布である絶対座標受信信号分布に変換するため
の絶対位置座標変換処理手段と、
ひとつの前記走査である第0の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第0の絶対座標受信信号分布と、前記第0の走査の直前に行われた走査である第1の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第1の絶対座標受信信号分布と、前記第1の走査の直前に行われた走査である第2の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第2の絶対座標受信信号分布と、…
、第N−1の走査の直前に行われた走査である第Nの走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第Nの絶対座標受信信号分布(Nは2以上の自然数)とを格納するため
の記憶手段と、
前記第0の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である起点座標の受信信号と、前記第1の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第1の座標の受信信号と、前記第2の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第2の座標の受信信号と、…、前記第Nの絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第Nの座標の受信信号とに基づいて積分処理を行い、前記積分処理の結果に基づいて、前記起点座標と、前記第1〜第Nの座標とからなる軌跡を辿って
前記移動する物体の有無を検出するため
の推定軌跡積分処理手段と、
を備える、信号処理システム。
【0155】
(付記2)
Xを1からNの任意の整数とするとき、
前記第Xの座標は、前記第Xの絶対座標受信信号分布において、前記起点座標に対応する座標から予め定められた距離内にある座標からなる候補座標群から選択された座標であり、
前記距離は、前記第0の走査から前記第Xの走査までの時間に関連して定められる、
付記1に記載の信号処理システム。
【0156】
(付記3)
前記
移動する物体と前記アクティブセンサーの距離の2乗に比例して前記受信信号が減衰したことを前提として、前記減衰を打ち消すための処理を、前記アクティブセンサーが受信した受信信号に対して行うた
め受信信号正規化処理手段を更に備える、付記1または付記2に記載の信号処理システム。
【0157】
(付記4)
前記積分処理によってある軌跡を辿って
前記移動する物体を検出すると、その軌跡の始点と終点との間の直線距離と、始点から終点までの所要時間とに基づいて、前記
移動する物体が前記始点から前記終点まで移動する速さを計算するため
の針路速度計算処理手段を更に備える、付記1乃至付記3のいずれかに記載の信号処理システム。
【0158】
(付記5)
前記計算により得られた、前記
移動する物体が前記始点から前記終点まで移動する速さと、検出対象とする物体、或いは、検出対象とはしない物体の速さに関する特徴とを比較して、前記検出対象とする物体に関する出力の抽出、及び、前記検出対象とはしない物体に関する出力の除外のうち、少なくとも一方を行う、付記4に記載の信号処理システム。
【0159】
(付記6)
前記信号処理システムは、前記アクティブセンサーの絶対座標系における座標を測定するため
の測位手段と、前記アクティブセンサーの姿勢情報を取得するた
め姿勢情報取得手段とを更に備え、
絶対座標系における座標が予め分かっている基準目標に基づいて、前記姿勢情報取得手段の基準方位を補正するため、
前記アクティブセンサーの出力と、前記姿勢情報取得手段の出力とに基づいて、前記相対座標系における前記基準目標の方位である基準目標検出方位を求め、
予め分かっている絶対座標系における前記基準目標の座標と、前記測位手段を用いて測定した、絶対座標系における前記アクティブセンサーの座標とに基づいて、前記基準目標の方位である基準目標絶対方位を求め、
前記基準目標検出方位と前記基準目標絶対方位との差分に基づいて、前記基準方位を補正する、
付記1乃至付記5のいずれかに記載の信号処理システム。
【0160】
(付記7)
移動体に搭載されたアクティブセンサーから放射波を放射して、
移動する物体で反射した前記放射波を受信して、受信信号を生成する
前記アクティブセンサーの前記受信信号を処理するための信号処理方法であって、
前記アクティブセンサーは、予め定められた時間間隔毎に走査を行い、
前記アクティブセンサーによる一回の前記走査によって得られる前記受信信号の分布であって、前記アクティブセンサーの位置を基準として定められる相対座標で位置を表現した前記受信信号の分布である、相対座標受信信号分布を、絶対座標で位置を表現した前記受信信号の分布である絶対座標受信信号分布に変換す
る絶対位置座標変換処理段階と、
ひとつの前記走査である第0の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第0の絶対座標受信信号分布と、前記第0の走査の直前に行われた走査である第1の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第1の絶対座標受信信号分布と、前記第1の走査の直前に行われた走査である第2の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第2の絶対座標受信信号分布と、…
、第N−1の走査の直前に行われた走査である第Nの走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第Nの絶対座標受信信号分布(Nは2以上の自然数)とを格納す
る記憶段階と、
前記第0の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である起点座標の受信信号と、前記第1の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第1の座標の受信信号と、前記第2の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第2の座標の受信信号と、…、前記第Nの絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第Nの座標の受信信号とに基づいて積分処理を行い、前記積分処理の結果に基づいて、前記起点座標と、前記第1〜第Nの座標とからなる軌跡を辿って
前記移動する物体の有無を検出す
る推定軌跡積分処理段階と、
を含む、信号処理方法。
【0161】
(付記8)
Xを1からNの任意の整数とするとき、
前記第Xの座標は、前記第Xの絶対座標受信信号分布において、前記起点座標に対応する座標から予め定められた距離内にある座標からなる候補座標群から選択された座標であり、
前記距離は、前記第0の走査から前記第Xの走査までの時間に関連して定められる、
付記7に記載の信号処理方法。
【0162】
(付記9)
前記
移動する物体と前記アクティブセンサーの距離の2乗に比例して前記受信信号が減衰したことを前提として、前記減衰を打ち消すための処理を、前記アクティブセンサーが受信した受信信号に対して行
う受信信号正規化処理段階を更に含む、付記7または付記8に記載の信号処理方法。
【0163】
(付記10)
前記積分処理によってある軌跡を辿って
前記移動する物体を検出すると、その軌跡の始点と終点との間の直線距離と、始点から終点までの所要時間とに基づいて、前記
移動する物体が前記始点から前記終点まで移動する速さを計算す
る針路速度計算処理段階を更に含む、付記7乃至付記9のいずれかに記載の信号処理方法。
【0164】
(付記11)
前記計算により得られた、前記
移動する物体が前記始点から前記終点まで移動する速さと、検出対象とする物体、或いは、検出対象とはしない物体の速さに関する特徴とを比較して、前記検出対象とする物体に関する出力の抽出、及び、前記検出対象とはしない物体に関する出力の除外のうち、少なくとも一方を更に行う、付記10に記載の信号処理方法。
【0165】
(付記12)
絶対座標系における座標が予め分かっている基準目標に基づいて、前記アクティブセンサーの姿勢情報を取得する際の基準方位を補正するため、
前記アクティブセンサーの出力と、前記アクティブセンサーの姿勢情報とに基づいて、前記相対座標系における前記基準目標の方位である基準目標検出方位を求め、
予め分かっている絶対座標系における前記基準目標の座標と、絶対座標系における前記アクティブセンサーの既知の座標とに基づいて、前記基準目標の方位である基準目標絶対方位を求め、
前記基準目標検出方位と前記基準目標絶対方位との差分に基づいて、前記基準方位を補正する、
付記7乃至付記11のいずれかに記載の信号処理方法。
【0166】
(付記13)
移動体に搭載されたアクティブセンサーから放射波を放射して、
移動する物体で反射した前記放射波を受信して、受信信号を生成する
前記アクティブセンサーの前記受信信号を処理するための信号処理プログラムであって、
前記アクティブセンサーは、予め定められた時間間隔毎に走査を行い、
コンピュータを、
前記アクティブセンサーによる1回の前記走査によって得られる前記受信信号の分布であって、前記アクティブセンサーの位置を基準として定められる相対座標で位置を表現した前記受信信号の分布である、相対座標受信信号分布を、絶対座標で位置を表現した前記受信信号の分布である絶対座標受信信号分布に変換するため
の絶対位置座標変換処理手段と、
ひとつの前記走査である第0の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第0の絶対座標受信信号分布と、前記第0の走査の直前に行われた走査である第1の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第1の絶対座標受信信号分布と、前記第1の走査の直前に行われた走査である第2の走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第2の絶対座標受信信号分布と、…
、第N−1の走査の直前に行われた走査である第Nの走査により生成された前記絶対座標受信信号分布である第Nの絶対座標受信信号分布(Nは2以上の自然数)とを格納するため
の記憶手段と、
前記第0の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である起点座標の受信信号と、前記第1の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第1の座標の受信信号と、前記第2の絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第2の座標の受信信号と、…、前記第Nの絶対座標受信信号分布に含まれるひとつの座標である第Nの座標の受信信号とに基づいて積分処理を行い、前記積分処理の結果に基づいて、前記起点座標と、前記第1〜第Nの座標とからなる軌跡を辿って移動した物体の有無を検出するため
の推定軌跡積分処理手段と、
として機能させるための信号処理プログラム。
【0167】
(付記14)
Xを1からNの任意の整数とするとき、
前記第Xの座標は、前記第Xの絶対座標受信信号分布において、前記起点座標に対応する座標から予め定められた距離内にある座標からなる候補座標群から選択された座標であり、
前記距離は、前記第0の走査から前記第Xの走査までの時間に関連して定められる、
付記13に記載の信号処理プログラム。
【0168】
(付記15)
前記
移動する物体と前記アクティブセンサーの距離の2乗に比例して前記受信信号が減衰したことを前提として、前記減衰を打ち消すための処理を、前記アクティブセンサーが受信した受信信号に対して行うため
の受信信号正規化処理手段としてコンピュータを更に機能させる、付記13または付記14に記載の信号処理プログラム。
【0169】
(付記16)
前記積分処理によってある軌跡を辿って
前記移動
する物体を検出すると、その軌跡の始点と終点との間の直線距離と、始点から終点までの所要時間とに基づいて、前記
移動する物体が前記始点から前記終点まで移動する速さを計算するため
の針路速度計算処理手段としてコンピュータを更に機能させる、付記13乃至付記15のいずれかに記載の信号処理プログラム。
【0170】
(付記17)
前記計算により得られた、前記
移動する物体が前記始点から前記終点まで移動する速さと、検出対象とする物体、或いは、検出対象とはしない物体の速さに関する特徴とを比較して、前記検出対象とする物体に関する出力の抽出、及び、前記検出対象とはしない物体に関する出力の除外のうち、少なくとも一方を行う手段としてコンピュータを更に機能させる、付記16に記載の信号処理プログラム。
【0171】
(付記18)
絶対座標系における座標が予め分かっている基準目標に基づいて、前記アクティブセンサーの姿勢情報を取得するため
の姿勢情報取得手段の基準方位を補正するため、
前記アクティブセンサーの出力と、前記姿勢情報取得手段の出力とに基づいて、前記相対座標系における前記基準目標の方位である基準目標検出方位を求める手段と、
予め分かっている絶対座標系における前記基準目標の座標と、前記測位手段を用いて測定した、絶対座標系における前記アクティブセンサーの座標とに基づいて、前記基準目標の方位である基準目標絶対方位を求める手段と、
前記基準目標検出方位と前記基準目標絶対方位との差分に基づいて、前記基準方位を補正する手段としてコンピュータを更に機能させる、付記13乃至付記17のいずれかに記載の信号処理プログラム。