(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮蔽印刷層は、前記黒色又は暗色UVインクを含有する隠蔽部と、光透過性を有する非隠蔽部とを備えており、前記第一表示印刷層にUVインクで前記隠蔽部又は前記非隠蔽部のいずれか一方を地として他方が密に散在せしめられたUVインク層であることを特徴とする請求項1記載のグラフィックス表示体。
前記遮蔽印刷層は、前記第一表示印刷層にUVインクが硬化した非開口部を地として複数の開口部が密に散在せしめられた有孔UVインク層であることを特徴とする請求項1記載のグラフィックス表示体。
前記光制限印刷層は、前記遮蔽印刷層に印刷された黒色又は暗色UVインクを含有する暗色系有孔印刷層と、該暗色系有孔印刷層に印刷された白色UVインクを含有する白色系有孔印刷層とを備えている有孔UVインク層であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のグラフィックス表示体。
前記第一表示印刷層は、前記平面基材に印刷された下塗り層と、該下塗り層に印刷された上塗り層とを含むことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のグラフィックス表示体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグラフィックス表示体は、その製造過程において、(1)透明フィルム層の形成工程、(2)画像層の印刷工程、(3)接着剤層のラミネート工程、および(4)基材への貼付工程を含む複数の製造工程を経なければならず、製造コストが高くつく場合があった。
【0006】
また、使用する際に、基材に人力等で接着貼付しなければならず、手間な作業となっていた。この作業は、基材との間に空気を侵入させないように貼付しなければならず、取扱性にも課題があった。このため、貼付作業に熟練度が要求され、コスト増となる場合があった。基材との間に空気が存在すると、粘着力が弱くなるという問題もあった。
【0007】
さらに、従来のグラフィックス表示体は、基材と透明フィルム層とが接着された積層フィルム構造体であるため、単層構造のものと比べてフィルム代やラミネート代が必要となり、材料費に係るコスト代も高くつくものとなっていた。
【0008】
このように、従来のグラフィックス表示体においては、作業性、取扱性、経済性、又は生産性の点で問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、作業性、取扱性、経済性、又は生産性を向上することができるグラフィックス表示体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のグラフィックス表示体は、透光性を有する平面基材と、該平面基材にUVインク(赤外線硬化型インク)が硬化した第一の意匠を有する第一表示印刷層と、該第一表示印刷層に黒色又は暗色UVインクを含有するUVインクが硬化した遮蔽印刷層と、該遮蔽印刷層に印刷された光制限印刷層と、該光制限印刷層に印刷された前記第一の意匠と異なる第二の意匠を有する第二表示印刷層とを備えていることを特徴とする。
【0011】
透光性とは、光が透過する性質を有し、透過する光が拡散されるため、又は透過率が低いために、透明と違ってその性質を通して向こう側の形状等を明確に認識できない、又はまったく認識できない状態の性質をいう。また、意匠とは、文字、図形、記号、模様、画像、絵画、絵柄、写真、色彩又はこれらの結合をいう。
【0012】
前記遮蔽印刷層は、黒色又は暗色UVインクを含有し、隠蔽性を有することが好ましい。隠蔽性の手段としては、例えば、黒色UVインクで前記第一表示印刷層にベタ印刷する方法、暗色UVインクで前記第一表示印刷層にベタ印刷する方法、UVインクで前記第一表示印刷層に網点印刷する方法が挙げられる。黒色又は暗色UVインクとしては、例えば、濃青色、濃茶色、藍色、紫色その他の暗色、黒色のUVインクが挙げられるが、これ以外のUVインクを含有していてもよく、可視光や赤外光を照射したときに黒色として認識されるものであればよい。
【0013】
また、前記遮蔽印刷層は、UVインクを用いて前記第一表示印刷層に第二の意匠を隠蔽する隠蔽部と非隠蔽部を含むUVインク層を印刷する方法で形成することができ、本発明のグラフィックス表示体は、前記遮蔽印刷層が、前記黒色又は暗色UVインクを含有する隠蔽部と、光透過性を有するUVインクを含有する非隠蔽部とを備えており、前記第一表示印刷層にUVインクで前記隠蔽部又は前記非隠蔽部のいずれか一方を地として他方が密に散在せしめられたUVインク層であることを特徴とする。
【0014】
UVインク層は、印刷層であって、赤外線硬化型インクで構成されているものをいう。前記遮蔽印刷層を、黒色又は暗色UVインクで前記第一表示印刷層に複数の開口部を有する非開口部を硬化させたUVインク層とすることができる。この場合には、前記遮蔽印刷層は、UVインクが硬化した非開口部に散在して複数の開口部を有しており、前記第一表示印刷層にUVインクで前記非開口部を地として前記開口部が密に散在せしめられた有孔UVインク層であることを特徴とする。
【0015】
有孔とは、開口部を有することをいい、無孔とは、開口部を有しないことをいう。前記第一表示印刷層は、無孔のUVインク層が好ましい。なお、前記遮蔽印刷層は、UVインクが硬化した単層とすることが好ましいが、二層その他の複数の積層構造であってもよい。
【0016】
さらに、前記光制限印刷層は、前記遮蔽印刷層に印刷された黒色又は暗色UVインクを含有する暗色系有孔印刷層と、該暗色系有孔印刷層に印刷された白色UVインクを含有する白色系有孔印刷層とを備えている有孔UVインク層であることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、前記第一表示印刷層は、前記平面基材に印刷された下塗り層と、該下塗り層に印刷された上塗り層とを含むことを特徴とする。
【0018】
前記平面基材は、フレキシブルシートで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のグラフィックス表示体によれば、上記構成とされているので、ラミネートや接着貼付をすることなく使用でき、作業性、取扱性、経済性、又は生産性を向上することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明のグラフィックス表示体によれば、遮蔽印刷層は、隠蔽部と非隠蔽部とを備えているので、暗闇で内照の際に第二の意匠の影響を受けずに第一の意匠を明瞭に表示することができ、内照の際と非内照の際とで、異なる意匠を、外部に現出させることができるという効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明のグラフィックス表示体によれば、遮蔽印刷層は、非開口部と開口部とを備えているので、隠蔽部と非隠蔽部とを備えている場合と同様に、暗闇で内照の際に第二の意匠の影響を受けずに第一の意匠を明瞭に表示することができ、内照の際と非内照の際とで、異なる意匠を、外部に現出させることができるという効果を奏する。
【0022】
さらにまた、本発明のグラフィックス表示体によれば、光制限印刷層は、暗色系有孔印刷層と白色系有孔印刷層とを備えているので、非内照の際に適度な隠蔽性を有して第二の意匠を外部に現出させ、かつ、内照の際に第一の意匠を外部に現出させることができるという効果を奏する。
【0023】
本発明のグラフィックス表示体によれば、第一表示層印刷は、平面基材に印刷された下塗り層と、下塗り層に印刷された上塗り層とを含むので、内照の際に、第一の意匠の色彩が薄くなることを防止することができるという効果を奏する。
【0024】
本発明のグラフィックス表示体によれば、平面基材は、フレキシブルシートで構成されているので、柔軟性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。ここで、長尺方向とは、
図1に示す矢印X方向をいい、開口方向とは、
図1に示す矢印Y方向をいう。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
(第一の実施形態)
【0027】
本実施形態のグラフィックス表示体100は、内照式の、照明サインや照明広告、ポスター、パネル、バナー、バス/電車ラッピング、ウィンドウフィルム等のサイングラフィックス用途や、料金表、方向指示板等の各種表示板用途に用いられるものである。
【0028】
特に、グラフィックス表示体100は、映画館、コンサート会場、ライブハウス、プラネタリウム、公共施設、学校校舎など、非暗室と暗室との環境を有する施設において用いられるのに好適であり、光源下と暗闇で異なった視感を与え得るものである。
【0029】
グラフィックス表示体100は、
図1に示すように、平面基材10に複数の印刷層20〜50がこの順で積層印刷されて形成されている。印刷層20〜50は、すべてUVインクが硬化したUVインク層であり、35μm〜250μm厚の範囲内となるように平面基材10に形成されている。
【0030】
平面基材10は、透明性を有さないが、透光性を有するものである。透明とは、光が通過する性質を有し、透過率が極めて高く、物質を通してその向こう側が透けて見える状態の性質をいう。透過率が極めて高いとは、可視光線、すなわち波長範囲380nm〜780nmにおいて、光透過率が80%以上であることをいう。
【0031】
平面基材10は、例えば、透光性の平面フィルム、透光性の平面シート、透光性のフレキシブルシートが挙げられる。好ましくは、透光性のフレキシブルシートが、柔軟性、耐候性の点で好ましい。平面基材10は、光透過率が、およそ20〜35%の範囲内のものが好ましい。光透過性の測定方法は、JIS K 7105による。さらに、防水性、防炎性、防汚性、印刷性に優れたものであれば、より好ましい。
【0032】
本実施形態の平面基材10は、400μm〜800μm厚のフレキシブルシートで構成されている。このフレキシブルシートは、光透過率が約33%で、従来のフレキシブルシートに比べて、約1.5倍の明るさを有する。平面基材10は、この高透過性に加えて、照明光のイメージが見えにくく、糸目が見えないという特性を有する。耐気性能を有し、耐候性に優れる。勿論、軽く、柔軟性に優れるので、低温下での施工も良好である。
【0033】
本実施形態の印刷層20〜50は、UVインクを用いたインクジェット印刷によって、単層の平面基材上に設けられた多層印刷積層構造であり、第一表示印刷層20と、遮蔽印刷層30と、光制限印刷層40と、第二表示印刷層50とを含む。このうち、光制限印刷層40には複数の開口部44を有し、第二表示印刷層50には複数の開口部52を有する。すなわち、本実施形態のグラフィックス表示体100は、印刷層20〜50に、遮蔽印刷層30を底部として開口方向に開口する複数の有底開口部を有し、光制限印刷層40及び第二表示印刷層50は、開口部44,52を有する非開口部43,51で構成されている。
【0034】
第一表示印刷層20は、開口部を有さない無孔のUVインク層である。第一表示印刷層20は、UVインクが硬化した印刷層であればよく、UVインクの色彩、種類等は特に限定されるものではなく、種々のものが利用できる。第一表示印刷層20には、UVインクで施された第一の意匠23を有する。第一の意匠23は、多色でも単一色であってもよいし、白黒、モノクロ、その他の色彩のみであってもよい。勿論、第一の意匠23はフルカラーであってもよい。
【0035】
本実施形態の第一表示印刷層20は、下塗り層21と、上塗り層22とを含む。下塗り層21は、平面基材10の表面全体に印刷されており、上塗り層22は、下塗り層21の表面全体に印刷されている。本実施形態では、上塗り層22及び下塗り層21に、それぞれ同一の意匠が施されており、これが2度書きされていることで、第一表示印刷層20は第一の意匠23を有する。具体的には、第一表示印刷層20は、平面状積層構造のUVインク層であり、第一の意匠23は、その略全面に施されたフルカラーの風景写真と略中央に有する文字とからなる。
【0036】
遮蔽印刷層30は、第一表示印刷層20と光制限印刷層40との間に設けられたUVインク層であり、黒色又は暗色UVインクを含有し、黒色又は暗色に表現されている。本実施形態の遮蔽印刷層30は、暗色UVインクをインクジェット印刷によって上塗り層22の表面全体にベタ印刷し、このUVインクが硬化した無孔の単層構造である。遮蔽印刷層30の暗色の表現方法としては、例えば、濃青色、濃茶色、藍色、紫色その他の暗色のUVインクを用いたインクジェット印刷方法を挙げることができる。遮蔽印刷層30は、可視光や赤外光を照射したときに黒色として認識されるものであればよく、必ずしも黒インクK100%の濃度で表現されている必要はない。遮蔽印刷層30は、内照の際に、第二表示印刷層50に有する第二の意匠53を遮蔽する機能を発揮する。
【0037】
光制限印刷層40は、非開口部43と複数の開口部44とを有している。光制限印刷層40は、遮蔽印刷層30の表面全体にUVインクで縦横に規則正しく小さな円形状の開口部44を多数密に有し、開口部44以外の部分を地とする非開口部43をインクジェット印刷することにより、UVインクが硬化した多孔のUVインク層である。
【0038】
また、光制限印刷層40は、縦断面視で、暗色系有孔印刷層41と白色系有孔印刷層42とを含む2層の印刷積層構造である。開口部44は、暗色系有孔印刷層41と白色系有孔印刷層42とのぞれぞれの層に同位置、同軸、かつ同孔径で形成されている。
【0039】
ここで、同位置とは、印刷データのデータム又は他の形状に定められた理論的な正確な位置からの点、直線形状又は平面形状の狂いがない又は許容範囲内であることをいう。孔径とは、開口部44の開口方向から観察して、開口部44の形状によらず、開口部44の大きさの最大寸法をいう。
【0040】
暗色系有孔印刷層41は、遮蔽印刷層30の表面全体に印刷されたUVインク層であり、黒色又は暗色UVインクを含有し、全体として黒色又は暗色に表現されている。暗色系有孔印刷層41は、第一の意匠23を遮蔽する機能を発揮する。暗色系有孔印刷層41の黒色又は暗色の表現方法としては、例えば、CMYKカラーにおいて、スミベタ、リッチブラック、4色ベタ等が挙げられる。スミベタは、黒インクK100%の濃度で表現されている。リッチブラックは、CMYKそれぞれの色をかけ合わせて作成されている。4色ベタは、CMYKそれぞれの色をすべて100%で作成されている。
【0041】
白色系有孔印刷層42は、暗色系有孔印刷層41と第二表示印刷層50との間に設けられているUVインク層であり、白色UVインクを含有し、白色に表現されている。白色UVインクの濃度は100%が好ましい。白色系有孔印刷層42と暗色系有孔印刷層41とでは、含有するUVインクが異なるが、その形状、構造は同様の構成でも構わない。白色系有孔印刷層42は、第二表示印刷層50の下塗りの機能を発揮する。いわゆる白打ちともいう。
【0042】
第二表示印刷層50は、グラフィックス表示体100の表面を構成する単層のUVインク層である。第二表示印刷層50に含有するUVインクは、特に限定されるものではなく、フルカラー等、種々のものが利用できる。第二表示印刷層50は、光制限印刷層40の表面全体に開口部44と同位置、同軸、かつ同孔径の開口部52を有している。第二表示印刷層50は、非開口部43の表面全体にUVインクで非開口部51をインクジェット印刷することにより、UVインクが硬化した有孔のUVインク層であり、第二の意匠53を有する。
【0043】
第二の意匠53は、多色でも単一色であってもよいし、白黒、モノクロ、その他の色彩のみであってもよい。勿論、フルカラーであってもよい。第二の意匠53は、第一の意匠23と同一とすることもできるが、異なるものとすることが好ましい。本実施形態の第二の意匠53は、UVインクで印刷された単色の色彩の文字と、これと異なる色彩の背景とからなる。
【0044】
次に、グラフィックス表示体100の製造方法について説明する。平面基材10に、UVインクを用いたインクジェット印刷によって、印刷層20〜50を順に印刷する。ここで、各開口部44,52を有する、光制限印刷層40及び第二表示印刷層50を印刷するには、所定の開口率のパラメータを予め設定し、保存しておけばよい。開口率とは、グラフィックス表示体100の単位面積当たりの、開口部44,52の開口方向から観察して、遮蔽印刷層30又は第一表示印刷層20が露見される面積の割合を百分率で表したものをいう。
【0045】
まず、暗色系有孔印刷層41と白色系有孔印刷層42と第二表示印刷層50とのそれぞれの印刷データにおいて、開口部のパスの位置、大きさ、間隔を設定しておく。あわせて他の印刷層21,22,30の印刷データを用意し、保存しておく。
【0046】
次いで、保存した印刷データを用いて、コンピューターからUVインクジェットプリンターに順次印刷出力する。これで、本実施形態のグラフィックス表示体100を得ることができる。つまり、第一の意匠23を有する第一表示印刷層20と、遮蔽印刷層30を印刷した上に、開口部44,52を印刷しないで、他の部分である非開口部43,51および第二の意匠53を印刷し、光制限印刷層40と第二表示印刷層50とを形成した積層印刷層を、単層の平面基板10に設けたグラフィックス表示体100が完成する。
【0047】
開口部44,52の開口率は、本来、グラフィックス表示体100の大きさ、寸法にもよるが、一般的に、開口部44,52の開口方向から観察して、第二の意匠53と第一の意匠23とを、それぞれ非内照と内照とで共に快適に視認可能となる範囲内に設定されていることが好ましい。例えば、100平方mm当たり所定数の開口部44,52を有するグラフィックス表示体100の場合、開口率は、28%〜47%、好ましくは30%〜45%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、開口率は38%前後が好ましい。
【0048】
開口率が30%未満になると、製作が難しく、内照の際に、グラフィックス表示体100が暗く、見づらくなる。また、開口率が45%を超えると、隠蔽率が下がり、第一の意匠23が、通常時である非内照の際に、開口部44,52を介して目視可能となってしまう。
【0049】
開口部44,52の孔径は、1,600μm〜2,000μmの範囲内であることが好ましい。開口部44,52の孔径が、1,600μm未満の場合、内照の際に、視認しづらくなる。また、開口部44,52の孔径が、2,000μmを超えると、非内照の際に、第一の意匠23と第二の意匠53とが混同し、判別しにくくなる。
【0050】
このようして本実施形態のグラフィックス表示体100は、
図2に示すように、グラフィックス表示体100の表面側に、第二の意匠53を有する第二表示印刷層50が形成されている。非内照の際に、グラフィックス表示体100を遠方から見た場合、第二表示印刷層50に有する第二の意匠53とそれ以外の背景とが視認される。
【0051】
グラフィックス表示体100は、
図3に示すように、非内照の際に近傍又は近辺から見た場合、遠方から見たときには識別できなかったドット状の穴が穿たれているような模様が視認される。これは、貫通孔ではなく、第二表示印刷層50の非開口部51に縦横に規則正しく有する複数の円形状の開口部52によるものである。
【0052】
複数の開口部52は、例えば100平方mm当たりに縦横に配列されており、長尺方向における、任意の一の列に配列された複数の開口部52と、この列から最も近い位置にある他の列に配列された複数の開口部52とは、それぞれ中心点の位置が略ジグザグ状となるように千鳥配列されている。また、グラフィックス表示体100は、第二表示印刷層50の一辺側面に、有底半円筒状の開口部が複数配列されている。
【0053】
(使用状態の観察)
UVインクジェットプリンターに株式会社ルキオ製、型名:LDP3200を用い、UVインクにこのプリンター用のものを用いて、グラフィックス表示体100を得た。このグラフィックス表示体100を、標示体の後から照明される照明広告の前面に張設して設け、壁付け看板を得た。第二表示印刷層50を表面側として映画館の壁に掛け、使用状態を観察した。
【0054】
まず、室内の光源下で非内照の際においては、第二表示印刷層50に施された第二の意匠53、すなわち、「A」,「B」,「C」,「D」,「E」,「F」の単色の色彩の文字と、これと異なる色彩の背景とが鮮やかに表示され、第一の意匠23による第二表示印刷層50の外観への干渉は見られなかった。
【0055】
次いで、映画館の室内の光源を落とし、内照状態としたところ、室内は完全な暗闇となって第二の意匠53は全く見えなくなった。第二の意匠53が見えていた位置には、
図4に示すように、暗闇の中に第一の意匠23である、フルカラーの風景写真と、その風景写真を背景として浮かび上がるように略中央に「U」「V」「W」「X」「Y」「Z」の文字が白く高輝度で現出表示された。
【0056】
このように本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、例えば、光源下では、看板、広告、標識、案内板等の各種表示として認識することができ、暗闇では光源下の各種表示とは異なる広告、メッセージ、イメージ等の照明広告や照明サインを表示することができる。壁付け看板の用途に好適である。
【0057】
また、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、上記構成としたので、第二の意匠53を、室内の光源を介して認識でき、光源がない暗闇ではグラフィックス表示体100の裏面から透過した照明光を介して第一の意匠23を認識することができる。第一の意匠23は、第二の意匠53と異なるものの、第二の意匠53の干渉を受けず、両意匠の選択の自由度が高い。つまり、両意匠は、必ずしも同系統色の範囲に限定されず、色系統が異なる組み合わせでも選択することができる。
【0058】
また、グラフィックス表示体100によれば、暗闇で内照の際に、白色を表現することができる。本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、暗闇で内照の際に、第二の意匠53である、単色の色彩の文字と、これとは異なる色彩の背景は全く視認されず、第一の意匠23である、フルカラーの背景の風景写真の前面に白く浮き上がったような文字が現出し、第一の意匠23と第二の意匠53とを混同することなく視認することができる。
【0059】
そして本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、上記構成とされているので、使用過程においてラミネートや接着貼付をすることなく使用でき、作業性、取扱性、経済性、又は生産性の向上を実現することができる。また、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、予め上記印刷データを作成し、印刷層20〜50の形成工程のみで製造できるので、その製造工程においても経済性又は生産性の向上を実現することができる。グラフィックス表示体100によれば、単層の平面基材10に印刷多層構造を設けた構造であるので、材料費も安価に済む。
【0060】
特に、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、UVインクジェットプリンターを用いて印刷を行うので、水性、溶剤系インクジェットプリンターを用いた場合と比較して、インクの瞬時乾燥が可能で、高スループットが可能である。また、インクの非吸収メディアへの直接印刷が可能で、溶剤系インクで問題となる揮発性有害化合物(VOC)が生じず、環境にやさしい。
【0061】
また、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、開口部44,52の開口率が、30〜45%であるので、暗すぎず、明るすぎず、適度に、内照の際と非内照の際のいずれにおいても表示内容を快適に視認することができる。
【0062】
さらに、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、白色系有孔印刷層42を備えているので、第二の意匠53を正確に表現することができる。すなわち、UVインクは透過性があるため、白色系有孔印刷層42を形成する工程を省くと第二の意匠53の色彩がその前工程の暗色系有孔印刷層41の印刷工程で形成された黒色又は暗色と混ざり混色を起こしてしまう。これに対し、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、白色系有孔印刷層42を備えているので、これを防止することができる。
【0063】
さらに、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、第一表示印刷層20は、下塗り層21と上塗り層22とを含むので、内照の際に、第一の意匠23の色彩が薄くなることを防止することができる。
【0064】
さらにまた、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、平面基材10がフレキシブルシートで構成されているので、柔軟性に優れる。また、ガラスフィルムで構成された場合に比べて、低コストを実現できる。さらに、アクリル板で構成された場合に比べて、作業性、取扱性に優れる。
【0065】
本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、複数の開口部44,52が均等に配置されているので、色ムラのような模様の発生を防止できる。また、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、UVインク印刷をしているので、白色フィルムにシルク印刷をしたときのようなドットが残ることを防止することができる。
【0066】
なお、本発明のグラフィックス表示体に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、例えば、平面基材、第一表示印刷層、遮蔽印刷層又は第二表示印刷層の形状、構造に係る構成、及び光制限印刷層の形状、構造に係る構成等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更可能である。
【0067】
例えば、本発明に係るグラフィックス表示体の平面基材は、上記実施形態の如くフレキシブルシートで構成されているものに限定されず、例えば、透光性の平面フィルム、透光性の平面シートであってもよく、その他の構成を備えているもの等でもよい。
【0068】
また、第一表示印刷層および光制限印刷層はそれぞれ単層又は三層その他の多層構造であってもよい。第一の意匠は、第二の意匠と異なるものであればよく、上記実施形態のものに何ら限定されるものではない。下塗り層と上塗り層は、上記実施形態においては、同一の意匠が2度塗りされた同一形状、同一構造のものであるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、下塗り層を、白色UVインクを含有するUVインク層とし、上塗り層を、下塗り層で白打ちされた第一の意匠を有するUVインク層であってもよい。
【0069】
遮蔽印刷層は、内照の際に第二の意匠を隠蔽する機能を有するものであればよく、上記実施形態の如く、暗色UVインクで第一表示印刷層にベタ印刷したものに何ら限定されない。例えば、遮蔽印刷層は、黒色UVインクで第一表示印刷層にベタ印刷したもの、UVインクで第一表示印刷層に網点印刷したもの、その他の印刷方法によるものであってもよい。
【0070】
第二表示印刷層は、上記実施形態では、単層構造であるが、何らこれに限定されるものではなく、適宜、二層その他の多層構造を採用することもできる。
【0071】
光制限印刷層および第二表示印刷層は、いずれも印刷層であればよく、上記実施形態の如くUVインク層に限定されるものではなく、例えば、公知のインキを用いた印刷層であってもよい。
【0072】
また、光制限印刷層および第二表示印刷層は、上記実施形態においては、複数の開口部を有し、それらの各列は、それぞれ中心点の位置が略ジグザグ状となるように千鳥配列されているが、何らこれに限定されず、例えば、略碁盤の目状に交差配列されていてもよい。また、開口部の形状は、上記実施形態の如く円形状に何ら限定されるものではなく、例えば、方形状であってもよい。
【0073】
さらに、光制限印刷層および第二表示印刷層は、開口部を有するものに何らこれに限定されるものではなく、例えば、透光部と不透光部とを有する構成であってもよい。透光部と不透光部は規則的に配置されているものが好ましいが、形状、配列は、特に限定されない。例えば、円形状、方形状、千鳥配列、略碁盤の目状に交差配列されていてもよい。
【0074】
(第二の実施形態)
次に、
図5を参照して、第二の実施形態のグラフィックス表示体200について説明する。なお、第一の実施形態と同一又は対応する部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0075】
本実施形態のグラフィックス表示体200は、遮蔽印刷層30が、隠蔽部31と非隠蔽部32とを備えており、第一表示印刷層20にUVインクで隠蔽部31又は非隠蔽部32のいずれか一方を地として他方が密に散在せしめられたUVインク層である。
【0076】
隠蔽部31は、黒色又は暗色UVインクを含有するUVインクが印刷されて硬化し、黒色に表現されている。隠蔽部31の黒色の表現方法としては、例えば、CMYKカラーにおいて、スミベタ、リッチブラック、4色ベタ等が挙げられる。隠蔽部31は、第二の意匠53を隠蔽する。
【0077】
非隠蔽部32は、透明UVインクを含有するUVインクが印刷されて硬化し、光透過性を有する。非隠蔽部32は、開口部44,52と同位置、同軸、同孔径となるように第一表示印刷層20に印刷されて形成されている。非隠蔽部32の光透過率は、第一実施形態の開口率と同様な考慮のうえ設定されることが好ましい。
【0078】
グラフィックス表示体200の製造方法は、遮蔽印刷層30の印刷データにおいて、隠蔽部31と非隠蔽部32のパスの位置、大きさ、間隔を設定しておき、保存した印刷データを用いて、コンピューターからUVインクジェットプリンターに印刷出力する。他は第一の実施形態と同様である。
【0079】
第二の実施形態のグラフィックス表示体200によれば、第一の実施形態のグラフィックス表示体100と同様の効果を奏する。特に、遮蔽印刷層30は、隠蔽部31と非隠蔽部31とを備えたUVインク層であるので、暗闇で内照の際に第二の意匠53の影響を受けずに第一の意匠23を明瞭に表示することができ、内照の際と非内照の際とで、異なる意匠を、外部に現出させることができる。
【0080】
(第三の実施形態)
次に、
図6を参照して、第三の実施形態のグラフィックス表示体300について説明する。なお、上記第一又は第二の実施形態と同一又は対応する部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0081】
本実施形態のグラフィックス表示体300は、遮蔽印刷層30が、非開口部33と複数の開口部34とを有しており、第一表示印刷層20の表面全体にUVインクで非開口部33を地として開口部34が密に散在せしめられた有孔UVインク層である。
【0082】
遮蔽印刷層30は、上塗り層22の表面全体にUVインクで縦横に規則正しく小さな円形状の開口部34を多数密に有し、開口部34以外の部分を地としてインクジェット印刷することにより、硬化した多孔のUVインク層である。
【0083】
非開口部33は、縦断面視で上塗り層22と暗色系有孔印刷層41との間に設けられたUVインク層であり、少なくとも第二の意匠53と同位置、同面積、同体積となるように、上塗り層22に印刷されて形成されている。非開口部31は、黒色又は暗色UVインクを含有するUVインクが印刷されて硬化し、黒色に表現されている。
【0084】
開口部34は、暗色系有孔印刷層41と白色系有孔印刷層42と第二表示印刷層50とのぞれぞれの層に有する開口部44,52と同位置、同軸、かつ同孔径であり、遮蔽印刷層30に複数有する。開口部34は、縦断面視で上塗り層22の表面を底部として開口方向に開口する。
【0085】
すなわち、本実施形態のグラフィックス表示体300は、印刷層20〜50に、第一表示印刷層20を底部とする複数の有底開口部を有し、第一表示印刷層20を除く他の印刷層30〜50は、開口部34,44,52を有する非開口部33,43,51で構成されている。
【0086】
グラフィックス表示体300の製造方法は、まず、遮蔽印刷層30の印刷データにおいて、非開口部33および開口部34のパスの位置、大きさ、間隔を設定しておく。次いで、保存した印刷データを用いて、コンピューターからUVインクジェットプリンターに印刷出力する。他は第一の実施形態と同様である。
【0087】
第三の実施形態のグラフィックス表示体300によれば、第一又は第二の実施形態のグラフィックス表示体100,200と同様の効果を奏する。本実施形態では、遮蔽印刷層30は、非開口部33と開口部34とを備えた有孔UVインク層であるので、暗色ベタ印刷や隠蔽部31と非隠蔽部32とを備えている場合と同様に、暗闇で内照の際に第二の意匠53の影響を受けずに第一の意匠23を明瞭に表示することができ、内照の際と非内照の際とで、異なる意匠を、外部に現出させることができる。さらに、第一又は第二の実施形態のグラフィックス表示体100,200よりもインクの使用量を低減することができる。
【0088】
なお、上記実施形態においては、映画館に用いられる場合の一例を説明したが、何らこれらに限定されるものではない。本発明のグラフィックス表示体は、例えば、コンサート会場、ライブハウス、プラネタリウム、公共施設、学校校舎などの非暗室と暗室との環境を有する施設において好適に用いることができる。本発明のグラフィックス表示体によれば、光源下と暗闇で異なった視感を与え得ることができる。