(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動部を前記固定部に対して前記主方向の前記第1側へ付勢しており、かつ前記主方向の前記第1側への前記可動部の変位に伴って弾性力を減少させる正弾性機構を更に有し、
前記正弾性機構は、
前記固定部に対して前記可動部を付勢する弾性力を生じる正側主弾性部と、
前記主方向に交差する第2副方向において、前記可動部に対して前記正側主弾性部を付勢する弾性力を生じる正側副弾性部と、を有し、
前記正側主弾性部は、
前記固定部に対して連結されており、前記固定部の所定位置から前記可動部へ至る部分を有しており、
前記可動部に対して、前記第2副方向において移動可能かつ前記主方向及び前記第2副方向に直交する第2回転軸方向に平行な軸回りに回転可能に連結されており、
前記可動部との連結部が前記固定部の前記所定位置に対して、前記主方向の前記第1側とは反対側かつ前記第2副方向の第3側に位置しており、
前記固定部の前記所定位置と前記可動部との連結部との間の引張りに抗する弾性力を生じる正のばね特性を有しており、
前記正側副弾性部は、
前記可動部に連結されており、
前記正側主弾性部の前記可動部との連結部に連結されており、
前記正側主弾性部の前記可動部との連結部の、前記第2副方向の前記第3側とは反対側への変位に抗する弾性力を生じる正のばね特性を有している
請求項1に記載の弾性機構。
前記負側副弾性部の前記可動部との連結部の、前記可動部における位置を、前記負側副弾性部の弾性力の方向において調整可能な負側副弾性部位置調整機構を更に有している
請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性機構。
前記可動部を前記固定部に対して前記主方向の前記第1側とは反対側へ付勢しており、かつ前記主方向の前記第1側とは反対側への前記可動部の変位に伴って弾性力を減少させる正弾性機構を更に有し、
前記正弾性機構は、
前記固定部に対して前記可動部を付勢する弾性力を生じる正側主弾性部と、
前記主方向に交差する第2副方向において、前記可動部に対して前記正側主弾性部を付勢する弾性力を生じる正側副弾性部と、を有し、
前記正側主弾性部は、
前記固定部に対して連結されており、前記固定部の所定位置から前記可動部へ至る部分を有しており、
前記可動部に対して、前記第2副方向において移動可能かつ前記主方向及び前記第2副方向に直交する第2回転軸方向に平行な軸回りに回転可能に連結されており、
前記可動部との連結部が前記固定部の前記所定位置に対して、前記主方向の前記第1側かつ前記第2副方向の第3側に位置しており、
前記固定部の前記所定位置と前記可動部との連結部との間の引張りに抗する弾性力を生じる正のばね特性を有しており、
前記正側副弾性部は、
前記可動部に連結されており、
前記正側主弾性部の前記可動部との連結部に連結されており、
前記正側主弾性部の前記可動部との連結部の、前記第2副方向の前記第3側とは反対側への変位に抗する弾性力を生じる正のばね特性を有している
請求項1に記載の弾性機構。
前記主方向に直交する第3回転軸回りに回転可能であり、かつ前記第3回転軸から離れた位置にて前記可動部の前記主方向における変位が伝達される回転部材を更に有している
請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性機構。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態に係るばね機構の原理)
図1は、実施形態に係るばね機構の原理を説明するための模式図である。
【0020】
図示のばね機構1は、z方向に傾斜した主ばね3と、x方向に平行な副ばね5とを有している。主ばね3及び副ばね5は、例えば、共に圧縮ばねであり、中央側(点P1)において互いに接続されているとともに、圧縮された状態で両端(点P2及びP3)のx方向の移動が規制されている。このとき、主ばね3及び副ばね5の弾性力は、x方向において釣り合っている。
【0021】
具体的には、まず、主ばね3は、z方向に対して傾斜して配置されており、その長さ方向に平行な力F1を生じている。この力F1は、x方向に平行な成分(分力)である力F1xと、z方向に平行な成分(分力)である力F1zとに分けて考えることができる。また、副ばね5は、x方向に平行に配置されており、副ばね5の長さ方向(すなわちx方向)に平行な力F2を生じている。そして、力F1xと力F2とは同一の大きさになっている。
【0022】
一方、主ばね3の力F1zについては、これと釣り合う力はばね機構1において生じておらず、点P1をz方向の正側へ付勢する力となる。この力F1zは、いわば、主ばね3と副ばね5との不釣り合い力である。本願では、この不釣り合い力を利用するばね機構を提案する。
【0023】
この不釣り合い力を利用するばね機構1においては、後に詳述するように、例えば、好適な負ばね機構を得ることができる。また、例えば、点P2のz方向の位置等を調整することによって、不釣り合い力F1zの大きさを調整し、ひいては、ばね機構1のばね定数を変更することができる。
【0024】
なお、
図1では、主ばね3及び副ばね5の双方が圧縮ばねである場合を例にとって説明したが、後述する実施形態から明らかなように、主ばね3及び副ばね5は、x方向において互いに逆向きの弾性力を生じるように配置及び接続がなされれば、一方又は双方が引張ばねであってもよい。
【0025】
<第1実施形態>
(概略構成)
図2(a)は、第1実施形態に係るばね機構11の構成を示す平面図である。
図2(b)は、ばね機構11を示す側面図である。
【0026】
なお、ばね機構11は、いずれの方向が上下方向又は水平方向とされてもよいが、便宜上、z方向の正側を上方として説明することがあるものとする。他の実施形態においても同様である。
【0027】
ばね機構11は、例えば、固定部13と、固定部13に対してz方向に移動可能な載荷板15とを有しており、載荷板15を上方へ付勢する定荷重ばね機構として構成されている。また、ばね機構11は、負のばね特性を有する負ばね機構17Dと、正のばね特性を有する正ばね機構17Uとを有することによって、定荷重ばね機構として構成されている。
【0028】
なお、以下の説明において、負ばね機構17Dに係る構成についてはDを付すことがあり、正ばね機構17Uに係る構成についてはUを付すことがあり、また、D又はUを適宜に省略して、いずれのばね機構17に係る構成であるのか区別しないことがある。
【0029】
固定部13は、例えば、その基本となるベース19と、載荷板15をz方向に案内するための鉛直ガイド21と、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uの取り付けに寄与するカラム23D及び23Uとを有している。
【0030】
ベース19は、例えば、z方向に面する板状である。鉛直ガイド21は、例えば、ベース19に固定された、z方向に平行に延びる軸状部材である。載荷板15は、例えば、板状の部材であり、ベース19に対向するように配置され、鉛直ガイド21が挿通されている。これにより、載荷板15は、固定部13に対して、xy平面に沿った移動が規制されるとともにz方向への移動が許容されている。なお、鉛直ガイド21の配置及び数等は適宜に設定されてよい。図示の例では、鉛直ガイド21は、載荷板15のx方向両側に配置されている。
【0031】
カラム23D及び23Uは、ベース19に固定され、z方向に延びている。カラム23U及び23Dは、例えば、載荷板15に対してx方向の同一側に配置されている。カラム23U及び23Dの高さは同一でもよいが、図示の例では、カラム23Dがカラム23Uよりも低くされている。これは、後述のように、負ばね機構17Dのカラム23Dに対する連結位置が、正ばね機構17Uのカラム23Uに対する連結位置よりも低いことに対応している。
【0032】
負ばね機構17Dは、載荷板15をz方向の正側に付勢する弾性力を生じ、当該弾性力は、載荷板15がz方向の正側に変位するほど大きくなる。このように、負のばね特性では、弾性力の方向と弾性力が増加するときの変位の方向とが同一である。
【0033】
正ばね機構17Uは、載荷板15をz方向の正側に付勢する弾性力を生じ、当該弾性力は、載荷板15がz方向の負側に変位するほど大きくなる。このように、正のばね特性では、弾性力の方向と弾性力が増加するときの変位の方向とが逆である。
【0034】
このような負ばね機構17Dと正ばね機構17Uとが組み合わされると、載荷板15がz方向の正側又は負側に移動したとき、負ばね機構17Dの弾性力の増減量と、正ばね機構17Uの弾性力の増減量とが相殺される。その結果、全体として、一定の弾性力が載荷板15に加えられることになる。
【0035】
(負ばね機構の構成)
負ばね機構17Dは、
図1の点P1に相当するスライダー25Dと、
図1の主ばね3に相当するバネシャフト27Dと、
図1の副ばね5に相当するインタースプリング29Dとを有している。バネシャフト27Dとインタースプリング29Dとは、x方向において釣り合い、z方向の正側への不釣り合い力を生じる。この不釣り合い力によって、負ばね機構17Dは、載荷板15をz方向の正側に付勢する。具体的には、以下のとおりである。
【0036】
スライダー25Dは、例えば、載荷板15に対して、yz平面における移動が規制されるとともにx方向における移動が許容されている。例えば、スライダー25Dは、載荷板15に固定され、x方向に延びるスライドガイド31D(リニアガイド)によってx方向に案内されている。スライダー25Dの形状等は適宜に設定されてよい。
【0037】
バネシャフト27Dは、例えば、特に符号を付さないが、軸方向の相対移動のみが許容された2つの軸状部材と、この2つの軸状部材全体の長さを短縮させる2つの軸状部材の相対移動によって圧縮される圧縮ばね(
図2(b)に点線で示す)とを含んで構成されている。圧縮ばねは、正のばね定数を有するものである。従って、バネシャフト27Dは、その両端の間の圧縮ひずみによって増加する、圧縮ひずみに抗する弾性力を生じる(すなわち正のばね定数の)圧縮ばねとして機能する。なお、2つの軸状部材は、例えば、圧縮ばねの曲げ変形を抑制することに寄与する。
【0038】
バネシャフト27Dの一端は、スライダー25Dに連結され、他端は、カラム23Dに連結されている。この連結は、例えば、バネシャフト27Dがxz平面に平行になるようになされている。バネシャフト27Dは、カラム23D側の端部に対してスライダー25D側の端部がz方向の正側かつx方向の正側に位置するように傾斜している。この傾斜には、後述するように、インタースプリング29Dとの釣り合いが影響している。なお、バネシャフト27Dがz方向又はx方向に対して図示の傾斜とは逆側へ傾斜しないように、スライダー25D及び/又は載荷板15の移動範囲が規制されていてもよい。
【0039】
バネシャフト27Dとスライダー25Dとの連結は、y方向に平行な軸回りに相対回転可能になされている。同様に、バネシャフト27Dとカラム23Dとの連結は、y方向に平行な軸回りに相対回転可能になされている。従って、例えば、スライダー25Dのx方向の移動及び/又は載荷板15(スライダー25D)のz方向の移動に伴って、バネシャフト27Dは、短縮又は伸縮が許容されつつ(ただし、本実施形態では伸縮しない態様についても述べる)x方向(別の観点ではz方向)に対する傾斜を変化させることが可能である。
【0040】
バネシャフト27Dのカラム23Dとの連結部の、カラム23Dにおける位置は、z方向において変更可能とされている。例えば、カラム23Dには、z方向に配列された複数の孔部23h(
図2(b))が形成されている。そして、バネシャフト27Dを軸支する軸部材(符号省略)のカラム23Dに対する挿入位置を複数の孔部23hから選択することによって、バネシャフト27Dの連結位置を変更することができる。なお、このようなカラム23D等の構成は、位置調整機構33D(
図2(b))を構成している。
【0041】
インタースプリング29Dは、例えば、正のばね定数を有する圧縮ばねである。例えば、インタースプリング29Dは、つる巻ばねであり、その両端の間の圧縮ひずみによって増加する、圧縮ひずみに抗する弾性力を生じる。なお、インタースプリング29Dの座屈を抑制するように、バネシャフト27Dのような伸縮する複数の軸状部材が設けられてもよい。
【0042】
インタースプリング29Dの一端は、スライダー25Dに連結され、他端は、載荷板15に連結されている。この連結は、例えば、x方向において、インタースプリング29Dがスライダー25Dを挟んでバネシャフト27Dとは反対側に位置するようになされ、また、インタースプリング29Dがx方向(スライダー25Dの移動方向)に平行になるようになされている。
【0043】
従って、図示の例では、バネシャフト27Dのx方向正側への分力と、インタースプリング29Dのx方向の負側への力とがスライダー25Dに作用する。すなわち、これらの力は互いに逆向きにスライダー25Dに作用する。そして、スライダー25Dは、これらの力が釣り合う、x方向の位置にて停止する。また、バネシャフト27Dのz方向正側への分力は、載荷板15をz方向の正側へ付勢する弾性力となる。
【0044】
インタースプリング29Dの載荷板15との連結部の、載荷板15における位置は、x方向において変更可能となっている。例えば、載荷板15には、x方向に配列された複数の孔部15h(
図2(a))が形成されている。そして、インタースプリング29Dの端部に固定された治具(符号省略)の載荷板15に対する挿入位置を複数の孔部15hから選択することによって、インタースプリング29Dの連結位置を変更することができる。なお、このような構成は、位置調整機構35D(
図2(a))を構成している。
【0045】
(正ばね機構の構成)
正ばね機構17Uは、負ばね機構17Dと同様に、
図1の不釣り合い力を利用するものであり、その構成要素は、概略、負ばね機構17Dと同様である。ただし、正ばね機構17Uは、引張ばねを利用しており、また、各要素の向き及び位置が負ばね機構17Dと相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0046】
正ばね機構17Uは、
図1の点P1に相当するスライダー25U(
図2(a))と、
図1の主ばね3に相当するバネシャフト27Uと、
図1の副ばね5に相当するインタースプリング29Uとを有している。バネシャフト27Uとインタースプリング29Uとは、x方向において釣り合い、z方向の正側への不釣り合い力を生じる。この不釣り合い力によって、正ばね機構17Uは、載荷板15をz方向の正側に付勢する。
【0047】
スライダー25Uは、スライダー25Dと同様のものであり、スライドガイド31Uによって、載荷板15に対する、yz平面に平行な移動が規制されるとともにx方向における移動が許容されている。なお、スライドガイド31Uは、例えば、スライドガイド31Dと並列に配置されている。
【0048】
バネシャフト27Uは、例えば、バネシャフト27Dと同様に、2つの軸部材と、当該2つの軸部材全体の伸縮に応じて弾性力を生じる、正のばね定数を有するばね(
図2(b)に点線で示す)とを有するものである。ただし、バネシャフト27Uにおいて用いられるばねは、バネシャフト27Dに用いられるばねとは異なり、引張ばねである。すなわち、引張ばねは、2つの軸状部材全体を伸長させる2つの軸状部材の相対移動によって引っ張られて弾性力を生じる。ひいては、バネシャフト27Uは、その両端の間の引張ひずみによって増加する、引張ひずみに抗する弾性力を生じる(すなわち正のばね定数の)引張ばねとして機能する。
【0049】
バネシャフト27Uは、バネシャフト27Dと同様に、例えば、xz平面に平行になるように、一端がスライダー25Uに連結され、他端がカラム23Uに連結されている。ただし、バネシャフト27Uは、バネシャフト27Dとは逆に、カラム23U側の端部に対してスライダー25U側の端部がz方向の負側かつx方向の正側に位置するように傾斜している。すなわち、バネシャフト27Uは、カラム23Uとの連結部からスライダー25Uとの連結部への方向が、z方向において、バネシャフト27Dとは逆である。これにより、バネシャフト27Uの引張力と、バネシャフト27Dの圧縮力とは、z方向において同一側(図示の例では正側)に向けられる。なお、負ばね機構17Dと同様に、バネシャフト27Uの傾斜には、インタースプリング29Uとの釣り合いが影響しており、また、z方向又はx方向に対して図示の傾斜とは逆側に傾斜しないように適宜に各種の部材の移動が制限されていてもよい。
【0050】
バネシャフト27Uとスライダー25Uとの連結及びバネシャフト27Uとカラム23Uとの連結は、負ばね機構17Dにおける連結と同様である。すなわち、これらの連結は、y方向に平行な軸回りに相対回転可能になされており、また、バネシャフト27Uのカラム23Uとの連結部の、カラム23Uにおける位置は、z方向において変更可能である(位置調整機構33U(
図2(b))が設けられている。)。
【0051】
インタースプリング29Uは、例えば、インタースプリング29Dと同様に、正のばね定数を有する圧縮ばねであり、x方向に平行になるようにスライダー25U及び載荷板15に連結されている。ただし、インタースプリング29Uは、インタースプリング29Dとは異なり、スライダー25Uに対してバネシャフト27Uと同一側に配置されている。これは、バネシャフト27Uが、バネシャフト27Dとは異なり、引張ばねとして機能していることに対応している。
【0052】
すなわち、上記のように配置することによって、図示の例では、バネシャフト27Uのx方向負側への分力と、インタースプリング29Uのx方向の正側への力とがスライダー25Uに対して互いに逆向きに作用する。そして、スライダー25Uは、これらの力が釣り合う、x方向の位置にて停止する。また、バネシャフト27Uのz方向正側への分力は、載荷板15をz方向の正側へ付勢する弾性力となる。
【0053】
なお、インタースプリング29Uの載荷板15との連結部の、載荷板15における位置が、x方向において変更可能となっている(位置調整機構35U(
図2(a))が設けられている)ことは、インタースプリング29Dと同様である。
【0054】
(負ばね機構の特性)
負ばね機構17Dは、
図1を参照して説明した、不釣り合い力を利用する新たな原理に基づくものである。ただし、ここでは、従来技術の考え方を利用して、負ばね機構17Dの特性を説明する。
【0055】
まず、負ばね機構17Dにおいて、スライダー25D及びインタースプリング29Dが設けられていないと仮定する。すなわち、バネシャフト27Dの載荷板15側の端部は、載荷板15に対して、y軸回りに回転可能、かつx方向に移動不可能に連結されていると仮定する。
【0056】
この場合、載荷板15がz方向の正側へ移動すると、バネシャフト27Dは伸長し、長さ方向の弾性力(
図1のF1)は減少する。一方、バネシャフト27Dはz方向に対する傾斜が小さくなるから、バネシャフト27Dの長さ方向の弾性力におけるz方向の分力(
図1のF1z)の割合は増加する。従って、傾斜の変化による分力の増加の程度が伸長による弾性力の減少の程度を上回ると、z方向の正側への弾性力が、z方向の正側への変位によって増加することになる。すなわち、負のばね特性が実現される。これが従来の負ばね機構における基本的な原理である。
【0057】
バネシャフト27Dのx方向の分力(
図1のF1x)は、載荷板15がz方向の正側へ移動してバネシャフト27Dのz方向に対する傾斜が小さくなる(x方向に対する傾斜が大きくなる)と、弾性力(F1)における割合が減少する。従って、x方向の分力(F1x)は、バネシャフト27Dの長さ方向の弾性力(F1)自体の減少と、傾斜の変化による分力の割合の減少とが相乗されて減少する。
【0058】
次に、本実施形態のようにスライダー25D及びインタースプリング29Dが設けられている場合について考える。
【0059】
載荷板15(スライダー25D)がz方向の正側へ移動すると、上述のように、バネシャフト27Dのx方向の分力(F1x)が減少する。これにより、インタースプリング29Dによってx方向の負側に付勢されているスライダー25Dがx方向の負側へ移動する。
【0060】
スライダー25Dのx方向の負側への移動によって、バネシャフト27Dの伸長は抑制され、又はバネシャフト27Dは短縮される。従って、バネシャフト27Dの長さ方向の弾性力(F1)は、減少が抑制され、又は増加する。また、バネシャフト27Dのz方向に対する傾斜は小さくなる。その結果、インタースプリング29Dが設けられていない場合に比較して、z方向の分力(F1z)は増加する。
【0061】
このように、インタースプリング29Dが設けられていることによって、バネシャフト27Dの長さ方向の弾性力の減少が抑制されたり、z方向に対する傾斜の減少が助長されたりする。その結果、例えば、バネシャフト27Dのz方向に対する傾斜が比較的小さい場合において、載荷板15がz方向の正側に移動したとき、バネシャフト27Dの伸長による弾性力の減少量が相対的に大きくなることが抑制され、ひいては、負ばねの機能を失うことが抑制される。すなわち、負のばね特性として機能する範囲が長くなる。
【0062】
なお、別の観点では、本実施形態の負ばね機構17Dでは、載荷板15側の端部は、z方向だけでなく、これに交差する方向(x方向)にも移動可能であり、2自由度の運動が可能となっている。これにより、バネシャフト27Dの伸縮をバネシャフト27Dの傾斜のみによらずに制御可能となっており、上記のような効果が奏されている。
【0063】
(正ばね機構の特性)
正ばね機構17Uのばね特性についても、負ばね機構17Dと同様に、便宜的に、従来技術の考え方を利用して説明する。
【0064】
まず、正ばね機構17Dにおいて、スライダー25U及びインタースプリング29Uが設けられていないと仮定する。すなわち、バネシャフト27Uの載荷板15側の端部は、載荷板15に対して、y軸回りに回転可能、かつx方向に移動不可能に連結されていると仮定する。
【0065】
この場合、載荷板15がz方向の負側へ移動すると、バネシャフト27Uは伸長し、長さ方向の弾性力は増加する。一方、バネシャフト27Uはz方向に対する傾斜が小さくなるから、バネシャフト27Uの長さ方向の弾性力におけるz方向の分力の割合は増加する。従って、伸長による弾性力の増加と傾斜の変化による分力の増加との相乗によって、z方向の正側への弾性力が増加する。すなわち、正のばね特性が維持される。
【0066】
バネシャフト27Uのx方向の分力は、載荷板15がz方向の負側へ移動してバネシャフト27Uのz方向に対する傾斜が小さくなる(x方向に対する傾斜が大きくなる)と、弾性力における割合が減少する。従って、バネシャフト27Uのx方向の分力は、バネシャフト27Uの長さ方向の弾性力の増加の程度が、傾斜の変化によるx方向の分力の割合の減少の程度に対して相対的に大きいと増加し、逆に、前者が後者に対して相対的に小さいと減少する。
【0067】
次に、本実施形態のようにスライダー25U及びインタースプリング29Uが設けられている場合について考える。
【0068】
まず、載荷板15(スライダー25U)がz方向の負側へ移動したときに、バネシャフト27Uの長さ方向の弾性力の増加の程度が、傾斜の変化によるx方向の分力の割合の減少の程度に対して相対的に大きい場合、すなわち、x方向の負側への分力が結果として増加する場合について考える。この場合、別の観点では、傾斜の変化によるz方向の分力の割合の増加の程度は相対的に大きい。x方向の負側への分力が結果として増加して、スライダー25Uがx方向の負側へ移動すると、バネシャフト27Uは、その伸びが抑制されるとともにz方向に対する傾斜の減少が助長される。その結果、z方向の分力においては、伸びの増加による増加が抑制され、z方向への傾斜の減少による増加が助長される。
【0069】
次に、載荷板15がz方向の負側へ移動したときに、バネシャフト27Uの長さ方向の弾性力の増加の程度が、傾斜の変化によるx方向の分力の割合の減少の程度に対して相対的に小さい場合、すなわち、x方向の負側への分力が結果として減少する場合について考える。この場合、別の観点では、傾斜の変化によるz方向の分力の割合の増加の程度は相対的に小さい。x方向の負側への分力が結果として減少して、スライダー25Uがx方向の正側へ移動すると、バネシャフト27Uは、その伸びが助長されるとともにz方向に対する傾斜の減少が抑制される。その結果、z方向の分力においては、伸びの増加による増加が助長され、z方向への傾斜の減少による増加が抑制される。
【0070】
纏めると、z方向の分力については、伸びの増加による増加の程度が相対的に大きく、かつ傾斜の変化によるz方向の分力の割合の増加の程度が相対的に大きいときは、伸びの増加による増加が抑制され、z方向への傾斜の減少による増加が助長され、伸びの増加による増加の程度が相対的に小さく、かつ傾斜の変化によるz方向の分力の割合の増加の程度が相対的に小さいときは、伸びの増加による増加が助長され、z方向への傾斜の減少による増加が抑制される。従って、z方向の分力は、全体として、伸びの増加の影響が相対的に小さく、z方向への傾斜の減少の影響が相対的に大きくされる。その結果、例えば、バネシャフト27Uの変位に対して、正ばね機構17U全体としてのばね定数を相対的に大きくすることができる。
【0071】
(負ばね機構の好適な設定例)
負ばね機構17Dにおいて、上記のような不釣り合い力を利用して負のばね定数を実現するための、バネシャフト27D及びインタースプリング29Dのばね定数及び初期状態は無数に存在する。以下では、好適な設定例について述べる。
【0072】
図3(a)は、以下の説明で用いる、種々のパラメータに係る記号の定義を示す模式図である。
【0073】
同図に記載した記号等の示す内容は、以下のとおりである。
v:バネシャフト27Dとカラム23Dとの連結部を通りz軸に平行な座標軸。
0:v軸上の原点。以下では、バネシャフト27Dとスライダー25Dとの連結部が原点0の高さにあるときを初期状態とする。
H/2:原点と、バネシャフト27Dとカラム23Dとの連結部との距離
θ
c:上記初期状態のときのバネシャフト27Dのx方向に対する角度。初期角度。反時計回りを正とする。
l
c:初期角度θ
cのときのバネシャフト27Dの長さ。初期長さ。
Δl
0(不図示):初期長さl
cのときのバネシャフト27Dの軸方向の変形量(縮み)。初期変形量ということがある。圧縮を正とする。
θ:バネシャフト27Dのx方向に対する角度。反時計回りを正とする。
l
c′:角度θのときのバネシャフト27Dの長さ
【0074】
まず、
図3(a)に係る幾何学的関係を整理すれば下記のとおりである。
H/2=l
csinθ (1)
l
c′=l
c+Δl
c (2)
ただし、Δl
cは、角度θ
cから角度θになったときのバネシャフト27Dの変位増分(ばねの変位増分と同義)。
l
c′sinθ=H/2+v (3)
【0075】
次に力の作用を検討する。
バネシャフト27Dのばね定数をk
sとすると、バネシャフト27Dによる作用力f
c(外向きを正)は次式で表される。
f
c(θ)=k
s(Δl
0−Δl
c) (4)
なお、バネシャフト27Dの伸びにより、初期変形量(縮み)が低減することから上記の符号となる。
【0076】
インタースプリング29Dのばね定数をK
Iとし、上述した初期状態での変形量(初期変形量。圧縮を正とする)をΔl
Iとする。角度θでのx方向の力のつり合い式は次式となる。
k
s(Δl
0−Δl
c)cosθ−K
I(Δl
I+l
c′cosθ−l
ccosθ
c)
=0 (5)
【0077】
一方、角度θ
cではバネシャフト27Dの変位増分がゼロになるように初期変形量とばね定数を調整することから、次の水平方向の力のつり合い式が成立する。
k
sΔl
0cosθ
c−K
IΔl
I=0 (6)
【0078】
上記(6)式を用いて(5)式から初期変形量Δl
Iを消去し、ばね定数K
Iについて解くと、下記式が得られる。
K
I=k
s(Δl
0cosθ−Δl
ccosθ−Δl
0cosθ
c)
/(l
ccosθ+Δl
ccosθ−Δl
ccosθ
c) (7)
【0079】
ここで、バネシャフト27Dの変位増分Δl
cを次のように仮定してみる。
Δl
c=0 (8)
【0080】
上記(8)式を(7)式に代入して整理すると次式を得る。
K
I=k
s×Δl
0/l
c (9)
【0081】
つまり、バネシャフト27Dが回転しても伸縮しないと仮定すると、インタースプリング29Dのばね定数K
Iが定まる。(9)式を(7)式に代入してバネシャフト27Dの変位増分Δl
cについて解けば、(8)式を誘導することができることは別途確認済みである。つまり、(9)式で求めたばね定数をインタースプリング29Dに適用すれば、バネシャフト27Dの伸縮をせずに水平力のつり合いを取ることができる。
【0082】
このとき、インタースプリングに付与する初期変形量は(6)に(9)式を代入して次式のようになる。
Δl
I=l
ccosθ
c (10)
【0083】
また、鉛直方向の不釣合い力は次式となる。
F
v(θ)=k
s(Δl
0−Δl
c)sinθ (11)
【0084】
前記(3)式及び(8)式を(11)式に代入して次式が得られる。
F
v(v)=k
s×Δl
0/l
c×(H/2+v) (12)
この(12)式によれば、鉛直座標vに比例した正の不釣合い力F
v(v)が鉛直方向に生じる。
【0085】
(正ばね機構の好適な設定例)
正ばね機構17Uにおいても、負ばね機構と同様に、バネシャフト27U及びインタースプリング29Uのばね定数及び初期状態は無数に存在する。以下では、好適な設定例について述べる。
【0086】
図3(b)は、以下の説明で用いる、種々のパラメータに係る記号の定義を示す模式図である。この図に示すように、
図3(a)と同様に原点0及びv軸を取り、負ばね機構17Dで使用した記号にPを付すものとする。
【0087】
すなわち、同図に記載した記号等の示す内容は、以下のとおりである。
v:バネシャフト27Uとカラム23Uとの連結部を通りz軸に平行な座標軸。
0:v軸上の原点。バネシャフト27Uとスライダー25Uとの連結部が原点0の高さにあるときを初期状態とする。
H
P/2:原点と、バネシャフト27Uとカラム23Uとの連結部との距離
θ
Pc:上記初期状態のときのバネシャフト27Uのx方向に対する角度。初期角度。時計回りを正とする。
l
Pc:初期角度θ
Pcのときのバネシャフト27Uの長さ。初期長さ。
Δl
P0(不図示):初期長さl
Pcのときのバネシャフト27Uの軸方向の変形量(伸び)。初期変形量ということがある。引張りを正とする。
θ
P:バネシャフト27Uのx方向に対する角度。時計回りを正とする。
l
Pc′:角度θ
Pのときのバネシャフト27Uの長さ
【0088】
なお、θ
Pc及びθ
Pが時計回りを正としている点並びにΔl
P0が引張りを正としている点は、負ばね機構17Dにおける定義と異なっている。
【0089】
まず、
図3(b)に係る幾何学的関係を整理すれば下記のとおりである。
H
P/2=l
Pcsinθ
P (13)
l
Pc′=l
Pc+Δl
Pc (14)
ただし、Δl
Pcは、角度θ
Pcから角度θ
Pになったときのバネシャフト27Uの変位増分(ばねの変位増分と同義)。
l
Pc′sinθ
P=H
P/2−v (15)
【0090】
次に力の作用を検討する。
バネシャフト27Uのばね定数をk
Psとすると、バネシャフト27Uによる作用力f
Pc(外向きを正)は次式で表される。
f
Pc(θ
P)=−k
Ps(Δl
P0+Δl
Pc) (16)
なお、バネシャフト27Uの伸びにより、初期変形量(伸び)が増加することから上記の符号となる。
【0091】
インタースプリング29Uのばね定数をK
PIとし、上述した初期状態での変形量(初期変形量。圧縮を正とする)をΔl
PIとする。角度θ
Pでのx方向の力のつり合い式は次式となる。
k
Ps(Δl
P0+Δl
Pc)cosθ
P
−K
PI(Δl
PI−l
Pc′cosθ
P+l
Pccosθ
Pc)=0 (17)
【0092】
一方、角度θ
Pcではバネシャフト27Uの変位増分がゼロになるように初期変形量とばね定数を調整することから、次の水平方向の力のつり合い式が成立する。
k
PsΔl
P0cosθ
Pc−K
PIΔl
PI=0 (18)
【0093】
上記(18)式を用いて(17)式から初期変形量Δl
PIを消去し、ばね定数K
PIについて解くと、下記式が得られる。
K
PI=−k
Ps(Δl
P0cosθ
P+Δl
Pccosθ
P−Δl
P0cosθ
Pc)
/(l
Pccosθ
P+Δl
Pccosθ
P−l
Pccosθ
Pc) (19)
【0094】
ここで、バネシャフト27Uの変位増分Δl
Pcを次のように仮定してみる。
Δl
Pc=0 (20)
【0095】
上記(20)式を(19)式に代入して整理すると次式を得る。
K
PI=−k
Ps×Δl
P0/l
Pc (21)
【0096】
現実には、(21)式に示すような負のばね定数を持つばねを設置することは容易ではない。そこで、以下、Δl
Pcは変動するものとして検討する。
【0097】
負ばね機構17Dにおけるθ=θ
cでの水平力のつり合い式((6)式)は、正ばね機構17Uのθ
P=θ
Pcでのつり合い式((18)式)と力の向きは異なるが、同様のつり合い状態を示している。そこで、インタースプリング29Uのばね定数と初期変形量とをそれぞれK
PI=K
I、Δl
PI=Δl
I(ただし、正負の定義は異なる)と仮定して、Δl
Pcの変動量、ならびに鉛直方向の不釣合い力の特性を評価する。
【0098】
バネシャフト27Uの変位増分Δl
Pcは、(17)式に(9)式と(10)式を代入してΔl
Pcについて解けばよい。導出した解は極めて煩雑なため、以下のように示す。
Δl
Pc=Δl
Pc(l
Pc,H
P,v,k
Ps,Δl
P0) (22)
【0099】
鉛直方向の不釣合い力は次式で表される。
F
Pv(θ
P)=k
Ps(Δl
P0+Δl
Pc)sinθ
P (23)
【0100】
(15)式を代入して整理すると次式を得る。
F
Pv(v)=k
Ps×(Δl
P0+Δl
Pc)/(l
Pc+Δl
Pc)
×(H
P/2−v) (24)
【0101】
鉛直座標vと不釣合い力はバネシャフト27Uの伸縮量Δl
Pcによる非線形関係となる。バネシャフト27Uの伸縮量が十分に小さい範囲において、以下の近似式が成り立つ。
F
Pv(v)=k
Ps×Δl
P0/l
Pc×(H
P/2−v) (25)
このとき、ばね定数は一定値を示し、鉛直座標vに比例した負の不釣合い力が生じる。
【0102】
なお、上記では、K
PI=K
I、Δl
PI=Δl
Iと仮定したが、この仮定の成立は必須ではない。負ばね機構17Dについての(9)式及び(10)式から類推できるように、K
PI=k
PS×Δl
P0/l
Pc、Δl
PI=l
Pc×cosθ
Pcが成り立てば、(24)式及び(25)式が導かれる。
【0103】
(定荷重ばね機構の好適な設定例)
負ばね機構17D及び正ばね機構17Uそれぞれについて、ばね定数及び初期状態が無数に存在するように、これらを組み合わせた定荷重ばね機構11においても、そのばね定数及び初期状態は無数に存在する。以下では、好適な設定例について述べる。
【0104】
ばね機構11における好適な設定例は、例えば、上述した、負ばね機構17Dの好適な設定例と、正ばね機構17Uの好適な設定例との組み合わせである。このときのばね特性は、以下のとおりである。
【0105】
上述した負ばね機構17D及び正ばね機構17Uの好適な設定例について、不釣合い力の和を取れば以下の式となる。
f
v(v)=F
v(v)+F
Pv(v)
=k
s×Δl
0/l
c×(H/2−v)
+k
Ps×Δl
P0/l
Pc×(H
P/2−v) (26)
【0106】
ここで、
K
s=k
s×Δl
0/l
c、
K
Ps=k
Ps×Δl
P0/l
Pc
とする。K
s及びK
Psは、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uのz方向における弾性力のばね定数に相当する。
【0107】
このばね定数K
s及びK
Psを用いて(26)式を整理すると、下記式が得られる。
f
v(v)=(K
sH+K
PsH
P)/2+(K
s−K
Ps)v (27)
【0108】
従って、K
s=K
Psであれば、(27)式の右辺第1項を弾性力とする定荷重ばね特性が実現される。
【0109】
K
s=K
Psを満たす、l
c、k
s、Δl
0、l
Pc、k
Ps及びΔl
P0の組み合わせは無数に存在する。例えば、簡便には、l
c=l
Pc、k
s=k
Ps及びΔl
0=Δl
P0である。さらに、H=H
Pであってもよい。この場合、(27)式より、下記式が得られる。
f
v(v)=k
s×Δl
0/l
c×H=const. (28)
【0110】
(ばね特性の例)
上述した好ましい設定例((28)式)を前提として、ばね特性を計算で求めた。計算条件は、以下のとおりである。
l
c=300mm
k
s=0.102N/mm
Δl
0=117.7mm
H=150mm
なお、f
vの目標値は、6.0Nである。
【0111】
図4は、計算結果を示している。横軸"Vertical Disp."は、載荷板15(
図1の点P1)の座標vを示している。縦軸"Force"は、各種のばね機構から載荷板15に対してz方向の正側に付与される力を示している。
【0112】
"Analytical Solution"は、理論解を示している。"Multi-Body Computation"は、動力学モデルによる数値解析結果を示している。"Total"は、ばね機構11による力を示し、"U-Spring"は、正ばね機構17Uによる力を示し、"D-Spring"は、負ばね機構17Dによる力を示している。
【0113】
理論解と、動力学モデルによる数値解析結果とは良好に一致している。また、ばね機構11全体としての力は、一定であり、かつ目標の大きさと一致している。
【0114】
(ばね特性の調整)
上記の(27)式から、l
c、k
s、Δl
0、H、l
Pc、k
Ps、Δl
P0及びHpのいずれかを変更すれば、定荷重値f
vを変更できることが理解される。より簡便には、(28)式が成り立つ設定において、k
s、Δl
0、l
c及びHのいずれかが変更されればよい。
【0115】
ただし、いずれのパラメータについても、インタースプリング29のばね定数あるいは初期変形量の同時変更が求められる。簡易に定荷重値f
vを変えるためには、バネシャフト27の高さH及び/又はH
P(別の観点ではバネシャフト27Dのカラム23Dに対する連結位置とバネシャフト27Uのカラム23Uに対する連結位置とのz方向の距離)を変えるのが実際的である。この場合、高さH及び/又はH
Pの変化に伴うインタースプリング29の初期変形量ΔI
Iの調整が必要となる。一般に、インタースプリング29の初期変形量は大きく、高さH及び/又はH
Pの変化に伴う初期変形量ΔI
Iの変化は無視できる程度に小さい。そのため、定荷重値f
vを変化させるには、高さH及び/又はH
P変えるだけで良い場合が多い。また、(28)式のような場合、定荷重値f
vは高さHに正比例することから、機械的な取り扱いも容易である。
【0116】
そこで、高さHを変えて、
図4の計算と同様の計算を行った。なお、計算条件は、高さH(=H
P)を除いて、
図4と同様である。
【0117】
図5は、その計算結果を示している。横軸"Vertical Disp."、縦軸"Force"、"Analytical Solution"及び"Multi-Body Computation"の意味は、
図4と同様である。また、同図に示すように、H=150mm、H=100mm及びH=50mmの3ケースについて計算を行った。なお、いずれの計算結果も、ばね機構11全体としての弾性力を示している。
【0118】
この図に示されているように、高さHを変えることによって定荷重値f
vを変えることができており、また、理論解と動力学モデルによる数値解析結果とは一致している。
【0119】
また、高さHを変えたときに、インタースプリング29の初期変形量ΔI
Iを調整した場合と、調整しない場合とについて、動力学モデルによる数値解析を行った。なお、計算条件は、高さH(=H
P)及びΔI
Iを除いて、
図4と同様である。
【0120】
横軸"Vertical Disp."及び縦軸"Force"、"Analytical Solution"の意味は、
図4と同様である。"ΔI
I adjusted"は初期変形量ΔI
Iを調整した場合の計算結果であり、"ΔI
I not adjusted "は初期変形量ΔI
Iを調整していない場合の計算結果である。図示のとおり、H=100mm及びH=50mmの2ケースについて計算を行った。
【0121】
この図に示されているように、高さHの変更に際して、初期変形量ΔI
Iを調整した場合と調整していない場合とでは、その差はほとんどない。
【0122】
以上のとおり、本実施形態に係るばね機構11では、載荷板15をz方向の正側へ付勢する負ばね機構17Dは、バネシャフト27Dと、インタースプリング29Dとを有している。バネシャフト27Dは、固定部13に回転可能に連結され、(スライダー25Dを介して)載荷板15に対して回転可能かつx方向に移動可能に連結され、載荷板15との連結部が固定部13との連結部に対してz方向の正側かつx方向の正側に位置しており(傾斜しており)、圧縮に抗する弾性力を生じる。インタースプリング29Dは、載荷板15に連結されるとともに、(スライダー25Dを介して)バネシャフト27Dに連結されており、バネシャフト27Dの載荷板15との連結部のx方向の正側への変位に抗する弾性力を生じる。
【0123】
従って、例えば、不釣り合い力を利用する原理によって好適に負のばね定数を実現できる。この負ばね機構17Dは、例えば、ばねの向きの変化のみを利用する従来技術に比較して、負のばね定数を実現できる変位の範囲が広い。また、負ばね機構17Dは、例えば、バネシャフト27Dの固定部13との連結部のz方向の位置又はインタースプリング29Dの載荷板15との連結部のx方向の位置を変えることによって、ばね定数を変えることができる。このような負のばね定数の可変性を有する機構は、従来提案されていない。
【0124】
また、本実施形態に係るばね機構11では、載荷板15をz方向の正側へ付勢する正ばね機構17Uは、バネシャフト27Uと、インタースプリング29Uとを有している。バネシャフト27Uは、固定部13に回転可能に連結され、(スライダー25Uを介して)載荷板15に対して回転可能かつx方向に移動可能に連結され、載荷板15との連結部が固定部13との連結部に対してz方向の負側かつx方向の正側に位置しており(傾斜しており)、引張りに抗する弾性力を生じる。インタースプリング29Uは、載荷板15に連結されるとともに、(スライダー25Uを介して)バネシャフト27Uに連結されており、バネシャフト27Uの載荷板15との連結部のx方向の負側への変位に抗する弾性力を生じる。
【0125】
従って、例えば、不釣り合い力を利用する原理によって好適に正のばね定数を実現できる。この正ばね機構17Uは、例えば、バネシャフト27Uの固定部13との連結部のz方向の位置又はインタースプリング29Uの載荷板15との連結部のx方向の位置を変えることによって、ばね定数を変えることができる。
【0126】
また、本実施形態では、上記のような負ばね機構17D及び正ばね機構17Uを組み合わせて定荷重ばね機構11を構成している。従って、例えば、比較的広い変位について定荷重を実現できる。また、例えば、バネシャフト27D及び/又は27Uの固定部13との連結部のz方向の位置を変えたり、インタースプリング29D及び/又は29Uの載荷板15との連結部のx方向の位置を変えたりすることによって、定荷重の大きさを変えることができる。
【0127】
<第2実施形態>
(概要)
第2実施形態のばね機構は、構造自体は第1実施形態のばね機構11と同様である。すなわち、第2実施形態のばね機構は、
図2(a)及び
図2(b)に示した構造を有している。従って、第2の実施形態の説明においても、第1実施形態の符号を用いることとする。
【0128】
ただし、第2実施形態のばね機構11は、ばね定数等の設定が第1実施形態とは異なり、定荷重ばね機構に一定のばね特性を付与したような機能を発揮する。具体的には、以下のとおりである。
【0129】
上述した(27)式において、K
s≠K
Psとすると、所定のばね定数を有し(右辺第2項)、また、所定の定荷重項(右辺第1項)を有する特殊なばね機構11が得られる。このようなばね機構11が本実施形態のばね機構である。
【0130】
(ばね定数の設定)
第2実施形態のばね機構11のばね定数は、(27)式の右辺第2項から明らかなように、下記式で現わされる。
k
m=K
s−K
Ps (29)
すなわち、所望のばね定数k
mに応じて、l
c、k
s、Δl
0、l
Pc、k
Ps及びΔl
P0を適宜に設定すればよい。
【0131】
(定荷重項の設定)
上記(27)式の定荷重項(右辺第1項)から、例えば、高さH及び/又はH
Pを変更すれば、定荷重の値を変えることができることがわかる。
【0132】
なお、高さH及びH
Pの関係は、以下のようになる。(29)式より、次式が成り立つ。
K
Ps=k
m−K
s (30)
【0133】
一方、原点位置を上記のばね特性の中立位置とした場合、所定の定荷重値をf
0として、下記式が成り立つ。
f
0=(K
sH+K
PsH
P)/2 (31)
【0134】
この(31)式に(30)式を代入してバネシャフト27Uのヒンジ高さH
Pについて解けば、最終的に次式が得られる。
H
P=−(1−α
f)/(1−α
m)×H (32)
ここで、
α
f=2f
0/(K
sH)
α
m=k
m/K
s
【0135】
ばね定数を一定とし、定荷重の大きさを一定の割合α
cで変化させることを考える。この場合、(27)式又は(31)式より、以下の式が得られる。
α
cf
0=(K
sα
cH+K
Psα
cH
P)/2 (33)
この式から、α
cH及びα
cH
Pを新たなH及びH
Pとすればよいことがわかる。
【0136】
(ばね特性の例)
上記の式に基づく、ばね特性の理論解を計算した。計算条件は、以下のとおりである。
l
c=300mm
k
s=0.102N/mm
Δl
0=117.7mm
H=100mm
定荷重f
0:4.0N(α
f=2)
【0137】
図6は、その計算結果を示している。横軸"Vertical Disp."、縦軸"Force"、"Analytical Solution"及び"Multi-Body Computation"の意味は、
図4と同様である。また、同図に示すように、α
mを−0.6から0.6まで変化させた。具体的には、ばね定数K
Psを変化させてk
mを変化させた((29)式参照)。また、これに伴い、(32)式に基づいてH
Pを変化させた。
【0138】
同図に示されているように、定荷重が保たれつつ、一定のばね特性が発揮されている。また、このばね特性は、α
mの正負によって、正のばね特性及び負のばね特性のいずれも再現可能である。なお、α
m=0は、第1実施形態の定荷重ばね機構11に相当する。
【0139】
以上のとおり、本実施形態では、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uを組み合わせ、かつK
s≠K
Psとすることによって、定荷重ばね機構に一定のばね特性を付与したような特殊なばね機構が実現される。このようなばね機構は、例えば、縦免震装置などに有用である。しかも、不釣り合い力を利用する原理に基づくことから、第1実施形態と同様に、定荷重を変えることができ、更に、ばね定数も変えることができる。
【0140】
<第3実施形態>
(概要)
図7は、第3実施形態のばね機構311の構成を示す側面図であり、第1実施形態の
図2(b)に対応する図である。なお、ばね機構311の平面図は、
図2(a)と同様である。
図7において、第1実施形態と同一又は類似する構成については、同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。
【0141】
ばね機構311は、第1実施形態と同様に、固定部13、載荷板15、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uを有している。ただし、第1実施形態とは異なり、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uがz方向の同一側に配置されている。
【0142】
なお、
図7において、正ばね機構17Uに係るバネシャフト27U及びスライダー25U並びにカラム23Uは、負ばね機構17Dに係るバネシャフト27D及びスライダー25D並びにカラム23Dに隠れて不図示である。
図7では、カラム23Dが比較的高く設けられているが、第1実施形態でもこのように高く設けられてよいことは既に述べたとおりである。また、
図7では、バネシャフト27のカラム23に対する連結位置を調整するための孔部23hの図示が省略されているが、第1実施形態と同様に、連結位置は調整可能であってよい。
【0143】
このようなばね機構311は、種々の用途に利用可能であるが、例えば、以下のように、ばね定数を正負の広い範囲で変更可能なばね機構として利用可能である。
【0144】
負ばね機構17D及び正ばね機構17Uが同一側に配置されていることから、負ばね機構17Dの弾性力と正ばね機構17Uの弾性力とは互いに打ち消し合う。また、載荷板15がz方向において変位すると、双方の弾性力が減少し、又は双方の弾性力が増加する。
【0145】
従って、例えば、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uの各種のパラメータが、第1実施形態で述べた(28)式が成立するようなものである場合、すなわち、負ばね機構17と正ばね機構17Uとの各種パラメータの設定が同等の場合、載荷板15の変位に関わらず、ばね機構311全体としては、載荷板15に弾性力を付与しない。
【0146】
一方、例えば、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uの各種のパラメータが異なり、一方の弾性力が他方の弾性力よりも大きい場合、ばね機構311全体としてのばね特性は、その弾性力が大きい方のばね機構17の特性が現れやすくなる。このような原理により、正負の広い範囲に亘ってばね定数を変化させることができる。
【0147】
(ばね定数の調整方法の具体例)
負ばね機構17D及び正ばね機構17Uの弾性力の大きさを異ならせるための手法は、種々考えられる。例えば、一方のバネシャフト27の初期変形量を強制的に増加させてもよい。具体的には、以下のとおりである。なお、以下では、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uのうち、正ばね機構17Uにおいて初期変形量を強制的に増加させる場合を例にとって説明する。
【0148】
ここでは、(12)式及び(24)式に基づいて、負ばね機構17D及び正ばね機構17Uのばね定数K
s及びK
Psを以下のように考える。
K
s=−k
s×Δl
0/l
c (34)
K
Ps=k
Ps×(Δl
P0+Δl
Pc)/(l
Pc+Δl
Pc) (35)
【0149】
今、l
c=l
Pc、k
s=k
Ps及びΔl
0=Δl
P0及びH=H
Pであるものとする。これを初期条件とし次の調整を行う。
【0150】
バネシャフト27Uの初期変形量Δl
0を増加させ、強制的に変形量Δl
0*を加える。具体的な機構としては、例えば、2つの軸状部材に設けられた、引張ばねの両端を保持するストッパの軸状部材に対する位置を変化させる。このストッパの位置は、例えば、スライドガイドとボールねじとの組み合わせによって駆動される。ボールねじの駆動は、例えば、手動(人力)又は電動によって行われる。
【0151】
強制的に変形量Δl
0*を加えると、変形量にはΔdl
0の変化量が生じて初期変形量l
0はl
F0に変化し、長さl
cはl
Fcに変化する。またインタースプリング29DはΔdl
Iの変化が生じて、初期変形量l
Iはl
FIに変化し、再び以下の水平方向に関するつり合い状態となる。
k
sΔl
F0cosθ
Fc−K
Il
FI=0 (36)
ここで、
Δl
F0=Δl
0−Δdl
0 (37)
Δl
FI=Δl
I−Δdl
I (38)
Δdl
I=l
ccosθ
c−l
Fccosθ
Fc (39)
ここで、
sinθ
Fc=H/(2l
Fc) (40)
【0152】
上記(36)式に(37)式から(40)式まで代入すればΔdl
0に関する方程式となり、これを解くことができる。このとき、(34)式の正ばねの値はΔl
Pcに関する非線形性を持ち、鉛直座標原点(v=0)から高さH/2間でばね定数が変化する。
【0153】
上記の式に基づいて、初期変形量Δl
0に対する強制変形量の増加量Δl
0*(再つり合い時における収束した増加量ではない)の比をパラメータとして、理論解及び動力学モデルに基づく数値解析の計算を行った。
【0154】
図8は、その計算結果を示している。横軸"Vertical Disp."、縦軸"Force"、"Analytical Solution"及び"Multi-Body Computation"の意味は、
図4と同様である。また、同図に示すように、Δl
0*/Δl
0を0.125から1.8まで変化させた。
【0155】
同図に示されているように、ばね定数を正のばね定数から負のばね定数まで変化させることができる。また、理論解と動力学モデルに基づく解析結果とは一致している。
【0156】
以上のとおり、本実施形態では、不釣り合い力を利用する負ばね機構17D及び正ばね機構17Uを組み合わせ、かつ両者の付勢方向を逆方向とすることによって、ばね定数を正から負まで変化させることができる特殊なばね機構が実現される。
【0157】
なお、特に図示しないが、載荷板15を高さH/2よりも上に移動させると、
図7とは逆に、正ばね機構17U及び負ばね機構17Dの双方がz方向の負側に位置することになるから、ばね機構311の特性は、上記の特性と、力の大きさが同じで反対向きの特性となる。従って、鉛直ガイド21を高く構成するなどして、載荷板15が高さH/2よりも上に移動できるようにばね機構311を構成すると、高さH/2の位置を基準として、正負の移動量及び力を得ることができる。すなわち、通常のばねと同様の特性が得られる。
【0158】
<第4実施形態>
図9は第4実施形態に係るばね機構441の要部を示す図である。
【0159】
ばね機構441は、第1〜第3実施形態の弾性力を生じるばね機構を応用したものである。なお、
図9では、第1実施形態のばね機構11の符号を付しているが、他の実施形態のばね機構が組み合わされてもよい。ばね機構441は、ばね機構11に、当該ばね機構11の弾性力をモーメントに変換する機構を追加したものである。
【0160】
具体的には、例えば、ばね機構441は、z方向に直交する回転軸A1回りに回転可能な追加シャフト443を有しており、ばね機構441は、その追加シャフト443に交差する方向に弾性力を付与する。なお、回転軸A1の延びる方向は、z方向に直交していればよく、x方向及びy方向に対する向きは問わない。
【0161】
より具体的には、例えば、ばね機構441は、ばね機構11の載荷板15に固定された、又は載荷板15に相当するスライドガイド445と、スライドガイド445によって回転軸A1及びz方向に直交する方向(紙面左右方向)に移動可能に保持されたスライダー447とを有している。そして、スライダー447は、追加シャフト443に対して、追加シャフト443の軸方向において移動不可能、かつ回転軸A1に平行な回転軸回りに回転可能に連結されている。
【0162】
このような構成において、ばね機構11の弾性力F
vが回転軸A1から距離l
aの位置にて追加シャフト443に加えられるとする。この場合、ばね機構441は、概ねF
v×l
aのモーメントを生じる。このモーメントは、例えば、回転軸A1からの距離がl
tの位置にて追加シャフト443にF
tの力が加えられたときのモーメントF
t×l
tと釣り合う。
【0163】
なお、以上の実施形態において、第1実施形態は請求項1〜6及び9〜11に係る発明の一例である。第2実施形態は請求項1〜5、7及び9〜11に係る発明の一例である。第3実施形態は請求項1、8及び9〜11(並びに請求項2を引用しない請求項3〜5)に係る発明の一例である。第4実施形態は請求項12に係る発明の一例である。
【0164】
z方向は主方向の一例である。第1及び第2実施形態においてはz方向の正側は主方向の第1側の一例であり、第3実施形態においてはz方向の負側は主方向の第1側の一例である。x方向は第1副方向及び第2副方向の一例である。x方向の正側は第1副方向の第2側及び第2副方向の第3側の一例である。y方向は第1回転軸方向及び第2回転軸方向の一例である。回転軸A1は第3回転軸の一例である。
【0165】
ばね機構1、11、311及び411は弾性機構の一例である。載荷板15は可動部の一例である。負ばね機構17Dは負弾性機構の一例である。正ばね機構17Uは正弾性機構の一例である。バネシャフト27Dは負側主弾性部の一例である。バネシャフト27Uは正側主弾性部の一例である。インタースプリング29Dは負側副弾性部の一例である。インタースプリング29Uは正側副弾性部の一例である。位置調整機構33Dは負側主弾性部位置調整機構の一例である。位置調整機構33Uは正側主弾性部位置調整機構の一例である。位置調整機構35Dは負側副弾性部位置調整機構の一例である。位置調整機構35Uは正側副弾性部位置調整機構の一例である。追加シャフト443は回転部材の一例である。
【0166】
バネシャフト27Uの固定部13に対する連結位置は固定部の所定位置の一例である。バネシャフト27U全体は、正側主弾性部の、固定部の所定位置から可動部に至る部分の一例である。
【0167】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0168】
実施形態では、負弾性機構(負ばね機構17D)及び正弾性機構(正ばね機構17U)の双方を有する弾性機構を示した。ただし、弾性機構は、負弾性機構のみ、又は正弾性機構のみを有していてもよい。また、負弾性機構及び正弾性機構が組み合わされる場合において、一方のみが本発明の特徴を有し、他方は通常の弾性機構とされてもよい。例えば、正弾性機構は、ばね定数の可変性が不要であれば、通常の機械式ばねとされてもよい。
【0169】
実施形態では、副弾性部(インタースプリング29)として、圧縮に抗する弾性力を生じるものを示した。ただし、これら副弾性部の一方又は双方は、引張りに抗する弾性力を生じさせるものであってもよい。ただし、この場合、副弾性部の、主弾性部(バネシャフト27)に対する副方向(x方向)の位置は、実施形態とは逆になる。
【0170】
主弾性部(バネシャフト27)及び副弾性部(インタースプリング29)は、つる巻きばねを含んで構成されるものに限定されない。例えば、つる巻きばねに代えて、板ばね、空気ばね、又はゴムを含んで構成されていてもよい。
【0171】
また、弾性部は、その内部の弾性体の圧縮によって引張りに抗する弾性力を発揮したり、逆に、内部の弾性体の引張りによって圧縮に抗する弾性力を発揮したりしてもよい。例えば、以下のとおりである。
【0172】
図10(a)及び
図10(b)は、バネシャフト27Uの変形例を示す模式図である。バネシャフト27Uは、軸方向に互いに相対移動可能な軸状部材51及び53と、これらに固定された圧縮ばね55とを有している。2つの軸状部材51及び53が伸長すると、圧縮ばね55は、圧縮されて圧縮に抗する弾性力を生じる。一方、バネシャフト27U全体でみると、引張りに抗する弾性力を生じることになる。
【0173】
このように、弾性部(バネシャフト27U)と、その内部の弾性体(圧縮ばね55)とは、圧縮・引張りが逆であってもよい。一般に、引張ばねの許容荷重やばね定数範囲は、圧縮ばねよりも狭い傾向がある。従って、この変形例のように、圧縮ばねを用いて、引張りばね特性を実現すると、許容荷重やばね定数範囲を広くでき、好ましい。
【0174】
主弾性部及び副弾性部の全体としての形状は、長尺状でなくてよい。例えば、負側主弾性部(バネシャフト27D)についていえば、固定部との連結部と、可動部(載荷板15)との連結部との近接又は離反に応じて、これら連結部間を結ぶ方向において、近接又は離反に抗する弾性力を生じればよく、形状がこれらの連結部間を結ぶ軸状である必要はない。他の弾性部についても、同様のことがいえる。
【0175】
また、例えば、正側主弾性部(バネシャフト27U)については、スライダー25Uに連結されるワイヤーと、ワイヤーに連結されるとともに固定部13に連結されるつる巻きばねとを含んで構成されてもよい。この場合、ワイヤーをカラム23Uまで延設してから、ピン乃至はコロによってワイヤーの方向を変えれば、つる巻きばね自体の向きは任意である。すなわち、正側主弾性部の固定部に対する連結位置と、固定部の所定位置(請求項2等)とは同一でなくてもよい。なお、この場合、初期変形量(Δl
P0)と高さ(H
P)とは別個に設定可能である。
【0176】
副弾性部(インタースプリング29)についても、引張りに抗する弾性力を利用するのであれば、ワイヤーなどを含んで構成することによって、ばね自体は任意の方向に配置することができる。なお、この場合における、副弾性部位置調整機構による位置調整が行われる弾性力の方向(請求項4等)は、副方向(x方向)に限定されず、また、可動部に対する連結位置周辺における弾性力の方向である。
【0177】
なお、上記の説明からも理解されるように、正側主弾性部が可動部に対して第2回転軸方向に平行な軸回りに回転可能に連結されているという場合、正側主弾性部に含まれ、可動部に固定されている可撓性部材(ワイヤー)が湾曲することによって回転(ワイヤーの傾斜の増減)が許容されているものも含む。
【0178】
可動部(載荷板15)に対して副方向(x方向)に移動可能で、主弾性部(バネシャフト27)と副弾性部(インタースプリング29)との間に介在するスライダー25(副可動部)は、必須の要件ではない。例えば、実施形態において、バネシャフト27の端部が直接的に載荷板15に対してy軸回りに回転可能且つx方向に移動可能に連結されるとともに、当該バネシャフト27の端部に直接にインタースプリング29がy軸回りに回転可能に連結されていてもよい。
【0179】
なお、上記の場合、バネシャフト27の端部をスライダー(副可動部)と捉えることも可能である。また、本願では、主弾性部(バネシャフト27)が可動部(載荷板15)に連結され、副弾性部(インタースプリング29)が主弾性部の可動部との連結部に連結されていると表現しているが、逆に、副弾性部の主弾性部側の連結部が可動部に対して副方向(x方向)に移動可能に連結され、主弾性部が副弾性部の移動可能な連結部に回転軸方向(y方向)に平行な軸回りに回転可能に連結されていると表現しても、実質的に同じである。
【0180】
実施形態では、バネシャフト27U及び27Dは、載荷板15に対してx方向において同一側に配置され、また、z方向に対してx方向の同一側へ傾斜した。ただし、これらは、x方向において載荷板15に対して互いに逆側に配置されてもよいし、z方向に対してx方向の互いに逆側へ傾斜してもよい。換言すれば、負側主弾性部(バネシャフト27D)において可動部(載荷板15)との連結部が固定部との連結部に対して位置する副方向の第2側(実施形態ではx方向の正側)と、正側主弾性部(バネシャフト27U)において可動部との連結部が固定部との連結部(固定部の所定位置)に対して位置する副方向の第3側(実施形態ではx方向の正側)とは、互いに同一である必要はない。
【0181】
実施形態では、バネシャフト27Uがバネシャフト27Dに対してz方向の正側に位置した。ただし、例えば、載荷板15に代えてz方向に比較的長い部材を設け、バネシャフト27Uがバネシャフト27Dに対してz方向の負側に位置するように構成してもよい。ただし、実施形態のような上下関係の方が小型化に有利である。
【0182】
主弾性部(バネシャフト27)の可動部(載荷板15)との連結部の移動方向(x方向)は、可動部の移動方向(z方向)に直交していなくてもよい。すなわち、第1及び第2副方向(x方向)は、主方向(z方向)に対して直交していなくてもよい。ただし、副方向が主方向に直交する方が、種々の計算が容易である。
【0183】
負側主弾性部(バネシャフト27D)の可動部(載荷板15)との連結部の移動方向(x方向)と、正側主弾性部(バネシャフト27U)の可動部との連結部の移動方向(x方向)とは、同一でなくてもよい。すなわち、第1副方向及び第2副方向は、互いに異なっていてもよい。
【0184】
例えば、実施形態において、バネシャフト27Dの載荷板15との連結部がx方向において移動可能であるのに対して、バネシャフト27Uの載荷板15との連結部はy方向において移動可能であってもよい。すなわち、第1副方向及び第2副方向は、共に主方向に直交する平面内に平行で、かつ互いに異なる方向であってもよい。
【0185】
ただし、第1副方向及び第2副方向が互いに同一方向であれば、全体としてばね機構は小型化されやすい。また、負側主弾性部と正側主弾性部とで、副方向の主方向に対する傾斜が互いに異なっていてもよい。
【0186】
上記の第1副方向及び第2副方向の説明からも理解されるように、第1回転軸方向及び第2回転軸方向も互いに異なる方向であってよい。
【0187】
実施形態では、主弾性部(バネシャフト27)の固定部に対する主方向における位置を調整する位置調整機構として、固定部に設けられた複数の孔部(23h)と、この複数の孔部に選択的に挿通されて主弾性部を支持する軸部材との組み合わせを例示した。ただし、位置調整機構は、このような手動かつ非連続なものに限定されない。例えば、位置調整機構は、主弾性部の固定部との連結部を主方向(z方向)において案内するスライドガイドと、前記の連結部を主方向において移動させるボールねじとを有し、手動(人力)又は自動(例えば電動機など)で、かつ連続的に、主弾性部の固定部との連結部の位置を調整してもよい。副弾性部(インタースプリング29)の可動部(載荷板15)に対する副方向における位置を調整する位置調整機構についても同様に、スライドガイド及びボールねじを含み、手動又は自動で、かつ連続的に位置を調整可能であってもよい。