(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774106
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ルーツブロワ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/00 20060101AFI20201012BHJP
F04C 18/18 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
F04C29/00 S
F04C18/18 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-195540(P2018-195540)
(22)【出願日】2018年10月17日
(65)【公開番号】特開2020-63691(P2020-63691A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127123
【氏名又は名称】株式会社アンレット
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義展
(72)【発明者】
【氏名】服部 真澄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 昌史
【審査官】
田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−047115(JP,A)
【文献】
特開2010−062142(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/217440(WO,A1)
【文献】
特開平08−170538(JP,A)
【文献】
特開平05−215095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/08−18/28、23/00−29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の円弧面を有する長円形のロータ室と、ロータ室の中間面の一側に開口する吸込口及び他側に開口する吐出口を形成したケーシングと、ロータ室に組み込まれ、互いに逆方向へ回転するようにタイミングギヤを介して駆動連結した一対のルーツロータを備え
一方のルーツロータの回転軸の一端を回転可能に支持するベアリングと他方のルーツロータの回転軸の一端を回転可能に支持するベアリングを格納した第1ハウジングをケーシングの一側に組み付け、
一方のルーツロータの回転軸の他端を回転可能に支持するベアリングと他方のルーツロータの回転軸の他端を回転可能に支持するベアリングを格納した第2ハウジングをケーシングの他側に組み付け、
一方のルーツロータの回転軸を駆動する駆動モータを格納したモータハウジングを第1ハウジングに組み付け、
一方のルーツロータの回転軸を第1ハウジングからモータハウジング中に突出させ、回転軸の突出端部に駆動モータの回転子を固定し、
一対のルーツロータの回転に伴い吸込口から空気をロータ室に吸引し、ロータ室に吸引された空気を圧縮して吐出口から吐出するように構成したルーツ式真空ブロワであって、
モータハウジングに外気導入口を設けるとともに、第1ハウジングに一端開口がモータハウジングの内部空間に連通し、他端開口が吸込口に連通する空気通路を形成し、
一対のルーツロータの回転に伴い外気がモータハウジングの内部空間と、空気通路及び吸込口を通ってロータ室に吸引されるようにしたことを特徴とする。
【請求項2】
筒状のパンチングメタルに巻き付けた吸音材を挿入したフレキシブルジョイントを吐出口に接続したことを特徴とする請求項1に記載のルーツブロワ。
【請求項3】
吐出口にロータ室から外部への空気流を許容し、その逆方向の空気流を阻止する逆止弁を接続したことを特徴する請求項1に記載のルーツブロワ。
【請求項4】
吸込口にサイレンサを接続するとともに、サイレンサにフィルタを内蔵したことを特徴とする請求項1に記載のルーツブロワ。
【請求項5】
接地部に防振ゴムを設けたことを特徴とする請求項1に記載のルーツブロワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はルーツブロワに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、小型のルーツブロワは駆動モータとルーツロータの回転軸をプーリ及びVベルトで連結して駆動モータの動力を回転軸に伝達している。そのためルーツブロワの設置スペースが大きくなる。また、Vベルトの張り調整や交換等のメンテナンスが不可欠となる。
【0003】
一方、ルーツブロワの一形式として、特開2009−47115号公報には、ビルトイン式モータ採用のルーツブロワが開示されている。
このルーツブロワは、一対の円弧面を有する長円形のロータ室と、ロータ室の中間面の一側に開口する吸込口及び他側に開口する吐出口を形成したケーシングと、ロータ室に収められ、互いに逆方向へ回転するようにタイミングギヤを介して駆動連結した一対のルーツロータを備え
一方のルーツロータの回転軸の一端を回転可能に支持するベアリングと他方のルーツロータの回転軸の一端を回転可能に支持するベアリングを格納した第1ハウジングをケーシングの一側に組み付け、
一方のルーツロータの回転軸の他端を回転可能に支持するベアリングと他方のルーツロータの回転軸の他端を回転可能に支持するベアリングを格納した第2ハウジングをケーシングの他側に組み付け、
一方のルーツロータの回転軸を駆動する駆動モータを格納したモータハウジングを第1ハウジングに組み付け、
一対のルーツロータの回転に伴い吸込口から空気をロータ室に吸引し、ロータ室に吸引された空気を圧縮して吐出口から吐出するように構成したルーツ式真空ブロワが開示されている。
【0004】
このルーツブロワでは、一方のルーツロータの回転軸を第1ハウジングからモータハウジングを貫通するように突出させ、回転軸の突出端部に駆動モータの回転子を固定することにより、駆動モータと一方のルーツロータを直結している。そして、回転軸のモータハウジングから突出する端部に駆動モータを冷却するため冷却ファンを組み付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−47115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のルーツ式真空ブロワは駆動モータをルーツロータの回転軸に直結しているので、Vベルトやプーリを省略でき、小型化が可能である。
しかしながら、駆動モータを冷却するため冷却ファンを必要とするので、冷却ファンの回転に伴って発生する風切り音が騒音となるだけでなく、冷却ファンにより負荷が増加するという問題点がある。また、冷却ファンに指が入らないように安全対策としてファンカバーが必要となる。
本発明はかかる問題点に鑑み、低騒音、省エネで、かつ可及的に小型化が可能なルーツブロワを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
一対の円弧面を有する長円形のロータ室と、ロータ室の中間面の一側に開口する吸込口及び他側に開口する吐出口を形成したケーシングと、ロータ室に組み込まれ、互いに逆方向へ回転するようにタイミングギヤを介して駆動連結した一対のルーツロータを備え
一方のルーツロータの回転軸の一端を回転可能に支持するベアリングと他方のルーツロータの回転軸の一端を回転可能に支持するベアリングを格納した第1ハウジングをケーシングの一側に組み付け、
一方のルーツロータの回転軸の他端を回転可能に支持するベアリングと他方のルーツロータの回転軸の他端を回転可能に支持するベアリングを格納した第2ハウジングをケーシングの他側に組み付け、
一方のルーツロータの回転軸を駆動する駆動モータを格納したモータハウジングを第1ハウジングに組み付け、
一方のルーツロータの回転軸を第1ハウジングからモータハウジング中に突出させ、回転軸の突出端部に駆動モータの回転子を固定し、
一対のルーツロータの回転に伴い吸込口から空気をロータ室に吸引し、ロータ室に吸引された空気を圧縮して吐出口から吐出するように構成したルーツ式真空ブロワであって、
モータハウジングに外気導入口を設けるとともに、第1ハウジングに一端開口がモータハウジングの内部空間に連通し、他端開口が吸込口に連通する空気通路を形成し、
一対のルーツロータの回転に伴い外気がモータハウジングの内部空間と、空気通路及び吸込口を通ってロータ室に吸引されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
そして、好ましくは、筒状のパンチングメタルに巻き付けた吸音材を挿入したフレキシブルジョイントを吐出口に接続する。
【0009】
好ましくは、吐出口にロータ室から外部への空気流を許容し、その逆方向の空気流を阻止する逆止弁を接続する。
【0010】
好ましくは、吸込口にサイレンサを接続するとともに、サイレンサにフィルタを内蔵する。
【0011】
また、好ましくは、接地部に防振ゴムを設ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モータハウジングに外気導入口を設けるとともに、第1ハウジングにモータハウジングの内部空間と吸込口を連通する空気通路を形成したので、一対のルーツロータの回転に伴い外気がモータハウジングの内部空間と、空気通路及び吸込口を通ってロータ室に吸引され、モータハウジングに流入する外気によって駆動モータが冷却される。そのため、駆動モータの冷却用ファンや、ファンカバーを必要としないのでルーツブロワを小型にできるだけでなく、冷却ファンの回転に伴う騒音を無くし、省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係るルーツブロワを示す正面図である。
【
図3】同ルーツブロワの主要部を示す断面図である。
【
図8】同ルーツブロワの逆止弁を示す断面図である。
【
図9】同ルーツブロワのフレキシブルジョイントを示す一部破断した正面図である。
【実施例】
【0014】
以下に本発明を図面に基づき説明する。
図1、
図2及び
図3には本発明の一実施例に係るルーツブロワ10が示されている。当該ルーツブロワ10は、ケーシング11を備えている。このケーシング11は
図4に示すように長円形のロータ室11aが形成されるとともに、ロータ室11aの中間面の一側に開口する吸込口11bと他側に開口する吐出口11cが形成されている。ロータ室11aには一対の3葉式ルーツロータ12,13が回転可能に組み込まれている。
【0015】
ケーシング11の左側面には第1ハウジング15が組み付けられ、ケーシング11の右側面に第2ハウジング16が組み付けられている。第1ハウジング15には下側のルーツロータ12の回転軸12aの左端部を回転可能に支持するベアリング17と、上側のルーツロータ13の回転軸13aの左側端部を回転可能に支持するベアリング18が組み込まれている。第2ハウジング16には、下側のルーツロータ12の回転軸12aの右側端部を回転可能に支持するベアリング19と、上側のルーツロータ13の回転軸13aの右側端部を回転可能に支持するベアリング20が組み込まれている。
【0016】
第2ハウジング16にはギヤハウジング21が組み付けられ、回転軸12aの右側端部に組み付けたタイミングギヤ22と回転軸13aの右側端部に組み付けられ、タイミングギヤ22と噛み合うタイミングギヤ23が組み込まれている。下側のルーツロータ12と上側のルーツロータ13はこれらタイミングギヤ22,23を介して連結されているので、互いに逆方向へ回転する。
【0017】
第1ハウジング15にはモータハウジング24が組み付けられ、モータハウジング24に駆動モータ25が組み込まれている。下側のルーツロータ12の回転軸12aの左側端部は第1ハウジング15から突出してモータハウジング24内まで延びている。回転軸12aの突出端部には駆動モータ25の回転子25aがボルト25bで固定されている。
【0018】
モータハウジング24の上部左端に外気導入口24aが設けられている。一方、
図5、
図6及び
図7に示すように、第1ハウジング15には、一端開口15aがモータハウジング24の内部空間に連通し、他端開口15bがロータ室11aの吸込口11bに連通する空気通路15cが形成されている。
【0019】
モータハウジング24の外気導入口24aには吸込サイレンサ26が接続されている。吸込サイレンサ26にはフィルタ26aが内蔵されている。このフィルタ26aは吸込サイレンサ26に取り付けた外筒26bを外して交換できる。
【0020】
ロータ室11aの吐出口11cには、ロータ室11aから外部への空気流を許容し、その逆方向の空気流を阻止する逆止弁27(
図1参照)とフレキシブルジョイント28が接続されている。
図8に示すように、逆止弁27には耐熱性を考慮したゴム硬度60度程度の水素化ニトリルゴム製のゴムボール27aが組み込まれ、ゴムボール27aの脱落防止のためテーパピン27bが差し込まれている。
【0021】
図9に示すように、フレキシブルジョイント28は両端に配管接続用のユニオン28aを備え、内部には筒状のパンチングメタル28bに巻き付けた吸音材28cが挿入されている。
モータハウジング24の接地部とケーシング11の接地部には防振ゴム29が設けられている。
なお、
図2中、符号30は吐出口11c側に接続された圧力計である
【0022】
本実施例に係るルーツブロワ10の構造は以上の通りであって、駆動モータ25を稼働すると一対のルーツロータ12,13が互いに逆方向に回転し、それに伴い外気が吸込サイレンサ26から外気導入口24aを通ってモータハウジング24の内部に吸引され、さらに、第1ハウジング15に設けた空気通路15cを通って吸込口11bからロータ室11a内に吸引される。そして、ロータ室11a内に吸引された空気はロータ室11aで圧縮され、吐出口11cからフレキシブルジョイント28を通って吐出される。
【0023】
本実施例に係るルーツブロワ10によれば、モータハウジング24に外気導入口24aを設けるとともに、第1ハウジング15にモータハウジング24の内部空間と吸込口11bを連通する空気通路15cを形成したので、一対のルーツロータ12,13の回転に伴い外気がモータハウジング24の内部空間と、空気通路15c及び吸込口11bを通ってロータ室11aに吸引され、そのときモータハウジング24に流入する外気によって駆動モータ25が冷却される。そのため、駆動モータ25の冷却用ファンや、ファンカバーを必要としないのでルーツブロワ10を小型にできるだけでなく、冷却ファンの回転に伴う騒音を無くし、省エネを図ることができる。また、ベアリング17、18も冷却されるので、ベアリング17、18の耐久寿命を伸ばすことができる。
【0024】
フレキシブルジョイント28に吸音材を内蔵することでサイレンサ機能を持たせたので、フレキシブルジョイント28と別に吐出サイレンサを設ける必要がなくなり、配管長を短くできる。
【0025】
また、吐出口11cに逆止弁27を接続したので、とくに複数台のルーツブロワ10を使用する場合、運転交換の起動時にルーツロータ12,13が逆転し、ロータ室11aに異物が吸い込まれるのを防止できる。
【0026】
吸込サイレンサ26にフィルタ26aを内蔵したので、モータハウジング24に流入する空気に異物が混入するのを防止できる。
【0027】
接地部に防振ゴム29を配置したので、基礎部分へ振動伝達を低減するとともに、騒音を低下できる。
【符号の説明】
【0028】
10…ルーツブロワ
11…ケーシング
11a…ロータ室
11b…吸込口
11c…吐出口
12,13…ルーツロータ
12a,13a…回転軸
15…第1ハウジング
15c…空気通路
16…第2ハウジング
17,18,19,20…ベアリング
22,23…タイミングギヤ
24…モータハウジング
24a…外気導入口
25…駆動モータ
25a…回転子
26…吸込サイレンサ
26a…フィルタ
27…逆止弁
28…フレキシブルジョイント
28b…パンチングメタル
28c…吸音材
29…防振ゴム