(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
踏切道の障害物検知領域に向けて空中伝搬波を掃引送信しながら反射波を受信する空中伝搬波送受信部を具備していて距離と方向とを計測する平面掃引計測部と、その計測で得られた距離と方向とから前記障害物検知領域における障害物の存否を判定する判定部とを備えた踏切障害物検知装置において、前記障害物検知領域の外に設置された反射体に係る既知の反射体位置情報がデータ保持されており、この反射体位置情報と前記平面掃引計測部の計測結果との照合によって前記反射体の検出されたことが判明したときに前記平面掃引計測部の方向計測と距離計測とに係る照査を行う照査手段が設けられており、前記反射体に向けて空中伝搬波が送信されたが反射波が検出されなかったことが前記反射体位置情報と前記平面掃引計測部の計測結果との照合によって判明したときに障害物が存在するとの判定がなされるようになっていることを特徴とする踏切障害物検知装置。
踏切道の障害物検知領域に向けて空中伝搬波を掃引送信しながら反射波を受信する空中伝搬波送受信部を具備していて距離と方向とを計測する平面掃引計測部と、その計測で得られた距離と方向とから前記障害物検知領域における障害物の存否を判定する判定部とを備えた踏切障害物検知装置において、前記平面掃引計測部が複数設けられるとともにそれらに属する前記空中伝搬波送受信部が離隔して複数設けられており、前記障害物検知領域の何れの部位についても前記空中伝搬波送受信部のうち二つ以上のものが空中伝搬波を送信しうるように前記空中伝搬波送受信部が配置されており、前記判定部が、前記平面掃引計測部それぞれの計測結果に基づいて障害物の存否を中間判別するとともに、何れかの中間判別で障害物が存在するとされたときには、障害物が存在すると判定するようになっており、前記空中伝搬波送受信部のうち何れか一つが何れか他のものの空中伝搬波掃引可能範囲に設置されており、前記の他の空中伝搬波送受信部に対する反射体が前記の一つの空中伝搬波送受信部に付設されていることを特徴とする踏切障害物検知装置。
前記平面掃引計測部が複数設けられるとともにそれらに属する前記空中伝搬波送受信部が離隔して複数設けられており、前記障害物検知領域の何れの部位についても前記空中伝搬波送受信部のうち二つ以上のものが空中伝搬波を送信しうるように前記空中伝搬波送受信部が配置されており、前記判定部が、前記平面掃引計測部それぞれの計測結果に基づいて障害物の存否を中間判別するとともに、何れかの中間判別で障害物が存在するとされたときには、障害物が存在すると判定するようになっており、前記空中伝搬波送受信部のうち何れか一つが何れか他のものの空中伝搬波掃引可能範囲に設置されており、前記の他の空中伝搬波送受信部に対する反射体が前記の一つの空中伝搬波送受信部に付設されていることを特徴とする請求項1記載の踏切障害物検知装置。
前記フードが、上方に設けられた輻射熱防護用フードとその下方に設けられた雨滴防護用フードとを具備したものであり、前記反射体が前記雨滴防護用フードに付設されていることを特徴とする請求項4記載の踏切障害物検知装置。
前記雨滴防護用フードが、前記の一つの空中伝搬波送受信部の下方にまで配設されており、前記反射体が前記雨滴防護用フードのうち上側部分と下側部分との双方に配設されていることを特徴とする請求項5記載の踏切障害物検知装置。
前記空中伝搬波送受信部のうち何れか二つ以上のものが、前記踏切道を通る線路のうち何れか一つ以上のものの両側に分散して設置されており、前記障害物検知領域の全部または一部を規定するデータであって前記平面掃引計測部に係る障害物検知領域規定データが、各平面掃引計測部毎に複数ずつ定められて前記判定部にデータ保持されており、前記線路に係る踏切通過列車の有無を示す踏切通過列車有無情報を取得する列車情報取得手段が、設けられており、前記判定部が、前記平面掃引計測部に係る障害物存否判定の対象領域を、各平面掃引計測部毎に、前記踏切通過列車有無情報に基づいて複数の前記障害物検知領域規定データから何れか一つを選出することにより、切り替えうるようになっており、前記踏切通過列車有無情報を索引として前記障害物検知領域規定データの在処を検索しうる検索表データが前記判定部にデータ保持されていることを特徴とする請求項2乃至請求項7のうち何れか一項に記載された踏切障害物検知装置。
踏切道の障害物検知領域に向けて空中伝搬波を掃引送信しながら反射波を受信する空中伝搬波送受信部を具備していて距離と方向とを計測する平面掃引計測部と、その計測で得られた距離と方向とから前記障害物検知領域における障害物の存否を判定する判定部とを備えた踏切障害物検知装置において、前記平面掃引計測部が複数設けられるとともにそれらに属する前記空中伝搬波送受信部が離隔して複数設けられており、前記障害物検知領域の何れの部位についても前記空中伝搬波送受信部のうち二つ以上のものが空中伝搬波を送信しうるように前記空中伝搬波送受信部が配置されており、前記判定部が、前記平面掃引計測部それぞれの計測結果に基づいて障害物の存否を中間判別するとともに、何れかの中間判別で障害物が存在するとされたときには、障害物が存在すると判定するようになっており、前記空中伝搬波送受信部のうち何れか二つ以上のものが、前記踏切道を通る線路のうち何れか一つ以上のものの両側に分散して設置されており、前記障害物検知領域の全部または一部を規定するデータであって前記平面掃引計測部に係る障害物検知領域規定データが、各平面掃引計測部毎に複数ずつ定められて前記判定部にデータ保持されており、前記線路に係る踏切通過列車の有無を示す踏切通過列車有無情報を取得する列車情報取得手段が、設けられており、前記判定部が、前記平面掃引計測部に係る障害物存否判定の対象領域を、各平面掃引計測部毎に、前記踏切通過列車有無情報に基づいて複数の前記障害物検知領域規定データから何れか一つを選出することにより、切り替えうるようになっており、前記踏切通過列車有無情報を索引として前記障害物検知領域規定データの在処を検索しうる検索表データが前記判定部にデータ保持されていることを特徴とする踏切障害物検知装置。
前記の複数の空中伝搬波送受信部が、前記踏切道を通る線路を間にして対向し合う状態で設置されており、前記反射体が、複数箇所に設置されていて、何れの箇所のものも前記踏切道および前記線路の何れか一方または双方を間にして前記の複数の空中伝搬波送受信部のうち何れか一つ以上のものと対向し合う状態で設置されていることを特徴とする請求項4乃至請求項8のうち何れか一項に記載された踏切障害物検知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、空中伝搬波を平面掃引しながら反射波を受信するレーダ方式の踏切障害物検知装置には、踏切通行体が反射率の低いものであったり、降雨等によって空中伝搬波が散乱されやすい状況であったりすると、小さな踏切通行体に対する検出能力が低下して障害物検知判定の迅速性が損なわれやすいという性質もある。
そこで、平面掃引レーダ方式であっても踏切通行体に対する検出能力が高い踏切障害物検知装置を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、踏切道の障害物検知領域に向けて空中伝搬波を掃引送信しながら反射波を受信する空中伝搬波送受信部を具備していて距離と方向とを計測する平面掃引計測部と、その計測で得られた距離と方向とから前記障害物検知領域における障害物の存否を判定する判定部とを備えた踏切障害物検知装置において、前記平面掃引計測部が複数設けられるとともにそれらに属する前記空中伝搬波送受信部が離隔して複数設けられており、前記障害物検知領域の何れの部位についても前記空中伝搬波送受信部のうち二つ以上のものが空中伝搬波を送信しうるように前記空中伝搬波送受信部が配置されており、前記判定部が、前記平面掃引計測部それぞれの計測結果に基づいて障害物の存否を中間判別するとともに、何れかの中間判別で障害物が存在するとされたときには、障害物が存在すると判定するようになっていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段2)、上記解決手段1の踏切障害物検知装置であって、前記障害物検知領域の外に設置された反射体に係る既知の反射体位置情報がデータ保持されており、この反射体位置情報と前記平面掃引計測部の計測結果との照合によって前記反射体の検出されたことが判明したときに前記平面掃引計測部の方向計測と距離計測とに係る照査を行う照査手段が設けられており、前記反射体に向けて空中伝搬波が送信されたが反射波が検出されなかったことが前記反射体位置情報と前記平面掃引計測部の計測結果との照合によって判明したときに障害物が存在するとの判定がなされるようになっていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の踏切障害物検知装置であって、前記空中伝搬波送受信部のうち何れか一つが何れか他のものの空中伝搬波掃引可能範囲に設置されており、前記の他の空中伝搬波送受信部に対する反射体が前記の一つの空中伝搬波送受信部に付設されていることを特徴とする。
なお、解決手段1を引用する解決手段2を引用する解決手段3にあっては、上記の反射体は、「前記反射体のうち前記の他の空中伝搬波送受信部に対するもの」である。
【0010】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段4)、上記解決手段3の踏切障害物検知装置であって、前記反射体が、前記の一つの空中伝搬波送受信部の上方を覆うフードの下方に位置していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段5)、上記解決手段4の踏切障害物検知装置であって、前記フードが、上方に設けられた輻射熱防護用フードとその下方に設けられた雨滴防護用フードとを具備したものであり、前記反射体が前記雨滴防護用フードに付設されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段6)、上記解決手段5の踏切障害物検知装置であって、前記雨滴防護用フードが、前記の一つの空中伝搬波送受信部の下方にまで配設されており、前記反射体が前記雨滴防護用フードのうち上側部分と下側部分との双方に配設されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段7)、上記解決手段2〜6の踏切障害物検知装置であって、前記判定部が、前記平面掃引計測部それぞれの計測結果に基づく中間判別で障害物が存在するとされたときに、前記平面掃引計測部のうち該当するものについては前記照査手段での照査を省くようになっていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段8)、上記解決手段1〜7の踏切障害物検知装置であって、前記空中伝搬波送受信部のうち何れか二つ以上のものが、前記踏切道を通る線路のうち何れか一つ以上のものの両側に分散して設置されており、前記障害物検知領域の全部または一部を規定するデータであって前記平面掃引計測部に係る障害物検知領域規定データが、各平面掃引計測部毎に複数ずつ定められて前記判定部にデータ保持されており、前記線路に係る踏切通過列車の有無を示す踏切通過列車有無情報を取得する列車情報取得手段が、設けられており、前記判定部が、前記平面掃引計測部に係る障害物存否判定の対象領域を、各平面掃引計測部毎に、前記踏切通過列車有無情報に基づいて複数の前記障害物検知領域規定データから何れか一つを選出することにより、切り替えうるようになっていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段9)、上記解決手段8の踏切障害物検知装置であって、前記踏切通過列車有無情報を索引として前記障害物検知領域規定データの在処を検索しうる検索表データが前記判定部にデータ保持されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の踏切障害物検知装置は(解決手段10)、上記解決手段2,3の踏切障害物検知装置、又は上記解決手段4〜9のうち上記解決手段2,3を引用する解決手段の踏切障害物検知装置であって、前記の複数の空中伝搬波送受信部が、前記踏切道を通る線路を間にして対向し合う状態で設置されており、前記反射体が、複数箇所に設置されていて、何れの箇所のものも前記踏切道および前記線路の何れか一方または双方を間にして前記の複数の空中伝搬波送受信部のうち何れか一つ以上のものと対向し合う状態で設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段1)、離れた複数の空中伝搬波送受信部によって踏切道の障害物検知領域の各部位が平面掃引されるようにしたことにより、障害物検知領域に入っている踏切通行体に対して空中伝搬波送受信方向の異なる複数の計測が行われる。そして、そのように空中伝搬波送受信方向が異なると、踏切通行体における空中伝搬波の照射部位・反射部位が異なるため、反射特性が異なることが多くなるので、反射レベルに差がでやすく、反射レベルの高い方は低い方よりも踏切通行体の的確な検出に役立つ。
【0018】
しかも、障害物存否の判定に際して並行判別と論理和とを行うようにしたことにより、すなわち、複数の平面掃引計測部それぞれの計測結果に基づいて障害物の存否を判定したうえで、それらを中間判別とし、更に何れかの中間判別で障害物が存在するとなったときには、最終的な判定として障害物が存在するとの判定を出すようにもしたことにより、いつも反射レベルの高い計測結果に基づいて判定が行われるため、踏切通行体を検出する能力が向上することとなる。
したがって、この発明によれば、平面掃引レーダ方式であっても踏切通行体に対する検出能力が高い踏切障害物検知装置を実現することができる。
【0019】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段2)、照査用の反射体に向けた平面掃引計測による計測が行われたことを既知データの反射体位置情報の参照にて判別するとともに、その反射体計測のタイミングで反射体が検出されたときには照査手段にて平面掃引計測部の方向計測と距離計測とに係る照査が行われるのに加え、その反射体計測のタイミングで反射波が受信できなかったときには反射体ばかりか反射体の手前の障害物も明示的には検出されないにもかかわらず障害物が存在するとの判定が出されるようにもしたことにより、反射体が照査用に用いられるにとどまらず旧来のビーム式に類似した空中伝搬波の遮断に基づく障害物の検出にも併用されることとなる。
したがって、この発明によれば、検出能力が一層向上する。
【0020】
さらに、反射率の照査には一つの平面掃引計測部について一つ以上の反射体が必要であり、平面掃引の水平度の照査には一つの平面掃引計測部について二つ以上の反射体が必要であるところ、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段3)、反射体を空中伝搬波掃引面の高さに保持するための柱や脚といった支持部材が、平面掃引計測部の送受信部等の支持部材によって兼用されることから、専用時より支持部材の個数が少なくて済むので、部材削減によるコストダウンが達成される。
したがって、この発明によれば、平面掃引レーダ方式であっても踏切通行体に対する検出能力が高い踏切障害物検知装置を安価に実現することができる。
【0021】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段4)、反射体の支持部材に加えて、反射体を風雨等から保護する部材についても、平面掃引計測部の部材が兼用されるので、更なるコストダウンが達成される。
【0022】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段5)、フードが上側の輻射熱防護用と下側の雨滴防護用とを具備しているところ、反射体の付設先を雨滴防護用フードにしたことにより、空中伝搬波送受信部に準じて反射体も太陽光や雨水から守られる。
【0023】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段6)、反射体を一つの平面掃引計測部の上側部分と下側部分との双方に設けたことにより、その双方の反射体を合わせて一体と見做した反射体の中心高さが他の平面掃引計測部の空中伝搬波の反射波の高さになるので、他の平面掃引計測部の空中伝搬波掃引面の高さが多少なら不正確であったり変動したりしても反射波を的確に検出することができるうえ、一つの平面掃引計測部と他の平面掃引計測部とで空中伝搬波掃引面の高さを一致させる調整作業が容易かつ的確に行えることとなる。
【0024】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段7)、それぞれの平面掃引計測部について、その計測結果に基づいて障害物が存在するとされたときには、照査手段による照査の処理が省かれるようにしたことにより、例え反射体計測のタイミングで反射体が検出されても照査が行われないので、照査のタイミングは障害物が反射体の手前に存在しないときに限定される。そのため、反射体がその手前の障害物と部分的に重なって反射体の計測状態が中途半端なものとなって計測結果の信頼性が揺らぐような場合には照査が回避されるので、適切な照査だけが実行されることとなる。
【0025】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段8)、空中伝搬波送受信部が線路の両側に分かれていることから、列車通過時には列車に遮られて二重・多重の障害物検知は損なわれても、線路の脇の部分や列車不存在の線路周りについては空中伝搬波送受信部の設置先の両側いずれでも一つ以上の空中伝搬波送受信部による空中伝搬波の掃引送信が行える。そして、そのような計測可能状況を前提として、空中伝搬波送受信部さらにはそれを具備する平面掃引計測部が複数存在していることも前提として、複数の平面掃引計測部それぞれに、列車通過状況に応じて範囲の異なる幾つかの障害物検知領域規定データを予めデータ保持しておき、踏切通過列車の有無を示す踏切通過列車有無情報に応じて、障害物存否判定の対象領域をデータ選出にて切り替えられるようにしたことにより、簡便かつ迅速に、障害物検知領域を全域とその部分領域とのうちから、列車走行状況に応じた適切なものに設定することができる。
【0026】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段9)、踏切通過列車有無情報を索引として検索表データに検索アクセスすると適切な障害物検知領域規定データが選出されるようにもしたことにより、上述した障害物検知領域の切替による設定に加えて、切替対象のデータ選出までも、簡便かつ迅速に照査することができる。
【0027】
また、本発明の踏切障害物検知装置にあっては(解決手段10)、線路を間にして空中伝搬波送受信部を対向配置するとともに線路や踏切道を間にして反射体も対向配置したことにより、それぞれの空中伝搬波送受信部の空中伝搬波の送信先に、明確に方向の異なる複数の反射体が存在することになることから、一箇所からの反射波検出にて行える測距値の妥当性にとどまらず、二箇所以上から反射波検出を要する光軸の水平・垂直のズレまでも、的確にチェックすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
このような本発明の踏切障害物検知装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜6により説明する。
図1〜
図2に示した実施例1は、上述した解決手段1〜4(出願当初の請求項1〜4)を具現化したものであり、
図3に示した実施例2は、その変形例であり、
図4に示した実施例3は、上述した解決手段5〜6(出願当初の請求項5〜6)を具現化したものであり、
図5に示した実施例4は、上述した解決手段7(出願当初の請求項7)を具現化したものであり、
図6〜
図7に示した実施例5は、上述した解決手段8〜9(出願当初の請求項8〜9)を具現化したものであり、
図8〜
図9に示した実施例6は、上述した解決手段10(出願当初の請求項10)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0030】
本発明の踏切障害物検知装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a),(b)が複線12a,12bを横切る踏切道10とそこに設置された空中伝搬波送受信部21a,21b等に係る平面図と正面図、(c)が踏切障害物検知装置20の概要機能ブロック図である。また、
図2は、(a)が判定部25の中間判別部26a,26bの概要フローチャートであり、(b)が送受信部保持機構40の正面図と側面図である。なお、それらの図示に関し、各要素に付した符号のうち二桁の数値にa,bといった一字の英小文字を付け足したものは、数値部分が同一構成の要素を示し、英字部分が複数の同一構成要素のうちから個々の要素を特定しているので、以下、同一構成の要素を纏めて指すときには、要素名に数値部分だけを付した符号を使用する。
【0031】
踏切障害物検知装置20は(
図1参照)、先ず従来と同様の部分を簡潔に述べると(背景技術欄や特許文献1も参照)、踏切道10の障害物検知領域11に向けて赤外線等の空中伝搬波(二点鎖線を参照)を掃引送信しながら反射波を受信して距離と方向とを計測する平面掃引計測部21〜24と、その計測で得られた距離と方向とから障害物検知領域11における障害物の存否を判定する判定部25とを具えており、平面掃引計測部21〜24は、障害物検知領域11に向けて空中伝搬波の送信と反射波の受信とを行う空中伝搬波送受信部21と、空中伝搬波送受信部21の送信方向を例えば130゜や190゜といった角度範囲内で掃引させるために該当部(21等)を回転運動させる回転機構22と、その回転運動を制御するとともに空中伝搬波の送受信の方向計測を行う又は可能にする回転制御部23と、空中伝搬波送受信部21の送受信信号に基づいて送信位置から反射位置までの距離を計測する信号処理部24とを具えている。
【0032】
もっとも(
図1(c)参照)、この踏切障害物検知装置20は、平面掃引計測部21〜24が二個の平面掃引計測部21a〜24a,21b〜24bに複数化されている。具体的には、空中伝搬波送受信部21が二個の空中伝搬波送受信部21a,21bに複数化され、回転機構22も二個の回転機構22a,22bに複数化され、回転制御部23も二個の回転制御部23a,23bに複数化され、信号処理部24も二個の信号処理部24a,24bに複数化されている。そして、空中伝搬波送受信部21aと回転機構22aと回転制御部23aと信号処理部24aとからなる平面掃引計測部21a〜24aが踏切道10の障害物検知領域11に向けて空中伝搬波を掃引送信しながら反射波を受信して距離と方向とを計測するのと並行して、空中伝搬波送受信部21bと回転機構22bと回転制御部23bと信号処理部24bとからなる平面掃引計測部21b〜24bも踏切道10の障害物検知領域11に向けて空中伝搬波を掃引送信しながら反射波を受信して距離と方向とを計測することにより、複数の計測結果が次々と取得されるようになっている。
【0033】
しかも(
図1(c)参照)、判定部25は、フェールセーフコンピュータ等のハードウェアとそれにインストールされたプログラム等とで具現化されるが、そのプログラムによる判定処理部が、単一の或いは一続きの判定処理を行うものにとどまるのでなく、中間判別部26と論理和演算部27とに多段化されたうえ、更に、中間判別部26a,26bが、平面掃引計測部21〜24の複数化に対応して二つの中間判別部26a,26bに複数化されている。具体的には、中間判別部26aは平面掃引計測部21a〜24aの計測結果に基づいて障害物の存否を中間判別し、中間判別部26bは平面掃引計測部21b〜24bの計測結果に基づいて障害物の存否を中間判別し、論理和演算部27は、複数の中間判別部26a,26bのうち何れか一つ又は複数から障害物が存在するとの中間判別が出されたときには、障害物が存在するという最終判定を出すようになっている。
【0034】
さらに、中間判別部26は、何れ26a,26bも、障害物検知領域11の範囲を画する検知領域画定位置情報を保持するとともに、障害物検知領域11の外に設置された反射体15,15に係る既知データの一つとして設置位置ひいては反射位置の分かる反射体位置情報をデータ保持している。そして(
図2(a)参照)、空中伝搬波送受信部21の平面掃引に伴って前段の回転制御部23と信号処理部24とから計測結果を取得する度に(ステップS31)、反射の有無を確認して(ステップS32)、反射が有ったときには(ステップS32→S33)、その反射位置(方向と距離)と反射体位置情報とを照合して一致するか否かに応じて場合分けするようになっている(ステップS33)。
【0035】
そして、一致した場合(ステップS33→S34)、平面掃引計測部21a〜24a,21b〜24bのうち該当する方の平面掃引計測部21〜24に対して所定の照査を行い(ステップS34)、障害物は不存在との中間判別を出す(ステップS35)。照査内容の例を挙げると、天候状態によって随時変化する反射信号の有無検出用閾値レベルなどは随時照査するのが好ましく、空中伝搬波掃引面の水平確認などは随時行っても良く調整作業時に限定しても良い。このように、中間判別部26の処理S31〜S34によって、既知の反射体位置情報と平面掃引計測部21〜24の計測結果とが照合されて、平面掃引で反射体15の検出されたことが判明すると、平面掃引計測部21a〜24a,21b〜24bのうち何れか該当する方について、その方向計測と距離計測とに係る照査が行われるので、照査手段が中間判別部26a,26bそれぞれに設けられたものとなっている。
【0036】
これに対し、反射位置と反射体位置情報とが一致しない場合(ステップS33→S36)、反射体15以外の物体が検出されたことになるので、更に反射位置が障害物検知領域11の内側なのか外側なのかを調べて、反射位置が障害物検知領域11の外側であれば(ステップS36→S35)、障害物が存在しないとの中間判別を出し(ステップS35)、反射位置が障害物検知領域11の内側であれば(ステップS36→S37)、障害物が存在するとの中間判別を出す(ステップS37)。
【0037】
一方、前段の平面掃引計測部21〜24から計測結果を取得して反射の有無を確認したときに(ステップS31,S32)、反射が無かった場合(ステップS32→S38)、該当する空中伝搬波送受信部21による空中伝搬波の送信方向を回転制御部23から取得して、その送信方向を反射体位置情報の対応部分と照合する(ステップS38)。そして、その照合結果が不一致である場合(ステップS38→S39)、空中伝搬波を反射する物体が全く検出されなかったことになるので、障害物が存在しないとの中間判別を出す(ステップS39)。
【0038】
これに対し、空中伝搬波の送信方向と反射体位置情報との照合結果が一致した場合(ステップS38→S37)、反射体15に向けて空中伝搬波が送信されたが反射波が検出されなかったことが上記の照合によって判明するので、そのときには障害物が存在するとの中間判別を出すようになっている(ステップS37)。
このようにして中間判別を行った後、中間判別部26a,26bは、何れも、該当する平面掃引計測部21〜24に対する計測結果の取得から繰り返すようになっている(ステップS35,S37,S39→S31)、
【0039】
また、この踏切障害物検知装置20では、空中伝搬波送受信部21a,21bが何れも夫々の送受信部保持機構40によって保持されていて(
図2(b)参照)、空中伝搬波が踏切しゃ断機13の遮断桿14より少し低い所を掃引するようになっているが(
図1(b)二点鎖線を参照)、個々の送受信部保持機構40は(
図2(b)参照)、踏切道10の脇に立設された支柱41と、その上端に設けられた箱体42と、その頭頂部に設けられたフード43(覆い)とを具備している。しかも、箱体42の側面(前面)よりも横へフード43が突き出ている箱体42の側面部分(前面部分)に、複数個のうちの一つの平面掃引計測部21〜24の空中伝搬波送受信部21に加え、それと横並び状態で、反射体15が適宜個数だけ装備されている。そのため、この反射体15は、空中伝搬波送受信部21の上方を覆うフードの下方に位置したものとなっている。
【0040】
また、判定部25は、通常モードで動作する上述の中間判別部26a,26bや論理和演算部27の他に、図示は割愛したが、初期の設定時や定期不定期の保守時などに調整モードで動作する照査手段や多重検出確認手段も具備している。
照査手段は、反射体15から反射を検出して方位と距離とを計測し、その計測結果を既知の反射体位置情報としてデータ保持するといったことを行うようになっている。
多重検出確認手段は、複数の中間判別部26a,26bの中間判別について各計測位置毎に障害物存在の論理積を採ったり或いは障害物存在の判別結果を計数したりするようになっており、反射体を手にした者や反射率の高い服を纏った者に障害物検知領域11の内側をくまなく移動させながら該手段を動作させることで、総ての計測位置に向けて複数の平面掃引計測部21a〜24a,21b〜24bから空中伝搬波が送信されていることを確認するのを支援するものとなっている。
【0041】
この実施例1の踏切障害物検知装置20について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図1は、踏切道10への踏切障害物検知装置20の設置状況を示し、(a)が平面図、(b)が正面図である。
【0042】
先ず設置環境の具体例を述べると(
図1(a),(b)参照)、踏切道10が複線の線路12a,12bを横断するものであり、その踏切道10のうち線路12a,12bの外側かつ両脇の所で遮断桿14,14が昇降するように適宜台数の踏切しゃ断機13が設置されており、しかも、踏切道10のうち線路12a,12bの両脇の遮断桿14,14の間であって線路12a,12bをカバーする範囲に位置する部分の上方の面領域が障害物検知領域11になっており(一点鎖線を参照)、さらに、平面掃引計測部21〜24が二セット設けられるが何れにも単独で障害物検知領域11の全域を掃引計測しうるものが採用されている。
【0043】
この場合、二セットの平面掃引計測部21〜24に含まれている空中伝搬波送受信部21a,21bは、障害物検知領域11の外側に離隔して設けられるが、障害物検知領域11に入った踏切通行体(障害物)に対する計測方向が異なるほど検出能力が高くなる傾向があるので、対角に配置するのが好ましい。また、その配置に際して、空中伝搬波送受信部21a,21bの何れの掃引範囲(平面掃引計測可能範囲)にも障害物検知領域11が全域収まるように空中伝搬波送受信部21a,21bの向き等を調整することで、障害物検知領域11の何れの部位についても二つの平面掃引計測部21a〜24a,21b〜24bが重複して且つ異方向(右上から左下への第1方向と左下から右上への第2方向)から空中伝搬波を送信できるようにしておく。
【0044】
さらに、その配置に際し、二つの空中伝搬波送受信部21a,21bの離隔距離について、何れの送受信部も他の送受信部の掃引範囲(平面掃引計測可能範囲)に入るように設置位置等を調整することで、平面掃引計測部21a〜24aの空中伝搬波送受信部21aを保持した送受信部保持機構40が平面掃引計測部21b〜24bの空中伝搬波送受信部21bの計測可能範囲に設置されているとともに、平面掃引計測部21b〜24bの空中伝搬波送受信部21bを保持した送受信部保持機構40が平面掃引計測部21a〜24aの空中伝搬波送受信部21aの計測可能範囲に設置されている状態にする。また、それぞれの送受信部保持機構40について、それに付設されている反射体15の反射方向を他の送受信部保持機構40の空中伝搬波送受信部21に適合させておく。さらに、送受信部保持機構40に付設されているのでなく独立して設置される反射体15については、空中伝搬波送受信部21a,21bとは別の対角位置など適宜な離隔位置に設置する。
【0045】
そして、このように設置された踏切障害物検知装置20を調整モード下で動作させてから、離隔位置の反射体15,15を利用して空中伝搬波送受信部21a,21bそれぞれの空中伝搬波掃引面が水平になるように初期調整を行い、更に他の初期調整が有ればそれも済ませてから、踏切障害物検知装置20を通常モードで稼動させる。
すると、随時、平面掃引計測部21a〜24aによって障害物検知領域11の全域に対して平面掃引計測が行われ更にその計測結果に基づき中間判別部26aによって障害物存否の中間判別が出されるとともに、平面掃引計測部21b〜24bによって障害物検知領域11の全域に対して別方向から平面掃引計測が行われ更にその計測結果に基づき中間判別部26bによっても障害物存否の中間判別が出される。
【0046】
そして、中間判別部26a,26bの何れか一方または双方から障害物が存在するとの中間判別が出されると、論理和演算部27によって障害物が存在するとの最終判定が出される。この障害物存在の最終判定が踏切しゃ断状態下で過剰反応回避用の所定時間より長く継続すると、安全確保のため特殊信号発光機へ適宜な制御条件が送出される。
このように、踏切障害物検知装置20にあっては、障害物が障害物検知領域11の何処であろうと障害物検知領域11に入っていると、異なる二方向から障害物が検出されるので、空中伝搬波の反射率に斑のある障害物であっても高率で検出される。
【0047】
また、障害物が空中伝搬波送受信部21と反射体15との間に来たときには、空中伝搬波の反射に基づく検出に加えて空中伝搬波の遮断に基づく検出もなされるので、より的確に障害物が検出される。
さらに、複数の反射体15のうち幾つかは、空中伝搬波送受信部21と共に同じ送受信部保持機構40に装備されているため、平面掃引計測部21〜24の設置に随伴して設置されるので、部材兼用によるコストダウンにとどまらず、設置作業に係るコストも低減される。
【実施例2】
【0048】
本発明の踏切障害物検知装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図3は、(a)が複々線の線路12a〜12dを横切る踏切道10とそこに設置された踏切障害物検知装置50の空中伝搬波送受信部21a,21b,21cとの平面図であり、(b)が踏切障害物検知装置50の概要機能ブロック図である。
【0049】
この踏切障害物検知装置50が上述した実施例1の踏切障害物検知装置20と相違するのは、線路が複線から複々線になって踏切道10が線路12a,12b,12c,12dを総て横断する長いものになった点と、平面掃引計測部21〜24が二セットから一セット増えて三セット21a〜24a,21b〜24b,21c〜24cになった点と、判定部25の中間判別部も二つから三つ26a,26b,26cになった点と、判定部25の論理和演算部27が三つの中間判別部26a,26b,26cの中間判別について論理和をとるようになった点である。
【0050】
この場合、線路12aの外脇の空中伝搬波送受信部21aの掃引範囲51a(平面掃引計測可能範囲)には障害物検知領域11のうちの上側部分と空中伝搬波送受信部21b及び付設の反射体15と上側の独立反射体15とが入り、線路12b,12c間の空中伝搬波送受信部21bの掃引範囲51b(平面掃引計測可能範囲)には障害物検知領域11の全域と空中伝搬波送受信部21a,21c及び各々付設の反射体15,15とが入り、線路12dの外脇の空中伝搬波送受信部21cの掃引範囲51c(平面掃引計測可能範囲)には障害物検知領域11のうちの下側部分と空中伝搬波送受信部21b及び付設の反射体15と下側の独立反射体15とが入っている。
【0051】
そして、障害物検知領域11のうち上側部分の障害物検知領域11aは平面掃引計測部21a〜24aと平面掃引計測部21b〜24bとの二つによって重複して掃引計測され、障害物検知領域11のうち中央部分の障害物検知領域11bは平面掃引計測部21a〜24aと平面掃引計測部21b〜24bと平面掃引計測部21c〜24cとの三つによって重複して掃引計測され、障害物検知領域11のうち下側部分の障害物検知領域11cは平面掃引計測部21b〜24bと平面掃引計測部21c〜24cとの二つによって重複して掃引計測されるので、この踏切障害物検知装置50は、障害物検知領域11の何れの部位についても平面掃引計測部21a〜24a,21b〜24b,21c〜24cのうち二つ以上のものが空中伝搬波を送信して平面掃引計測を行えるものとなっている。
【実施例3】
【0052】
本発明の踏切障害物検知装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図4は、(a)が送受信部保持機構の箱体42及びフード43とそれに付設された反射体15とに係る外観斜視図、(b)が空中伝搬波送受信部21と送受信部保持機構のフード43とに係る縦断面模式図、(c),(d)が空中伝搬波送受信部21と送受信部保持機構のフード43と反射体15,15とに係る縦断面模式図である。
【0053】
図4に示した送受信部保持機構は、
図4(a)に示したものも、
図4(b)〜(d)に示したものも、上述した
図2(b)図示のものでは単純な構造であったフード43を改造したものであり、フード43が、主に太陽光による輻射熱から箱体42の中の空中伝搬波送受信部21を防護するための輻射熱防護用フード43aと、主に降雨による水滴から箱体42の中の空中伝搬波送受信部21を防護するための雨滴防護用フード43bとに分かれている。更に他目的のフードにも分かれていても良いが、少なくとも上下で役割分担する二種のフードのうち下側の雨滴防護用フード43bに一つ以上の反射体15が付設されているので、空中伝搬波送受信部21のついでに反射体15も環境から保護される。
【0054】
しかも、
図4(b)〜(d)に示した送受信部保持機構にあっては、雨滴防護用フード43bが、内部に収納された空中伝搬波送受信部21(一つの平面掃引計測部)の空中伝搬波掃引面の高さを基準としてみたとき、雨滴防護用フード43bが、上側に展設されているのはもとより、それにとどまらず下方にまで延設されている(
図4(b)参照)。それに加えて(
図4(c)参照)、そのような雨滴防護用フード43bの上側部分に一つ以上の反射体15が付設されるとともに、同じ雨滴防護用フード43bの下側部分にも一つ以上の反射体15が付設されて、上下の反射体15,15の反射面を合わせた面の中心位置の高さが、内部に収納された空中伝搬波送受信部21(一つの空中伝搬波送受信部,一つの平面掃引計測部)の空中伝搬波掃引面の高さにほぼ一致するように、箱体や空中伝搬波送受信部の付設位置が調整されている。
【0055】
そのため(
図4(d)参照)、同様に高さ調整等の済んだ別箇所の空中伝搬波送受信部(図示しない他の空中伝搬波送受信部,他の平面掃引計測部)から適切な高さの空中伝搬波掃引面を通って送信されて来た空中伝搬波(矢付き一点鎖線を参照)は、上下の反射体15,15によって反射されて、平均高度について見ると、同じ高さの空中伝搬波掃引面を通って戻って行くので(矢付き二点鎖線を参照)、別箇所の空中伝搬波送受信部の空中伝搬波掃引面が少々ズレたり傾いたりしても的確に反射波を検出することができるうえ、送受信部保持機構や反射体15の設置に際して行う高さ調整その他の調整作業が楽に行える。
【実施例4】
【0056】
本発明の踏切障害物検知装置の実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図5は、(a)がトラック(踏切通行体)の荷台と反射体15とが空中伝搬波の送信方向において部分的に重畳している状態を示す側面図、(b)が判定部25の中間判別部26a,26b,26cの概要フローチャートである。
【0057】
本例の踏切障害物検知装置は、低床のトラック荷台のような踏切通行体(障害物)とその先に設置された反射体15とに対して何れにも空中伝搬波の送受信が行われるような場合(
図5(a)参照)、両者が共に検出されるが、反射体15からの中途半端な反射によって不満足な照査が行われてしまうのを回避するために、改良されたものであり、本例の踏切障害物検知装置が上述した踏切障害物検知装置20,50と相違するのは、中間判別部26の処理においてステップS33の処理とステップS36の処理との実行順序が入れ替わっている点である。
【0058】
詳述すると、本例の踏切障害物検知装置の中間判別部26では(
図5(b)参照)、空中伝搬波の平面掃引に伴って得られた計測結果に基づいて反射が有ったときには(ステップS32→S36)、反射位置が障害物検知領域11の内側なのか外側なのかを調べて、反射位置が障害物検知領域11の内側であれば(ステップS36→S37)、障害物が存在するとの中間判別を出すが(ステップS37)、反射位置が障害物検知領域11の外側だけであれば(ステップS36→S33)、その反射位置(方向と距離)と反射体位置情報とを照合して一致するか否かに応じて場合分けする(ステップS33)。
【0059】
そして、一致した場合(ステップS33→S34)、平面掃引計測部21a〜24a,21b〜24b,21c〜24cのうち該当する方の平面掃引計測部21〜24に対して所定の照査を行うが(ステップS34)、一致しない場合は照査の処理を行うことなく(ステップS33→S35)、該当障害物は不存在との中間判別を出すようになっている(ステップS35)。
そのため、本例の踏切障害物検知装置は、障害物と反射体とが共に検出されるような状況下では(
図5(a)参照)、障害物の検出が漏れなく行われるのに対し、反射体の検出に応じた照査手段での照査は省かれることとなる。
【実施例5】
【0060】
本発明の踏切障害物検知装置の実施例5について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図6(a)は、
図3(a)の各線路12a,12b,12c,12dにおける踏切通過列車の有無を示す踏切通過列車有無情報12adのデータ構造例であり、
図6(b)は、空中伝搬波送受信部21a(個々の平面掃引計測部)に係る障害物検知領域の切替データであり、
図6(c)は、空中伝搬波送受信部21c(個々の平面掃引計測部)に係る障害物検知領域の切替データであり、
図7は、空中伝搬波送受信部21b(個々の平面掃引計測部)に係る障害物検知領域の切替データである。
【0061】
本例の踏切障害物検知装置は、上述した実施例2の踏切障害物検知装置50を改造したものであり(
図3参照)、平面掃引計測部21a〜24aのうち少なくとも空中伝搬波送受信部21aと、平面掃引計測部21b〜24bのうち少なくとも空中伝搬波送受信部21bとが、線路12aと線路12bとの両側に分散かつ対向して設置されている。
また、平面掃引計測部21b〜24bのうち少なくとも空中伝搬波送受信部21bと、平面掃引計測部21c〜24cのうち少なくとも空中伝搬波送受信部21cとが、線路12cと線路12dとの両側に分散かつ対向して設置されている。
【0062】
さらに、踏切通過列車有無情報12adを取得する列車情報取得手段が判定部25に設けられている(
図3(b),
図6(a)参照)。踏切通過列車有無情報12adは、それぞれの線路12a,12b,12c,12dに係る4ビットの状態情報であり、各ビット値は、該当する線路について踏切通過列車が無いときには“0”になり踏切通過列車が有るときには“1”になるので、踏切通過列車有無情報12adは、二進数で“0000”〜“1111”の何れか、十進数で“0”〜“15”の何れかになる。このように数値化されたデータは、表引き等の検索を行う際に索引(第1インデックス,第1相対アドレス)として使い易いものとなっている。なお、踏切通過列車の有無は、踏切制御子等を用いた踏切制御区間内の列車検出など、公知手法にて、知ること(情報入力)ができる。
【0063】
また、空中伝搬波送受信部21aに係る切替データは(
図6(b)参照)、予め決定されて判定部25の中間判別部26aにデータ設定されて保持されており、それには障害物検知領域規定データ26a1と検索表データ26a2とが含まれている。障害物検知領域規定データ26a1は、領域イメージで図示したが障害物検知領域11の全部または一部を規定するデータであり、本例では、6個の個別規定データA〜Eを含んでいる。詳述すると、障害物検知領域11の全部を検知対象(図では散点部分)に含める個別規定データAと、障害物検知領域11のうち線路12a,12b,12cを検知対象に含めるが線路12dを検知対象に含めない個別規定データBと、障害物検知領域11のうち線路12a,12bを検知対象に含めるが線路12c,12dを検知対象に含めない個別規定データCと、障害物検知領域11のうち線路12aを検知対象に含めるが線路12b,12c,12dを検知対象に含めない個別規定データDと、障害物検知領域11のうち空中伝搬波送受信部21a寄りの端部を検知対象に含めるが線路12a,12b,12c,12dを検知対象に含めない個別規定データEとを含んでいる。
【0064】
このような障害物検知領域規定データ26a1に対応して、検索表データ26a2には、踏切通過列車有無情報12adの値“0”,“1”,“2”,“3”,“4”,“5”,“6”,“7”,“8”,“9”,“10”,“11”,“12”,“13”,“14”,“15”それぞれの対応部位に対して上述の個別規定データA,B,C,C,D,D,D,D,E,E,E,E,E,E,E,Eへのポインタ(第2インデックス,第2相対アドレス,第2索引)がデータ保持されている。このような検索表データを検索に介在させることで、同じ範囲の領域を規定する個別規定データは複数でなく一つに集約することができる。
【0065】
繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、空中伝搬波送受信部21cに係る切替データは(
図6(c)参照)、予め決定されて中間判別部26cにデータ設定されて保持されており、それには障害物検知領域規定データ26c1と検索表データ26c2とが含まれている。障害物検知領域規定データ26c1は、障害物検知領域11の全部または一部を規定するデータであり、本例では、6個の個別規定データA〜Eを含んでいる。
また、空中伝搬波送受信部21bに係る切替データは(
図7参照)、予め決定されて中間判別部26bにデータ設定されて保持されており、それには障害物検知領域規定データ26b1と検索表データ26b2とが含まれている。障害物検知領域規定データ26b1は、障害物検知領域11の全部または一部を規定するデータであり、本例では、9個の個別規定データA〜Iを含んでいる。なお、個別規定データにはA等の符号を複数の切替データについて重複使用したが、その内容は図示の如く個別に規定されている。
【0066】
そして、このような踏切障害物検知装置にあっては、線路12a,12b,12c,12dの何れについても列車の通過が無いときには、踏切通過列車有無情報12adが“0”になるので(
図6(a)参照)、中間判別部26aでは検索表データ26a2が検索されて個別規定データA(
図6(b)のデータAの散点範囲を参照)が障害物検知領域に選出されることにより総ての線路を含む広い範囲で障害物が検知され、中間判別部26bでは検索表データ26b2が検索されて個別規定データA(
図7のデータAの散点範囲を参照)が障害物検知領域に選出されることにより総ての線路を含む広い範囲で障害物が検知され、中間判別部26cでは検索表データ26c2が検索されて個別規定データA(
図6(c)のデータAの散点範囲を参照)が障害物検知領域に選出されることにより総ての線路を含む広い範囲で障害物が検知される。
【0067】
これに対し、線路12a,12cには列車の通過が無いが線路12b,12dには列車が通過するときには、踏切通過列車有無情報12adが“5”になるので(
図6(a)参照)、中間判別部26aでは検索表データ26a2が検索されて個別規定データD(
図6(b)のデータDの散点範囲を参照)が障害物検知領域に選出されることにより線路12aを含む端部領域の範囲で障害物が検知され、中間判別部26bでは検索表データ26b2が検索されて個別規定データH(
図7のデータHの散点範囲を参照)が障害物検知領域に選出されることにより線路12cを含む中間領域の範囲で障害物が検知され、中間判別部26cでは検索表データ26c2が検索されて個別規定データE(
図6(c)のデータEの散点範囲を参照)が障害物検知領域に選出されることにより総ての線路を外した空中伝搬波送受信部21c寄り端部領域の狭い範囲で障害物が検知される。
【実施例6】
【0068】
本発明の踏切障害物検知装置の実施例6について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図8(a)〜(c)及び
図9(a)〜(d)は、何れも、複数の空中伝搬波送受信部21a,21bと複数の反射体15,15とに係る対向配置例を示す概略平面図である。
【0069】
本例の踏切障害物検知装置は、空中伝搬波送受信部の対向配置に関して二種類の配置形を許容するものであり、上述した実施例1の踏切障害物検知装置20について説明すると(
図1参照)、線路12a,12bを横断する踏切道10に設定された障害物検知領域11を二重に平面掃引計測するために、二つ空中伝搬波送受信部21a,21bが設置されるが、その際、空中伝搬波送受信部21aと空中伝搬波送受信部21bとが線路12a,12bを間にするとともに踏切道10をも間にする謂わば斜交対向で配設される形と(
図1(a),
図8(a),
図8(c),
図9(a),
図9(c)参照)、空中伝搬波送受信部21aと空中伝搬波送受信部21bとが線路12a,12bを間にするが踏切道10は間にせず同じ側にする謂わば直交対向で配設される形とがある(
図8(b),
図9(b),
図9(d)参照)。
【0070】
また、反射体15は、こちらも二個以上が設けられ、空中伝搬波送受信部21a,21bと同様に障害物検知領域11に臨んでその外に配置されるが、上述した踏切障害物検知装置20と同様に送受信部保持機構40のフード43に付設されたもの(以下、付設タイプ反射体15と呼ぶ)と送受信部保持機構40等から独立して設置されたもの(以下、独立タイプ反射体15と呼ぶ)とを何れも採用した混在形と(
図8(a)〜(c),
図9(a),(b)参照)、付設タイプ反射体15を採用しないで独立タイプ反射体15だけを採用した独立形とが許容される(
図9(c),(d)参照)。
【0071】
混在形であれ独立形であれ、独立タイプ反射体15は、空中伝搬波送受信部21a,21bとは別の対角位置など適宜な離隔位置に設置されて、何れの箇所のものも、踏切道10と線路12a,12bとのうち何れか一方または双方を間にして空中伝搬波送受信部21a,21bのうち何れか一つ以上のものと対向し合う状態になっている。
図示の例で具体的に説明すると、図中の右上と左下とに分かれて空中伝搬波送受信部21a,21bが設置された斜交対向配設形では(
図1(a),
図8(a),
図8(c),
図9(a),
図9(c)参照)、図中の左上と右下とのうち何れか一方または双方に独立タイプ反射体15が設置されて、上述の対向状態になっている。
【0072】
また、図中の左上と左下とに分かれて空中伝搬波送受信部21a,21bが設置された直交対向配設形では(
図8(b),
図9(b),
図9(d)参照)、図中の右上と右下とのうち何れか一方または双方に独立タイプ反射体15が設置されて、やはり上述の対向状態になっている。
さらに、付設タイプ反射体15は、踏切道10と線路12a,12bとのうち何れか一方または双方を間にして、付設先の空中伝搬波送受信部21a(又は21b)と対向している他の空中伝搬波送受信部21b(又は21a)と対向し合っている。
【0073】
これらの対向配置状態では、空中伝搬波送受信部21aを含む平面掃引計測部21a〜24aに係る中間判別部26aは、三箇所の反射体15を用いて照査を行うことができる(
図8(a),(b)の矢付き一点鎖線を参照)他、二箇所の反射体15を用いて照査を行うこともできる(
図8(c),
図9(a)〜(d)の矢付き一点鎖線を参照)。また、空中伝搬波送受信部21bを含む平面掃引計測部21b〜24bに係る中間判別部26bも、三箇所の反射体15を用いて照査を行うことができる(
図8(a),(b)の矢付き二点鎖線を参照)他、二箇所の反射体15を用いて照査を行うことができる(
図8(c),
図9(a)〜(d)の矢付き二点鎖線を参照)。
【0074】
この場合、何れの平面掃引計測部および中間判別部の組についても、個々に、少なくとも二箇所の反射体15を用いて照査が行えるので、そうすることにより、方向計測と距離計測とについて妥当性をチェックすることに加えて、光軸(空中伝搬波の送信方向)の水平・垂直のズレも的確にチェックすることができる。また、三箇所以上の反射体15を用いて照査を行うには、複数の反射体15の高さ合わせに係る水平方向の取り付け精度が厳しくなるが、そうすることにより、照査における校正や確認の機能向上が期待できる。
そして、チェックの結果に応じて自動で又は手動で、警報の出力や,障害物検知機能の無効化,照査機能の無効化など、適宜な対処を採用・実行することができる。
【0075】
[その他]
上記実施例では、空中伝搬波として赤外線を挙げたが、ミリ波や,マイクロ波など、他の光や電波なども使用することができる。
上記実施例では、送受信部を一体物として説明したが、送信部と受信部とが適切に対応していれば別体になっていても良い。
回転機構22は、空中伝搬波送受信部21の全体を回転させる必要は無く、空中伝搬波の送受信方向を必要な範囲で振れれば、一部分を回転や揺動させるものでも良い。