特許第6774142号(P6774142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774142取付金具、木材連結金具、木材の連結方法および建築物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774142
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】取付金具、木材連結金具、木材の連結方法および建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20201012BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20201012BHJP
   F16B 7/00 20060101ALI20201012BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20201012BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   E04B1/26 G
   E04B1/58 506L
   F16B7/00 A
   F16B7/04 301P
   F16B43/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-141797(P2016-141797)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-12934(P2018-12934A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】506148730
【氏名又は名称】一建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599026418
【氏名又は名称】千代川 健裕
(74)【代理人】
【識別番号】100133802
【弁理士】
【氏名又は名称】富樫 竜一
(74)【代理人】
【識別番号】100197181
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 泰子
(72)【発明者】
【氏名】千代川 健裕
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−078695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0023862(US,A1)
【文献】 特開2015−074930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/58
F16B 7/00,7/04,43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に表裏貫通した孔部を設けた円形の底壁部と当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有し、
前記底壁部を内側に向かって突出する湾曲面として構成するとともに、棒状の軸部を有する連結ピンを前記孔部に挿通若しくは螺合させることによって、当該連結ピンに作用する荷重の全部又は一部を、前記側壁部を介して支持可能に形成したことを特徴とする座金状の連結ピンの取付金具。
【請求項2】
前記底壁部を円板形状に形成すると共に、前記側壁部を前記底壁部の外周縁を略直角に屈曲させた屈曲部によって形成したことを特徴とする請求項1記載の取付金具。
【請求項3】
前記孔部にナットを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の取付金具。
【請求項4】
中央に表裏貫通した孔部を設けた円形の底壁部および当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有する座金状の取付金具と、
前記孔部に挿通若しくは螺合可能な棒状の軸部を有する連結ピンと、
底壁部に対して前記連結ピンの端部を固定する固定手段を有し
前記取付金具の底壁部を内側に向かって突出する湾曲面として構成したことを特徴とする木材連結金具。
【請求項5】
内側に向かって突出する円板形状の湾曲面として構成するとともに中央に表裏貫通した孔部を設けた底壁部および当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有する座金状の取付金具と、
前記孔部に挿通若しくは螺合可能な棒状の軸部を有する連結ピンと、
底壁部に対して前記連結ピンの端部を固定する固定手段を有し、
前記連結ピンを挿通させる貫通孔を木材に形成するとともに、当該貫通孔の両端部に前記取付金具を嵌挿可能な凹所を形成し、
前記貫通孔に挿通した連結ピンの両端を、前記貫通孔の両端に形成した凹所に嵌挿した取付金具を介して固定することを特徴とする木材の連結方法。
【請求項6】
互いに結合した木材からなる複数の柱と複数の梁を骨格として有する建築物であって、
全部又は一部の木材同士の結合手段として
内側に向かって突出する円板形状の湾曲面として構成するとともに中央に表裏貫通した孔部を設けた底壁部および当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有する座金状の取付金具と、
前記孔部に挿通若しくは螺合可能な棒状の軸部を有する連結ピンと、
底壁部に対して前記連結ピンの端部を固定する固定手段からなる連結手段を設け、
前記連結ピンを挿通させる貫通孔を木材に形成するとともに、当該貫通孔の両端部に前記取付金具を嵌挿可能な凹所を形成し、
前記貫通孔に挿通した連結ピンの両端を、前記貫通孔の両端に形成した凹所に嵌挿した取付金具を介して固定したことを特徴とする建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付金具、木材連結金具、木材の連結方法および建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋等の建物を建築する際、在来工法では柱や梁などを結合して家屋の骨組みを作ることが行われる。この柱や梁によって形成される骨格は、家屋を構成する屋根、壁その他の構成部材が有する荷重を支え、地震による揺れにも耐える必要がある。そのため、主として角材で構成される柱や梁の結合箇所には、これらの荷重に耐える結合力が必要である。そして、このような結合力を有する木材の結合方法として、特許文献1に記載したような金具を使用した方法がある。
【0003】
特許文献1記載の木材の接合方法は、結合する木材の一方に取り付けたコ字状金具と、このコ字状金具と係合するように加工した木材に挿通させたドリフトピンを係合させるものである。すなわち、結合させる木材に作用する荷重をドリフトピンを介してコ字状金具が支えるものである。ドリフトピンは、木材を貫通させる軸部を有した棒状体であり、家屋を構成する部材の重量や地震などの揺れに伴って結合部に作用する力は、全てドリフトピンを介して支えることになる。そして、ドリフトピンに大きな荷重が作用する場合には、ドリフトピンを装着するために貫通させた小径の穴に応力が集中するので、荷重が過大になった場合にはドリフトピンを挿通させている穴を中心として木材が破壊される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−202392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような木材の破壊は、ドリフトピンが小径でありこれを支える部位の面積(ドリフトピンとの接触面積)が狭く、この狭い面積に荷重が集中し応力が高まることによって生じる。しかし、応力の集中を軽減するためにドリフトピンの直径を単に大きくしてしまうと、ドリフトピンを貫通させる孔を形成するために木材を削る量が多くなるので木材自体の強度を低下させてしまう。
本発明は当該事情に鑑み発明されたものであって、木材自体の強度を低下させることなく木材同士の結合強度を高めることができる、ドリフトピン若しくはドリフトピンと同様の機能を有する軸部材の取付金具の提供等を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
木材同士を締結するために用いる取付金具であって、
中央に表裏貫通した孔部を設けた底壁部と当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有し、棒状の軸部を有する連結ピンを前記孔部に挿通若しくは螺合させることによって、当該連結ピンに作用する荷重の全部又は一部を、前記側壁部を介して支持可能に形成したことを特徴とする取付金具。
【0007】
また、本発明は以下の構成を有したことを特徴とする。すなわち、
中央に表裏貫通した孔部を設けた底壁部および当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有する取付金具と、
前記孔部に挿通若しくは螺合可能な棒状の軸部を有する連結ピンと、
底壁部に対して前記連結ピンの端部を固定する固定手段を有したことを特徴とする木材連結金具。
【0008】
また、本発明は以下の構成を有したことを特徴とする。すなわち、
中央に表裏貫通した孔部を設けた底壁部および当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有する取付金具と、
前記孔部に挿通若しくは螺合可能な棒状の軸部を有する連結ピンと、
底壁部に対して前記連結ピンの端部を固定する固定手段を有し、
前記連結ピンを挿通させる貫通孔を木材に形成するとともに、当該貫通孔の両端部に前記取付金具を嵌挿可能な凹所を形成し、
前記貫通孔に挿通した連結ピンの両端を、前記貫通孔の両端に形成した凹所に嵌挿した取付金具を介して固定することを特徴とする木材の連結方法。
【0009】
また、本発明は以下の構成を有したことを特徴とする。すなわち、
互いに結合した木材からなる複数の柱と複数の梁を骨格として有する建築物であって、
全部又は一部の木材同士の結合手段として
中央に表裏貫通した孔部を設けた底壁部および当該底壁部の外縁全周に亘って立設した側壁部を有する取付金具と、
前記孔部に挿通若しくは螺合可能な棒状の軸部を有する連結ピンと、
底壁部に対して前記連結ピンの端部を固定する固定手段からなる連結手段を設け、
前記連結ピンを挿通させる貫通孔を木材に形成するとともに、当該貫通孔の両端部に前記取付金具を嵌挿可能な凹所を形成し、
前記貫通孔に挿通した連結ピンの両端を、前記貫通孔の両端に形成した凹所に嵌挿した取付金具を介して固定したことを特徴とする建築物。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、木材同士を連結させるために使用する連結ピンの取付金具等に関するものであり、木材に作用する荷重を分散させることにより、結合強度を高めると共に木材の耐破損強度を高めることができるという効果を有している。
また、取付金具は有底の筒状として形成したものであるので、中実体として形成した実質的に同様の機能および強度を有する金具と比較して軽量であり、安価に製造できるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る取付金具の説明図である。
図2】本実施の形態に係る取付金具の使用例に関する説明図である。
図3】本実施の形態に係る取付金具を木材に装着した状態の説明図である。
図4】本実施の形態に係る取付金具の他の使用例に関する説明図である。
図5】実施例1に係る取付金具の説明図である。
図6】実施例2に係る取付金具および連結ピンの説明図である。
図7】実施例2に係る取付金具および連結ピンを木材に装着した状態の説明図である。
図8】実施例3に係る取付金具および連結ピンを木材に装着した状態の説明図である。
図9】実施例4に係る連結ピンの説明図である。
図10】実施例5に係る連結ピンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1は本発明を実施するための形態に係る座金状の取付金具1の説明図であり、図1(a)は外観斜視図を表し、図1(b)は図1(a)に示したA−A線方向の断面図を表している。
取付金具1は、中央に表裏貫通した孔(孔部)2を設けた底壁(底壁部)3と当該底壁部3の外縁全周に亘って立設した側壁(側壁部)4を有した、高さの低い有底筒状を成した金具である。
一例として、肉厚1.6mmの鋼板を円形に打ち抜き、中央に円形の孔2を形成しつつ、金型を使用して連続する側壁4を形成するように外周縁を屈曲させて折り曲げ立ち上げたものである。取付金具1を構成する素材は、鉄、鋼板、ステンレス鋼等の強度のある金属素材を用いることが好ましい。また、肉厚は必要とされる強度に応じて、適宜設定される。
【0013】
取付金具1は、建物の骨格を形成する柱と梁の連結等、高い結合強度が必要な部位に使用するものである。図2は、取付金具1の使用例に関する説明図であり、柱Vに対して梁Hを取り付ける場合を表している。
この例では、柱Vに受金具5を取付け、この受金具5に対して梁Hに取り付けた軸部材を支持させることによって両木材を連結している。また、本実施例では、受金具5によって支持される棒状の軸部6を有した軸部材として、先端にネジ部7、他端に六角柱状の頭部8を設けたボルト9を使用しているが、本発明の趣旨に沿ったものであれば他の形態に形成したものでも差し支えない。
【0014】
そして、この軸部材である連結ピン(ボルト9)を木材に対して取り付けるための金具として、梁Hの両側面にそれぞれ取付金具1(1a、1b)を取り付けるようになっている。各取付金具1の取付には、取付部位となる木材の表面に座堀部10を形成する。座堀部10は、木材の表面から所定の深さに形成した凹みである。
座堀部10の内部形状は取付金具1の外形形状と略同一に形成されており、取付金具1が丁度よく嵌まるようになっている。なお、座堀部10の深さについては、取付金具1の外周面の高さよりも僅かに深く形成されるのが望ましい。
【0015】
本実施の形態では取付金具1の外周形状はボルト9の直径と同程度の約12mmの高さの低い有底の筒状体として形成しており、座堀部10の内面形状は、取付金具1の外周形状に合わせて円筒状の凹部として形成している。なお、取付金具1の外周形状が角筒形状であるならば、座堀部10の内面形状も角筒形状に形成し、嵌め込むように取付金具1を埋設する。
また、座堀部10の底面11は取付金具1の底壁3全体が接触可能となるように平面状に形成されている。
また、座堀部10の底面11中央には木材を貫通する貫通孔12を形成している。換言するならば、貫通孔12の両端に座堀部10が形成されている。
【0016】
梁Hに対するボルト9の装着は、ボルト9の挿入側から取付金具1b、座堀部10、貫通孔12、座堀部10、取付金具1aを経由して先端のネジ部7を突出させ、これにナット13を螺合することで行う。
図2に示した例では、ボルト9に作用する荷重方向に亘ってスリット14を形成し、このスリット14内を横断するようにボルト9を貫通させている。また、ボルト9を挿通させる貫通孔12の上部に、貫通孔16を設けて金属製の棒体であるドリフトピン15を装着するようになっている。ドリフトピン15は、強度のある鉄やステンレス製の直径12mmの金属ピンであり、スリット14内を横断するように貫通し受金具5の所定部位と係合するようになっている。
【0017】
上記のように座堀10内に収容した一対の取付金具1a、1bにボルトの軸部6を挿通させて固定すると、ボルト9の貫通孔12内に接触する軸部6および取付金具1a、1bに接する座堀部10を介して、ボルト9に作用する荷重を木材(梁H)全体によって支持するようになる。
柱Vに梁Hを取り付ける場合、柱Vに固定した受金具5の受け板17にドリフトピン15およびボルト9を懸架させることにより梁Hを支持させる。
【0018】
上記のような懸架を行わせるために、梁Hの端面中央から所定の深さの部分に、上下方向に亘って受金具5を嵌め込むことができる程度の幅に形成したスリット14を設けている。受金具5の受け板17には、上方に向かって開口した溝18と、孔19を設けている。溝18はドリフトピン15を収容できる程度の幅を有しており、梁Hに挿通させたドリフトピン15を受け入れて支えるようになっている。孔19は、ボルト9の軸部6を挿通させることができる程度の直径を有しており、梁Hに挿通させたボルト9の軸部6を支えるようになっている。
【0019】
柱Vに梁Hを取り付ける際には、予め梁Hに対してドリフトピン15のみを取り付けておく。ドリフトピン15は、木材に対して打ち込んで固定するタイプのピンなので、器具を要することなく固定するようになっている。
ドリフトピン15を打ち込むとスリット14内を貫通するので、受金具5の受け板17を上部から覆うようにスリット14を嵌め付けると、ドリフトピン15が受け板17の溝18内に入り溝18内の底端部で支持される。すなわち、柱Vの受金具5に対してドリフトピン15を介して梁Hを載せる状態になる。これにより、梁Hの落下させずに柱Vに支持するようになる。
【0020】
ドリフトピン15によって梁Hを支持させた後、梁Hの貫通孔12と受金具5の孔19にボルト9を挿通させて固定する。図3は、取付金具1a、1bによってボルト9を固定した状態の外観図と、ボルト9を取り付けた部位の断面(B−B断面)を表している。
同図に示すように、ボルト9は取付金具1a、1bによって両端が支持され、梁Hの自重等の荷重が取付金具1a、1bを介してボルト9の両端部に作用するようになる。また、受金具5はスリット14の内部で、梁Hの荷重が集中するボルト9の軸部6中間を支え、これにより柱Vに対して梁Hを取り付けることになる。
【0021】
梁Hの荷重を支える場合、取付金具1a、1bを設けることなく軸部材のみで荷重を支えると、梁H(貫通孔12内部)と軸部材の接触面積が少ないので、梁Hに作用するせん断応力が局所的に高くなる。換言するならば、軸部6と貫通孔12が接触する細い接線によって大きな荷重を支えるイメージである。
一方、取付金具1a、1bは軸部6のように木材に対して局所的に接するのではなく、広い面として接触することができるので、梁Hとの接触部位に作用するせん断応力が低くなる。せん断応力が低くなるということは、支えられる荷重が増すということであり、荷重に対する強度が増すことを意味する。
【0022】
木材に対するせん断応力を小さくするには、木材を支える軸部材等を太くする等して接触面積を大きくすればよい。しかしながら、軸部材を太くするということは木材を削る量が多くなることである。木材を削る量が多くなると、木材自体の強度が低くなってしまうので、削る量は最小限にするのが望ましい。このような観点から、ボルト9の両端部に最小限の座堀部を設け、この座堀の内面に接触する形の取付金具1a、1bを設けている。
【0023】
図4は、取付金具1a、1bおよび軸部材の他の使用例であって、2本の角材K1、K2を重ね合わせて強度のある1本の木材として集成した場合を表している。なお、図4は説明のために角材K1、K2の一部のみを表しているが、角材K1、K2は数メートルに及ぶ長尺の角材であり、長手方向に亘る複数箇所に取付金具1a、1bを用いた締結部を設けたものである。
長尺の角材2本を重ね合わせて固定し一本の角材同様にする場合、重ね合わせる角材K1、K2の双方にそれぞれに、上述したのと同様の貫通孔と座堀を形成し、取付金具1a、1bを装着して軸部材となるボルト9を挿通しナット13で固定する。このボルトを挿通させる場合、必要に応じて平ワッシャ20、スプリングワッシャ21も併用する。このようにすることで、取付金具1a、1bの座面を平ワッシャ20で補強しつつ、スプリングワッシャ21によって締め付け後に緩みが生じないようにすることができる。
【0024】
また、角材K1、K2に対するこの取付金具1a、1bとボルト9を使用した締結箇所は、長手方向に亘って複数箇所に設けられる。
複数箇所にこのような締結箇所を設けると、角材K1、K2同士を結合させる方向H1、H2へ作用する力が強く働き密着する。また、これと同時に角材K1とK2の間に作用するV1、V2方向へのズレを防止する力も強くなり捩れに対する強度も増すことになる。せん断力のように作用するV1、V2方向に生じる荷重への対抗力は、主として取付金具1a、1bの外周面によって受け止められるので、小径のボルトのような軸部材のみで締結する場合と比較して、取付金具1a、1bを用いた締結方法を行うことで高い強度を発揮することができる。
【0025】
(他の実施例1)
図5は、他の形態の取付金具25の説明図であり、図5(a)は外観斜視図を表し、図5(b)は図5(a)に示したC−C線方向の断面図を表している。
取付金具25は、前述した取付金具1と同様に中央に表裏貫通した孔(孔部)26を設けた底壁(底壁部)27と当該底壁部27の外縁全周に亘って立設した側壁(側壁部)28を有した、高さの低い有底筒状の形状を成した金具である。
また、一例として肉厚1.6mmの鋼板を円形に打ち抜き、中央に円形の孔2を形成しつつ、金型を使用して連続する側壁4を形成するように外周縁を屈曲させて折り曲げ立ち上げることにより形成したものである。取付金具1を構成する素材は、鉄、鋼板、ステンレス鋼等の強度のある金属素材を用いることが好ましく、肉厚は必要とされる強度に応じて、適宜設定される。
【0026】
このように形成した取付金具25は、底壁部27を内側に向かって突出する方向に湾曲させた湾曲面を成している。この湾曲面はボルトやナットを取り付ける際に撓む部分であり、バネ座金のような効果によってボルトに螺合させたナットを緩みにくくする効果を有している。このため、図4で示した例において、取付金具1の代わりに取付金具25を用いると、スプリングワッシャ21は不要になる。また、締結強度が低くて良い場合や、底壁部27の厚みを増す等によって強度を高めた場合には平ワッシャ20も不要になる。
【0027】
(他の実施例2)
前述した各例は取付金具1を使用してボルトを取り付ける場合について説明したが、ボルト以外を使用することも可能である。
図6は取付金具1に対してネジ山を切っていない中実のピン(以下「連結ピン」という)30を、一対の取付金具1(25)によって取り付ける場合の説明図である。
図6(a)に示すように、連結ピン30は一例として直径12mmの円柱に形成した棒状体であり、鉄、ステンレス、その他の鋼材によって形成されている。連結ピン30の端部からやや中央よりの部分には、中心部の所定幅を残すように長手方向と直交する方向に亘って一対の溝31、31が形成されている。また、上記一対の溝31、31と係合する、二股状の一対の差し込み部32、32を有する楔体33を有している。
【0028】
上記連結ピン30の取り付けは、図2等に示した例と同様であり、図6(b)のような状態で木材に対して装着される。図6(b)は装着する木材を省略して表した図であるが、木材に座堀部10と貫通孔12を形成して取付金具1を装着させるものである。連結ピン30の両端をそれぞれ取付金具1(25)中央の孔2から突出させた後に、連結ピン30の両端近くに形成した一対の溝31、31に、楔体33の二股状の一対の差し込み部32、32を打ち込むと、取付金具1(25)と連結ピン30が固定されるようになっている。
【0029】
図7は、連結ピン30を取付金具25を使用して木材(前述した梁H)に取り付けた場合の断面図を表している。
上記溝31、31と楔体33によって連結ピン30を固定するには、座堀の深さを除いた貫通孔の長さに両端の取付金具25が有する低壁分の肉厚を加えた長さと、連結ピン30の両端に形成した各溝31間の距離をほぼ等しく形成する。取付金具25を使用する場合には低壁が湾曲しているので、楔体33を打ち込むと弾力性を保ちながら低壁が撓む。この場合、楔体33には取付金具25と連結ピン30から挟まれるような力が作用しており、楔が良く効いた状態になり、抜けにくくすることが出来る。
なお、各溝31間の距離を上記よりもやや短くすることによっても、打ち込んだ楔体33の効きを強くすることができる。
【0030】
(他の実施例3)
図8は、連結ピンと取付金具の他の例に関する説明図である。図8に示した連結ピン35は、丸棒ではなくアイスキャンディースティック状の細い平板によって形成したのである。
連結ピン35の端部からやや中央よりの部分には、中心部の所定幅を残すように長手方向と直交する方向に亘って一対の溝36、36が形成されている。この溝36、36部分に二股状の一対の差し込み部37,37を有する楔体38を装着することができるようになっている。
【0031】
図8に示した取付金具39は、概ね前述した取付金具1又は取付金具25と同様の外形形状を有しているが、連結ピン35を挿通させる孔40が円形孔ではなく矩形形状である点において相違している。この矩形形状は、連結ピン35が丁度貫通できる程度の外径に形成されているものである。
この取付金具39の孔40に挿通した連結ピン35の溝36、36に楔体38を装着することによって、連結ピン35を固定するようになっている。
【0032】
(他の実施例4)
図9は、連結ピンの他の実施例を表している。同図に表した連結ピン41は、軸部分42が円柱状の丸棒体であり、両端部43を平板状に形成したものである。この連結ピン41の使い方は前述した実施例4と同様であり、矩形形状の孔40を有した取付金具39とともに使用して楔体38によって固定することが可能である。
この連結ピン41は、実施例4の平板状の軸部ではなく丸棒状であるので、軸部に作用する荷重量が大きい場合であっても、軸部を変形させることなく荷重を受け止めることが可能である。
【0033】
(他の実施例5)
図10(a)、図10(b)は他の実施例に係る連結ピン45を表し、図10(c)はこの連結ピン45に使用する取付金具50の外観図を表している。図10(a)に表した連結ピン45は、軸部分46を円柱状の丸棒体として形成し、先端47を平板状に形成し、基端部外周に雄ねじ部48を形成したものである。また、軸部分46と先端47との境界部分に前述した楔体33、楔体38と嵌合可能な溝49を形成している。
この連結ピン45の取付には、前述した取付金具39および他の取付金具50を使用する。取付金具50には、基端部に形成した雄ねじ部48と螺合可能な雌ねじ部51を形成しており、取付金具50の雌ねじ部51に対して連結ピン45の雄ねじ部48を螺合させることにより両者を結合させることができるようになっている。取付金具50の雌ねじ部51を形成する部位は、取付金具50と一体的に結合したナット51として形成している。なお、ナット51は取付金具50とは分離して形成しても差し支えない。
【0034】
木材に対して連結ピン45を取り付ける際には、予め木材に対して前述した座堀と貫通孔を形成しておく。この座堀と貫通孔に対して、取付金具50に取り付けた連結ピン45を貫通孔の一方の側から挿入し、他端である連結ピン45の先端47部分を前述した取付金具39と楔体33若しくは楔体38を嵌合させるようになっている。
以上説明した各実施例は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内において適宜組み合わせることが可能であり、本発明が上記実施例に限定したものでないことは言うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、建物等の建築物を構成する木材の連結に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1(1a、1b) 取付金具
2 孔(孔部)
3 底壁(底壁部)
4 側壁(側壁部)
5 受金具
6 軸部
7 ネジ部
8 頭部
9 ボルト
10 座堀部
11 底面
12 貫通孔
13 ナット
14 スリット
15 ドリフトピン
16 貫通孔
17 受け板
18 溝
19 孔
20 平ワッシャ
21 スプリングワッシャ
25 取付金具
26 孔(孔部)
27 底壁(底壁部)
28 側壁(側壁部)
30 連結ピン
31 溝
32 差し込み部
33 楔体
35 連結ピン
36 溝
37 差し込み部
38 楔体
39 取付金具
40 孔
41 連結ピン
42 軸部分
43 両端部
45 連結ピン
46 軸部分
47 先端
48 雄ねじ部
49 溝
50 取付金具
51 雌ねじ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10