(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の積層構造体は、(A)無機充填剤を含む硬化性樹脂層(以下、単に「(A)硬化性樹脂層」とも称する)と、(B)表面抵抗値が10
12Ω以下のフィルム(以下、単に「(B)フィルム」とも称する)と、を有することを特徴とするものである。詳しいメカニズムは明らかではないが、ソルダーレジスト等の硬化膜の表面に生じる傷は、硬化性樹脂層を硬化させた後に、キャリアフィルムまたはカバーフィルムを剥離する際に、静電気の影響によって生じるものであったと考えられる。特に、硬化性樹脂層が無機充填剤を含む場合にその無機充填剤を起点として傷が生じやすくなると考えられる。
本発明の積層構造体においては、(B)フィルムの表面抵抗値が10
12Ω以下の導電性であるため、静電気を蓄えにくく、(A)硬化性樹脂層が無機充填剤を含むにもかかわらず、硬化性樹脂層の表面に傷が生じにくいと考えられる。
なお、本発明の積層構造体は、一般にドライフィルムや感光性フィルムと呼ばれるものであるが、そのような名称のものに限られない。
【0017】
本発明の積層構造体は、(A)硬化性樹脂層と(B)フィルムが積層した構造を有する(
図1)。必要に応じて、(A)硬化性樹脂層と(B)フィルムとの間に他の樹脂層を設けてもよい。(A)硬化性樹脂層は、プリント配線板の硬化膜の形成用であることが好ましく、永久保護膜の形成用であることがより好ましく、特に、ソルダーレジスト、カバーレイ、層間絶縁層、または穴埋め充填材の形成用であることがより好ましい。なお、(B)フィルムは、通常、キャリアフィルムや基材フィルムと呼ばれるものである。
【0018】
本発明の積層構造体は、(A)硬化性樹脂層が基材側に、また、(B)フィルムが表層側、即ち、(A)硬化性樹脂層から見て基材と反対側に位置するように、基材に対してラミネートすることによって用いることができる。これによって、(B)フィルムを剥離しても、(A)硬化性樹脂層の表面に傷が生じにくく、表面に傷の少ない硬化膜を得ることができる。
【0019】
本発明の積層構造体において、(A)硬化性樹脂層の表面を保護するために、(B)フィルムとは反対側に、さらに(C)フィルムを積層することが好ましい(
図2)。このように積層した(C)フィルムは、通常、(A)硬化性樹脂層を基材にラミネートする際に剥離される。(C)フィルムは、剥離した際に傷が生じにくいという観点からは、(B)フィルムと同様に、表面抵抗値が10
12Ω以下で導電性を有することが好ましい。しかしながら、(C)フィルムが保護する(A)硬化性樹脂層の表面は外観として露出される面ではないことから、外観不良の改善という観点からは、表面抵抗値が10
12Ω以下ではなくてもよい。必要に応じて、(A)硬化性樹脂層と(C)フィルムとの間に他の樹脂層を設けてもよい。なお、(C)フィルムは、通常、カバーフィルムや保護フィルムと呼ばれるものである。
【0020】
以下、各層について詳細に記載する。
[(A)無機充填剤を含む硬化性樹脂層]
本発明の積層構造体において、(A)硬化性樹脂層は、無機充填剤を含む液状の硬化性樹脂組成物を乾燥して得られる乾燥膜である。前記硬化性樹脂組成物は、光または加熱により硬化可能な樹脂組成物である。
【0021】
(A)硬化性樹脂層は、レーザー加工または光照射によるパターニングが可能であり、パターンの形成が可能であれば、特に限定されない。ここで、光照射によるパターニングとは、光照射された部分が、現像不可能状態から現像可能状態に変化すること(ポジ型)、または、現像可能状態から現像不可能状態に変化すること(ネガ型)を言う。また、光照射によるパターンの形成とは、光照射部分が現像されて未照射部分がパターン状に残ること(ポジ型)、または、未照射部分が現像されて光照射部分がパターン状に残ること(ネガ型)を言う。ここで、パターンは、パターン状の硬化物を意味する。
【0022】
(A)硬化性樹脂層は、加熱により硬化する熱硬化型または光照射により硬化する光硬化型であればよいが、現像可能な光硬化型であることが好ましく、特に、アルカリ現像型であることが好ましい。前記(A)硬化性樹脂層は、ポジ型でもネガ型でもよい。
【0023】
ポジ型の硬化性樹脂層としては、光照射前後の極性変化により、光照射部(露光部ともいう。)が現像液により溶解するものであれば、公知慣用のものを用いることができる。例えば、ジアゾナフトキノン化合物とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物が挙げられる。
【0024】
ネガ型の硬化性樹脂層としては、光照射部が現像液に対して、難溶となるものであれば公知慣用のものを利用できる。例えば、光酸発生剤とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物、光塩基発生剤とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物、光ラジカル開始剤とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物等が挙げられる。
【0025】
また、上記のとおり、本発明の積層構造体は、表面に傷の少ない硬化膜を得ることができるため、プリント配線板の硬化膜の形成用であることが好ましく、永久保護膜の形成用であることがより好ましく、ソルダーレジスト、カバーレイ、層間絶縁層、または穴埋め充填材の形成用であることが特に好ましい。そのため、耐熱性等の特性の観点から、(A)硬化性樹脂層は熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。また、アルカリ現像性等の特性の観点から(A)硬化性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
【0026】
特に(A)硬化性樹脂層は、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
一般に、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂層を硬化させる際、露光により光硬化性樹脂を硬化させた後、キャリアフィルムを樹脂層から剥離することになるが、剥離時には硬化性樹脂層中の熱硬化性樹脂は硬化していない。そのため、樹脂層としての硬度が不十分であるので、硬化性樹脂層表面に傷が生じやすい状態となる。
これに対し、本発明の積層構造体は、表面抵抗値が特定値以下の(B)フィルムを用いるので、硬化性樹脂層は、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂を含有する場合であっても硬化性樹脂層表面に傷が生じることを抑制することができる。
【0027】
以下、(A)硬化性樹脂層に含まれる硬化性樹脂を説明する。
<硬化性樹脂>
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
(熱硬化性樹脂)
本発明の(A)硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂を含む場合、硬化物の耐熱性が向上し、また、下地との密着性が向上する。熱硬化性樹脂としては、分子中に環状エーテル基および環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)の少なくともいずれか一種を有するものを用いることが好ましい。
【0029】
このような分子中に環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基若しくは環状チオエーテル基のいずれか一方または双方を有する化合物であり、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0030】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0031】
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0032】
分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、三菱化学社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂等も用いることができる。
【0033】
その他の熱硬化性樹脂としては、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
熱硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂層全量基準で、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0034】
(光硬化性樹脂(ラジカル重合))
光硬化性樹脂としては、特に、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーおよび光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
【0035】
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0036】
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル等のアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート等のイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0037】
(光硬化性樹脂(カチオン重合))
光硬化性樹脂としては、脂環エポキシ化合物およびビニルエーテル化合物等を好適に用いることができる。このうち脂環エポキシ化合物としては、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、1−[1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3’,4’−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、シクロヘキセンオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物等が挙げられる。
【0038】
ビニルエーテル化合物としては、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル、αおよび/またはβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。
光硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂層全量基準で、1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0039】
(アルカリ可溶性樹脂)
(A)硬化性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含有することができる。アルカリ可溶樹脂としては、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂を用いることが好ましい。下地との密着性を向上させるだけでなく、特に、カルボキシル基含有樹脂を用いると、現像性の面からより好ましい。カルボキシル基含有樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂でもよい。
【0040】
(1)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(2)エポキシ樹脂の水酸基を、さらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(3)エポキシ化合物に、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(4)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物等の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(5)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に、不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(6)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に、酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(7)ジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(8)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(9)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
(10)オキセタン樹脂に、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に、2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(11)上述した(1)〜(10)のカルボキシル基含有樹脂に、1分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0041】
上述のカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0042】
また、カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲が好ましく、45〜120mgKOH/gの範囲がより好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であるとアルカリ現像が容易となり、一方、200mgKOH/g以下である正常なレジストパターンの描画が容易となる。
【0043】
また、上述のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上であると、タックフリー性能、露光後の塗膜の耐現像性、解像性が良好となる。一方、重量平均分子量が150,000以下であると、現像性に優れる。
【0044】
カルボキシル基含有樹脂は、上述以外のものも使用することができ、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0045】
フェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を有する化合物、例えば、ビフェニル骨格若しくはフェニレン骨格またはその両方の骨格を有する化合物、または、フェノール性水酸基含有化合物、例えば、フェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、メタクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール等を用いて合成した、様々な骨格を有するフェノール樹脂を用いてもよい。
【0046】
例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS型フェノール樹脂、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物等公知慣用のフェノール樹脂を用いることができる。
これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
本発明においては、アルカリ可溶性樹脂として、カルボキシル基含有樹脂およびフェノール樹脂のいずれか一方、または、これらの混合物を用いてもよい。
【0048】
なお、アルカリ可溶性樹脂としてエチレン性不飽和基を含まない材料を用いる場合には、上記光硬化性樹脂を併用することが好ましい。光硬化性樹脂は、活性エネルギー線照射により、光硬化し、かつアルカリ可溶性樹脂のアルカリ水溶液への溶解を助長するものである。いずれの場合にも、1種類または複数種類の光硬化性樹脂を用いることができる。
【0049】
(A)硬化性樹脂層がアルカリ可溶性樹脂を含む場合、硬化性樹脂およびアルカリ可溶性樹脂の合計配合量は、硬化性樹脂組成物中に、10〜80質量%であることが好ましく、20〜75質量%であることがより好ましい。硬化性樹脂およびアルカリ可溶性樹脂の合計配合量が10質量%以上の場合、被膜強度が向上する。一方、硬化性樹脂およびアルカリ可溶性樹脂の合計配合量が80質量%以下の場合、硬化性樹脂組成物の粘性が適度となり、キャリアフィルムへの塗布性等が向上する。なお、(A)硬化性樹脂層がアルカリ可溶性樹脂を含まない場合、硬化性樹脂の配合量は、上記配合量と同じである。
【0050】
<光反応開始剤>
(A)硬化性樹脂層は、光反応開始剤を含有することができる。光反応開始剤としては、光照射によりラジカル、塩基、酸等を発生して硬化性樹脂を硬化させることができればいずれでもよい。光反応開始剤としては、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルホスフィンオキシド系、オキシムエーテル系、オキシムエステル系、チタノセン系等の公知慣用の化合物が挙げられる。
【0051】
光反応開始剤としては、オキシムエステル系、α−アミノアセトフェノン系アシルホスフィンオキサイド系、およびチタノセン系からなる群から選択される1種または2種以上を含有することが好ましい。
オキシムエステル系光反応開始剤としては、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン等が挙げられる。オキシムエステル系光反応開始剤は、オキシムエステル基を複数有する化合物でもよい。
【0052】
α−アミノアセトフェノン系光反応開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
【0053】
アシルホスフィンオキサイド系光反応開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0054】
チタノセン系光反応開始剤としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0055】
このような光反応開始剤の配合量は、硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部、より好ましくは0.5〜80質量部の割合である。光反応開始剤の配合量が、硬化性樹脂100質量部に対し0.01質量部以上であると、光硬化性が良好となり塗膜剥離性や耐薬品性等の塗膜特性が良好となるので好ましい。一方、光反応開始剤の配合量が、硬化性樹脂100質量部に対し100質量部以下であると、深部硬化性に優れるので好ましい。
【0056】
さらに、本発明の硬化性樹脂層には、上述した化合物以外の光反応開始剤や、光開始助剤および増感剤を含むことができ、例えば、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、キサントン化合物、および、3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0057】
(無機充填剤)
(A)硬化性樹脂層は無機充填材を含む。無機充填材は、硬化物の密着性、機械的強度、線膨張係数等の特性を向上させるものであることが好ましい。無機充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸ジルコニウム、雲母粉等の公知慣用の無機充填剤が使用できる。ここで、無機充填剤は、硫酸バリウムおよびシリカのうちいずれか少なくとも一種を含むことが好ましい。
無機充填剤の平均粒径は、0.1〜20μmであることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、日機装株式会社(Nanotrac wave)などが挙げられる。ここで、平均粒径とは、平均一次粒径および平均二次粒径を含む概念である。
無機充填剤の平均粒径が小さいほど互いに相互作用するので、硬化膜表面に傷が生じやすい。しかしながら、本発明においては、無機充填剤の平均粒径が例えば、0.1〜20μmである場合においても硬化膜表面の傷が生じることを抑制できる。
無機充填剤の配合量は、特に限定されないが、組成物の固形分基準で10〜80質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
なお、(A)硬化性樹脂層が無機充填材を含まない場合、硬化膜の表面に傷は生じない。
【0058】
(A)硬化性樹脂層は硬化剤を含有することができる。硬化剤としては、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、マレイミド化合物、脂環式オレフィン重合体等が挙げられる。硬化剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
上記硬化剤は、熱硬化性樹脂のエポキシ基等の熱硬化反応が可能な官能基と、その官能基と反応する硬化剤中の官能基との比率が、硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.2〜2となるような割合で配合することが好ましい。硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)を上記範囲内とすることで、デスミア工程におけるフィルム表面の粗化を防止することができる。より好ましくは硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.2〜1.5であり、さらに好ましくは硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.3〜1.0である。
【0060】
(A)硬化性樹脂層は、得られる硬化被膜の機械的強度を向上させるために、さらに熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂は、溶剤に可溶であることが好ましい。溶剤に可溶である場合、ドライフィルムの柔軟性が向上し、クラックの発生や粉落ちを抑制できる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
熱可塑性樹脂の配合量は、溶剤を除いた樹脂層全量基準で、0.5〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の割合が好ましい。熱可塑性樹脂の配合量が上記範囲外になると、均一な粗化面状態を得られ難くなる。
【0062】
さらに、(A)硬化性樹脂層は、必要に応じてゴム状粒子を含有することができる。このようなゴム状粒子としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプロピレンゴム、ウレタン変性ポリブタジエンゴム、エポキシ変性ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基または水酸基で変性したアクリロニトリルブタジエンゴム、およびそれらの架橋ゴム粒子、コアシェル型ゴム粒子等が挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのゴム状粒子は、得られる硬化被膜の柔軟性を向上させたり、クラック耐性が向上したり、酸化剤による表面粗化処理を可能とし、銅箔等との密着強度を向上させるために添加される。
【0063】
ゴム状粒子の平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜1μmの範囲がより好ましい。本発明におけるゴム状粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により求めることができる。例えば、適当な有機溶剤にゴム状粒子を超音波などにより均一に分散させ、レーザー回折法による測定装置としては、日機装株式会社(Nanotrac wave)などを用いて、ゴム状粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。ここで、平均粒径とは、平均一次粒径のことである。
【0064】
ゴム状粒子の配合量は、溶剤を除いた樹脂層全量基準で、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。0.5質量%以上の場合、クラック耐性が得られ、導体パターン等との密着強度を向上できる。10質量%以下の場合、熱膨張係数(CTE)が低下し、ガラス転移温度(Tg)が上昇して硬化特性が向上する。
【0065】
(A)硬化性樹脂層は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。このような硬化促進剤の具体例としては、イミダゾールおよびその誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤の中でも、BHAST耐性が得られることから、ホスホニウム塩類が好ましい。
【0066】
硬化促進剤は、1種を単独または2種以上混合して用いることができる。硬化促進剤の使用は必須ではないが、特に硬化を促進したい場合には、熱硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは0.01〜5質量部の範囲で用いることができる。金属触媒の場合、熱硬化性樹脂100質量部に対して金属換算で10〜550ppmが好ましく、25〜200ppmが好ましい。
【0067】
(A)硬化性樹脂層は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を使用することができる。これらの有機溶剤は、単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
(着色剤)
着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒、紫、オレンジ、茶色等の慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。着色剤の配合量に特に制限はないが、硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の割合で使用される。
【0069】
(その他の添加剤)
(A)硬化性樹脂層において、さらに必要に応じて、アミン系またはリン系の熱硬化触媒、ブロック共重合体、バインダーポリマー、エラストマー、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、防錆剤等の添加剤を用いることができる。
【0070】
[(B)表面抵抗値が10
12Ω以下のフィルム]
(B)表面抵抗値が10
12Ω以下のフィルムとしては、ポリマー中に導電材を分散させたフィルムや、ベースフィルムの表面に導電材をコーティングした複数層から成るフィルムを用いることができる。このようなフィルムの市販品としては長岡産業社製NAS−PETやユニチカ社製エンブレットAT、エンブレットAS、東洋紡社製エスペットフィルムT6140、T7410、E7410、東レ社製ルミラーX53等が挙げられる。(B)フィルムは、ポリマー中に導電剤を分散させたポリエステルフィルム、および、ポリエステルフィルムの表面に導電材をコーティングした複数層から成るフィルムの少なくとも何れか1種であることが好ましい。中でも、ポリエステルフィルムがPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであることがより好ましい。
【0071】
(B)フィルムの表面抵抗値は、10
11Ω以下であることが好ましく、10
10Ω以下であることがより好ましい。(B)フィルムの表面抵抗値の下限値としては、例えば、10
2Ω以上である。
【0072】
((C)フィルム)
(C)フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等を用いることができる。(A)硬化性樹脂層を基板にラミネートする際に(C)フィルムを剥離することを考慮して、(A)硬化性樹脂層と(B)フィルムとの接着力よりも、(A)硬化性樹脂層と(C)フィルムとの接着力が小さくなるようにすることが好ましい。また、(B)フィルムの例示で挙げたフィルムも、(C)フィルムとして用いることができる。
【0073】
本発明の積層構造体は、硬化性樹脂を含む液状組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、ダイコーターグラビアコーター、スプレーコーター等で(B)フィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して(A)硬化性樹脂層を得ることができる。塗布層厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の層厚で、5〜150μm、好ましくは10〜60μmの範囲で適宜選択される。ここで、(B)フィルム上に(A)硬化性樹脂層を積層した後、さらに、(C)フィルムを積層することが好ましい。本発明の積層構造体は、ラミネーター等により(A)硬化性樹脂層が基材と接触するように張り合わせる。
【0074】
基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0075】
(A)硬化性樹脂層は、上記のとおり、熱硬化型または光硬化型でもよく、光硬化型としては、ポジ型でもネガ型でもよく、パターニングおよびパターンの形成は、(A)硬化性樹脂層の組成に適した方法を用いればよい。以下では、一例として、(A)硬化性樹脂層が、光反応開始剤とアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型の光硬化性樹脂層の場合のパターニングおよびパターンの形成について詳述する。
【0076】
基材上に(A)硬化性樹脂層をラミネートした後、露光(活性エネルギー線の照射)を行うことにより、(A)硬化性樹脂層の露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0077】
露光は、例えば、パターンを形成したフォトマスクを通して、接触式または非接触方式により活性エネルギー線の照射により行うことができる。このほか、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光することにより、露光部分を光硬化させることができる。
【0078】
露光後に(B)フィルムを剥離し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像して、パターンを形成することができる。
【0079】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよい。
【0080】
さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。
【0081】
画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm
2、好ましくは20〜600mJ/cm
2の範囲内とすることができる。
【0082】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0083】
更に、本発明の(A)硬化性樹脂層が、熱硬化性樹脂を含む場合には、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させる。
【実施例】
【0084】
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。実施例において、各成分の配合量の「部」および「%」は、特に別段の記載がない限り、質量基準によるものとする。
【0085】
[アルカリ可溶性樹脂溶液A−1の合成]
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを添加し、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。
【0086】
次に、上記アルキレンオキシド導入装置より、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm
2で16時間反応させた。
【0087】
その後、室温まで冷却した反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、固形分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
【0088】
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に添加し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。
【0089】
反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として留出し、12.6gであった。その後、得られた反応溶液を室温まで冷却し、15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
【0090】
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させた。固形物の酸価88mgKOH/g、固形分71%のアルカリ可溶性樹脂溶液を得た。これを樹脂溶液A−1とする。
【0091】
合成例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−695、DIC(株)製、エポキシ当量220)330gを、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340gを加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46gと、トリフェニルホスフィン1.38gを加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸108gを徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物68gを加え、8時間反応させ、冷却させた。このようにして、固形物の酸価50mgKOH/g、不揮発分65%のカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液(以下、A−2と略称する)を得た。
【0092】
下記表1に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合し、次いで3本ロールミルにて混錬し、(A)硬化性樹脂層用の光・熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0093】
【表1】
*1:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン社製イルガキュアーOXE02)
*2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製jER828)
*3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製DPHA)
*4:C.I.Pigment Blue 15:3
*5:C.I.Pigment Yellow 147
*6:硫酸バリウム(堺化学工業社製B−30)
*20:シリカSiO
2(アドマテックス社製SO−C2)
【0094】
(実施例1〜3)
上記で調製した光・熱硬化性樹脂組成物1700gにメチルエチルケトン300gを加え、攪拌機で15分間攪拌し希釈した。次に希釈した硬化性樹脂組成物をリップコーターを用いてキャリアフィルム(東レ社製ルミラーX53;表面抵抗値=1×10
10Ω)上に塗布し、80℃の温度で15分間乾燥し、厚み20μmの硬化性樹脂層をキャリアフィルム上に形成した。次に硬化性樹脂層上に保護フィルム(ポリプロピレンフィルム)を積層し、積層構造体を得た。
【0095】
(硬化膜を有する基板の作成)
次に、回路形成された基板(500mm×600mm×0.4mmt(厚み))を化学研磨した後、上記方法にて作製した積層構造体の保護フィルムを剥離し、硬化性樹脂層側が基板面に接するように張り合わせ、真空ラミネーター(名機製作所社製MVLP−500)を用いて加圧度:0.8MPa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、硬化性樹脂層を有する基板(未露光の基板)を得た。
【0096】
(露光、現像、硬化)
次に、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて直径80μmのネガパターンを有する露光マスクを介し、硬化性樹脂層に露光した後キャリアフィルムを剥離した。その後30℃の1wt%Na
2CO
3水溶液をスプレー圧2kg/cm
2の条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得た。最後に160℃で60分加熱して硬化膜を得た。硬化膜を有する基板に対して下記の様に評価を行った。
【0097】
(解像性)
80μmの開口の断面をSEMにて観察を行い、解像性を下記のように評価した。
〇:ストレート形状または順テーパー形状
×:アンダーカット形状
【0098】
(外観)
硬化膜の表面の外観について光学顕微鏡を用いて、外観を下記のように評価した。結果を表2に示す。
〇:硬化膜の表面に傷が全く見られない。
×:硬化膜の表面に傷が確認される。
【0099】
(実施例4〜6)
上記実施例1〜3の積層構造体のキャリアフィルムを長岡産業社製NAS−PET(表面抵抗値=1×10
6Ω)に変えた以外は、上記実施例1〜3と同様に積層構造体を得た。その後、実施例1〜3と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0100】
(実施例7〜9)
上記実施例1〜3の積層構造体のキャリアフィルムを東洋紡社製エスペットフィルムT6140(表面抵抗値=1×10
10Ω)に変えた以外は、上記実施例1〜3と同様に積層構造体を得た。その後、実施例1〜3と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0101】
(比較例1〜3)
上記実施例1〜3の積層構造体のキャリアフィルムを東レ社製FB−50(表面抵抗値=1×10
13Ω)に変えた以外は、上記実施例1〜3と同様に積層構造体を得た。その後、実施例1〜3と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0102】
(比較例4〜6)
上記実施例1〜3の積層構造体のキャリアフィルムを東洋紡社製エステルフィルムE5100(表面抵抗値=1×10
13Ω)に変えた以外は、上記実施例1〜3と同様に積層構造体を得た。その後、実施例1〜3と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0103】
実施例4〜9および比較例1〜6の積層構造体を用いて、実施例1〜3と同様に、硬化膜を有する基板を作製し、解像性および外観を評価した。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
下記表3に示す種々の成分と共に表3に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合し、次いで3本ロールミルにて混錬し、(A)硬化性樹脂層用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0106】
【表3】
*7:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製jER828、エポキシ当量184〜194g/eq、液状)
*8:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製jER807、エポキシ当量160〜175g/eq、液状)
*9:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製HP−4032、エポキシ当量135〜165g/eq、半固体)
*10:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製HP−7200L、エポキシ当量250〜280g/eq、軟化点57〜68℃)
*11:フェノールノボラック樹脂(明和化成社製HF−1M)
*12:フェノールノボラック型多官能シアネート樹脂(ロンザジャパン社製PT−30)
*13:活性エステル樹脂(DIC社製HPC−8000)
*14:フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学製FX−293)
*15:コバルト(II)アセチルアセトナート
*16:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製2E4MZ)
*17:4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)
*18:C.I.Pigment Blue 15:3
*19:C.I.Pigment Yellow 147
*20:シリカSiO
2(アドマテックス社製SO−C2)
【0107】
(実施例10〜12)
上記表3で調製した熱硬化性樹脂組成物700gにシクロヘキサノン200gとメチルエチルケトン100gを加え、攪拌機で15分間攪拌し希釈した。次に希釈した熱硬化性樹脂組成物をリップコーターを用いてキャリアフィルム(東レ社製ルミラーX53;表面抵抗値=1×10
10Ω)上に塗布し、90℃の温度で10分間乾燥し、厚み40μmの硬化性樹脂層をキャリアフィルム上に形成した。次に硬化性樹脂層上に保護フィルム(ポリプロピレンフィルム)を積層し、積層構造体を得た。
【0108】
(硬化膜を有する基板の作成)
次に、回路形成された基板(500mm×600mm×0.4mmt(厚み))を化学研磨した後、上記実施例10〜12にて作製した積層構造体の保護フィルムを剥離し、硬化性樹脂層側が基板面に接するように張り合わせ、真空ラミネーター(名機製作所社製MVLP−500)を用いて加圧度:0.5MPa、90℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、硬化性樹脂層を有する基板(未硬化の基板)を得た。
次に熱風循環式乾燥炉にて200℃で60分間加熱して硬化膜を得た。硬化膜を有する基板に対して下記の様に評価を行った。
その後、CO
2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製)を用いてトップ径65μmになるように硬化膜にビア形成を行った後、キャリアフィルムを剥離した。
【0109】
(レーザー加工性)
上記実施例10〜12にて作製した硬化膜のビアの形成状態の確認を、基板の表層部から、光学顕微鏡にて状態観察およびビア底の測長を行い、レーザー加工性を下記のように評価した。結果を表4に示す。
○:表層部からの観察で、ビアの形成が確認された。あわせて、ビア底の直径が45〜55μmであることが確認された。
×:表層部からの観察で、ビアの形成が確認できなかった。
【0110】
(外観)
硬化膜の表面の外観について光学顕微鏡を用いて、外観を下記のように評価した。結果を表4に示す。
〇:硬化膜の表面に傷が全く見られない。
×:硬化膜の表面に傷が確認される。
【0111】
(実施例13〜15)
上記実施例10〜12の積層構造体のキャリアフィルムを長岡産業社製NAS−PET(表面抵抗値=1×10
6Ω)に変えた以外は、上記実施例10〜12と同様に積層構造体を得た。その後、実施例10〜12と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0112】
(実施例16〜18)
上記実施例10〜12の積層構造体のキャリアフィルムを東洋紡社製エスペットフィルムT6140(表面抵抗値=1×10
10Ω)に変えた以外は、上記実施例10〜12と同様に積層構造体を得た。その後、実施例10〜12と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0113】
(比較例7〜9)
上記実施例10〜12の積層構造体のキャリアフィルムを東レ社製FB−50(表面抵抗値=1×10
13Ω)に変えた以外は、上記実施例10〜12と同様に積層構造体を得た。その後、実施例10〜12と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0114】
(比較例10〜12)
上記実施例10〜12の積層構造体のキャリアフィルムを東洋紡社製エステルフィルムE5100(表面抵抗値=1×10
13Ω)に変えた以外は、上記実施例10〜12と同様に積層構造体を得た。その後、実施例10〜12と同様に硬化膜を有する基板を得た。
【0115】
実施例13〜18および比較例7〜12の積層構造体を用いて、実施例10〜12と同様に、硬化膜を有する基板を作製し、解像性および外観を評価した。結果を表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
上記表2および4に示す結果から、実施例1〜18の積層構造体の場合、硬化膜の表面に傷が見られなかった。一方、フィルムの表面抵抗値が10
12Ωよりも大きい比較例1〜12の積層構造体の場合、硬化膜の表面に傷が見られた。
【0118】
また、実施例1〜9の積層構造体は解像性にも優れており、実施例10〜18の積層構造体はレーザー加工性にも優れていた。