(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
25℃における前記染料の水に対する溶解度aと、25℃における前記染料の油性有機溶媒に対する溶解度bとの比a/bが1/10以下である、請求項1に記載の着色粒子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来よりも染料含有量の多い着色粒子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
なお、本発明において、数値範囲を表す「a〜b」等の表記は、a以上、b以下と同義であり、a及びbをその範囲内に含むものとする。
【0008】
<1>染料を含むポリマー粒子よりなる着色粒子であって、染料の含有量が着色粒子1g当たり0.05g以上である着色粒子。
【0009】
<2>25℃における前記染料の水に対する溶解度aと、25℃における前記染料の油性有機溶媒に対する溶解度bとの比a/bが1/10以下である、<1>に記載の着色粒子。
<3>前記染料が、親水性基を実質的に含まない、アゾ系染料及びアントラキノン系染料からなる群より選ばれる少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の着色粒子。
【0010】
<4>個数平均粒子径が0.01μm以上である、<1>〜<3>いずれか1つに記載の着色粒子。
【0011】
<5>水系媒体中において、油性有機溶媒の存在下で、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料によりポリマー粒子を染色する工程を含み、
前記工程において、前記染料の前記油性有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で前記染料を使用する、
着色粒子の製造方法。
【0012】
<6>水系媒体中、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料及び油性有機溶媒を含む微分散された油滴により、ポリマー粒子を染色する工程を含み、
前記工程において、前記染料の前記油性有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で前記染料を使用する、
<5>に記載の着色粒子の製造方法。
【0013】
<7>水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料を油性有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液を、水系媒体中に分散させて染料エマルションを調製する工程(A)と、
前記染料エマルションと、ポリマー粒子とを混合してポリマー粒子を染色する工程(B)と、
を含み、
前記工程(A)において、前記染料の前記油性有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で前記染料を使用する、
<5>又は<6>に記載の着色粒子の製造方法。
【0014】
<8>水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料を油性有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液と、ポリマー粒子と、水系媒体とを混合する工程(C)と、
前記工程(C)で得られた混合液中で前記染料液を微分散させることでポリマー粒子を染色する工程(D)と、
を含み、
前記工程(C)において、前記染料の前記油性有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で前記染料を使用する、
<5>又は<6>に記載の着色粒子の製造方法。
【0015】
<9>前記油性有機溶媒のSolubility Parameters(SP値)が、25℃で20.0[MPa
1/2]以下である、<5>〜<8>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0016】
<10>前記ポリマー粒子100質量部に対する前記染料の量が5質量部以上である、<5>〜<9>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0017】
<11>水系媒体中において、油性有機溶媒の存在下で、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料によりポリマー粒子を染色する工程を2回以上繰り返す工程を含む、
着色粒子の製造方法。
【0018】
<12>水系媒体中、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料及び油性有機溶媒を含む微分散された油滴により、ポリマー粒子を染色する工程(E)と、
水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料及び油性有機溶媒を含む染料液を、該工程(E)で得られた染色されたポリマー粒子を含む水系媒体中に微分散させることで、前記染色されたポリマー粒子をさらに染色する工程(F)と、
を含む、<11>に記載の着色粒子の製造方法。
【0019】
<13>水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料を油性有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液(但し、前記染料の前記油性有機溶媒に対する飽和溶解度の80%未満の量で前記染料を使用する)を、水系媒体中に分散させて染料エマルションを調製する工程(A')と、
前記工程(A')で得られた染料エマルションと、ポリマー粒子とを混合することで、染色されたポリマー粒子を含む分散液を調製する工程(B')と、
水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料を油性有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液を、水系媒体中に分散させて染料エマルションを調製する工程(A'')で得られた染料エマルションと、前記工程(B')で得られた染色されたポリマー粒子を含む分散液とを混合する工程(B'')と
を含む、<11>又は<12>に記載の着色粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来よりも染料含有量の多い着色粒子を容易に得ることができる。また、本発明によれば、染料含有量の多い着色粒子を含むにもかかわらず、粒子同士の凝集が起こりにくく、分散性に優れる着色粒子分散液を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<着色粒子>
本発明の着色粒子は、染料を含むポリマー粒子よりなり、染料の含有量が着色粒子1g当たり0.05g以上であることを特徴とする。このような染料の含有量が多い着色粒子は、通常凝集しやすく、該粒子を分散性よく存在させることは容易ではないと考えられるが、本発明によれば、着色粒子が凝集せずに単分散している着色粒子分散液を得ることができる。
【0022】
このような着色粒子は、ポリマー粒子に対し、染料含有量が多いため、通常は濃色な着色粒子である。通常、このような染料の量が多い粒子は、該染料部分の作用により、粒子同士の凝集が起こりやすく、このような凝集した粒子は、特に、イムノクロマトグラフ法のような被検出物質を目視により判定する方法には不向きであった。しかしながら、本発明の着色粒子は分散性に優れるため、イムノクロマトグラフ法のような被検出物質を目視により判定する方法に用いることができ、特に、染料含有量が多いため、被検出物質を目視判定する際の色調等の変化が明確になることから、目視判定性や検出感度の向上に寄与することとなり、このような用途に好適に用いることができる。
【0023】
本発明の着色粒子は、染料の含有量が着色粒子1g当たり0.05g以上であることを特徴とする。染料の含有量は、多いほどが好ましいが、0.10g以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.20以上がさらに好ましい。
本発明における、着色粒子に含有される染料の含有量は、下記式(1)により算出することができる。染料の量が0.05g未満であると、本発明の着色粒子を、被検出物質の存在を該粒子の色により判別する際に使用する場合、満足する目視判定性や検出感度が得られない傾向にある。
染料の含有量=乾燥質量を測定した着色粒子中の染料量(g)/着色粒子の乾燥質量(g)・・・(1)
染料量の測定方法は実施例に記載の通りである。
【0024】
本発明の着色粒子のSEM画像を用いた画像解析で測定した個数平均粒子径(Mean Number Diameter)は、所望の用途に応じ、適宜選択すればよいが、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1〜100μmであり、さらに好ましくは100〜1000nmである。前記個数平均粒子径は、次の式により算出される。
個数平均粒子径(MN)=Σ(粒子体積(Ni)×粒子径(di))/Σ(Ni)
【0025】
なお、個数平均粒子径はSEMで撮像した任意の粒子3000個についてその最大径を測定し、前記式により算出したものとする。測定方法は、JIS Z 8827−1の5(画像検出)及び6(画像解析)に従い、サンプル粒子数はJIS Z 8827−1附属書A(参考)「平均粒子径の推定に必要なサンプル粒子数に関する研究」に基づいて決定した。
【0026】
着色粒子の粒子径が前記範囲にあると、例えば、該着色粒子をイムノクロマトグラフ用途として使用した際に、該粒子が試験紙上を確実に流れ、かつ十分な検出感度を保持できるため好ましい。
【0027】
着色粒子の粒子径の変動係数(CV値)は20%以下であることが好ましい。20%を超えると、該着色粒子を用いて被検出物質の存在を該粒子の色により判別するための粒子(免疫測定用試薬)を調製する際のロット再現性が悪く、測定の再現性が低下することがある。CV値はより好ましくは15%以下である。前記粒子径の変動係数は、次の式により算出される。
粒子径の変動係数(CV値)=粒子径の標準偏差/個数平均粒子径
なお、粒子径の標準偏差は、SEM画像を用いた画像解析で測定した値である。
【0028】
(染料)
本発明における染料としてはポリマー粒子を着色し得るものであればよく、色調、ポリマー粒子の種類、着色粒子の製造の際に油性有機溶媒を用いる場合には該溶媒の種類などに応じて適宜選択される。
本発明の着色粒子に含まれる染料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0029】
このような染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、バット染料、アゾイック染料、分散染料、水性染料、反応染料などが挙げられる。本発明における染料としては前記いずれの染料でも構わないが、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な油溶性染料が好ましい。油溶性染料を使用することで、着色粒子からの染料の脱落を抑制できる。
【0030】
前記油溶性染料において、25℃における前記染料の水に対する溶解度aと、25℃における前記染料の油性有機溶媒に対する溶解度bとの比a/bは、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/20以下である。この油溶性染料は油性有機溶媒への溶解度が高い染料ほど好ましく、具体的にはトルエン100gに対し0.7g以上溶解する染料が好ましい。
【0031】
油溶性染料としては、化学構造的には、親水性基を実質的に含まない、具体的には、1分子中に−OH、−COOH、−NH
2、−SH、−CONH
2などの親水性基を含まない又は1分子中のこれらの親水性基の数が2個以下であるアゾ系染料及びアントラキノン系染料からなる群より選ばれる少なくとも1種を好ましく使用することができる。具体的にはソルベントレッド、ソルベントブルー、ソルベントイエロー、ソルベントグリーンなどの公知の染料を使用することができる。また、油溶性螢光色素、レーザー色素も前記染料として用いることができる。
【0032】
本発明において用いられる染料は耐熱性の高いものが好ましく、耐熱性が高い場合には染色処理後に油性有機溶媒を除去するために、スチームストリップ法、減圧蒸留法などの温度上昇を伴う手段を有利に利用することができる。一方、耐熱性に優れていない染料を用いる場合は、例えば、下記本発明の製造方法において、染色工程後に多量の水を投入して有機溶媒を徐々に水相へ抽出することにより、ポリマー粒子に含まれる有機溶媒の大部分を除去することができる。その後、同様の操作を複数回にわたって繰り返し、あるいは減圧蒸留などを低温で行うことにより、有機溶媒を除去することができる。
【0033】
(ポリマー粒子)
ポリマー粒子としては、特に制限されず、従来から好ましいものとされているポリマー粒子をそのまま染色処理することができるが、具体的には、例えば、スチレン、スチレンスルホン酸、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの(共)重合体よりなるポリマー粒子を用いることができる。
ポリマー粒子は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0034】
ポリマー粒子としては、カルボキシ基又はスルホン酸(又はその塩の)基を有するポリマー粒子が好ましく、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体、スチレンスルホン酸(又はその塩の)(共)重合体等からなる粒子が好ましい。これらの粒子は、その表面にカルボキシ基やスルホン酸(又はその塩の)基が存在する傾向にある。ポリマー粒子の表面にスルホン酸(又はその塩の)基が存在すると、該基同士の静電的な反発力により、ポリマー粒子の分散安定性が向上すると考えられる。また、ポリマー粒子表面にカルボキシ基が存在する場合には、分散安定性に寄与する一方で、本発明の着色粒子を標識抗体として用いる場合には、カルボキシ基部分は、該着色粒子と抗体との化学結合部位となり得るため好ましい。
【0035】
また、ポリマー粒子は、染色工程及び必要に応じてなされる溶媒除去工程において安定であることが好ましい。このため、例えばポリマー粒子自体がその表面に、カルボキシ基、スルホン酸基などの酸性基による負の電荷を多く有することが好ましい。
【0036】
ポリマー粒子としては、(a)不飽和カルボン酸単量体などの酸性基を有する単量体0〜10質量%と、(b)単量体(a)と共重合可能なその他の単量体90〜100質量%(ただし(a)+(b)=100質量%)とを乳化重合して得られる共重合体ラテックス粒子であることがより好ましく、さらに、前記単量体(b)として芳香族ビニル単量体を、単量体(b)の全量に対し、10〜100質量%の量で用いて得られる共重合体ラテックスであることが望ましい。
【0037】
ポリマー粒子を製造する方法としては、乳化重合法、シード重合法、ソープフリー重合法、懸濁重合法、膨潤重合法などが挙げられる。この際に得られるポリマー粒子の分子量は、特に制限されず、従来より用いられてきたポリマー粒子と同程度の粒子であってもよい。
なお、粒径分布が狭くて粒子形状がより真球に近いポリマー粒子を得るためには、これらの方法で重合した後に、適宜分級などの操作を行うことが好ましい。
【0038】
ポリマー粒子のSEM画像を用いた画像解析で測定した個数平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましい。
本発明の着色粒子を被検出物質の存在を該粒子の色により判別するための粒子(診断薬用着色粒子)として使用する場合、特にクロマトグラフィー用途の場合には、小径な粒子を使用すると、充分な検出感度が得られないことがあるため、個数平均粒子径が100〜1000nmのポリマー粒子が好ましい。
【0039】
<着色粒子の製造方法>
本発明の着色粒子は、具体的には、下記製造方法I〜VIIの方法で製造することができる。このような製造方法によれば、染料の含有量が前記範囲にある着色粒子を容易に製造することができる。これらの中でも、染料含有量の多い着色粒子を容易に製造することができ、かつ、粒子同士の凝集が起こりにくく、分散性に優れる着色粒子分散液を容易に得ることができる等の点から、製造方法III及びIVが好ましく、製造方法IIIがより好ましい。
【0040】
製造方法Iは、水系媒体中において、油性有機溶媒(以下単に「有機溶媒」ともいう。)の存在下で、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶な染料(以下単に「染料」ともいう。)によりポリマー粒子を染色する工程を含み、該工程において、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で該染料を使用することを特徴とする。
製造方法Iとしては、より染料含有量の多い着色粒子を容易に製造することができる等の点から、下記製造方法IIが好ましく、下記製造方法IIIまたはIVがより好ましく、下記製造方法IIIが特に好ましい。
【0041】
製造方法IIは、水系媒体中、染料及び有機溶媒を含む微分散された油滴により、ポリマー粒子を前記染料により染色する工程(Z)を含み、該工程(Z)において、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で該染料を使用することを特徴とする。
【0042】
製造方法IIIは、染料を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液を、水系媒体中に分散させて染料エマルションを調製する工程(A)と、前記染料エマルションと、ポリマー粒子とを混合してポリマー粒子を染色する工程(B)と、を含み、前記工程(A)において、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で該染料を使用することを特徴とする。
【0043】
製造方法IVは、染料を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液と、ポリマー粒子と、水系媒体とを混合する工程(C)と、前記工程(C)で得られた混合液中で前記染料液を微分散させることでポリマー粒子を染色する工程(D)と、を含み、前記工程(C)において、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で該染料を使用することを特徴とする。
【0044】
製造方法Vは、水系媒体中において、有機溶媒の存在下で、染料によりポリマー粒子を染色する工程を2回以上繰り返す工程を含むことを特徴とする。
製造方法Vとしては、より染料含有量の多い着色粒子を容易に製造することができる等の点から、下記製造方法VIが好ましく、下記製造方法VIIがより好ましい。
【0045】
製造方法VIは、水系媒体中、染料及び有機溶媒を含む微分散された油滴により、ポリマー粒子を前記染料により染色する工程(E)と、染料及び有機溶媒を含む染料液を、該工程(E)で得られた染色されたポリマー粒子を含む水系媒体中に微分散させることで、前記染色されたポリマー粒子を前記染料によりさらに染色する工程(F)とを含むことを特徴とする。
【0046】
製造方法VIIは、染料を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液(但し、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%未満の量で該染料を使用する)を、水系媒体中に分散させて染料エマルションを調製する工程(A')と、前記工程(A')で得られた染料エマルションと、ポリマー粒子とを混合することで、染色されたポリマー粒子を含む分散液を調製する工程(B')と、染料を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液を、水系媒体中に分散させて染料エマルションを調製する工程(A'')で得られた染料エマルションと、前記工程(B')で得られた染色されたポリマー粒子を含む分散液とを混合する工程(B'')とを含むことを特徴とする。
【0047】
なお、製造方法I〜VIIは、前記工程以外の他の工程を含んでもよく、特に制限されないが、このような工程として、例えば、染色中又は染色後に有機溶媒を除去する工程や、染色後や該有機溶媒を除去する工程で得られた液中の、着色粒子に含まれていない染料などの成分を除去する工程等を行うことが好ましい。
【0048】
製造方法I〜VIIでは、染色の際に、ポリマー粒子の粒子径は基本的にほとんど変化しない。
【0049】
・製造方法I
製造方法Iは、特に制限されないが、具体的には、水系媒体中に有機溶媒及び染料が分散した状態でポリマー粒子を染色する工程を含むことが好ましい。
製造方法I〜IVでは、より染料含有量の多い着色粒子を得ることを目的として、前記工程を2回以上繰り返してもよい。ただし、前記製造方法I〜IVによれば、十分に染料含有量の多い着色粒子を得ることができるため、分散性に優れる着色粒子分散液を製造する点からすれば、前記工程を2回以上繰り返さないことが好ましい。
【0050】
製造方法I〜IVは、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で該染料を使用することに特徴があり、好ましくは90%以上、さらに好ましくは飽和溶解度以上、特に好ましくは飽和溶解度を超える量で前記染料を使用することが望ましい。より好ましくは、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%〜2000%、さらに好ましくは90%〜1000%、さらに好ましくは100%〜800%、特に好ましくは101%〜600%となる量で前記染料を使用する。
【0051】
従来は、着色粒子を製造する際に、染料を多量、具体的には、溶解する溶媒に対する飽和溶解度の80%以上となる量で用いても、得られる着色粒子中の染料の量が増えるわけではなく、また、得られる着色粒子の凝集が起こるであろうことは、当業者であれば容易に理解できたため、コストの点からも、染料を溶解する溶媒に対する飽和溶解度の80%以上となる量で用いることは行われてこなかった。
【0052】
製造方法I〜VIIにおいて、ポリマー粒子の使用量は、通常、水系媒体1リットルあたり10〜500g、好ましくは10〜400gである。下記ポリマー粒子分散液1リットルあたりのポリマー粒子の濃度も、この範囲にあることが好ましい。
有機溶媒の使用量は、通常、ポリマー粒子100gあたり25〜1000g、好ましくは50〜500gである。
ポリマー粒子100質量部に対する染料の量は、5質量部以上となる範囲が好ましく、より好ましくは5〜60質量部である。
【0053】
・製造方法II
製造方法IIでは、染料含有量の多い着色粒子を含む、分散性に優れる着色粒子分散液を容易に得ることができる等の点から、染料及び有機溶媒を含む染料液を、ポリマー粒子を含む水系媒体中に微分散させることが好ましい。
染料液が微分散された油滴を調製しながら、ポリマー粒子を染色してもよいし、染料液が微分散された油滴を調製した後に、ポリマー粒子を添加して染色してもよい。
【0054】
本発明において、染料液(染料+有機溶媒)を微分散させる方法やエマルションを調製する方法としては、スターラー等の従来公知の撹拌手段で撹拌する方法であってもよいが、下記平均粒子径を有する、微分散状態の染料液(染料+有機溶媒)やエマルション中の油滴(染料+有機溶媒)が得られる等の点から、超音波を照射する方法や、高圧ホモジナイザー等の乳化機を用いた機械的せん断力をかける方法などが好ましく、超音波を照射する方法がより好ましい。
【0055】
本発明において、微分散状態の染料液(染料+有機溶媒)やエマルション中の油滴(染料+有機溶媒)の平均粒子径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは0.001μm〜2μmであり、さらに好ましくは0.01μm〜1μmであり、特に好ましくは0.01μm〜0.5μmである。
なお、本発明における微分散とは、例えば、分散質の平均粒子径が前記範囲にあることを言う。
【0056】
前記微分散状態の染料液(染料+有機溶媒)やエマルション中の油滴(染料+有機溶媒)の平均粒子径は、電気的検知帯法による粒度分布測定装置(商品名:Multisizer4e、ベックマン・コールター社製)を用いて、アパチャー径:10μmの条件下で測定を行い、微分散された油滴を含む水系媒体やエマルションの体積から求める。具体的な測定手順としては、前記微分散された油滴を含む水系媒体やエマルションをビーカーに入れ、Multisizer4eの適正濃度に到達するまで蒸留水で希釈した後、25℃の温度条件で測定し、測定方法は、JIS Z 8832「粒子径分布測定方法−電気的検知帯法」に基づいて決定する。
【0057】
また、製造方法II〜IV及びVI〜VIIでは、微分散状態の染料液(染料+有機溶媒)やエマルション中に微分散する油滴(染料+有機溶媒)の平均粒子径を例えば0.01μm以下に小さくすることも可能であるため、粒子径の小さいポリマー粒子を用いた場合であっても十分な量の染料を含む粒子を得ることができる。従って、製造方法II〜IV及びVI〜VIIによれば、従来の方法では製造することが困難であった、粒子径が非常に小さいポリマー粒子でありながら、十分な量の染料を含む粒子をも、容易に製造することができる。さらに、有機溶媒として、ポリマー粒子を膨潤させ得る溶媒を選択することにより、ポリマー粒子として、高度に架橋された分子量の大きいポリマーの粒子を用いた場合にも、染料含有量の多い着色粒子を得ることができる。
【0058】
・製造方法III
製造方法IIIでは、前記染料を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液を、通常は界面活性剤及び/又は分散安定剤の存在下において、水系媒体中に分散、好ましくは前記油滴の平均粒子径まで微分散させることにより染料エマルションを調製し、この染料エマルションを、染色すべきポリマー粒子と、好ましくは染色すべきポリマー粒子を水系媒体に分散させたポリマー粒子分散液と混合し、必要に応じてこの混合系から有機溶媒を除去することでポリマー粒子を染色する。
【0059】
製造方法III及びVIIでは、前記染料液を調製する際に、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で染料を使用し、好ましくは、前述の量で染料を使用する。
このような量で染料を使用した場合には、染料の一部が有機溶媒に溶解せずに、染料液中に分散した状態で存在する場合があると考えられる。かかる染料の分散物を含む染料液を使用して染料エマルションを調製することで、従来よりも高濃度の染料を含有する着色粒子を製造することができる。また、高濃度の染料を使用した場合であっても、着色粒子を凝集させることなく染色することができる。
【0060】
製造方法III及びVIIでは、染料エマルションが、ポリマー粒子と混合されることにより、更に粒子径の小さな染料エマルションとなって、その染料液がポリマー粒子に衝突し、特に、ポリマー粒子を膨潤させ、又は一部溶解する有機溶媒を用いる場合には、この有機溶媒によってポリマー粒子が膨潤又は一部溶解し、その結果、染料液中の染料が分子単位に近い形でポリマー粒子中に均一に拡散し、これにより、当該ポリマー粒子が染料によって染色されるものと推定される。
【0061】
製造方法III及びVIIによれば、ポリマー粒子と染料エマルションとが混合されるが、このように、染料をポリマー粒子に接触させる際に、染料エマルションを使用することで、染料エマルションの油滴(染料液)は表面積が非常に大きくなるため、該染料液とポリマー粒子との接触機会が増えると推測される。このため、製造方法III及びVIIによれば、染料含有量の多い着色粒子を容易に得ることができる。
【0062】
また、製造方法III及びVIIでは、染料を染料エマルションとしてポリマー粒子と混合するため、使用する染料がそれ自体は親油性のものであっても、混合によってポリマー粒子が不安定化して凝集することが起こりにくく、従って、染色工程の際に、ポリマー粒子の粒子径及びその分布状態が基本的に変化し難い。
【0063】
製造方法I〜VIIで用いられる染料には、水に不溶性でかつ有機溶媒に可溶性であること以外の他の特性は制限されない。この染料に求められる特性は、通常、多くの染料が有する特性であるため、製造方法I〜VIIでは、様々な種類の染料を用いることができ、所望の用途に応じて所望の染料を用いることができる。そして、前記染料は水に不溶性であるので、得られる着色粒子から、染料が水系媒体中へ溶出することが少ない。
また、製造方法III及びVIIでは、染料エマルションや染料エマルションとポリマー粒子との混合系において、染料が水系媒体中へ溶出することが少ない。従って、染料による染色効率が高い上、多くの染料がポリマー粒子に付着しても、該粒子の分散状態はあまり変化しないため、十分な量の染料を含む着色粒子を得ることができ、該粒子が凝集せずに分散状態で安定に存在している分散液を得ることができる。
【0064】
製造方法III及びVIIにおいて、染料エマルションと、ポリマー粒子との混合割合は、ポリマー粒子100質量部に対し染料仕込み量が5質量部以上となる範囲が好ましく、より好ましくは5〜60質量部である。ポリマー粒子分散液(または染色されたポリマー粒子を含む分散液)の使用量は、通常、染料エマルション1リットルあたり0.1〜5リットルである。
【0065】
・製造方法IV
製造方法IVにおける工程(C)としては、特に制限されないが、より染料含有量の多い着色粒子を得ることができる等の点から、染料を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる染料液と水系媒体とを混合することで得られる混合液と、ポリマー粒子と、水系媒体とを混合する工程であることが好ましく、該混合液と、ポリマー粒子を水系媒体に分散させたポリマー粒子分散液とを混合する工程であることがより好ましい。
【0066】
・製造方法V
製造方法Vでは、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で染料を使用してもよいし、該飽和溶解度の80%未満の量で染料を使用してもよい。製造方法Vは、染料の使用量が制限されないこと以外は、前記製造方法Iを2回以上、好ましくは2〜4回程度繰り返す工程であればよい。
【0067】
・製造方法VI
製造方法VIにおける工程(E)及び(F)では、前記染料の前記有機溶媒に対する飽和溶解度の80%以上の量で染料を使用してもよいし、該飽和溶解度の80%未満の量で染料を使用してもよい。すなわち、該工程(E)は、染料の使用量が制限されないこと以外は、製造方法IIにおける工程(Z)と同様の工程であり、該工程(F)は、染料の使用量が制限されないことと、ポリマー粒子を含む水系媒体の代わりに、染色後のポリマー粒子を含む水系媒体を用いること以外は、製造方法IIにおける工程(Z)と同様の工程である。
なお、製造方法VIでは、前記工程(F)の後、該工程(F)と同様の工程を2〜4回程度繰り返してもよい。
【0068】
・製造方法VII
製造方法VIIにおける工程(A')は、染料の使用量が異なる以外は、製造方法IIIにおける工程(A)と同様の方法である。また、前記工程(A'')は、前記工程(A)と同様の工程であってもよく、前記工程(A')と同様の工程であってもよい。
前記工程(B')は、用いる染料エマルションが異なる以外は、製造方法IIIにおける工程(B)と同様の方法である。また、前記工程(B'')は、用いる粒子の分散液(場合によっては染料エマルションも)が異なる以外は、前記工程(B)と同様の方法である。
なお、製造方法VIIでは、前記工程(B'')の後、該工程(B'')と同様の工程を2〜4回程度繰り返してもよい。
【0069】
製造方法I〜VIIは、用いる材料、得られる分散液や着色粒子の用途等に応じて、加温や窒素などの雰囲気等の下で行ってもよいが、通常、室温、空気中で行えばよい。
なお、製造方法I〜VIIの各工程における混合の際の、混合の順番や混合条件などは特に制限されない。
【0070】
〈有機溶媒〉
前記有機溶媒は、染色すべきポリマー粒子を膨潤させ、あるいは一部溶解する溶媒であることが好ましい。この有機溶媒は、水に対する溶解度が5質量%以下であることが好ましく、このような溶媒を用いることにより、該溶媒を含む染料液を微分散化又はエマルション化することが容易となり、安定した微分散体又はエマルションを得ることができる。このような有機溶媒としては、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、エチルベンゼン、塩化メチレン、キシレン、メチルシクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、トリクロロエチレン、クロルベンゼンなどを例示することができ、ビニルトルエン、メチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、スチレン、ブチルアクリレートを使用することもできる。
有機溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0071】
有機溶媒としては、好ましくはSolubility Parameters(SP値)が、25℃で20.0[MPa
1/2]以下である有機溶媒が好ましく、より好ましくは14.5〜19.5[MPa
1/2]である。好ましい有機溶媒としては、例えばメチルシクロヘキサン(SP値16.0[MPa
1/2])、メチルイソブチルケトン(SP値17.0[MPa
1/2])、キシレン(SP値18.0[MPa
1/2])、トルエン(SP値18.2[MPa
1/2])、クロロホルム(SP値19.0[MPa
1/2])などが挙げられる。
【0072】
〈水系媒体〉
水系媒体としては、例えば水、各種の緩衝溶液などを挙げることができ、少なくとも50質量%以上を水が占める媒体を指す。
染料と有機溶媒の合計(染料液)に対する水系媒体の使用量は、染料と有機溶媒の合計(染料液)1リットルあたり0.5〜10リットルが好ましい。
【0073】
前記染料及び有機溶媒(染料液)は、通常は界面活性剤及び/又は分散安定剤の存在下において、水系媒体中に分散される。
界面活性剤及び/又は分散安定剤を用いる場合、界面活性剤及び/又は分散安定剤と水系媒体との混合物に染料及び有機溶媒(染料液)を加えて分散させることが好ましいが、界面活性剤及び/又は分散安定剤を予め染料及び有機溶媒(染料液)に混合したものを水系媒体に分散させてもよい。
【0074】
ここで使用される界面活性剤及び/又は分散安定剤は、染色されるポリマー粒子に悪影響を与えなければ特に限定されない。界面活性剤及び/又は分散安定剤は、乳化力あるいは分散安定化能が大きいものが好ましく、また、例えば遠心分離などによる洗浄操作によってポリマー粒子の表面から容易に除去されるものが好ましい。
【0075】
界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を挙げることができ、ソディウムドデシルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレートなどを好ましいものとして挙げることができる。また、分散安定剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールメチルセルロースなどの水溶性高分子物質を挙げることができる。
界面活性剤及び分散安定剤は、それぞれ1種でもよく、2種以上でもよい。
【0076】
界面活性剤及び/又は分散安定剤の使用量は、通常、水系媒体1リットルあたり0.5〜20gである。
【0077】
なお、水系媒体中におけるポリマー粒子自体の安定性が著しく低い場合には、界面活性剤及び/又は分散安定剤を用いることにより、ポリマー粒子を安定して分散させることができる。
【0078】
(着色粒子の用途等)
本発明の着色粒子は、表面に抗原(又は抗体)を結合することにより、抗原−抗体反応を利用した酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、ラテックス凝集法、イムノクロマトグラフ法等の生物学的反応を利用した種々の方法に好適に用いることができる。
【0079】
前記着色粒子の表面に抗原(又は抗体)を結合させる方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、抗原(又は抗体)を含む緩衝液中に着色粒子を浸漬させ、一定温度で一定時間インキュベートするなどの物理吸着による結合方法や、化学吸着による結合方法が挙げられる。中でも、カルボキシ基を有する着色粒子とアミノ基を有する抗原(又は抗体)とを用い、着色粒子のカルボキシ基と抗原(又は抗体)の含有するアミノ基を架橋させ、結合させる化学吸着がより好ましい。
【0080】
本発明によれば、充分な量の染料を含む着色粒子を作製できることにより、着色粒子を、被検出物質の存在を該粒子の色により判別する際の粒子として使用した場合、目視判定性が格段に向上し、検出感度を向上させることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例における「部」は、特に制限のない限り「質量部」を意味する。また、下記表1中の着色粒子製造原料の欄の数値も「質量部」を示す。
【0082】
[実施例1]
油溶性染料「KP PLAST Blue BR」(紀和化学工業(株)製:CI Solvent Blue 35)(25℃±2℃でのトルエンへの溶解度4.7g/100ml)48部をトルエン240部へ分散させて染料液を調製した。一方、Sodium Dodecyl Sulfate(以下「SDS」ともいう。)2部を水200部に溶解し、これを水系媒体(1%SDS水溶液)としてこれに前記染料液を加え、撹拌しながら10分間超音波を照射することにより、染料エマルションを調製した。得られた染料エマルション490部とポリスチレン粒子分散液[固形分30.8質量%、ポリスチレン粒子の個数平均粒子径0.43μm、分散媒:水]324.68部とを混合し、撹拌することにより染色処理を行った。
【0083】
この染色処理後の液から、スチームストリッピング法によりトルエンを除去し、その後、遠心精製法により粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、純水を加え再分散させた。この操作(遠心精製と再分散)を上澄みの着色がなくなるまで繰り返した。上澄みの着色がなくなった後、純水を加え全固形分が10体積%となるように調整し、青色に染色された着色粒子1を含む分散液を得た。得られた分散液中の着色粒子は凝集していなかった。この着色粒子2についてその色調及び染料含有量を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
油溶性染料「KP PLAST Blue BR」24部を、該染料の量がその飽和溶解度を超える量となるようにトルエン240部に分散させて染料液を調製する操作に変更し、得られた染料エマルション466部とポリスチレン粒子分散液324.68部とを混合した以外は実施例1と同様の処理を行って、着色粒子2を含む分散液を得た。得られた分散液中の着色粒子は凝集していなかった。この着色粒子2についてその色調及び染料含有量を表1に示す。
【0085】
[実施例3]
油溶性染料「KP PLAST Blue BR」15部を、該染料の量がその飽和溶解度を超える量となるようにトルエン240部に分散させて染料液を調製する操作に変更し、得られた染料エマルション457部とポリスチレン粒子分散液324.68部とを混合した以外は実施例1と同様の処理を行って、着色粒子3を含む分散液を得た。得られた分散液中の着色粒子は凝集していなかった。この着色粒子3についての色調及び染料含有量を表1に示す。
【0086】
[実施例4]
油溶性染料「KP PLAST Blue BR」5部を、該染料の量がその飽和溶解度の80%未満の量となるようにトルエン240部に溶解させて染料液を調製する操作に変更し、得られた染料エマルション447部とポリスチレン粒子分散液324.68部とを混合した以外は実施例1と同様の処理を行って、着色粒子4を含む分散液を得た。その後、該着色粒子4の作成に用いた染料エマルションと同様の染料エマルション447部と、着色粒子4を含む分散液[固形分10質量%]1000部とを混合することで混合液を得た。実施例1における染料エマルションとポリスチレン粒子分散液との混合液の代わりに、得られた混合液を用いた以外は実施例1と同様の処理を行って、着色粒子5を含む分散液を得た。着色粒子5の染料含有量は着色粒子4よりは多いが、ポリスチレン粒子が有機溶媒(トルエン)に曝される時間が長くなったために、いくつかの粒子の融着が確認された。この着色粒子5についての色調及び染料含有量を表1に示す。
【0087】
[実施例5]
実施例4と同様の方法で得られた染料エマルション447部と実施例4で得た着色粒子5を含む分散液[固形分10質量%]1000部とを混合することで混合液を得た。実施例1における染料エマルションとポリスチレン粒子分散液との混合液の代わりに、得られた混合液を用いた以外は実施例1と同様の処理を行って、着色粒子6を含む分散液を得た。着色粒子6は、着色粒子5よりも染料含有量は多いが、実施例1で得られた着色粒子1と比較すると色調は薄かった。
なお、実施例5では、実施例4よりもポリスチレン粒子が有機溶媒(トルエン)に曝される時間が長くなったために、着色粒子5よりも多粒子の融着が確認された。この着色粒子6についての色調及び染料含有量を表1に示す。
【0088】
[実施例6]
実施例1と同様の方法で染料液及び水系媒体を調製し、これらを混合した後、得られた混合液と実施例1と同様のポリスチレン粒子分散液324.68部と混合し、撹拌しながら10分間超音波を照射することにより、染料液の微分散化及び染色処理を同時に行った。染色処理後の工程は実施例1と同様の処理を行って、着色粒子7を含む分散液を得た。得られた分散液中の着色粒子は凝集していなかった。この着色粒子7についてその色調及び染料含有量を表1に示す。
【0089】
[比較例1]
油溶性染料「KP PLAST Blue BR」5部を、該染料の量がその飽和溶解度の80%未満の量となるようにトルエン240部に溶解させて染料液を調製する操作に変更し、得られた染料エマルション447部とポリスチレン粒子分散液324.68部とを混合した以外は実施例1と同様の処理を行って、着色粒子4を含む分散液を得た。得られた着色粒子4は着色粒子1と比較して薄い青色となった。この着色粒子4の色調及び染料含有量を表1に示す。
【0090】
[比較例2]
油溶性染料「OIL GREEN 502」(オリエント化学工業(株)製)111部をメタノール17667部に分散させ、45℃で一晩撹拌し、濾過することで、飽和溶解度以上の染料を含む染料液を得た。ポリスチレン粒子分散液[固形分30.8質量%、ポリスチレン粒子の個数平均粒子径0.43μm、分散媒:水]を乾燥質量が100部となるよう秤量し、該分散液中のポリスチレン粒子を遠心分離機により沈降させた。沈降させたポリスチレン粒子を前記染料液に加え、超音波処理で再分散させて水からメタノールへと溶媒置換しようと試みた。しかし、この方法では、溶媒置換の途中で染料が凝集し、着色粒子を得ることはできなかった。
【0091】
[試験例1:色調の測定方法]
着色粒子の色調Lab値の測定には、非接触色彩色差計CR241(コニカミノルタ(株)製)を用いた。Lab値は国際照明委員会(CIE)で規格化されており、人間の目の非線形な反応を擬似して、知覚される色を明度・色相・彩度の3要素で示す表色系である。測定方法は、色彩色差計の白色校正を行い、焦点を合わせたのち、スライドガラスに作製した着色粒子を含む分散液(全固形分:10体積%)を10μl載せて迅速にLab測定を行った。測定データのL値は色の明度の指標であり、L=0は黒、L=100は白の拡散色を表す。そのため、L=0に近づくほど着色粒子が濃色であることを示す。表1において、着色粒子の色調を評価した記号は以下の基準による。
◎:非常に濃色、L値≦10.0
○:十分に濃色、10.0<L値≦20.0
△:濃色、20.0<L値≦30.0
×:淡色、30.0<L値
【0092】
[試験例2:着色粒子の染料含有量の測定]
得られた着色粒子中の染料含有量を算出するために、UV/VIS Spectrophotometer V−550(日本分光(株)製)を用いて、着色粒子の吸光度を以下の方法で測定した。測定の際は、着色粒子に含有されている染料及びポリマー粒子(ポリスチレン粒子)の良溶媒を使用した。
【0093】
まず、着色粒子の作製に用いた油溶性染料を、前記良溶媒に溶解し、希釈することで、濃度の異なる油溶性染料溶液の標準溶液列を作製した。次に、固形分濃度が既知の着色前ポリマー粒子(ポリスチレン粒子)を該良溶媒に溶解させ、着色前ポリマー粒子溶液を得た。油溶性染料溶液の標準溶液列及び着色前ポリマー粒子溶液それぞれの吸光度を、UV/VIS Spectrophotometerを用いて測定した。油溶性染料溶液の濃度と吸収スペクトルのピークトップにおける吸光度との関係から検量線を作成した。その後、前記実施例及び比較例で得られた分散液から着色粒子を所定量量り取り、これを前記良溶媒に溶解させ、得られた着色粒子溶液の吸光度をUV/VIS Spectrophotometerを用いて測定した。この測定により得られた吸光度から、着色前ポリマー粒子溶液の吸光度を差し引いた後、作製した検量線を用いて着色粒子中の染料含有量を算出した。
【0094】
【表1】