(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の遊動ギアが、前記首振り機構の旋回にともなって、一方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合って前記扉を開方向に移動させる正回転動力伝達位置と、他方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合って前記扉を閉方向に移動させる逆回転動力伝達位置と、前記一対の遊動ギアいずれもが前記扉側ギアに噛み合わない動力非伝達位置との間を移動することを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫用扉開閉機構。
前記首振り機構の旋回を規制して、各遊動ギアをいずれも前記扉側ギアに噛み合わせずに前記動力非伝達状態を保つ動力非伝達状態保持機構をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の冷蔵庫用扉開閉機構。
前記複数の駆動ギアが、前記扉の開閉と連動して回転する扉側ギアと、前記モータと連動して回転するモータ側ギアと、前記モータ側ギアに接続されたセンターギアと、前記センターギアに噛み合うとともに、所定の相対位置を保つ一対の遊動ギアとを有しており、
前記センターギアの正回転又は逆回転に連動して、前記センターギアの回転軸を中心に前記一対の遊動ギアとともに旋回する首振り機構をさらに具備し、
前記首振り機構の旋回にともない、前記一対の遊動ギアが、一方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合う正回転動力伝達位置と、他方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合う逆回転動力伝達位置と、前記一対の遊動ギアいずれもが前記扉側ギアに噛み合わない動力非伝達位置との間で移動することを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫用扉開閉機構。
前記首振り機構による前記一対の遊動ギアの動きを規制して、各遊動ギアのいずれもが前記扉側ギアに噛み合わない動力非伝達状態にする動力非伝達状態保持機構とを具備することを特徴とする請求項7記載の冷蔵庫用扉開閉機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明は、問題点を解決すべくなされたものであって、扉と筐体との着磁を外すために必要なモータのトルクを低減させることのできる冷蔵庫用扉開閉機構を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本願発明に係る冷蔵庫用扉開閉機構は、扉を開閉するための動力を出力するモータと、前記モータの動力を複数のギアの回転によってヒンジに伝達する動力伝達機構と、閉塞位置にある扉を開方向に移動させるための補助力を発生させる補助機構とを具備し、前記モータの動力が前記動力伝達機構を介して前記ヒンジに伝達されるまえに、前記モータの動力によって前記補助機構に前記補助力を発生させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
このような冷蔵庫用扉開閉機構であれば、モータの動力がヒンジに伝達されない状態において、閉塞位置にある扉を補助力によって開方向に移動させるので、扉と筐体との着磁を外すために必要なモータのトルクを低減させることができ、モータの小型化を図れる。
【0009】
前記モータの動力を前記ヒンジに伝達する動力伝達状態と、前記モータの動力を前記ヒンジに伝達させない動力非伝達状態との間を移り変わる動力伝達状態遷移機構をさらに具備することが好ましい。
このような機構を用いることで、スイッチング素子などの電気的な接続を用いることなく、機械的に動力伝達状態を遷移させることができる。
【0010】
具体的な実施態様としては、前記複数の駆動ギアが、前記扉の開閉と連動して回転する扉側ギアと、前記モータと連動して回転するモータ側ギアと、前記モータ側ギアに接続されたセンターギアと、前記センターギアに噛み合うとともに、所定の相対位置を保つ一対の遊動ギアとを有しており、前記動力伝達状態遷移機構が、前記センターギアの正回転又は逆回転に連動して、前記センターギアの回転軸を中心に前記一対の遊動ギアとともに旋回する首振り機構を有している構成が挙げられる。
【0011】
具体的な動作としては、前記一対の遊動ギアが、前記首振り機構の旋回にともなって、一方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合って前記扉を開方向に移動させる正回転動力伝達位置と、他方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合って前記扉を閉方向に移動させる逆回転動力伝達位置と、前記一対の遊動ギアいずれもが前記扉側ギアに噛み合わない動力非伝達位置との間を移動する態様が考えられる。
【0012】
上述した構成であれば、首振り機構によって、一対の遊動ギアをセンターギアの回転軸と垂直な平面に沿って動かすことで、一対の遊動ギアを動力伝達位置と動力非伝達位置との間で移動させることができるので、ギアを高さ方向に動かすクラッチ機構などは不要であり、動力伝達機構を高さ方向にコンパクトにすることができる。
一方、上述した本願発明に係る動力伝達機構によれば、センターギアの回転に連動して一対の遊動ギアが動くので、モータの動力で一対の遊動ギアを動かすことができ、動力伝達状態と動力非伝達状態とを切り替えるための専用のアクチュエータを不要にすることができる。
【0013】
ここで、センターギアの回転に連動して一対の遊動ギアが動く原理について説明する。
モータの動力でセンターギアが回転すると、各遊動ギアには、センターギアとの噛み合っている部分を介して、接線方向の力が加わる。この接線方向の力により、一対の遊動ギアには、センターギアを中心に旋回しようとするトルクが生じ、これにより、一対の遊動ギアはセンターギアの回転軸と垂直な平面に沿って動くようになる。
【0014】
そこで、閉塞位置にある扉を開方向に移動させる場合に、補助力によって扉と筐体との着磁を外すまえに遊動ギアが扉側ギアに噛み合ってしまうことを防ぐためには、冷蔵庫用扉開閉機構が、前記首振り機構の旋回を規制して、各遊動ギアをいずれも前記扉側ギアに噛み合わせずに前記動力非伝達状態を保つ動力非伝達状態保持機構をさらに具備することが好ましい。
【0015】
具体的実施態様としては、前記動力非伝達状態保持機構が、前記取付部材に設けられて前記取付部材とともに回転する当接部と、前記取付部材の回転に伴って前記一対の遊動ギアが前記正回転動力伝達位置に向かう場合に、前記一対の遊動ギアが前記正回転動力伝達位置に到達するまえに前記当接部が当接して前記首振り機構の旋回を規制する被当接部とを有している構成が挙げられる。
【0016】
前記首振り機構は、前記遊動ギアが取り付けられるとともに、前記センターギアの回転軸を中心に回転する取付部材と、前記取付部材と前記遊動ギアとの間に介在するとともに、前記各遊動ギアの回転に負荷を与える回転負荷部材とを有していることが好ましい。
これならば、回転負荷部材が、各遊動ギアを回転しにくくするので、センターギアの回転により一対の遊動ギアに生じる前記トルクが増大し、一対の遊動ギアを前記平面に沿って動かしやすくすることができる。
【0017】
前記補助機構の具体的実施態様としては、前記扉の上部に設けられ、前記駆動ギアの回転に連動してスライド可能なスライド部材と、前記スライド部材のスライド移動に連動して所定の回転軸周りに回転可能に設けられ、当該回転軸周りに回転することにより筐体に接触して、前記補助力を前記扉に与える補助力付与部材とを有している構成が挙げられる。
【0018】
モータの動力を補助機構に伝達して補助力を発生させるためには、前記補助機構と前記動力伝達機構との間に介在して、前記駆動ギアの回転方向の動力を、前記補助機構を動かす動力に変換する動力変換機構を具備することが好ましい。
【0019】
前記動力変換機構の具体的実施態様としては、前記モータが逆回転して前記扉を閉方向に移動させる場合には、前記モータの動力を前記補助機構に伝達させることなく、前記モータが正回転して前記扉を開方向に移動させる場合には、前記モータの動力を前記補助機構に伝達させるラチェット機構を備えている構成が挙げられる。
このような構成であれば、ラチェット機構を利用しているので、閉塞位置にある扉を開方向に移動させる場合には補助力を発生させるようにしつつ、扉を閉方向に移動させる場合には動力変換機構によって扉の移動が妨げられないようにすることができる。
【0020】
前記ラチェット機構の具体的実施態様としては、前記スライド部材に取り付けられたラチェットと、前記駆動ギアに連動して回転する押圧部とを有し、前記モータが正回転する場合には、前記押圧部が前記ラチェットに接触して押圧することで前記スライド部材がスライド移動し、前記モータが逆回転する場合には、前記押圧部が接触したときに前記ラチェットが逃避することで、前記スライド部材がスライド移動しない構成が挙げられる。
【0021】
前記ラチェットが、上述の被当接部を有し、前記扉が閉塞位置にある状態において前記モータが正回転すると、上述の当接部が前記被当接部に当接して前記首振り機構の旋回が規制され、その後、前記押圧部が前記ラチェットを押圧することで、前記スライド部材がスライド移動して前記扉が前記補助力によって開方向に移動するように構成されていることが好ましい。
このようなものであれば、モータの動力がヒンジに伝達されるまえに補助力を発生させる構成として上述のラチェット機構を利用することができ、構成を複雑にすることなく動力非伝達状態において着磁を外すことができる。
【0022】
扉を開方向に移動させる場合に補助機構を構成するスライド部材などがユーザから見えてしまうと見栄えが悪い。
そこで、前記補助機構が、前記押圧部が前記ラチェットを押圧することで移動した前記スライド部材を引き戻す引戻部材を有し、前記ラチェットが、前記引戻部材によって前記スライド部材が引き戻される際に、前記当接部により押圧される被押圧面を有し、前記当接部が前記被押圧面を押圧することにより、前記ラチェットが前記押圧部から離間する向きに動き、その後、前記押圧部が前記ラチェットに干渉することなく回転することが好ましい。
このような構成であれば、扉と筐体との着磁を外したあと、スライド部材をもとの状態に戻すことができるうえ、押圧部が戻ったスライド部と干渉することなく回転するので、スライド部材をユーザから見えないようにすることができ、外観性を向上することができる。
【0023】
また、本願発明に係る冷蔵庫用扉開閉機構は、冷蔵庫の扉を開閉するためのものであって、モータと、前記モータに連動して回転する複数の駆動ギアと、前記扉を回転可能に支持するヒンジのヒンジ軸に取り付けられ、当該ヒンジ軸を中心に回転する欠歯ギアと、前記欠歯ギアを、前記扉の開閉移動に連動させて、前記駆動ギアと接触する接触位置及び前記駆動ギアと非接触な非接触位置の間で回転移動させる欠歯ギア回転機構と、閉塞位置にある扉を開方向に移動させるための補助力を発生させる補助機構とを具備し、前記欠歯ギア回転機構によって、前記扉が前記閉塞位置にある状態において前記欠歯ギアを前記非接触位置に保持し、前記閉塞位置にある扉が前記補助力によって開方向へ移動すると、この移動に連動して、前記欠歯ギアを前記非接触位置から前記接触位置へ回転移動させることを特徴とするものである。
【0024】
このように構成された冷蔵庫用扉開閉機構であれば、補助機構が補助力を発生させる際に、欠歯ギア回転機構が、欠歯ギアを前記非接触位置に保持しているので、駆動ギアと欠歯ギアとが噛み合っていない状態で扉と筐体との着磁を外すことができ、着磁を外すために必要なトルクを低減させることができる。
そのうえ、閉塞位置にある扉が開方向へ移動すると、欠歯ギア回転機構が欠歯ギアを非接触位置から接触位置へ回転移動させるので、前記欠歯ギアに噛み合う駆動ギアを例えば全周に歯を有するギアにすることで、当該駆動ギアと欠歯ギアとを確実に噛み合わせることができる。これにより、駆動ギアとして欠歯を用いた構成に比べて、扉を手動で開くことにより生じ得る不具合や、制御の煩雑化を防ぐことができ、より実用的な冷蔵庫用扉開閉機構を提供することができる。
【0025】
本願発明の効果をより顕著に発揮させる実施態様としては、前記欠歯ギアと噛み合う前記駆動ギアが全周に歯を有している構成が挙げられる。
【0026】
ところで、モータが筐体の上部に設けられている場合、モータの動力を扉に伝達するためには、例えば筐体側から扉側に架け渡されるリンク部材を設けることとなり、冷蔵庫の見栄えが悪くなるという問題が生じる。また、リンク部材を用いると、ユーザがリンク部材に手を挟む危険性もある。
そこで、かかる問題を解決すべく、前記モータは、前記扉の上部に設けられていることが好ましい。
【0027】
前記欠歯ギア回転機構の具体的実施態様としては、前記欠歯ギアを前記非接触位置から前記接触位置に向かって付勢する欠歯ギア付勢部材と、回転軸周りに回転可能に設けられ、当該回転軸周りに回転することにより前記欠歯ギアに押し当てられて、前記欠歯ギアを前記接触位置から前記非接触位置に回転移動させる回転部材とを有しいている構成が挙げられる。
【0028】
前記欠歯ギア回転機構の別の具体的実施態様としては、前記欠歯ギアに連結されるとともに、筐体側に固定されている被当接部に当接する当接位置と、前記被当接部から離間する離間位置との間を磁力によって移動するリンク部材と、前記扉側に設けられて、前記扉が前記閉塞位置にある状態において前記リンク部材に接触して前記リンク部材の移動を規制する規制部材とを具備し、前記扉が前記閉塞位置にある状態において前記規制部材が前記リンク部材を前記当接位置又は前記離間位置の一方に保ち、前記扉が前記補助力によって開方向へ移動すると、前記規制部材が前記リンク部材から離間する方向に移動して前記リンク部材が磁力によって前記当接位置又は前記離間位置の他方に移動し、前記欠歯ギアが前記非接触位置から前記接触位置に移動する構成が挙げられる。
【0029】
簡単な構成で磁力を利用するためには、前記被当接部が、前記筐体に取り付けられたヒンジプレートであり、前記リンク部材が、前記当接位置にある状態において前記ヒンジプレートに当接する磁石を有し、前記リンク部材が前記離間位置から前記当接位置に移動することにより、前記欠歯ギアが前記非接触位置から前記接触位置に移動することが好ましい。
【0030】
前記複数の駆動ギアが、前記扉の開閉と連動して回転する扉側ギアと、前記モータと連動して回転するモータ側ギアと、前記モータ側ギアに接続されたセンターギアと、前記センターギアに噛み合うとともに、所定の相対位置を保つ一対の遊動ギアとを有しており、前記センターギアの正回転又は逆回転に連動して、前記センターギアの回転軸を中心に前記一対の遊動ギアとともに旋回する首振り機構をさらに具備し、前記首振り機構の旋回にともない、前記一対の遊動ギアが、一方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合う正回転動力伝達位置と、他方の遊動ギアが前記扉側ギアに噛み合う逆回転動力伝達位置と、前記一対の遊動ギアいずれもが前記扉側ギアに噛み合わない動力非伝達位置との間で移動する構成が好ましい。
【0031】
このような冷蔵庫用扉開閉機構であれば、首振り機構によって、一対の遊動ギアをセンターギアの回転軸と垂直な平面に沿って動かすことで、一対の遊動ギアを動力伝達位置と動力非伝達位置との間で移動させることができるので、ギアを高さ方向に動かすクラッチ機構を不要であり、動力伝達機構を高さ方向にコンパクトにすることができる。
また、上述した本願発明に係る動力伝達機構によれば、センターギアの回転に連動して一対の遊動ギアが動くので、モータの動力で一対の遊動ギアを動かすことができ、動力伝達状態と動力非伝達状態とを切り替えるための専用のアクチュエータが不要である。
【0032】
なお、センターギアの回転に連動して一対の遊動ギアが動く原理は上述した通りである。
そこで、冷蔵庫用扉開閉機構は、一対の遊動ギアを、いずれもが扉側ギアに噛み合わない位置に留めるためには、前記首振り機構による前記一対の遊動ギアの動きを規制して、各遊動ギアのいずれもが前記扉側ギアに噛み合わない動力非伝達状態にする動力非伝達状態保持機構をさらに具備するものが好ましい。
【0033】
具体的実施態様としては、前記首振り機構が、前記遊動ギアが取り付けられるとともに、前記モータ側ギアの回転軸を中心に回転する取付部材を有し、前記動力非伝達状態保持機構が、前記取付部材を前記一対の遊動ギアが前記動力非伝達位置に保たれる中間位置に付勢する遊動ギア付勢部材を有し、前記モータが停止すると、前記遊動ギア付勢部材が前記取付部材を前記中間位置に付勢して前記一対の遊動ギアが動力非伝達位置に移動し、前記モータが駆動すると、前記遊動ギア付勢部材の付勢力に抗して前記一対の遊動ギアが旋回して、前記一対の遊動ギアが正回転動力伝達位置又は逆回転動力伝達位置に移動する構成が好ましい。
このような構成された動力非伝達状態保持機構であれば、軽量且つ安価な構成で動力非伝達状態を保持することができる。
一方、動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わる場合は、一方又は他方の遊動ギアが扉側ギアに噛み合うと、この遊動ギアには、センターギア及び扉側ギアから、噛み合っている部分を介して、接線方向の力が加わる。このことから、動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わると、遊動ギアに加わる前記トルクが増大し、このトルクが遊動ギア付勢部材の付勢力に抗して、動力伝達状態が保たれる。
【0034】
前記首振り機構が、前記取付部材と前記遊動ギアとの間に介在するとともに、前記各遊動ギアの回転に負荷を与える回転負荷部材を有していることが好ましい。
これならば、回転負荷部材が、各遊動ギアを回転しにくくするので、センターギアの回転により一対の遊動ギアに生じる前記トルクが増大し、一対の遊動ギアを前記平面に沿って動かしやすくすることができる。
【0035】
一対の遊動ギアがセンターギアを中心に動くことで、一方又は他方の遊動ギアが扉側ギアと確実に噛み合うためには、前記扉側ギアと、前記扉側ギアに噛み合っている遊動ギアと、前記センターギアとのなす角度が90度以上130度以下であるものが好ましい。
【0036】
前記補助機構の具体的実施態様としては、前記補助機構が、前記扉の上部における一端側から他端側に亘って設けられ、前記駆動ギアの回転に連動してスライド可能なスライド部材と、前記スライド部材のスライド移動に連動して所定の回転軸周りに回転可能に設けられ、当該回転軸周りに回転することにより前記筐体に接触して、前記補助力を前記扉に与える補助力付与部材とを有している構成が挙げられる。
【0037】
ここで、近時の冷蔵庫には、メンテナンス性などを考慮して扉を大きく(例えば160°)開けるように構成されたものがある。
このような冷蔵庫において、上述した欠歯ギアをヒンジ軸に設けようとした場合、扉を大きく開けたときに欠歯ギアの歯が見えてしまうと外観が劣るため、デザイン上、前記欠歯ギアに歯を設ける領域が限られてしまう(例えば130°位置まで)。
しかしながら、かかる構成では、欠歯ギアに駆動ギアが噛み合った状態で扉が開方向に移動する場合、例えば扉の収納量が多い場合など、慣性によって扉が大きく開いて駆動ギアが欠歯ギアから外れてしまうことがある。そうすると、噛み合いが外れたあとは扉を自動で閉じることができなくなってしまうという問題が生じる。
【0038】
そこで、本願発明に係る冷蔵庫用扉開閉機構は、前記欠歯ギアと噛み合っていた前記駆動ギアが、前記扉の開方向への移動によって前記欠歯ギアから外れた場合に、この噛み合いが外れた駆動ギアを、前記欠歯ギアに再度噛み合わせるように、前記扉を閉方向に移動させる戻し機構をさらに具備するものである。
【0039】
このように構成されたものであれば、戻し機構が、噛み合いが外れた駆動ギアを欠歯ギアに再度噛み合わせるので、噛み合ったあとは扉を再び自動で開閉することができるようになる。
その結果、例えばユーザが収納物の出し入れを行なう際に扉を大きく開いたとしても欠歯ギアの歯が製品外観面に突出しないようにしてデザイン性を担保しつつ、扉の収納量が多い場合などに扉が必要以上に開いたとしても、駆動ギアを欠歯ギアに噛み合わせて扉を自動で閉じることができる。
【0040】
前記戻し機構の具体的な実施態様としては、弾性力を有する撓み部材と、前記撓み部材に接触して撓ませる接触部材とを具備し、前記撓み部材及び前記接触部材の一方が前記扉と一体的に回転移動するとともに、他方が固定されており、前記扉の開方向への移動によって前記撓み部材と前記接触部材とが接触して前記撓み部材が撓み、その復元力によって前記扉を閉方向に移動させるように構成されたものが挙げられる。
【0041】
前記撓み部材が、前記撓み部材及び前記接触部材の接点の回転軌跡に接するとともに撓み部材の回転中心を通る接線と、前記撓み部材を中心として予め定められた前記撓み部材の撓み度に応じて描かれた仮想円と前記接線との交点を通る直線とのなす角度が30度以上60度以下となるように形成されていることが好ましい。
このような構成であれば、撓み部材が接触面に接触していれば、撓み部材の復元力を扉の回転力に分解することができる。つまり、撓み部材が接触面に接触し始めてから接触面と離れるまで、撓み部材の復元力によって扉を閉方向に回転させることができるので、復元力を瞬発的に発生させる必要がない。これにより、戻し機構を大掛かりにすることなく、例えば接触部材としてヒンジ軸に取り付けられるカムなどを用いることができ、接触部材などを露出させないようにすることができる。
【0042】
見栄えを悪くしないようにするためには、前記撓み部材又は前記接触部材の一方が前記扉の下側に取り付けられており、他方が前記ヒンジ軸の下側又は筐体の下側に固定さていることが好ましい。
【0043】
ここで、扉を自動で開閉できるように構成された冷蔵庫用扉制御装置において、従来、扉の移動速度を所望の速度に制御すべく、モータの印加電圧を所定の値になるように制御するようにしていた。
しかしながら、上述した制御方法では、モータに同じ大きさの電圧を印加したとしても扉に収納されている食品等の収納量によってモータへの負荷が変動することから、実際には扉の移動速度を所望の速度に制御することができない。
【0044】
このような中で本願発明者は、従来に比べて扉の移動を精度良く均一に制御するという課題を解決すべく、モータを回転させた際に発生する逆起電圧が扉の移動速度に反比例することに着目した。
【0045】
すなわち本発明に係る冷蔵庫用扉開閉機構は、冷蔵庫の扉を動かすためのモータを制御して、前記扉を自動で移動させる冷蔵庫用扉制御装置をさらに具備し、前記冷蔵庫用扉制御装置が、前記モータが回転している時に発生する誘起電圧を検出する誘起電圧検出部と、前記誘起電圧検出部により検出された検出値が、前記扉の開き角度に応じて予め定められた目標値となるように、前記モータの印加電圧を制御する印加電圧制御部とを具備していることを特徴とするものである。
【0046】
このようなものであれば、モータの誘起電圧を扉の開き角度に応じて予め定められた前記誘起電圧の目標値となるように制御しているので、扉の移動速度を目標値に応じた速度にすることができ、扉の収納量に関わらず所望の速度に制御することが可能となる。
【0047】
より具体的な実施態様としては、前記扉の移動範囲が、互いに連続した複数の分割範囲に分割されており、前記各分割範囲毎に、前記目標値が定められている構成が挙げられる。
【0048】
ここで、扉の開き角度を検出するためには開き角度がゼロである状態を設定する必要があり、具体的には、例えばモータが動き始めたときや、ユーザがドアオープンスイッチを押したときの扉を開き角度ゼロとする態様が考えられる。
しかしながら、モータが動き始めたときやユーザがスイッチを押したときから扉が開き始めるまでの時間は、必ずしも毎回一定であるとは限らず、上述した態様では、検出される開き角度にばらつきが生じてしまう。
【0049】
そこで、扉の開き角度を精度良く検出するためには、前記扉が閉じられている状態において、前記扉を開方向に移動させるための前記印加電圧が所定の閾値となった場合に、前記開き角度をゼロとするゼロ設定部と、前記ゼロ設定部により設定された開き角度ゼロから前記開き角度を検出する開き角度検出部とをさらに具備していることが好ましい。
このような構成であれば、印加電圧が所定の閾値となった場合に開き角度をゼロとしているので、仮にモータが動き始めてから扉が開き始めるまでに動作量の変動が生じたとしても、検出される開き角度にばらつきは生じず、開き角度を精度良く検出することが可能となる。
【0050】
扉の開き角度を簡単且つ安価な構成で検出するための実施態様としては、前記モータと前記扉との間に介在するとともに前記モータと連動して回転する駆動ギアにエンコーダ又はロータリースイッチが設けられており、前記開き角度検出部が、前記エンコーダ又は前記ロータリースイッチからの出力に基づいて前記開き角度を検出する構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0051】
このように構成した本発明によれば、扉と筐体との着磁を外すために必要なモータのトルクを低減させてモータを小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
<第1実施形態>
以下に本発明に係る冷蔵庫用扉開閉機構100の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0054】
まず始めに、本実施形態に係る冷蔵庫Rについて説明する。
【0055】
冷蔵庫Rは、
図1に示すように、前面が開口した筐体Hと、前記筐体Hの開口に設けられた左右の扉Dとを有し、各扉Dがヒンジのヒンジ軸Zに回転可能に支持されたものである。
【0056】
冷蔵庫用扉開閉機構100は、上述した冷蔵庫Rの各扉Dを独立して開閉するためのものであり、ここでは、左右の扉Dの上部それぞれに設けられている。
本実施形態では、各冷蔵庫用扉開閉機構100は、左右対称の構成であり、以下では、代表して
図1における右側の扉Dを開閉するための冷蔵庫用扉開閉機構100について説明する。
【0057】
冷蔵庫用扉開閉機構100は、
図1〜
図3に示すように、扉Dの上面に設けられたケーシングCと、ケーシング内Cに収容された駆動機構10と、閉塞位置にある扉Dを開くときの補助をする補助機構30とを具備する。
以下、各構成について説明する。
【0058】
<ケーシング>
ケーシングCは、冷蔵庫Rの見栄えを悪くすることを防ぐべく、
図1に示すように、駆動機構10及び補助機構30のほぼ全てを内部に収容するものであり、ここでは扉Dの一端側から他端側に亘って設けられた長尺状をなすものである。
【0059】
<駆動機構>
駆動機構10は、扉Dを開閉するための動力を出力するとともに、この動力を扉Dに伝達するものである。
具体的にこのものは、
図2及び
図3に示すように、モータMと、モータMの動力をヒンジ軸Zを介して扉Dに伝達する動力伝達機構40とを有している。
なお、
図2は駆動機構10を上方から視た図であり、
図3は駆動機構10を下方から視た図である。
【0060】
モータMは、扉Dの上部に設けられるとともに前記ケーシングC内に収容されており、図示しない制御部からの制御信号を受け付けて、正回転又は逆回転する。
本実施形態では、前記モータMは、前記制御部からの制御信号に基づいて、扉Dを所定の速度パターンに基づいて開閉できるように構成されている。
【0061】
動力伝達機構40は、モータMとヒンジ軸Zとの間に介在しており、特に
図3に示すように、モータMと連動して回転する複数の駆動ギア45と、ヒンジ軸Zに取り付けられた欠歯ギア46とを有している。
なお、前記複数の駆動ギア45は、いずれも全周に歯を有するものである。
【0062】
ここで、本実施形態の動力伝達機構40は、扉Dの開閉を自動と手動とに切り替え可能にすべく、モータMの動力がヒンジ軸Zに伝達される動力伝達状態と、前記動力がヒンジ軸Zに伝達されない動力非伝達状態とに切り替わるように構成されている。
【0063】
より具体的に説明すると、前記動力伝達機構40は、
図2〜
図4に示すように、前記複数の駆動ギア45の一部として、モータMに連動して回転するモータ側ギア41と、扉Dの開閉に連動して回転する扉側ギア42と、モータ側ギア41に接続されたセンターギア43と、センターギア43に噛み合う一対の遊動ギア44(以下、これらを区別するときは、一方の遊動ギア44a、他方の遊動ギア44bともいう)とを有している。
【0064】
本実施形態では、モータ側ギア41及び扉側ギア42それぞれは、複数が直列的に接続されている。
これらのモータ側ギア41のうち、最もモータ側に位置するモータ側ギア41はモータMの回転軸に接続されており、最も扉側に位置するモータ側ギア41はセンターギア43の回転軸に接続されている。
また、複数の扉側ギア42のうち、最もモータ側に位置する扉側ギア42は遊動ギア44に噛み合い、最も扉側に位置する扉側ギア42は欠歯ギア46に噛み合う。
【0065】
前記センターギア43に噛み合う一対の遊動ギア44は、
図4及び
図5に示すように、センターギア43の回転軸と最もモータ側の扉側ギア42の回転軸とを結ぶ直線を挟むように配置されており、センターギア43に連動して回転する。
【0066】
そして、本実施形態の動力伝達機構40は、
図4及び
図5に示すように、センターギア43が回転することにより、一対の遊動ギア44を、センターギア43を中心にセンターギア43の回転軸と垂直な平面に沿って動かす首振り機構50と、各遊動ギア44のいずれもが扉側ギア42に噛み合わない動力非伝達状態を保持する動力非伝達状態保持機構60とをさらに具備している。
【0067】
前記首振り機構50は、
図4に示すように、一対の遊動ギア44を、一方の遊動ギア44aが扉側ギア42に噛み合う正回転動力伝達位置(
図4a)と、他方の遊動ギア44bが扉側ギア42に噛み合う逆回転動力伝達位置(
図4c)と、一対の遊動ギア44いずれもが扉側ギア42に噛み合わない動力非伝達位置(
図4b)との間で移動させるものである。
【0068】
本実施形態の首振り機構50は、一対の遊動ギア44をセンターギア43の回転軸周りにセンターギア43の回転方向に沿って旋回させ、これにより、一方の遊動ギア44aを扉側ギア42に噛み合わせるとともに他方の遊動ギア44bを扉側ギア42から離す、又は、他方の遊動ギア44bを扉側ギア42に噛み合わせるとともに一方の遊動ギア44aを扉側ギア42から離すように構成されている。
【0069】
より詳細には、
図4(a)に示すように、モータMの回転に連動してセンターギア43が正回転すると(ここでは、上方から視て反時計回り)、一対の遊動ギア44がセンターギア43の回転軸を中心に上方から視て反時計回りに旋回して、一方の遊動ギア44aが扉側ギア42に噛み合う。これにより、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、モータMの動力によって扉Dが自動で開く自動開モードとなる。
【0070】
一方、
図4(c)に示すように、モータMの回転に連動してセンターギア43が逆回転すると(ここでは、上方から視て時計回り)、一対の遊動ギア44がセンターギア43の回転軸を中心に上方から視て時計回りに旋回して、他方の遊動ギア44bが扉側ギア42に噛み合う。これにより、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、モータMの動力によって扉Dが自動で閉じる自動閉モードとなる。
【0071】
上述した自動開モード及び自動閉モードにおいて、扉側ギア42と、扉側ギア42に噛み合っている一方又は他方の遊動ギア44と、センターギア43とは、これらのなす角度αが90度以上かつ130度以下となるように配置されており、本実施形態では、前記角度αが110度以上かつ120度以下となるように設計されている。
【0072】
続いて、前記首振り機構50の具体的な構成について説明する。
この首振り機構50は、
図5に示すように、センターギア43の回転軸を中心に回転するとともに、遊動ギアが取り付けられる取付部材51と、取付部材51と遊動ギア44との間に介在するとともに、各遊動ギア44の回転に負荷を与える回転負荷部材52とを具備している。
【0073】
取付部材51は、センターギア43及び一対の遊動ギア44がいずれも設けられる平板部材511と、平板部材511から起立するとともに遊動ギア44が取り付けられる一対の遊動ギア用取付軸512とから構成されている。
この取付部材51には、センターギア43が取り付けられるセンターギア用取付軸7が貫通する貫通穴(図示しない)が形成されている。この貫通穴を介して取付部材51をセンターギア用取付軸7に通すことで、取付部材51はセンターギア用取付軸7を中心に回転可能となる。
【0074】
回転負荷部材52は、遊動ギア44の回転に負荷を与え、一対の遊動ギア44をセンターギア43の回転軸周りに旋回させるトルクを発生させるものであり、ここでは、遊動ギア用取付軸512に通されるとともに、遊動ギア44に対して回転軸に沿った上向きの力を加えるバネ等の弾性部材である。
【0075】
本実施形態では、
図5に示すように、遊動ギア用取付軸512に回転負荷部材52を通し、その上から遊動ギア44を通し、さらにその上から遊動ギア44を押圧する押圧部材53を通すことで、回転負荷部材52から遊動ギアへ上向きの力が加わるように構成されている。
なお、前記押圧部材53は、前記遊動ギア用取付軸512の外周面に周方向に沿って形成された凹溝513に係合するように構成されている。
【0076】
次に、動力非伝達状態保持機構60について説明する。
【0077】
前記動力非伝達状態保持機構60は、
図4及び
図5に示すように、前記取付部材51を一対の遊動ギア44が動力非伝達位置に保たれる中間位置Mに付勢する遊動ギア付勢部材61を有している。
この遊動ギア付勢部材61は、一端部が前記取付部材51に取り付けられるとともに、他端部が例えばケーシングに固定された図示しない固定部材に取り付けられて、前記取付部材51を最もモータ側に位置する扉側ギア42に向けて付勢するバネ等の弾性部材である。
より詳細には、前記遊動ギア付勢部材61は、
図4に示すように、取付部材51が前記中間位置Mにある状態において、センターギア43の中心と前記扉側ギア42の中心とを結ぶ直線上、言い換えれば一対の遊動ギア44の中心を結ぶ直線と直交する直線上に、その一端部及び他端部が配置されるように設けられている。
【0078】
このように構成された動力伝達機構40によれば、動力伝達状態又は動力非伝達状態に切り替わることにより、扉Dの開閉を自動又は手動に切り替えることができる。
以下、動力伝達機構40が、動力伝達状態又は動力非伝達状態に切り替わる際の動作について説明する。
【0079】
まず、動力非伝達状態において、
図4(b)に示すように、上述した遊動ギア付勢部材61によって取付部材51は中間位置Mに付勢されており、一対の遊動ギア44はいずれも扉側ギア42と噛み合っていない。
ここで、モータMに所定の電圧を印加してモータMを駆動すると、センターギア43が回転して、一対の遊動ギア44には、センターギア43との噛み合っている部分を介して接線方向の力が加わる。
そうすると、
図4(a)、(c)に示すように、この接線方向の力が前記遊動ギア付勢部材61の付勢力に抗して、一対の遊動ギア44はセンターギア43の回転軸周りに旋回し、一方又は他方の遊動ギア44が正回転動力伝達位置又は逆回転動力伝達位置に移動して扉側ギア42と噛み合い、動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わる。
【0080】
一方、動力伝達状態において、モータMを停止させると、前記遊動ギア付勢部材61によって取付部材51が再び中間位置Mに付勢されるので、一対の遊動ギア44は動力非伝達位置に移動し、動力伝達状態から動力非伝達状態に切り替わる。
【0081】
<補助機構>
次に補助機構30について説明する。
【0082】
補助機構30は、扉Dを開くための補助力を生じさせるものであり、ここでは、扉Dの上部における一端側から他端側に亘って設けられるとともに、ケーシングC内に収容されている。
具体的にこのものは、
図2及び
図3に示すように、駆動ギア45の回転に連動してスライド可能なスライド部材34と、前記スライド部材34のスライド移動に連動して所定の回転軸T2周りに回転可能に設けられ、当該回転軸T2周りに回転することにより筐体Hに接触して、扉Dに前記補助力を与える補助力付与部材32とを有している。
【0083】
前記スライド部材34は、長尺状をなすとともにその延伸方向にスライド可能に構成されており、一端部341に前記補助力付与部材32が設けられるとともに、他端部342に動力伝達機構40から動力が伝達されるものである。
本実施形態では、
図6に示すように、スライド部材34と動力伝達機構40との間に、駆動ギア45(扉側ギア42)における回転方向の動力を、スライド部材34における延伸方向の動力に変換する動力変換機構70を介在させてある。
この動力変換機構70は、いわゆるラチェット機構を利用したものであり、スライド部材34の他端部342に設けられた爪部71と、この他端部342の近傍に配置された駆動ギア45(扉側ギア42)の例えば背面に設けられた複数の突起部72(ここでは3つ)とから構成されている。
かかる構成により、前記駆動ギア45が回転することにより、何れか一つの突起部72が爪部71を押圧し、駆動ギア45の回転方向の動力が爪部71を介してスライド部材34における延伸方向の動力としてスライド部材34に伝達され、スライド部材34が延伸方向にスライド移動する。
【0084】
前記補助力付与部材32は、
図2及び
図3に示すように、前記スライド部材34の一端部341に形成された貫通孔31aに貫通する貫通部材322を有しており、この貫通部材322を前記貫通孔31aに差し込むことによりスライド部材34に取り付けられるように構成されている。
この補助力付与部材32は、回転軸T2周りに回転することにより筐体Hの前面に衝突する衝突部321をさらに有している。
かかる構成により、前記スライド部材34が他端部342から一端部341に向かってスライド移動することで、前記貫通部材322が力点、前記衝突部321が作用点として働き、前記補助力が扉Dに作用して、扉Dと筐体Hとの着磁を外すことができる。
【0085】
<欠歯ギア回転機構>
ここで、本実施形態の欠歯ギア46は、
図7に示すように、ヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転可能に設けられている。
そして、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、
図7に示すように、前記欠歯ギア46を回転移動させる欠歯ギア回転機構80をさらに具備してなる。
【0086】
まず、欠歯ギア46について説明する。
前記欠歯ギア46は、全周に歯が形成されたギアにおける周方向の一部を切り欠いたような形状(ここでは、周方向に沿った略3/4を切り欠いたような形状)をなし、その外周部の一部又は全部に歯が形成されたものである。
【0087】
本実施形態の欠歯ギア46は、厚み方向に貫通して形成された1又は複数の貫通孔46aを有しており、この貫通孔46a内には欠歯ギア46を保持するための段付きねじ等の保持部材Bが設けられている。
【0088】
上述した構成により、欠歯ギア46は、上下方向には移動することなく、ヒンジ軸Zの軸心X1を中心に所定範囲内で回転移動することができる。
【0089】
次に、前記欠歯ギア回転機構80について説明する。
この欠歯ギア回転機構80は、
図7に示すように、欠歯ギア46を、扉Dの開閉移動に連動させて、駆動ギア45(ここでは、最も扉側に位置する扉側ギア42)と接触する接触位置P及び前記駆動ギア45と非接触な非接触位置Qの間で回転移動させるものである。
【0090】
ここで、接触位置Pとは、
図7(a)に示すように、閉塞位置にある扉Dが開方向に移動したときに欠歯ギア46が最初に駆動ギア45に接触する位置であり、非接触位置Qとは、
図7(b)に示すように、欠歯ギア46が前記駆動ギア45から最も離間した位置であり、本実施形態では扉Dが閉塞位置にある状態における欠歯ギア46の位置である。
【0091】
具体的に前記欠歯ギア回転機構80は、
図7に示すように、欠歯ギア46を非接触位置Qから接触位置Pに向かって付勢する欠歯ギア付勢部材81と、回転軸T3周りに回転可能に設けられ、当該回転軸T3周りに回転することにより欠歯ギア46を押圧して、欠歯ギア46を接触位置Pから非接触位置Qに回転移動させる回転部材82とを有しいている。
【0092】
前記欠歯ギア付勢部材81は、一端が欠歯ギア46の例えば裏面に取り付けられるとともに、他端が回転部材82の回転軸T3に取り付けられたバネなどの弾性部材である。
なお、欠歯ギア付勢部材81の他端は必ずしも回転軸T3に取り付けられる必要はなく、欠歯ギア付勢部材81の他端を取り付けるための取付部を回転軸T3とは別に扉Dの上部に設けても良い。
【0093】
前記回転部材82は、
図7に示すように、例えば扉Dと筐体Hとを連結する図示しないヒンジプレートに固定されており、一端部821が欠歯ギア46に当接するとともに、他端部822がケーシングCに当接するものである。
ここでは、前記一端部821は欠歯ギア46の例えば切り欠かれた端面に当接しており、前記他端部822はケーシングCの側面に当接している。
【0094】
本実施形態では、扉Dの開閉移動に連動して他端部822がケーシングCの側面に沿って滑らかに動くようにすべく、前記側面のうち少なくとも前記他端部822が当接する部分が、外側に湾曲したガイド面C1として形成されている。
なお、回転部材82の他端部822は必ずしもケーシングCの側面に当接されている必要はなく、回転部材82の他端部822を滑らかに動かすためのガイド面をケーシングCの側面とは別に扉Dの上部に設けても良い。
【0095】
上述した構成により、開放状態にある扉Dが閉塞位置に向かってヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転し始めると、回転部材82の他端部822がケーシングCのガイド面C1に押し当てられ、このガイド面C1に沿ってスライドしながら回転軸T3の軸心X2を中心に回転する。このとき、回転部材82の一端部821は欠歯ギア46の端面を押圧し、この押圧力が欠歯ギア付勢部材81の付勢力に抗して欠歯ギア46を接触位置Pから非接触位置Qに向かって回転移動させる。
【0096】
一方、閉塞位置にある扉Dが開方向に向かってヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転し始めると、前記欠歯ギア付勢部材81によって欠歯ギア46が非接触位置Qから接触位置Pに向かって回転移動し、欠歯ギア46が駆動ギア45に接触する。このとき、回転部材82は、一端部821が欠歯ギア46から離れる向きに回転軸T3の軸心X2を中心に回転し、この回転に伴って他端部822はガイド面C1に当接しながら当該ガイド面C1に沿ってスライドする。
【0097】
以下、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100の動作を説明する。
【0098】
始めに、閉塞位置にある扉Dを開方向に移動させる場合を説明する。
この場合、まずモータMが図示しない制御部からの制御信号を受け付けて駆動し、各駆動ギア45が互いに連動して回転し始める。このとき、首振り機構50によって、一対の遊動ギア44は動力非伝達位置から動力伝達位置に移動する。また、欠歯ギア回転機構80は、欠歯ギア46を非接触位置Qに保持している。
次に、駆動ギア45の回転動力が、動力伝達機構40と補助機構30との間に介在する動力変換機構70を介して、スライド部材34に伝達され、スライド部材34が延伸方向にスライド移動する。より詳細には、スライド部材34の他端部342近傍に位置する駆動ギア45の回転により、この駆動ギア45の背面に設けられた突起部72がスライド部材34の他端部342に設けられた爪部71を押圧することで、スライド部材34がスライド移動する。
このスライド部材34のスライド移動により、補助力付与部材32が回転軸T2周りに回転して、筐体Hの前面に押し当てられ、その反動により扉Dと筐体Hとの着磁が外れ、扉Dが閉塞位置から開方向にヒンジ軸Z周りに回転移動する。
この扉Dの開方向に回転移動すると、欠歯ギア回転機構80は、欠歯ギア46を非接触位置Qから接触位置Pにヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転移動させる。より詳細には、扉DとともにケーシングCがヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転移動することで、これに連動して、欠歯ギア46が欠歯ギア付勢部材81の付勢力によって非接触位置Qから接触位置Pに回転移動する。このとき、回転部材82は、一端部821が欠歯ギア46から離れる向きに回転軸T3の軸心X2を中心に回転し、この回転に伴って他端部822はガイド面C1に当接しながら当該ガイド面C1に沿ってスライドする。
その後、さらに駆動ギア45が回転することにより、駆動ギア45と欠歯ギア46とが噛み合い、扉は開方向に回転移動する。
【0099】
続いて、開放状態で停止している扉Dを閉塞位置に向かって回転移動させる場合を説明する。
扉Dが停止している状態において、モータMが図示しない制御部からの制御信号を受け付けて駆動すると、各駆動ギア45が互いに連動して回転し始め、首振り機構50によって、一対の遊動ギア44は動力非伝達位置から動力伝達位置に移動する。
このとき、欠歯ギア46は接触位置Pにあるため、モータMの動力がヒンジ軸Zに伝達され、扉Dは閉塞位置に向かって回転移動する。
その後、扉Dが所定の開き角度に到達すると、ケーシングCのガイド面C1が回転部材82の他端部822に接触する。
ここからさらに扉Dが閉塞位置に向かって回転移動することにより、回転部材82が回転軸T3周りに回転して、回転部材82の一端部821が欠歯ギア46を押圧する。そして、この押圧力が欠歯ギア付勢部材81の付勢力に抗して、欠歯ギア46を接触位置Pから非接触位置Qに向かって回転移動させる。
これにより、モータMの動力はヒンジ軸Zに伝わらなくなるが、その後、扉Dは慣性と筐体Hとの磁力とによって、さらに回転移動して閉塞位置に到達する。
【0100】
ところで、上述したように本実施形態の欠歯ギア46は、全周に歯が形成されたギアにおける周方向の一部を切り欠いたような形状をなすものである。
このことから、欠歯ギア46に駆動ギア45が噛み合った状態で扉Dを開方向に移動させる際に例えば扉Dの収納量が多い場合など、慣性によって扉Dが大きく開くと、駆動ギア45が欠歯ギア46から外れてしまうことがある。そうすると、噛み合いが外れたあとは扉Dを自動で閉じることができなくなる。
【0101】
そこで、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、欠歯ギア46と噛み合っていた駆動ギア45が、扉Dの開方向への移動によって欠歯ギア46から外れた場合に、この噛み合いが外れた駆動ギア45を、欠歯ギア46に再度噛み合わせるように、扉Dを閉方向に移動させる戻し機構200をさらに具備している。
以下、この戻し機構200について
図8〜
図11を参照しながら説明する。
【0102】
<戻し機構>
前記戻し機構200は、欠歯ギア46と駆動ギア45との噛み合いが外れた状態にある扉Dを、欠歯ギア46と駆動ギア45とが噛み合う位置まで閉方向に移動させるものであり、具体的には、
図8に示すように、冷蔵庫Rの下側に設けられており、弾性力を有する撓み部材201と、この撓み部材201に接触して当該撓み部材201を撓ませる接触部材202とを備えている。
【0103】
本実施形態では、
図9に示すように、扉Dを開方向に移動させて欠歯ギア46から駆動ギア45が外れる噛み合い外れ位置Jから、扉Dの開き角度が最大となる最大開放位置Kまでの間に扉がある状態において、前記撓み部材201と前記接触部材202とが互いに接触するように構成されている。
つまり、開方向に移動する扉Dが前記噛み合い外れ位置Jに到達すると、前記撓み部材201と前記接触部材202とが非接触な状態から互いに接触し、この噛み合い外れ位置Jから最大開放位置Kへ扉Dが移動する間、前記撓み部材201と前記接触部材202とが接触し続けるようにしている。なお、噛み合い外れ位置Jにある扉Dの開き角度は90度以上であり、ここでは130度に設計してあり、最大開放位置Kにある扉Dの開き角度はそれ以上の例えば160度に設計している。
なお、
図9における撓み部材201及び接触部材202は、説明の便宜上、模式的に記載している。
【0104】
前記撓み部材201は、扉Dに取り付けられて扉Dと一体的に回転移動するものであり、ここでは前記扉Dの下面に設けられて扉Dの回転中心(つまり、ヒンジ軸Zの軸心X1)周りに回転する。
具体的にこのものは、例えば樹脂等からなる板状のものであり、ここでは、長尺状板部材が平面視において1又は複数回屈曲した形状をなしている。
この撓み部材201は、例えば一端部に前記扉Dとの固定箇所201aが設けられるとともに、例えば他端部に後述する接触部材202との接触箇所201bが設けられて、接触部材202から受ける力によって前記固定箇所201aにおける撓み中心αとして弾性変形しながら撓むように構成されている。
【0105】
前記接触部材202は、扉Dが開方向に移動することにより、前記撓み部材201の接触箇所201b(ここでは他端部)が接触するように配置されており、具体的にはヒンジ軸Zの下側や筐体Hの底面に回転不能に固定されている。
本実施形態の接触部材202は、扉Dの開方向への移動に伴い前記撓み部材201が接触しながら移動する接触面202aを有している。ここでは、
図8に示すように、前記接触面202aを例えば既設の半開き防止用カム203を利用して形成してある。より詳細には、前記半開き防止用カム203の側面に、外側に向かって突出する突出部Fを設け、この突出部Fにおける前記側面からの傾斜面を前記接触面202aとしている。
【0106】
この接触面202aの具体的な設計方法について
図10及び
図11を参照しながら簡単に説明する。
始めに、
図10(a)に示すように、前記撓み部材201における前記接触面202との設計上の接触点の軌跡であり、撓み中心αを中心とした回転軌跡CHを描く。
次に、前記回転軌跡CHに接し、撓み部材201の回転中心β(すなわち、ヒンジ軸Zの軸心X1)を通る接線LOを描く。なお、この接線LOは、撓み中心αに対して上述した設計上の接触点側にある。
そして、回転中心βを中心とした仮想円CTと接線LOとの交点γを通り、前記接線LOとのなす角度δθが所定角度となる直線LCを描く。なお、この仮想円CTの半径は、予め設定された撓み部材201の撓み度合いによって定められている。
【0107】
次に、
図10(b)に示すように、撓み部材201が、接触部材202と接触し始める位置から扉Dが最も開いた状態の位置までの間で、扉Dがそれぞれ異なる位置にある状態において上記方法により直線LCを描く。
最後に、
図11に示すように、複数の直線LC同士が交わる交点Cを通る円弧を描くことで、上述した接触面202aの外縁が設計されている。なお、直線LCの本数が多いほど、設計精度を向上させることができる。
【0108】
そして、本実施形態の接触面202aは、接線LOと直線LCとのなす角度δθが30度以上60度以下となるように形成されており、ここではδθが45度となるようにしてある。
【0109】
続いて、上述した冷蔵庫用扉開閉機構100による扉Dの動き、すなわち扉Dの移動速度を制御する冷蔵庫用扉制御装置110について説明する。
【0110】
<冷蔵庫用扉制御装置>
本実施形態に係る冷蔵庫用扉制御装置110は、
図12に示すように、上述したモータMを駆動するモータ駆動回路Lに接続されてモータMを制御するものであり、物理的には、CPU、メモリ、A/Dコンバータ等を備えている。そして、前記メモリの所定領域に格納されたプログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、
図13に示すように、ゼロ設定部91、開き角度検出部92、誘起電圧検出部93、目標誘起電圧記憶部94、及び印加電圧制御部95としての機能を発揮するように構成されている。
以下、各部の説明を兼ねて、冷蔵庫用扉制御装置110の動作を説明する。
【0111】
まず、扉Dが閉塞位置にある状態において、前記モータ駆動回路Lを介してモータMに電圧が印加されると、上述したようにモータMに連動して駆動ギア45が回転し、何れか一つの突起部72が爪部71を押圧して、補助機構30が作動する。
このとき、補助機構30が作動し始めてから、扉Dと筐体Hとの着磁が外れるまでの間は、モータMにかかる負荷が増大するため、モータの運転速度が低下し、それを補うためモータへの印加電圧は徐々に増大する。
【0112】
前記ゼロ設定部91は、扉Dが閉じられている状態において、扉Dを開方向に移動させるための前記印加電圧が所定の閾値となった場合に、扉の開き角度をゼロとする。言い換えれば、このゼロ設定部91は、前記印加電圧が所定の閾値となったときを開き角度の検出開始点に設定する。
【0113】
開き角度検出部92は、前記ゼロ設定部91により設定された開き角度ゼロから開き角度を検出するものであり、言い換えれば、前記ゼロ設定部91により設定された検出開始点から開き角度を検出し始める。
本実施形態では、
図3及び
図6に示すように、駆動ギア45にロータリースイッチRSを設けており、前記開き角度検出部92は、このロータリースイッチRSから出力される信号を取得して、前記開き角度を算出する。ロータリースイッチRSについて付言しておくと、ここでは駆動ギア45の回転に伴い例えば4ビットの信号を出力するいわゆるアブソリュート方式のロータリーエンコーダであり、この信号に基づいて前記開き角度検出部92が、扉Dの開閉方向及び開き角度を算出できるようにしている。
【0114】
誘起電圧検出部93は、モータMが回転している時に生じる誘起電圧を検出するとともに、この誘起電圧を示す誘起電圧信号を後述する印加電圧制御部95に送信するものである。
本実施形態では、
図12に示すように、モータ駆動回路Lに設けられた分圧抵抗rを用いて、前記誘起電圧信号が誘起電圧検出部93にアナログ入力されるように構成されている。
【0115】
目標誘起電圧記憶部94は、前記メモリの所定領域に形成されており、扉Dの開き角度に応じて予め定められた誘起電圧の目標値を記憶しているものである。
この目標値は、扉Dの移動速度が開き角度に応じて所定速度となるように設定されており、例えば、閉じられている扉Dが開方向に移動するに連れて、徐々に移動速度が低下するように設定されている。
本実施形態では、扉Dの移動角度範囲(以下、単に移動範囲ともいう)が互いに連続した複数の分割範囲に分割されており、各分割範囲毎に前記目標値が記憶されている。各分割範囲は、例えば移動範囲を一定の角度毎に分割した範囲であっても良いし、各分割範囲の角度がそれぞれ異なるように移動範囲を分割した範囲であっても良い。
【0116】
印加電圧制御部95は、前記誘起電圧検出部93からの誘起電圧信号を取得するとともに、誘起電圧の検出値と前記目標誘起電圧記憶部94に記憶されている目標値とを比較して、前記検出値が前記目標値となるように、モータMへの印加電圧を制御する。
本実施形態の印加電圧制御部95は、
図12及び
図13に示すように、モータ駆動回路Lを構成する例えばMOSFETなどのスイッチング素子SWにON/OFF信号を出力して印加電圧をPWM制御するものであり、前記検出値が前記目標値となるようにデューティー比を変更する。
【0117】
このように構成された本実施形態に係る冷蔵庫用扉開閉機構100によれば、補助機構30が補助力を発生させる際に、欠歯ギア回転機構80が、欠歯ギア46を非接触位置Qに保持しているので、駆動ギア45と欠歯ギア46とが噛み合っていない状態で扉Dと筐体Hとの着磁を外すことができ、着磁を外すために必要なモータMのトルクを低減させることができ、ひいてはモータの小型化が可能となる。
【0118】
そのうえ、駆動ギア45が全周に歯を有するギアであるので、駆動ギア45の姿勢(回転角度)に関わらず、欠歯ギア46を確実に駆動ギア45に噛み合わせることができる。
これにより、従来であれば生じ得る問題、すなわち扉Dを手動で開くことにより生じ得る不具合や、制御の煩雑化を防ぐことができ、冷蔵庫用扉開閉機構100を従来に比べて実用的なものにすることができる。
【0119】
また、モータMが扉Dの上部に設けられているので、モータMを筐体Hの上部に設けた場合に必要となるリンク部材を不要にすることができ、ユーザがリンク部材に手を挟むことを防ぐとともに、外観の見栄えを向上させることができる。
【0120】
加えて、首振り機構50が一対の遊動ギア44をセンターギア43の回転軸と垂直な平面に沿って動かすことで、動力伝達状態と動力非伝達状態とを切り替えることができ、従来のクラッチ機構のように、高さ方向にギアを動かすような機構を不要にすることができ、動力伝達機構40を高さ方向にコンパクトにすることができる。
【0121】
そのうえ、一対の遊動ギア44が、センターギア43の回転に連動して、センターギア43の回転軸と垂直な平面に沿って動くので、モータMの動力を使って遊動ギア44を動かすことができ、遊動ギア44を動かすための専用のアクチュエータを不要にすることができる。
【0122】
さらに、動力非伝達状態保持機構60が遊動ギア付勢部材61を利用して構成されているので、動力非伝達状態保持機構を簡単な構成にすることができ、機構全体を安価で軽量なものにすることができる。
【0123】
また、扉Dを開方向に移動させる際に、例えば扉Dの収納量が多い場合など、慣性によって扉Dが大きく開いて駆動ギア45が欠歯ギア46から外れてしまっても、戻し機構200が、駆動ギア45を欠歯ギア46に再度噛み合わせるので、噛み合ったあとは扉Dを再び自動で閉じることができるようになる。
もちろん、ユーザが手動で扉Dを大きく開いた場合にも、戻し機構200が、噛み合いが外れた駆動ギア45を欠歯ギア46に再度噛み合わせて、扉Dを再び自動で閉じることができる。
【0124】
さらに、接線LOと直線LCとのなす角度δθを45度にしているので、撓み部材201の復元力を最も効率良く扉Dを閉方向に回転させるための力として利用することができる。
【0125】
加えて、扉Dが噛み合い外れ位置Jから最大開放位置Kへ移動する間、撓み部材201と接触部材202とが接触し続けるように構成されているので、欠歯ギア46から駆動ギア45が外れたのち、扉Dがさらに大きく開いた場合でも、僅かにしか開かない場合でも、駆動ギア45を欠歯ギア46に確実に再度噛み合わせることができる。
【0126】
さらに加えて、撓み部材201が扉Dの下面に設けられており、接触部材202がヒンジ軸Zの下側又は筐体Hの底面に設けられているので、これらの部材201、202が露出せず外観が悪くなることを防ぐことができる。
【0127】
そのうえ、既存の半ドア防止用カム203の一部を利用して接触部材202を構成しているので、部品点数を不必要に増やすことなく戻し機構200を構成することができる。
【0128】
また、上述したように構成された本実施形態に係る冷蔵庫用扉制御装置110によれば、モータMの誘起電圧を扉Dの開き角度に応じて予め定められた目標値となるように制御しているので、扉Dの移動速度を目標値に応じた速度にすることができ、扉Dの収納量に関わらず所望の速度に制御することが可能となる。
そのうえ、誘起電圧を目標値に制御することで、扉Dの移動速度を所望の速度にしているので、扉Dの移動速度を検出するための専用のセンサは不要である。
【0129】
ところで、上述した冷蔵庫用扉開閉機構100は、閉塞位置にある扉Dを開方向に移動させる場合に、モータMを動かすことで突起部72が爪部71を押圧して補助機構30を作動させるように構成されており、扉Dが閉塞位置にある状態における突起部72の待機位置は毎回同じ位置とはならない。このことから、モータMが動き始めてから扉Dが開き始めるまでの時間は、必ずしも毎回一定ではない。
このような構成において、本実施形態に係る冷蔵庫用扉制御装置110によれば、ゼロ設定部91が、扉Dを開くための印加電圧が所定の閾値となった場合に開き角度をゼロとしているので、毎回略同じタイミングで開き角度をゼロに設定することができる。したがって、モータMが動き始めてから扉Dが開き始めるまでに時間差が生じたとしても、開き角度ゼロから検出される開き角度にばらつきは生じず、開き角度を精度良く検出することが可能となる。
【0130】
さらに、開き角度検出部92が、ロータリースイッチRSから出力される信号に基づいて開き角度を検出するので、装置構成を簡単かつ安価にすることができるうえ、扉Dの移動方向(開閉方向)を知ることができる。
【0131】
<第1実施形態の変形例>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0132】
前記実施形態では、回転部材の他端部の動きをガイドするガイド面が外側に膨出した湾曲面であったが、内側に凹ませた湾曲面や平面などであっても良い。
【0133】
また、前記実施形態では、モータ側ギア及び扉側ギアが複数設けられているが、その数は限られるものではなく、いずれのギアが単一であっても構わない。
【0134】
さらに、前記実施形態では、回転負荷部材が弾性部材であったが、例えば、遊動ギアと取付部材との間に摩擦を生じさせるようなものであっても良く、具体的には、フェルト等のシート部材や、マグネット等の磁力抵抗などが挙げられる。
【0135】
加えて、前記実施形態の戻し機構は、撓み部材が扉と一体的に回転移動し、接触部材がヒンジ軸又は筐体に固定されていたが、撓み部材がヒンジ軸又は筐体に固定されており、接触部材が扉と一体的に回転移動するように構成されていても良い。
【0136】
また、戻し機構は、冷蔵庫の上側に設けられていても良い。具体的には、例えば撓み部材が扉の上側に設けられており、接触部材がヒンジ軸の上側又は筐体の上面に設けられていても構わない。
【0137】
さらに、撓み部材の形状は、板状には限られず、棒状やブロック体形状など、適宜変更して構わない。
【0138】
そのうえ、接触面は前記実施形態の設計方法によって設計された形状には限定されず、例えば撓み部材の接触箇所の回転方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面などであっても良いし、湾曲面や平面であっても良い。
【0139】
冷蔵庫用扉制御装置に関していえば、前記実施形態の開き角度検出部は、ロータリースイッチから出力された信号に基づいて開き角度を検出するものであったが、駆動ギアにインクリメンタル方式のロータリーエンコーダを設けて、このエンコーダから出力される信号に基づいて、開き角度検出部が開き角度を検出するものであっても良い。
【0140】
また、前記実施形態では、誘起電圧の目標値が、扉が開方向に移動するに連れて、徐々に移動速度が低下するように設定されていたが、例えば、扉が開方向に移動するに連れて、始め増加した後、徐々に低下するように設定しても良いし、その他適宜変更して構わない。
【0141】
さらに加えて、欠歯ギア回転機構80は、前記実施形態では、回転部材82の回転移動により欠歯ギア46を回転させるように構成されていたが、
図14に示すように、回転部材82の代わりにスライド部材83を用いて欠歯ギア46を回転させるように構成されていても良い。
【0142】
より具体的に説明すると、この欠歯ギア回転機構80は、扉Dの開閉移動に連動させて、欠歯ギア46を駆動ギア45(ここでは、最も扉側に位置する扉側ギア42)と接触する接触位置P及び前記駆動ギア45と非接触な非接触位置Qの間で回転移動させるものであり、欠歯ギア46を非接触位置Qから接触位置Pに向かって付勢する欠歯ギア付勢部材81と、扉Dの回転移動に連動してスライド移動するスライド部材83とを有している。
【0143】
前記欠歯ギア付勢部材81は、前記実施形態と同様の構成であり、ここでは説明を省略する。
【0144】
前記スライド部材83は、開放状態にある扉Dが閉塞位置に移動する際に、欠歯ギア46を押圧して接触位置Pから非接触位置Qに回転移動させるものであり、扉Dが閉塞位置にある状態において一端部831が欠歯ギア46に当接するとともに、他端部832がケーシングCに当接するように配置されている。
具体的にこのものは、ここでは平板状をなし、一端部831及び他端部832それぞれに、例えば扉Dと筐体Hとを連結するヒンジプレートHPに設けられた長孔HPa内を摺動する摺動部833が設けられている。なお、スライド部材83の一端部831及び他端部832に長孔が設けられており、ヒンジプレートHPに摺動部を設けた構成であっても良い。
【0145】
本実施形態のスライド部材83には、欠歯ギア付勢部材81を取り付けるための取付部T3がスライド可能に挿通される長孔83aが形成されているが、スライド部材83の形状は適宜変更して構わない。
【0146】
上述した構成により、
図15に示すように、開放状態にある扉Dが閉塞位置に向かってヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転し始めると、スライド部材83の他端部832がケーシングCのガイド面C1に押し当てられ、各摺動部833が長孔HPa内を摺動する。このとき、スライド部材83の一端部831は欠歯ギア46の端面を押圧し、この押圧力が欠歯ギア付勢部材81の付勢力に抗して欠歯ギア46を接触位置Pから非接触位置Qに向かって回転移動させる。
【0147】
一方、閉塞位置にある扉Dが開方向に向かってヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転し始めると、
図15に示すように、前記欠歯ギア付勢部材81によって欠歯ギア46が非接触位置Qから接触位置Pに向かって回転移動し、欠歯ギア46が駆動ギア45に接触する。このとき、スライド部材83は、一端部831が欠歯ギア46から離れる向きにスライド移動し、このスライド移動に伴って他端部832はガイド面C1に当接しながら当該ガイド面C1に沿ってスライドする。
【0148】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0149】
<第2実施形態>
以下では、第2実施形態における冷蔵庫用扉開閉機構について
図16及び
図17を参照して説明する。この第2実施形態における冷蔵庫用扉開閉機構は、欠歯ギア回転機構80の構成が第1実施形態とは異なり、第1実施形態におけるバネなどの弾性力の代わりに磁石の磁力を利用して構成したものである。以下、この欠歯ギア回転機構80について説明する。なお、欠歯ギア46の動きは、第1実施形態と同様である。
【0150】
本実施形態の欠歯ギア回転機構80は、
図16及び
図17に示すうように、欠歯ギア46に連結されるとともに、筐体側に固定されている被当接部804に当接する当接位置P1と、前記被当接部804から離間する離間位置Q1との間を磁力によって移動するリンク部材801と、扉側に設けられて、扉が閉塞位置にある状態においてリンク部材801に接触してリンク部材801の移動を規制する規制部材802とを具備している。
【0151】
前記リンク部材801は、例えば扉と筐体とを連結するヒンジプレートHPに対して所定の回転軸80X周りに回転可能に取り付けられるとともに、一端部801aに欠歯ギア46が取り付けられている。
本実施形態のリンク部材801は、前記ヒンジプレートHPに設けられた金属製の被当接部804に磁力によって引き寄せられることで、離間位置Q1から当接位置P1に回転移動して、欠歯ギア46を回転させるように構成されており、具体的には扉が閉塞位置にある状態において被当接部804に接することなく被当接部804の近傍に位置する磁石803を有している。
【0152】
前記規制部材802は、例えばケーシングCに設けられて、扉とともに移動するものであり、扉が閉塞位置にある状態において前記リンク部材801の他端部801bに当接して、磁石803が被当接部804に引き寄せられることを防ぐものである。
【0153】
上述した構成により、
図17に示すように、開放状態にある扉が閉塞位置に向かってヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転し始めると、リンク部材801の他端部801bがケーシングCのガイド面C1に押し当てられ、このガイド面C1に沿ってスライドしながら回転軸80X周りに回転する。このとき、リンク部材801の一端部801aは欠歯ギア46の端面を押圧し、欠歯ギア46を接触位置Pから非接触位置Qに向かって回転移動させる。
【0154】
一方、閉塞位置にある扉が開方向に向かってヒンジ軸Zの軸心X1を中心に回転し始めると、規制部材802がリンク部材801の他端部801bから離間する方向に移動する。これにより、磁力によって磁石803が被当接部804に引き寄せられ、リンク部材801が離間位置Q1から当接位置P1に回転移動するとともに、この回転移動に伴って欠歯ギア46が非接触位置Qから接触位置Pに回転移動して駆動ギア45と噛み合う。
【0155】
<第2実施形態の変形例>
前記実施形態の欠歯ギア回転機構80は、磁石803が被当接部804に引き寄せられることで欠歯ギア46を回転させるように構成されていたが、
図18に示すように、リンク部材801の磁石803に反発する第2磁石805を被当接部804に設けることにより、両方の磁石801、803が反発することで欠歯ギア46を回転させるように構成されていても良い。
【0156】
<第3実施形態>
以下では、第3実施形態における冷蔵庫用扉開閉機構100に関し、前記実施形態と異なる部分である首振り機構50及び動力非伝達保持機構60について説明する。
【0157】
前記実施形態における首振り機構は、単一の取付部材を有していたが、第2実施形態における首振り機構は、
図19及び
図20に示すように、一対の取付部材51(以下、これらを区別するときは、第1取付部材51a、第2取付部材51bともいう)を有している。
なお、回転負荷部材52及び押圧部材53は、前記実施形態と同様の構成であり、これらに関する説明は省略する。
【0158】
具体的にこの取付部材51は、特に
図20に示すように、厚み方向に貫通して形成された貫通穴51hを有する平板部材511と、平板部材511から起立するとともに遊動ギアが取り付けられる遊動ギア用取付軸512とから構成されている。
前記貫通穴51hは、略円形状をなすとともに、センターギア43が取り付けられるセンターギア用取付軸7の径寸法よりも大きく形成されている。これにより、この貫通穴51hを介して取付部材51をセンターギア用取付軸7に通すことができ、この取付部材51は、センターギア用取付軸7を中心に回転可能となる。
【0159】
上述したように組み立てられた状態において、本実施形態の首振り機構50は、特に
図19に示すように、第1取付部材51aと第2取付部材51bとが扉側ギア42に向かって所定の開き角度θ1となるように構成されている。前記開き角度θ1は、言い換えれば、センターギア43の回転軸を中心とした各遊動ギア44a、44bの回転軸のなす角度である。
【0160】
第2実施形態では、この開き角度θ1内に、各取付部材51の平板部材511に形成された段部514が位置している。また、各取付部材51には、センターギア用取付軸7に対して段部514の反対側に形成されるとともに、前記開き角度θ1を規制する角度規制部515が設けられている。
【0161】
具体的にこの角度規制部515は、
図19及び
図20示すように、前記平板部材511の外側面から外側に突出した突出部であり、開き角度θ1が小さくなると、各角度規制部515の距離が縮まり、開き角度θ1が所定角度になると各角度規制部515が接触するように構成されている。
上述した構成により、各遊動ギア44a、44bは所定距離より近づくことはなく、両方の遊動ギア44a、44bいずれもが扉側ギア42に噛み合うことを防ぐことができる。
【0162】
次に、第2実施形態における動力非伝達状態保持機構60について説明する。
【0163】
この動力非伝達状態保持機構60は、
図19に示すように、上述した首振り機構50による一対の遊動ギア44の動きを規制して、各遊動ギア44のいずれもが扉側ギア42に噛み合っておらず、モータMの動力が扉側ギア42に伝達されない動力非伝達状態にするものである。この動力非伝達状態において、冷蔵庫用扉開閉機構100は、扉Dを手動で開閉できる手動モードとなる。
【0164】
具体的にこのものは、
図21(a)に示すように、前記首振り機構50による一対の遊動ギア44の動きを規制する規制位置Xと、
図21(b)に示すように規制位置Xでの規制を解除する解除位置Yとの間で移動する規制部材61と、規制部材61を規制位置Xに付勢する付勢部材62と、規制部材61を規制位置Xから解除位置Yに移動させる規制解除機構63とを有している。
【0165】
規制部材61は、扉側ギア42が取り付けられる扉側ギア用取付軸8に対して進退可能に構成されており、具体的には、一端部が半円形状をなすとともに、他端部に厚み方向に貫通する貫通穴61hが形成されたものである。
前記貫通穴61hは、略長穴形状をなすとともに、扉側ギア用取付軸8の径寸法より大きく形成されている。これにより、この貫通穴61hを介して規制部材61を扉側ギア用取付軸8に通すことができ、この規制部材61は、扉側ギア用取付軸8に対して進退可能となる。
【0166】
この規制部材61は、上述した進退移動によって、規制位置Xと解除位置Yとの間を移動し、規制位置Xにおいて、一端部が第1取付部材51aと第2取付部材51bとの間に介在して一対の遊動ギア44の旋回を規制し、解除位置Yにおいて、前記一端部が第1取付部材51a及び第2取付部材51bのいずれにも接触せず、前記旋回を許容する。
なお、ここでは規制位置Xにおいて、規制部材61の一端部が、上述した各平板部材511の各段部514の間に形成された隙間に嵌り込むように構成されている。
【0167】
付勢部材62は、規制部材61に対して解除位置Yから規制位置Xに向かう付勢力を与えるものであり、本実施形態では、一端が規制部材61に取り付けられるとともに、他端が例えばケースに固定された固定部材9に取り付けられたバネ等の弾性部材である。
【0168】
規制解除機構63は、前記規制部材61を規制位置Xから解除位置Yに移動させるものであり、ここでは、規制部材61に取り付けられるともに、例えば図示しない制御部からの制御信号を受け付けて、規制部材61に対して、前記付勢力と反対方向の解除力を与えるものである。
より具体的に本実施形態の規制解除機構63は、前記制御信号を受け付けると、図示しないソレノイドに瞬時通電され、この瞬時通電によって、前記解除力を前記規制部材61に与えるように構成されている。
【0169】
上述した構成によれば、規制解除機構63が、図示しないソレノイドの瞬時通電によって規制部材61を規制位置Xから解除位置Yに移動させることで、一対の遊動ギア44は、センターギア43周りに旋回しようとするトルクによって旋回し、一方又は他方の遊動ギア44a、44bが扉側ギア42に噛み合い、動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わる。
このとき、一方又は他方の遊動ギア44a、44bが扉側ギア42に噛み合うと、この遊動ギア44には、センターギア43及び扉側ギア42から、噛み合っている部分を介して、接線方向の力が加わる。これにより、動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わると、遊動ギア44に加わる前記トルクが増大し、このトルクが規制部材61に加わる付勢力に抗して、規制部材61が解除位置Yに留まるとともに動力伝達状態が保たれる。
【0170】
<第4実施形態>
以下では、第4実施形態における冷蔵庫用扉開閉機構100について
図22〜
図32を参照して説明する。
なお、
図22〜
図32に付された記号は、第4実施形態の説明において用いられるものである。
【0171】
まず始めに、本実施形態に係る冷蔵庫Rについて説明する。
【0172】
冷蔵庫Rは、
図22に示すように、前面が開口した筐体Hと、前記筐体Hの開口に設けられた左右の扉Dとを有し、左右の扉Dが所定の回転軸を中心に回転するように構成されたものである。
なお、各扉Dは、筐体Hに対して例えばヒンジZで接続されている。
【0173】
冷蔵庫用扉開閉機構100は、上述した冷蔵庫Rの各扉Dを独立して開閉するためのものであり、ここでは、冷蔵庫Rの上面に、左右の扉Dそれぞれに対して設けられている。
本実施形態では、各冷蔵庫用扉開閉機構100は、いずれも同じ構成を有しており、以下では、代表して右側の扉Dを開閉するための冷蔵庫用扉開閉機構100について説明する。
【0174】
具体的にこの冷蔵庫用扉開閉機構100は、
図23に示すように、筐体Hの上面に設けられた駆動機構10と、駆動機構10の動力を扉Dに伝達するリンク機構20と、リンク機構20が扉Dを開くときの補助をする補助機構30とを具備している。
以下、各機構について説明する。
【0175】
<駆動機構>
駆動機構10は、扉Dを開閉するための動力を出力するものであり、ここでは、
図23に示すように、ケーシングC内に収容されて筐体Hの上面に取り付けられている。
具体的にこのものは、
図24及び
図25に示すように、モータMと、モータMの動力をリンク機構20に伝達する動力伝達機構40とを有している。
【0176】
モータMは、図示しない制御部からの制御信号を受け付けて、正回転又は逆回転するものであり、ここでは、例えば、前記制御信号に基づいて、所定の回転数で回転するように構成されている。
【0177】
動力伝達機構40は、モータMの動力がリンク機構20に伝達される動力伝達状態と、前記動力がリンク機構20に伝達されない動力非伝達状態とに切り替わるように構成されており、具体的には、モータMに連動して回転するモータ側ギア41と、扉Dの開閉、つまりリンク機構20に連動して回転する扉側ギア42と、モータ側ギア41に噛み合うセンターギア43と、センターギア43に噛み合う一対の遊動ギア44(以下、これらを区別するときは、一方の遊動ギア44a、他方の遊動ギア44bともいう)とを有している。
【0178】
本実施形態では、複数のモータ側ギア41が、直列的に接続されており、これらのうち最も扉側に位置するモータ側ギア41に、センターギア43に接続されている。このセンターギア43に噛み合う一対の遊動ギア44は、センターギア43の回転軸と扉側ギア42の回転軸とを結ぶ直線を挟むように配置されており、センターギア43に連動して回転する。
【0179】
そして、本実施形態の動力伝達機構40は、
図24及び
図25に示すように、センターギア43が回転することにより、一対の遊動ギア44を、センターギア43を中心にセンターギア43の回転軸と垂直な平面に沿って動かす首振り機構50と、各遊動ギアのいずれもが扉側ギア42に噛み合わない動力非伝達状態にする動力非伝達状態保持機構60とをさらに具備している。
なお、
図25に示す動力伝達機構40は、上述した自動開モードにおいて、センターギア43、一対の遊動ギア44及び扉側ギア42を取り外した状態である。
【0180】
前記首振り機構50は、一対の遊動ギア44を、一方の遊動ギア44aが扉側ギア42に噛み合う正回転動力伝達位置と、他方の遊動ギア44bが扉側ギア42に噛み合う逆回転動力伝達位置と、一対の遊動ギア44いずれもが扉側ギア42に噛み合わない動力非伝達位置との間で移動させるものである。
【0181】
本実施形態の首振り機構50は、一対の遊動ギア44をセンターギア43の回転軸周りにセンターギア43の回転方向に沿って旋回させ、これにより、一方の遊動ギア44aを扉側ギア42に噛み合わせるとともに他方の遊動ギア44bを扉側ギア42から離す、又は、他方の遊動ギア44bを扉側ギア42に噛み合わせるとともに一方の遊動ギア44aを扉側ギア42から離すように構成されている。
【0182】
より詳細には、
図24の上段に示すように、モータMの回転に連動してセンターギア43が正回転すると(本実施形態では、上方から視て反時計回り)、一対の遊動ギア44がセンターギア43の回転軸を中心に上方から視て反時計回りに旋回して、一方の遊動ギア44aが扉側ギア42に噛み合う。これにより、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、モータMの動力によって扉Dが自動で開く自動開モードとなる。
【0183】
一方、
図24の下段に示すように、モータMの回転に連動してセンターギア43が逆回転すると(本実施形態では、上方から視て時計回り)、一対の遊動ギア44がセンターギア43の回転軸を中心に上方から視て時計回りに旋回して、他方の遊動ギア44bが扉側ギア42に噛み合う。これにより、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、モータMの動力によって扉Dが自動で閉じる自動閉モードとなる。
【0184】
上述した自動開モード及び自動閉モードにおいて、扉側ギア42と、扉側ギア42に噛み合っている一方又は他方の遊動ギア44と、センターギア43とは、これらのなす角度αが90度以上かつ130度以下となるように配置されており、本実施形態では、前記角度αが110度以上かつ120度以下となるように設計されている。
【0185】
続いて、前記首振り機構50の具体的構成を説明する。
このものは、
図25及び
図26に示すように、センターギア43の回転軸を中心に回転するとともに、遊動ギアが取り付けられる取付部材51と、取付部材51と遊動ギアとの間に介在するとともに、各遊動ギアの回転に負荷を与える回転負荷部材52とを具備している。
【0186】
取付部材51は、特に
図26に示すように、厚み方向に貫通して形成された貫通穴51hを有する平板部材511と、平板部材511から起立するとともに遊動ギアが取り付けられる遊動ギア用取付軸512とから構成されている。
前記貫通穴51hは、略円形状をなすとともに、センターギア43が取り付けられるセンターギア用取付軸7の径寸法よりも大きく形成されている。これにより、この貫通穴51hを介して取付部材51をセンターギア用取付軸7に通すことができ、この取付部材51は、センターギア用取付軸7を中心に回転可能となる。
【0187】
回転負荷部材52は、遊動ギアの回転に負荷を与え、一対の遊動ギア44をセンターギア43の回転軸周りに旋回させるトルクを発生させるものであり、ここでは、遊動ギア用取付軸512に取り付けられるとともに、遊動ギア44に対して回転軸に沿った上向きの力を加えるバネ等の弾性部材である。
【0188】
本実施形態では、
図26に示すように、遊動ギア用取付軸512に回転負荷部材52を通し、その上から遊動ギア44を通し、さらにその上から遊動ギアを押圧する押圧部材53を通すことで、回転負荷部材52から遊動ギアへ上向きの力が加わるように構成されている。
なお、前記押圧部材53は、前記遊動ギア用取付軸512の外周面に周方向に沿って形成された凹溝513に係合するように構成されている。
【0189】
ここで、本実施形態の動力伝達機構40は、
図24及び
図25に示すように、センターギア用取付軸7に一方の遊動ギア44aが取り付けられる第1取付部材51aを通し、その上から他方の遊動ギア44bが取り付けられる第2取付部材51bを通し、さらにその上からセンターギア43を通して組み立てられている。
【0190】
上述したように組み立てられた状態において、本実施形態の首振り機構50は、特に
図25に示すように、第1取付部材51aと第2取付部材51bとが扉側ギア42に向かって所定の開き角度θ1となるように構成されている。前記開き角度θ1は、言い換えれば、センターギア43の回転軸を中心とした各遊動ギア44a、44bの回転軸のなす角度である。
【0191】
本実施形態では、この開き角度θ1内に、各取付部材51の平板部材511に形成された段部514が位置するとともに、センターギア用取付軸7に対して段部514の反対側に形成されるとともに、前記開き角度θ1を規制する角度規制部515が設けられている。
【0192】
具体的にこの角度規制部515は、
図25及び
図26に示すように、前記平板部材511の外側面から外側に突出した突出部であり、開き角度θ1が小さくなると、各角度規制部515の距離が縮まり、開き角度θ1が所定角度になると各角度規制部515が接触するように構成されている。
上述した構成により、各遊動ギア44a、44bは所定距離より近づくことはなく、両方の遊動ギア44a、44bいずれもが扉側ギア42に噛み合うことを防ぐことができる。
【0193】
次に、動力非伝達状態保持機構60について説明する。
【0194】
動力非伝達状態保持機構60は、
図28に示すように、上述した首振り機構50による一対の遊動ギア44の動きを規制して、各遊動ギア44のいずれもが扉側ギア42に噛み合っておらず、モータMの動力が扉側ギア42に伝達されない動力非伝達状態にするものである。本実施形態では、動力非伝達状態において、冷蔵庫用扉開閉機構100が、扉Dを手動で開閉できる手動モードとなる。
【0195】
具体的にこのものは、
図28の上段に示すように、前記首振り機構50による一対の遊動ギア44の動きを規制する規制位置Xと、
図28の下段に示すように規制位置Xでの規制を解除する解除位置Yとの間で移動する規制部材61と、規制部材61を規制位置Xに付勢する付勢部材62と、規制部材61を規制位置Xから解除位置Yに移動させる規制解除機構63とを有している。
【0196】
規制部材61は、扉側ギア42が取り付けられる扉側ギア用取付軸8に対して進退可能に構成されており、具体的には、一端部が半円形状をなすとともに、他端部に厚み方向に貫通する貫通穴61hが形成されたものである。
前記貫通穴61hは、略長穴形状をなすとともに、扉側ギア用取付軸8の径寸法より大きく形成されている。これにより、この貫通穴61hを介して規制部材61を扉側ギア用取付軸8に通すことができ、この規制部材61は、扉側ギア用取付軸8に対して進退可能となる。
【0197】
この規制部材61は、上述した進退移動によって、規制位置Xと解除位置Yとの間を移動し、規制位置Xにおいて、一端部が第1取付部材51aと第2取付部材51bとの間に介在して一対の遊動ギア44の旋回を規制し、解除位置Yにおいて、前記一端部が第1取付部材51a及び第2取付部材51bのいずれにも接触せず、前記旋回を許容する。
より詳細に、規制位置Xにおいては、規制部材61の一端部が、上述した各平板部材511の各段部514の間に形成された隙間に嵌り込むように構成されている。
【0198】
付勢部材62は、規制部材61に対して解除位置Yから規制位置Xに向かう付勢力を与えるものであり、本実施形態では、一端が規制部材61に取り付けられるとともに、他端が例えばケースに固定された固定部材9に取り付けられたバネ等の弾性部材である。
【0199】
規制解除機構63は、前記規制部材61を規制位置Xから解除位置Yに移動させるものであり、ここでは、規制部材61に取り付けられるともに、例えば図示しない制御部からの制御信号を受け付けて、規制部材61に対して、前記付勢力と反対方向の解除力を与えるものである。
より具体的に本実施形態の規制解除機構63は、前記制御信号を受け付けると、図示しないソレノイドに瞬時通電され、この瞬時通電によって、前記解除力を前記規制部材61に与えるように構成されている。
【0200】
以上のように構成された動力伝達機構40によれば、動力伝達状態又は動力非伝達状態に切り替わることにより、扉Dの開閉を自動又は手動に切り替えることができる。
以下、動力伝達機構40が、動力伝達状態又は動力非伝達状態に切り替わる際の動作について説明する。
【0201】
始めに、動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わる動作について説明する。
なお、動力伝達状態に切り替わる際に、一方又は他方のどちらの遊動ギア44が扉側ギア42に噛み合うかは、モータMの回転方向によって定まり、いずれの場合も動作原理は同様であるため、以下では、代表して一方の遊動ギア44aが扉側ギア42に噛み合って動力伝達状態に切り替わる場合を説明する。
【0202】
動力非伝達状態においては、
図27に示すように、規制部材61が規制位置Xに付勢されており、一対の遊動ギア44はいずれも扉側ギア42と噛み合っていない。
ここで、モータMに所定の電圧を印加して、センターギア43を正回転させると、一対の遊動ギア44には、センターギア43との噛み合っている部分を介して接線方向の力が加わる。
この接線方向の力により、各遊動ギア44は回転軸を中心に回転し始める。ところが、回転負荷部材52が、遊動ギアの回転に負荷を与えているため、前記接線方向の力は、遊動ギアを回転軸を中心に回転させる回転トルクと遊動ギアをセンターギア43周りに旋回させる首振りトルクとに分配される。
このとき、本実施形態では、付勢部材62から規制部材61に加わる付勢力が前記首振りトルクに抗しており、規制部材61が、首振り機構50による一対の遊動ギア44の動きを規制した状態(つまり、動力非伝達状態)を保つ。
【0203】
この状態において、例えば、図示しない制御部に動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替えるための切替信号が送信されると、前記制御部は、規制解除機構63のソレノイドに印加される電圧を制御して瞬時通電し、規制部材61に瞬間的な解除力を加える。
これにより、規制部材61が規制位置Xから解除位置Yに移動するとともに、一対の遊動ギア44は、首振りトルクによって、センターギア43周りに旋回して、一方の遊動ギア44aが扉側ギア42に噛み合い、動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わる。
【0204】
このように、一方の遊動ギア44aが扉側ギア42に噛み合って動力伝達状態に切り替わると、一方の遊動ギア44aには、扉側ギア42との噛み合っている部分を介して接線方向の力が加わる。
これにより、上述した首振りトルクが増大し、本実施形態では、この首振りトルクが前記付勢力に抗して、ソレノイドに通電することなく、規制部材61を解除位置Yに留まらせることができる。
【0205】
次に、動力伝達状態から動力非伝達状態に切り替わる動作について説明する。
動力伝達状態では、上述したように、首振りトルクが付勢力に抗して、動力伝達状態が保たれている。
この状態において、例えば、図示しない制御部に動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替えるための切替信号が送信されると、前記制御部は、モータMに印加される電圧を制御して、モータMの回転を停止又は瞬間逆転させる。
これにより、モータMに連動してセンターギア43の回転は停止又は瞬間逆転し、上述した首振りトルクが減少する。
これにより、前記付勢力が首振りトルクに抗して、規制部材61が解除位置Yから規制位置Xに移動して、遊動ギアと扉側ギア42との噛み合いが外れるとともに、動力伝達状態から動力非伝達状態に切り替わる。
【0206】
<リンク機構>
続いて、上述した駆動機構10から出力された動力を、扉Dに伝えるリンク機構20について説明する。
【0207】
リンク機構20は、一端部が前記駆動機構10の出力軸(本実施形態では、扉側ギア42の出力軸)に接続されるとともに、他端部が扉Dに接続されるものであり、具体的には、
図29及び
図30に示すように、前記駆動機構10の動力によって回転する第1アーム21と、第1アーム21の回転に連動して動く第2アーム22とから構成されている。
【0208】
第1アーム21は、一端部が扉側ギア42に例えば螺子などで固定されるとともに、他端部に第2アーム22が接続され、扉側ギア42と連動して扉側ギア42の回転軸を中心に回転するように構成されている。
本実施形態では、扉Dが閉じられている状態において、第1アーム21の一端部から他端部に向かう第1延伸方向L1が、筐体Hの後方に向くように設定されている。
【0209】
第2アーム22は、一端部が前記第1アーム21に接続されており、この接続部23を中心に回転するとともに、一端部から他端部に向かう第2延伸方向L2に沿って進退移動するように構成されている。
より詳細にこの第2アーム22は、第1アーム21からの力を受ける力点及び扉Dに力を加える作用点を有しており、回転及び進退移動しながら扉Dを開閉するものである。
本実施形態では、
図30に扉Dが閉じられている状態において、前記第2延伸方向L2が、筐体Hの前方に向くように設定されている。
【0210】
ここで、本実施形態では、前記第1延伸方向L1は、扉側ギア42の回転軸から第1アーム21の他端部に設けられた第2アーム22の回転軸に向かう方向である。また、前記第2延伸方向L2は、前記力点から前記作用点に向かう方向であり、具体的には、第1アーム21の他端部に設けられた第2アーム22の回転軸から第2アームの他端部に設けられた扉Dに接続される接続部に向かう方向である。
【0211】
そして、本実施形態のリンク機構20は、
図30に示すように、扉Dが閉じている状態において、前記作用点が、前記力点から視て扉Dへ垂直に向かう方向よりも扉Dの回転軸側(本実施形態では、ヒンジZ側)に位置しているように構成されている。
【0212】
本実施形態のリンク機構20は、第1アーム21と第2アーム22のなす角度、つまり第1延伸方向L1と第2延伸方向L2のなす角度θ2が、扉Dが開いている状態において180度以下となるように構成されている。
【0213】
<補助機構>
本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、上述したリンク機構20が扉Dを開くときの補助をする補助機構30をさらに具備している。
【0214】
この補助機構30は、扉Dを開くための補助力を生じさせるものであり、ここでは、図示しないケーシング内に収容されて扉Dの上面に取り付けられている。
具体的にこのものは、
図30に示すように、所定の回転軸T1を中心に回転する回転部材31と、筐体Hに力を作用させることにより、扉Dに前記補助力を与える補助力付与部材32と、前記回転部材31と前記補助力付与部材32とを接続する接続部材33とを具備してなる。
【0215】
回転部材31は、回転体311と、回転体311から上向きに突出した突出部312とから構成されており、本実施形態では、上述した第2アーム22が前記突出部312に接触することにより、回転体311が回転軸T1を中心に回転するように構成されている。
詳述すると、本実施形態の第2アーム22は、
図29及び
図30に示すように、他端部に厚み方向に貫通した長穴22hが形成されたものであり、この長穴22hに扉Dの上面から起立した突出ピンPが貫通するように構成されている。また、この第2アーム22は、前記長穴22hより一端部側に形成され、前記第2延伸方向L2と交差する方向に延びる延出部221を有している。
上述した構成により、本実施形態の第2アーム22は、長穴22hが突出ピンPに沿ってスライドするように、第2延伸方向L2に沿って進退移動し、一端部から他端部に向かって進退移動する際に、前記延出部221が回転体311の突出部312に衝突して、回転体311を回転させる。
【0216】
補助力付与部材32は、前記回転部材31と連動して回転軸T2を中心に回転するものであり、この回転によって筐体Hの前面に衝突する衝突部321を有している。
本実施形態の補助力付与部材32は、前記衝突部321が、扉Dの回転軸T3から所定距離離れた位置に設けられており、この所定距離に応じた大きさの補助力を扉Dに作用させるように構成されている。
【0217】
接続部材33は、回転部材31と補助力付与部材32とを接続して、これらを連動して回転させるものであり、扉Dの長手方向に沿って延伸する長尺状をなすものである。
【0218】
<制御部>
次に、冷蔵庫用扉開閉機構100の動作を制御する制御部について説明する。
【0219】
制御部は、扉Dの開閉移動や動力伝達機構40の動作を制御するものであり、物理的には、CPU、メモリ、タイマー、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えたものであり、機能的には、
図31に示すように、動力伝達機構40を動力伝達状態又は動力非伝達状態に切り替える切替部71と、扉Dの移動速度を算出する速度算出部72と、モータMの出力を制御するモータ制御部73とを有している。
【0221】
切替部71は、例えば扉Dに設けられた入力手段を用いて、ユーザが入力した切替信号を取得するものであり、具体的には、前記切替信号に基づいて、モータMに印加される電圧や、規制解除機構63のソレノイドに印加される電圧を制御して、動力伝達機構40を動力伝達状態又は動力非伝達状態に切り替えるように構成されている。
【0222】
速度算出部72は、扉Dの移動量及び移動時間に基づいて扉Dの移動速度を算出するものである。
本実施形態の速度算出部72は、扉Dの開度を検出する扉開度検出機構Eから扉の開度を示す開度信号を取得するとともに、CPU内蔵のタイマーから扉Dの移動時間を示す時間信号を取得し、これらの各信号に基づいて算出された移動速度を算出速度として後述するモータ制御部73に出力するように構成されている。
【0223】
本実施形態では、前記扉開度検出機構Eは、
図28に示すように、扉側ギア42にギアを介して取り付けられており、扉側ギア42の回転量に応じたパルス信号を前記開度信号として速度算出部72に出力するものであり、具体的には、扉側ギア42と同期して回転するエンコーダ等を利用したものである。
また、前記タイマーは、前記扉開度検出機構Eからパルス信号が出力される時間を測定し、この時間を扉Dの移動時間として前記時間信号を速度算出部72に出力するものである。
【0224】
モータ制御部73は、前記速度算出部72により出力された算出速度と、例えば予めメモリの所定領域に記憶された目標速度とを取得するともに、前記算出速度と前記目標速度とを比較して、扉Dの算出速度が目標速度に近づくように、モータMへの出力をPWM制御などすることで、モータ速度を可変に制御できるように構成されている。
【0225】
本実施形態では、前記速度算出部72が、扉Dの移動範囲を分割した複数のステップ毎に移動速度を算出し、前記モータ制御部73が、1つのステップにおいて速度算出部72により算出された算出速度に基づき、次のステップにおけるモータMの出力を制御するように構成されている。
【0226】
ここで、扉Dの移動範囲とは、扉Dが閉じている状態から、扉Dの開度が所定の目標角度となるまでの範囲に設定されており、本実施形態では、例えば、前記開度が0度〜110度までの範囲としている。
また、各ステップは、上述した移動範囲を、一定の開度毎に分割した各範囲に設定されており、本実施形態では、移動範囲である0度〜110度を例えば10度毎に分割した各範囲としている。
【0227】
以下、上述した設定における制御部の具体的な制御内容について説明する。
【0228】
本実施形態では、モータMの通電を開始したあと、前記扉開度検出機構Eが、扉Dの開度を検出するとともに、前記タイマーが、扉Dの開度が10度増えるまでの時間を測定する。
【0229】
そして、速度算出部72が、扉開度検出機構Eからの開度信号及びタイマーからの時間信号に基づいて、扉Dの開度が10度増える間の移動速度、つまり各ステップの移動速度を算出し、この結果を算出速度としてモータ制御部73に出力する。
【0230】
モータ制御部73は、各ステップにおいて算出された算出速度と、各ステップそれぞれに設定されている目標速度とを比較し、これらの差分に応じて、次のステップにおけるモータMへの出力を、PWM制御の通電比率(デューティー比)を変化させて制御する。
より具体的には、モータ制御部73は、
図32に示すように、4個のスイッチSWを切り替えることで、モータMの動作を正転状態、ブレーキ状態、OFF状態、逆転状態に制御する。例えば、正転状態又は逆転状態と、ブレーキ状態又はOFF状態とをPWM制御により短時間に切り替えることにより、モータMを減速させることができる。なお、各スイッチSWは、例えばトランジスタなどで構成されている。
【0231】
上述した制御により、本実施形態では、扉Dが開き始めてから、扉Dを目標速度である例えば20〜40[度/秒]で移動させて、その後、目標角度である110度を目指して減速させることができる。
これにより、扉Dに加わる荷重に関わらず、扉Dを安定的に自動開閉することができ、扉Dの移動速度や開度の均一化を図ることができる。
【0232】
このように構成された本実施形態に係る冷蔵庫用扉開閉機構100によれば、首振り機構50が一対の遊動ギア44をセンターギア43の回転軸と垂直な平面に沿って動かすことで、動力伝達状態と動力非伝達状態とを切り替えることができ、従来のクラッチ機構のように、高さ方向にギアを動かすような機構を不要にすることができ、動力伝達機構40を高さ方向にコンパクトにすることができる。
【0233】
また、一対の遊動ギア44が、センターギア43の回転に連動して、センターギア43の回転軸と垂直な平面に沿って動くので、モータMの動力を使って遊動ギア44を動かすことができ、遊動ギア44を動かすための専用のアクチュエータを不要にすることができる。
【0234】
さらに、ソレノイドに瞬時通電することで動力非伝達状態から動力伝達状態に切り替わるので、規制解除機構63の構成を簡素化することができるうえ、上述した切り替えに必要なエネルギーも少なくて良い。
【0235】
そのうえ、扉Dが閉じている状態において、第2アーム22の作用点が、力点から視て扉Dへ垂直に向かう方向よりも扉Dの回転軸側に位置しているので、不必要に各アーム21、22の長さを長くすることなく、扉Dを90度以上開閉することができる。
【0236】
加えて、扉Dと筐体Hとが磁石などで着磁されている場合には、扉Dを開く際に着磁を外す力を要するところ、補助機構30が、扉Dを開ける補助力を生じさせるので、この補助力で着磁を外すことができ、これにより、扉Dを開くために必要となるモータMの動力をさらに小さくすることができる。また、第2アーム22に長穴22hを設けることにより、突出ピンPに沿ってその長穴22hが移動する間に着磁を外すことで、モータMに最も負荷がかかる起動トルクを小さくすることができ、モータMへの負荷も小さくなる。
【0237】
また、扉側ギア42と、扉側ギア42に噛み合っている一方又は他方の遊動ギア44と、センターギア43とのなす角度が110度以上かつ120度以下となるように各ギアが配置されているので、ハンチング等を起こすことなく、確実に動力を伝達することができる。
【0238】
そのうえ、図示しない制御部が、扉Dの動作速度を所定の速度に制御するので、収容物の重さなどにより扉Dの重量が変動した場合であっても、扉Dの開閉速度が速すぎる又は遅すぎることがなく、ユーザにとって操作性が良い。
より詳細には、扉Dに加わる荷重に関わらず、扉Dをユーザの操作性において理想的な移動速度である20〜40[度/秒]で移動させることができるうえ、扉Dの開度を目標角度である110度を目指して減速させることができ、扉Dの移動速度及び開度を均一化することができる。
【0239】
さらに、角度規制部515が、センターギア43の回転軸を中心とした各遊動ギアの回転軸のなす角度を、所定角度より以下に規制するので、一対の遊動ギア44が両方とも扉側ギア42に噛み合うことを防ぐことができる。
【0240】
<第4実施形態の変形例>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0241】
例えば、前記実施形態では、回転負荷部材が弾性部材であったが、例えば、遊動ギアと取付部材との間に摩擦を生じさせるようなものであっても良く、具体的には、フェルト等のシート部材や、マグネット等の磁力抵抗などが挙げられる。
【0242】
また、前記実施形態では、各遊動ギアが、別の取付部材に取り付けられていたが、一対の遊動ギアが、共通の取付部材に取り付けられていても良い。
【0243】
さらに、前記実施形態では、扉側ギアが1つであったが、複数の扉側ギアを有しても良い。
【0244】
加えて、前記実施形態の動力伝達機構は、冷蔵庫の扉を開閉するために用いられていたが、必ずしも冷蔵庫の扉に限定する必要はない。
【0245】
そのうえ、前記実施形態の制御においては、扉の移動範囲を0度〜110度とし、各ステップを前記移動範囲を10度毎に分割した範囲としていたが、移動範囲及び各ステップの設定は適宜変更しても構わない。
【0246】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【0247】
<第5実施形態>
以下では、第5実施形態における冷蔵庫用扉開閉機構100について
図33〜
図44を参照して説明する。なお、前記第1実施形態と同じ部材には、同一の符号を付すものとする。
【0248】
本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、モータMの動力を複数の駆動ギア45の回転のみによって扉のヒンジZに伝達する動力伝達機構40と、閉塞位置にある扉Dを開方向に移動させるための補助力を発生させる補助機構30とを具備する。
【0249】
さらに、この冷蔵庫用扉開閉機構100は、モータMの動力をヒンジZに伝達する動力伝達状態と、モータMの動力をヒンジZに伝達させない動力非伝達状態との間を移り変わる(切り替わる)動力伝達状態遷移機構(動力伝達状態/非伝達状態切替機構)101を具備している。
【0250】
動力伝達状態遷移機構101は、
図33及び
図34に示すように、モータMとヒンジZとの間に介在している。ここでは、ヒンジZに接続されている欠歯ギア46と動力伝達状態遷移機構101との間には複数の扉側ギア42を介在させているが、これらの間に1つの扉側ギア42を介在させても構わない。また、ヒンジZに接続されている欠歯ギア46は、全周に歯を有するものであっても構わない。なお、本実施形態における欠歯ギア46は、前記第1実施形態のように回転移動するものではなく、ヒンジZに固定されたものであり、駆動ギア45の一部である。
【0251】
具体的に動力伝達状態遷移機構101は、
図35及び
図36に示すように、モータ側ギア41に接続されるセンターギア43と、センターギア43に噛み合う一対の遊動ギア44と、一対の遊動ギア44をセンターギアの回転軸周りに旋回させる首振り機構50とを備えている。
【0252】
首振り機構50は、前記第1実施形態と同様に、センターギア43の回転軸を中心に回転するとともに、遊動ギア44が取り付けられる第1取付部材51と、第1取付部材51と遊動ギア44との間に介在するとともに、各遊動ギア44の回転に負荷を与える回転負荷部材52とを備えており、本実施形態では前記センターギア43が取り付けられる第2取付部材54をさらに備えている。
【0253】
第1取付部材51は、一対の遊動ギア用取付軸512を有し、貫通孔516が形成された平板状をなすものである。
【0254】
回転負荷部材52は、遊動ギア44の回転に負荷を与え、一対の遊動ギア44をセンターギア43の回転軸周りに旋回させるトルクを発生させるものであり、ここでは、遊動ギア用取付軸512に通されるバネ等の弾性部材である。
【0255】
第2取付部材54は、センターギア用取付軸7が設けられた平板状のものであり、前記第1取付部材51の下方に配置されている。
この第2取付部材54は、センターギア43に連動して回転するものであり、第1取付部材51とは独立して回転する。
【0256】
本実施形態では、
図36に示すように、センターギア用取付軸7を貫通孔516に通すことで第2取付部材54の上面に第1取付部材51を載置した後、遊動ギア用取付軸512に遊動ギア44を取り付けるとともに、センターギア用取付軸7にセンターギア43を取り付ける。
【0257】
遊動ギア44を遊動ギア用取付軸512に取り付けるにあたっては、遊動ギア用取付軸512に回転負荷部材52を通し、その上から遊動ギア44を通し、さらにその上から遊動ギア44を押圧する押圧部材53を通すことで、回転負荷部材52から遊動ギアへ上向きの力が加わるようにする。
なお、前記押圧部材53は、前記遊動ギア用取付軸512の外周面に周方向に沿って形成された凹溝513に係合するように構成されている。
【0258】
上述した構成により、遊動ギア44は、モータMに連動して、正回転動力伝達位置と、逆回転動力伝達位置と、動力非伝達位置との間を移動する。それぞれの位置や遊動ギア44の具体的な動作に関しては、前記第1実施形態と同様であり(
図4参照)、ここでは省略する。
【0259】
このように、動力伝達状態遷移機構101は、モータMの動力を受けながら、その動力によって動力伝達状態と動力非伝達状態との間を移り変わるものである。より具体的には、首振り機構50が一対の遊動ギア44を旋回させて、一方又は他方の遊動ギア44aを扉側ギア42に噛み合わせることで動力伝達状態となり、一対の遊動ギア44と扉側ギア42との噛み合いを外すことで動力非伝達状態となる。つまり、遊動ギア44が正回転動力伝達位置又は逆回転動力伝達位置にある状態が動力伝達状態であり、遊動ギア44が動力非伝達位置にある状態が動力非伝達状態である。
【0260】
そして、本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、動力伝達状態遷移機構101が動力非伝達状態となり、モータMの動力がヒンジに伝達されない状態において、補助機構30に補助力を発生させて閉塞位置にある扉Dを開方向に移動させるように構成されている。なお、補助機構30は、
図34に示すように、スライド部材34及び補助力付与部材32を有したものであり、動作などは第1実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0261】
本実施形態の冷蔵庫用扉開閉機構100は、前記第1実施形態と同様に、動力非伝達状態保持機構60と動力変換機構70とをさらに具備している。本実施形態では、これらの機構60、70やこれらに関わる構成が前記各実施形態とは異なり特徴的であるので、以下に詳述する。
【0262】
まず、動力変換機構70について説明する。
動力変換機構70は、
図37に示すように、スライド部材34と駆動ギア45との間に介在して、駆動ギア45の回転方向の動力を、スライド部材34のスライド方向の動力に変換するものである。
【0263】
この動力変換機構70は、モータMが逆回転して扉Dを閉方向に移動させる場合には、モータMの動力を補助機構30に伝達させることなく、モータMが正回転して扉Dを開方向に移動させる場合には、モータMの動力を補助機構30に伝達させるラチェット機構102を備えている。
【0264】
ラチェット機構102は、スライド部材34に取り付けられたラチェット71(前記第1実施形態における爪部71)と、駆動ギア45に連動して回転する押圧部72(前記第1実施形態における突起部72)とを有している。
【0265】
ラチェット71は、
図38及び
図39に示すように、スライド部材34の他端部342に設けられており、前記モータMが正回転する場合に前記押圧部72により押圧される被押圧端面711と、前記モータMが逆回転する場合に前記押圧部72の動きをガイドするガイド面712とを有している。
【0266】
このラチェット71は、
図39に示すように、外力が加わっていない状態における通常姿勢Nと、通常姿勢Nから回転軸7T周りに回動した回動姿勢Rとの間を移動できるように構成されており、回動姿勢Rにある状態において通常姿勢Nに向かう付勢力を生じさせる弾性部713を有している。なお、ここでいう回動姿勢Rとは、通常姿勢Nからセンターギア43の回転軸から離れる向きに回動した状態である。
【0267】
本実施形態のラチェット71は、上述した第2取付部材54の下方に位置しており、通常姿勢Nにある状態において、被押圧端面711及びガイド面712が押圧部72の回転軌道上に位置するように配置されている。
【0268】
押圧部72は、
図37に示すように、センターギア43に連動して回転するものであり、ラチェット71にスライド部材34のスライド方向の動力を加えるものである。具体的に押圧部72は、第2取付部材54に設けられた複数の突起状のものであり、本実施形態では、2つの押圧部72を第2取付部材54の背面に設けてある。なお、押圧部72の個数は、例えば1つにするなど適宜変更して構わない。
【0269】
次に、動力非伝達状態保持機構60について説明する。
動力非伝達状態保持機構60は、首振り機構50の旋回を規制して、各遊動ギア44をいずれも扉側ギア42に噛み合わせずに動力非伝達状態を保持するものであり、具体的には、
図37に示すように、第1取付部材51に設けられて第1取付部材51とともに回転する当接部64と、当接部64が当接して首振り機構50の旋回を規制する被当接部65とを有している。
【0270】
当接部64は、
図40に示すように、第1取付部材51の背面に設けられた突起状のものであり、ここでは、一対の当接部64が遊動ギア44それぞれの回転軸上に設けられている。これらの当接部64の突出長さは、ラチェット71の被押圧端面711に接触しない寸法、すなわち当接部64の先端がラチェット71の上面714に到達しない寸法に設定されている。つまり、この当接部64は、ラチェット71の上面714よりも上方に位置している。
【0271】
なお、動力非伝達状態を保持する必要があるのは、閉塞位置にある扉Dを開方向に動かす際に扉Dと筐体Hとの着磁を外すまでであるところ、当接部64は、扉Dを開方向に移動する場合に扉側ギア42と噛み合わない遊動ギア44(
図37における上側の遊動ギア44)側に設けられていれば良い。これに対して、本実施形態において第1取付部材51に一対の当接部64を設けてあるのは、各部材を組み立てていく際に、第1取付部材51の向きを気にすることなく作業を進めることができ、製造を容易に行なえるようにするためである。
【0272】
被当接部65は、モータMが正回転して、第1取付部材51の回転に伴って一対の遊動ギア44が正回転動力伝達位置に向かう場合に、一対の遊動ギア44が正回転動力伝達位置に到達するまえに当接部64が当接する位置に設けられている。
具体的にこの被当接部65は、
図38及び
図39に示すように、ラチェット71の上面714よりも上方に位置しており、ここではラチェット71の上面714から起立して設けられたリブ形状のものである。この被当接部651には、当接部64が当接する被当接面651が形成されている。
【0273】
続いて、上述したように構成された動力非伝達状態保持機構60及び動力変換機構70などの動作について、
図41〜
図43を参照しながら説明する。
【0274】
まず、閉塞位置にある扉Dを開方向に移動させる場合について説明する。
扉Dが閉塞位置にある状態でモータMを正回転させると、
図41(a)に示すように、センターギア43の回転に連動して、首振り機構50が一対の遊動ギア44を動力非伝達位置から正回転動力伝達位置に旋回させる。この旋回に連動して、第1取付部材51が回転するので、第1部材51に設けられた当接部64が被当接部65に向かって回転する。
【0275】
そして、
図41(b)に示すように、当接部64が被当接部65(具体的には、被当接面651)に当接すると、第1取付部材51の回転、すなわち遊動ギア44の旋回が規制され、動力非伝達状態が保持される。なお、遊動ギア44の旋回が規制される理由は、遊動ギア44が回転負荷部材52の負荷による比較的小さいトルクによって旋回しているからである。
【0276】
この状態から、さらにモータMが正回転すると、第2取付部材54が第1取付部材51とは独立して回転するので、
図42(c)に示すように、センターギア43に連動して第2取付部材54に設けられた押圧部72が回転し、何れか1つの押圧部72がラチェット71(具体的には、被押圧端面711)に当たる。
【0277】
さらにモータMが正回転することにより、
図42(d)に示すように、押圧部72が被押圧端面711を介してラチェット71を押圧し、センターギア43の回転方向の動力がラチェット71を介してスライド部材34にスライド方向の動力として伝達され、スライド部材34がスライド移動する。
【0278】
その結果、補助機構30の補助力によって扉Dと筐体Hとの着磁が外され、閉塞位置にある扉Dが開方向に移動し始める。
【0279】
次に、開放状態にある扉Dを閉方向に移動させるに場合について説明する。
扉Dが開放されている状態でモータMを逆回転させると、
図43(e)に示すように、センターギア43に連動して第2取付部材54が回転するので、複数の押圧部72はラチェット71(具体的には、ガイド面712)に向かって回転する。
【0280】
押圧部72がガイド面712に当たってからさらにモータMが逆回転すると、
図43(f)に示すように、押圧部72はガイド面712を押圧しながら回転して、ラチェット71を回転軸7T周りに回動させる。これにより、ラチェット71は、通常姿勢Nから回動姿勢Rに回動するとともに、押圧部72から退避するように動く。
【0281】
その結果、モータMが逆回転する場合は、押圧部72がラチェット71に妨げられることなく回転し続け、扉Dが閉方向に移動する。
【0282】
ところで、扉Dを開方向に移動させる場合、
図42に示すように、スライド部材34のスライド移動に伴い、ラチェット71は待機位置Aから押込位置Bに移動する。
なお、ここでいう待機位置Aとは、モータMが正回転することにより押圧部72が被押圧端面711を押圧する直前のラチェット71の位置である。また、押込位置Bとは、モータMが正回転することにより被押圧端面711を押圧している押圧部72が被押圧端面711から離れる直前のラチェット71の位置である。
【0283】
このことから、ラチェット71が押圧部72に押圧された状態すなわち、ラチェット71が押込位置Bにある状態で留まると、扉Dを開方向に移動させている際に、スライド部材34などがユーザから見えてしまい、見栄えが悪い。
【0284】
そこで、本実施形態の補助機構30には、押圧部72がラチェット71を押圧することでスライド移動したスライド部材34を引き戻す図示しない引戻部材を備えさせている。具体的にこの引戻部材は、スライド部材34をスライド方向とは反対向きに付勢することにより、ラチェット71を押込位置Bから待機位置Aに引き戻すためのものであり、ここではトーションバーやバネなどの弾性部材である。
【0285】
しかしながら、引戻部材を単に設けただけでは、引戻部材がスライド部材34を引き戻すと、ラチェット71が通常姿勢Nを保ったまま押込位置Bから待機位置Aに移動するので、押圧部72が再びラチェット71を押圧してしまい、スライド部材34が再度スライド移動する。つまり、引戻部材を設けただけでは、扉Dを開方向に移動させる際に、スライド部材34がスライド移動したり引き戻されたりすることが繰り返されるに過ぎず、見栄えを十分に改善できているとはいえない。
【0286】
そこで本実施形態では、
図38〜
図40に示すように、上述したラチェット71に、引戻部材によってスライド部材34が引き戻される際に、当接部72により押圧される被押圧面652(以下、被押圧スライド面652ともいう)を設けてある。
【0287】
この被押圧スライド面652は、上述した被当接部65に設けられており、具体的には被押圧端面651における第1取付部材51側の辺から連続して形成されている。本実施形態では、被押圧スライド面652をセンターギア43の回転軸から離れる向きに湾曲させており、この被押圧スライド面652を当接部64がスライド移動することで、当接部64が被押圧スライド面652を介してラチェット71を押圧して通常姿勢Nから回動姿勢Rに移動するようにしている。
【0288】
上述した構成により、
図44(a)、(b)に示すように、図示しない引戻部材によってスライド部材34が引き戻されることで、ラチェット71を押込位置Bから待機位置Aに移動させる際に、被押圧スライド面652が当接部64に当たる。
【0289】
そして、
図44(b)、(c)に示すように、ラチェット71がさらに待機位置Aに向かって移動することで、被押圧スライド面652が当接部64に対してスライドするように動くとともに、当接部64が被押圧スライド面652を介してラチェット71を押圧する。これにより、ラチェット71は、押込位置Bから待機位置Aに移動する間に、通常姿勢Nから回動姿勢Rに回動する。
【0290】
その結果、ラチェット71が待機位置Aに移動したあとは回動姿勢Rが保たれるので、その後ラチェット71は押圧部72と干渉せず、押圧部72に押圧されない。これにより、スライド部材34が引き戻されたあと、再度スライド移動してしまうことを防ぐことができ、外観性を向上させることができる。
【0291】
以上に述べたように、本実施形態に係る冷蔵庫用扉開閉機構100によれば、動力伝達状態遷移機構101が動力非伝達状態にあり、モータMの動力がヒンジZに伝達されない状態において、閉塞位置にある扉Dを補助力によって開方向に移動させるので、扉Dと筐体Hとの着磁を外すために必要なモータMのトルクを低減させることができ、モータMの小型化を図れる。
【0292】
さらに、モータMの動力をギアなどの機械部品のみでヒンジZや補助機構30に伝達させているので、スイッチング素子などの電気部品を用いることなく、扉Dを自動で開閉することができる。
【0293】
そのうえ、動力変換機構70がラチェット機構102を備えているので、閉塞位置にある扉Dを開方向に移動させる場合には補助力を発生させるようにしつつ、扉Dを閉方向に移動させる場合には動力変換機構70によって扉Dの移動が妨げられないようにすることができる。
【0294】
加えて、着磁を外す際にスライド移動させたスライド部材34を引戻部材によって引き戻すので、扉を開方向に移動させる間にユーザからスライド部材34を見えないようにすることができ、外観性の悪化を招かない。
【0295】
さらに加えて、スライド部材34を引き戻す際に、ラチェット71を通常姿勢Nから回動姿勢Rに回動させて、ラチェット71と押圧部72との干渉を避けているので、引き戻された付勢部材34が再度スライド移動してしまうことを防ぐことができる。
【0296】
<第5実施形態の変形例>
モータの動力がヒンジに伝達されない状態において、閉塞位置にある扉を補助力によって開方向に移動させるための別の実施態様としては、
図45に示すように、動力変換機構70を構成する押圧部72の個数を増やした構成が考えられる(ここでは、5つの押圧部72を例示している)。
【0297】
このような構成であれば、前記第5実施形態のように押圧部72が2つ或いは1つの場合に比べて、何れか1つの押圧部72がラチェット71に当たるまでの時間を短くすることができる。これにより、モータMを正回転させた場合に、動力非伝達位置にある遊動ギア44が正回転動力伝達位置に移動するまえ、すなわち扉側ギア42に噛み合うまえに、押圧部72によってラチェット71を押圧できる確立が高く、モータMの動力がヒンジZに伝達されない状態において補助力を発生させることができる。
【0298】
ただし、このように押圧部72の個数を増やした構成であっても、押圧部72がラチェット71を押圧するまえに遊動ギア44が扉側ギア42に噛み合うことがあり、モータMの動力がヒンジZに伝達されない状態においてより確実に補助力を発生させるためには、前記第5実施形態のように、動力非伝達状態保持機構60を具備した構成の方が好ましい。
【0299】
また、押圧部72の個数を増やすと、スライド移動したスライド部材34を引き戻す際に、押込位置Bから待機位置Aに移動するラチェット71が押圧部72に当たってしまう確立が高くなり、スライド部材34を確実に引き戻せるわけではない。この点に鑑みても前記第5実施形態の構成の方が好ましい。
【0300】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。