特許第6774211号(P6774211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知電機株式会社の特許一覧 ▶ 中部電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6774211-電圧調整方法 図000002
  • 特許6774211-電圧調整方法 図000003
  • 特許6774211-電圧調整方法 図000004
  • 特許6774211-電圧調整方法 図000005
  • 特許6774211-電圧調整方法 図000006
  • 特許6774211-電圧調整方法 図000007
  • 特許6774211-電圧調整方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774211
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電圧調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/26 20060101AFI20201012BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20201012BHJP
   G05F 1/20 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H02J3/26
   H02J3/12
   G05F1/20 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-83306(P2016-83306)
(22)【出願日】2016年4月19日
(65)【公開番号】特開2017-195671(P2017-195671A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年2月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行人:愛知電機技報編集会議、刊行物名:愛知電機技報、号数:No.37、発行年月日:平成28年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(72)【発明者】
【氏名】苻川 謙治
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀則
(72)【発明者】
【氏名】福岡 匡宏
(72)【発明者】
【氏名】五藤 和志
(72)【発明者】
【氏名】スレシ.チャンド.ヴァルマ
(72)【発明者】
【氏名】加納 稔久
(72)【発明者】
【氏名】上田 玄
(72)【発明者】
【氏名】國井 康幸
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−176270(JP,A)
【文献】 特開平11−289666(JP,A)
【文献】 特開2004−088929(JP,A)
【文献】 特開2000−148267(JP,A)
【文献】 特開昭61−084716(JP,A)
【文献】 米国特許第05006783(US,A)
【文献】 特開平8−126203(JP,A)
【文献】 特開2000−232735(JP,A)
【文献】 実開平3−106841(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/26
G05F 1/20
H02J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線路の相間に並列接続した励磁変圧器の二次巻線に接続されるサイリスタ式のタップ切換回路と、前記励磁変圧器の三次巻線に接続されるインバータ回路を備えた電圧調整装置において、該電圧調整装置の一次側相電圧を監視してタップ切換えを行う前記タップ切換回路をフィードフォワード制御し、その後、当該電圧調整装置の二次側相電圧を監視して電圧制御を行うインバータ回路をフィードバック制御する電気信号を各相個別にすることにより、配電線路中に二次巻線が直列接続される制御変圧器の一次巻線に印加する電圧を制御し、各相個別の電圧調整を可能とすることを特徴とする電圧調整方法。
【請求項2】
前記タップ切換回路及びインバータ回路は、配電線路の線間電圧から各相の相電圧を算出し、当該相電圧を基準電圧に近づけるように各相個別に制御することを特徴とする請求項1記載の電圧調整方法。
【請求項3】
前記インバータ回路は、前記タップ切換回路を各相個別に制御したときに発生する零相電圧を打ち消す反対方向の零相電圧を発生させることを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の電圧調整方法。
【請求項4】
前記励磁変圧器に、各相の電流がアンバランスとなることを防止する安定巻線を設けることにより、各相個別に電圧制御したときに発生する零相電流を打ち消すことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の三相不平衡電圧を是正し電力品質を向上することのできる電圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統に分散電源(太陽光発電等)が大量連系されることが予想される中、電圧上昇・電圧変動や電圧不平衡の発生が懸念されている。配電系統の電圧を適正電圧に維持する電圧調整装置としては、単巻変圧器にタップを設け、負荷時タップ切換器でタップを切り換えることで出力電圧を一定に調整する自動電圧調整装置(SVR:Step Voltage Regulator)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−55599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、従来の自動電圧調整装置(SVR)は、負荷時タップ切換器が三相一括で動作する構造のため三相一括の電圧調整しか行えず、三相不平衡電圧を是正することができなかった。
【0005】
仮に上記の自動電圧調整装置(SVR)で三相不平衡電圧を是正しようとすれば、タップを動作させる駆動部が各相毎(三相分)必要になり、装置の構造が複雑化するとともに、コストが高くなり現実的でない。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、装置コストを抑制しつつ、配電線の三相不平衡電圧を確実に是正することのできる電圧調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、配電線路の相間に並列接続した励磁変圧器の二次巻線に接続されるサイリスタ式のタップ切換回路と、前記励磁変圧器の三次巻線に接続されるインバータ回路を備えた電圧調整装置において、該電圧調整装置の一次側相電圧を監視してタップ切換えを行う前記タップ切換回路をフィードフォワード制御し、また、当該電圧調整装置の二次側相電圧を監視して電圧制御を行うインバータ回路をフィードバック制御する電気信号を各相個別にすることにより、配電線路中に二次巻線が直列接続される制御変圧器の一次巻線に印加する電圧を制御し、各相個別の電圧調整を可能とすることに特徴を有する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、タップ切換回路とインバータ回路は、配電線路の線間電圧から各相の相電圧を算出し、この相電圧を基準電圧に近づけるように各相個別に制御することに特徴を有する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2の何れかに記載の発明において、インバータ回路は、タップ切換回路を各相個別に制御したときに発生する零相電圧を打ち消す反対方向の零相電圧を発生させることに特徴を有する。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項の何れかに記載の発明において、励磁変圧器に、各相の電流がアンバランスとなることを防止する安定巻線を設けることにより、各相個別に電圧制御したときに発生する零相電流を打ち消すことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、インバータ回路の出力容量を縮小しつつ、配電線電圧の基準電圧への調整効果と、三相不平衡率の減少効果の双方を得ることができる。
【0013】
また、請求項記載の発明によれば、タップ切換回路をフィードフォワード制御することで大まかな電圧調整を行い、残りをインバータ回路で基準電圧に調整するので、インバータ回路の容量を抑えることができ、製品コストを抑制できる。
【0014】
請求項記載の発明によれば、簡易な制御方法で基準電圧への調整が可能となる。
【0015】
請求項記載の発明によれば、サイリスタ式のタップ切換回路を各相個別に制御したときに発生する零相電圧をインバータ回路による電圧制御で打ち消すことで零相電圧の拡大を防止することが可能となる。
【0016】
請求項記載の発明によれば、各相電流のアンバランスにより発生する零相電流を安定巻線によって打ち消すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の電圧調整装置を示す回路図である。
図2】本発明の電圧調整装置によるタップ切換回路のフィードフォワード制御とインバータ回路のフィードバック制御を示すブロック図である。
図3】本発明の電圧調整装置による三相不平衡電圧時の電圧調整方式を説明するベクトル図である。
図4】本発明の電圧調整装置によるタップ切換回路のフィードフォワード制御とインバータ回路のフィードバック制御を示すフローである。
図5】本発明の電圧調整装置を構成するタップ切換回路のタップ選択を示す表である。
図6】本発明の電圧調整装置を構成するインバータ回路のインバータ制御を示すブロックである。
図7】本発明の電圧調整装置を構成するタップ切換回路とインバータ回路による電圧調整範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5により説明する。図1は本発明に係る電圧調整装置Aの回路図である。図1において、1は三相配電系統の各相間に並列接続される励磁変圧器であり、1aは励磁変圧器1の一次巻線を示し、1bは励磁変圧器1の二次巻線、1cは励磁変圧器の三次巻線を示している。また、1dは励磁変圧器1の四次巻線(安定巻線)を示している。
【0019】
2は各相に二次巻線2bを直列接続する制御変圧器であり、2aは制御変圧器2の一次巻線を示している。
【0020】
3は励磁変圧器1の二次巻線1bに接続されるタップ切換回路であり、図示しないサイリスタによって構成されている。
【0021】
4は励磁変圧器1の三次巻線1cに接続されるインバータ回路であり、図示しないトランジスタやダイオード等の半導体素子によって構成されている。
【0022】
タップ切換回路3とインバータ回路4は直列的に各々が制御変圧器2の一次巻線2aに接続して構成される。
【0023】
次に、本発明の電圧調整装置Aの動作を図2により説明する。負荷変動によって配電線路の電圧が変動すると、図示しない制御部から出力される電気信号によって、まず、電圧調整装置Aの一次電圧と基準電圧の差ΔVtapを小さくするようタップ切換回路3のタップ選択が行われ、それに応じてサイリスタによるタップ切換えが実行される。
【0024】
タップ切換回路3は電圧調整装置Aの一次電圧を監視してタップ切換えを行うフィードフォワード制御であり、制御変圧器2の一次巻線2aには、タップ切換回路3のタップ切換えに応じた電圧が印加される。これにより、制御変圧器2の巻数比に比例した調整電圧が二次巻線2bに誘起され、配電線路の電圧を基準電圧に近づける。
【0025】
次に、インバータ回路4は配電線路の二次電圧と基準電圧との差ΔVinvに応じたP(比例)制御を行い、この差ΔVinvを解消するよう動作する。
【0026】
インバータ回路4は電圧調整装置Aの二次電圧を監視して電圧制御を行うフィードバック制御を行い、制御変圧器2の一次巻線2aに、インバータ回路4の電圧制御に応じた電圧を印加する。この結果、制御変圧器2の巻数比に比例した調整電圧が二次巻線2bに誘起され、配電線路の電圧を基準電圧に一致させる。
【0027】
このように本発明の電圧調整装置Aは、タップ切換回路3とインバータ回路4の併用で、配電線路の電圧を基準電圧と一致するように無段階で連続的に補償することができる。
【0028】
なお、タップ切換回路3とインバータ回路4は、配電線路の線間電圧から各相の相電圧を算出し、この相電圧を基準電圧に近づけるように各相個別に制御している。つまり、本発明の電圧調整装置Aはタップ切換回路3とインバータ回路4を用いて、図3に示すように、タップ切換による調整電圧とインバータ回路による調整電圧で、出力電圧を基準電圧に近づける制御を行う。この制御を各相で行うことにより、三相不平衡電圧が是正される。
【0029】
各相のタップ切換回路3とインバータ回路4に発生させる電圧は、ある一定時間毎に変化させる方式である。
【0030】
図4は前述の制御方式を示すフローである。タップ切換回路3は、電圧調整装置Aの一次側相電圧を監視し、これが制御閾値を超えればタップ制御を始める。並行してインバータ回路4は、電圧調整装置Aの二次側相電圧の制御を行う。タップ切換回路3がタップの切換えを行うときには、インバータ回路4は0[V]出力を行う。タップの切換えが完了し、一定時間が経過した後、インバータ回路4は配電線路の二次側相電圧の制御を開始する。この制御は各相にて行われる。
【0031】
タップ制御は、タップ切換器の1タップ分の補償電圧V1tap(相電圧換算)を求め、V1tapと設定値との差電圧(ΔVtap)を比較し、図5にあてはめタップを選択する。
【0032】
図6はインバータ制御のブロック図である。インバータは常時二次相電圧をフィードバック制御している。ただし、タップ切換時はインバータ制御系の過渡的な応答を抑えるため、零電圧制御を行う。
【0033】
図7に電圧調整装置Aの電圧調整範囲の一例を示す。電圧調整装置Aを構成するタップ切換回路3は三段階の昇圧と三段階の降圧の電圧調整が可能であり、一段階で75[V]の電圧調整が可能である。
【0034】
インバータ回路4はタップ切換回路3の一段階の電圧調整(75[V])の1/2以上の昇圧及び降圧制御(図5では±43.5[V])の電圧調整を無段階で行うことが可能である(但し、最大タップ時は+37.5[V]、最少タップ時は−37.5[V]としている)。
【0035】
この結果、−262.5[V]〜+262.5[V]の範囲を各相個別に無段階で電圧調整することが可能となる。そして、インバータ回路4はタップ切換回路3のタップ間電圧(図5では75[V])の1/2程度の電圧幅を補償する能力を備えていれば良いので、その出力容量を縮小することができ、低コスト化を実現できる。
【0036】
次に、上記の如く電圧制御を行った場合、タップ切換回路3で零相電圧が発生する問題がある。零相電圧の発生は、変電所の地絡保護継電器の不要動作を引き起こすため、これを解消する必要がある。本発明では、タップ切換回路3で発生した零相電圧と反対方向の零相電圧をインバータ回路4で発生させることにより、零相電圧の発生を防止している。
【0037】
さらに、各相個別に電圧制御を行った場合、各相の電流がアンバランスとなり、零相電流が発生してしまう。本発明では励磁変圧器1に安定巻線1dを追加することにより、発生する零相電流を打ち消す構成としている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、配電線路に設置される電圧調整装置として利用される。
【符号の説明】
【0039】
1 励磁変圧器
1a 励磁変圧器の一次巻線
1b 励磁変圧器の二次巻線
1c 励磁変圧器の三次巻線
1d 励磁変圧器の四次巻線(安定巻線)
2 制御変圧器
2a 制御変圧器の一次巻線
2b 制御変圧器の二次巻線
3 タップ切換回路
4 インバータ回路
A 電圧調整装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7