特許第6774227号(P6774227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774227実験室自動化システムにおいて使い捨てピペットチップのラックを取り扱うための装置および方法ならびに実験室自動化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774227
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】実験室自動化システムにおいて使い捨てピペットチップのラックを取り扱うための装置および方法ならびに実験室自動化システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20201012BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20201012BHJP
   B01L 9/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G01N35/10 G
   G01N1/00 101K
   B01L9/00
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-116790(P2016-116790)
(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公開番号】特開2017-9600(P2017-9600A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】15173748.3
(32)【優先日】2015年6月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター・バーベリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン・バウムガルト
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト−パウル・デイズリー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・シュトルツェムペク
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ゼントゲス
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−056321(JP,A)
【文献】 国際公開第01/069263(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02803412(EP,A2)
【文献】 特開2014−77757(JP,A)
【文献】 特開2014−119297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00−99/00
G01N 1/00−1/44、35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験室自動化システムにおいて使い捨てピペットチップ(20)のラック(2)を取り扱うための装置であって、ラック(2)を装填領域(I)から供給領域(II)まで案内するための少なくとも1つの案内レール(6)を備え、前記装填領域(I)がユーザ、または前記少なくとも1つの案内レール(6)に少なくとも1つのラック(2)を装填するための装填手段によってアクセス可能であり、かつ前記供給領域(II)に位置する前記ラック(2)に格納される複数の使い捨てピペットチップ(20)が、分注システムに前記複数の使い捨てピペットチップ(20)の少なくとも1つの選択されたものを送出するための送出装置によってアクセス可能である装置(1)において、
前記供給領域(II)からの前記ラック(2)の取外しを可能または不可能にするために駆動装置によって支持位置と解放位置との間で制御可能に移動可能である少なくとも1つの可動ブロック(8)を備え、
前記支持位置にある場合に、前記少なくとも1つの可動ブロック(8)は、前記少なくとも1つの案内レール(6)の長手方向に前記少なくとも1つの案内レール(6)を延長し、
前記供給領域(II)で、前記ラック(2)が前記支持位置に配置される前記少なくとも1つの可動ブロック(8)に設置され、前記少なくとも1つの可動ブロック(8)が下方向における前記供給領域(II)からの前記ラック(2)の取外しのために前記解放位置に移動され、
前記供給領域(II)で、少なくとも1つの当接面(18)が前記少なくとも1つの案内レール(6)に沿った前記ラック(2)の移動方向に対して垂直に設けられ、
押し具(76)が設けられ、前記供給領域(II)に位置する前記ラック(2)が前記押し具(76)によって前記当接面(18)に対して押しつけられる、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記駆動装置がソレノイドを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動ブロック(8)には、前記少なくとも1つの可動ブロック(8)が前記支持位置にあるときに、前記供給領域(II)に位置する前記ラック(2)に対して作用する側面が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
落し口(16)が前記供給領域(II)の下に設けられ、
前記装置(1)は、前記ラック(2)が前記落し口(16)を介して前記供給領域(II)から取外されるように、構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記押し具(76)は、前記ラック(2)の取外しのために、前記供給領域(II)に位置する前記ラック(2)から離れる方向に移動するように駆動されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記押し具(76)は、前記ラック(2)を前記装填領域(I)から前記供給領域(II)まで移動させるために、原点と動作位置との間で移動可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの案内レール(6)が複数のラック(2)を受け入れるように適合され、ラック移動機構(7)が前記ラック(2)を1つずつ前記供給領域(II)の方へおよび/または前記供給領域(II)内へ移動させるために設けられることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置(1)が引出しモジュール(30)を備える引出しユニットであり、前記引出しモジュール(3)が使用位置と排出位置との間で移動可能であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つのセンサが、前記供給領域からの前記ラック(2)の取外し、前記供給領域(II)における前記ラック(2)の存在、ラック移動機構(7)の状態、前記引出しモジュール(3)の状態、および/または前記装置(1)の蓋(10)に設けられる開くことができる窓(12)の状態を検出するために設けられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
実験室自動化システムのための請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(1)において使い捨てピペットチップ(20)のラック(2)を取り扱うための方法であって、前記装置(1)が、ラック(2)を装填領域(I)から供給領域(II)まで案内するための少なくとも1つの案内レール(6)と、前記供給領域(II)からの前記ラック(2)の取外しを可能または不可能にするために駆動装置によって支持位置と解放位置との間で制御可能に移動可能である少なくとも1つの可動ブロック(8)と、を備え、
前記支持位置にある場合に、前記少なくとも1つの可動ブロック(8)は、前記少なくとも1つの案内レール(6)の長手方向に前記少なくとも1つの案内レール(6)を延長し、
前記方法は、
前記装填領域(I)で前記少なくとも1つの案内レール(6)にラック(2)を設置するステップと、
前記ラック(2)を前記少なくとも1つの案内レール(6)に沿って前記供給領域(II)に移動させるステップであって、前記供給領域(II)で、前記ラック(2)は前記支持位置に配置される前記少なくとも1つの可動ブロック(8)に設置され、前記供給領域(II)に位置する前記ラック(2)に格納される複数の使い捨てピペットチップ(20)は、分注システムに前記複数の使い捨てピペットチップ(20)の少なくとも1つの選択されたものを送出するための送出装置によってアクセス可能であるステップと、
前記供給領域(II)において前記ラック(2)を確実に位置決めおよび保持する一方で、分注システムに前記複数の使い捨てピペットチップ(20)の少なくとも1つの選択されたものを送出するステップと、
前記ラック(2)を解放するためにおよび下方向における前記供給領域(II)からの前記ラック(2)の取外しのために前記少なくとも1つの可動ブロック(8)を前記解放位置に移動させるように、前記少なくとも1つの可動ブロック(8)に割り当てられる駆動装置を起動させるステップとを備える方法
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(1)および/または請求項10に記載の方法を実施するように適合される装置を備える実験室自動化システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験室自動化システムにおいて使い捨てピペットチップのラックを取り扱うための装置および方法に関する。本発明は、さらにそのような装置を備えるかつ/またはそのような方法を実施するように適合される実験室自動化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
実験室自動化システムは少なくとも1つの事前分析、分析および/または事後分析ステーションを備え、そこで試料、たとえば血液、唾液、ぬぐい分泌液および人体または植物材料から採取される他の検体が処理される。使い捨てピペットチップを使用する分注システムを提供することが周知であり、ピペットチップは分注装置の本体に取り付けられ、各使用の後にまたは必要とされるときに交換される。典型的には、ラックが設けられ、それは特定の大きさおよび規定の間隔をもつ所定数のピペットチップを格納するように構成される。ラックはトレーまたはマガジンとも称される。ラックは、分注システムにチップを送出するためのつかみ具または任意の他の送出システムに差し出される。
【0003】
引出しをもつ使い捨てピペットチップを使用する実験室自動化システムを提供することが知られており、いくつかのラックが引き出された引出し内にまたは上に装填され、引出しは、分注システムが使い捨てピペットチップを使用するのを可能にするために、使用位置に移動される。使い捨てピペットチップを使用するために、たとえば、つかみ具は、各ラックによって保持される使い捨てチップの個々の位置に移動し、ピペットチップを順々に取り上げるように駆動される。すべてのピペットチップが使用された後に、引出しは排出され、空のラックは手動で取り外され、交換される。
【0004】
EP2803412A2は分注システムに使い捨てピペットチップのラックを継続様式で供給するための装置を開示し、その装置は複数のラックを装填領域から供給領域まで連続して案内するための案内レールを備え、装填領域はユーザ、または案内レールに複数のラックを装填するための装填手段によってアクセス可能であり、供給領域では、複数のラックの供給用のものに保持される使い捨てピペットチップは、分注システムに複数の使い捨てピペットチップの少なくとも1つの選択されたものを送出するための手段によってアクセス可能である。複数のラックの供給用のものが空になった後に、装置は、連続するラックを供給領域に移動させ、空のラックをおよそ案内レールの延在方向に装置から移動させるように駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP2803412A2
【特許文献2】EP2210668A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、実験室自動化システムにおいて使い捨てピペットチップのラックを取り扱うための改善された装置および改善された方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、そのような装置を備えるかつ/またはそのような方法を実施するように適合される実験室自動化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、実験室自動化システムにおいて使い捨てピペットチップのラックを取り扱うための装置が提供され、その装置はラックを装填領域から供給領域まで案内するための少なくとも1つの案内レールを備え、装填領域はユーザ、または少なくとも1つの案内レールに少なくとも1つのラックを装填するための装填手段によってアクセス可能であり、かつ供給領域に位置する供給用ラックに格納される複数の使い捨てピペットチップは、分注システムに複数の使い捨てピペットチップの少なくとも1つの選択されたものを送出するための送出装置によってアクセス可能であり、かつ装置は、供給領域からの供給用ラックの取外しを選択的に可能または不可能にするために駆動装置によって制御可能に移動可能である少なくとも1つの可動要素を備える。
【0008】
駆動装置は可動要素に割り当てられ、可動要素は駆動装置によって制御可能な様式で移動可能である。可動要素は駆動装置によって少なくとも1つの方向に移動するように駆動される。1つの実施形態において、戻り運動も駆動装置によって実施される。他の実施形態において、戻り運動は戻しばねなどの受動要素によって実施される。制御可能に移動可能な要素は第1の位置にもたらされることができ、そこで供給用ラックはチップの送出の間は供給領域において支持および/または緊締、たとえば締着され、供給領域からの取外しは送出の間は不可能にされる。ラックが空になった後に、かつ供給領域に新しいラックを設置する前に、可動要素は第2の位置に移動され、供給用ラックを確実なかつ反復可能な様式で解放する。
【0009】
好適な実施形態において、駆動装置は少なくとも1つの可動要素の前後の移動を実施するように適合される。前後の移動は、供給用ラックが供給領域で壁に、たとえば可動要素の壁に固着する場合にさえ、供給用ラックの取外しを可能にする。好適な実施形態において、駆動装置はソレノイドを備え、可動要素の高速な前後の移動を実施することを可能にする。好適な実施形態において、駆動装置を起動することは制御装置によって制御または開始される。好適な実施形態における制御装置は実験室自動化システムの中央制御装置と一体化されるかつ/または連通しており、その中央制御装置は供給用ラックの空である状態に関する情報を有する。
【0010】
ラックは供給領域へ少なくとも1つの案内レールに沿った移動方向に移動される。1つの実施形態において、制御可能に移動可能な要素は移動方向に対して垂直に配置される可動壁要素であり、その壁要素は移動方向におけるラックの取外しのために移動経路から移動される。
【0011】
好適な実施形態において、装置は、少なくとも1つの案内レールに沿ったラックの移動方向を横切る方向における供給領域からの供給用ラックの取外しのために配置される。換言すれば、供給領域にラックを移動させるための移動方向は、供給領域からラックを移動させるための移動方向と異なる。そのような実施形態において、複数のラックが供給領域に連続して移動されることができ、移動方向を横切る方向に供給用ラックを取り外すことは、連続するラックを供給領域に移動させる前に実行される。好適な実施形態において、少なくとも1つの案内レールに沿った移動方向は、ラックを移動方向に移動させるときに重力の影響を回避するために、水平面(動作公差内)にある。好ましくは、供給用ラックは下方向に取り外される。したがって、供給用ラックの取外しのために、重力が利用される。
【0012】
好適な実施形態において、少なくとも1つの可動ブロックが制御可能に移動可能な要素として設けられ、少なくとも1つの可動ブロックは支持位置と解放位置との間で移動可能であり、かつ供給領域で、供給用ラックは支持位置に配置される少なくとも1つの可動ブロックに設置され、少なくとも1つの可動ブロックは、下方向における供給領域からの供給用ラックの取外しのために解放位置に移動される。好ましくは、支持位置において、可動ブロックは案内レールの長手方向に少なくとも1つの案内レールを延長する。それによって、案内レールから可動ブロックへの供給用ラックの円滑な転移が確保される。好ましくは、可動ブロックには、少なくとも1つの可動ブロックが支持位置にあるときに供給用ラックに対して作用する側面が設けられる。側面は供給領域において供給用ラックを締着することを可能にする。
【0013】
空のラックは容器に収集される。好適な実施形態において、落し口が供給領域の下に設けられ、装置は落し口を介する供給用ラックの取外しのために配置される。
好適な実施形態において、供給領域で、少なくとも1つの当接面が少なくとも1つの案内レールに沿ったラックの移動方向に対して垂直に設けられる。当接面によって、供給用ラックは供給領域で反復可能な様式でかつ高精度に位置決めされる。これは送出装置による使い捨てピペットチップの確実な取り上げまたは把持を可能にする。
【0014】
好適な実施形態において、押し具が設けられ、ここでは供給用ラックは押し具によって当接面に対して押しつけられる。好ましくは、押し具は前後に駆動されるように適合され、ここでは押し具は供給用ラックを解放し、かつ供給用ラックを供給領域から取り外すために、供給用ラックから離れるように移動される。
【0015】
1つの実施形態において、押し具は、案内レールに沿ってラックを移動させるための手段とは別である。好適な実施形態において、押し具は、ラックを装填領域から供給領域まで移動させるために原点と動作位置との間で移動可能である。換言すれば、押し具は2つの機能を有し、ラックを装填領域から供給領域まで移動させるため、または当接面に対して供給用ラックを押しつけることによって供給領域において供給用ラックを緊締するために駆動されることができる。
【0016】
1つの実施形態において、一度に1つのラックが少なくとも1つの案内レールに設置され、後続のラックは上記ラックの取外しの後に少なくとも1つの案内レールに設置される。好適な実施形態において、少なくとも1つの案内レールは複数のラックを受け入れるように適合され、ここではラック移動機構がラックを1つずつ供給領域の方へおよび/または内へ移動させるために設けられる。好適な実施形態における供給領域で供給用ラックを緊締するための押し具はラック移動機構に一体化される。
【0017】
好適な実施形態において、装置は引出しモジュールを備える引出しユニットであり、その引出しモジュールは使用位置と排出位置との間で移動可能である。排出位置において、装填位置へのアクセスは容易にされる一方で、使用位置に配置されると、装置が環境から隔離されるのを許容する。
【0018】
好適な実施形態において、少なくとも1つのセンサが、供給領域からの供給用ラックの取外し、供給領域における供給用ラックの存在、ラック移動機構の状態、引出しモジュールの状態もしくは位置、および/または装置1の蓋10に設けられる開くことができる窓12の状態を検出するために設けられる。少なくとも1つのセンサは、装置に割り当てられる制御装置および/または実験室自動化システムの中央制御装置と連通する。
【0019】
第2の態様によれば、実験室自動化システムのための装置において使い捨てピペットチップのラックを取り扱うための方法が設けられ、その装置はラックを装填領域から供給領域まで案内するための少なくとも1つの案内レールを備え、方法は、(a)装填領域で少なくとも1つの案内レールにラックを設置するステップと、(b)ラックを少なくとも1つの案内レールに沿って供給領域に移動させるステップであって、供給領域に位置するラックに格納される複数の使い捨てピペットチップは、分注システムに複数の使い捨てピペットチップの少なくとも1つの選択されたものを送出するための送出装置によってアクセス可能であるステップと、(c)供給領域においてラックを確実に位置決めおよび保持する一方で、分注システムに複数の使い捨てピペットチップの少なくとも1つの選択されたものを送出するステップと、(d)ラックの解放のためおよび供給領域からのラックの取外しのために少なくとも1つの可動要素を解放位置に移動させるように、少なくとも1つの可動要素に割り当てられる駆動装置を起動させるステップとを備える。
【0020】
可動要素が解放位置に移動された後に、1つの実施形態において、押し具が駆動されて供給領域からラックを移動させる。
好適な実施形態において、可動要素は可動ブロックであり、それは支持位置と解放位置との間で移動するように制御され、供給領域で、ラックは支持位置に配置される少なくとも1つの可動ブロックに設置され、少なくとも1つの可動ブロックは、重力のため下方向における供給領域からのラックの取外しのために解放位置に移動される。
【0021】
代替でまたは加えて、1つの実施形態において供給領域で、ラックは少なくとも1つの当接面に対して押しつけられ、その当接面は少なくとも1つの案内レールに沿ったラックの移動方向に対して垂直に配置され、特にラックは押し具によって当接面に対して押しつけられる。当接面を含む壁は1つの実施形態においてラックを解放するために解放位置に移動される。好適な実施形態において、当接面は案内レールに対して位置が固定される壁に配置される。
【0022】
第3の態様によれば、分注システムをもつ事前分析、分析および/または事後分析ステーションの少なくとも1つをもつ実験室自動化システムが設けられる。
本発明のさらなる特性および利点は、図面に概略的に例示する実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面を通して、同じ要素は同じ参照数字によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1の装置の斜視図である。
図2図1の装置の装填時の斜視図である。
図3図1の装置の後部からの斜視図である。
図4図1の装置の側断面図である。
図5】ラックが供給領域において緊締される図1の装置の詳細の上面図である。
図6】ラックがラックの取外しの前である図5に図示する図1の装置の詳細の上面図である。
図7】使用位置におけるラックを取り扱うための図1の装置の上面図である。
図8】排出位置における図1の装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜8は、実験室自動化システムにおいて使い捨てピペットチップ20のラック2を取り扱うための装置1の実施形態を図示する。
装置1には開くことができる窓12を有する蓋10が設けられる。装置1はつかみ凹部14をさらに備え、その目的は以下にさらに説明される。
【0025】
図1および2は装置1の斜視図であり、ここで図1では窓12は閉じられ、図2では窓12は装置1に装填するために開いている。図3は装置1の後ろからの斜視図である。図1および3に見られるように、装置1は使い捨てピペットチップ20(図5参照)の複数のラック2を摺動可能に受け入れるための2つの案内レール6を備え、1つの案内レール6だけが図1および3の各々に見える。図示する実施形態において、最高で4つのラック2が案内レール6に設置されることができる。図示する案内レール6は、たとえばEP2210668A2から知られるようなラック2を受け入れるために最適化される。しかしながら、他のラック2が案内レール6に設置されることができ、かつ/または案内レール6は他の種類のラックを受け入れるために設計されることができる。
【0026】
案内レール6は、そこに設置されるラック2を装填領域Iから供給領域IIまで案内するために配置される。
案内レール6へのアクセスを可能にするために、窓12は図2に図示するように開かれる。窓12が開かれた後に、装填領域Iはユーザ、または案内レール6に少なくとも1つのラック2を設置するための装填手段によってアクセス可能である。
【0027】
ラック2には複数の使い捨てピペットチップ20が設けられ(図5に図示するように)、ラック2に格納される使い捨てピペットチップ20は、ラック2が供給領域IIに配置されるときに、分注システム(不図示)に複数の使い捨てピペットチップ20を1つずつ送出するための送出装置、特につかみ具によってアクセス可能である。供給領域IIに隣接して、マイクロウェルまたはマイクロタイタープレート用の保持具5が設けられる。
【0028】
装置1は蓋10の下に配置されるラック移動機構7を備える。ラック移動機構7には、ラック2を装填領域Iから供給領域IIまで連続して移動させるために、ラック2と係合する要素が設けられる。
【0029】
図示する実施形態において、ラック2は1つずつ装填される。レール6に1つのラック2を設置した後に、ラック移動機構7は、ラック2を供給領域IIの方へ移動させるために、ラック装填器ボタン70(図3参照)を押すことによって起動されることができる。光学要素、特にLED灯72が、装置1が後続のラック2を装填することの準備ができていることを示す。好ましくは、装置1が装填の準備ができていない間、窓12を開くことは妨げられる。
【0030】
センサ74が、供給領域IIにおけるラック2の存在を感知するために設けられる。
案内レール6は供給領域IIには達しない。むしろ、案内レール6は一対のブロック8、9によって延長され、供給用ラック2は供給領域IIにおいてブロック8、9に載置される。ブロック8、9の少なくとも1つは可動ブロック8であり、それは支持位置と解放位置との間で移動可能である。可動ブロック8が支持位置にある場合には、図3に図示するように、可動ブロック8は案内レール6の延長部分に配置され、供給領域IIに移動される供給用ラック2は可動ブロック8に設置される。駆動装置82(図4参照)によって、可動ブロックは解放位置に移動されることができ、他方のブロック9からの可動ブロック8の距離はラック2の幅より大きく、その結果ラック2は重力のため下方に落下する。図示する実施形態において、可動ブロック8および第2のブロックには、可動ブロック8が支持位置にあるときに供給用ラック2に対して作用する側面80、90が設けられ、その結果供給用ラック2は、可動ブロック8が支持位置にあるときに2つのブロック8、9間に正確に位置決めされる。
【0031】
図4は、図1の装置の側断面図であり、窓12は開いている。図4に図示するように、描かれるラック移動機構7はラック2を供給領域IIの方へ押すための押し具76を備える。図4では、押し具76は動作位置に位置決めされ、その動作位置は供給領域IIに近く、装置1は装填の準備ができていない。押し具76は、当接面18に対して供給用ラック2を押しつけるために動作位置の内部へまたは方へ移動され、その当接面18は案内レール6に沿った供給用ラック2の移動方向に対して垂直に設けられる。
【0032】
装置1に装填するために、押し具76は供給領域IIから離れて装填領域Iを越えて原点に移動されなければならない。押し具76が原点にあるときに、ラック2は供給領域IIと押し具76との間に位置決めされ、押し具76によって供給領域IIに移動されることができる。押し具76を移動させるために、描かれる実施形態において、ベルト伝動機構77が設けられる。ラック移動機構7は、モータならびに、たとえば過電流、駆動滑り、ベルト滑りもしくはベルト脱落、モータ遮断を監視するためのモータ駆動状態監視用のハードウェアおよび/またはソフトウェアをさらに備える。可動ブロック8を支持位置と解放位置との間で移動させるための駆動装置82は、すべての要素の運動の協調のためにラック移動機構に一体化されるかつ/またはラック移動機構7と連通している。
【0033】
供給領域IIの下に、落し口16が設けられる。装置1は落し口16を介する供給領域IIからのラック2の自動化取外しを可能にし、成功した取外しはセンサ78、特に超音波センサによって観測される。成功した取外しの後に、装置1内の連続するラックがラック移動機構7によって供給領域IIに移動される。装置1が空の場合には、オペレータまたはユーザは装置に補給することを促されることになる。
【0034】
さらに、排出器装置36が設けられ、その機能は図7および8を参照して以下にさらに論じられる。
図5および6は、それぞれ、ラック2が供給領域IIにおいて緊締されるおよびラック2が取外しのために緊締されない供給領域IIを図示する図1の装置の詳細の上面図である。
【0035】
図5および6に見られるように、案内レール6はラック2が供給領域IIにおいて載置される2つのブロック8、9によって延長される。マイクロウェルプレート用の保持具5に隣接するブロック8は可動ブロック8である。第2のブロック9は位置が固定されて装着される。他の実施形態において、両方のブロックが移動可能である。さらに別の実施形態において、1つの案内レール6だけが可動ブロック8によって延長されるのに対して、他方の案内レール6は供給領域IIの領域に達する。ブロック8、9にはラック2に接触する側壁80、90が設けられ、その結果ラック2は供給領域IIにおいて確実に位置決めおよび保持される。案内レール6の反対側の供給領域IIの領域の端で、当接面18が案内レール6に沿ったラック2の移動方向に対して垂直に設けられる。図5に図示するように、ラック2は当接面18に対して押しつけられ、それによって押し具76によって供給領域IIにおいて緊締される。
【0036】
一旦ラック2が取外しの準備ができると、可動ブロック8および押し具76はラック2から離れるように移動され、ラック2を解放する。図示する実施形態において、マイクロウェルプレート用の保持具5に隣接する可動ブロック8だけが移動され、可動ブロック8のための簡略化された駆動機構を可能にする。好適な実施形態において、ブロック駆動装置、特にソレノイドがブロック8を前後に移動させるために設けられ、ソレノイドの賦活または失活はラック移動機構7の制御装置によって制御される。
【0037】
実施形態(不図示)において、案内レールおよびラックには、案内レール6に沿ったラックの確実な案内のためのナットおよび溝接続が設けられる。しかしながら、ブロック8、9は、好ましくはラックの取外しのために案内レールに沿った移動方向の可動ブロックの相対的な移動を可能にするために、この方向を横切る任意の形状係止なしでラックを支持する。
【0038】
図示する実施形態において、装置1は引出しユニットである。
図7および8に図示するように、引出しユニットは引出しレール34によって台板32に摺動可能に支持される引出しモジュール30を備え、引出しモジュール30は台板32に対して図7に図示する使用位置と図8に図示する排出位置との間で移動可能である。装置1は実験室自動化システムに一体化されることができ、ここで使用位置では、引出しモジュール30の前端300は実験室自動化システムのハウジングの前壁4(図7および8に破線によって概略的に図示する)と同一平面またはその後ろであり、装置1の内部はアクセス可能ではない。供給領域II(図1〜6参照)は前端300の反対側の引出しモジュール30の後端の領域に設けられる。
【0039】
台板32は実験室自動化システムのハウジングに固定される、またはハウジングの壁と一体的に形成される。引出しモジュール30を台板32に対して手動で移動させるためのつかみ凹部14(図3参照)が前端300に設けられる。加えて、排出器装置36が設けられる。実際には、引出しモジュール30は好ましくは図7に図示する使用位置に係止される。排出位置への引出しモジュール30の移送を可能にするために、排出器装置36が起動されて、引出しモジュール30が排出位置の方へ移動される。好ましくは、排出器装置36は引出しモジュール30を小距離にわたるだけ移動させ、図8に図示する排出位置への引出しモジュール30のさらなる移動はユーザによって手動で実行される。
【0040】
落し口16は台板32に設けられ、落し口16は、引出しモジュール30が使用位置に移動されるときの供給領域の下に配置される。
引出しモジュール30を使用位置に移動させるときに、ラック移動機構7は、ラック2の第1のものが正しい位置にあることを確実にするために、装填された1つまたは複数のラック2を供給領域II(図5参照)の方へ押しつける。引出しモジュール30を使用位置に移動させるために、窓12は閉じられる必要がある。好適な実施形態において、ラック移動機構7は、窓12が閉じられた場合に起動されることができるのみである。
【0041】
以下では、装置1の好適な使用が記載される。
装置1は、好ましくは実験室自動化システムに、特に試料のアリコートをマイクロウェルまたはマイクロタイタープレートに移送するために使用される自動アリコータに組み込まれる。
【0042】
装置1を含む実験室自動化システムをオンにすることで、押し具76は、図5に図示するように供給領域IIにおいてラック2を緊締するために供給領域IIの方へ移動する。装置1に装填されるラック2がない場合には、押し具76は反対方向に、その原点の方へ進行する。装置1が空であるという情報は実験室自動化システムの中央制御ユニットに送信されることができる。好ましくは、ユーザは次いで装置に十分に補充されるラック2を装填することを促される。
【0043】
次に、引出しモジュール30は図8に図示する排出位置に移動され、ユーザに人間工学を考慮した装置1へのアクセスを提供する。好適な実施形態において、移送は、最後のラック2の取外しの後におよび/またはオペレータもしくはユーザがそれぞれのボタンを押した後に、空の状態の装置1を始動するときに半自動的に実行され、排出器装置36は、引出しモジュール30を係止状態から解放するために、引出しモジュールを排出位置の方へ小距離にわたって押し、かつ、排出位置へのその後の移動はオペレータまたはユーザによって手動で実行される。他の実施形態において、排出位置への移送は排出器装置36によって全自動的に実行される。さらに別の実施形態において、全移動が手動で実行される。
【0044】
引出しユニット30が排出位置にあり、かつ押し具76が原点にあるときに、窓12は図2に図示するように開かれることができ、ラック2が装填されることができる。ラック2は1つずつ装填され、窓12を閉じ、次いでラック装填器ボタン70を押すことによって押し具76を起動させることによって適切な位置に押し込まれる。押し具76は装填された1つまたは複数のラックを供給領域の方へ押し、原点へ戻るように進行する。押し具76が原点に達した後に、LED灯72は装置1が後続のラック2を装填することの準備ができていることを示す。
【0045】
所望数のラック2が装填された後に、引出しモジュール30は使用位置へ移送される。図示する実施形態において、最高で4つのラック2が装填される。引出しモジュール30を使用位置に移動させるときに、押し具76は供給領域IIの方へ進行し、ラック2の第1のものが供給領域IIに達してセンサ74を起動させるまで、1つまたは複数のラック2を移動させる。ラック2は図5に図示するように供給領域IIにおいて緊締される。この情報は、ラック2が供給領域IIに位置すること、および装置1がチップ配置工程の準備ができていることを実験室自動化システムに通知するために、システムの中央制御ユニットに送られることができる。
【0046】
使い捨てピペットチップ20は、ラック2が空になるまで、順々に使用され、使用の後に処分される。好適な実施形態における空のラック2の取外しは実験室自動化システムの中央制御ユニットによって開始され、それはすべてのピペットチップ20が使用されたことを検出し、装置1の装置制御ユニットにそれぞれの信号を送る。
【0047】
装置1は、次いで図6に図示するように押し具76および少なくとも1つの可動ブロック8をラック2から離れるように移動させることによってラック2を解放する。好ましくは、まず押し具76が、供給領域IIから離れるようにその原点の方へ短距離にわたって、たとえば、およそ10〜30mmの距離にわたって進行するように起動される。これは、押し具76の原点の方へのラック2のわずかな移動も生じてよい。次に、可動ブロック8が、図5および6に図示する位置間で前後に何回か、たとえば3〜6回移動するように駆動され、ラック2を落し口16内に、落し口16を介して下に位置する廃棄物容器(不図示)内に落下させる。落し口16を介するラック2の取外しはセンサ78によって検出される。供給領域IIからのラック2の成功した取外しの後に、押し具76は、後続のラック2を供給領域IIに移動させるように駆動される。
【0048】
これは装置1が空になるまで繰り返され、ユーザは装置1に補給することを促される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8