特許第6774252号(P6774252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774252
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】絶縁基板の製造方法及び絶縁基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/13 20060101AFI20201012BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20201012BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20201012BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20201012BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20201012BHJP
   H05K 3/44 20060101ALI20201012BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20201012BHJP
   B23K 35/28 20060101ALN20201012BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   H01L23/12 C
   H01L23/36 C
   H01L23/14 C
   H01L23/12 J
   H05K1/03 610E
   H05K3/44 Z
   H05K3/38 D
   !B23K35/28 310B
   !C22C21/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-151810(P2016-151810)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-22738(P2018-22738A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】南 和彦
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−153900(JP,A)
【文献】 特開2008−246525(JP,A)
【文献】 特開2013−222758(JP,A)
【文献】 特開2012−138541(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K35/14、35/22、35/24
35/26、35/28、35/30
35/32、35/34、35/363
35/40
C22C5/00−25/00
27/00−28/00
30/00−30/06
35/00−45/10
H01L23/12−23/15
23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05K1/03−1/05
3/10−3/26
3/38、3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構成層と、前記第1構成層の厚さ方向の両側のうち少なくとも一方側に前記第1構成層に対し積層状に配置される第2構成層と、を備えた絶縁基板の製造方法であって、
第1構成層は、セラミック製の絶縁層であり、
第2構成層は、アルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するアルミニウム基複合材料製であり、
前記絶縁層と前記第2構成層を、心材の厚さ方向の両面にそれぞれろう材からなる皮材がクラッドされてなるブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合する絶縁基板の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層と前記第2構成層を接合した後の状態で前記ブレージングシートの平均結晶粒径が10μm以上300μm以下になるように、前記絶縁層と前記第2構成層を接合する請求項1記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層と前記第2構成層を接合した後の状態で前記ブレージングシートの厚さが60μm以上500μm以下になるように、前記絶縁層と前記第2構成層を接合する請求項1又は2記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項4】
前記第2構成層は、前記第1構成層の厚さ方向の両側にそれぞれ配置されるものであり、
前記絶縁層と一方の前記第2構成層を、心材の厚さ方向の両面にそれぞれろう材からなる皮材がクラッドされてなる第1ブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合すると同時に前記絶縁層と他方の前記第2構成層を、心材の厚さ方向の両面にそれぞれろう材からなる皮材がクラッドされてなる第2ブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合する請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項5】
第1構成層と、前記第1構成層の厚さ方向の両側のうち少なくとも一方側に前記第1構成層に対し積層状に配置される第2構成層と、を備えた絶縁基板であって、
第1構成層は、セラミック製の絶縁層であり、
第2構成層は、アルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するアルミニウム基複合材料製であり、
前記絶縁層と前記第2構成層が、心材の厚さ方向の両面にそれぞれろう材からなる皮材がクラッドされてなるブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合されている絶縁基板。
【請求項6】
前記ブレージングシートの平均結晶粒径が10μm以上300μm以下である請求項5記載の絶縁基板。
【請求項7】
前記ブレージングシートの厚さが60μm以上500μm以下である請求項5又は6記載の絶縁基板。
【請求項8】
前記第2構成層は、前記第1構成層の厚さ方向の両側にそれぞれ配置されており、
前記絶縁層と一方の前記第2構成層が、心材の厚さ方向の両面にそれぞれろう材からなる皮材がクラッドされてなる第1ブレージングヒートを介してろう付けにより互いに接合されるとともに、前記絶縁層と他方の前記第2構成層が、心材の厚さ方向の両面にそれぞれろう材からなる皮材がクラッドされてなる第2ブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合されている請求項5〜7のいずれかに記載の絶縁基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子等の発熱性素子が搭載される絶縁基板及びその製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、「アルミニウム」の語は、特に明示する場合を除き純アルミニウムとアルミニウム合金の双方を含む意味で用いられ、また「板」の語は、特に明示する場合を除き「箔」も含む意味で用いられる。
【0003】
また、本発明に係る絶縁基板の上下方向は限定されるものではないが、本明細書及び特許請求の範囲では、絶縁基板の構成を理解し易くするため、発熱性素子が搭載される絶縁基板の搭載面側を絶縁基板の上側、及び、その反対側を絶縁基板の下側とそれぞれ定義する。
【背景技術】
【0004】
電子素子等の発熱性素子が搭載される従来の絶縁基板の製造方法について、セラミック製の絶縁層の上側にろう材板を介して配線層(回路層とも呼ばれている)を積層状に配置し、絶縁層と配線層をろう付けにより互いに接合することは公知である(例えば特許文献1、2)。
【0005】
絶縁基板では、発熱性素子は配線層の上面からなる搭載面に例えばはんだ付けにより接合されて搭載される。そして、絶縁基板は、発熱性素子の動作に伴い発熱する発熱性素子を冷却するため、冷却部材(放熱部材を含む)上に接合されるのが一般的である。
【0006】
一般に、絶縁基板においては冷熱サイクル負荷に対して高い信頼性(例:接合信頼性)が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平8−10202号公報
【特許文献2】特開2011−66387号公報(段落[0002])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、発熱性素子からの発熱量の増大化や絶縁基板の絶縁層の薄肉化などにより絶縁層に作用する応力が増加する傾向にあり、そのため、絶縁基板においては冷熱サイクル負荷に対して更なる高い信頼性が要求される。この要求を満足させるためには、絶縁層と当該絶縁層に対し積層状に配置される層(例:配線層、緩衝層)とを良好に接合しなければならない。
【0009】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、セラミック製の絶縁層と当該絶縁層に対し積層状に配置される層とを良好に接合することができる絶縁基板の製造方法を提供することにあり、またセラミック製の絶縁層と当該絶縁層に対し積層状に配置される層とが良好に接合されている絶縁基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1] 第1構成層と、前記第1構成層の厚さ方向の両側のうち少なくとも一方側に前記第1構成層に対し積層状に配置される第2構成層と、を備えた絶縁基板の製造方法であって、
第1構成層は、セラミック製の絶縁層であり、
第2構成層は、アルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するアルミニウム基複合材料製であり、
前記絶縁層と前記第2構成層をブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合する絶縁基板の製造方法。
【0012】
[2] 前記絶縁層と前記第2構成層を接合した後の状態で前記ブレージングシートの平均結晶粒径が10μm以上300μm以下になるように、前記絶縁層と前記第2構成層を接合する前項1記載の絶縁基板の製造方法。
【0013】
[3] 前記絶縁層と前記第2構成層を接合した後の状態で前記ブレージングシートの厚さが60μm以上500μm以下になるように、前記絶縁層と前記第2構成層を接合する前項1又は2記載の絶縁基板の製造方法。
【0014】
[4] 前記第2構成層は、前記第1構成層の厚さ方向の両側にそれぞれ配置されるものであり、
前記絶縁層と一方の前記第2構成層を第1ブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合すると同時に前記絶縁層と他方の前記第2構成層を第2ブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合する前項1〜3のいずれかに記載の絶縁基板の製造方法。
【0015】
[5] 第1構成層と、前記第1構成層の厚さ方向の両側のうち少なくとも一方側に前記第1構成層に対し積層状に配置される第2構成層と、を備えた絶縁基板であって、
第1構成層は、セラミック製の絶縁層であり、
第2構成層は、アルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するアルミニウム基複合材料製であり、
前記絶縁層と前記第2構成層がブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合されている絶縁基板。
【0016】
[6] 前記ブレージングシートの平均結晶粒径が10μm以上300μm以下である前項5記載の絶縁基板。
【0017】
[7] 前記ブレージングシートの厚さが60μm以上500μm以下である前項5又は6記載の絶縁基板。
【0018】
[8] 前記第2構成層は、前記第1構成層の厚さ方向の両側にそれぞれ配置されており、
前記絶縁層と一方の前記第2構成層が第1ブレージングヒートを介してろう付けにより互いに接合されるとともに、前記絶縁層と他方の前記第2構成層が第2ブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合されている前項5〜7のいずれかに記載の絶縁基板。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以下の効果を奏する。
【0020】
前項1では、第2構成層がアルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するアルミニウム基複合材料製であるにより、第2構成層の線膨張係数が小さくなり、そのため、セラミック製絶縁層の線膨張係数と第2構成層の線膨張係数との差を小さくすることができる。これにより、絶縁層と第2構成層との間の線膨張係数差に起因する応力を小さくすることができる。
【0021】
さらに、絶縁層と第2構成層をブレージングシートを介してろう付けにより互いに接合することにより、絶縁層と第2構成層を良好に接合することができる。
【0022】
これらの作用により、絶縁基板の冷熱サイクル負荷に対する信頼性を高めることができる。
【0023】
前項2では、絶縁層と第2構成層を接合した後の状態でブレージングシートの平均結晶粒径が10μm以上300μm以下になることにより、冷熱サイクル負荷時に第2構成層とブレージングシートとのろう付け部に発生する応力を確実に緩和することができる。これにより、絶縁基板の冷却サイクル負荷に対する信頼性を更に高めることができる。
【0024】
前項3では、絶縁層と第2構成層を接合した後の状態でブレージングシートの厚さが60μm以上500μm以下になることにより、絶縁層と第2構成層を更に良好に接合することができるし、ブレージングシートから絶縁層に作用する応力による絶縁層の破断を確実に抑制することができる。これにより、絶縁基板の冷却サイクル負荷に対する信頼性を更に高めることができる。
【0025】
前項4では、絶縁層と一方の第2構成層を接合すると同時に絶縁層と他方の第2構成層を接合するので、絶縁基板の製造時間の短縮化を図ることができる。
【0026】
前項5では、絶縁基板の冷熱サイクル負荷に対する信頼性を高めることができる。
【0027】
前項6〜8では、それぞれ絶縁基板の冷却サイクル負荷に対する信頼性を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る絶縁基板の概略正面図である。
図2図2は、同絶縁基板を製造途中の状態で示す概略正面図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る絶縁基板を製造途中の状態で示す概略正面図である。
図4図4は、本発明の参考形態(比較例)に係る絶縁基板の概略正面図である。
図5図5は、図4中のA部分の拡大図である。
図6図6は、同絶縁基板を製造途中の状態で示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0030】
図1及び2は、本発明の第1実施形態を説明する図である。
【0031】
図1に示すように、本第1実施形態の絶縁基板1は、当該絶縁基板1を構成する複数の構成層を備えており、複数の構成層が積層状にろう付けにより接合一体化されることで形成されたものである。
【0032】
複数の構成層は、配線層2と絶縁層3と緩衝層4を含んでいる。そして、下から上へ順に緩衝層4と絶縁層3とブレージングシート10と配線層2が積層状に配置された状態でろう付けにより接合一体化されており、これにより絶縁基板1が形成されている。
【0033】
さらに、緩衝層4とその下側に配置された冷却部材5とがろう付けにより互いに接合されており、これにより絶縁基板1が冷却部材5上に接合されている。したがって、本第1実施形態の絶縁基板1は、詳述すると冷却部材5付きのものである。なお、このような冷却部材5付き絶縁基板1は冷却器とも呼ばれている。
【0034】
本第1実施形態の絶縁基板1では、絶縁層3と配線層2が本特許請求の範囲に記載された「第1構成層」と「第2構成層」にそれぞれ対応している。
【0035】
絶縁層(第1構成層)3は、セラミック製であり、電気絶縁性を有している。具体的には、絶縁層3は、AlN(窒化アルミ)板、Al(アルミナ)板、Si(窒化ケイ素)板などのセラミック板で形成されている。
【0036】
配線層(第2構成層)2は、回路層とも呼ばれているものであり、アルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するアルミニウム基複合材料製である。この複合材料の詳細については後述する。
【0037】
配線層2はその平坦状の上面からなる搭載面2aを有している。搭載面2aには発熱性素子20(図1中に二点鎖線で示す)が所定の接合手段(例:はんだ付け)によって接合されて搭載される。発熱性素子20は、発熱性素子20の動作に伴い発熱するものであり、例えば電子素子(半導体チップを含む)である。
【0038】
緩衝層4は、絶縁基板1に発生する熱応力等の応力を緩和するための層である。本第1実施形態では緩衝層4はアルミニウム板で形成されており、詳述すると例えば高純度アルミニウム板で形成されている。高純度アルミニウム板の純度は例えば4N以上である。
【0039】
配線層2、絶縁層3及び緩衝層4の形状は例えばそれぞれ平面視で略方形状である。絶縁層3の一辺長さは、配線層2の一辺長さよりも大きく設定されており更に緩衝層4の一辺長さよりも大きく設定されている。
【0040】
冷却部材5は、発熱性素子20を冷却するためのものであり、アルミニウム等の金属製である。本第1実施形態では冷却部材5は例えば放熱部材(ヒートシンク等)である。
【0041】
ただし本発明では、冷却部材5は放熱部材であることに限定されるものではなく、その他に例えば、後述する図3に示した第2実施形態の冷却部材105のように、その内部に冷却流体(例:冷却液)が流通する流路105aが設けられた冷却部材であっても良い。
【0042】
絶縁層3と配線層2はブレージングシート10を介してろう付けにより互いに接合されている。絶縁層3と緩衝層4はろう付けにより互いに接合されている。緩衝層4と冷却部材5はろう付けにより互いに接合されている。
【0043】
したがって、絶縁基板1は、絶縁層3とブレージングシート10を接合したろう付け部(第1ろう付け部)1aと、配線層2とブレージングシート10を接合したろう付け部(第2ろう付け部)1bと、絶縁層3と緩衝層4を接合したろう付け部(第3ろう付け部)1cと、緩衝層4と冷却部材5を接合したろう付け部(第4ろう付け部)1dとを備えている。
【0044】
なお図1では、配線層2とブレージングシート10は、それぞれの構成を理解し易くするため、断面で図示されるとともに、配線層2の断面及びブレージングシート10の断面に付される斜線等のハッチングはそれぞれ省略されている。
【0045】
次に、配線層2の構成について以下に説明する。
【0046】
配線層2は、上述したようにアルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するアルミニウム基複合材料製である。以下では、この複合材料を「アルミニウム基炭素粒子複合材料」ともいう。
【0047】
この複合材料の種類は限定されるものではない。望ましくは、複合材料は、アルミニウム箔上に炭素粒子層が塗工されてなる複数の塗工箔が積層状態で焼結一体化されたもの(この複合材料を以下では「積層焼結型複合材料」という)であるか、アルミニウム粒子(例:アルミニウム粉末)と炭素粒子(例:炭素粉末)との混合物が焼結されたもの(この複合材料を以下では「粒子焼結型複合材料」という)であることが良い。これらの複合材料は、いずれも、マトリックスとしてアルミニウムが用いられるとともに、当該アルミニウムと複合化される粒子として炭素粒子を含有するものである。
【0048】
図1中の符号「7」は複合材料の炭素粒子を示しており、同図中の符号「8」は複合材料のマトリックスを示している。マトリックス8は上述したようにアルミニウムからなる。
【0049】
アルミニウムの種類は限定されるものではない。特にアルミニウムは高純度アルミニウム等の高い熱伝導率を有していることが望ましい。
【0050】
炭素粒子7の種類は限定されるものではない。特に炭素粒子7は高い熱伝導率を有し且つアルミニウムとの複合化が容易であるものが望ましい。具体的には、炭素粒子7は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子からなる群より選択される一種の炭素粒子又は二種以上の炭素粒子を混合した混合炭素粒子であることが望ましく、更に、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン及び天然黒鉛粒子からなる群より選択される一種の炭素粒子又は二種以上の炭素粒子を混合した混合炭素粒子であることがより望ましい。
【0051】
炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などが好適に用いられる。
【0052】
カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標)を含む)などが好適に用いられる。
【0053】
グラフェンとしては、単層グラフェン、多層グラフェンなどが好適に用いられる。
【0054】
天然黒鉛粒子としては、鱗片状黒鉛粒子などが好適に用いられる。
【0055】
人造黒鉛粒子としては、異方性黒鉛粒子、熱分解黒鉛粒子などが好適に用いられる。
【0056】
炭素粒子7の大きさは限定されるものではない。しかるに、炭素粒子7が炭素繊維である場合、短炭素繊維が好適に用いられ、特に平均繊維長が10μm以上2mm以下の短炭素繊維が好適に用いられる。炭素粒子7がカーボンナノチューブである場合、平均長さが1μm以上10μm以下のカーボンナノチューブが特に好適に用いられる。炭素粒子7が天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子である場合、平均粒子径が10μm以上3mm以下の天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子が特に好適に用いられる。
【0057】
次に、本第1実施形態の絶縁基板1の製造方法について以下に説明する。
【0058】
図2に示すように、配線層2、絶縁層3、緩衝層4、冷却部材5及びブレージングシート10を準備する。
【0059】
ブレージングシート10は、配線層2と絶縁層3をろう付けにより互いに接合するためのものであり、図2に示すように、心材11の上下両面にそれぞれろう材からなる皮材12が圧延等によりクラッドされることで形成されたものである。すなわち、ブレージングシート10は詳述すると両面ブレージングシートからなる。本実施形態では、ブレージングシート10の上面に設けられた皮材12をブレージングシート10の上皮材12aといい、ブレージングシート10の下面に設けられた皮材12をブレージングシート10の下皮材12bという。
【0060】
ブレージングシート10は、絶縁層3と配線層2を接合した後の状態でブレージングシート10の平均結晶粒径が10μm以上300μm以下になるものであることが望ましい。その理由は次のとおりである。すなわち、ブレージングシート10中に含まれる結晶粒(図1参照、符号「9」)が細かくなることによりブレージングシート10の強度が高くなる。これにより、ブレージングシート10の強度が配線層2の強度(即ち配線層2の素材である上述したアルミニウム基炭素粒子複合材料の強度)に近づく。その結果、冷熱サイクル負荷時に配線層2とブレージングシート10とのろう付け部(第2ろう付け部)1bに発生する応力を確実に緩和することができる。平均結晶粒径の特に望ましい下限は30μmであり、特に望ましい上限は200μmである。
【0061】
ブレージングシート10の心材11の種類は限定されるものではない。心材11は例えばアルミニウムからなり、特に、Al−Mn系アルミニウム合金(例:A3003)からなることが望ましい。その理由は、絶縁層3と配線層2を接合した後の状態でブレージングシート10の平均結晶粒径が上述した望ましい範囲に確実になりうるからである。
【0062】
ブレージングシート10の各皮材12(12a、12b)の種類は限定されるものではない。各皮材12は例えばアルミニウム合金のろう材からなり、特に、Al−Si−Mg系アルミニウム合金のろう材からなることが望ましい。その理由は、絶縁層3と配線層2との接合が真空ろう付けにより行われる場合において絶縁層3と配線層2を良好に接合できるからである。さらに、各皮材12は、Biが添加されたアルミニウム合金のろう材からなるものであっても良く、この場合、接合時(即ちろう付け時)において各皮材(ろう材)12の流動性が向上する点で望ましい。
【0063】
さらに、ブレージングシート10は、絶縁層3と配線層2を接合した後の状態でブレージングシート10の厚さが60μm以上500μm以下になるものであることが望ましい。その理由は次のとおりである。すなわち、ブレージングシート10が薄すぎることによるブレージングシート10のエロージョンの発生を確実に抑制でき、そのため絶縁層3と配線層2を確実に良好に接合することができる。さらに、ブレージングシート10が厚すぎることによって絶縁層3に作用する大きな応力により絶縁層3が破断する不具合を確実に抑制することがきる。厚さの特に望ましい下限は80μmであり、特に望ましい上限は300μmである。
【0064】
緩衝層4の厚さ方向の両面にはそれぞれろう材層4a、4bが圧延等によりクラッドされており、これにより緩衝層4の両面にそれぞれろう材層4a、4bが設けられている。
【0065】
緩衝層4の厚さ方向の一方の片面(即ち緩衝層4の上面)のろう材層4aは、絶縁層3と緩衝層4をろう付けにより接合するためのものである。緩衝層4の厚さ方向の他方の片面(即ち緩衝層4の下面)のろう材層4bは、緩衝層4と冷却部材5をろう付けにより接合するためのものである。各ろう材層4a、4bの種類は限定されるものではない。例えば、各ろう材層4a、4bは例えばアルミニウム合金のろう材からなり、具体的には上述したブレージングシート10の皮材12のろう材と同種のろう材からなる。
【0066】
次いで、図2に示すように、配線層2とブレージングシート10と絶縁層3と緩衝層4と冷却部材5をこの順に積層状に配置し、これらの積層体を形成する。そして、積層体にろう付け荷重として積層方向の圧縮荷重を加えた状態で積層体を所定のろう付け雰囲気中にて所定のろう付け温度及び所定のろう付け時間加熱することにより、配線層2とブレージングシート10と絶縁層3と緩衝層4と冷却部材5をろう付け(例:真空ろう付け)により一括して接合一体化する。すなわち、配線層2と絶縁層3をブレージングシート10を介してろう付けにより互いに接合すると同時に絶縁層3と緩衝層4をろう付けにより互いに接合し、更に同時に緩衝層4と冷却部材5をろう付けにより互いに接合する。その結果、本第1実施形態の上述した絶縁基板1(詳述すると冷却部材5付き絶縁基板1)が得られる。
【0067】
上述のろう付けによる接合条件、即ちろう付け条件は限定されるものではない。望ましいろう付け荷重は0.01〜1MPaであり、望ましいろう付け雰囲気は真空、非酸化性ガス雰囲気(例:アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気)であり、望ましいろう付け温度は590〜620℃であり、望ましいろう付け時間(即ちろう付け温度の保持時間)は1〜60minである。この望ましいろう付け条件で配線層2とブレージングシート10と絶縁層3と緩衝層4と冷却部材5を接合一体化することにより、絶縁層3と配線層2を接合した後の状態でブレージングシート10の平均結晶粒径及び厚さをそれぞれ上述した望ましい範囲に確実に設定することができる。
【0068】
絶縁基板1において、絶縁層3とブレージングシート10はブレージングシート10の下皮材12bのろう材で接合されており、配線層2とブレージングシート10はブレージングシートの上皮材12aのろう材で接合されており、絶縁層3と緩衝層4は緩衝層4の上面のろう材層4aのろう材で接合されており、緩衝層4と冷却部材5は緩衝層4の下面のろう材層4bのろう材で接合されている。
【0069】
なお、絶縁基板1の配線層2の搭載面2aには、搭載面2aのはんだ付け性を向上させるため、搭載面2aに発熱性素子20をはんだ付けにより接合する前にニッケルめっき等のニッケル層を形成しても良い。
【0070】
本第1実施形態の絶縁基板1では、配線層2がアルミニウム基炭素粒子複合材料製であるにより、配線層2の線膨張係数が小さくなり、そのため、セラミック製絶縁層3の線膨張係数と配線層2の線膨張係数との差を小さくすることができる。これにより、絶縁層3と配線層2との間の線膨張係数差に起因する応力を小さくすることができる。
【0071】
さらに、絶縁層3と配線層2をブレージングシート10を介してろう付けにより互いに接合することにより、絶縁層3と配線層2を良好に接合することができる。
【0072】
これらの作用により、絶縁基板1の冷熱サイクル負荷に対する信頼性(特に接合信頼性)を高めることができる。
【0073】
図3は、本発明の第2実施形態を説明する図である。同図において、上記第1実施形態の絶縁基板1の要素と同じ作用を奏する要素にはその符号に100を加算した符号が付されている。本第2実施形態の絶縁基板101及びその製造方法を、上記第1実施形態の絶縁基板1及びその製造方法との相異点を中心に以下に説明する。
【0074】
本第2実施形態の絶縁基板101では、絶縁層103が本特許請求の範囲に記載された「第1構成層」に対応し、配線層102及び緩衝層104が本特許請求の範囲に記載された「一方の第2構成層」及び「他方の第2構成層」にそれぞれ対応する。
【0075】
本第2実施形態の絶縁基板101の製造方法では、同図に示すように、配線層102、絶縁層103、緩衝層104、冷却部材105、第1ブレージングシート110、第2ブレージングシート120及び第3ブレージングシート130を準備する。
【0076】
第1ブレージングシート110は、配線層102と絶縁層103をろう付けにより互いに接合するためのものであり、心材111の両面にそれぞれろう材からなる皮材112a、112bが圧延等によりクラッドされることで形成されたものである。すなわち、第1ブレージングシート110は詳述すると両面ブレージングシートからなる。
【0077】
第2ブレージングシート120は、絶縁層103と緩衝層104をろう付けにより互いに接合するためのものであり、心材121の両面にそれぞれろう材からなる皮材122a、122bが圧延等によりクラッドされることで形成されたものである。すなわち、第2ブレージングシート120は詳述すると両面ブレージングシートからなる。
【0078】
第3ブレージングシート130は、緩衝層104と冷却部材105をろう付けにより互いに接合するためのものであり、心材131の両面にそれぞれろう材からなる皮材132a、132bが圧延等によりクラッドされることで形成されたものである。すなわち、第3ブレージングシート130は詳述すると両面ブレージングシートからなる。
【0079】
第1ブレージングシート110は、配線層102と絶縁層103を接合した後の状態で第1ブレージングシート110の平均結晶粒径が10μm以上300μm以下になるものであることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の理由と同様である。平均結晶粒径の特に望ましい下限は30μmであり、特に望ましい上限は200μmである。
【0080】
第2ブレージングシート120は、絶縁層103と緩衝層104を接合した後の状態で第2ブレージングシート120の平均結晶粒径が10μm以上300μm以下になるものであることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の理由と同様である。平均結晶粒径の特に望ましい下限は30μmであり、特に望ましい上限は200μmである。
【0081】
第3ブレージングシート130は、緩衝層104と冷却部材105を接合した後の状態で第3ブレージングシート130の平均結晶粒径が10μm以上300μm以下になるものであることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の理由と同様である。平均結晶粒径の特に望ましい下限は30μmであり、特に望ましい上限は200μmである。
【0082】
第1〜第3ブレージングシート110、120、130の心材111、121、131の種類は限定されるものではない。心材111、121、131は例えばアルミニウムからなり、特に、Al−Mn系アルミニウム合金(例:A3003)からなることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の心材11の理由と同じである。
【0083】
第1〜第3ブレージングシート110、120、130の皮材112、122、132の種類は限定されるものではない。各皮材112、122、132は例えばアルミニウム合金のろう材からなり、特に、Al−Si−Mg系アルミニウム合金のろう材からなることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の皮材12の理由と同様である。また各皮材12は、Biが添加されたアルミニウム合金のろう材からなるものであっても良い。
【0084】
第1ブレージングシート110は、配線層102と絶縁層103を接合した後の状態で第1ブレージングシート110の厚さが60μm以上500μm以下になるものであることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の厚さの理由と同様である。厚さの特に望ましい下限は80μmであり、特に望ましい上限は300μmである。
【0085】
第2ブレージングシート120は、絶縁層103と緩衝層104を接合した後の状態で第2ブレージングシート120の厚さが60μm以上500μm以下になるものであることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の厚さの理由と同様である。厚さの特に望ましい下限は80μmであり、特に望ましい上限は300μmである。
【0086】
第3ブレージングシート130は、緩衝層104と冷却部材105を接合した後の状態で第3ブレージングシート130の厚さが60μm以上500μm以下になるものであることが望ましい。その理由は上述した第1実施形態のブレージングシート10の厚さの理由と同様である。厚さの特に望ましい下限は80μmであり、特に望ましい上限は300μmである。
【0087】
緩衝層104はアルミニウム基炭素粒子複合材料製である。この複合材料の種類は限定されるものではなく、例えば、複合材料として、上述した第1実施形態の配線層2の素材であるアルミニウム基炭素粒子複合材料と同じもの又は異なるものが用いられる。
【0088】
さらに、緩衝層104の厚さ方向の両面にはそれぞれろう材層は設けられていない。
【0089】
冷却部材105は、その内部に冷却流体(例:冷却液)が流通する流路105aが設けられたものである。なお図3では、冷却部材105の内部構造を理解し易くするため、冷却部材105は断面で図示されており、また冷却部材105の断面に付される斜線等のハッチングは省略されている。
【0090】
次いで、同図に示すように、配線層102と第1ブレージングシート110と絶縁層103と第2ブレージングシート120と緩衝層104と第3ブレージングシート130と冷却部材105をこの順に積層状に配置し、これらの積層体を形成する。そして、積層体にろう付け荷重として積層方向の圧縮荷重を加えた状態で積層体を所定のろう付け雰囲気中にて所定のろう付け温度及び所定のろう付け時間加熱することにより、配線層102と第1ブレージングシート110と絶縁層103と第2ブレージングシート120と緩衝層104と第3ブレージングシート130と冷却部材105をろう付け(例:真空ろう付け)により一括して接合一体化する。すなわち、配線層102と絶縁層103を第1ブレージングシート110を介してろう付けにより互いに接合すると同時に絶縁層103と緩衝層104を第2ブレージングシート120を介してろう付けにより互いに接合し、更に同時に緩衝層104と冷却部材105を第3ブレージングシート130を介してろう付けにより互いに接合する。その結果、本第2実施形態の絶縁基板101(詳述すると冷却部材105付き絶縁基板101)が得られる。
【0091】
上述のろう付けによる接合条件、即ちろう付け条件は限定されるものではなく、例えば上述した第1実施形態のろう付け条件と同じである。
【0092】
絶縁基板101において、絶縁層103と第1ブレージングシート110は第1ブレージングシート110の下皮材112bのろう材で接合され、配線層102と第1ブレージングシート110は第1ブレージングシート110の上皮材112aのろう材で接合され、絶縁層103と第2ブレージングシート120は第2ブレージングシート120の上皮材122aのろう材で接合され、緩衝層104と第2ブレージングシート120は第2ブレージングシート120の下皮材122bのろう材で接合され、緩衝層104と第3ブレージングシート130は第3ブレージングシート130の上皮材132aのろう材で接合され、冷却部材105と第3ブレージングシート130は第3ブレージングシート130の下皮材132bのろう材で接合される。
【0093】
したがって、絶縁基板101は、絶縁層103と第1ブレージングシート110を接合したろう付け部(第1ろう付け部)と、配線層102と第1ブレージングシート110を接合したろう付け部(第2ろう付け部)と、絶縁層103と第2ブレージングシート120を接合したろう付け部(第3ろう付け部)と、緩衝層104と第2ブレージングシート120を接合したろう付け部(第4ろう付け部)と、緩衝層104と第3ブレージングシート130を接合したろう付け部(第5ろう付け部)と、冷却部材105と第3ブレージングシート130を接合したろう付け部(第6ろう付け部)とを備えている。
【0094】
本第2実施形態の絶縁基板101の製造方法では、絶縁層103と配線層102を第1ブレージングシート110を介してろう付けにより互いに接合すると同時に絶縁層103と緩衝層104を第2ブレージングシート120を介してろう付けにより互いに接合し、更に同時に緩衝層104と冷却部材105を第3ブレージングシート130を介してろう付けにより互いに接合するので、絶縁基板101の製造時間の大幅な短縮化を図ることができる。
【0095】
さらに、配線層102だけでなく緩衝層104もアルミニウム基炭素粒子複合材料製であるから、絶縁層103と配線層102との間の線膨張係数差に起因する応力だけでなく絶縁層103と緩衝層104との間の線膨張係数差に起因する応力も小さくすることができるし、更には、絶縁層103と緩衝層104を良好に接合することができる。したがって、絶縁基板101の冷熱サイクル負荷に対する信頼性(特に接合信頼性)を大幅に高めることができる。
【0096】
図4〜6は、本発明の参考形態を説明する図である。同図において、上記第1実施形態の絶縁基板1の要素と同じ作用を奏する要素にはその符号に200を加算した符号が付されている。本参考形態の絶縁基板201及びその製造方法を、上記第1実施形態の絶縁基板1及びその製造方法との相異点を中心に以下に説明する。
【0097】
図4に示すように、本参考形態の絶縁基板201では、絶縁層203と配線層202はブレージングシートを介さないでろう付けにより直接的に互いに接合されたものである。
【0098】
本参考形態の絶縁基板201の製造方法では、図6に示すように、配線層202、絶縁層203、緩衝層204、冷却部材205及びろう材板15を準備する。
【0099】
配線層202は、上記第1実施形態の配線層2と同じくアルミニウム基炭素粒子複合材料製である。
【0100】
ろう材板15は、配線層202と絶縁層203を接合するためのものであり、例えばAl−Si−Mg系アルミニウム合金のろう材からなるものである。
【0101】
絶縁層203は、上記第1実施形態の絶縁層3と同じくセラミック製である。
【0102】
緩衝層204は、上記第1実施形態の緩衝層4と同じくアルミニウム板で形成されており、詳述すると例えば高純度アルミニウム板で形成されている。さらに、緩衝層204の厚さ方向の両面には上記第1実施形態の緩衝層4と同じくそれぞれろう材層204a、204bが圧延等によりクラッドされており、これにより緩衝層4の両面にそれぞれろう材層204a、204bが設けられている。
【0103】
冷却部材205は、上記第1実施形態の冷却部材5と同じくアルミニウム等の金属製である。
【0104】
次いで、図6に示すように、配線層202とろう材板15と絶縁層203と緩衝層204と冷却部材205をこの順に積層状に配置し、これらの積層体を形成する。そして、積層体にろう付け荷重として積層方向の圧縮荷重を加えた状態で積層体を所定のろう付け雰囲気中にて所定のろう付け温度及び所定のろう付け時間加熱することにより、配線層202と絶縁層203と緩衝層204と冷却部材205をろう付け(例:真空ろう付け)により一括して接合一体化する。すなわち、配線層202と絶縁層203をろう付けにより互いに接合すると同時に絶縁層203と緩衝層204をろう付けにより互いに接合し、更に同時に緩衝層204と冷却部材205をろう付けにより互いに接合する。その結果、図4に示した本参考形態の絶縁基板201(詳述すると冷却部材205付き絶縁基板201)が得られる。
【0105】
本参考形態の絶縁基板201では、絶縁層203と配線層202は上述したようにブレージングシートを介さないでろう付けにより互いに接合されている。すなわち、絶縁層203と配線層202はろう材板15のろう材で接合されている。この場合、図5に示すように、絶縁層203と配線層202を接合したろう付け部201eは、配線層202中に含まれる炭素粒子207の絶縁層203との接触部分207aで殆ど接合されない。そのため、絶縁層203と配線層202との接合率が低く、絶縁層203と配線層202との接合状態はあまり良好ではない。その結果、絶縁基板201の冷熱サイクル負荷に対する信頼性(特に接合信頼性)が低下している。
【0106】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0107】
例えば、上述した第1実施形態の絶縁基板1では、絶縁基板1を構成する複数の構成層うち配線層2がアルミニウム基炭素粒子複合材料製であり、上述した第2実施形態の絶縁基板101では、配線層2と緩衝層4がそれぞれアルミニウム基炭素粒子複合材料製であるが、本発明に係る絶縁基板では、その他に例えば、緩衝層4だけがアルミニウム基炭素粒子複合材料製であっても良い。
【実施例】
【0108】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を以下に示す。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0109】
<実施例>
本実施例では、図1及び2に示した上記第1実施形態の絶縁基板を次の方法により製造した。
【0110】
配線層2、ブレージングシート10、絶縁層3、緩衝層4及び冷却部材としてのヒートシンク5を準備した。
【0111】
配線層2はアルミニウム基炭素粒子複合材料製であり、詳述すると、上述した積層焼結型複合材料製である。配線層2の厚さは0.4mmである。
【0112】
絶縁層3は、セラミック板としてのAlN板で形成されたものである。
【0113】
ブレージングシート10は、厚さ200μm及びクラッド率10%の両面アルミニウムブレージングシートからなるものである。ブレージングシート10の心材11はA3003からなるものである。ブレージングシート10の各皮材12(12a、12b)はAl−10質量%Si−1質量%Mg−0.1質量%Biのアルミニウム合金のろう材からなるものである。
【0114】
緩衝層4は純度4Nの高純度アルミニウム板で形成されたものである。緩衝層4の厚さは1.6mmである。さらに、緩衝層4の厚さ方向の両面にはそれぞれろう材層4a、4bが圧延によりクラッドされている。各ろう材層4a、4bはAl−10質量%Si−1質量%Mg−0.1質量%Biのアルミニウム合金のろう材からなるものである。各ろう材層4a、4bの厚さは30μmであある。
【0115】
ヒートシンク5はアルミニウム製である。
【0116】
そして、配線層2とブレージングシート10と絶縁層3と緩衝層4とヒートシンク5をこの順に積層状に配置し、これらの積層体を形成した。次いで、積層体にろう付け荷重として0.1MPaの積層方向の圧縮荷重を加えた状態で積層体をろう付け雰囲気として真空中にてろう付け温度610℃及びろう付け時間20min加熱することにより、配線層2とブレージングシート10と絶縁層3と緩衝層4とヒートシンク5を真空ろう付けにより一括して接合一体化した。以上の手順により、絶縁基板1(詳述するとヒートシンク5付き絶縁基板1)を得た。
【0117】
絶縁基板1において、ブレージングシート10の平均結晶粒径は50μmであり、ブレージングシート10の厚さは170μmであった。
【0118】
また、絶縁基板1の絶縁層3とブレージングシート10との接合界面を超音波探傷装置で確認したところ、絶縁層3とブレージングシート10がほぼ100%の接合率で接合されていた。したがって、絶縁層3とブレージングシート10との接合状態は良好であった。
【0119】
<比較例>
本比較例では、図4〜6に示した上記参考形態の絶縁基板201を次の方法により製造した。
【0120】
配線層202、ろう材板15、絶縁層203、緩衝層204及び冷却部材としてのヒートシンク205を準備した。
【0121】
配線層202、絶縁層203、緩衝層204及びヒートシンク205は、実施例1と同じである。
【0122】
ろう材板15は、Al−10質量%Si−1質量%Mg−0.1質量%Biのアルミニウム合金のろう材からなるものである。ろう材板15の厚さは20μmである。
【0123】
そして、配線層202とろう材板15と絶縁層203と緩衝層204とヒートシンク205をこの順に積層状に配置し、これらの積層体を形成した。次いで、積層体を加熱することにより、配線層202と絶縁層203と緩衝層204とヒートシンク205をろう付けにより一括して接合一体化した。この際に適用したろう付け条件(ろう付け荷重、ろう付け雰囲気、ろう付け温度、ろう付け時間)は実施例1のろう付け条件と同じである。以上の手順により、絶縁基板201(詳述するとヒートシンク205付き絶縁基板201)を得た。
【0124】
絶縁基板201の絶縁層203と配線層202との接合界面を超音波探傷装置で確認したところ、絶縁層203と配線層202が95%の接合率で接合されていた。したがって、絶縁層203と配線層202との接合状態はあまり良好ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、電子素子等の発熱性素子が搭載される絶縁基板の製造方法及び絶縁基板に利用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1:絶縁基板
2:配線層(第2構成層)
3:絶縁層(第1構成層)
4:緩衝層(第2構成層)
5:冷却部材
7:炭素粒子
10:ブレージングシート
20:発熱性素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6