(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目標経路の前記経路成分を、前記目標経路の曲率成分と、自車両と前記目標経路との間の角度成分と、自車両と前記目標経路との間の横方向の位置成分とにより構成し、
前記複合経路生成部は、前記複合経路の前記曲率成分を、前記走行車線に基づく経路の前記曲率成分と前記先行車両の走行軌跡に基づく経路の前記曲率成分とを混合した成分とし、前記複合経路の前記角度成分を、前記走行車線に基づく経路の前記角度成分と前記先行車両の走行軌跡に基づく経路の前記角度成分とを混合した成分とし、前記複合経路の前記横方向の位置成分を、前記走行車線に基づく経路の前記横方向の位置成分とする
ことを特徴とする請求項1記載の車両の走行制御装置。
前記複合経路を生成する前記条件が成立した場合、前記複合経路における前記経路成分の混合比率を所定の時定数を持って変化させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の走行制御装置。
前記複合経路を生成する前記条件を、自車両が走行する道路の渋滞状況と前記道路の前記走行車線を形成する白線の種別とに応じた条件とすることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両の走行制御装置。
前記複合経路における前記経路成分の混合比率を、自車両と前記先行車両との車間距離に応じて設定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の車両の走行制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号10は、自動車等の車両の走行制御システムであり、車両の自律的な自動運転を含む走行制御を実行する。この走行制御システム10は、走行制御装置100を中心として、外部環境認識装置20、地図情報処理装置30、エンジン制御装置40、変速機制御装置50、ブレーキ制御装置60、操舵制御装置70等が車内ネットワークを形成する通信バス150を介して互いに接続されて構成されている。
【0013】
外部環境認識装置20は、車載のカメラ、ミリ波レーダ、レーザレーダ等の各種デバイスにより、自車両周囲の外部環境を認識する。本実施の形態においては、外部環境認識装置20として、車載のカメラ1及び画像認識装置2による外部環境の認識を主として説明する。
【0014】
カメラ1は、本実施の形態においては、同一対象物を異なる視点から撮像する2台のカメラ1a,1bで構成されるステレオカメラであり、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期のカメラである。これらのカメラ1a,1bは、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に所定の基線長で配置されている。
【0015】
カメラ1で撮像した左右一対の画像は、画像認識装置2で処理される。画像認識装置2は、ステレオマッチング処理により、左右画像の対応位置の画素ずれ量(視差)を求め、画素ずれ量を輝度データ等に変換して距離画像を生成する。距離画像上の点は、三角測量の原理から、自車両の車幅方向すなわち左右方向をX軸、車高方向をY軸、車長方向すなわち距離方向をZ軸とする実空間上の点に座標変換され、自車両が走行する道路の白線(車線)、障害物、自車両の前方を走行する車両等が3次元的に認識される。
【0016】
車線としての道路白線は、画像から白線の候補となる点群を抽出し、その候補点を結ぶ直線や曲線を算出することにより、認識することができる。例えば、画像上に設定された白線検出領域内において、水平方向(車幅方向)に設定した複数の探索ライン上で輝度が所定以上変化するエッジの検出を行って探索ライン毎に1組の白線開始点及び白線終了点を検出し、白線開始点と白線終了点との間の中間の領域を白線候補点として抽出する。
【0017】
そして、単位時間当たりの車両移動量に基づく白線候補点の空間座標位置の時系列データを処理して左右の白線を近似するモデルを算出し、このモデルにより、白線を認識する。白線の近似モデルとしては、ハフ変換によって求めた直線成分を連結した近似モデルや、2次式等の曲線で近似したモデルを用いることができる。
【0018】
地図情報処理装置30は、地図データベースを備え、GPS衛星等からの信号に基づいて自車両位置を測位し、地図データとの照合を行う。地図データベースには、車両走行の経路案内や車両の現在位置を表示するための地図データと、自動運転を含む運転支援制御を行うための高精細の地図データとが含まれている。
【0019】
地図情報処理装置30は、自車両位置の測位結果と地図データとの照合に基づく走行経路案内や交通情報を、図示しない表示装置を介してドライバに提示し、また、自車両及び先行車両が走行する道路の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、道路白線種別、レーン数等の走行制御用の地図情報を出力する。
【0020】
エンジン制御装置40は、エンジン運転状態を検出する各種センサ類からの信号及び通信バス150を介して送信される各種制御情報に基づいて、エンジン(図示せず)の運転状態を制御する。エンジン制御装置40は、例えば、吸入空気量、スロットル開度、エンジン水温、吸気温度、空燃比、クランク角、アクセル開度、その他の車両情報に基づき、燃料噴射制御、点火時期制御、電子制御スロットル弁の開度制御等を主要とするエンジン制御を実行する。
【0021】
変速機制御装置50は、変速位置や車速等を検出するセンサ類からの信号や通信バス150を介して送信される各種制御情報に基いて、自動変速機(図示せず)に供給する油圧を制御し、予め設定された変速特性に従って自動変速機を制御する。
【0022】
ブレーキ制御装置60は、例えば、ブレーキスイッチ、4輪の車輪速、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、4輪のブレーキ装置(図示せず)をドライバのブレーキ操作とは独立して制御する。また、ブレーキ制御装置60は、各輪のブレーキ力に基づいて各輪のブレーキ液圧を算出して、アンチロック・ブレーキ・システムや横すべり防止制御等を行う。
【0023】
操舵制御装置70は、例えば、車速、ドライバの操舵トルク、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、車両の操舵系に設けた電動パワーステアリングモータ(図示せず)によるアシストトルクを制御する。また、操舵制御装置70は、走行制御装置100からの指示により、自車両の前方を走行する先行車両への追従走行時、先行車両の走行軌跡に追従する操舵量で電動パワーステアリングモータを駆動制御する。
【0024】
次に、走行制御システム10の中心となる走行制御装置100について説明する。走行制御装置100は、外部環境認識装置20による外部環境の認識結果に基づいて、自車両の追従走行の対象となる目標経路を生成し、この目標経路に沿って走行するよう、エンジン制御装置40、変速機制御装置50、ブレーキ制御装置60、及び操舵制御装置70を介した走行制御を実行する。
【0025】
詳細には、走行制御装置100は、道路の白線が安定的に認識される場合、左右白線の中央位置を軌跡とする目標経路に追従するよう制御する。一方、道路の白線が無い或いは白線を認識できず、自車両前方に先行車両を補足している場合には、先行車両の走行軌跡に基づいて生成した目標経路に追従するよう制御する。
【0026】
更に、走行制御装置100は、渋滞時等に先行車両に接近してカメラ1の視野内に白線が入る状態と入らない状態とが交互に発生するよう状況、特に、3車線道路の中央レーンのように、左右の白線が破線で形成されている車線を走行中であるような状況になった場合、白線情報と先行車両情報とを複合した目標経路に追従するよう制御形態を変更する。これにより、白線に基づく目標経路への走行制御と、先行車両に基づく目標経路への走行制御とが頻繁に入れ替わることによる車両挙動の不安定化を防止することができる。
【0027】
このため、走行制御装置100は、
図1中に示すように、渋滞状況検出部101、白線種別検出部102、目標経路生成部103、制御部104を備えている。更に、目標経路生成部103は、白線に基づく目標経路と、先行車両の走行軌跡に基づく目標経路と、それらを複合した目標経路との3種類の目標経路とを生成するため、車線経路生成部としての白線経路生成部103a、先行車両経路生成部103b、複合経路生成部103cを備えている。
【0028】
渋滞状況検出部101と白線種別検出部102とは、目標経路生成部103における複合経路への追従走行を行う走行モードの条件を検出する。本実施の形態においては、渋滞状況下で走行する走行モード(渋滞状況モード)であるか否かを判断するための条件、3車線の中央レーン等のように両側の白線が破線である走行レーンを走行する走行モード(中央レーン走行モード)であるか否かを判断するための条件を、それぞれ検出し、渋滞状況モード及び中央レーン走行モードの条件が共に満足される場合、複合経路への追従走行に移行する。
【0029】
渋滞状況検出部101は、自車両の車体速度V及び先行車両との車間距離Lcを検出することにより、渋滞状況であるか否かを判断する。具体的には、車体速度V、車間距離Lcが以下の(1),(2)の条件を共に満足する場合、渋滞状況にあると判断して渋滞状況モードをONとする。
【0030】
(1) V<Vjm_on
(2) Lc<Lcjm_on
ここで、Vjm_on:設定車速(例えば、Vjm_on=40km/h)
Lcjm_on:設定車間距離(例えば、Lcjm_on=40m)
【0031】
また、渋滞状況検出部101は、渋滞状況モードがONになった後、以下の(3),(4)の条件が成立するか否かを調べ、これらの条件が共に成立した場合、渋滞が解消された状況であると判断して渋滞状況モードをOFFにする。これは、渋滞状況モードのON,OFFにヒステリシスを持たせて制御形態の急激な変化を抑制するためである。
【0032】
(3) V≧Vjm_off
(4) Lc≧Lcjm_off
ここで、Vjm_off:設定車速(例えば、Vjm_off=50km/h)
Lcjm_off:設定車間距離(例えば、Lcjm_off=50m)
【0033】
白線種別検出部102は、外部環境認識装置20からの情報に基づいて、左右の白線の連続する区間の距離Lkl,Lkrを、それぞれ検出する。そして、検出した区間距離Lkl,Lkrが以下の(5),(6)の条件を共に満足する状態が設定フレーム数だけ連続する場合、左右を破線の白線で囲まれた3車線の中央レーンを走行している状態であると判断して中央レーン走行モードをONにする。
【0034】
(5)Lkl<Lkl_on
(6)Lkr<Lkr_on
ここで、Lkl_on:設定区間距離(例えば、Lkl_on=15m)
Lkr_on:設定区間距離(例えば、Lkr_on=15m)
【0035】
また、白線種別検出部102は、中央レーン走行モードのON,OFFにヒステリシスを持たせるため、中央レーン走行モードがONになった後、以下の(7),(8)の条件が成立するか否かを調べ、これらの条件が共に成立する状態が設定フレーム数だけ連続した場合、中央レーン走行モードをOFFにする。
【0036】
(7)Lkl≧Lkl_off
(8)Lkr≧Lkr_off
ここで、Lkl_off:設定区間距離(例えば、Lkl_off=20m)
Lkr_off:設定区間距離(例えば、Lkr_off=20m)
【0037】
目標経路生成部103は、目標経路を、白線経路生成部103aで白線に基づく経路として生成し、先行車両経路生成部103bで先行車両の走行軌跡に基づく経路として生成する。白線及び先行車両が認識されている状態では、白線経路生成部103aと先行車両経路生成部103bとは、それぞれの目標経路を生成する処理を並列的に実行し、それらを複合した目標経路が状況に応じて複合経路生成部103cで生成される。
【0038】
白線経路生成部103aで生成する目標経路と先行車両経路生成部103bで生成する目標経路とは、基本的に同様の処理によって生成される。すなわち、白線経路生成部103aは、左右の白線の中央位置を目標点として、この目標点の軌跡を目標経路とする。また、先行車両経路生成部103bは、先行車両の背面領域の幅方向の中央位置を目標点として、この目標点の軌跡を目標経路とする。
【0039】
本実施の形態においては、目標点の軌跡を2次曲線で表現して目標経路を生成する例について説明する。
【0040】
(a)白線の場合
画像上で検出された白線候補点を、それぞれ画像座標系に対して、実空間の座標系に写像する。この画像上の白線候補点は、例えば、手前側の約7〜8mから遠方側の100m位までの候補点であり、これらの全ての白線候補点が実空間に写像される。そして、画像上で検出できた白線候補点と、自車両の移動量に基づいて推定した過去の白線データとを合わせ、それぞれの候補点に対する近似曲線を同定する。
【0041】
(b)先行車両の場合
先行車両の背面中心の座標を点Pとして、それに対して、以下の(1)〜(4)式に基づき、時々刻々、自車両の移動量分だけ更新していき、先行車両の軌跡点群を作成する。この軌跡点群に対して、近似曲線を同定する。
【0042】
具体的には、例えば、カメラ1の撮像画像の1フレーム当たりの自車両の移動量に基づいてフレーム毎に目標となる候補点Pを求め、この候補点Pの点群を近似する曲線を目標経路として算出する。詳細には、
図2に示す関係から、自車両CRの車速Vと、自車両CRのヨーレートから求まるヨー角θとに基づき、フレームレートΔt(撮像画像が1フレーム更新されるまでの時間)での自車両CR’への移動量Δx,Δzを、以下の(1)式及び(2)式を用いて計算する。
Δx=V・Δt・sinθ …(1)
Δz=V・Δt・cosθ …(2)
【0043】
次に、以下の(3)式及び(4)式に示すように、前フレーム以前に検出した車両固定座標系(X,Z)における候補点Pold(Xold,Zold)に対し、自車両の移動量Δx,Δzを減算した後、現在のフレームにおける車両固定座標系(X',Z')への座標変換を行うことにより、現在のフレームにおける候補点Ppre(Xpre,Zpre)の座標を計算する。
Xpre=(Xold-Δx)・cosθ−(Zold-Δz)・sinθ …(3)
Zpre=(Xold-Δx)・sinθ+(Zold-Δz)・cosθ …(4)
【0044】
そして、これらの候補点の点群に対して、例えば最小二乗法を適用することにより、以下の(5)式に示すように、候補点の軌跡を2次曲線で表現した経路PHを求め、この経路PHを目標経路とする(
図3参照)。(5)式において、係数A,B,Cは目標経路を構成する経路成分を表し、係数Aは目標経路の曲率成分、係数Bは自車両に対する目標経路のヨー角成分(自車両の前後方向軸と目標経路(接線)との間の角度成分)、係数Cは自車両に対する目標経路の横方向の位置成分(横位置成分)を示している。
X=A・Z
2+B・Z+C …(5)
【0045】
尚、白線による目標経路は、左右の白線の候補点の中央位置を目標点として、この中央の目標点から上記(5)式を算出するようにしても良いが、より正確には、左右の白線のそれぞれについて(5)式の曲線を算出し、左右の曲線から求められる中央位置の軌跡を目標経路とする。
【0046】
(5)式による目標経路は、白線情報に基づく場合、渋滞シーンでは、先行車両と自車両との車間距離が短いため、白線の形状が安定せず、不安定になる傾向がある。但し、白線情報に関して全ての物理値が不安定なわけでなく、白線の経路成分のうち、曲率及びヨー角成分は不安定になる傾向にあるが、自車両に対する白線の横位置成分は安定する。一方、先行車両情報に基づく目標経路では、経路成分のうち、曲率及びヨー角成分は比較的安定する傾向にあるが、先行車両が車線の端によって走行した場合、自車両の横位置が車線中央からずれてしまい、先行車両の車幅よりも自車両の車幅が大きい場合、車線からはみ出す虞がある。
【0047】
従って、複合経路生成部103cは、渋滞状況モードがON且つ中央レーン走行モードがONになった場合、(5)式による目標経路に対して、白線情報と先行車両情報とを複合した複合経路をを目標経路として生成する。この複合経路に追従する走行制御を行うことにより、制御系の発振、発散を抑制することができる。
【0048】
具体的には、(5)式における係数A.B.Cを、以下の(6)〜(8)式に示す係数で置き換えることにより、白線情報と先行車両情報とを所定の割合で合成した目標経路とする。
A=Aw・K1+Ac・(1−K1) …(6)
B=Bw・K2+Bc・(1−K2) …(7)
C=Cw・K3+Cc・(1−K3) …(8)
ここで、Aw:白線情報に基づく目標経路の曲率成分を表す係数
Bw:白線情報に基づく目標経路のヨー角成分を表す係数
Cw:白線情報に基づく目標経路の横位置成分を表す係数
Ac:先行車両情報に基づく目標経路の曲率成分を表す係数
Bc:先行車両情報に基づく目標経路のヨー角成分を表す係数
Cc:先行車両情報に基づく目標経路の横位置成分を表す係数
K1,K2,K3:白線情報と先行車両情報との混合比率を示す係数
【0049】
(6)〜(8)式における係数K1,K2,K3は、例えば、K1=0.5、K2=0.5、K3=1.0に設定される。すなわち、曲率成分とヨー角成分については、白線情報と先行車両情報とを50%ずつ混合し、横位置成分については、白線情報を100%として複合経路を生成することで、自車両の車線中央からのずれを抑制しつつ、経路の曲率成分、自車両に対する経路のヨー角成分を安定化する。
【0050】
尚、白線情報と先行車両情報との混合比率を示す各係数K1,K2,K3は、必ずしも一定である必要はなく、車間距離が短くなればなるほど、白線認識精度が低下するため、先行車両情報の重みを大きくするようにしても良い。
【0051】
例えば、
図4に示すように、自車両CRが破線状の白線Lw1,Lw2によって形成される車線内を走行している場合、カメラの視野R内で白線Lw1,Lw2が認識されている状態では、先行車両CR1の中心位置Xcが車線中央位置Xoからオフセットしていても、自車両CRは、白線Lw1,Lw2の中央位置を目標経路として走行している。そして、両側の白線Lw1,Lw2がカメラの視野Rから外れて認識できなくシーンが出現しても、白線情報と先行車両情報とを混合した複合経路を目標経路として走行するため、従来のように先行車両の中心位置に向かって偏ることなく、白線Lw1.Lw2の中央位置を維持して走行することが可能となる。
【0052】
この場合、複合経路への移行は、複合経路に切り換わった瞬間に白線情報と先行車両情報との混合比率を変更するのではなく、時間経過と共に徐々に複合経路の混合比率を変化させるようにすることが望ましい。
【0053】
例えば、
図5に示すように、白線情報に基づく目標経路への制御中に、時刻t0で渋滞状況モードがON且つ中央レーン走行モードがONになった場合、白線情報に基づいて設定された目標経路の曲率成分及びヨー角成分が、図中に破線で示すように、白線情報と先行車両情報との所定の混合比率となるように所定の時定数を持って変化し、白線情報のみによる曲率成分及びヨー角成分の不安定化が回避される。一方、横位置成分は、時刻t0後も白線情報に基づく成分が維持され、自車両の車線中央からのずれが抑制される。
【0054】
制御部104は、自車両の車幅方向の中心位置が目標経路上の制御目標点に一致するように、操舵制御装置70を介して現在の操舵角を修正し、目標経路への追従走行を制御する。制御目標点への操舵制御は、現在の操舵角で進行したときの所定距離における自車両の推定横位置と目標点との偏差δ(
図2参照)対するフィードバック制御、目標経路と自車両との相対ヨー角に対するフィードバック制御、目標経路の曲率変化に対するフィードフォワード制御を主として実行される。
【0055】
尚、所定の距離における自車両の推定横位置は、操舵角、車速、車両固有のスタビリティファクタ、ホイールベース、ステアリングギヤレシオ等から算出することができ、また、センサによって検出した自車両のヨーレートを用いて算出することも可能である。
【0056】
例えば、以下の(9)式に示すように、目標経路の曲率成分Aに対するフィードフォーワード制御の操舵制御量と、目標経路のヨー角成分Bに基づく目標経路と自車両との相対ヨー角θyに対するフィードバック制御の操舵制御量と、目標経路の横位置成分Cに基づく自車両の推定横位置と目標点との偏差δに対するフィーバック制御の操舵制御量とを加えて目標操舵角αrefを算出し、操舵制御装置70に出力する。
αref=Gff・A+Gy・θy+Gf・δ…(9)
ここで、Gff:目標経路の曲率成分Aに対するフィードフォワードゲイン
Gy :目標経路と自車両との相対ヨー角θyに対するフィードバックゲイン
Gf :現在の操舵角で進行したときの自車両と目標経路との横位置の偏差δに対するフィードバックゲイン
【0057】
操舵制御装置70は、目標操舵角αrefと実舵角との偏差に基づいて目標操舵トルクを演算し、電動パワーステアリングモータを制御する。この目標トルクへの制御は、具体的には、電動パワーステアリングモータの電流制御として実行され、例えば、PID制御による駆動電流によって電動パワーステアリングモータが駆動される。
【0058】
次に、走行制御装置100における走行制御のプログラム処理について、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0059】
この走行制御では、最初のステップS1において、外部環境認識装置20からの情報に基づいて、道路の白線を安定的に認識できているか否かを調べる。そして、白線を安定的に認識できている場合には、ステップS2で白線情報に基づく目標経路を生成し、ステップS3で、この白線情報に基づく目標経路に追従走行するための追従走行制御を実行する。
【0060】
一方、白線を安定的に認識できない場合には、ステップS1からステップS4へ進み、自車両の前方の所定範囲内に先行車両を認識しているか否かを調べる。そして、先行車両が認識されていない場合には、本処理を抜け、先行車両が認識されている場合、ステップS5,S6において、それぞれ、渋滞状況モードがONか否か、中央レーン走行モードがONか否かを調べる。
【0061】
ステップS5,S6において、渋滞状況モードと中央レーン走行モードとの少なくとも一方がOFFの場合には、ステップS7へ進み、先行車両情報に基づく目標経路を生成する。そして、ステップS8において、先行車両情報に基づく目標経路に追従走行するための追従走行制御を実行する。
【0062】
一方、ステップS5,S6において、渋滞状況モードと中央レーン走行モードとが共にONの場合には、ステップS9へ進み、白線情報と先行車両情報とに基づく複合経路を生成する。そして、ステップS10において、複合経路に追従走行するための追従走行制御を実行する。この複合経路への追従走行制御では、複合経路の曲率成分及びヨー角成分は、時間経過と共に白線情報に基づく値と先行車両情報に基づく値との混合比率が徐々に変化するが、横位置成分は白線情報に基づく状態に維持され、制御安定性が確保される共に車線中央位置からのずれが抑制される。
【0063】
このように本実施の形態においては、先行車両を認識している状況で走行車線を安定的に認識できなくなった場合、走行車線の情報に基づく経路成分と先行車両の情報に基づく経路成分とを所定の混合比率で混合した複合経路を生成し、この複合経路に追従するように制御する。これにより、走行車線への追従走行制御と先行車両への追従走行制御とが切り換わることによる自車両の挙動変化を抑制することができ、安定した走行制御を実現することができる。
【0064】
また、複合経路の曲率成分及びヨー角成分を、車線の情報に基づく成分と先行車両の情報に基づく成分とを混合した成分として、複合経路の横位置成分は走行車線の情報のみに基づく成分とすることにより、先行車両が車線中央位置からオフセットして走行していても、自車両の車線中央からのずれを抑制することができる
。