特許第6774267号(P6774267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6774267-電圧変換装置 図000002
  • 特許6774267-電圧変換装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774267
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電圧変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   H02M3/00 W
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-164948(P2016-164948)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-33262(P2018-33262A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−139834(JP,A)
【文献】 特開2015−192511(JP,A)
【文献】 特開平11−353040(JP,A)
【文献】 特開2016−019466(JP,A)
【文献】 特開2014−155284(JP,A)
【文献】 米国特許第04736286(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された基準電圧以上の直流の入力電圧を直流の第一電圧に昇圧する第一コンバータと、
前記基準電圧未満の前記直流の入力電圧を前記直流の第一電圧より低い直流の第二電圧に昇圧する第二コンバータと、
前記第一コンバータと前記第二コンバータとを切り替える制御部と、
複数の電池セルを含んで構成され、前記第一コンバータ又は前記第二コンバータから出力される電力を蓄電する蓄電部と、を備え、
前記第一コンバータは、
前記基準電圧以上の前記入力電圧を前記第一電圧に昇圧する効率が、前記第二コンバータにより前記基準電圧以上の前記入力電圧を前記第一電圧に昇圧する効率よりもよく、
前記第二コンバータは、
前記基準電圧未満の前記入力電圧を前記第二電圧に昇圧する効率が、前記第一コンバータにより前記基準電圧未満の前記入力電圧を前記第二電圧に昇圧する効率よりもよく、
前記制御部は、
前記入力電圧が前記基準電圧以上の場合、前記第一コンバータにより前記入力電圧を昇圧させ、
前記入力電圧が前記基準電圧未満の場合、前記第二コンバータにより前記入力電圧を昇圧させる制御を行うものであり、
前記複数の電池セルの全てを直列に接続した総電池セル群を形成する状態を第一接続モードとし、
前記複数の電池セルの一部を直列に接続した分割電池セル群を複数形成し、前記複数の分割電池セル群にはそれぞれ異なる前記電池セルが含まれる状態を第二接続モードとした場合、
前記第一コンバータにより前記入力電圧を前記第一電圧に昇圧する場合、前記第一接続モードで前記蓄電部を充電し、
前記第二コンバータにより前記入力電圧を前記第二電圧に昇圧する場合、前記第二接続モードで前記蓄電部を充電することを特徴とする電圧変換装置。
【請求項2】
前記複数の分割電池セル群の電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、
前記第二接続モードの場合に、前記電圧検出部により前記分割電池セル群の電圧をそれぞれ検出し、相対的に電圧の低い前記分割電池セル群を充電する請求項に記載の電圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流の入力電圧を所定の電圧に変換する電圧変換装置がある。例えば、電圧変換装置は、電気自動車(EV;Electric Vehicle)等の車両に搭載され、車両の回生制御に応じて生じる回生電圧を所定の電圧に昇圧して蓄電池に充電する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−30355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電圧変換装置は、相対的に高い回生電圧を昇圧するように構成されている場合が多く、この場合には、相対的に低い回生電圧を昇圧することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回生電圧が相対的に低い場合も含めて適正に昇圧することができる電圧変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電圧変換装置は、予め設定された基準電圧以上の直流の入力電圧を直流の第一電圧に昇圧する第一コンバータと、前記基準電圧未満の前記直流の入力電圧を前記直流の第一電圧より低い直流の第二電圧に昇圧する第二コンバータと、前記第一コンバータと前記第二コンバータとを切り替える制御部と、複数の電池セルを含んで構成され、前記第一コンバータ又は前記第二コンバータから出力される電力を蓄電する蓄電部と、を備え、前記第一コンバータは、前記基準電圧以上の前記入力電圧を前記第一電圧に昇圧する効率が、前記第二コンバータにより前記基準電圧以上の前記入力電圧を前記第一電圧に昇圧する効率よりもよく、前記第二コンバータは、前記基準電圧未満の前記入力電圧を前記第二電圧に昇圧する効率が、前記第一コンバータにより前記基準電圧未満の前記入力電圧を前記第二電圧に昇圧する効率よりもよく、前記制御部は、前記入力電圧が前記基準電圧以上の場合、前記第一コンバータにより前記入力電圧を昇圧させ、前記入力電圧が前記基準電圧未満の場合、前記第二コンバータにより前記入力電圧を昇圧させる制御を行うものであり、前記複数の電池セルの全てを直列に接続した総電池セル群を形成する状態を第一接続モードとし、前記複数の電池セルの一部を直列に接続した分割電池セル群を複数形成し、前記複数の分割電池セル群にはそれぞれ異なる前記電池セルが含まれる状態を第二接続モードとした場合、前記第一コンバータにより前記入力電圧を前記第一電圧に昇圧する場合、前記第一接続モードで前記蓄電部を充電し、前記第二コンバータにより前記入力電圧を前記第二電圧に昇圧する場合、前記第二接続モードで前記蓄電部を充電することを特徴とする。
【0008】
また、上記電圧変換装置において、前記複数の分割電池セル群の電圧を検出する電圧検出部を備え、前記制御部は、前記第二接続モードの場合に、前記電圧検出部により前記分割電池セル群の電圧をそれぞれ検出し、相対的に電圧の低い前記分割電池セル群を充電することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電圧変換装置によれば、第一コンバータは、基準電圧以上の入力電圧を第一電圧に昇圧する効率が、第二コンバータにより基準電圧以上の入力電圧を第一電圧に昇圧する効率よりもよく、第二コンバータは、基準電圧未満の入力電圧を第二電圧に昇圧する効率が、第一コンバータにより基準電圧未満の入力電圧を第二電圧に昇圧する効率よりもよい。そして、電圧変換装置は、入力電圧が基準電圧以上の場合、第一コンバータにより入力電圧を昇圧させ、入力電圧が基準電圧未満の場合、第二コンバータにより入力電圧を昇圧させる。これにより、電圧変換装置は、回生電圧が相対的に低い場合も含めて適正に昇圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る電圧変換装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る電圧変換装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
実施形態に係る電圧変換装置1について説明する。電圧変換装置1は、直流の入力電圧を所定の電圧に変換する装置である。本実施形態では、電圧変換装置1は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッドカー(PHEV;Plug−in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)等の車両2に搭載される例について説明する。
【0013】
車両2は、減速時に車輪の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する機能(回生ブレーキ)を有している。例えば、車両2は、図示しないブレーキが踏まれると車輪の回転力が車両2の発電機3に伝わり、発電機3が回転されることにより起電圧(回生電圧)を発生する。電圧変換装置1は、発電機3が発生させた回生電圧を昇圧して車両2の蓄電池(二次電池)10に充電する。回生電圧は、車両2の速度が相対的に速く運動エネルギーが高い場合には高くなり、車両2の速度が相対的に遅く運動エネルギーが低い場合には低くなる。なお、発電機3は、車輪を駆動する駆動モータが発電機3の機能を兼ね備える構成でもよいし、駆動モータとは別に発電機3を設ける構成でもよい。以下、電圧変換装置1について詳細に説明する。
【0014】
電圧変換装置1は、蓄電部としての蓄電池10と、電圧検出部20と、スイッチ部30と、A/D変換器40と、第一コンバータとしてのDC−DCコンバータ50Aと、第二コンバータとしてのDC−DCコンバータ50Bと、制御部60とを備える。
【0015】
蓄電池10は、例えば車両2に搭載され、車両2の車輪を回転駆動する駆動用電池である。蓄電池10は、例えばリチウムイオン電池であり、駆動用の電力を蓄電する。例えば、蓄電池10は、DC−DCコンバータ50A又はDC−DCコンバータ50Bから出力される電力を蓄電する。蓄電池10は、複数の電池セル11を含んで構成される。蓄電池10は、複数の電池セル11が電気的に直列に接続されている。蓄電池10は、充電する場合、全ての電池セル11が直列に接続された状態で充電したり、一部の電池セル11が直列に接続された状態で充電したりする。ここで、複数の電池セル11の全てを直列に接続した総電池セル群12を形成する状態を第一接続モードという。また、複数の電池セル11の一部を直列に接続した分割電池セル群13を複数形成する状態を第二接続モードという。第二接続モードでは、複数の分割電池セル群13にはそれぞれ異なる電池セル11が含まれる。本実施形態においては、第二接続モードでは、高電位側の分割電池セル群13Hと低電位側の分割電池セル群13Lとの二つに蓄電池10が分割される。なお、二つの分割電池セル群13H、13Lよりも多くの分割電池セル群13に分割してもよい。本実施形態では、複数の電池セル11は、同じ容量かつ同じ起電圧の電池が用いられる。分割電池セル群13Hと分割電池セル群13Lとは、同じ数の電池セル11を有している。分割電池セル群13Hの各電池セル11が満充電の電圧Vと、分割電池セル群13Lの各電池セル11が満充電の電圧Vとは、同等の電圧である。蓄電池10は、放電する場合、全ての電池セル11が直列に接続された状態で放電される。
【0016】
電圧検出部20は、蓄電池10の電圧を検出するものである。電圧検出部20は、第一電圧検出部21と、第二電圧検出部22と、第三電圧検出部23とを備える。第一電圧検出部21は、総電池セル群12の陽極と陰極とに接続され、総電池セル群12の電圧Vを検出して電圧検出信号をA/D変換器40を介して制御部60に出力する。第二電圧検出部22は、分割電池セル群13Hの陽極と陰極とに接続され、分割電池セル群13Hの電圧Vを検出して電圧検出信号をA/D変換器40を介して制御部60に出力する。第三電圧検出部23は、分割電池セル群13Lの陽極と陰極に接続され、分割電池セル群13Lの電圧Vを検出して電圧検出信号をA/D変換器40を介して制御部60に出力する。
【0017】
スイッチ部30は、電流が流れる経路を切り替えるものである。スイッチ部30は、DC−DCコンバータ50B及び蓄電池10に接続され、後述する制御部60からの切替信号に基づいて、DC−DCコンバータ50Bから蓄電池10に流れる電流を切り替える。例えば、スイッチ部30は、DC−DCコンバータ50Bから出力される電流を蓄電池10の分割電池セル群13H又は分割電池セル群13Lに流れるように切り替える。スイッチ部30は、第一スイッチ31と第二スイッチ32とを備える。第一スイッチ31は、分割電池セル群13Hの陽極に接続される端子31aと、分割電池セル群13Lの陽極に接続される端子31bと、DC−DCコンバータ50Bの陰極に接続される端子31cとを備える。第二スイッチ32は、分割電池セル群13Hの陰極に接続される端子32aと、分割電池セル群13Lの陰極に接続される端子32bと、DC−DCコンバータ50Bの陽極に接続される端子32cとを備える。
【0018】
スイッチ部30は、切替信号に基づいて、DC−DCコンバータ50Bの陽極側の端子32cと分割電池セル群13Hの陰極側の端子32aとを接続し、さらに、分割電池セル群13Hの陽極側の端子31aとDC−DCコンバータ50Bの陰極側の端子31cとを接続する。これにより、スイッチ部30は、DC−DCコンバータ50Bから出力される電流を分割電池セル群13Hに流す流路を形成する。また、スイッチ部30は、切替信号に基づいて、DC−DCコンバータ50Bの陽極側の端子32cと分割電池セル群13Lの陰極側の端子32bとを接続し、さらに、分割電池セル群13Lの陽極側の端子31bとDC−DCコンバータ50Bの陰極側の端子31cとを接続する。これにより、スイッチ部30は、DC−DCコンバータ50Bから出力される電流を分割電池セル群13Lに流す流路を形成する。
【0019】
A/D変換器40は、アナログ信号をデジタル信号に変換するものである。A/D変換器40は、第一電圧検出部21、第二電圧検出部22、第三電圧検出部23及び制御部60に接続され、各電圧検出部21〜23から出力されるアナログの電圧検出信号をデジタルの電圧検出信号に変換して制御部60に出力する。
【0020】
DC−DCコンバータ50Aは、直流の入力電圧(回生電圧ともいう。)を昇圧するコンバータである。DC−DCコンバータ50Aは、発電機3及び蓄電池10に接続され、発電機3から出力される相対的に高い直流の回生電圧を一定の電圧に昇圧する。例えば、DC−DCコンバータ50Aは、予め設定された基準電圧以上の回生電圧(高回生電圧ともいう。)を直流の第一電圧に昇圧する。ここで、基準電圧は、DC−DCコンバータ50A、50Bの仕様に応じて効率がよいところで適宜設定される。例えば、基準電圧は、DC−DCコンバータ50AとDC−DCコンバータ50Bとの変換効率が逆転する電圧である。第一電圧は、数百ボルト程度の電圧であり、例えば300V〜400V程度であるが、これに限定されない。第一電圧は、車種等に応じて適宜設定される。DC−DCコンバータ50Aは、所定の高回生電圧を第一電圧に昇圧する効率が、DC−DCコンバータ50Bにより所定の高回生電圧を第一電圧に昇圧する効率よりもよい。つまり、DC−DCコンバータ50Aは、或る高回生電圧を第一電圧に昇圧する場合に、回生電力に対する出力電力の割合がDC−DCコンバータ50Bよりも高い。これは、DC−DCコンバータ50Aは、高回生電圧を第一電圧に昇圧する場合に、電流が流れて起電力を生じるコイル(図示せず)や、コイルに流れる電流をオンオフするスイッチング素子(図示せず)等の電子素子がDC−DCコンバータ50Bよりも適しているからである。DC−DCコンバータ50Aは、第一電圧に昇圧した電力を蓄電池10(総電池セル群12)に出力する。なお、DC−DCコンバータ50Aは、非絶縁型のコンバータでも絶縁型のコンバータでもよい。
【0021】
DC−DCコンバータ50Bは、直流の回生電圧を昇圧するコンバータである。DC−DCコンバータ50Bは、発電機3及び蓄電池10に接続され、発電機3から出力される相対的に低い直流の回生電圧を一定の電圧に昇圧する。例えば、DC−DCコンバータ50Bは、基準電圧未満の回生電圧(低回生電圧ともいう。)を第一電圧より低い直流の第二電圧に昇圧する。第二電圧は、例えば150V〜200V程度であるが、これに限定されない。第二電圧は、第一電圧等に応じて適宜設定される。DC−DCコンバータ50Bは、所定の低回生電圧を第二電圧に昇圧する効率が、DC−DCコンバータ50Aにより所定の低回生電圧を第二電圧に昇圧する効率よりもよい。つまり、DC−DCコンバータ50Bは、或る低回生電圧を第二電圧に昇圧する場合に、回生電力に対する出力電力の割合がDC−DCコンバータ50Aよりも高い。これは、DC−DCコンバータ50Bは、低回生電圧を第二電圧に昇圧する場合に、電流が流れて起電力を生じるコイル(図示せず)や、コイルに流れる電流をオンオフするスイッチング素子(図示せず)等の電子素子がDC−DCコンバータ50Aよりも適しているからである。DC−DCコンバータ50Bは、第二電圧に昇圧した電力を蓄電池10(分割電池セル群13)に出力する。このように、本実施形態は、高回生電圧を適正に昇圧するDC−DCコンバータ50Aと、低回生電圧を適正に昇圧するDC−DCコンバータ50Bとを備えることで、回生電圧が相対的に高い場合でも回生電圧が相対的に低い場合でも適正に昇圧することができる。なお、DC−DCコンバータ50Bは、絶縁型のコンバータである。これは、分割電池セル群13Lの陽極側がGND1に接続され、分割電池セル群13Lの陰極側のGND1と短絡することを防止するためである。
【0022】
制御部60は、電圧を昇圧して蓄電池10に蓄電することを制御するものである。制御部60は、CPU、記憶部を構成するROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。制御部60は、発電機3及びDC−DCコンバータ50A、50Bに接続され、発電機3から出力される電圧(回生電圧)に基づいて、DC−DCコンバータ50AとDC−DCコンバータ50Bとを切り替える。例えば、制御部60は、発電機3から出力される電圧(回生電圧)と、予め設定された基準電圧とを比較し、回生電圧が基準電圧以上の場合、DC−DCコンバータ50Aにより回生電圧を昇圧するように切り替える。例えば、制御部60は、回生電圧が基準電圧以上の場合、DC−DCコンバータ50Aをオンに設定し、DC−DCコンバータ50Bをオフに設定する。また、制御部60は、回生電圧が基準電圧未満の場合、DC−DCコンバータ50Bにより回生電圧を昇圧するように切り替える。例えば、制御部60は、回生電圧が基準電圧未満の場合、DC−DCコンバータ50Aをオフに設定し、DC−DCコンバータ50Bをオンに設定する。
【0023】
また、制御部60は、A/D変換器40及びスイッチ部30に接続され、A/D変換器40を介して出力される電圧検出信号に基づいてスイッチ部30を制御する。例えば、制御部60は、分割電池セル群13Hの電圧Vが分割電池セル群13Lの電圧Vよりも低い場合、分割電池セル群13Hを充電するようにスイッチ部30を切り替える切替信号をスイッチ部30に出力する。また、制御部60は、分割電池セル群13Lの電圧Vが分割電池セル群13Hの電圧Vよりも低い場合、分割電池セル群13Lを充電するようにスイッチ部30を切り替える切替信号をスイッチ部30に出力する。制御部60は、分割電池セル群13H、13Lの電圧V、Vが充電終止電圧である場合、分割電池セル群13H、13Lへの充電を停止する。また、制御部60は、総電池セル群12の電圧Vが充電終止電圧である場合、総電池セル群12への充電を停止する。
【0024】
次に、図2を参照して電圧変換装置1の動作例について説明する。制御部60は、回生処理か否かを判定する(ステップS1)。制御部60は、例えば、ブレーキが踏まれて車輪の回転力が車両2の発電機3に伝わり、発電機3が回転され回生電圧が生じると回生処理と判定する。制御部60は、回生処理と判定した場合(ステップS1;Yes)、回生電圧が低いか否かを判定する(ステップS2)。例えば、制御部60は、予め設定された基準電圧と回生電圧とを比較する。制御部60は、回生電圧が基準電圧未満(低回生電圧)である場合(ステップS2;Yes)、DC−DCコンバータ50Aをオフに設定し(ステップS3)、DC−DCコンバータ50Bをオンに設定する(ステップS4)。次に、制御部60は、DC−DCコンバータ50Bにより低回生電圧を第二電圧に昇圧する場合、第二接続モードで蓄電部10を充電する。例えば、制御部60は、分割電池セル群13Hの電圧Vと分割電池セル群13Lの電圧Vとを比較し、分割電池セル群13Lの電圧Vが分割電池セル群13Hの電圧Vよりも低い場合(ステップS5;Yes)、分割電池セル群13Lを充電するようにスイッチ部30を切り替える(ステップS6)。例えば、制御部60は、第二スイッチ32の端子32cと端子32bとを接続し、さらに、第一スイッチ31の端子31bと端子31cとを接続する。次に、制御部60は、分割電池セル群13へ所定の電力を充電する(ステップS7)。例えば、制御部60は、DC−DCコンバータ50Bにより低回生電圧が第二電圧まで昇圧された電力を分割電池セル群13Lに所定量だけ充電して処理を終了する。制御部60は、分割電池セル群13Hよりも電圧が低い分割電池セル群13Lを充電することにより、分割電池セル群13Hと分割電池セル群13Lとの充電量のバランスをとる。これにより、制御部60は、蓄電池10の各電池セル11を同等に充電することができるので、蓄電池10の機能を十分に発揮することができる。
【0025】
なお、上述のステップS5で、制御部60は、分割電池セル群13Hの電圧Vが分割電池セル群13Lの電圧Vよりも低い場合(ステップS5;No)、分割電池セル群13Hを充電するようにスイッチ部30を切り替える(ステップS8)。例えば、制御部60は、第二スイッチ32の端子32cと端子32aとを接続し、さらに、第一スイッチ31の端子31aと端子31cとを接続する。
【0026】
また、上述のステップS2で、制御部60は、回生電圧が基準電圧以上(高回生電圧)である場合(ステップS2;No)、DC−DCコンバータ50Bをオフに設定し(ステップS9)、DC−DCコンバータ50Aをオンに設定する(ステップS10)。次に、制御部60は、DC−DCコンバータ50Aにより高回生電圧を第一電圧に昇圧する場合、第一接続モードで蓄電部10に所定の電力を充電する(ステップS11)。例えば、制御部60は、DC−DCコンバータ50Aにより高回生電圧が第一電圧まで昇圧された電力を総電池セル群12に充電して処理を終了する。
【0027】
また、上述のステップS1で、制御部60は、回生処理ではないと判定した場合(ステップS1;No)、車両2を駆動する力行処理を行い(ステップS12)、処理を終了する。
【0028】
以上のように、実施形態に係る電圧変換装置1によれば、DC−DCコンバータ50Aは、基準電圧以上の入力電圧(高回生電圧)を第一電圧に昇圧する効率が、DC−DCコンバータ50Bにより基準電圧以上の入力電圧(高回生電圧)を第一電圧に昇圧する効率よりもよく、DC−DCコンバータ50Bは、基準電圧未満の入力電圧(低回生電圧)を第二電圧に昇圧する効率が、DC−DCコンバータ50Aにより基準電圧未満の入力電圧(低回生電圧)を第二電圧に昇圧する効率よりもよい。そして、電圧変換装置1は、入力電圧が基準電圧以上の場合、DC−DCコンバータ50Aにより入力電圧を昇圧させ、入力電圧が基準電圧未満の場合、DC−DCコンバータ50Bにより入力電圧を昇圧させる。このように、電圧変換装置1は、高回生電圧を効率よく昇圧するDC−DCコンバータ50Aと、低回生電圧を効率よく昇圧するDC−DCコンバータ50Bとを用いることにより、回生電圧が相対的に高い場合でも回生電圧が相対的に低い場合でも適正に昇圧することができる。
【0029】
従来例に係る電圧変換装置は、一つのDC−DCコンバータにより相対的に高い回生電圧を昇圧するように構成されている場合が多く、相対的に低い回生電圧を昇圧することが困難であった。また、従来例に係る電圧変換装置は、一つのDC−DCコンバータにより相対的に高い回生電圧から相対的に低い回生電圧まで幅広く一定の電圧まで昇圧しようとすると昇圧比が大きくなり、回生電圧が相対的に高い場合における変換効率が低下する問題があった。これは、昇圧比が大きくなることにより、例えばDC−DCコンバータのコイルが大型化し、当該コイルの抵抗(銅損)が大きくなることが原因の一つである。
【0030】
これに対して、実施形態に係る電圧変換装置1は、回生電圧が相対的に高い場合、DC−DCコンバータ50Aを用いて回生電圧を第一電圧に昇圧するので、例えばコイルを小型化することができ、高回生電圧を効率よく昇圧することができる。また、電圧変換装置1は、回生電圧が相対的に低い場合、DC−DCコンバータ50Bを用いて回生電圧を第二電圧に昇圧するので昇圧比を従来よりも小さくすることが可能となり、低回生電圧を効率よく昇圧することができる。
【0031】
また、電圧変換装置1は、DC−DCコンバータ50Aにより入力電圧を第一電圧に昇圧する場合、第一接続モードで蓄電池10を充電し、DC−DCコンバータ50Bにより入力電圧を第二電圧に昇圧する場合、第二接続モードで蓄電池10を充電する。これにより、電圧変換装置1は、第一電圧に昇圧した場合、当該第一電圧に対応した電圧の総電池セル群12に対して充電をすることができる。また、電圧変換装置1は、第二電圧に昇圧した場合、当該第二電圧に対応した電圧の分割電池セル群13に対して充電をすることができる。従って、電圧変換装置1は、第一電圧よりも低い第二電圧に昇圧した場合でも蓄電池10に対して充電をすることができるので、回生電圧が相対的に低い場合に昇圧比を抑制することができる。
【0032】
また、電圧変換装置1は、第二接続モードの場合に、電圧検出部20により分割電池セル群13の電圧をそれぞれ検出し、相対的に電圧の低い分割電池セル群13を充電する。これにより、電圧変換装置1は、各分割電池セル群13の充電量のバランスをとることができる。従って、電圧変換装置1は、蓄電池10の各電池セル11を同等に充電することができるので、蓄電池10の機能を十分に発揮することができる。
【0033】
〔変形例〕
電圧変換装置1は、車両2以外に設置してもよい。例えば、電圧変換装置1は、電車やエレベータ等に設置し、電車やエレベータ等で生じる回生電圧を昇圧してもよい。
【0034】
また、複数の電池セル11は、同じ容量かつ同じ起電圧の電池が用いられる例について説明したが、これに限定されず、容量や起電圧が異なる電池でもよい。
【0035】
また、蓄電池10は、複数の電池セル11を含んで構成される例について説明したが、複数の電池セル11以外により構成されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 電圧変換装置
10 蓄電池(蓄電部)
11 電池セル
12 総電池セル群
13 分割電池セル群
13H、13L 分割電池セル群
50A DC−DCコンバータ(第一コンバータ)
50B DC−DCコンバータ(第二コンバータ)
60 制御部
図1
図2