特許第6774273号(P6774273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000005
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000006
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000007
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000008
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000009
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000010
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000011
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000012
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000013
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000014
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000015
  • 特許6774273-ハイドロゲルファイバの製造方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774273
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ハイドロゲルファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 4/00 20060101AFI20201012BHJP
   D01F 9/04 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   D01D4/00 A
   D01F9/04
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-169157(P2016-169157)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-35464(P2018-35464A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 公一
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/021498(WO,A1)
【文献】 特開2016−113738(JP,A)
【文献】 特開2014−167179(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/046105(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00−13/02
D01F1/00−6/96
9/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内に金属イオンを含む第1水溶液を流通させると共に、前記金属イオンとのイオン交換によりイオン架橋型ハイドロゲルを形成するゲル形成物質を含む第2水溶液を、前記配管内で流動方向を維持しながら流動する前記第1水溶液中に供給して合流させた後、前記第1及び第2水溶液を合流させたものを、前記第1水溶液の流動方向に沿って流動させることによりハイドロゲルファイバを製造する方法であって、
前記第2水溶液における前記ゲル形成物質の濃度を0.50質量%以上5.0質量%以下の範囲で設定すると共に、前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流速比を0.25以上10以下の範囲で設定し、且つ前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流量比を0.10以上40以下の範囲で設定するハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項2】
前記第1水溶液中への前記第2水溶液の供給を、前記配管内に設けられた別の配管から行う請求項1に記載されたハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項3】
前記別の配管は、前記配管内で、前記配管に沿って延びて開口するように設けられている請求項2に記載されたハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項4】
前記別の配管の開口が円形である請求項3に記載されたハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項5】
前記別の配管の内径が0.010mm以上5.0mm以下である請求項2乃至4のいずれかに記載されたハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項6】
前記ハイドロゲルファイバのファイバ径が1000μm以下である請求項1乃至のいずれかに記載されたハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項7】
前記ゲル形成物質がアルギン酸塩である請求項1乃至のいずれかに記載されたハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項8】
前記第2水溶液を、前記第1水溶液に、前記第2水溶液の外周が前記第1水溶液で覆われるように供給する請求項1乃至7のいずれかに記載されたハイドロゲルファイバの製造方法。
【請求項9】
配管内に金属イオンを含む第1水溶液を流通させると共に、前記金属イオンとのイオン交換によりイオン架橋型ハイドロゲルを形成するゲル形成物質を含む第2水溶液を、前記配管内で流動方向を維持しながら流動する前記第1水溶液中に供給して合流させた後、前記第1及び第2水溶液を合流させたものを、前記第1水溶液の流動方向に沿って流動させることにより製造するハイドロゲルファイバのファイバ径を制御する方法であって、
前記第2水溶液における前記ゲル形成物質の濃度を0.50質量%以上5.0質量%以下の範囲で設定すると共に、前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流速比を0.25以上10以下の範囲で設定し、且つファイバ径との相関性を有する前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流量比を0.10以上40以下の範囲で目標のファイバ径に対応する値に設定するハイドロゲルファイバのファイバ径制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲルファイバの製造方法及びそのファイバ径の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、高い水分保持性、構造柔軟性、酸素拡散性、物質吸収性、弾力性、及び生体適合性を有するので、化粧料、医薬品、医薬部外品、食品等の分野で広く用いられている。また、ハイドロゲルを線状に形成したハイドロゲルファイバには、粒子状に形成したハイドロゲルパーティクルとは異なり、比表面積が非常に大きい、強くてしなやかな力学的性質を有する、高アスペクト比による配列制御が可能である、機能性物質の拡散方向の制御が可能である、といった特長があることから、様々な機能が創出されることが期待される。
【0003】
ところで、塩化カルシウム水溶液にアルギン酸ナトリウム水溶液を投入すると、カルシウムイオンとナトリウムイオンとのイオン交換によりアルギン酸カルシウムのイオン架橋型ハイドロゲルが形成される。この性質を利用してハイドロゲルファイバを製造することができる。特許文献1及び2には、二重管型のマイクロリアクターの外側の大径配管と内側の小径配管との間に塩化カルシウム水溶液を流動させると共に、小径配管にアルギン酸ナトリウム水溶液を流動させ、そして、それらを合流させてカルシウムイオンとナトリウムイオンとのイオン交換によりアルギン酸カルシウムのイオン架橋型ハイドロゲルを形成させるハイドロゲルファイバの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2011/046105
【特許文献2】特開2007−14936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術では、得られるハイドロゲルファイバのファイバ径を任意に制御することは困難である。
【0006】
本発明の課題は、所望のファイバ径のハイドロゲルファイバを製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、配管内に金属イオンを含む第1水溶液を流通させると共に、前記金属イオンとのイオン交換によりイオン架橋型ハイドロゲルを形成するゲル形成物質を含む第2水溶液を、前記配管内の前記第1水溶液中に供給して合流させることによりハイドロゲルファイバを製造する方法であって、前記第2水溶液における前記ゲル形成物質の濃度を0.50質量%以上5.0質量%以下の範囲で設定すると共に、前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流速比を0.25以上10以下の範囲で設定し、且つ前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流量比を0.10以上40以下の範囲で設定する。
【0008】
本発明は、配管内に金属イオンを含む第1水溶液を流通させると共に、前記金属イオンとのイオン交換によりイオン架橋型ハイドロゲルを形成するゲル形成物質を含む第2水溶液を、前記配管内の前記第1水溶液中に供給して合流させることにより製造するハイドロゲルファイバのファイバ径を制御する方法であって、前記第2水溶液における前記ゲル形成物質の濃度を0.50質量%以上5.0質量%以下の範囲で設定すると共に、前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流速比を0.25以上10以下の範囲で設定し、且つファイバ径との相関性を有する前記第1水溶液の前記第2水溶液に対する流量比を0.10以上40以下の範囲で目標のファイバ径に対応する値に設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度を0.50質量%以上5.0質量%以下の範囲で設定すると共に、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比を0.25以上10以下の範囲で設定したとき、得られるハイドロゲルファイバのファイバ径は、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比が0.10以上40以下の範囲において、その流量比に対する相関性を有することから、その設定によって得られるハイドロゲルファイバのファイバ径を制御することができ、従って、ファイバ径との相関性を有するその流量比を0.10以上40以下の範囲で目標のファイバ径に対応する値に設定すれば、所望のファイバ径のハイドロゲルファイバを製造することができる。すなわち、本発明によれば、特定範囲の流速比において流量比によりファイバ径を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ハイドロゲルファイバ製造システムの構成を示す図である。
図2A】マイクロリアクターの要部の縦断面図である。
図2B図2AにおけるIIB-IIB断面図である。
図3A】第1の変形例のマイクロリアクターの要部の縦断面図である。
図3B図3AにおけるIII-III断面図である。
図4】第2の変形例のマイクロリアクターの要部の縦断面図である。
図5A】第3の変形例のマイクロリアクターの要部の縦断面図である。
図5B図5AにおけるVB-VB断面図である。
図6A】第4の変形例のマイクロリアクターの要部の縦断面図である。
図6B図6AにおけるVIB-VIB断面図である。
図7】第5の変形例のマイクロリアクターの要部の縦断面図である。
図8】実施例1〜8、11、及び比較例1並びに実施例12及び13についての第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)と、得られたハイドロゲルファイバのファイバ径との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(ハイドロゲルファイバ製造システムS)
図1は、実施形態に係るハイドロゲルファイバの製造方法において用いるハイドロゲルファイバ製造システムSを示す。
【0013】
ハイドロゲルファイバ製造システムSはマイクロリアクター10を備えている。図2はそのマイクロリアクター10を示す。
【0014】
マイクロリアクター10は、同軸に設けられた外側の大径配管111及び内側の小径配管112とを有する二重管型であって、小径配管112の先端が大径配管111の中間部に位置付けられている。大径配管111と小径配管112との間には第1流路121が構成されていると共に、小径配管112の内部には第2流路122が構成され、且つ小径配管112の先端の下流側に第1及び第2流路の合流部123が構成されている。マイクロリアクター10は、上流側に第1及び第2水溶液流入部131,132を有し、それぞれ第1及び第2流路121,122に連通している。マイクロリアクター10は、下流側に排出部14を有する。
【0015】
第1流路121を構成する大径配管111の内径Φinは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは6.0mm以下である。大径配管111の内径Φinは、好ましくは1.5mm以上10mm以下、より好ましくは2.0mm以上8.0mm以下、更に好ましくは2.5mm以上6.0mm以下である。
【0016】
第1流路121を構成する小径配管112の外径φoutは、好ましくは0.50mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上であり、また、好ましくは2.2mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.8mm以下である。小径配管112の外径φoutは、好ましくは0.50mm以上2.2mm以下、より好ましくは1.0mm以上2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以上1.8mm以下である。
【0017】
第1流路121の厚みは、大径配管111の内径Φinと小径配管112の外径φoutとの差分を1/2倍することで求められ、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.20mm以上、更に好ましくは0.30mm以上であり、また、好ましくは4.8mm以下、より好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.0mm以下である。第1流路121の厚みは、好ましくは0.10mm以上4.8mm以下、より好ましくは0.20mm以上3.0mm以下、更に好ましくは0.30mm以上2.0mm以下である。
【0018】
第2流路122を構成する小径配管112の内径φinは、好ましくは0.010mm以上、より好ましくは0.10mm以上、更に好ましくは0.15mm以上であり、また、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.80mm以下である。小径配管112の内径φinは、好ましくは0.010mm以上5.0mm以下、より好ましくは0.10mm以上1.0mm以下、更に好ましくは0.15mm以上0.80mm以下である。
【0019】
なお、大径配管111の内郭並びに小径配管112の外郭及び内郭は、円形であることが好ましいが、非円形であってもよく、その場合の大径配管111の内径Φinや小径配管112の外径φout及び内径φinは、水力相当直径(=4×(断面積)/(縁長さ))を意味する。
【0020】
マイクロリアクター10の第1水溶液流入部131には、第1水溶液を貯留するための第1貯槽211から延びた第1水溶液供給管221が接続されている。同様に、第2水溶液流入部132には、第2水溶液を貯留するための第2貯槽212から延びた第2水溶液供給管222が接続されている。第1及び第2水溶液供給管221,222のそれぞれには、水溶液の流通及び遮断を切り替えるためのコック231,232、水溶液を送液するためのポンプ241,242、及び水溶液の流量を検知するための流量計251,252が上流側から順に介設されており、また、流量計251,252の下流側に水溶液の圧力を検知するための圧力計261,262が取り付けられている。ポンプ241,242と流量計251,252とは電気的に接続されており、水溶液の流量のフィードバック制御を行うように構成されている。マイクロリアクター10の排出部14からはファイバ回収管27が延びてファイバ回収槽28に接続されている。
【0021】
(ハイドロゲルファイバの製造方法)
実施形態に係るハイドロゲルファイバの製造方法では、まず、金属イオンを含む第1水溶液とその金属イオンとのイオン交換によりイオン架橋型ハイドロゲルを形成するゲル形成物質を含む第2水溶液とを調製し、それぞれハイドロゲルファイバ製造システムSの第1及び第2貯槽211,212に仕込む。次いで、第1及び第2水溶液供給管221,222に介設されたコック231,232を開くと共にポンプ241,242を稼働させ、第1及び第2水溶液供給管221,222にそれぞれ第1及び第2水溶液を流通させてマイクロリアクター10に供給する。このことにより、マイクロリアクター10において、大径配管111内における小径配管112の外側の第1流路121に第1水溶液を流通させると共に、小径配管112内の第2流路122に第2水溶液を流通させ、合流部123で、第1水溶液中に第2水溶液を供給して合流させる。つまり、第1水溶液中への第2水溶液の供給を、大径配管111内に設けられた別の小径配管112から行う。この場合、第2水溶液の外周が第1水溶液で覆われるように第2水溶液が第1水溶液の中間部に供給される。そして、第1水溶液と第2水溶液との間でのイオン交換によりイオン架橋型ハイドロゲルを形成させることによりハイドロゲルファイバを製造し、それをファイバ回収管27を介してファイバ回収槽28に回収する。
【0022】
実施形態に係るハイドロゲルファイバの製造方法では、このとき、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cを0.50質量%以上5.0質量%以下の範囲で設定すると共に、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)を0.25以上10以下の範囲で設定し、且つ第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)を0.10以上40以下の範囲で設定する。
【0023】
本発明者らは、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cを0.50質量%以上5.0質量%以下の範囲で設定すると共に、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)を0.25以上10以下の範囲で設定したとき、得られるハイドロゲルファイバのファイバ径が、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)が0.10以上40以下の範囲において、その流量比(Q/Q)に対する相関性を有することを見出した。これは、第2水溶液のゲル化が、第1及び第2水溶液の流速が等しくなった定常状態後に生じるということが関連しているのではないかと推測される。このことから実施形態に係るハイドロゲルファイバの製造方法によれば、その流量比(Q/Q)の設定によって得られるハイドロゲルファイバのファイバ径を制御することができ、従って、ファイバ径との相関性を有するその流量比(Q/Q)を0.1以上40以下の範囲で目標のファイバ径に対応する値に設定すれば、所望のファイバ径のハイドロゲルファイバを製造することができる。すなわち、実施形態に係るハイドロゲルファイバの製造方法によれば、特定範囲の流速比において流量比によりファイバ径を制御することが可能となる。
【0024】
ここで、第1水溶液に含まれる金属イオンとしては、例えば、1価金属イオンでは、カリウムイオン等が挙げられ、また、多価金属イオンでは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン(II)、銅イオン(II)、亜鉛イオン、マンガンイオン等の2価金属イオン;アルミニウムイオン、鉄イオン(III)等の3価金属イオンが挙げられる。第1水溶液は、ハイドロゲル形成メカニズムの観点から、これらのうちの1種又は2種以上の金属イオンを含むことが好ましい。反応性の観点から、1価金属イオンとしてはカリウムイオンが好ましく、反応性の観点から、多価金属イオンとしてはカルシウムイオン、マグネシウムイオンが好ましい。
【0025】
第1水溶液は、反応速度を向上させるの観点から、金属イオンを含有する金属塩を含む水溶液であることが好ましい。金属イオンを含有する金属塩としては、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等の有機酸塩の1価金属塩や多価金属塩が挙げられる。第1水溶液は、ハイドロゲル形成メカニズムの観点から、これらのうちの1種又は2種以上の金属塩を含むことが好ましい。反応性の観点から、無機酸塩としては塩化物塩が好ましい。
【0026】
第1水溶液における金属塩の濃度cは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.30質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、同様の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。この金属塩の濃度cは、好ましくは0.30質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.50質量%以上20質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以上10質量%以下である。
【0027】
第1水溶液は、ファイバ径を制御するという作用効果を損なわない範囲で、界面活性剤、有機溶剤、防腐剤等を含んでいてもよい。
【0028】
第1水溶液の粘度ηは、必要に応じて、適宜、粘度調整剤等を添加して調製してもよい。第1水溶液の粘度ηは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.10mPa・s以上、より好ましくは0.50mPa・s以上、更に好ましくは1.0mPa・s以上であり、また、同様の観点から、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは3000mPa・s以下である。この第1水溶液の粘度ηは、好ましくは0.10mPa・s以上10000mPa・s以下、より好ましくは0.50mPa・s以上5000mPa・s以下、更に好ましくは1.0mPa・s以上3000mPa・s以下である。ここで、第1水溶液の粘度η及び後述の第2水溶液の粘度ηは、B型粘度計等の粘度測定機器により測定される。
【0029】
第1水溶液は、第1流路121を層流条件で流通させることが好ましい。そのレイノルズ数Reは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.50以上であり、また、同様の観点から、好ましくは1500以下、より好ましくは1200以下、更に好ましくは1000以下である。この第1水溶液のレイノルズ数Reは、好ましくは0.10以上1500以下、より好ましくは0.30以上1200以下、更に好ましくは0.50以上1000以下である。
【0030】
第1流路121に流通させる第1水溶液の流速uは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.050m/秒以上、より好ましくは0.10m/秒以上、更に好ましくは0.15m/秒以上であり、また、同様の観点から、好ましくは10m/秒以下、より好ましくは5.0m/秒以下、更に好ましくは3.0m/秒以下である。この第1水溶液の流速uは、好ましくは0.050m/秒以上10m/秒以下、より好ましくは0.10m/秒以上5.0m/秒以下、更に好ましくは0.15m/秒以上3.0m/秒以下である。
【0031】
第1流路121に通液させる第1水溶液の流量Qは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは5.0ml/分以上、より好ましくは10ml/分以上、更に好ましくは20ml/分以上であり、また、同様の観点から、好ましくは2000ml/分以下、より好ましくは1000ml/分以下、更に好ましくは500ml/分以下である。この第1水溶液の流量Qは、好ましくは5.0ml/分以上2000ml/分以下、より好ましくは10ml/分以上1000ml/分以下、更に好ましくは20ml/分以上500ml/分以下である。
【0032】
第2水溶液に含まれるゲル形成物質としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸塩;κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、LMペクチン等が挙げられる。第2水溶液は、ハイドロゲル形成メカニズムの観点から、これらのうちの1種又は2種以上のゲル形成物質を含むことが好ましい。第2水溶液に含まれるゲル形成物質としては、反応性、および得られるハイドロゲルファイバの強度の観点から、アルギン酸ナトリウム、κ―カラギーナンが好ましい。なお、アルギン酸塩はカルシウムイオン等により、κ−カラギーナンはカリウムイオンにより、ι−カラギーナンはカルシウムイオン、LMペクチンはカルシウムイオン等により、それぞれイオン架橋型ハイドロゲルを形成する。
【0033】
第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cは0.5質量%以上5.0質量%以下であるが、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上である。特に、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cが3.0質量%以上5.0質量%以下のとき、ハイドロゲルファイバのファイバ径は、配管内に流通する第1水溶液と第2水溶液との流量比(Q/Q)を基に算出した下記関係式により、高精度で近似することができることが見出されている。従って、この関係式に基づいてハイドロゲルファイバのファイバ径を制御することができる。
【0034】
【数1】
【0035】
一方、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cは、ファイバ径の小さいハイドロゲルファイバを製造する観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0036】
第2水溶液は、ファイバ径を制御するという作用効果を損なわない範囲で、水性及び/又は油性の機能性物質、界面活性剤、有機溶剤、反応性物質等を含んでいてもよい。
【0037】
第2水溶液の粘度ηは、ゲル形成物質の濃度c、分子量、および操作温度によって調整できる。第2水溶液の粘度ηは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100000mPa・s以下、より好ましくは50000mPa・s以下、更に好ましくは30000mPa・s以下である。この第2水溶液の粘度ηは、好ましくは10mPa・s以上100000mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以上50000mPa・s以下、更に好ましくは100mPa・s以上30000mPa・s以下である。
【0038】
第2水溶液は、第2流路122を層流条件で流通させることが好ましい。そのレイノルズ数Reは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.0010以上、より好ましくは0.010以上、更に好ましくは0.10以上であり、また、同様の観点から、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは300以下である。この第2水溶液のレイノルズ数Reは、好ましくは0.0010以上1000以下、より好ましくは0.010以上500以下、更に好ましくは0.10以上300以下である。
【0039】
第2流路122に流通させる第2水溶液の流速uは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.050m/秒以上、より好ましくは0.10m/秒以上、更に好ましくは0.15m/秒以上であり、また、同様の観点から、好ましくは10m/秒以下、より好ましくは5.0m/秒以下、更に好ましくは3.0m/秒以下である。この第2水溶液の流速uは、好ましくは0.050m/秒以上10m/秒以下、より好ましくは0.10m/秒以上5.0m/秒以下、更に好ましくは0.15m/秒以上3.0m/秒以下である。
【0040】
第2流路122に流通させる第2水溶液の流量Qは、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.10ml/分以上、より好ましくは0.50ml/分以上、更に好ましくは1.0ml/分以上であり、また、同様の観点から、好ましくは500ml/分以下、より好ましくは300ml/分以下、更に好ましくは100ml/分以下である。この第2水溶液の流量Qは、好ましくは0.10ml/分以上500ml/分以下、より好ましくは0.50ml/分以上300ml/分以下、更に好ましくは1.0ml/分以上100ml/分以下である。
【0041】
第1及び第2水溶液の関係について、第1水溶液の流速uは、第2水溶液の流速uと同一であってもよく、また、第2水溶液の流速uよりも速くてもよく、或いは、第2水溶液の流速uよりも遅くてもよい。第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.25以上10以下である。精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは1.0以上であり、また、同様の観点から、好ましくは8.0以下、より好ましくは6.0以下、更に好ましくは5.0以下である。この流速比(u/u)は、好ましくは0.30以上8.0以下、より好ましくは0.50以上6.0以下、更に好ましくは1.0以上5.0以下である。
【0042】
第1水溶液の流量Qは、第2水溶液の流量Qと同一であってもよく、また、第2水溶液の流量Qよりも多くてもよく、或いは、第2水溶液の流量Qよりも少なくてもよい。第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は0.10以上40以下であるが、目的とするファイバ径に適した流量比(Q/Q)を適宜設定すればよい。精度よくファイバ径を制御すると共に、ファイバ径の小さいハイドロゲルファイバを製造する観点から、好ましくは0.50以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは3.0以上であり、また、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは35以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である。この流量比(Q/Q)は、好ましくは0.50以上35以下、より好ましくは1.0以上30以下、更に好ましくは3.0以上25以下である。
【0043】
また、第1水溶液のレイノルズ数Reは、第2水溶液のレイノルズ数Reよりも大きいことが好ましい。第1水溶液のレイノルズ数Reの第2水溶液のレイノルズ数Reに対する比(Re/Re)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは5.0以上、更に好ましくは10以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、更に好ましくは50000以下である。このレイノルズ数の比(Re/Re)は、好ましくは1.0以上100000以下、より好ましくは5.0以上70000以下、更に好ましくは10以上50000以下である。
【0044】
第1水溶液における金属塩の濃度cは、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cと同一であってもよく、また、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cよりも低くてもよく、或いは、第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cよりも高くてもよい。第1水溶液における金属塩の濃度cの第2水溶液におけるゲル形成物質の濃度cに対する比(c/c)は、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは0.050以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.30以上であり、また、同様の観点から、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは20以下である。この濃度比(c/c)は、好ましくは0.050以上60以下、より好ましくは0.10以上40以下、更に好ましくは0.30以上20以下である。
【0045】
第1水溶液の粘度ηは、第2水溶液の粘度ηよりも低いことが好ましい。第2水溶液の粘度ηの第1水溶液の粘度ηに対する比(η/η)は、精度よくファイバ径を制御する観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは5.0以上、更に好ましくは10以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下、更に好ましくは30000以下である。この粘度比(η/η)は、好ましくは1.0以上100000以下、より好ましくは5.0以上50000以下、更に好ましくは10以上30000以下である。
【0046】
第1水溶液の温度は、第2水溶液の温度と同一であることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0047】
マイクロリアクター10において形成されるハイドロゲルファイバは、ファイバ回収管27を介してファイバ回収槽28に回収される。そのハイドロゲルファイバのファイバ径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上であり、また、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、更に好ましくは700μm以下である。ハイドロゲルファイバのファイバ径は、好ましくは10μm以上1000μm以下、より好ましくは50μm以上800μm以下、更に好ましくは70μm以上700μm以下である。ハイドロゲルファイバのファイバ径は、光学顕微鏡観察画像から測定することができる。また、本出願における「ファイバ径」は、水溶液中での湿潤状態でのファイバ径である。
【0048】
ハイドロゲルファイバのファイバ径は、小径配管112の内径φinよりも小さいことが好ましい。ハイドロゲルファイバのファイバ径は、小径配管112の内径φinに対して、好ましくは0.10倍以上、より好ましくは0.15倍以上、更に好ましくは0.20倍以上であり、また、好ましくは0.95倍以下、より好ましくは0.90倍以下、更に好ましくは0.85倍以下である。ハイドロゲルファイバのファイバ径は、小径配管112の内径φinに対して、好ましくは0.10倍以上0.95倍以下、より好ましくは0.15倍以上0.90倍以下、更に好ましくは0.20倍以上0.85倍以下である。
【0049】
回収されたハイドロゲルファイバは、例えば、化粧料、医薬品、医薬部外品、食品等の配合材料として用いられる。
【0050】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、大径配管111内に小径配管112が設けられた二重管型のマイクロリアクター10を用いた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、図3A及びBに示すように、第1配管15と、その第1配管に側方から導入されると共に、その中央部で屈曲して第1配管に沿って延びて開口するように設けられた第2配管16とを備えたマイクロリアクター10を用い、第2水溶液の外周が第1水溶液で覆われるように第2水溶液が第1水溶液の中間部に供給される構成であってもよい。
【0051】
上記実施形態では、大径配管111内に小径配管112が設けられると共に、大径配管111の中間部に小径配管112の先端が位置付けられたマイクロリアクター10を用い、そのため第2水溶液の外周が第1水溶液で覆われるように第2水溶液が第1水溶液の中間部に供給される構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、図4に示すように、第1配管15とそこから分岐した第2配管16とを備えたマイクロリアクター10を用い、第1及び第2配管15,16内にそれぞれ第1及び第2水溶液を流通させて第1水溶液中に第2配管16の開口から第2水溶液を供給し、第2水溶液が第1水溶液と第1配管15における第2配管16の開口側の内壁との間に挟まれると共に第1配管15の内壁に沿って流通する構成であってもよい。
【0052】
また、図5A及びBに示すように、第1配管15と、その第1配管に側方から導入されると共に、その導入された側の内壁に沿って延びて開口するように設けられた第2配管16とを備えたマイクロリアクター10を用い、第1及び第2配管15,16内にそれぞれ第1及び第2水溶液を流通させて第1水溶液中に第2配管16の開口から第2水溶液を供給し、第2水溶液が第1水溶液と第1配管15における第2配管16の配設側の内壁との間に挟まれると共に第1配管15の内壁に沿って流通する構成であってもよい。
【0053】
更に、図6A及びBに示すように、第1配管15と、その第1配管に側方から導入されると共に、その導入された側と対向する内壁の近傍まで延びて開口するように設けられた第2配管16とを備えたマイクロリアクター10を用い、第1及び第2配管15,16内にそれぞれ第1及び第2水溶液を流通させて第1水溶液中に第2配管16の開口から第2水溶液を供給し、第2水溶液が第1水溶液と第1配管15における第2配管16の導入側とは反対側の内壁との間に挟まれると共に第1配管15の内壁に沿って流通する構成であってもよい。
【0054】
上記実施形態では、大径配管111内に1本の小径配管112が設けられたマイクロリアクター10を示したが、特にこれに限定されるものではなく、図7に示すように、大径配管111内に複数本の小径配管112が設けられたマイクロリアクター10であってもよい。この場合、第2水溶液の流量は、複数本の小径配管112を流動する第2水溶液の総量である。
【実施例】
【0055】
(ハイドロゲルファイバの作製)
塩化カルシウム水溶液を第1水溶液及びアルギン酸ナトリウム水溶液を第2水溶液として以下の実施例1〜11並びに比較例1及び2の通りハイドロゲルファイバを作製した。また、塩化カリウム水溶液を第1水溶液及びκ−カラギーナン水溶液を第2水溶液として以下の実施例12及び13の通りハイドロゲルファイバを作製した。それぞれの内容については表1及び2にも示す。
【0056】
<実施例1>
1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を693g仕込み、そこに塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)を7g投入して室温で溶解させて濃度cが1.0質量%の塩化カルシウム水溶液を第1水溶液(粘度η:1.0mPa・s、比重:1.013)として調製した。また、別の1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を693g仕込み、そこにアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を7g投入して70℃に加熱して溶解させた濃度cが1.0質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を第2水溶液(粘度η:290mPa・s、比重:1.004)として調製した。
【0057】
図1に示すのと同様の構成のハイドロゲルファイバ製造システムSを用い、第1貯槽211に第1水溶液及び第2貯槽212に第2水溶液をそれぞれ仕込んだ。そして、各々、25℃に温度調整した第1及び第2水溶液をそれぞれ第1及び第2流路121,122に流動させて合流部123で合流させると、第1及び第2水溶液が接触する位置で直ちに第2水溶液がゲル化してハイドロゲルファイバが形成され、それをイオン交換水を入れた3Lビーカーで構成されたファイバ回収槽28に回収した。なお、マイクロリアクター10の大径配管111の外径Φoutは3.2mm及び内径Φinは2.5mmであった。小径配管112の外径φoutは1.6mm及びφinは0.75mmであった。また、ポンプ241,242にはギヤポンプ(型式:DGS.11EEV2NN15000 Tuthill社製)を用いた。
【0058】
実施例1では、第1水溶液を、流量Qを49ml/分とした層流(レイノルズ数Re:260)で流通させると共に、第2水溶液を、流量Qを26ml/分とした層流(レイノルズ数Re:2.5)で流通させた。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は1.9である。第1水溶液の流速uは280mm/秒及び第2水溶液の流速uは980mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.29である。
【0059】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は520μmであった。
【0060】
<実施例2>
実施例2では、第2水溶液の流量Qを5.0ml/分(レイノルズ数Re:0.49)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は9.8である。また、第2水溶液の流速uは190mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は1.5である。
【0061】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は250μmであった。
【0062】
<実施例3>
実施例3では、第1水溶液の流量Qを150ml/分(レイノルズ数Re:780)とし、また、第2水溶液の流量Qを5.0ml/分(レイノルズ数Re:0.49)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は30である。また、第1水溶液の流速uは860mm/秒及び第2水溶液の流速uは190mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は4.5である。
【0063】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は150μmであった。
【0064】
<実施例4>
実施例4では、第1水溶液の流量Qを200ml/分(レイノルズ数Re:1100)とし、また、第2水溶液の流量Qを5.0ml/分(レイノルズ数Re:0.49)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は40である。また、第1水溶液の流速uは1200mm/秒、第2水溶液の流速uは190mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は6.3である。
【0065】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は80μmであった。
【0066】
<実施例5>
実施例5でハイドロゲルファイバの作製に使用したマイクロリアクター10は、大径配管111の外径Φoutは3.2mm及び内径Φinは2.5mmであった。小径配管112の外径φoutは1.6mm及び内径φinは0.50mmであった。
【0067】
そして、第2水溶液の流量Qを12ml/分(レイノルズ数Re:1.7)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は4.1である。また、第2水溶液の流速uは1000mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.28である。
【0068】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は300μmであった。
【0069】
<実施例6>
実施例6では、第1水溶液の流量Qを99ml/分(レイノルズ数Re:520)とした以外は、実施例5と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は8.3である。また、第1水溶液の流速uは570mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.57である。
【0070】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は200μmであった。
【0071】
<実施例7>
実施例7でハイドロゲルファイバの作製に使用したマイクロリアクター10は、大径配管111の外径Φoutは3.2mm及び内径Φinは2.5mmであった。小径配管112の外径φoutは1.6mm及び内径φinは0.25mmであった。また、第2水溶液の流量Qを2.9ml/分(レイノルズ数Re:0.84)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は17である。また、第2水溶液の流速uは980mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.29である。
【0072】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は150μmであった。
【0073】
<実施例8>
実施例8では、第1水溶液の流量Qを99ml/分(レイノルズ数Re:520)とした以外は、実施例7と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は34である。また、第1水溶液の流速uは570mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.58である。
【0074】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は80μmであった。
【0075】
<実施例9>
実施例9では、1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を686g仕込み、そこにアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を14g投入して溶解させて25℃に温度調整した濃度cが2.0質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液(粘度η:2600mPa・s、比重:1.008)を第2水溶液として使用した。また、第2水溶液の流量Qを5.0ml/分(レイノルズ数Re:0.059)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は9.8である。また、第2水溶液の流速uは190mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は1.5である。
【0076】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は450μmであった。
【0077】
<実施例10>
実施例10では、1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を679g仕込み、そこにアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を21g投入して溶解させて25℃に温度調整した濃度cが3.0質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液(粘度η:11000mPa・s、比重:1.016)を第2水溶液として使用した。また、第2水溶液の流量Qを4.9ml/分(レイノルズ数Re:0.013)とした以外は、実施例9と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は10である。また、第2水溶液の流速uは180mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は1.6である。
【0078】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は650μmであった。
【0079】
<実施例11>
実施例11では、1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を696.5g仕込み、そこに塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)を3.5g投入して溶解させて25℃に温度調整した濃度cが0.5質量%の塩化カルシウム水溶液(粘度η:1.0mPa・s、比重:1.002)を第1水溶液として使用した。また、第1水溶液の流量Qを100ml/分(レイノルズ数Re:520)とし、第2水溶液の流量Qを5.0ml/分(レイノルズ数Re:0.48)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は20である。また、第1水溶液の流速uは580mm/秒、第2水溶液の流速uは190mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は3.1である。
【0080】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は150μmであった。
【0081】
<比較例1>
比較例1でハイドロゲルファイバの作製に使用したマイクロリアクター10は、大径配管111の外径Φoutは3.2mm及び内径Φinは2.5mmであった。小径配管112の外径φoutは1.6mm及び内径φinは0.17mmであった以外は、実施例3と同様の操作を行った。第2水溶液のレイノルズ数Reは2.2である。第2水溶液の流速uは3700mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.23である。
【0082】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は50μmであった。
【0083】
<比較例2>
比較例2では、1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を699.3g仕込み、そこにアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を0.7g投入して溶解させて25℃に温度調整した濃度cが0.10質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液(粘度η:14mPa・s、比重:1.000)を第2水溶液として使用した以外は、実施例2と同様の操作を行った。第2水溶液のレイノルズ数Reは10である。
【0084】
その結果、ファイバ回収管27の中でゲル化は進行せず、ハイドロゲルファイバが得られなかった。
【0085】
【表1】
【0086】
<実施例12>
実施例12では、1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を630.0g仕込み、そこに塩化カリウム(和光純薬工業株式会社製)を70.0g投入して溶解させて25℃に温度調整した濃度cが10質量%の塩化カリウム水溶液(粘度η:1.0mPa・s、比重:1.063)を第1水溶液として使用した。また、1Lのガラス製ビーカーにイオン交換水を693g仕込み、κ―カラギーナン(東京化成工業株式会社製)を7g投入して溶解させて25℃に温度調整した濃度cが1.0質量%のκ―カラギーナン水溶液(粘度η:4100mPa・s、比重:1.065)を第2水溶液として使用した。
【0087】
ハイドロゲルファイバの作製に使用したマイクロリアクター10は、大径配管111の外径Φoutは3.2mm及び内径Φinは2.5mmであった。小径配管112の外径φoutは1.6mm及びφinは0.50mmであった。
【0088】
そして、第1水溶液の流量Qを75ml/分(レイノルズ数Re:410)とし、第2水溶液の流量Qを9.4ml/分(レイノルズ数Re:0.10)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は8.0である。また、第1水溶液の流速uは410mm/秒、第2水溶液の流速uは800mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は0.54である。
【0089】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は470μmであった。
【0090】
<実施例13>
実施例13では、第1水溶液の流量Qを110ml/分(レイノルズ数Re:600)とし、また、第2水溶液の流量Qを4.7ml/分(レイノルズ数Re:0.052)とした以外は、実施例12と同様の操作を行った。従って、第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)は23である。また、第1水溶液の流速uは630mm/秒、第2水溶液の流速uは400mm/秒であったので、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)は1.6である。
【0091】
得られたハイドロゲルファイバを光学顕微鏡で観察したところ、その湿潤状態でのファイバ径は190μmであった。
【0092】
【表2】
【0093】
(結果及び考察)
図7は、第2水溶液のアルギン酸ナトリウムの濃度cが1.0質量%である実施例1〜8、11、及び比較例1、並びに第2水溶液のκ−カラギーナンの濃度cが1.0質量%である実施例12及び13についての第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)と、得られたハイドロゲルファイバのファイバ径との関係を示す。
【0094】
この図7によれば、実施例1〜8及び11の結果から、ハイドロゲルファイバの作製時に用いるマイクロリアクター10の構成、第1水溶液の濃度c、並びに第1及び第2水溶液のそれぞれの流量Q,Q及び流速u,u等によらず、得られたハイドロゲルファイバのファイバ径が第1水溶液の第2水溶液に対する流量比(Q/Q)と相関を有することが分かる。但し、第1水溶液の第2水溶液に対する流速比(u/u)が0.20と小さい比較例1では、この相関関係から外れていることが分かる。また、第2水溶液のκ−カラギーナンの濃度cが1.0質量%である実施例12及び13についても同様の傾向が認められる。
【0095】
第2水溶液のアルギン酸ナトリウムの濃度cが相違する実施例9及び10を比べると、第2水溶液のアルギン酸ナトリウムの濃度cが低くなると、得られるハイドロゲルファイバのファイバ径が小さくなることが分かる。また、第2水溶液のアルギン酸ナトリウムの濃度cが実施例2の1.0質量%よりも更に低い0.10質量%である比較例2では、ハイドロゲルファイバが形成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、ハイドロゲルファイバの製造方法及びそのファイバ径の制御方法の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0097】
S ハイドロゲルファイバ製造システム
10 マイクロリアクター
111 大径配管
112 小径配管
121 第1流路
122 第2流路
123 合流部
131 第1水溶液流入部
132 第2水溶液流入部
14 排出部
15 第1配管
16 第2配管
211 第1貯槽
212 第2貯槽
221 第1水溶液供給管
222 第2水溶液供給管
231,232 コック
241,242 ポンプ
251,252 流量計
261,262 圧力計
27 ファイバ回収管
28 ファイバ回収槽
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8