(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、ビルディング等の建築物の建築現場、橋梁等の構築物の構築現場ではH鋼のフランジに挟持部材を介して複数の縦支柱を起立し、これらの縦支柱に横方向に沿って手摺を取付け、またこの手摺に命綱を取付けたガイドをスライド自在に挿入した手摺装置が使用されている。
【0003】
この手摺装置は作業者がH鋼のフランジ上又はH鋼に近接した通路を歩行する時の安全を図るものである。
【0004】
また、命綱を取付けたガイドを横支柱に取付けているので、このガイドは作業者の歩行に伴って手摺の外周をスライドして移動し、その結果、常に作業者の胴部に巻きつけた命綱が手摺に繋がっているので、作業者がフランジ上又は通路上から落下しそうになったときでも命綱と手摺とで作業者を支えて転倒するのを防止し、あるいは、地上に落下するのを防止して安全を図っている。
【0005】
このような手摺装置および命綱取付け用のガイドとしては、例えば、特許文献1に開示されたものが開発されている。
【0006】
この手摺装置は、建築、構築現場のH鋼に取付けられて起立する複数の縦支柱と、各縦支柱の上端にそれぞれ設けた手摺保持部材と、各手摺保持部材にそれぞれ横方向スライド自在に挿入したストレートな二本の手摺と、手摺の外周にスライド自在に取り付けられると共に各手摺保持部材の外周を通過する命綱取付け用のガイドと、を備えているものである。
【0007】
また、上記命綱取付け用のガイドは、外筒と、この外筒の上壁と側壁とに設けられて手摺の外周と支柱保持部材の外周とにそれぞれ転動自在に当接するローラとを備え、歩行者の歩行に伴ってローラが転動して各手摺を通過できるようになっている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の一例に係る命綱取付け用のガイドとこれを取付けた手摺装置を図に基づいて説明する。
【0017】
図に示す手摺装置はビルディング等の建築物、橋梁等の構築部物の作業現場における通路脇に沿って設けられ、作業者がこの通路を歩行する時転倒し、あるいは、地上に落下するのを防止して安全性を図るものである。
【0018】
この手摺装置は、例えば、
図1に示すように、建築部、構築物の建築、構築現場における通路に近接して設けた被取付け部材たるH鋼WのフランジHaに取付けられるものである。
【0019】
図1に示すH鋼Wは建築物、構築物の骨組みを構成する構造物の一部であるが、その平面はそれ自体作業者が歩行する通路を兼用する場合もあり、あるいは通路に近接して設けている場合もある。
【0020】
図1はストレートな通路と湾曲したコーナー部の通路に対応して手摺装置Tを配置した状態を示しているが、ストレートな通路のみの途中に設けても良い。
【0021】
一実施の形態に係る手摺装置Tは
図1に示すように、建築、構築現場のコーナーに設けた左右のH鋼W、Wの外側端部に起立する左右一対の縦支柱1a、1bと、H鋼W,Wの内側の端部に起立する中間の一対の縦支柱1c、1cと、各左右の縦支柱1a、1bの上端に設けた各手摺保持部材2、2にそれぞれ挿入した左右一対のストレートな手摺3a、3bと、同じく中間の縦支柱1cの上端に設けた手摺保持部材2に挿入されて上記左右の手摺3a、3b間に配置して接続した中間の湾曲した手摺3cと、を有している。
【0022】
また、左右の手摺3a、3bの片側端部と中間の手摺3cの両端部にそれぞれスライド自在に挿入した左右一対の手摺連結部材4a、4bと、を備えている。
【0023】
また、
図6、
図7で後述するように、手摺保持部材2と、手摺連結部材4a、4bとはそれぞれ各手摺3a、3b、3cに対する緩み止め部材たる板バネ6d、14を有している。
【0024】
本発明の一実施の形態に係る命綱取付け用のガイド5は
図8〜
図10で後述するように、手摺保持部材2と手摺連結部材4a、4bの各外周に当接しながら搖動するローラ22a、22bを有している。
【0025】
図1の手摺装置Tによれば、H鋼Wのフランジに予め左右の縦支柱1a、1bとコーナー部の二本の中間の縦支柱1c、1cとを起立しておく。
【0026】
次いで、左右の縦支柱1a、1bの上端と中間胴部に上下の手摺保持部材2、2を介してそれぞれ二本ずつ左右の手摺3a、3bを水平に挿入しておく。
【0027】
更に、中間の縦支柱1c、1cにも上下二つの手摺保持部材2、2を介して中間の二本の手摺3c、3cを水平に挿入する。
【0028】
次いで、左右の手摺3a、3bに対して中間の手摺3cを左右の手摺連結部材4a、4bを介して連結する。
【0029】
この際予め一方の手摺、例えば、中間の手摺3cの両側に手摺連結部材4a、4bを挿入しておき、この状態で左右の手摺3a、3bをスライドして中間の手摺3cの端部に近づけ、次いで手摺連結部材4a、4bをそれぞれ左右の手摺3a、3bの端部に挿入することにより左右の手摺3a、3bと中間の手摺3cとを接続する。
【0030】
手摺3a、3b、3cにスライド自在に挿入した命綱取付け用のガイドは作業者の歩行に伴って手摺3a、3b、3cの外周に沿って移動し、どの位置でも常に作業者が命綱を介して手摺3a、3b、3cで支えられるようになっている。
【0031】
図1には4本の縦支柱1a、1b、1c、1cと三本の手摺3a、3b、3cを設けた状態が示されているが、通路の長さに応じて三本以上設けても良く、二本であっても使用可能である。
【0032】
縦支柱1a、1b、1cは
図2〜
図5に示す実施の形態に示すように、二つのタイプがある。
【0033】
各実施の形態の形態に係る縦支柱1a、1b、1cの基本構造は、
図2、
図5に示すストレートな柱体A1、又は
図3、
図4に示す下部を屈曲させた柱体A2と、柱体A1、A2の下端に設けられてH鋼Wのフランジを挟持する挟持部材Bとから構成され、柱体A1、A2の上端と中間胴部に手摺保持部材2をそれぞれ結合しているものである。
【0034】
手摺保持部材2は柱体A1、A2の上端に一つ設けられていても良いが、安全性を向上させるため
図2〜
図5に示すように中間にも他の手摺保持部材2を設けても良い。この場合は、
図1に示すように各縦支柱1a、1b、1c間に上下二本平行に手摺3a、3b、3cを設けることができる。
【0035】
図3、
図4に示す柱体A2は下部が屈曲しているが、これはH鋼W上を作業者が歩行する時柱体A2が邪魔にならないようにこの柱体A2の一部を通路の外側寄りに起立させて上方の空間を広げたものである。
【0036】
挟持部材Bはコ字状の挟持片B1とこの挟持片B1に螺合したボルトB2とで構成されている。
【0037】
そして、挟持片B1とボルトB2とでH鋼のフランジHaを挟持してH鋼上に縦支柱1a、1b、1cを起立している。
【0038】
縦支柱1a、1b、1cは
図2、
図3に示すように、フランジHaが水平な場合は横向きの挟持片B1取付けたものを使用し、フランジHaが垂直な場合は
図4、
図5に示すように下向きの挟持片B1を取付けたものを使用する。
【0039】
図1に示す各手摺保持部材2は
図6に示すように、正面側又は背面側が解放されると共に底壁2Bが傾斜する中空な筒体2Aと、筒体2A内に底壁2Bに沿ってスライド自在に嵌合する楔6とから構成されている。
【0040】
これにより、解放された開口部から手摺3a、3b、3cがそれぞれ挿入され、筒体2Aの上壁内面と打ち込んだ楔6の上面とでこの手摺3a、3b、3cを挟持する。
【0041】
楔6を抜いたときは逆に手摺3a、3b、3cを抜き出すことができ、手摺の取付け、取り外しが容易となる。
【0042】
また、筒体2Aは側壁に形成した係止孔7と、底部6bに下方に向けて突設した係止ピン8と、を備えている。
【0043】
楔6は断面コ字状に形成された本体6aと、底部6bに長手方に形成されて上記係止ピン8にスライド自在に嵌合する長孔6cとを備えている。
【0044】
また、この楔6は本体6a内に挿入されて上記係止孔7内に着脱自在に嵌合するくの字状の板バネ6dからなる緩み止め部材を備えている。
【0045】
このため、楔6を筒体2A内に打ち込んだ時、係止ピン8に案内されながら長孔6cに沿ってこの楔6が真直ぐ移動し、また係止ピン8が長孔6cに嵌合していることにより、楔6が外れて紛失するのを防止できる。
【0046】
さらに、楔6を深く打ち込んだ時、板バネ6dにおけるくの字状の係止部が自己復帰力で係止孔7内に嵌合し、振動等があっても楔6の緩みが防止され、その結果手摺3a、3b、3cが抜け出るのを防止できる。
【0047】
図1に示す手摺連結部材4a、4bは
図7に示すように、下方が解放された筒体9aと、筒体9aの上壁の中央に形成した覗き孔10と、筒体9aの下端に連設されて底壁9cが傾斜する楔ガイド部9bと、楔ガイド部9b内に底壁9cに沿ってスライド自在に挿入した楔13と、から構成されている。
【0048】
上記楔ガイド部9bは側壁に形成した係止孔11と、底壁9cに下方に向けて突設した係止ピン12と、を備えている。
【0049】
更に、楔13は断面コ字状に形成された本体13aと、本体13aの底部13bに長手方に形成されて上記係止ピン12にスライド自在に嵌合する長孔13cと、本体13a内に挿入されて係止孔11内に着脱自在に嵌合する板バネ14からなる緩み止め部材と、を備えている。
【0050】
上記手摺連結部材4a、4bによれば、例えば、
図7に示すように、左側の手摺3aの左端部と中間の手摺3cの右端部とを突き合わせながら筒体9a内に挿入することにより右側の手摺3aと中間の手摺3cとが水平方向に沿って連結される。
【0051】
逆に中間の手摺3cのみを修理、交換等のために取外す場合は、左右の手摺連結部材4a、4bの各楔6を予め緩めておき、各筒体9aを左右の手摺3a、3b側に全量スライドさせればよい。
【0052】
筒体9aには覗き孔10が形成されているので、右側の手摺3a、と中間の手摺3cの端部同士がきちんと当接しているかどうかを視認でき、安全性を図れる。
【0053】
筒体9a内に底壁9cに沿ってスライド自在に嵌合する楔6を備えているので、筒体9aの上壁内面に打ち込んだ楔13の上面とでこの手摺3a、3b、3cを挟持できるが、楔13を緩めたときは逆に手摺3a、3b、3cを抜き出すことができ、手摺の取付け、取り外しが容易となる。
【0054】
また、筒体9aは上記のように係止孔11と、係止ピン12と、係止ピン12にスライド自在に嵌合する長孔13cと、係止孔11内に着脱自在に嵌合する板バネ14からなる緩み止め部材を備えているので、楔13を筒体9a内に打ち込んだ時、係止ピン12に案内されながら長孔13c沿ってこの楔13が真直ぐ移動し、また係止ピン12が長孔13cに嵌合していることにより、楔13が外れて紛失するのを防止できる。
【0055】
さらに、楔13を深く打ち込んだ時、板バネ14におけるくの字状の係止部が自己復帰力で係止孔11内に嵌合し、振動等があっても楔6の緩みが防止され、その結果手摺3a、3b、3cが抜け出るのを防止できる。
【0056】
上記のように、本発明の手摺装置Tは複数の手摺連結部材4a、4b、4cを備えているので、中間の手摺3cの両側に設けた手摺連結部材4a、4bを隣接する他方の手摺3a、3b側にスライドすることにより、この中間の手摺3cは手摺連結部材4a、4bから外れ独立して抜き取ることができる。
【0057】
また、手摺連結部材4a、4bを隣接する両側の手摺3a、3bに予め取付けておき、この状態で両側の手摺連結部材4a、4bをそれぞれ中間の手摺3cの両側にスライドして挿入することにより中間の手摺3cを隣接する他の手摺3a、3bに簡単に継ぎ足すことができる。
【0058】
このため、作業現場に応じて手摺3a、3b、3cの全体の長さを調節し、あるいは、損傷した中間の手摺3cをその都度新しいものと交換でき、手摺3a、3b、3cの取付け、取り外し作業の向上を図れる。
さらに、上記したように、手摺保持部材2と、手摺連結部材4a、4bとはそれぞれ手摺3a、3b、3cに対する板バネ6d、14からなる緩み止め部材を有しているので、振動等があっても楔6,13が弛まず、その結果、これらの手摺保持部材2と手摺連結部材4a、4bに手摺3a、3b、3cがしっかりと保持され、手摺3a、3b、3cが外れるのを防止でき、安全性の向上が図れる。
【0059】
本発明の一実施の形態に係る命綱取付け用のガイド5は
図8〜
図11に示すように、下方が解放された筒体15と、筒体15の両端に設けたラッパ型の筒部16、16と、筒体15の上壁と右側部に設けられて上記手摺3a、3b、3cの上面と右側面にそれぞれ回転自在に当接する一つ又は複数の上部ローラ23a、23b及び右側ローラ22a、22aと、筒体15の右側部に張出して設けた命綱取付け具27とを備えている。なお、右側ローラ22a,22aは、それぞれ筒体15の右側部に張り出された一対のブラケット19に回転軸21bを介して転動自在に固定されている。
【0060】
更に、筒体15の左側側部に設けた取付け部材18と、取付け部材18に搖動自在に取付けた長細のブラケット17と、ブラケット17の両側に回転軸21cを介して設けられて上記手摺3a、3b、3cの左側面に回転自在に当接する前後二つの左側ローラ22b、22bとを有している。
【0061】
また、上記取付け部材18と上記ブラケット17間に介装されて上記ブラケット17と左側ローラ22b、22bを上記手摺3a、3b、3c側に附勢するスプリング26とを有している。
【0062】
この場合、断面U字状の取付け部材18が上記筒体15の左側側部から張り出して設けられ、断面U字状のブラケット17が上記取付け部材18に左右移動自在な支持軸24を介して搖動自在に取付けられ、取付け部材18の外端とブラケット17の外端間にガイドピン25が設けられ、このガイドピン25の外周にコイルスプリング26が介装されている。
【0063】
また、上記筒体15の内径寸法が上記手摺保持部材2の筒体2A及び上記手摺連結部材4の筒体9aの外径より大きく成形されている。この為、ガイド5は手摺連結部材4a、4bの外周のみならず、手摺保持部材2の外周も通過できるようになっている。また、このガイド5はストレートな左右の手摺3a、3bのみならず、中間の手摺3cのように湾曲していても通過できるようになっている。
【0064】
本発明の命綱取付け用のガイドは命綱取付け具27の取付けた命綱が作業者の胴部に巻き付けられているので、作業者の歩行に伴ってこのガイドは各手摺3a、3b、3cの外周に沿って移動する。
【0065】
図8、
図11はガイド5がストレートな右側手摺3aの外周を通過する時の平面図と断面図であり、この場合はブラケット17がスプリング26で筒体15の方向に附勢されている結果、このブラケット17は筒体15と平行であり、各左右のローラ22a、22bは手摺3aに対して平行に当接している。
【0066】
図9はガイド5がコーナーの湾曲した中間の手摺3cを通過する時の平面図であり、この場合、手摺3cのカーブが緩やかで、ストレートに近い場合は、図のように各左右のローラ22a、22bはそれぞれ手摺3cの外周に当接しているが、カーブの角度が鋭い場合はブラケット17が揺動して一つのローラ22bのみしか手摺3cに当接しない場合もあるが、ガイド5自体はカーブに沿って通過できるようになっている。
【0067】
図10はガイド5が手摺保持部材2の外周を通過する時の平面図を示している。
【0068】
この場合は、左側ローラ22b、22bのうち前側のローラ22bが手摺保持部材22の筒体2Aの外周に当接した時、このローラ22bが外側に押され、その結果スプリング26に抗してブラケット17が支持軸24を中心にして回転方向に揺動し、このローラ22bが手摺保持部材2の筒体2Aの外周に乗りあがって通過できるようになっている。
【0069】
以上のように、命綱取付け用のガイド5は搖動するローラ22b、22bを設けているので、手摺3a、3b、3cが作業現場のコーナーに設けた湾曲した手摺であっても、あるいは、手摺保持部材2や手摺連結部材4a、4bのような干渉物が手摺の途中に設けられていてその外径が仕様のものより大きくても、このローラ22b、22bが搖動してこれらの手摺保持部材2や手摺連結部材4a、4bの各外周に乗り上がって通過できる。
【0070】
従って、作業者が作業現場の通路のどの位置でも転倒や落下が防止でき安全に歩行できるものである。