(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器状灯具ボディの前面開口部に前面カバーが組み付けられて画成された灯室内に、光源である発光素子と、前記発光素子の発光を集光するように反射する光収束型リフレクタと、前記リフレクタでの反射光を灯室前方に投射する投影レンズと、前記投影レンズの後方焦点近傍に配置された可動シェードとを備え、前記可動シェードが起立した第1の形態では、前記可動シェードに対応するカットオフラインをもつ所定のすれ違いビーム用の配光が形成され、前記可動シェードが傾倒した第2の形態では、前記カットオフラインをもたない所定の走行ビーム用の配光が形成される車両用前照灯であって、
前記リフレクタには、前記発光素子の発光の一部を反射するサブリフレクタが設けられ、前記可動シェードには、前記サブリフレクタで反射された光を前記投影レンズに向けて反射する可動リフレクタが一体化され、
前記第1の形態では、前記可動リフレクタが前記サブリフレクタでの反射光の光路外にあって、該反射光を反射しないが、前記第2の形態では、前記可動リフレクタが前記可動シェードの傾倒に連係して起立し前記サブリフレクタでの反射光の光路上に突出して、該反射光を前記投影レンズに向けて反射するように構成され、
前記可動シェードおよびその前方に配置された前記可動リフレクタは、左右方向に配設された回動軸周りにそれぞれ回動可能に設けられるとともに、両者間に介装されたばね部材により互いに起立する方向に付勢保持された構造で、アクチュエータの駆動により、前記可動シェードが回動して前記第1の形態から前記第2の形態に移行する際、両者は前記回動軸回りに一体に回動するが、前記第2の形態では、第1の係止部に係止されて、前記サブリフレクタでの反射光の光路上に突出した形態に保持される前記可動リフレクタに対し、前記可動シェードは、前記ばね部材の付勢力に抗して、第2の係止部に係止される所定位置までさらに回動するように構成されたことを特徴とする車両用前照灯。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、補助リフレクタ5で反射された光を投影レンズ4の外側から前方に配光できるように、補助リフレクタ5を投影レンズ4の外方に大きく突出するように配置させる必要があり、光源ユニットの灯室内の収容スペースが拡大し、灯具のコンパクト化に逆行する。
【0009】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、投影レンズとリフレクタ間に設けたカットオフライン形成用の可動シェードを起立・傾倒させることで、すれ違いビーム用の配光と走行ビーム用の配光とを切り換える車両用前照灯において、可動シェードを傾倒させた形態で、走行ビーム用の配光を形成する際、リフレクタに設けたサブリフレクタで反射した光源光を、可動シェードに一体化した可動リフレクタで反射して投影レンズに導くように構成することで、灯具を大型化することなく、走行ビーム用の適正な配光を形成できる車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1においては、容器状灯具ボディの前面開口部に前面カバーが組み付けられて画成された灯室内に、光源である発光素子と、前記発光素子の発光を集光するように反射する光収束型リフレクタと、前記リフレクタでの反射光を灯室前方に投射する投影レンズと、前記投影レンズの後方焦点近傍に配置された可動シェードとを備え、前記可動シェードが起立した第1の形態では、前記可動シェードに対応するカットオフラインをもつ所定のすれ違いビーム用の配光が形成され、前記可動シェードが傾倒した第2の形態では、前記カットオフラインをもたない所定の走行ビーム用の配光が形成される車両用前照灯であって、
前記リフレクタには、前記発光素子の発光の一部を反射するサブリフレクタが設けられ、前記可動シェードには、前記サブリフレクタで反射された光を前記投影レンズに向けて反射する可動リフレクタが一体化され、
前記第1の形態では、前記可動リフレクタが前記サブリフレクタでの反射光の光路外にあって、該反射光を反射しないが、前記第2の形態では、前記可動リフレクタが前記可動シェードの傾倒に連係して起立し前記サブリフレクタでの反射光の光路上に突出して、該反射光を前記投影レンズに向けて反射することを特徴とする。
【0011】
(作用)可動シェードが起立した第1の形態では、投影レンズを介して、可動シェードに対応するカットオフラインをもつ、リフレクタの反射光に基づく所定のすれ違いビーム用の配光が形成される。このとき、可動シェードに一体化されている可動リフレクタは、サブリフレクタでの反射光の光路外にあって、サブリフレクタでの反射光が投影レンズに導かれることはない。したがって、サブリフレクタでの反射光が、すれ違いビーム用の配光に影響することはない。
【0012】
一方、可動シェードが傾倒した第2の形態では、投影レンズを介して、可動シェードに対応するカットオフラインをもたない、リフレクタの反射光に基づく走行ビーム用の第1の配光が形成される。また、可動シェードが起立する第1の形態から可動シェードが傾倒する第2の形態に移行すると、可動リフレクタは、可動シェードの傾倒に連係して起立し、サブリフレクタでの反射光の光路上に突出し、該反射光を投影レンズに向けて反射する。このため、投影レンズを介して、例えば光軸近傍を照射する、サブリフレクタの反射光に基づく走行ビーム用の第2の配光が形成される。
【0013】
したがって、可動シェードが傾倒した第2の形態では、リフレクタの反射光に基づく走行ビーム用の第1の配光に、サブリフレクタの反射光に基づく走行ビーム用の第2の配光が合成されて、例えば、中心光度の高い所定の走行ビーム用の配光が形成される。
【0014】
なお、サブリフレクタの反射光に基づく走行ビーム用の第2の配光は、投影レンズを介して形成されるため、投射レンズの外形の範囲内にサブリフレクタが収まり、従来の放物面形状のサブリフレクタ(特許文献1参照)のように、投射レンズの外方に大きく突出しない。
【0015】
請求項2においては、請求項1に記載の車両用前照灯において、前記発光素子および前記リフレクタを搭載したヒートシンクに前記投影レンズおよび前記可動シェードが一体化されて光源ユニットが構成されており、
前記リフレクタは、そのフランジ部に設けたねじ挿通孔を上下に貫通する締結ねじにより、前記発光素子を搭載した前記ヒートシンクのベースプレート上に固定された構造で、
前記リフレクタの前縁部には、前方斜め下方に延出する前記サブリフレクタが一体成形されており、
前記リフレクタは、該リフレクタの前方斜め下方向および後方斜め上方向に型抜きできるように、前記リフレクタのフランジ部に設けたねじ挿通孔の上下の開口側内周面の一部が前記リフレクタの型抜き方向と同方向に傾斜するテーパ形状に形成されたことを特徴とする。
【0016】
(作用)リフレクタの下側寄りには、走行ビームに対応する有効反射面(投影レンズの光軸よりも上向きの配光を形成できる有効反射面)が形成され、一方、リフレクタの前縁部には、前方斜め下向きにサブリフレクタが延出形成されている。このため、サブリフレクタをリフレクタに一体成形する際、成形品を上下方向に型抜きしようとすると、リフレクタ下側寄りの走行ビーム対応有効反射面がアンダーカットとなる。一方、成形品を前後方向に型抜きしようとすると、サブリフレクタがアンダーカットとなる。
【0017】
そこで、サブリフレクタの延出方向に沿って成形品を型抜きすれば、リフレクタもサブリフレクタもアンダーカットとならず、サブリフレクタとリフレクタを一体成形することができる。然るに、リフレクタのフランジ部には、リフレクタをヒートシンクのベースプレート上に固定するための締結ねじを挿通するねじ挿通孔を成形する必要があるが、このねじ挿通孔の延在方向と型抜き方向が一致しないため、ねじ挿通孔がアンダーカットとなる。
【0018】
然るに、リフレクタのフランジ部のねじ挿通孔の上下の開口側の内周面の一部をリフレクタの型抜き方向と同方向に傾斜するテーパ形状に形成することで、サブリフレクタを一体成形したリフレクタを型抜きする際、ねじ挿通孔がアンダーカットとならない。
【0019】
即ち、リフレクタのフランジ部のねじ挿通孔の形状を、
図9,10に示すように、リフレクタ成形用の金型200(上金型210と下金型220)で説明すると、リフレクタ成形用の金型200(上金型210と下金型220)の分割面211,221には、例えば、協働してリフレクタ24のフランジ部26(
図3,4参照)成形用のキャビティCを画成する凹部212,222が対向して設けられ、対向する凹部212,222のそれぞれの底面には、協働してねじ挿通孔27の内周面を成形する円柱状突起214,224が対向して設けられる。この対向する一対の円柱状突起214,224それぞれの離型方向(型抜き方向)側の外側面214a,224aを、離型方向(型抜き方向)に沿って傾斜するテーパ形状に形成することで、サブリフレクタとリフレクタを一体成形する際、リフレクタのフランジ部に設けるねじ挿通孔がアンダーカットとならない。
【0020】
請求項3においては、請求項1または2に記載の車両用前照灯において、前記可動シェードおよびその前方に配置された前記可動リフレクタは、左右方向に配設された回動軸周りにそれぞれ回動可能に設けられるとともに、両者間に介装されたばね部材により互いに起立する方向に付勢保持された構造で、アクチュエータの駆動により、前記可動シェードが回動して前記第1の形態から前記第2の形態に移行する際、両者は前記回動軸回りに一体に回動するが、前記第2の形態では、第1の係止部に係止されて、前記サブリフレクタでの反射光の光路上に突出した形態に保持される前記可動リフレクタに対し、前記可動シェードは、前記ばね部材の付勢力に抗して、第2の係止部に係止される所定位置までさらに回動するように構成されたことを特徴とする。
【0021】
(作用)可動シェードが傾倒し可動リフレクタが起立した第2の形態では、可動シェードが第2の係止部(第2,第3の実施例では、支持プレート100Aの後面)に係止されて傾倒した形態に保持されるとともに、可動リフレクタは、可動シェードとの間に介装されたばね部材のばね力(付勢力)により、第1の係止部(第2,第3の実施例では、支持プレート100Aの前面)に係止された起立状態に付勢保持される。
【0022】
即ち、走行ビームに対応する第2の形態における、可動リフレクタの位置決め精度が高いので、サブリフレクタの反射光に基づいて形成される走行ビーム用の第2の配光の精度も高い。
【0023】
請求項4においては、請求項1または2に記載の車両用前照灯において、前記可動シェードおよびその前方に配置された前記可動リフレクタは、左右方向に配設された回動軸周りにそれぞれ回動可能に設けられるとともに、両者間に介装されたばね部材により互いに起立する方向に付勢保持された構造で、アクチュエータの駆動により、前記可動シェードが回動して前記第1の形態から前記第2の形態に移行する際、両者は前記回動軸回りに一体に回動するが、前記第2の形態では、第1の係止部に係止されて、前記サブリフレクタでの反射光の光路上に突出した形態に保持される前記可動リフレクタに対し、前記可動シェードは、前記ばね部材の付勢力に抗して、前記アクチュエータの最大駆動位置に対応する所定位置までさらに回動するように構成されたことを特徴とする。
【0024】
(作用)走行ビームに対応する第2の形態(可動シェードが傾倒し可動リフレクタが起立した形態)では、アクチュエータの駆動力によって、可動シェードが傾倒する方向に回転付勢された状態である。即ち、第2の実施例では、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100A後面との当接部には、ソレノイド130の駆動力が圧縮力として作用している。
【0025】
詳しくは、可動シェード120Aは、可動シェード120A側の規制突部126が支持プレート100Aの後面に当接することで、走行ビームに対応する第2の形態(可動シェード120Aが傾倒し可動リフレクタ150Aが起立した形態)に位置決めされるが、車両走行中の振動などの外乱で規制突部126と支持プレート100A間の当接部が離間することがないように、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100Aの後面とは、ソレノイド130の駆動力によって圧接された形態に保持されている。
【0026】
即ち、ソレノイド130の出力軸133は、その作動範囲の中間状態で止まっている状態である。これは、第1の実施例においても、同様である。
【0027】
そのため、第1には、アクチュエータの駆動部に対する負荷が大きく、アクチュエータが故障したり、耐久性が低下するおそれがある。
【0028】
第2には、前照灯の配光を走行ビームに切り替える度に、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100A間の当接部近傍に負荷が作用するため、当接部の近傍がいずれ変形するおそれがある。
【0029】
第3には、走行ビームに対応する第2の形態の位置決め精度を上げるためには、第2の形態を確実に保持できるように、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100A裏面の当接部に作用する圧縮力(アクチュエータの駆動力)を上げることが望ましいが、それだけアクチュエータの電力消費量が嵩むことになる。
【0030】
然るに、請求項4では、アクチュエータの駆動により、第2の形態では、第1の係止部に係止されて、サブリフレクタでの反射光の光路上に突出する形態に保持される可動リフレクタに対し、可動シェードは、ばね部材の付勢力に抗して、アクチュエータの最大駆動位置に対応する所定位置までさらに回動する。
【0031】
即ち、アクチュエータであるソレノイド130の出力軸133は、請求項3のように、その作動範囲の中間状態で止まっているのではなく、その作動範囲の最大駆動位置(ソレノイド130の出力軸133を引ききった位置)で止まっている。
【0032】
このため、それだけアクチュエータの駆動部に対する負荷が小さい。また、前照灯の配光を走行ビームに切り替える際、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100Aが当接しないので、アクチュエータの駆動力を上げる必要もない。したがって、前記した第1〜第3の問題自体が発生しない。
【0033】
なお、第2の形態における可動シェードの位置決め精度は、可動シェードが第2の係止部に係止される所定位置まで回動して、可動シェードと第2の係止部間にアクチュエータの駆動力が圧縮力として作用する請求項3に比べると、第2の係止部に係止される所定位置という位置基準がないため、幾分低下するが、可動シェードは、リフレクタの反射光を遮光しない位置まで傾倒されているので、可動シェードの位置決め精度が幾分低下しても、走行用の第1の配光の形成に影響しない。
【0034】
さらに、可動リフレクタは、可動シェードとの間に介装されたばねによって、可動リフレクタが支持プレートに付勢当接し起立した形態に保持されているので、可動リフレクタの位置決め精度は高く、サブリフレクタの反射光に基づいて形成される走行ビーム用の第2の配光の形成にも影響しない。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明から明らかなように、請求項1によれば、灯具を大型化することなく、走行ビーム点灯時のドライバーから見た前方視認性に優れた車両用前照灯が提供される。
【0036】
請求項2によれば、その前縁部にサブリフレクタが、そのフランジ部にねじ挿通孔がそれぞれ設けられたリフレクタを一体成形できるので、サブリフレクタとリフレクタを一体成形した後に、リフレクタのフランジ部にねじ挿通孔を穿設するための後加工が省略される。
【0037】
詳しくは、リフレクタのフランジ部に設けるねじ挿通孔がアンダーカットとなるため、サブリフレクタとリフレクタを一体成形する際に、リフレクタのフランジ部にねじ挿通孔を成形しない場合は、成形品であるリフレクタのフランジ部に、ねじ挿通孔を穿設する後加工が必要であるが、請求項2によれば、この後加工が不要となる。
【0038】
請求項3によれば、リフレクタによって形成される走行ビーム用の第1の配光を補う、サブリフレクタによって形成される走行ビーム用の第2の配光の精度が高いので、遠方視認性に優れた走行ビームを形成できる。
【0039】
請求項4によれば、第2の形態では、可動シェードは、ばね部材の付勢力に抗して、アクチュエータの最大駆動位置に対応する所定位置まで回動するので、アクチュエータは、その作動範囲の最大駆動位置で止まっている。
【0040】
このため、前記した第1〜第3の問題が解消される。即ち、走行ビームに対応する第2の形態では、可動シェードが第2の係止部に係止されることがないので、第1には、アクチュエータが故障したり、耐久性が低下するおそれがない。第2には、可動シェードと第2の係止部の当接部近傍が変形するおそれがない。第3には、アクチュエータの電力消費量が低下する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0043】
図1,2において、本発明の第1の実施例である自動車用前照灯10は、前面側が開口する容器状の灯具ボディ12と、その前面開口部に取り付けられた素通し状の前面カバー(透光カバー)14とで画成された灯室内に、発光素子(例えば、高光束対応LED)22を光源として備えた投射型光源ユニット20が収容されている。
【0044】
光源ユニット20は、縦断面L字型のベースプレート31から多数の放熱フィン34が延出するアルミダイキャスト製のヒートシンク30を備え、ベースプレート31の縦断面L字横棒状部(以下、水平ベースプレートという)31aの上面には、光源である発光素子22と、発光素子22の発光を前方に反射する樹脂製リフレクタ24が取着されている。
【0045】
詳しくは、
図2,3,4において、ヒートシンク30を構成する水平ベースプレート31aの上面中央部には、ベースプレート31aの上下面と平行な素子取着面32aをもつ発光素子取着用の台座32が設けられ、台座32には、発光素子22がその照射軸を上向きにして取着されるとともに、水平ベースプレート31aの上面後方に取着されたリフレクタ24が、発光素子22の上方を覆うように配置されている。リフレクタ24前面の略下半分には、走行ビーム用有効反射面24aが形成され、略上半分には、すれ違いビーム用の有効反射面24bが形成されている。また、リフレクタ24の前縁部には、前方斜め下方に延出するサブリフレクタ25が一体成形されており、リフレクタ24は、そのフランジ部26に設けたねじ挿通孔27を上下に貫通する締結ねじ28(
図3,4参照)により、水平ベースプレート31aに固定されている。
【0046】
ヒートシンク30を構成するベースプレート31の縦断面L字縦棒状部(以下、垂直ベースプレートという)31bは、台座32を中心とする平面視略R形状(
図3参照)に形成されるとともに、垂直ベースプレート31bの背面側には、左右方向等間隔に後方に延出形成された放熱フィン34が上下方向に延在している。また、ヒートシンク30に設けられた放熱フィン34は、
図2に示すように、垂直ベースプレート31bの背面側から水平ベースプレート31aの下方、さらには、水平ベースプレート31aの前下方にかけて延在することで、大きな放熱面積が確保されて、ヒートシンク30の放熱性を高めるようになっている。
【0047】
そして、ヒートシンク30の前方には、樹脂製の投影レンズ50が配置され、リフレクタ24と投影レンズ50との間には、可動シェード120を備えた配光切替用シェード機構40が配置されて、光源ユニット20として一体化されている。
【0048】
詳しくは、ヒートシンク30の前面側には、投影レンズ50を保持するレンズホルダ52と、配光切替用シェード機構40を構成する正面視矩形状の支持プレート100が、2本の締結ねじ54a(
図1,4参照)により共締め固定されて、投影レンズ50が光源ユニット20の光軸L上に配置されている。なお、
図1,4における符号54bは、配光切替用シェード機構40(の支持プレート100)をヒートシンク30に固定する締結ねじである。
【0049】
また、ヒートシンク30の下面側には、
図2,4に示すように、発光素子22の点灯を制御する点灯回路ユニット60が、2本のねじ66によって固定されている。点灯回路62は、電子部品(回路素子)を搭載した回路基板で構成され、点灯回路ハウジング63内に収容されて点灯回路ユニット60として一体化されている(
図2参照)。
【0050】
そして、配光切替用シェード機構40を構成する電磁ソレノイド130の駆動により、支持プレート100に固定された回動軸110回りに可動シェード120が回動(前後方向に揺動)することで、光源ユニット20が形成する配光が、近距離の視認性に優れたすれ違いビーム(
図8(a)参照)と、遠方の視認性に優れた走行ビーム(
図8(b)参照)とに切り替わるように構成されている。
【0051】
以下、配光切替用シェード機構40を詳しく説明する。
【0052】
配光切替用シェード機構40は、その分解斜視図である
図5に示すように、矩形枠形状の支持プレート100と、支持プレート100の前面側に固定されて左右方向に延在する回動軸110と、回動軸110に回動可能に組み付けられた可動シェード120と、支持プレート100と可動シェード120間に介装された捩りコイルばね112と、支持プレート100に固定された可動シェード駆動用アクチュエータである電磁ソレノイド130と、可動シェード120と電磁ソレノイド130間に介装され、ソレノイド130の出力軸133の進退動作を可動シェード120の回動動作に変換して伝達する、動力伝達手段であるリンク部材140と、可動シェード120に一体化された可動リフレクタ150と、支持プレート100に固定されて、可動リフレクタ150の前方所定位置に配置されたサブシェード160を備えている(
図4,5参照)。
【0053】
可動シェード120は、金属製板材を所定形状に切断した後、曲げ加工することで、
図6に示すように、前面側が開口する平面視略矩形状の枠体121で構成されている。詳しくは、左右に延在する背面壁121aの両端部から側壁121b(左側壁121b1,右側壁121b2)が前方に延出し、側壁121b(121b1,121b2)の前端部が幅方向内側に折り曲げられて、左右一対の矩形状のリフレクタ取着部121c,121cが形成されている。リフレクタ取着部121cには、可動リフレクタ150(
図5参照)が固定されることで、可動シェード120の構造強度が確保されている。
【0054】
また、背面壁121aの上側縁部には、前方延出部123aおよび後方延出部123bで構成された、クリアカットオフライン形成用のシェード本体123が設けられているが、本実施例では、
図6に示すように、左右に延びる可動シェード背面壁121aの下側縁部から下方に垂直に帯状に延出する延出部121a1を、該背面壁121aの裏面に密着するように上方に折り返し、折り返した帯状延出部121a1の先端を略三角形状に形成することで、後方延出部123bが構成されている。
【0055】
この後方延出部123bについては、可動シェード背面壁121aの一部(背面壁121aの上側縁部の近傍領域)を三角形状に上方に切り起こすことで簡単に形成することも可能であるが、背面壁121aに顕れる三角形状の開口部(シェード本体123bの外形に対応する開口部)からの漏光を防ぐ対策(例えば、別部材で開口部を塞ぐ)が必要となる。然るに、本実施例では、可動シェード背面壁121aにそのような開口部が形成されず、漏光防止対策が不要な分、可動シェード120(枠体121)の構造が簡潔となる。
【0056】
また、背面壁121aの右寄り前面側には、前方に水平に延出する平板部121dが形成され、平板部121dには、支持プレート100と可動シェード120間に介装された捩りコイルばね112の一端を係止する孔121dが設けられている。
【0057】
また、側壁121b(121b1,121b2)の前方寄りには、回動軸110を挿通するための円孔124が対向して設けられ、側壁121b(121b1,121b2)の上部には、外方(側方)へ突出する規制突部125がそれぞれ設けられている。さらに、右側壁121b2の後方寄りの下端部には、内方へ突出する第2の規制突部126が設けられている。
【0058】
上方の規制突部125は、支持プレート100の後面に当接して、可動シェード120を第1の形態に位置決めするための係止部材であり、下方の第2の規制突部126は、支持プレート100の裏面に当接して、可動シェード120を第2の形態に位置決めするための係止部材である。
【0059】
また、左側壁121b1内側の円孔125下方位置には、縦断面略L字形状に形成されて、後方から下方に延出する舌片状の突起127が設けられている。この舌片状の突起127は、後述するリンク部材140と協働して、電磁ソレノイド130の出力軸133の進退動作を可動シェード120の回動動作に変換するための部材である。
【0060】
一方、可動シェード120が組み付けられる支持プレート100には、
図5に示すように、前方に円弧状に突出する取付面部103を設けた所定幅の水平枠部102によって、光透過孔100aと配置孔100bが上下に離隔して形成されている。円弧状の取付面部103には、円孔103aが設けられ、円孔103aには、後述するリンク部材140を支承するための支持軸146が上方から挿通されて、取付面部103の下方に支持軸146が突出している。
【0061】
また、支持プレート100における、水平枠部102寄りの光透過孔100aの左右の側縁部には、矩形状の立壁101aがそれぞれ設けられ、立壁101aには、後方へ突出された可動シェード押さえ片104が左右に離隔して設けられている。立壁101aにおける、可動シェード押さえ片104の外側の位置には、前方へ突出されたL字形状の軸取付片106がそれぞれ設けられている。
【0062】
回動軸110は、可動シェード120の側壁121bに設けた円孔124に挿入され、回動軸110の左右両端寄りの部分が支持プレート100の軸取付片106に上方から挿入され、軸取付片106が屈曲されて加締められることで、支持プレート100の前面側に固定される。
【0063】
回動軸110が支持プレート100に固定された状態において、可動シェード120は、光透過孔100aを挿通されて、その可動シェード本体123が支持プレート100の後側に、可動リフレクタ150および舌片状の突起127が支持プレート100の前側となるように配置される。このとき、可動シェード120の左右の側壁121bが支持プレート100側の左右一対の可動シェード押さえ片104に接触する形態に保持されることで、可動シェード120の支持プレート100に対する左右方向における移動が規制される。
【0064】
そして、可動シェード120は、回動軸110が支持プレート100に固定されることにより、回動軸110を支点として支持プレート100に対して回動可能とされ、可動シェード120が起立した第1の形態(
図2参照)と、可動シェード120が後方に傾倒(以下、後傾という)した第2の形態(
図7参照)との間で回動される。
【0065】
可動シェード120が起立した第1の形態では、可動シェード120側の規制突部125が支持プレート100の立壁101aの後面に付勢当接する状態に保持されて、前照灯(光源ユニット20)は、すれ違いビーム用の配光を形成する。一方、可動シェード120が後傾した第2の形態では、可動シェード120側の規制突部125が支持プレート100から後方に離隔するとともに、可動シェード120側の第2の規制突部126が支持プレート100の立壁101bの後面に付勢当接する状態に保持されて、前照灯(光源ユニット20)は、走行ビーム用の配光を形成する。
【0066】
回動軸110には、
図5の符号X1で示す位置において、捩じりコイルばね112が外嵌状に配設されており、ばね112の一端は可動シェード120(の平板部121dの孔121d1)に、他端は支持プレート100の立壁101bの後面にそれぞれ係合されている。従って、可動シェード120は、支持プレート100との間に介装された捩じりコイルばね112によって、シェード本体123が後傾する第2の形態からシェード本体123が起立する第1の形態へ向けて回動される方向へ付勢されている。
【0067】
即ち、可動シェード120は、ばね112の付勢力によって、その規制突部125が支持プレート100の立壁101aの後面に押し付けられた第1の形態に保持される。
【0068】
また、電磁ソレノイド130を駆動することで、可動シェード120は、ばね112の付勢力に抗して、その第2の規制突部126が支持プレート100の立壁101bの後面に押し付けられることで、第2の形態に保持される。
【0069】
リンク部材140は、
図5に示すように、ベース部141と、ベース部141から側方へ突出された平板状の摺動係合部142とを有している。ベース部141の前端部には、下方へ突出された連結軸部143が設けられ、ベース部141の後端部には、上下に貫通された被支持孔141aが形成されている。
【0070】
リンク部材140の被支持孔141aには、支持プレート100の取付面部103下面に突出する支持軸146が挿入され、支持軸146の下端部に止め輪148が取り付けられて、リンク部材140は、支持軸146を支点として支持プレート100に回動自在に支持される。リンク部材140が支持プレート100に支持された状態においては、リンク部材140の一部が支持プレート100の配置孔100bを挿通され、摺動係合部142が可動シェード120の舌片状突起127の後面側に接した状態とされる。
【0071】
電磁ソレノイド130は、可動シェード120を回動させるアクチュエータとして機能し、
図5に示すように、横長の前後に貫通された枠状に形成されたヨークケース131と、ヨークケース131の内部に配置されたコイル体132と、左右方向へ移動可能とされた出力軸133とを有している。コイル体132は、軸方向が左右方向にされ、コイル体132には、ヨークケース131の下方に隣接して設けた電源回路134から駆動電流が供給される。
【0072】
出力軸133は、軸方向が左右方向にされて一部がヨークケース131から側方へ突出している。出力軸133の先端寄りの部分には、リンク部材140の連結軸部143係合用の、環状の連結溝133aが形成されている。出力軸133は、コイル体132に対する駆動電流の供給状態に応じて軸方向へ移動する。
【0073】
ヨークケース131には、上方および下方にそれぞれ延出するブラケット131aが設けられ、ブラケット131aには、位置決め用の孔131bが設けられている。なお、
図5には、上方ブラケット131aだけが図示されている。
【0074】
一方、支持プレート100の立壁101bおよびその下方の立壁101cの前面側には、ヨークケース131側の位置決め用の孔131bに係合可能な位置決め用の突起108がそれぞれ設けられている。そして、ブラケット131aの位置決め用の孔131bを位置決め突起108に係合し、ネジ止め等によってブラケット131aを支持プレート100の前面に固定することで、ソレノイド130が配置孔100bに配置される。
【0075】
ソレノイド130には、出力軸133の連結溝133aにリンク部材140の連結軸部143が挿入されて連結される。従って、コイル体132に対する駆動電流の供給状態に応じて出力軸133が軸方向へ移動されると、リンク部材140が支持軸146を支点として回動され、可動シェード120側の舌片状突起127のリンク部材140の摺動係合部142との接触位置に応じて、可動シェード120が回動軸110を支点として後傾する方向に回動される。
【0076】
また、支持プレート100の前面側には、ソレノイド130を覆うように、サブシェード160がネジ止め等によって取り付けられている。サブシェード160は、鋼板やアルミ板などの金属板を所定の形状に切り起こして成形したもので、ソレノイド130のコイル体132を隠すためだけではなく、前面カバー14からの漏光や、投影レンズ50を介し入射する太陽光による樹脂製品の溶損を防止するために、投影レンズ50とシェード機構40間に立て壁状に配置される。
【0077】
上記のように構成された自動車用前照灯10において、ソレノイド130のコイル体132に電流が供給されていない状態では、捩りコイルばね112のばね力(付勢力)によって、可動シェード120は、規制突部125が支持プレート100(の立て壁101a)後面に押し付けられた第1の形態に保持されている(
図2参照)。このときソレノイド130の出力軸133はヨークケース131から突出される方向における移動端に位置している。
【0078】
リンク部材140は、摺動係合部142が後方側に位置する第1の回動端にあり、可動シェード120の舌片状突起127が摺動係合部142の前面側142a(
図5参照)に接した状態とされる。
【0079】
可動シェード120が起立する第1の形態において、発光素子22の発光はリフレクタ24で反射されて投影レンズ50に向うが、その光の一部が可動シェード120によって遮光され、遮光されなかった光が投影レンズ9に入射され、投影レンズ9によって光が投影される。可動シェード120が起立する第1の形態では、投影レンズ50の後方焦点F位置に可動シェード本体123が位置して、光源ユニット20によって、近距離照射に適したすれ違いビームの配光が形成される。即ち、
図8(a)に示すように、可動シェード本体123に対応する所定のカットオフラインCLをもつすれ違いビーム用の配光が形成される。
【0080】
詳しくは、可動シェード120が起立した第1の形態では、投影レンズ50を介して、可動シェード本体123に対応するカットオフラインCLをもつ、リフレクタ24の反射光に基づく所定のすれ違いビーム用の配光(
図8(a)参照)が形成される。このとき、可動シェード120に一体化されている可動リフレクタ150は、
図2に示すように、サブリフレクタ25での反射光L1の光路外にあって、サブリフレクタ25での反射光が可動リフレクタ150を介して投影レンズ50に導かれることはない。したがって、サブリフレクタ25での反射光L1が、すれ違いビーム用の配光に影響を与えることはない。
【0081】
そして、ソレノイド130のコイル体132に通電が行われると、出力軸133がヨークケース131に引き込まれる方向へ移動し、リンク部材140が支持軸146を支点として回動する。リンク部材140が回動する際、リンク部材140の摺動係合部142が可動シェード120の舌片状突起127の後面を前方に押す。このため、可動シェード120は、回動軸110を支点として捩りコイルばね112の付勢力に抗して、後傾する方向に回動される(
図7参照)。
【0082】
可動シェード120が後傾する第2の形態、即ち、可動シェード120の下方の第2の規制突部126が支持プレート100の後面に当接する位置まで可動シェード120が回動されると、シェード本体123が後方斜め下方に移動する。このため、リフレクタ24で反射された光は、シェード本体123で遮光されることなく投影レンズ50に入射して、遠距離照射に適した走行ビームが形成される。
【0083】
即ち、
図7に示すように、可動シェード120が後傾した第2の形態では、投影レンズ50を介して、シェード本体123に対応するカットオフラインをもたない、リフレクタ24の反射光に基づく走行ビーム用の第1の配光Pa(
図8(b)参照)が形成される。また、可動シェード120が起立する第1の形態から可動シェード120が後傾する第2の形態に移行すると、可動リフレクタ150は、可動シェード120の後傾に連係して起立し、サブリフレクタ25での反射光L1の光路上に突出し、該反射光L1を投影レンズ50に向けて反射する。このため、投影レンズ50を介して、例えば光軸L近傍を照射する、サブリフレクタ25の反射光L1に基づく走行ビーム用の第2の配光Pb(
図8(b)参照)が形成される。
【0084】
したがって、可動シェード120が後傾した第2の形態では、
図8(b)に示すように、リフレクタ24の反射光L1に基づく走行ビーム用の第1の配光Paに、サブリフレクタ25の反射光に基づく走行ビーム用の第2の配光Pbが合成されて、例えば、中心光度の高い所定の走行ビーム用の配光が形成される。
【0085】
そして、コイル体132に対する通電が停止されると、捩りコイルばね112のばね力(付勢力)によって、可動シェード120が回動軸110を支点として第2の形態から第1の形態まで回動され、この可動シェード120の回動に伴って、リンク部材140が回動されて、ソレノイド130の出力軸133がヨークケース131から突出される方向における移動端まで移動される。
【0086】
なお、本実施例では、サブリフレクタ25の反射光L1に基づく走行ビームの第2の配光Pbが投影レンズ50を介して形成されるように構成されているため、投影レンズ50の外形の範囲内にサブリフレクタ25が収まり、従来の放物面形状のサブリフレクタ(特許文献1参考)のように、投影レンズ50の外方に大きく突出しない。したがって、本実施例では、特許文献1に比べて、光源ユニット20をコンパクトに構成できる分、前照灯10を小型化できる。
【0087】
また、灯室内に収容された光源ユニット20は、
図1,2に示すように、灯室内上方の左右方向に離間する一対のエイミング点A,Bと、エイミング点Bのほぼ真下に位置する一個のエイミング点Cの三点で支持されるとともに、エイミング機構Eによって、エイミング点A,Bを通る水平傾動軸Lxおよびエイミング点B,Cを通る鉛直傾動軸Ly周りにそれぞれ傾動可能に支持されている。
【0088】
詳しくは、
図1,2に示すように、光源ユニット20として一体化された配光切替用シェード機構40の支持プレート100には、エイミング点A,B,Cに対応する孔70a,70b,70c(孔70a,70bは図示せず)を設けた、支持プレート100より一回り大きい矩形状のエイミング用ブラケット70が固定一体化され、一方、灯具ボディ10の背面壁に設けた、エイミング点A,B,Cに対応する貫通孔13a,13b,13c(貫通孔13a,13bは図示せず)には、回動操作部73を設けた3本のエイミングスクリュー71a,71b,71cが回転可能に支承されて灯室内に延出している。ブラケット70の孔70a,70b,70cには、エイミングスクリュー71a,71b,71cの先端部にそれぞれ螺合するベアリングナット72a,72b,72cが装着されている。即ち、エイミング機構Eを構成するエイミングスクリュー71a(71c)の回動操作により、光源ユニット20の光軸Lを左右方向(上下方向)に傾動調整できる。なお、
図3では、エイミング用ブラケット70の図示が省略されている。
【0089】
また、リフレクタ24の前縁部には、前方斜め下方に延出するサブリフレクタ25が一体成形されているが、リフレクタ24のフランジ部26(
図3,4,11参照)に設けたねじ挿通孔27の上下の開口側内周面の一部27a,27bが、リフレクタ24の型抜き方向(
図9,10に示す白抜き矢印方向)と同方向に傾斜するテーパ形状に形成されることで、分割金型を用いることなく、フランジ部26のねじ挿通孔27がアンダーカットとならないように、リフレクタ24とサブリフレクタ25が一体成形されている。
【0090】
詳しくは、リフレクタ24の下側寄りには、走行ビームに対応する有効反射面(投影レンズ50の光軸よりも上向きの配光を形成できる有効反射面24a、
図2,9参照)が形成され、一方、リフレクタ24の前縁部には、前方斜め下向きにサブリフレクタ25が延出形成されている。このため、サブリフレクタ25をリフレクタ24に一体成形する際、成形品(
図9参照)を上下方向に型抜きしようとすると、リフレクタ24下側寄りの走行ビーム対応有効反射面24aがアンダーカットとなる。一方、成形品を前後方向に型抜きしようとすると、サブリフレクタ25がアンダーカットとなる。
【0091】
そこで、サブリフレクタ25の延出方向に沿って成形品を型抜きすれば、リフレクタ24もサブリフレクタ25もアンダーカットとならず、サブリフレクタ25とリフレクタ24を一体成形することができる。然るに、リフレクタ24のフランジ部26には、リフレクタ24をヒートシンク30のベースプレート31上に固定するための、締結ねじ28挿通用のねじ挿通孔27が設けられており、このねじ挿通孔27もリフレクタ24と一体成形する必要があるが、このねじ挿通孔27の延在方向(フランジ部26の延在方向に対し直交する方向)と型抜き方向(サブリフレクタ25の延出方向に沿った方向)が一致しないため、ねじ挿通孔27がアンダーカットとなる。
【0092】
然るに、本実施例では、
図11に示すように、リフレクタ24のフランジ部26のねじ挿通孔27の上下の開口側の内周面の一部27a,27bを、リフレクタ24の型抜き方向と同方向に傾斜するテーパ形状に形成することで、サブリフレクタ25を一体成形したリフレクタ24を型抜きする際、ねじ挿通孔27がアンダーカットとならないように構成されている。
【0093】
次に、リフレクタ成形用の金型200(上金型210と下金型220)を示す
図9、10,12を参照して、リフレクタ24のフランジ部26のねじ挿通孔27の形状(
図11参照)を説明する。
【0094】
リフレクタ成形用の金型200(上金型210と下金型220)の分割面211,221には、協働してリフレクタ24のフランジ部26成形用のキャビティcを画成する凹部212,222が対向して設けられ、対向する凹部212,222のそれぞれの底面には、協働してねじ挿通孔27の内周面を成形する円柱状突起214,224が対向して設けられている。対向する一対の円柱状突起214,224における、金型離型方向(型抜き方向)側の外側面214a,224aを離型方向(型抜き方向)に沿って傾斜するテーパ形状に形成することで、サブリフレクタ25とリフレクタ24を一体成形する際、リフレクタ24のフランジ部26に設けるねじ挿通孔27がアンダーカットとならない。
【0095】
図13〜
図17は、本発明の第2の実施例である自動車用前照灯10Aを示す。なお、
図17(a),(b),(c)は、配光切替用シェード機構の動作を説明する図であるが、各構成部材の動きを理解し易くするために、可動リフレクタを透明にして図示している。
【0096】
この第2の実施例では、配光切替用シェード機構40Aの構造、サブシェード160Aの形状とその取着位置、および灯室内における光源ユニット20Aの支持構造の3点が、前記した第1の実施例と大きく相違し、その他は、前記した第1の実施例と同一であるので、第1の実施例と同じ構成については、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0098】
まず、第1の相違点である配光切替用シェード機構40Aの構造について説明する。
【0099】
前記した第1の実施例の配光切替用シェード機構40では、回動軸110は、支持プレート100に固定され、可動リフレクタ150は、回動軸110周りに回動可能に構成された可動シェード120に固定されて、可動シェード120と可動リフレクタ150が支持プレート100に対し常に一体に回動するように構成されている。
【0100】
一方、本実施例の配光切替用シェード機構40Aでは、回動軸110は、上方が開口する支持プレート100A(
図15参照)に固定され、可動シェード120Aおよび可動リフレクタ150Aは、それぞれ回動軸110周りに回動可能に設けられるとともに、両者120A,150A間には、第2の捩りコイルばね112Aが介装されて、両者120A,150Aは、互いに起立する方向(回動軸110の上方において互いに接近する方向)に付勢保持されている。
【0101】
このため、電磁ソレノイド130の駆動により、可動シェード120Aが起立する第1の形態から後傾する第2の形態に移行する際、両者120A,150Aは、支持プレート100Aに固定された回動軸110回りに所定角度に保持されて一体に回動するが、第2の形態では、規制突部154が係止部である支持プレート100Aの前面に係止されて、サブリフレクタ25での反射光L1の光路上に突出する起立した形態に保持される可動リフレクタ150Aに対し、可動シェード120Aは、ばね112Aの付勢力に抗して、第2の規制突部126が第2の係止部である支持プレート100Aの後面に係止される所定の傾倒位置までさらに回動するように構成されている。
【0102】
以下、詳しく説明する。可動シェード120Aは、
図15に示すように、前記第1の実施例の可動シェード120と同じ矩形状に形成されているが、左右の側壁121b(左側壁121b1,右側壁121b2)の前縁部には、可動リフレクタ150Aを固定するための矩形状のリフレクタ取着部121c,121c(
図6参照)が設けられていない。
【0103】
そして、可動シェード120Aの左右の側壁121bは、
図16に拡大して示すように、その前縁部が円弧状に形成され、回動軸110が挿通する円孔124の周辺領域が外方に膨出する円形屈曲段差部124aで構成されることで、側壁121bの剛性強度が高められるとともに、側壁121bと支持プレート100A側の可動シェード押さえ片104との接触面積を低減させることで、可動シェード120Aの支持プレート100Aに対する円滑な回動が確保されている。
【0104】
また、左右の側壁121bの前縁部には、回動軸110に回動可能に組み付けられた可動リフレクタ150Aを係止するための段差部121b3が設けられている。
【0105】
一方、可動リフレクタ150Aは、
図15に示すように、左右方向に長い矩形平板状に形成され、可動リフレクタ150Aの左右両端部には、後面側に延出する舌片状の延出部152が形成されている。延出部152には、回動軸110が挿通できる円孔152aが設けられ、延出部152は、可動シェード120Aの左右の側壁121bの内側に接触するように配置されて、可動シェード120Aと可動リフレクタ150Aは、回動軸110周りに相対的に回動できる。
【0106】
そして、可動リフレクタ150Aの延出部152には、外方(側方)へ突出する規制突部154が設けられている。規制突部154は、可動シェード120Aの側壁121b前端部の段差部121b3(
図16参照)に係合可能な位置に設けられている。
【0107】
また、可動シェード120Aと可動リフレクタ150A間には、捩りコイルばね112Aが介装されて、可動リフレクタ150Aは、その規制突部154が側壁121b前端部の段差部121b3に当接する方向に回転付勢されている。詳しくは、捩りコイルばね112Aは、支持プレート100Aと可動シェード120A間に介装された捩じりコイルばね112の配設側と反対側において、回動軸110に外嵌状に配設されており、ばね112Aの一端は可動シェード120Aの左側壁121b1の所定位置に、他端は可動リフレクタ150Aの所定位置にそれぞれ係合されている。
【0108】
従って、電磁ソレノイド130を駆動しない状態、即ち、電磁ソレノイド130のコイル体132に通電しない状態では、
図15,16に示すように、可動シェード120Aと可動リフレクタ150Aは、両者120A,150A間に介装された捩りコイルばね112Aによって、規制突部154が側壁121b前端部の段差部121b3に付勢当接する状態に一体化されている。
【0109】
次に、電磁ソレノイド130の駆動によって、可動シェード120Aが第1の形態と第2の形態の間を回動する動きを説明する。
【0110】
側壁121b前端部の段差部121b3に規制突部154が付勢当接するように可動リフレクタ150Aを一体化した可動シェード120Aは、電磁ソレノイド130の駆動(コイル体132への通電)により、回動軸110の周りを回動して、
図15,16,17(a)および
図13(a)に示す、可動シェード120Aが起立する第1の形態から、
図17(c)および
図13(b)に示す、可動シェード120Aが後傾する第2の形態に移行する。特に、第2の形態に移行する際、
図17(b),(c)に示すように、可動リフレクタ150Aは、その規制突部154が支持プレート100Aの前面100A1に係止されて、サブリフレクタ25での反射光L1の光路上に突出する起立した形態に保持される(
図13(b)参照)のに対し、可動シェード120Aは、ばね112Aの付勢力に抗して回動を継続し、可動シェード120Aに設けられた第2の規制突部126が第2の係止部である支持プレート100Aの後面に当接する、所定の傾倒位置(
図13(b)の仮想線で示す位置から実線で示す位置)までさらに回動する(
図17(c)参照)。
【0111】
即ち、可動リフレクタ150Aは、第2の形態に移行した後は、可動シェード120Aとの間に介装されている第2のばね112Aの付勢力によって、その規制突部154が支持プレート100Aの前面に当接する状態に保持されるのに対し、可動シェード120Aは、支持プレート100Aとの間に介装されているばね112および可動リフレクタ150Aとの間に介装されているばね112Aの付勢力に抗して回動を継続し、可動シェード120Aに設けられた第2の規制突部126が第2の係止部である支持プレート100Aの裏面に当接した形態に保持される。
【0112】
次に、第2の相違点であるサブシェード160Aについて説明する。
【0113】
前記した第1の実施例では、
図5に示すように、配光切替用シェード機構40の支持プレート100の前面側に、金属板を所定の形状に切り起こして成形した箱型のサブシェード160がネジ止めによって取り付けられているが、本実施例では、
図14に示すように、金属板を所定の形状に切り起こして成形したシンプルな形状のサブシェード160Aが、その両端のブラケット部162を樹脂製レンズホルダ52A側の係合凹部53に係合させ、ブラケット部162に設けた円孔(図示せず)から突出させた係合凹部53側の突出部53aを熱カシメにより固定した構造である。
【0114】
第1の実施例のサブシェード160が、配光切替用シェード機構40の支持プレート100の左右幅に対応する幅をもつ箱型に形成されているのに対し、本実施例のサブシェード160Aは、レンズホルダ52Aの左右幅に対応する幅をもつコンパクトかつシンプルな形状に構成されている。
【0115】
なお、金属製サブシェード160Aは、インサート成形により樹脂製レンズホルダ52Aに一体化するようにしてもよいし、レンズホルダ52Aが金属製の場合は、金属製サブシェード160Aをレンズホルダ52Aに溶接やカシメによって固定一体化する構造であってもよい。
【0116】
このように、本実施例では、コンパクトかつシンプルな形状のサブシェード160Aをレンズホルダ52に簡単に一体化できるように構成したので、サブシェード160Aの取り付けが容易になるとともに、光源ユニット20の小型化、ひいては前照灯の小型化に繋がる。
【0117】
次に、第3の相違点である光源ユニット20Aについて説明する。
【0118】
前記した第1の実施例では、光源ユニット20がエイミング機構Eに支持されて、光源ユニット20(の光軸L)を上下左右方向に傾動調整できるように構成されているのに対し、本実施例では、灯室内において、光源ユニット20Aは、図示しないスイブル機構に支持されて、車輌の走行方向(ハンドル操舵)に追従して、光源ユニット20A(の光軸L)を水平方向(左右方向)に回動調整できるように構成されている。
【0119】
なお、灯室内において、光源ユニット20Aは、灯具ボディ12に対し上下方向へ傾動可能に支持されていてもよい。そして、光源ユニット20Aが灯具ボディ12に上下方向へ傾動可能に支持されている場合には、灯具ボディ12に図示しないレベリング調整機構が連結され、レベリング調整機構の動作によって、光源ユニット20A(の光軸)が上下方向へ傾動され、車載物の重量に応じて光源ユニット20Aの光軸の向きが上下方向に調整(路面に対する光軸の上下方向の傾斜が常に一定となるように調整)されるように構成されていてもよい。
【0120】
また、前記した第2の実施例では、電磁ソレノイド130の駆動により、可動シェード120Aが第1の形態から第2の形態に移行する際、可動シェード120Aは、捩りコイルばね112Aの付勢力に抗して、可動シェード120Aに設けた第2の規制突部126が支持フレーム100の後面に係止される所定位置まで回動するように構成されているが、第2の実施例の変形例である、図示しない第3の実施例では、可動シェード120Aに、第2の規制突部126が設けられていない。
【0121】
したがって、本発明の第3の実施例では、電磁ソレノイド130の駆動により、可動シェード120Aが第1の形態から第2の形態に移行する際、可動シェード120Aは、捩りコイルばね112Aの付勢力に抗して、アクチュエータである電磁ソレノイド130の最大駆動位置に対応する所定位置まで回動するように構成されている。
【0122】
このため、前記した第2の実施例における、走行ビームに対応する第2の形態(可動シェード120Aが後傾し可動リフレクタ150Aが起立した形態)は、電磁ソレノイド130の駆動力によって、可動シェード120が後傾する方向に回転付勢された状態である。即ち、可動シェード120A側の第2の規制突部126と支持プレート100A後面との当接部には、ソレノイド130の駆動力が圧縮力として作用している。
【0123】
詳しくは、可動シェード120Aは、可動シェード120A側の規制突部126が支持プレート100Aの後面に当接することで、走行ビームに対応する第2の形態(可動シェード120Aが傾倒し可動リフレクタ150Aが起立した形態)に位置決めされるが、車両走行中の振動などの外乱で規制突部126と支持プレート100A間の当接部が離間することがないように、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100Aの後面は、ソレノイド130の駆動力によって圧接された形態に保持されている。
【0124】
即ち、ソレノイド130の出力軸133は、その作動範囲の中間で止まっている状態である。これは、第1の実施例においても、同様である。
【0125】
そのため、第1には、電磁ソレノイド130の駆動部に対する負荷が大きく、ソレノイド130が故障したり、耐久性が低下するおそれがある。
【0126】
第2には、前照灯の配光を走行ビームに切り替える度に、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100A間の当接部近傍に負荷が作用するため、当接部の近傍が変形するおそれがある。
【0127】
第3には、走行ビームに対応する第2の形態の位置決め精度を上げるためには、第2の形態を確実に保持できるように、可動シェード120A側の規制突部126と支持プレート100A後面の当接部に作用する圧縮力(ソレノイド130の駆動力)を上げることが望ましいが、それだけソレノイド130の電力消費量が嵩むことになる。
【0128】
然るに、この第3の実施例では、電磁ソレノイド130の駆動により、可動シェード120Aが回動して第1の形態から第2の形態に移行する際、可動シェード120Aおよび可動リフレクタ150Aは回動軸110回りに一体に回動するが、第2の形態では、可動リフレクタ150Aに設けた規制突部154が支持フレーム100Aの前面に係止されて、サブリフレクタ25での反射光の光路L1上に突出する起立した形態に保持される可動リフレクタ150Aに対し、可動シェード120Aが、ばね部材112Aの付勢力に抗して、電磁ソレノイド130の最大駆動位置に対応する所定位置までさらに回動するように構成されている。
【0129】
このため、アクチュエータであるソレノイド130の出力軸133は、第1の実施例や第2の実施例のように、その作動範囲の中間状態で止まっているのではなく、その作動範囲の最大駆動位置、詳しくは、ソレノイド130の内部において、出力軸133がストッパに当接した状態で止まっている。
【0130】
このため、第2の形態における傾倒した可動シェード120Aの位置決め精度は、第1の実施例や第2の実施例における可動シェード120,120Aと比べると幾分低下するが、可動シェード120Aは、リフレクタ24の反射光を遮光しない位置まで傾倒されているので、可動シェード120Aの位置決め精度が幾分低下しても、走行用の第1の配光P1の形成には影響しない。
【0131】
さらに、可動リフレクタ150Aは、可動シェード120Aとの間に介装されたばね112Aによって、可動リフレクタ150Aの規制突部154が支持プレート100の前面に付勢当接し起立した形態に保持されているので、可動リフレクタ150Aの位置決め精度は高く、サブリフレクタ25の反射光に基づいて形成される走行ビーム用の第2の配光P2の形成にも影響しない。
【0132】
なお、前記した実施例では、支持プレート100,100Aと可動シェード120,120A間に介装されたばね部材、可動シェード120Aと可動リフレクタ150A間に介装されたばね部材は、いずれも捩りコイルばね112,112Aであるが、板ばね等のばね部材であってもよい。
【0133】
また、前記した実施例では、可動シェードを回動させるアクチュエータが電磁ソレノイドで構成されているが、モータなどの駆動源であってもよい。
【0134】
また、前記した実施例では、電磁ソレノイドの出力軸の直線運動を可動シェードの回転運動に変換するために、電磁ソレノイドと可動シェード間にリンク部材を設けているが、リンク部材に限るものではなく、ラック&ピニオン等の他の機構も使用できる。